説明

椎間板の治療又は除去のための装置及び方法

【課題】カテーテルによって椎間板にさらなる損傷を与えてしまわない椎間板内部の治療方法。
【解決手段】関節鏡検査により、椎間板の輪状壁4内側に、特に椎間板の輪状壁内側の後部及び後側部に弓状カテーテル14を配置する方法が提供される。弓状カテーテルはカテーテルに対して圧や力を加えない状況で所定の弓状形を維持する。本方法に用いる装置及び方法は、哺乳類の椎間板の輪状壁内側に対して先端部の前方向圧を必要としない。カッターを有する弓状シース12は、椎間板の輪状壁内から組織を除去するために使用される。他の実施形態では、哺乳類の椎間板の内部から徐々に物質を取り除くために弓状のシースが使用される。さらに他の実施形態では、椎間板全体を取り除いてそのスペースを維持する支持材と置き換えるために弓状のシースとカテーテルが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月23日に提出された米国仮特許出願第60/564,838号
の利益を主張する。
本願は、2004年5月20日に提出された米国仮特許出願第60/572,930号
の利益を主張する。
本願は、2004年7月9日に提出された米国仮特許出願第60/582,627号の
利益を主張する。
本願は、2004年7月16日に提出された米国仮特許出願第60/588,582号
の利益を主張する。
本願は、2004年7月23日に提出された米国仮特許出願第60/588,587号
の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は椎間板内容物の除去および治療に関する。
【背景技術】
【0003】
椎間板は外側の線維輪と内側の髄核から構成されている。健康な線維輪は同心円輪状に
10〜20層重なったコラーゲンと髄核を取り巻く弾性線維から成り、一方、健康な髄核
は卵型をしており、線維輪の境界線のゼラチン状の粘性タンパク質とで構成されている。
【0004】
健康な椎間板では、髄核は厚く、内壁も強く特段の欠損も認められない。加齢や外傷に
より線維輪に多重かつ多様な欠損が起き、髄核にも変化が起こる。これらの欠損が多くの
人々にとっての痛みの原因である。実際に痛みを引き起こす損傷として広く認められてい
るのは、後部あるいは後側部の欠損である。さらに症候性の欠損でも最も一般的なものは
、後部(posterior)及び/又は片側の後側部(postero-lateral)の欠損である。後部及び両
側後外側の症候性欠損も存在はするがあまり一般的ではない。一方、内側の環状壁に沿っ
た損傷を伴った変性変化はその他の多様な箇所(前部、前側部の片側又は両側及び片側部
又は両側部)に一般的に見られる。これらの欠損は無症候性だが、一般的なものと理解さ
れている。
【0005】
高周波は椎間板損傷の治療に使われている。内部の線維輪壁に隣接した髄核を回避する
ように前方向圧を加えられ、治療しようとする側と反対側の線維輪壁にも前方向圧がかか
り、すなわち前方向圧が治療をしようとする輪状組織を通過する。
【0006】
カテーテルは内側の輪状壁に隣接した髄核の内部近辺まで入れられる。しかし、治療を
必要とする椎間板領域において、正常な椎間板とまれに接触してしまう。その結果として
、カテーテルの先端は、折り曲げ及び/又は先端を覆ったものであっても壁に傷をつけや
すく、挿入が困難または不可能である。これはカテーテルのよじれ(典型的には抜き去る
時に起こる)を生じ、欠損部に引っかかったり(損傷を悪化させるおそれがある)、輪状
壁を貫通したり(輪状壁に欠損を作り出し、さらに神経や血管構造を破壊する危険がある
)、最終的には意図した治療は不十分または不可能である。さらに、そのような状況では
カテーテルによって椎間板にさらなる損傷を与えてしまう。カテーテルで不注意に調査し
た損傷部は、さらに治療を必要とする損傷となりうる。前部(anterior)、前側部(antero-
lateral)、または側部(lateral)の壁の損傷に不注意にも同様に侵入し、処置の中断が起
こる。変性した椎間板壁は一般にこのような複数の損傷を含んでおり、壁の菲薄化に加え
て、非常に多くの場合それらの損傷が貫通してしまっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヒト脊椎の部分側面図を示す図である。
【図2】図1の線2−2の断面図である。
【図4】導入針、非伝導性シース、スタイレット、カテーテルの分解図である。
【図5】スタイレットを所定の位置につけ椎間板の線維輪に挿入された導入針を示す。
【図6】スタイレットをはずした導入針を示す。
【図7】導入針に挿入して貫通させた非導電性シースとそのシースを通してさらにS字型カテーテルを示す。
【図8】シースを通して必要に応じて伸長されたS字型カテーテルを示す。
【図9】カテーテルを配置するために引き抜かれた導入針とシースを示す。
【図10】抜き去られた導入針とシースと、線維輪の損傷部に対して配置されたカテーテルを含む。
【図11】椎間板から取り外された装置と、塞がれた医原的に作られた損傷を示す。
【図12】導入針を挿入するときの椎間板に対する許容角度の範囲を示した図である。
【図13】図5〜11で示したものとは異なる角度で線維輪に貫通された導入針を示す。
【図14】別角度で椎間板内に導入針を挿入した図である。
【図15】物質を施すことのできる複数の穴が開いているカテーテルを示す。
【図16】シースの中に挿入されたポートつきの導入針の断面図である。
【図17】椎間板内に物質を挿入できる又は椎間板内から吸引等により除去できるポートつきの導入針の断面図及び内部のカッターを示す。
【図18】導入針と、椎間板に挿入されたスタイレットを示す。
【図19】輪状壁内側に接触して曲がっている柔軟な先端部を示す。
【図20】椎間板から物質を除去するために使用できるカッターを示す。
【図21】カッターを用いて洗浄/吸引により椎間板の物質の一部を取り除いた図を示す。
【図22】椎間板から物質を除去する進行工程を示した図である。
【図23A】椎間板から物質を除去するさらに進行した工程を示した図である。
【図23B】椎間板から物質を除去するさらに進行した工程を示した図である。
【図24】椎間板から物質を除去するよりさらに進行した工程を示した図である。
【図25】套管針を中に通した導入針の断面図である。
【図26】開創器を中に通した導入針の断面図である。
【図27】哺乳類脊椎の斜位像である。
【図28】開創器を配置した哺乳類脊椎の斜位像である。
【図29】シースの断面図である。
【図30】所定の位置に配置されたカッター、光ファイバー源及び洗浄吸引装置つきの導入針とシースの断面図を示す。
【図31】本発明の方法により一部を吸引除去した哺乳類椎間板の平面図を示す。
【図32】椎間板内に配置された支持部材を示す。
【図33】本発明の方法によりさらに進んだ椎間板内の吸引除去の工程を示す。
【図34】支持部材を椎間板内に配置された追加の支持部材を示す。
【図35】本発明の方法によりさらにより進んだ椎間板内の吸引除去の工程を示した図。
【図36】椎間板内に配置された追加の支持部材を示す。
【図37】本発明の方法によりさらにより進んだ椎間板内の吸引除去の工程を示す。
【図38】本発明の方法によりさらにより進んだ椎間板内の吸引除去の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面に基づいて説明すると、図1は哺乳類の脊椎の部分図であり、特にはヒトの脊椎(
2)である。図2は、図1の2−2の線で切断して得られる断面図であり、ヒト脊椎椎間
板の線維輪壁(4)が示されている。輪状壁の内側はでこぼこして又はギザギザしており
、これは加齢及び/又は疾患による外傷である。(6)の番号の付された椎間板の一部分
の治療がそのような状態のために必要とされる。椎間板及び治療される領域の椎間板輪状
壁付近へのカテーテルの挿入は、カテーテルの先端が輪状壁の内側のでこぼこして又はギ
ザギザした部分に引っかかりやすいため困難である。カテーテルは椎間板の治療しようと
する箇所に対して横向きに沿わせるように、椎間板内に挿入するカテーテルが最短になる
ように、しかも治療しようとする椎間板の箇所にカテーテルをしっかりと密着させること
が望ましい。椎間板への挿入角度は、動作状態の周波数帯と針の配置に適合するように最
大にする必要がある。本実施形態において治療を必要と判断した椎間板の部位は後側部(
片側又は両側)プラスマイナス後部壁である。
【0009】
図4は本発明の装置の基本構成を示したものである。スタイレット(8)は導入針(1
0)の中に挿入される。シース(12)を形成する管も続いて導入針に挿入され、S字型
に予備形成されたカテーテル(14)はシースを介して挿入される。
【0010】
スタイレットと導入針は、治療箇所の反対側の椎間板輪状壁後部から椎間板内への挿入
ルートを作る。スタイレットは挿入される導入針内に組織が蓄積されることを防ぐ目的と
する。
【0011】
導入針は蛍光透視鏡下で上関節突起の側方に挿入される。線維輪を貫通し、熟練した操
作者が判断できるとおり椎間板の約1/3から1/2の深さと判断した深さまで、まず導
入針を進めてもよい。
【0012】
図5はスタイレットを入れた導入針を配置した図である。スタイレットの鋭く尖った先
端部は導入針とともに椎間板壁を通過する。その後、スタイレットを取り除く(図6)。
【0013】
椎間板輪状壁にスタイレットと導入針を貫通させ椎間板内に進入した後、スタイレット
を取り外し、管(シースであってもよい)と入れ替える。あらかじめS字型に作られた形
状維持特性のあるカテーテルはまっすぐなシースの中に入れられる。まっすぐなシースは
導入針を介して椎間板内に挿入される。カテーテルはシースの壁からの圧力によりまっす
ぐに伸びるが、シースから出ると元のS字型に戻る。
【0014】
シースは導入針と外部の末端で所定の位置に固定する。所定の位置に固定すると、カテ
ーテルシースは導入針の先端から突出する。シースは髄核にしっかりと封じ込められて留
まり、裏側の繊維輪壁には近接しないが、カテーテルの配置上必要があればさらに挿し込
んだり引き戻したりすることができる。
【0015】
カテーテルの加熱された部分がシースに接近又は接触しても椎間板外の組織及び構造を
誤って加熱することのないように、シースは断熱特性を持つ非伝導性素材から作られてい
ることが好ましい。シースはまっすぐであっても、あるいはわずかに曲がっていてもよく
、スタイレットを取り外しても導入針を介して挿し込むことが可能であってもよい。シー
スは、カテーテルの部分がシース内にある間カテーテルの部分がまっすぐな形状を維持す
るのに十分な固さを有する。シースは外部から、導入針の中にあるシースの上部を挿し込
み口にて固定することができる。
【0016】
非伝導性カテーテルシースは不注意による導入針の加熱を確実になくすことができる。
熱は皮膚、皮下組織、脂肪、筋肉、さらには神経にも不要な損傷を与えかねない。
【0017】
図6で示すように導入針を椎間板内に配置した状態で、シースは導入針の管内に挿し入
れられる。図7ではシースを介してカテーテルが挿入されている。S字型カテーテルはシ
ースから出て椎間板内に入ると、その形状維持特性のために、圧力のかからない状況下で
は図7で示すようにS字型の形状をとる。図8ではカテーテルは引き続き挿し込まれ、治
療部位である後側部の側部繊維輪壁に接触している。カテーテルの挿入状況は蛍光透視鏡
によって監視してもよい。
【0018】
図9にはカテーテルを挿し進めながら導入針を椎間板から抜き去る工程を示す。この組
み合わせた動作によってカテーテルを治療しようとする後側部や後部の繊維輪壁まで動か
すことができる。図で示すように、カテーテルが治療部位に配置されるまで導入針とシー
スを抜き取る。シースとカテーテルの配置は蛍光透視鏡によって監視してもよい。
【0019】
図10で示すように、カテーテルが治療しようとする後側部の壁に配置されたままにな
るように導入針を引き抜く。治療される後側壁は導入針が貫通している後側壁の反対側に
位置する。熱又は高周波はカテーテルにより与えることができる。他の治療手段が適切な
カテーテルを用いることにより与えられてもよい。図11で示すように、カテーテルがそ
のあと取り除かれてもよく、導入針も椎間板から取り除かれる。カテーテルの先端は針挿
入部の損傷をふさぐために別途加熱して用いることもでき、又はS字型カテーテルを除去
して先端に加熱端子を有するまっすぐのカテーテルに入れ替える。先端を加熱し、導入針
−シース−カテーテル複合物を引き抜きながら針挿入部の損傷をふさぐ。あるいは先端に
口を有するカテーテルは、針挿入部の損傷の封止剤を注入するためにも用いることが可能
である。
【0020】
鋭角と鈍角の両極端の間の針の配置に関して、使用するカテーテルに対するシースの長
さは、カテーテル先端部が反対の側部壁に接触するであろう場所を決定する。カテーテル
を治療しようとする側の側部壁の中間位置に接触した状態にする地点の認識と、蛍光透視
鏡下での進行状況をモニターすることによってカテーテルの理想的な配置を可能とする。
【0021】
カテーテルの椎間板内に挿入しようとする部位は、カテーテルに物質的な圧力や与えら
れる力がないときにはS字型である。カテーテルはニチノールから作られていてもよく、
まっすぐな管内やシースの中を通すのには十分に柔軟であるが、椎間板内部においては弓
状又はS字型に戻る。またカテーテルは椎間板壁に配置したとき、椎間板後壁などの壁の
形状にあわせる柔軟性が必要である(図10)。
【0022】
S字型カテーテルは医師に損傷のある椎間板後壁、特に後側壁の治療を、カテーテルを
椎間板前壁に触れさせることなく可能にさせる。この装置と方法により、多くの裂け目が
ありカテーテルを壁に沿って挿入するのが困難なほど荒れている線維輪の内側にカテーテ
ルの末端又は先端が引っかかることを防ぐことができる。S字型カテーテルによりカテー
テルが椎間板内に導入されることを可能とし、椎間板の損傷に妨げられることなく導入針
とカテーテルを操作することによって配置することが可能となる。S字型は、カテーテル
の挿入角度が次善の場合であっても、椎間板の後側部に対してカテーテルをしっかりと接
触させることを助長する。加えて、S字型は典型的には破片で満たされた椎間板内部の多
くの部分をカテーテルが横切るのを遅らせる。これによって治療しようとする線維輪壁の
内側部分に対する破片の「持ち込み(shoveling)」を最小限度にする。
【0023】
カテーテルは様々な長さの加熱部を含んでいてもよい。これらのどの種類のカテーテル
でも、決定的な加熱部位は先端に存在してもよく、これは線維輪壁から取り出す際のスポ
ットシーリングに使われる。さらなる実施例では加熱部を先端に持つまっすぐなカテーテ
ルもある。
【0024】
カテーテルを引き抜く際、カテーテルの末端又は先端は線維輪壁から取り出されるにつ
れまっすぐになる。先端(16)によるこの位置のスポット加熱は導入針とカテーテルに
より作られた損傷をふさぐ。
【0025】
図12は導入針を椎間板内に挿入する際の可能な針挿入の角度範囲(18)を示してい
る。可能な角度範囲は約70度であるが、少なくとも45度以上である。カテーテルのS
字型構造のため、導入針の厳密な挿入は必要ではない。
【0026】
図13で示すように、新規な方法に従ってS字型カテーテルを使用することで、図10
で示したものとは導入針の角度を変えた場合にも満足の行く結果が得られる。同様にして
図14で示す角度に変えることもできる。導入針は図14で示す場所から線維輪壁の内部
または後部へと引き抜くことができ、S字型カテーテルは上で述べた方法により椎間板後
側壁に配置することが可能である。
【0027】
カテーテルは椎間板治療のために熱又は高周波を提供してもよい。装置と方法は他の治
療への応用も可能である。さらに、カテーテル(20)は椎間板内へ接着剤、封止剤又は
充填剤のような物質を提供する目的で多数の孔を有してもよい(図15)。線維輪壁のひ
びや裂傷を含む損傷部位を熱的にではなく化学的に密封するために、薬剤(22)はカテ
ーテルを介して患部に注入されうる。圧力計や光ファイバーによる観察もこのカテーテル
システムでは使用可能である。
【0028】
図16は本装置の第二の実施形態を示し、シースにはポート(32、34)がついてい
る。スタイレットは本実施形態の導入針所定の位置に示される。スタイレットと導入針は
図18で示すように椎間板壁内部に接近するために使用される。
【0029】
椎間板内に挿入後、スタイレットは引き抜いて取り外す。シースのポートは椎間板内に
物質を注入、又は椎間板から物質を除去するために使用されてもよい。椎間板からの物質
の除去にはポートからの吸引が適用されてもよい。
【0030】
図19では柔軟に変形可能なシースの先端を示す。先端の変形により、蛍光透視鏡によ
り可視化されることができ、線維輪壁の内側に当たるようになっている。ある実施形態に
おいて、シースが反対側の線維輪壁の内側に接触して折れ曲がるためには、シースの突出
は5mmで十分である。シース先端の折れ曲がりは椎間板に導入針複合物を挿入した入り
口のすぐ向かい側の輪状壁による境界を定める。輪状壁の内側の限界は蛍光透視鏡により
観察し確認されてもよい。
【0031】
図17で示すように、回転式カッター(36)はシースの中に入れられる。回転式カッ
ターは導入針を抜き去る際に物質を取り除くのに使われる(図21)。その他の様式のカ
ッターも使用が可能である。
【0032】
導入針、シース及びカッターの複合物が髄核内にある時、柔軟性シースの先端は外部操
作により導入針から突出するように挿し入れていく。ネジ込みプローブはシースから2〜
3mm突出している。回転式ネジ込みプローブは線維輪壁の内側で回転させて使用する。
回転しているネジ込みプローブの最初の「通過」は、既に定められたように導入針/シー
ス先端が輪状壁を貫通した場所まで導入針/シース/プローブ複合体を直線的に引き抜く
ことで完了する。複合体は続いて再び、あらかじめ蛍光透視鏡により既に定められた反対
側の輪状壁の内側まで挿入される。導入針はあらかじめ決定した距離まで、ある実施形態
においては例えば5mmの距離まで引き抜きながら、シース/プローブはその現在の位置
を維持する。複合体は再びプローブを回転させながら引き抜かれる。さらなる物質が、芝
生を刈るように取り除かれる。一回目と二回目のプローブの引き抜きの間にさらに物質が
残る場合には、引き抜きの距離を、例えば5mm以下に変更することができる。一連の方
法で、複合体を挿入し、導入針(40)を引き抜き、プローブの回転を開始し、導入針の
先端が線維輪壁に挿入された地点までシース/プローブつづいて導入針部分を引き抜く。
シースはS字型であるため、シースが導入針の先端から短く突出している場合には弓状と
なる。徐々に長く突出されたシースの部分はS字型に変化する。この過程で、もともと存
在した髄核の約半分を徹底的に吸引除去する。この時点で、シース/プローブを導入針の
中に戻す。続いてシース/プローブを導入針の中で180度回転させる。そして残りの反
対側の半分に対しても同様の作業を繰り返す。物質(生理食塩水であってもよい)をポー
ト(32)からシースに注入し、ポート(34)から吸引することで髄核内容物の除去が
促進される。
【0033】
シースはあらかじめS字型をしており、S字型として形状は記憶されている。したがっ
て、回転式カッターが導入針から伸ばされるにつれて、シースはわずかに曲がり続け、図
21で切り取られた付近にある内容物(42)も取り除くことができる(図22)。回転
式カッターが内容物を切り出しながら、導入針のポート(34)を介して洗浄/吸引を行
う。一方のポートから物質(生理食塩水であってもよい)を注入することができ、もう一
方のポートは椎間板から残骸を含む物質を吸引又は除去するのに使用できる。S字型シー
スの導入針(40)から出ている部分の長さが伸びることにより、カッターがシースから
さらに伸びた状態で、追加の通過によりさらに椎間板から物質を除去することができる。
図23はカッターを6回通過させ、7回目の通過を始めようとする状態を示している。そ
れぞれの通過で、シースの弓状の形により徐々に椎間板内容物を取り除くことが可能であ
る。導入針からより短く突出させたシースの部分は、必要であれば椎間板内のいたるとこ
ろに無限に進路をとることが可能であり、髄核の物質の除去が可能となる。
【0034】
椎間板の片側の物質を除去した後、カッターは導入針に収納される。椎間板の反対側に
S字型カッターが入るようにカッター及び/又はシースを180度回転する。カッターを
収納したシースは椎間板から物質を所望のとおり取り除くまで必要な通過回数だけ導入針
から伸ばされる。
【0035】
図25は套管針(50)を入れた導入針(52)を示す。套管針は比較的大き目のスタ
イレットであってもよい。図26は導入針の中に入れた開創器(54)を示す。開創器は
神経根を操作する。
【0036】
図27は哺乳類脊椎の椎骨(58)と、さらに別の椎骨(60)と、その間にある椎間
板(62)を示す。さらに椎弓根(64)、上関節窩(68)、下関節窩(66)も示す
。神経根(56)は椎間板を横切るように示されている。図で示すとおり、神経根は椎間
板に接近するのを妨害する位置に存在する。図27は椎間板内処置の際に蛍光透視鏡によ
り可視化された斜位像である。神経根は蛍光透視鏡により見ることができないが、熟練し
た技師にはその場所は知られている。
【0037】
套管針は皮膚やその他の組織に刺して貫通させるために用いる。神経根に到達すると、
套管針は取り除かれ、開創器が挿入される。開創器は神経根を持ち上げ、導入針の進路か
ら避けて、椎間板への接近を妨害しないようにする(図28)。
【0038】
一旦開創器により神経根を導入針の上方に避けたら、導入針から開創器を取り外しても
よく、再び套管針を挿入する。挿入針の上方に神経根を配置した状態では、套管針又は導
入針を椎間板に挿し入れても神経根に傷をつけることはない。套管針は導入針を椎間板に
接近させるために椎間板を貫く。
【0039】
図29は傷害のある椎間板を本記述の方法により吸引除去するために使用されるシース
(70)の断面図である。本実施形態ではシースは3つの管腔を持つ。第一の管腔(72
)は光ファイバーケーブルの導管として用いる。カッターが椎間板内で作業部位を供給さ
れる第2の管腔が提供される。カッターはレーザーカッター又は回転式カッターのような
機械的なカッターを使用できる。
【0040】
第三の管腔(76)は比較的大きく、洗浄と吸引のための導管を提供する。この管腔を
介して生理食塩水又はその他の物質を椎間板内の作業部位に注入できる。切除した組織と
それに付随する血液その他の物質は管腔(76)から吸引除去される。
【0041】
図30は光ファイバー光源(78)、カッター(80)と、洗浄と吸引のための導管(
82)を示す。
【0042】
導入針は上記の通り椎間板壁を貫通する。導入針が椎間板の後側壁(84)を貫通して
いる状態を図31に示す。シースは導入針を介して椎間板内に配置されている。最初の段
階ではシースの先端は導入針の先端からわずかに突出させた状態で配置する。カッター、
光ファイバー、そして洗浄と吸引を作動させる。導入針と一体化した集合体は、椎間板の
反対側壁(86)(今回の場合は椎間板の前側部である)に向かって押し進め、図31で
示すように椎間板髄核と椎間板壁を取り除く。シースに圧力が負荷されていない時には、
物理的に伸ばしたシースはS字型になるので、シースをわずかに導入針から伸ばすにつれ
て少しずつシースの曲がりが生じる。したがって、導入針からわずかにシースを押し進め
た際にシースが弓状になるため、図31で示す断面は、垂直ではなくいくらか円錐状であ
る。
【0043】
排出は外側に向けて進行する。椎間板を除去する際、支持材は隣接している脊椎から提
供されなければならない。図32は、シースを取り外した状態のカッターと、挿入又は配
置器具を用いて配置された支持材又は支柱(88)とを示す。支持材又は支柱は、例えば
生理食塩水を用いることで膨張させることができる。したがって、支持材又は支柱にはバ
ルーン又はブラダー(bladder)を用いることができる。
【0044】
シースは徐々に伸ばされ、一般的には導入針を直線的に椎間板の外と中を直線的に行き
来させて連続的な切除を行う。図33に示すように、連続的な切除により椎間板と付随す
る髄核(90)(pulposa)は、導入針から片側の部分においてすべて十分に取り除かれる
。必要があればカッターをシースから取り外してもよく、椎間板内に支持材又は支柱を配
置するための配置器具を挿入する。
【0045】
椎間板の片側を連続的に除去した後、シース及び/又は導入針とシースは180度回転
される(図35)。カッターはシースの中に配置される。さらなる連続的な通過は導入針
とシースを、個別に、又は一群の装置として操縦し前進させることによりカッターを配置
することで行われる。導入針から離れた椎間板の部位を各通過ごとに除去するために、シ
ースは各通過ごとに徐々に伸長される。
【0046】
シースがS字型であることにより、導入針を挿し入れてできた椎間板の空間からみて直
線的な方向に挿入針を抜き挿ししても、導入針の両側を補って椎間板の物質を除去するこ
とが可能となる。シースのS字型は、シースが導入針から徐々に伸ばされるにつれて、カ
ッターを側方向に届かせることができる。本実施形態のシース、図4から図15に示され
るカテーテル、図23と図24に示されているシースは、それぞれ、カテーテル又はシー
スに対して圧力が加わらない時、S字型をとる。本明細書に示される本発明の各実施態様
におけるカテーテル又はシースは、カテーテル又はシースに対して物理的圧力が加わらな
いときには、S字型に戻るような形状記憶特性を持つ。しかし、カテーテル又はシースが
導入針の中にあるとき、またはカテーテルの場合にはカテーテルのためのシースの中にあ
るとき、S字の部分はまっすぐに伸ばされた形になり、しかし直線的な管から出されると
カテーテル又はシースはS字型に戻る。
【0047】
図に示されるように好適な実施形態の処理を進めていくと、図37は、導入針からわず
かに突出したシースによる最後の切除作業を示している。図38では椎間板除去のために
さらにわずかに導入針から突出したカッターが使われている。しかし実際には、椎間板を
完全に除去するために、このカッターが必要であるかもしれない。椎間板の対象とする損
傷部位だけを本明細書に記載された方法により取り除く場合には、椎間板を適当な位置に
支柱としていくらか残しておくことが望ましいかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カテーテルを前記椎間板内部に挿入するステップと、ここで、哺乳類の椎間板内部
におけるカテーテルの部分は、前記カテーテルに物理的圧力が加えられないとき、S字型
を形成する
b)前記椎間板内部に対して治療処置を行なうステップと、
c)前記哺乳類の椎間板からカテーテルを抜き去るステップと
を含む、哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項2】
前記哺乳類の椎間板の後側壁を通して配置された管を介して前記哺乳類の椎間板に前記
カテーテルを挿入し、前記管の中に存在する間は、前記カテーテルの少なくとも一部は通
常直線状であり、前記管の反対側の後側壁に十分達する長さとなった後に前記カテーテル
がS字型を形成する、請求項1に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項3】
前記カテーテルが治療のための所定位置にあるときには、前記哺乳類の椎間板の前壁に
前記カテーテルは接触せず、前記哺乳類の椎間板の前側壁は前記前壁の一部ではない、請
求項1に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項4】
前記哺乳類の椎間板の後壁に向けて前記哺乳類の椎間板内部に存在する前記管の末端を
引き抜くことにより、前記カテーテルが前記哺乳類の椎間板の後側壁に対して配置される
、請求項2に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項5】
前記カテーテルが、前記哺乳類の椎間板内部の前方部に接触しない、請求項1に記載の
哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項6】
a)哺乳類の椎間板壁を通して前記哺乳類の椎間板内部に導入針を挿入するステップと

b)前記導入針に管を挿入するステップと、
c)前記管を介して前記哺乳類の椎間板内部に伸長するカテーテルを挿入するステップ
と、ここで、前記哺乳類の椎間板内部における前記カテーテルの部分は弓状形であり、前
記カテーテルに圧力が加えられないとき、前記カテーテルは前記弓状形を維持する形状記
憶特性を有し、
d)前記哺乳類の椎間板の後壁内部に対して前記カテーテルを配置するステップと、
e)前記哺乳類の椎間板の前記後壁に対して治療措置を行うステップと、
f)前記哺乳類の椎間板内部から前記カテーテルを抜き去るステップと
を含む、哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項7】
前記哺乳類の椎間板の後壁を通して前記管を配置し、前記哺乳類の椎間板内部に配置さ
れた前記カテーテルの部分は前記管を通して進む間は通常直線状であり、管の反対側の後
側壁に達するのに十分な長さが前記カテーテルから出た後に、前記哺乳類の椎間板内部に
存在するカテーテルは弓状形となる、請求項6に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項8】
前記カテーテルが治療のための所定位置にあるときには、前記哺乳類の椎間板の前壁に
前記カテーテルは接触せず、前記哺乳類の椎間板の前側壁は前記前壁の一部ではない、請
求項6に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項9】
前記哺乳類の椎間板の後壁に向けて前記哺乳類の椎間板内部に存在する前記管の末端を
引き抜くことにより、前記カテーテルが前記哺乳類の椎間板の後側壁に対して配置される
、請求項6に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項10】
前記哺乳類の椎間板壁に突き当たって変形する前記カテーテルの末端の先端をさらに含
む、請求項1に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項11】
前記哺乳類の椎間板壁に突き当たって変形する前記カテーテルの末端の先端をさらに含
む、請求項6に記載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項12】
前記カテーテルを前記哺乳類の椎間板内部から引き抜く際に、前記カテーテルを通じて
いた前記前記哺乳類の椎間板壁の孔隙をふさぐために熱を加える、請求項1に記載の哺乳
類の椎間板内部の治療方法。
【請求項13】
前記カテーテルを前記哺乳類の椎間板内部から引き抜く際に、前記導入針を通じていた
前記前記哺乳類の椎間板壁の孔隙をふさぐために熱を加える、請求項6に記載の哺乳類の
椎間板内部の治療方法。
【請求項14】
前記カテーテルに物理的圧力が加えられないとき、前記哺乳類の椎間板内部における前
記カテーテルの部分はS字型を形成している、請求項6に記載の哺乳類の椎間板内部の治
療方法。
【請求項15】
前記カテーテルを前記哺乳類の椎間板壁に45度以上の角度で挿入する、請求項1に記
載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項16】
前記カテーテルを前記哺乳類の椎間板壁に45度以上の角度で挿入する、請求項6に記
載の哺乳類の椎間板内部の治療方法。
【請求項17】
a)管と、
b)前記管を通って伸長するカテーテルと、ここで、前記哺乳類の椎間板内部に挿入さ
れた前記カテーテルの部分はS字状であり、前記カテーテルに物理的圧力が加えられない
とき、前記カテーテルは前記S字状を維持する形状記憶特性を有する、
を含む哺乳類の椎間板内部で使用される装置。
【請求項18】
スライド可能なように前記管にはめ込んだ導入針をさらに含む、請求項17に記載の哺
乳類の椎間板内部で使用される装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−143577(P2012−143577A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51909(P2012−51909)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2007−509725(P2007−509725)の分割
【原出願日】平成17年4月23日(2005.4.23)
【出願人】(506355604)
【Fターム(参考)】