説明

椎弓根プローブの刺入を支援するガイド

【課題】椎骨の所定部位に正確に安定して固定することができ、高い精度で椎弓根プローブの刺入を行えるガイドを提供する。
【解決手段】それぞれを椎弓根プローブが貫通し得る一対のガイド筒1a、1bと、一対のガイド筒を連結し、それらが位置する平面から、逆U字または逆V字状に突出する基部2と、一対のガイド筒を連結する第1連結部3と、基部の頂点部分2cと第1連結部を連結する第2連結部4を備える。一対のガイド筒の下端開口縁1c、1dはそれぞれ、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、椎骨の椎弓に隙間無く接触する形状を有し、基部の頂点部分には、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、棘突起の先端部に隙間無く接触する第1支持面6が設けられ、基部の左側および右側部分には、それぞれ、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、椎骨の椎弓に隙間無く接触する第2支持面5a、5bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術において椎骨の椎弓根に螺子挿入孔を形成する際に、椎弓根プローブの刺入を支援するガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊椎疾患においては、脊柱の不安定性の解消や変形の矯正、神経の減圧手技後に生じる不安定性の解消のために、椎弓根に螺子を挿入して固定する脊椎固定術が行われている。脊椎固定術によれば、椎弓根プローブが椎骨の椎弓表面から左右の椎弓根に刺入されてリード孔が形成され、次いでリード孔のねじ切りが行われることによって椎弓根螺子挿入孔が形成され、その後、螺子が椎弓根螺子挿入孔にねじ込まれる。
【0003】
ところで、脊椎は、内部に脊髄、馬尾等の易損性の組織を含み、またその周囲には大動脈や椎骨動脈等の重要組織が存在しているため、不適切な螺子挿入によって、大量出血や神経損傷等の重大な合併症が生じることもまれではない。また、螺子の誤挿入は、骨との固定性を低下させ、骨癒合率の低下による症状の遺残や悪化に直結する。
したがって、脊椎固定術を成功させるためには、正確な椎弓根螺子挿入が極めて重要である。
【0004】
しかしながら、椎弓根や椎弓の形状には個人差があり、正確な椎弓根螺子挿入は術者の経験によるところが大きく、経験豊富な術者が手術を行っても10数%程度の螺子逸脱率が生じることがこれまでに報告されている。
【0005】
そこで、脊椎固定術における椎弓根螺子挿入の精度を向上させるべく、近年著しい進歩をとげた術中ナビゲーション技術を用いることが提案されている。しかし、装置が非常に高価であること、手技が煩雑であり設定に時間を要すること、不適切な手技によって正確性が損なわれる可能性があること等の問題があり、また、術中ナビゲーション技術を用いても、数%程度の螺子誤刺入率が生じることが報告されている。
【0006】
そのため、正確な椎弓根螺子挿入を可能にする簡便な手段の開発が望まれている。このような手段の1つとして、患者のCT画像データから形成した骨形状データに基づいて設計、製造されたカスタム螺子挿入ガイドが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
図4は、このカスタム螺子挿入ガイドの1例を示す斜視図である。この螺子挿入ガイドは、患者のCT画像データに基づき、ラピッド・プロトタイピング技術を用いて、"Duraform"ポリアミドから形成されている。図4に示すように、螺子挿入ガイドは、互いに起立状態で互いに間隔をあけてかつ所定角度をなして配置され、それぞれを椎弓根プローブが貫通し得る一対のガイド筒20a、20bと、一対のガイド筒を連結するアーチ部21と、を備えている。また、アーチ部21の両側下端にはそれぞれ第1支持脚22a、22bが突設され、さらに、アーチ部の頂点部分には第2支持脚23が突設されている。第1支持脚22a、22bおよび第2支持脚23は、いずれも先端にV字状のエッジ24a、24b、25を有している。
【0008】
そして、このガイドは、第1支持脚22a、22bがそれぞれ椎骨の横突起の所定部位(図5の左右の白線で描かれた円参照)に、V字状エッジ24a、24bが対応する横突起を横切る配置で置かれ、かつ、第2支持脚23が棘突起の所定部位(図5の中央の白線で描かれた円参照)に、V字状エッジ25が棘突起を横切る配置で置かれ、アーチ部21の頂点部分が椎骨に向けて押しつけられることによって、椎骨の所定部位に固定される。こうしてガイドが固定された状態で、一対のガイド筒20a、20bにそれぞれ椎弓根プローブが挿通され、これらのガイド筒20a、20bの案内によって、左右の椎弓根にそれぞれリード孔が形成される。
【0009】
しかし、この構成によれば、ガイドは、3本の支持脚のそれぞれのV字状エッジにおいて椎骨との点接触によって固定される。そのため、ガイドの固定が非常に不安定であり、ガイドを椎骨に押しつける力の向きが変動すると、ガイドが容易に動いてしまい、椎弓根プローブを誤刺入するおそれがあった。
また、このガイドは、特定の椎骨に対して設計されるが、当該椎骨以外の椎骨に対しても容易に適合し得る構造となっているので、術者が誤って、ガイドを異なる椎骨に適用してしまう危険性があった。
【0010】
さらには、CT画像データから形成した骨形状データは、CT画像の解像度や画質、骨の部位や骨密度等によって大きな影響を受け、実際の骨の形状を正確に反映しているとは言えない。したがって、骨形状データに基づいてガイドを設計する場合、骨形状データの再現性がなるべく高い部位にガイドの支点を設定することが重要となる。しかし、この従来のガイドは、椎骨の横突起という、骨形状データの再現性が相対的に低い部位にガイドの接点が位置するように設計され、よって、ガイドの精度(椎弓根プローブの正確な刺入)が十分に保証されないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】E. Berry, M. Cuppone, et al. "Personalised image-based templates for intra-operative guidance", Proc. Inst. Mech Eng., 2005, Vol.219, Part H., p. 111-118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、椎骨の所定部位に正確にかつ安定して固定することができ、高い精度で椎弓根プローブの刺入を行えるガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、脊椎固定術における椎弓根螺子挿入に際し、予め選択された椎骨の椎弓表面から左右の椎弓根内への椎弓根プローブの刺入を支援すべく、前記椎骨の所定部位に置かれて押圧固定されるガイドであって、前記ガイドの全体が、患者のCT画像データに基づき、ラピッド・プロトタイピング技術を用いて形成されており、前記ガイドは、互いに起立状態で間隔をあけてかつ所定の角度をなして配置され、それぞれを椎弓根プローブが遊びを伴って貫通し得る一対のガイド筒と、棒体からなり、一端が一方の前記ガイド筒に接続され、他端が他方の前記ガイド筒に接続されるとともに、前記一対のガイド筒が位置する平面から、実質上逆U字または逆V字状に突出する基部と、棒体からなり、前記一対のガイド筒を、前記基部との接続部より上方の位置で互いに連結する第1連結部と、を備え、前記基部の頂点部分が前記第1連結部に接続され、前記一対のガイド筒の下端開口がそれぞれ形成すべき左右の椎弓根螺子挿入孔に整合するとともに、前記基部の頂点部分が前記椎骨の棘突起の先端部を横切り、かつ前記基部の左側および右側部分が前記棘突起の両側に沿ってのびるような配置で、前記椎骨の所定部位に押圧固定されるようになっており、前記一対のガイド筒の下端開口縁はそれぞれ、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する形状を有し、前記基部の前記頂点部分には、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記棘突起の先端部に隙間無く接触する第1支持面が設けられ、前記基部の前記左側および右側部分には、それぞれ、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する第2支持面が設けられていることを特徴とするガイドを構成したものである。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、前記基部の頂点部分と前記第1連結部との接続部には、前記一対のガイド筒の軸を横切る面上に位置する押圧面が設けられている。この場合、前記押圧面には、前記ガイドと前記椎骨との対応関係を示す情報が表示されていることがより好ましい。
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記基部の頂点部分が、棒体からなる第2連結部を介して前記第1連結部に接続されている。この場合、好ましくは、前記第1連結部と前記第2連結部との接続部には、前記一対のガイド筒の軸を横切る面上に位置する押圧面が設けられており、さらに好ましくは、前記押圧面には、前記ガイドと前記椎骨との対応関係を示す情報が表示されている。
【0015】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記第1支持面および前記第2支持面は、ほぼ円形または楕円形または多角形の輪郭を有している。
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記基部の前記左側および右側部分のそれぞれに、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する第3支持面が、前記第2支持面から間隔をあけて設けられている。この場合、前記第3支持面は、ほぼ円形または楕円形または多角形の輪郭を有していることが好ましい。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記ガイドの全体が、チタンまたはチタン合金から形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガイドを、一対のガイド筒の下端開口縁、第1支持面および第2支持面により、それぞれ、椎骨の横突起基部(椎弓根螺子挿入孔を形成する位置)、棘突起先端部および椎弓において面接触させることで、椎骨の所定部位に固定するようにしたので、ガイドを椎骨に押しつける力の向きが多少変動しても、ガイドは当初の位置から動くことがなく、椎骨上に安定して固定される。その結果、椎弓根プローブの誤刺入が防止される。また、5つの面で面接触させるので、特定の椎骨に対して設計されたガイドは、当該椎骨以外の椎骨には全く適合せず、それによってガイドの誤使用が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例による椎弓根プローブの刺入を支援するガイドを示す図であり、(A)は斜め上方から見た立体図であり、(B)は下方から見た立体図である。
【図2】本発明の第2の実施例による椎弓根プローブの刺入を支援するガイドを示す、図1に類似の図である。
【図3】図1のガイドを、人体の脊椎の所定の椎骨に適用した状態を示す立体図である。
【図4】従来の螺子挿入ガイドの1例を示す立体図である。
【図5】図4の螺子挿入ガイドの固定位置を示した、人体の脊椎の一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
(第1実施例)
図1は、本発明の第1の実施例による椎弓根プローブの刺入を支援するガイドを示す図であり、(A)は斜め上方から見た立体図であり、(B)は下方から見た立体図である。
図1に示すように、本発明によるガイドは、互いに起立状態で間隔をあけてかつ所定の角度をなして配置され、それぞれを椎弓根プローブが遊び(0.1mm〜2.0mm)を伴って貫通し得る一対のガイド筒1a、1bと、一対のガイド筒1a、1bを連結する基部2と、を備えている。
【0020】
基部2は、棒体からなり、一端2aが一方のガイド筒1aに接続され、他端2bが他方のガイド筒1bに接続されるとともに、一対のガイド筒1a、1bが位置する平面から、実質上逆U字または逆V字状に突出する。
【0021】
さらに、本発明のガイドは、棒体からなり、一対のガイド筒1a、1bを、基部2との接続部より上方の位置で互いに連結する第1連結部3と、棒体からなり、基部2の頂点部分2cと、第1連結部3とを互いに連結する第2連結部4と、を備えている。
【0022】
本発明のガイドは、図3に示すように、一対のガイド筒1a、1bの下端開口がそれぞれ、形成すべき左右の椎弓根螺子挿入孔10に整合するとともに、基部2の頂点部分2cが椎骨の棘突起12の先端部を横切り、かつ基部2の左側および右側部分が棘突起12の両側に沿ってのびるような配置で、椎骨の所定部位に押圧固定されるようになっている。
【0023】
図1Bおよび図3を参照して、一対のガイド筒1a、1bの下端開口縁1c、1dは、それぞれ、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、椎骨の椎弓11に隙間無く接触する形状を有し、基部2の頂点部分2cには、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、棘突起12の先端部に隙間無く接触する第1支持面6が設けられ、基部2の左側および右側部分には、それぞれ、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、椎骨の椎弓11に隙間無く接触する第2支持面5a、5bが設けられる。この場合、第1支持面6および第2支持面5a、5bは、ほぼ円形の輪郭(直径が2〜6mm)を有している。なお、第1支持面6および第2支持面5a、5bの輪郭形状を、ほぼ楕円形または多角形としてもよい。
【0024】
各ガイド筒1a、1bの下端開口縁1c、1d、第1支持面6、および第2支持面5a、5bの合計5つの接触面だけでは、ガイドを椎骨上に安定に固定できないような場合には、さらに、基部2の左側および右側部分に、それぞれ、ガイドが椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、椎骨の椎弓11に隙間無く接触する第3支持面7a、7bが、第2支持面5a、5bから間隔をあけて設けられる。第3支持面7a、7bも、第2支持面5a、5bと同様、ほぼ円形の輪郭(直径または長径が2〜6mm)を有している。この場合、第3支持面7a、7bの輪郭形状を、ほぼ楕円形または多角形としてもよい。
【0025】
また、第1連結部3と第2連結部4との接続部には、一対のガイド筒1a、1bの軸を横切る面上に位置する押圧面8が設けられる。こうして、押圧面8に、術者またはその補助者の手の指が載せられ、椎弓根プローブの刺入操作を妨げることなく、ガイドを対応する椎骨に容易に押圧固定することが可能となる。
押圧面8には、ガイドと椎骨との対応関係を示す情報が表示されていることが好ましい。この実施例では、当該ガイドが、頚椎、胸椎、腰椎等の各部位の何番面の骨に対応するかを示す番号(または記号および番号の組合せ)が、押圧部8の上面に刻印される。それによって、ガイドの誤適用が、より確実に防止される。
【0026】
次に、本発明によるガイドの設計、製造法を簡単に説明する。
まず、患者の脊椎CT画像が撮影され、取得されたCT画像データから、骨形状データが、コンピュータにより公知の画像処理ソフトウェアを用いて抽出される。この骨形状データに基づき、コンピュータのディスプレイ上において、本発明によるガイドの設計がなされる。
【0027】
ガイドの設計の際には、椎骨表面上の横突起基部(椎弓根螺子挿入孔10を形成すべき位置)、棘突起12の先端部および椎弓11という、解剖学的に凹凸が少なく、骨密度の高い部位であって、骨形状データ中の再現性の高い部位に、ガイドの接触面が設定される。それによって、低解像度のCT画像しか得られない場合であっても、実際の骨に正確に適合するガイドの設計が十分に保証され得る。
【0028】
次いで、設計されたガイドの形状データおよび骨形状データのCT画像上での確認がなされ、CT画像上において骨形状データが正確に再現できていない部位にもガイドが適合しているか否かが評価される。そして、ガイドの適合性が不十分な場合には、ガイドの設計がやり直される。
【0029】
十分な適合性を有するガイドが設計された場合には、その設計データに基づき、ラピッド・プロトタイピング技術を用いて、ガイドが造形(作製)される。この場合、ガイドの形成材料としては、生体組織に適用しても安全で、オートクレービングまたは熱滅菌に対して安定であり、かつ適度な強度を有するものであれば、任意のものが使用可能であるが、特に、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
【0030】
また、ガイドの造形とともに、同じCT画像データに基づき、石膏や樹脂等を用いて骨模型が作製される。そして、造形されたガイドが、手術での使用に先立って、この骨模型に適用され、ガイドが実際の骨に対し正確に適合し、椎弓根プローブの正確な挿入が可能か否かの評価がなされる。そして、この評価において適合性不良であると判断されたガイドについては、設計変更がなされる。ガイドの設計変更は、具体的には、ガイドの接触面の位置を変更すること、接触面の形状を、骨形状データではなくCT画像データに適合するように調整すること等によって実行される。
【0031】
本発明のガイドの使用法は次の通りである。
本発明のガイドは、滅菌後使用される。手術の際には、骨表面を展開後、ガイドが対応する椎骨の所定部位に置かれ、ガイドの形状の適合性と安定性が評価される。このとき、本発明によれば、ガイドを、一対のガイド筒1a、1bの下端開口縁1c、1d、第1支持面6、第2支持面5a、5bおよび第3支持面7a、7bにより、それぞれ、椎骨の横突起基部(椎弓根螺子挿入孔10を形成すべき位置)、棘突起12の先端部および椎弓11において面接触させることで、椎骨の所定部位に固定するので、ガイドを椎骨に押しつける力の向きが多少変動しても、ガイドは当初の位置から動くことがなく、椎骨上に安定して固定される。また、7つの面で面接触させるので、特定の椎骨に対して設計されたガイドは、当該椎骨以外の椎骨には全く適合せず、それによってガイドの誤使用が防止される。
【0032】
そして、十分な適合性と安定性が得られていると判断されたとき、ガイドを使用した螺子挿入が行われる。その際、術中ナビゲーションや術中レントゲン撮影等の公知の手術支援システムの併用が可能である。
こうして、ガイドが術者またはその補助者の手の指によって押圧固定された状態で、ガイド筒に、骨表面を穿孔するための器具(オウル、先端が鋭の鋼線等)が挿入され、術者の手技により螺子挿入点が開口される。螺子挿入点は、ハイスピードドリル等によって直径数mm程度の皮質骨の開窓がなされてもよい。
【0033】
次いで、ガイド筒に椎弓根プローブが挿入され、術者の手技によりリード孔が形成される。その際、ガイド筒と椎弓根プローブの間には0.1mm〜2.0mm程度の遊びがあるため、術者は、椎弓根プローブの操作の間に、椎弓根内部の骨の感触を得ることが可能となる。椎弓根プローブを通じて骨の感触を得ながら骨孔を作成することで、術者は、椎弓根プローブが椎弓根外へ逸脱したことを瞬時に認識することができる。
適切にリード孔が形成されたことが確認された後、ガイドが椎骨上から除去されて、螺子孔のねじ切り(タッピング)が行われ、その後、適切な長さの椎弓根螺子が挿入される
【0034】
(第2実施例)
図2は、本発明の第2の実施例による椎弓根プローブの刺入を支援するガイドを示す図1に類似の図である。この実施例は、図1の実施例と、基部の形状および基部と第1連結部との接続の仕方が異なるだけである。したがって、図2中、図1に示したものと同じ構成要素には同一番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0035】
図2の実施例では、基部2’は第1連結部3側に向かって大きく湾曲し、その頂点部分2c’が、直接、第1連結部3に接続され、よって、図1の実施例の第2連結部4は省かれている。そして、基部2’の頂点部分2c’と第1連結部3との接続部に、押圧面8が設けられる。
【0036】
このように、基部の形状および基部と第1連結部との接続の仕方を変更することによって、個々の椎骨の形状により適合した構造のガイドを実現することができる。
この実施例もまた、図1の実施例と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b ガイド筒
1c、1d 下端開口縁
2、2’ 基部
2a、2a’ 一端
2b、2b’ 他端
2c、2c’ 頂点部分
3 第1連結部
4 第2連結部
5a、5b 第2支持面
6 第1支持面
7a、7b 第3支持面
8 押圧面
9 情報
10 椎弓根螺子挿入孔
11 椎弓
12 棘突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎固定術における椎弓根螺子挿入に際し、予め選択された椎骨の椎弓表面から左右の椎弓根内への椎弓根プローブの刺入を支援すべく、前記椎骨の所定部位に置かれて押圧固定されるガイドであって、
前記ガイドの全体が、患者のCT画像データに基づき、ラピッド・プロトタイピング技術を用いて形成されており、前記ガイドは、
互いに起立状態で間隔をあけてかつ所定の角度をなして配置され、それぞれを椎弓根プローブが遊びを伴って貫通し得る一対のガイド筒と、
棒体からなり、一端が一方の前記ガイド筒に接続され、他端が他方の前記ガイド筒に接続されるとともに、前記一対のガイド筒が位置する平面から、実質上逆U字または逆V字状に突出する基部と、
棒体からなり、前記一対のガイド筒を、前記基部との接続部より上方の位置で互いに連結する第1連結部と、を備え、
前記基部の頂点部分が前記第1連結部に接続され、
前記一対のガイド筒の下端開口がそれぞれ形成すべき左右の椎弓根螺子挿入孔に整合するとともに、前記基部の頂点部分が前記椎骨の棘突起の先端部を横切り、かつ前記基部の左側および右側部分が前記棘突起の両側に沿ってのびるような配置で、前記椎骨の所定部位に押圧固定されるようになっており、
前記一対のガイド筒の下端開口縁はそれぞれ、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する形状を有し、前記基部の前記頂点部分には、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記棘突起の先端部に隙間無く接触する第1支持面が設けられ、前記基部の前記左側および右側部分には、それぞれ、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する第2支持面が設けられていることを特徴とするガイド。
【請求項2】
前記基部の頂点部分と前記第1連結部との接続部には、前記一対のガイド筒の軸を横切る面上に位置する押圧面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガイド。
【請求項3】
前記押圧面には、前記ガイドと前記椎骨との対応関係を示す情報が表示されていることを特徴とする請求項2に記載のガイド。
【請求項4】
前記基部の頂点部分が、棒体からなる第2連結部を介して前記第1連結部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のガイド。
【請求項5】
前記第1連結部と前記第2連結部との接続部には、前記一対のガイド筒の軸を横切る面上に位置する押圧面が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のガイド。
【請求項6】
前記押圧面には、前記ガイドと前記椎骨との対応関係を示す情報が表示されていることを特徴とする請求項5に記載のガイド。
【請求項7】
前記第1支持面および前記第2支持面は、ほぼ円形または楕円形または多角形の輪郭を有していることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のガイド。
【請求項8】
前記基部の前記左側および右側部分のそれぞれに、前記ガイドが前記椎骨の所定部位に押圧固定されたとき、前記椎骨の椎弓に隙間無く接触する第3支持面が、前記第2支持面から間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のガイド。
【請求項9】
前記第3支持面は、ほぼ円形または楕円形または多角形の輪郭を有していることを特徴とする請求項8に記載のガイド。
【請求項10】
前記ガイドの全体が、チタンまたはチタン合金から形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のガイド。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125274(P2012−125274A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276579(P2010−276579)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(593022076)佐川印刷株式会社 (18)
【Fターム(参考)】