説明

椎骨または他の骨を安定化するための安定化装置

【課題】椎骨または他の骨を安定化するための安定化装置を提供する。
【解決手段】安定化装置は、異なる直径を有する少なくとも2つのロッドと、骨に係止するための軸および頭部を有する固定要素と、少なくとも2つのロッドから1つのロッドを固定要素に接続するための受け部とを含む。受け部は、上端部および底端部と、ロッドを受けるためのチャネルを備えたロッド受け部と、骨固定要素の頭部を収容するための頭部受け部とを含む。頭部受け部は、開口端を有し、頭部の差込みおよびクランプを可能にするように可撓性がある。受け部はさらに、頭部受け部を囲むロックリングを含む。頭部は、ロックリングを開口端の方に移動させるようにこのロックリングをロッドで押圧することによってクランプされる。ロックリングは、少なくとも2つの別個の接触区域において円周方向にロッドの各々と接触するよう構成された表面部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨固定装置と、直径の異なる少なくとも2つの安定化ロッドとを含む、椎骨または骨を安定化するための安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱を安定化させるために、骨に係止される軸とロッドに接続される頭部とを備える骨固定装置が公知である。通常、ロッドはいくつかの骨固定装置を接続する。医学的適応と、安定化すべき脊椎の領域とに応じて、異なる直径を有するロッドが必要とされる。ロッドの直径は3mmから6mm以上の範囲である。一般に、脊椎の下方部分に用いられるロッドの直径は、脊椎の上方部分に用いられるロッドの直径よりも大きい。たとえば、脊椎のうち頚部から胸部の領域においては、直径3mm〜3.5mmのロッドが必要であり、頚部から胸部の領域と胸部から腰部の領域との間における移行部分においては、直径3.5mm〜4.5mmのロッドが必要であり、胸部から腰部の領域においては、通常4.5mm〜5.5mmのロッドが必要であり、腰部から仙骨の領域においては、直径5mm〜6.35mmのロッドが必要である。
【0003】
或る直径を有する各々のロッドの場合、茎ねじなどの特定の骨固定装置が必要とされる。これらの装置は、特にロッドが挿入される凹部の寸法が互いとは異なっている。さまざまな骨固定装置を設けることにより、コストが高くなり、外科医にとって脊椎手術がより複雑になってしまう。
【0004】
US5,873,878は、堆骨に取付けるための固定部材を開示している。この固定部材は、第1の直径を有する第1のロッドと、より小さな第2の直径を有する第2のロッドとともに用いられる。固定部材は、より小さな直径を有するロッドを挿入することを可能にするように、固定部材の頭部に挿入することのできる挿入部材を備える。
【0005】
EP2070485A1は、それぞれ異なる直径を有するロッドと用いることのできる単軸の骨固定装置および多軸の骨固定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US5,873,878
【特許文献2】EP2070485A1
【特許文献3】EP2201903A1
【特許文献4】DE19912364A1
【特許文献5】DE4110002C1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、システムのモジュール性がさらに改善された、椎骨または骨のための安定化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の安定化装置によって解決される。さらなる展開例が従属請求項に記載される。
【0009】
安定化装置によれば、実際の臨床要件に従った要求に応じて、さまざまな固定要素を如何なる好適な受け部および如何なる好適なロッドとも組み合わせることを可能にするモジュラーシステムを提供することができる。これにより、多軸ねじのコストが低下し、在庫が減り、移植という実質的な選択肢が外科医に与えられる。
【0010】
安定化装置の組立ては、如何なる専門家によっても、たとえば、手術前または手術中に外科医または外科医を支援する如何なる要員によっても実行することができる。
【0011】
固定装置は、異なる直径を有するいずれのロッドのクランプも安全に実行されるという利点を有する。クランプ力はロッドの直径に左右されない。また、異なる直径を有するロッドのクランプは無段階で実現される。
【0012】
さらに、骨固定装置は部品の数を最小限にするよう構成されているため、さまざまなロッドを固定できるようにするのに部品を追加する必要はない。
【0013】
安定化装置は、たとえば、小児の脊柱側弯症の補正に用いることができる。脊柱側弯症の補正を受けた小児が成長すると、脊柱側弯症の補正装置を適合させる必要が生じる可能性がある。たとえば、初めに挿入されたロッドよりも大きな直径を有する他のロッドを用いる必要が生じる可能性がある。本発明に従った安定化装置によれば、2回目の外科手術において、骨固定を椎骨に係止したままで、初めに用いられていたロッドを交換することができる。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面によって実施例の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施例に従った、第1のロッドを備えた安定化装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1の安定化装置を組立てられた状態で示す斜視図である。
【図3】ロッド軸に対して垂直な断面に沿って、第1のロッドを備えた図2の安定化装置を組立てられた状態で示す断面図である。
【図4】図3の安定化装置を示す側面図である。
【図5】図1から図4における安定化装置の受け部のロックリングを示す斜視図である。
【図6】図5のロックリングを示す側面図である。
【図7】図5のロックリングを示す上面図である。
【図8】ロッド軸に対して垂直な断面に沿って、第2のロッドを備えた図2の安定化装置を組立てられた状態で示す断面図である。
【図9】図8の安定化装置を示す側面図である。
【図10】第2の実施例に従った安定化装置の受け部のロックリングを示す斜視図である。
【図11】図10のロックリングを示す側面図である。
【図12】図10のロックリングを示す上面図である。
【図13】変形された第2の実施例に従った、ロックリングのロッド支持部の拡大部分を示す断面図である。
【図14】a)からc)は、さらに変形された第2の実施例に従った、異なる直径を有するロッドを用いたロックリングのロッド支持部の拡大部分を示す断面図である。
【図15】a)からc)は、さらに一層変形された第2の実施例に従った、異なる直径を有するロッドを用いたロックリングのロッド支持部の拡大部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2に図示のとおり、第1の実施例に従った安定化装置は、ねじ軸2と湾曲した表面部分を備えた頭部3とを有する骨ねじの形状をした骨固定要素1を含む。この実施例においては、頭部は球台形状である。頭部3は、工具と係合させるための凹部4を有する。安定化装置はまた、骨固定要素1に接続すべき第1のロッド100を受けるための受け部5を含む。さらに、内ねじの形状をした固定要素7が、受け部5にロッド100を固定するために設けられる。安定化装置は、受け部5に頭部3をロックするためのロックリング8を含む。第1のロッドの直径とは異なる直径を有する少なくとも1つのさらなるロッド(図示せず)が設けられる。ロッドは円形の断面を有する。また、ロッドは実質的に滑らかな表面を有する。
【0017】
図1から図4を参照して受け部5を説明する。受け部5は、実質的に円筒形であるロッド受け部9を含む。このロッド受け部9は、第1の端部9aおよび反対側の第2の端部9bを有する。同軸の第1のボア10は、図3および図8に図示のとおり、第2の端部9bに設けられる。第1のボア10の直径は、骨固定要素の頭部3の直径よりも小さい。ロッド受け部9はさらに、第1の端部9aから始まり、第2の端部9bから距離を空けた位置まで延在する同軸の第2のボア11を有する。第2のボア11の直径は第1のボア10の直径よりも大きい。実質的にU字型の凹部12は、ロッド受け部において第1の端部9aから第2の端部9bの方向に延在する。この凹部12の直径は、いずれのロッドの直径よりも大きいため、安定化装置のロッド100および他のロッドを凹部に配置してそこで案内することができる。凹部12によって、2本の自由な脚が形成され、その上に雌ねじ13が設けられる。雌ねじは、メートルねじ、平ねじ、負角ねじ、鋸歯ねじまたは他の如何なるねじ形状であってもよい。好ましくは、平ねじまたは負角ねじなどのねじ形状が用いられ、これにより、内ねじ7を捩じ込む際に脚12a、12bが広がるのが防止される。凹部12の深さは、脚同士の間に安定化装置のロッド100またはさらに他のロッドの各々および内ねじ7を挿入することができるように規定される。
【0018】
図1から分かるように、ロッド受け部において、凹部12によって形成されるチャネルの両端部に切欠き15が設けられる。
【0019】
ロッド受け部9の外面に溝16が設けられる。この溝16は、円周方向に延在し、ロックリング8の一部と係合する役割を果たす。
【0020】
受け部5は、第2の端部9bの側に、骨固定要素1の頭部3のための収容空間を提供する頭部受け部17を備える。頭部受け部17の最大外径は、ロッド受け部9の最大外径よりも小さい。内部中空区域18が、骨固定要素1の頭部3のための座部を形成し、開口部19を介して頭部受け部の自由端17bに開いている。中空区域18は、頭部3の形状に適合した形状を有しており、図示される実施例においては、球形の頭部3を収容するよう球状の区域をなしている。さらに、中空区域18は、頭部3の最大直径を含む領域をカバーする側から骨固定要素の頭部3を囲むよう構成される。
【0021】
自由端17bに開いている複数のスリット20が頭部受け部17に設けられる。スリット20により、頭部受け部17に可撓性が与えられるため、この頭部受け部17を圧縮して頭部3をクランプし、この頭部3を最終的に摩擦によって中空内部分18にロックすることができる。スリット20の数および大きさは、頭部受け部17の所望の可撓性に応じて規定される。頭部受け部17の可撓性は、頭部受け部を広げることによって固定要素の頭部3を挿入することができ、かつ、頭部受け部を圧縮することによってこの頭部3をクランプすることができるようなものに規定される。
【0022】
頭部受け部17の外面は第1の区域21を有し、その外径は、自由端17bに向かって、たとえば、外側に向かって湾曲した態様で大きくなっている。第1の区域21に隣接して周方向の溝22が設けられる。この溝22は、第1の区域21よりも窪んでおり、ロックリング8の部分と係合する役割を果たす。頭部受け部のうち実質的に円筒形の外面を有する第3の部分23が溝22に隣接して設けられる。第3の部分23は、ロックリングの一部と協働してロックリングのクランプ作用を高めるように構成される。
【0023】
ここで、図1から図7を参照してロックリング8を説明する。ロックリング8は実質的に円筒形であり、上方端部8aおよび下方端部8bを有する。装着された状態では、上方端部8aは、ロッド受け部の第1の端部9aの方向に向けられ、下方端部8bは、頭部受け部の自由端17bの方に向けられる。図3および図8から分かるように、内面部分81aは、上方端部の付近に設けられ、頭部受け部の第1の外面部分21と協働して、頭部受け部17に対して圧縮力を加える。
【0024】
ロックリングは、内側に突出た端縁82を下方端部8bに有する。その内径は、ロックリングの他の部分の内径よりも小さい。内側に突出た端縁82は、頭部受け部の溝22と係合するよう構成される。
【0025】
ロックリング8はさらに、上向きに延在する壁部分83aを有する。これらの上向きに延在する壁部分83aはスリット84によって互いから隔てられている。上向きに延在する壁部分83aは、ロックリングの内周肩部85の外周に配置され、ロックリングの上方部分に可撓性をもたらす。スリットの数および大きさならびに壁部分83aの厚さは、所望の可撓性が得られるように規定される。壁部分83aはその自由端に係合区域83bを含む。これらの係合区域83bは、ロッド受け部9の外面に設けられた溝16と係合するように形作られる。
【0026】
ロックリング8は、ロックリングが図3に示されるような第1の位置にある場合に、頭部受け部がロックリング内で広がって、頭部3の差込みを可能にするように、頭部受け部17に対して相対的な大きさにされる。
【0027】
2つの突起86は、互いとは直径方向に正反対に位置しており、ロックリングの上方部分に形成される。突起86は、図5に示されるように頭部3がまだロックされていない位置にロックリング8がある場合に実質的にU字型の凹部12の底の上方に突出して切欠き15へと延在するような高さを有する。これらの突起は、上向きに延在する壁部分83aからスリット84′によって隔てられており、その大きさは、壁部分83aから左右の突起86の左右までの距離が受け部における切欠き15の幅よりも大きくなるように規定される。ロックリングは、受け部5の頭部受け部17のまわりで突起86が凹部12の位置に配置される態様で、配置される。これにより、これらの突起86によって、ロッドが挿入されていないときにロックリングが回転するのが防止される。
【0028】
特に図3から図6から分かるように、突起の自由端面86aは凹形である。第1の実施例においては、自由端面86aが円筒形の凹部として形成されており、その円筒の半径は、第1のロッド100の半径よりも小さく、さらに他のロッドのいずれの半径よりも小さい。突起86のうち自由端面86aの領域における幅は、挿入されるロッドのいずれの直径よりも小さい。したがって、第1のロッド100がU字型の凹部12に挿入され、突起86上に配置されると、第1のロッド100は、実質的にロッド軸Rの方向に延在する線接触として形成される2つの接触区域P1、P2において、突起86の自由端面86aに接触する。
【0029】
接触区域は、端面86aの自由端縁から自由端面の底の方にわずかに離れて位置している。
【0030】
内ねじ7が挿入され締められると、内ねじ7は、ロッド100の上部にある第3の接触区域P3に沿ってロッド100と接触する。第3の接触区域P3はまた、実質的に線接触であり、ロッド軸Rの方向に延在する。
【0031】
頭部受け部17に可撓性があり、開口端17bにおける頭部受け部が有する大きさのおかげで、ロックリング8を自由端17bから頭部受け部17の上に組付けることによってこのロックリング8を取付けることができる。
【0032】
内ねじ7は、雌ねじ13に対応するねじを有する。脚が広がるのを防ぐねじ形状が用いられる場合、内ねじ7などの固定要素は1つで十分である。これにより、骨固定装置の径方向の寸法が小さくなる。たとえば外側ナットなどの他の固定要素も可能である。
【0033】
安定化装置は、図8および図9に図示のとおり、第1のロッド100の直径よりも大きな直径を有する第2のロッド101を含む。第2のロッド101が受け部に挿入されると、この第2のロッド101は、ロックリングの突起の端面86aの自由端の上に載る。このため、接触区域P1およびP2は、第1のロッド100の接触区域と比べて、互いからさらにわずかに離れている。
【0034】
突起および凹んだ自由端面86aの寸法、ロッドの直径、ならびに内ねじ7の長さおよび形状は、ロッドが3本の接触線P1、P2およびP3に沿ってクランプされるように規定される。ロッドは、このようにクランプされる場合、3点固定の場合と同様に安定した位置にある。これにより、ロッドに沿った確実な多重線接触が各々の突起86において実現される。接触線が極微の細い線ではなく、肉眼で見える程度に生じる接点に応じた一定の厚さを有する線であることが理解されるべきである。したがって、ロッドの直径とは無関係に確実な固定がもたらされる。
【0035】
固定装置と共に用いることができるロッドの直径は、ロッドがいずれの場合にも突起の自由端面との2本の接触線を有するように、幾何学的に規定される最大直径と最小直径との間で異なり得る。
【0036】
安定化装置の第2の実施例は、ロックリング上に設けられた突起の形状が第1の実施例とは異なっている。安定化装置の他のすべての部分は同じであり、同じ参照番号を有する。このため、それらの説明は繰返さない。
【0037】
図10から図12に図示のとおり、第2の実施例に従った突起の自由端面86a′により、実質的にV字形の断面を有する溝が形成される。V字型の底は真っすぐであるかまたは丸みがある。V字型に含まれる角度αは、V字型の溝の最大直径よりも小さい直径を有するロッドが、ロッド軸Rと平行な方向に延在する2つの対向する接触区域P1、P2における溝と接触するように規定される。第1の実施例と同様に、接触区域は実質的に線接触である。
【0038】
図13に図示のとおり、変形された第2の実施例においては、V字型の溝の底は、内側に湾曲した部分860a′と直線的な側壁861a′とを備える。
【0039】
図14のa)からc)に示すようなさらなる変形例においては、V字型の溝は、直線的な側壁863a′を付加的に有する。
【0040】
図15のa)からc)に示すようなさらに他の変形例においては、V字型の溝は、V字型および直線的な側壁863a′において凹形に湾曲した側壁864a′を備える。また、変形された実施例においては、ロッドが、2つの接触区域P1、P2に沿って自由端面86a′の上に載っている。
【0041】
図14のa)からc)および図15のa)からc)は、それぞれ直径が大きくなっているロッド100、101、102の接触を概略的に示す。ロッドは、いずれの場合にも、V字型の溝において2箇所に載っているか、または、3次元的に見ると、線接触の形態で2つの接触区域P1、P2の上に載っている。ロッドは、固定要素の内ねじによって上方からクランプされる。したがって、各々のロッドは、3箇所でクランプする場合と同様に安定したクランプ位置にある。大型のロッドが用いられる場合、このロッドは、接触区域P4における直線的な側壁の領域においてもV字型の溝に接触し得る。
【0042】
受け部5、ロックリング8、内ねじ7および骨固定要素1は、たとえばチタンもしくはステンレス鋼などの生体適合性材料、またはニチノールなどの生体適合性合金、または、PEEKなどの生体適合性のあるプラスチック材料でできている。部品はすべて、同じ材料または異なる材料で製造することもできる。
【0043】
ここで、図3および図8を参照して、すべての実施例について同じであるロックリングの機能を説明する。図3および図8に図示のとおり、ロックリング8の第1の位置は挿入位置であり、この位置で、ロックリング8が受け部5に対してラッチ固定される。このロックリング8の第1の位置は、内側に突出た端縁82が頭部受け部17の外面における溝22に係合するように規定される。内側に突出た端縁82の内径は、溝22の位置において頭部受け部17の外径よりも大きくなっており、このため、頭部3が差込まれたときに頭部受け部17が広がることが可能となる。第1の位置では、ロックリング8は、受け部5のロッド受け部9と、ロックリングのうちわずかに外側に曲がっている可撓性のある壁部分83aとの間でクランプ力によって付加的に保持される。
【0044】
ロックリングが第1の位置にある場合、頭部受け部17は圧縮されない。この位置では、ねじ頭を差込むことができる。第1の位置では、ロックリングは、ロッド受け部の第1の端部9aに向かって上方に移動するのが防止される。というのも、ロックリングの肩部85が、頭部受け部の第2の端部9bに当接し、ロックリングの内側に突出た端縁82が溝16の上方壁16bに当接するからである。ロックリング8が第2の端部9bと溝16の上方壁とに当接することにより、このロックリング8が上方に移動しないように適所で保持される。圧縮されていない状態ではロックリングの内径が頭部受け部の外径よりも大きいので、頭部受け部17がロックリング内の空間内に拡がることが可能となる。第1の位置では、頭部は自由に回動することができる。
【0045】
第2の位置(図示せず)では、ロックリングが受け部5に対してラッチ固定されている。この第2の位置はプリロック位置であり、可撓性のある壁部分83aの係合部分83bがロッド受け部9に設けられた溝16に弾力的にぴったりと嵌まり込むまで、矢印Aによって示されるように頭部受け部の自由端17bの方に向かってロックリング8を移動させることによって実現される位置である。
【0046】
第2の位置では、ロックリングのうち内側に傾斜した面81aが頭部受け部の第1の外面部分21を押圧することにより、頭部を完全にロックすることなく中空内部分18内に頭部3をクランプするように頭部受け部17が圧縮される。加えて、内側に突出た端縁82が、頭部受け部17の第3の部分23を押圧すると、結果として、付加的なクランプ力が得られる。これにより、頭部のクランプを、頭部3の上方または側方からだけではなく、頭部3の下方部分の領域からも行うことができる。手術中に発生する条件下では、受け部5に対する骨固定要素1の角度位置が維持されるが、この角度位置は、ねじ要素の受け部に付加的な力を加えることによってのみ緩めることができる。この予めロックされた位置では、骨固定要素を受け部から取外すことはできないが、ねじ要素の角形成は可能である。
【0047】
第3の位置(図示せず)はロック位置であり、ねじ頭部3が頭部受け部17内で最終的にロックされるまで、ロックリングをさらに下方に移動させることによって達せられる位置である。ロックリングの内面81aは、頭部3が頭部受け部の圧縮によってロックされるように、頭部受け部17の第1の部分21の外面と係合する。加えて、内側に突出た端縁82がさらに下方部分23で頭部受け部を圧縮することによって、ロック力が高められる。
【0048】
骨固定装置は以下のように予め組立てられる。第1に、ロックリング8が自由端17bから受け部5の上に取付けられる。これは、たとえば製造業者が行うこともできる。好ましくは、ロックリング8は図3および図8に示される第1の位置にある。この第1の位置で、ロックリング8は、内側に突出た端縁82が溝22と係合することによってラッチ固定される。その後、固定要素1の頭部3が、自由端17bから頭部受け部17の中空内部分18に差込まれる。その後、ロックリングを受け部に対して下方向に移動させることにより、内側に突出たリング82が溝22から滑り出て、可撓性のある壁部分83aの係合部分83bが溝16にぴったりと嵌まり込み、これにより第2の位置が実現される。
【0049】
手術中に使用する場合、受け部と、骨固定要素と、プリロック位置にあるロックリングとを含む予め組立てられた骨固定装置が骨に捩じ込まれる。頭部の凹部4は、第1のボア10を介してねじ工具でアクセスすることができる。
【0050】
特定の臨床応用に適した直径を有するロッドが選択され、突起86の自由端面によって支えられるまで凹部12に挿入される。したがって、当該安定化装置によれば、好適な固定要素および好適なロッドを選択して組立てることを可能にするモジュラーシステムが提供される。
【0051】
ロッドに対して受け部を正確に位置合わせするために、受け部を回動させる。他の骨固定装置に対してロッドが正確な位置に配置されると、内ねじ7が締められる。ロッド6がロックリングの突起86に当接するので、ロックリング8はロック位置である第3の位置へと下方に移動する。ロックリング8が頭部受け部の自由端17bの方に移動すると、ロックリング8は頭部受け部を圧縮し、これにより、頭部がロックされる。最後に内ねじを締めることによりロッドおよび頭部が同時にロックされる。
【0052】
図示される実施例のさらなる変形例も実現可能である。たとえば、ロックリングは別の形状を有していてもよい。プリロック機能は別の態様で実現することができる。
【0053】
固定要素については、ねじ、釘、フック、管状のねじ(cannulated screws)、互いに接続可能な別個の頭部および軸を備えた固定要素などのあらゆる種類の公知の固定要素を用いることができる。
【0054】
ロッドはまた、ロッド軸に沿って湾曲していてもよい。
頭部受け部は、傾斜した開口端を有し得るか、または、他の場合には、頭部を一方向により大きく角形成することを可能にするよう非対称であってもよい。
【0055】
頭部受け部の外面およびロックリングの内面は、ロックリングを下方に移動させた場合に頭部受け部の圧縮を可能にするような他の形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 骨固定要素、2 ねじ軸、3 頭部、4 凹部、5 受け部、7 固定要素、8 ロックリング、100 第1のロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎骨または他の骨を安定化するための安定化装置であって、
異なる直径を有する少なくとも2つのロッド(100,101)と、
骨に係止するための軸(2)および頭部(3)を有する固定要素(1)と、
少なくとも2つのロッドから1つのロッドを固定要素に接続するための受け部(5)とを含み、
前記受け部は、
上端部(9a)および底端部(17b)と、
ロッド(6)を受けるためのチャネル(12)を備えたロッド受け部(9)と、
骨固定要素の頭部(3)を収容するための頭部受け部(17)とを含み、頭部受け部は、開口端(19,17b)を有し、頭部の差込みおよびクランプを可能にするように可撓性があり、前記受け部はさらに、
頭部受け部(17)を囲むロックリング(8)を含み、頭部は、開口端(17b)の方にロックリングを移動させるようにロッドでロックリングを押圧することによってクランプされ、
ロックリング(8)は、少なくとも2つの別個の接触区域(P1,P2)において円周方向にロッド(100,101)の各々と接触するよう構成された表面部分(86a,86a′)を有する、安定化装置。
【請求項2】
表面部分は、接触区域(P1,P2)がロッド軸(R)に沿って延在するように形作られる、請求項1に記載の安定化装置。
【請求項3】
表面部分(86a)は、ロッド(100,101)の各々の曲率半径よりも小さい曲率半径で湾曲している、請求項1または2に記載の安定化装置。
【請求項4】
表面部分(86a)は、ロッド(100,101)のいずれの直径よりも小さい直径を有する円筒形の凹部によって形成される、請求項1から3のいずれかに記載の安定化装置。
【請求項5】
表面部分(86a′)は実質的にV字型である、請求項1から3のいずれかに記載の安定化装置。
【請求項6】
V字型を形成する基部の側壁(860a′,864a′)は湾曲している、請求項5に記載の安定化装置。
【請求項7】
表面部分はさらに直線的な側壁(863a′)を含む、請求項5または6に記載の安定化装置。
【請求項8】
表面部分は、異なる直径を有する複数のロッドを無段階でクランプするように形作られる、請求項1から7のいずれかに記載の安定化装置。
【請求項9】
ロッドは実質的に円形の断面を有する、請求項1から8のいずれかに記載の安定化装置。
【請求項10】
ロックリングは、互いから180°オフセットされた2つの突起(86)を有し、突起の各々は、少なくとも2つの別個の接触区域において円周方向にロッドの各々と接触するよう構成された表面部分を含む、請求項1から9のいずれかに記載の安定化装置。
【請求項11】
突起(86)がチャネル(12)へと延在する、請求項10に記載の安定化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−130696(P2012−130696A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278131(P2011−278131)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】