説明

椎骨連結部材、及びナットドライバ

【課題】コネクタ部材の小型化を図ることができる椎骨連結部材、及びナットドライバを提供する。
【解決手段】椎骨にねじ込まれるスクリュー部材3と、ロッド2とスクリュー部材3とを連結するコネクタ部材4と、スクリュー部材3とコネクタ部材4とを固定するナット部材5と、ナット部材5の緩み止めを行うナット部材6と、ロッド2とコネクタ部材4とを固定する固定部材7とを備えている。そして、ナット部材5,6は、円筒状に形成されており、その外周面には、第2雄ねじ部11に対するナット部材5,6のねじ込み方向に向けて、それぞれ、ねじ込み方向後端5a,6aからねじ込み方向前端5b,6bに至るまで凹曲面状の係合凹部26,28が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを介して複数の椎骨を連結する椎骨連結部材、及びナットドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロッドを介して複数の椎骨を連結する椎骨連結部材として、例えば、株式会社ロバート・リード商会(ROBERT REID INC.)が発行しているパンフレット「ISOLA スパイナル システム(The ISOLA Spinal System)」DS002P01 200503(非特許文献1)に記載されたものや、株式会社ロバート・リード商会(ROBERT REID INC.)が発行しているパンフレット「Monarch SPINE SYSTEM」DS026P01 200505(非特許文献2)が知られている。
【0003】
この従来の椎骨連結部材は、複数の椎骨にねじ込まれるスクリュー部材とロッドとを、コネクタ部材により連結するものである。そのため、コネクタ部材には、スクリュー部材が挿入されるスクリュー部材挿入穴と、ロッドが挿入されるロッド挿入穴とが形成されている。このスクリュー部材には、一端部に椎骨にねじ込まれる第1雄ねじ部が形成され、他端部に第2雄ねじ部が形成され、第1雄ねじ部と第2雄ねじ部との間に第2雄ねじ部より模型が大きな係止部が形成されている。そして、このスクリュー部材をコネクタ部材に挿入し、六角ナットを第2雄ねじ部にねじ込んで係止部との間でコネクタ部材を挟み込むことで、スクリュー部材とコネクタ部材とを固定している。
【0004】
その後、ロッドをロッド挿入穴に挿入して固定すると、スクリュー部材とロッドとが連結され、複数の椎骨が連結されるようになっている。
【非特許文献1】株式会社ロバート・リード商会(ROBERT REID INC.)が発行しているパンフレット「ISOLA スパイナル システム(The ISOLA Spinal System)」DS002P01 200503
【非特許文献2】株式会社ロバート・リード商会(ROBERT REID INC.)が発行しているパンフレット「Monarch SPINE SYSTEM」DS026P01 200505
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の椎骨連結部材のように、スクリュー部材とコネクタ部材とを固定するために六角ナットを用いると、ナットドライバは周方向において局部的に薄くなり、厚さが不均一となるため、ナットドライバを全体的に厚くしなければならなかった。このため、従来の椎骨連結部材では、スクリュー部材の第2雄ねじ部に六角ナットをねじ込む際にナットドライバが回転するスペースを確保しなければならないため、コネクタ部材の小型化を図ることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、コネクタ部材の小型化を図ることができる椎骨連結部材、及びナットドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る椎骨連結部材は、ロッドを介して複数の椎骨を連結する椎骨連結部材であって、一端部に椎骨にねじ込まれる第1雄ねじ部が形成され、第1雄ねじ部よりも他端側に第2雄ねじ部が形成され、第1雄ねじ部と第2雄ねじ部との間に第2雄ねじ部よりも径が大きい係止部が形成されるスクリュー部材と、スクリュー部材における係止部よりも第2雄ねじ部側が挿入されて係止部が係止されるスクリュー部材挿入部とロッドが挿入されるロッド挿入部とが形成され、スクリュー部材とロッドとを連結するコネクタ部材と、内周面に第2雄ねじ部の形状と適合する雌ねじ部が形成され、外周面に雌ねじ部によるねじ込み方向後端からねじ込み方向前方に向かって凹曲面状の係合凹部が形成される略円筒状のナット部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る椎骨連結部材では、ナット部材を略円筒状に形成すると共に、その外周面に凹曲面状の係合凹部を形成することで、ナット部材は、略円筒状の外周面から突出する部分を設けることなく、係合凹部によりナットドライバと係合することができる。これにより、ナットドライバのナット部材保持部が局部的に肉薄とならないため、このナット部材保持部の肉厚を全体的に薄くすることができる。従って、ナット部材を第2雄ねじ部にねじ込む際に、ナットドライバを回転させるために必要となる空間を小さくすることができ、コネクタ部材の小型化を図ることが可能となる。更に、ナット部材の係合凹部が凹曲面状に形成されているため、ナット部材は、ナットドライバから受ける回転力をこの凹曲面で受けることができる。このため、ナットドライバとの接触面積が広がり、ナット部材及びナットドライバの破損を抑制することが可能となる。
【0009】
この場合、上記係合凹部は、ナット部材の外周面を形成する円周上の点を中心とした円弧状に形成されることが好ましい。この椎骨連結部材によれば、係合凹部に当接するナットドライバの回転方向最前端は、ナット部材の外周面よりも半径方向内側となる。このため、ナット部材はナットドライバから受ける回転力の損失を低減することができ、ナット部材を確実に回転させることが可能となる。
【0010】
また、上記係合凹部は、ねじ込み方向前端まで形成されることが好ましい。この椎骨連結部材によれば、ナット部材のねじ込み方向前端からねじ込み方向他端に至るまで係合凹部を形成することができるため、ナット部材を容易に加工することが可能となる。
【0011】
また、上記係合凹部は、ねじ込み方向前端の所定距離手前まで形成されることが好ましい。この椎骨連結部材によれば、ナット部材のねじ込み方向前端に係合凹部を形成しない箇所を設けることで、ナットドライバがナット部材よりもねじ込み方向前方に抜け出すのを防止することができるため、誤って他のナット部材をも同時に回転させることを防止できると共に、現在ねじ込んでいるナット部材のねじ込み位置(又はねじ込み量)を把握することが可能となる。
【0012】
また、上記係合凹部は、周方向において等間隔に形成されることが好ましい。この椎骨連結部材によれば、各係合凹部から入力される回転力のバランスをとることができるため、ナット部材をスムーズに回転させることが可能となる。
【0013】
また、上記係合凹部は、3箇所形成されることが好ましい。例えば、係合凹部を周方向に2箇所又は1箇所形成すると、各係合凹部から入力される力のバランスが崩れやすくなるため、ナット部材をスムーズに回転させることが難しくなる。一方、係合凹部を周方向に4ヶ所以上形成すると、係合凹部の加工コストが高くなる。これに対し、この椎骨連結部材によれば、係合凹部を周方向に3ヶ所形成するため、各係合凹部から入力される力のバランスをとりやすくなり、加工コストを抑制しながらナット部材をスムーズに回転させることが可能となる。
【0014】
本発明に係るナットドライバは、上記ナット部材の外周面を覆うナット部材保持部を有し、ナット部材保持部は、少なくとも1つの係合凹部に係合する凸曲面状の係合凸部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るナットドライバによれば、ナット部材保持部が局部的に肉薄とならないため、このナット部材保持部の肉厚を全体的に薄くすることができる。従って、ナット部材を第2雄ねじ部にねじ込む際に、ナットドライバを回転させるために必要となる空間を小さくすることができるため、コネクタ部材の小型化を図ることが可能となる。更に、係合凸部は凸曲面状に形成されているため、ナット部材に対してこの凸曲面で回転力を伝達することができる。このため、ナット部材との接触面積が広がり、ナット部材及びナットドライバの破損を抑制することが可能となる。
【0016】
更に、ナット部材保持部をナット部材の全周を覆う形状とすることで、ナットドライバを回転させた際に、係合凹部からの反力によって係合凸部が半径方向外方に向かう力をナット部材保持部が受け止めることができ、ナット部材を回転させる力の損失を低減することができ、ナット部材を確実に回転させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、小型化を図ることができる椎骨連結部材およびナットドライバを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
まず、本発明に係る実施形態の椎骨連結部材について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の椎骨連結部材を3個連結した状態を示した斜視図であり、図2は、椎骨連結部材の上面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態の椎骨連結部材1は、ロッド2を介して複数の椎骨を連結するものであって、椎骨にねじ込まれるスクリュー部材3と、ロッド2とスクリュー部材3とを連結するコネクタ部材4と、スクリュー部材3とコネクタ部材4とを固定するナット部材5と、ナット部材5の緩み止めを行うナット部材6と、ロッド2とコネクタ部材4とを固定する固定部材7とを備えている。
【0021】
ロッド2は、複数の椎骨連結部材1を連結するために、複数の椎骨連結部材1を連結できる長さの円筒状に形成されている。
【0022】
椎骨にねじ込まれるスクリュー部材3は棒状に形成されており、その一端部には、椎骨にねじ込まれる第1雄ねじ部10が形成されている。スクリュー部材3の他端部には、ナット部材5,6が螺合される第2雄ねじ部11が形成されている。そして、第1雄ねじ部10と第2雄ねじ部11との間には、第2雄ねじ部11より径が太い係止部12が形成されている。この係止部12の上端面12a(図2(a)において上端面)は、コネクタ部材4に当接させた際にがたつかないように、平面状に形成されている。
【0023】
ロッド2及びスクリュー部材3を連結するコネクタ部材4は、スクリュー部材3を固定するためのスクリュー部材固定部15と、ロッド2を固定するためのロッド固定部16とを備えている。このスクリュー部材固定部15は、ロッド固定部16と比較して薄く形成されており、その中央部に、スクリュー部材3の第2雄ねじ部11が挿入されるように、スクリュー部材固定部15を貫通するスクリュー部材挿入穴17が形成されている。
【0024】
このスクリュー部材挿入穴17は、挿入されたスクリュー部材3がロッド固定部16との距離を調整できるように、長径方向がロッド固定部16から離れる方向に沿う楕円状に形成されている。また、スクリュー部材挿入穴17の短径方向の径は、挿入されたスクリュー部材3の係止部12がスクリュー部材固定部15に係止されてスクリュー部材挿入穴17を通過しないように、第2雄ねじ部11の最大径よりも大きく、係止部12の最大径よりも小さくなるように設定されている。
【0025】
また、ロッド固定部16は、スクリュー部材3と比較して厚く形成されており、スクリュー部材固定部15の上面15a(図2(a)において上面)から更に上方にせり出すように形成されている。ロッド固定部16におけるスクリュー部材固定部15側の側面16a(図2(b)における左側側面)は、ナット部材5,6の形状に沿うように、凹曲面状に形成されている。
【0026】
そして、ロッド固定部16の上下方向(図2(a)において上下方向)中央部には、スクリュー部材挿入穴17と異なる方向にロッド2が挿入されるように、スクリュー部材挿入穴17と異なる方向に貫通されたロッド挿入穴18が形成されている。本実施形態では、スクリュー部材挿入穴17とロッド挿入穴18とは、90度異なった角度に貫通形成されている。
【0027】
また、ロッド固定部16には、ロッド挿入穴18に挿入されたロッド2を固定するために、ロッド固定部16の上面16b(図2(a)において上面)からロッド挿入穴18に至るまで、上下方向(図2(a)において上下方向)に貫通された固定部材用穴19が形成されている。固定部材用穴19の内周面には、固定部材7がねじ込まれるように、雌ねじ部20が形成されている。
【0028】
ロッド固定部16の固定部材用穴19にねじ込まれてロッド2を固定する固定部材7は、円筒状に形成されており、その外周面には、固定部材用穴19の雌ねじ部20に適合する雄ねじ部21が形成されている。そして、固定部材7の上面7a(図2(a)において上面)には、固定部材7を回転させるトルクス(星形)レンチが挿入される星型凹部22が形成されている。
【0029】
スクリュー部材3とコネクタ部材4とを固定するナット部材5は、図3及び図5に示すように、円筒状に形成されている。ナット部材5の内周面には、スクリュー部材3の第2雄ねじ部11に適合する雌ねじ部25が形成されている。ナット部材5の外径は、ナット部材5がスクリュー部材固定部15に係止されてスクリュー部材挿入穴17を通過しないように、スクリュー部材挿入穴17の短径方向の径よりも大きく設定されている。そして、ナット部材5の外周面には、凹曲面状の係合凹部26が形成されている。
【0030】
また、ナット部材5の緩み止めを行うナット部材6は、図4及び図5に示すように、ナット部材5と比較して薄く形成されており、ナット部材5と同様に、円筒状に形成されている。ナット部材6の内周面には、スクリュー部材3の第2雄ねじ部11に適合する雌ねじ部27が形成されている。ナット部材6の外径は、ナット部材6がスクリュー部材固定部15に係止されてスクリュー部材挿入穴17を通過しないように、スクリュー部材挿入穴17の短径方向の径よりも大きく設定されている。そして、ナット部材6の外周面には、図3及び図4に示すように、それぞれ、第2雄ねじ部11に対するナット部材5,6のねじ込み方向に向けて、それぞれ、ねじ込み方向後端5a,6a(図3及び図4において上方端)からねじ込み方向前端5b,6bに至るまで、凹曲面状の係合凹部28が形成されている。
【0031】
このようなナット部材5,6の係合凹部26,28は、図5に示すように、それぞれ、ナット部材5,6の横断面においてナット部材5,6の外周面を形成する円周上の点Pを中心とした円弧状に形成されており、ナット部材5,6の周方向において等間隔(120度間隔)に3箇所形成されている。このとき、ナット部材5,6が所定の強度を保持できるように、各係合凹部26,28から内周面までの距離を算出し、係合凹部26,28における円弧の径Rを設定する。
【0032】
そして、ナット部材5,6は、人体組織を保護するため、ねじ込み方向後端5a,6a及び、係合凹部26,28の端部の角が面取りされている。
【0033】
なお、ナット部材5とナット部材6とは、その厚さを除き、同一の寸法で形成されている。
【0034】
このようなナット部材5,6は、例えば、チタンを円筒状に形成した後、内周面をねじ切りして雌ねじ部25,27を形成し、外周面を切削して係合凹部26,28を形成し、所定箇所を面取りした後、所定の表面処理を施すことで製造することができる。
【0035】
なお、上述したロッド2、スクリュー部材3、コネクタ部材4、ナット部材5,6及び固定部材7は、それぞれ、チタンなどの耐蝕性を有する素材により形成されており、陽極酸化処理が施されて表面全体に被膜が形成されている。
【0036】
次に、本発明に係る実施形態のナットドライバについて説明する。図6は、実施形態に係るナットドライバを示す正面図であり、図7は、このナットドライバの下部を一部拡大して示す斜視図であり、図8は、このナットドライバの下面図である。
【0037】
図6〜図8に示すように、本実施形態のナットドライバ30は、椎骨連結部材1のナット部材5,6を回転させるドライバであって、T字型のハンドル部31と、ハンドル部31に対して脱着可能で軸周りに回動不能に保持されると共にハンドル部31から直線状に延びるシャフト部32とを備えている。そして、このシャフト部32の先端には、ナット部材保持部33が設けられている。
【0038】
このナット部材保持部33は、スクリュー部材3の第2雄ねじ部11にねじ込むナット部材5,6を保持するために、略円筒状に形成されており、ナット部材保持部33の内周面には、先端が開口した空洞部37が形成されている。この空洞部37は、先端側(図6において下側)に、ナット部材5,6が挿入されるナット部材挿入穴34が形成されており、ナット部材挿入穴34のハンドル部31側(図6において上側)に、スクリュー部材3の第2雄ねじ部11が挿入される雄ねじ部挿入穴35が形成されている。
【0039】
ナット部材挿入穴34の内周面は、ナット部材5,6の外周面の形状と適合するように形成されている。具体的に説明すると、ナット部材挿入穴34の内周面は、ナット部材5,6の外周径と同じ、又は僅かに大きな径に形成されており、ナット部材5,6の係合凹部26,28に対応する位置には、この係合凹部26,28と同じ径、又は僅かに小さな径の円弧状の係合凸部36が形成されている。ナット部材挿入穴34の長さ(深さ)は、回転させるナット部材以外のナット部材を回転させないために、最も薄いナット部材5,6と同じ長さ、又は最も薄いナット部材5,6よりも短い長さに設定する。なお、ナット部材5,6とナット部材挿入穴34とは、ナット部材5,6にナット部材挿入穴34を挿入させたときに、ナット部材挿入穴34がナット部材5,6に係合されず空回りしなければ、如何なる寸法に設定しても良い。
【0040】
雄ねじ部挿入穴35の内周面は、シャフト部32の外周面の形状と適合するように形成されている。具体的に説明すると、雄ねじ部挿入穴35の内周面は、雄ねじ部挿入穴35の径は、第2雄ねじ部11が自由に挿抜可能なように、第2雄ねじ部11の最大径よりも大きく形成されている。雄ねじ部挿入穴35の長さ(深さ)は、ナットドライバ30でナット部材5を最後までねじ込んだときに、第2雄ねじ部11が雄ねじ部挿入穴35の最奥端に到達しない長さに設定する。
【0041】
次に、本実施形態の椎骨連結部材1とナットドライバ30とを用いて、複数の椎骨を連結する方法について説明する。
【0042】
まず、スクリュー部材3の第1雄ねじ部10を椎骨にねじ込み、コネクタ部材4のスクリュー部材挿入穴17を第2雄ねじ部11に挿入させ、スクリュー部材3に対するコネクタ部材4の位置を調整する。
【0043】
コネクタ部材4の位置が決まると、ナットドライバ30の係合凸部36がナット部材5の係合凹部26に合わさるようにナット部材5をナット部材保持部33にはめ込み、ナットドライバ30を回転させてナット部材5を第2雄ねじ部11にねじ込む。なお、ナット部材5をねじ込んでいくに従ってナット部材5から出てくる第2雄ねじ部11は、雄ねじ部挿入穴35内に収納される。
【0044】
ナット部材5を第2雄ねじ部11にねじ込み、ナット部材5と係止部12との間でスクリュー部材固定部15が固定されると、ナット部材5と同様に、ナットドライバ30を用いてナット部材6を第2雄ねじ部11にねじ込み、ナット部材5の緩みを防止する。
【0045】
同様に、他の椎骨に対してもスクリュー部材3をねじ込み、このスクリュー部材3にコネクタ部材4を固定すると、各コネクタ部材4のロッド挿入穴18にロッド2を挿入し、固定部材7を固定部材用穴19にねじ込み、コネクタ部材4にロッド2を固定する。これにより、椎骨連結部材1により複数の椎骨が連結される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の椎骨連結部材1では、ナット部材5,6を略円筒状に形成すると共に、その外周面に凹曲面状の係合凹部26,28を形成することで、ナット部材5,6は、略円筒状の外周面から突出する部分を設けることなく、係合凹部26,28によりナットドライバ30と係合することができる。これにより、ナットドライバ30のナット部材保持部33が局部的に肉薄とならないため、このナット部材保持部33の肉厚を全体的に薄くすることができる。従って、ナット部材5,6を第2雄ねじ部11にねじ込む際に、ナットドライバを回転させるために必要となる空間を小さくすることができるため、スクリュー部材挿入穴17からロッド固定部16までの距離を短くすることができ、コネクタ部材4の小型化を図ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の椎骨連結部材1によれば、ナットドライバ30に係合するナット部材5,6の係合凹部26,28が円弧状の凹曲面に形成されているため、ナット部材5,6は、ナットドライバ30から受ける回転力をこの凹曲面で受けることができる。このため、ナットドライバ30との接触面積が広がり、ナット部材5,6の破損を抑制することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態の椎骨連結部材1によれば、係合凹部26,28を、ナット部材5,6の外周面を形成する円周上の点を中心とした円弧状に形成することで、各係合凹部26,28に当接する各係合凸部36の回転方向最前端は、ナット部材5,6の外周面よりも半径方向内側となる。このため、ナット部材5,6はナットドライバ30から受ける回転力の損失を低減することができ、ナット部材5,6を確実に回転させることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の椎骨連結部材1によれば、ナット部材5,6の周方向において各係合凹部26,28を等間隔に形成することで、各係合凹部26,28から入力される回転力のバランスをとることができ、ナット部材5,6をスムーズに回転させることが可能となる。
【0050】
ところで、係合凹部を周方向に2箇所又は1箇所形成すると、各係合凹部から入力される力のバランスが崩れやすくなるため、ナット部材をスムーズに回転させることが難しくなる。反対に、係合凹部を周方向に4ヶ所以上形成すると、係合凹部の加工コストが高くなる。これに対し、本実施形態の椎骨連結部材1によれば、係合凹部26,28を周方向に3ヶ所形成するため、各係合凹部26,28から入力される力のバランスをとりやすくなり、加工コストを抑制しながらナット部材をスムーズに回転させることが可能となる。
【0051】
本実施形態のナットドライバ30によれば、ナットドライバ30のナット部材保持部33を、ナット部材5,6の全周を覆うように略円筒状に形成することで、ナットドライバ30を回転させた際に、係合凹部26,28からの反力によって係合凸部36が半径方向外方に向かう力をナット部材保持部33が受け止めるため、ナット部材5,6を回転させる力の損失を低減することができ、ナット部材5,6を確実に回転させることができる。
【0052】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、係合凹部26,28は、ナット部材5,6のねじ込み方向後端5a,6aからねじ込み方向前端5b,6bまで形成するように説明したが、例えば、図10に示すナット部材40のように、係合凹部41を、ナット部材40のねじ込み方向後端40aからねじ込み方向前端40bの所定距離手前40cまで形成するようにしてもよい。このように、ねじ込み方向前端40bに係合凹部41を形成しない箇所を設けることで、ナットドライバ30がナット部材40よりもねじ込み方向前方に抜け出すのを防止することができるため、誤って他のナット部材をも同時に回転させることを防止できると共に、現在ねじ込んでいるナット部材のねじ込み位置(又はねじ込み量)を把握することが可能となる。
【0053】
また、上記実施形態においては、スクリュー部材挿入穴17及びロッド挿入穴18は、それぞれ、スクリュー部材固定部15及びロッド固定部16に貫通形成された穴として説明したが、スクリュー部材3及びロッド2を固定することができれば如何なる形状に形成されてもよく、例えば、一方が開口されたU字状に形成されても良い。
【0054】
また、上記実施形態においては、3個の係合凹部26,28を全て同一形状として説明したが、曲面状に形成されていれば必ずしも同一形状でなくてもよい。また、係合凹部26,28の数は特に限定されず、2個以下でも4個以上であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、第2雄ねじ部11はスクリュー部材3の他端部に形成されるように説明したが、例えば、スクリュー部材3の他端部にはナット部材が挿通される棒状に形成され、この他端部から一端側に所定距離に離れた位置に第2雄ねじ部が形成されるようにしてもよい。
【0056】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る実施形態の椎骨連結部材を3個連結した状態を示した斜視図である。
【図2】椎骨連結部材を示す上面図である。
【図3】ナット部材の斜視図である。
【図4】ナット部材の斜視図である。
【図5】ナット部材の上面図である。
【図6】本発明に係る実施形態のドライバを示す正面図である。
【図7】ナットドライバの下部を一部拡大して示す斜視図である。
【図8】ナットドライバの下面図である。
【図9】ナットドライバでナット部材をねじ込んだ状態を示した図である。
【図10】他のナット部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1…椎骨連結部材、2…ロッド、3…スクリュー部材、4…コネクタ部材、5,6,40…ナット部材、5a,6a,40a…ねじ込み方向後端、5b,6b,40b…ねじ込み方向前端、10…第1雄ねじ部、11…第2雄ねじ部、12…係止部、15…スクリュー部材固定部(スクリュー部材挿入部)、16…ロッド固定部(ロッド挿入部)、17…スクリュー部材用穴(スクリュー部材挿入部)、18…ロッド用穴(ロッド挿入部)、25,27…雌ねじ部、26,28,41…係合凹部、30…ナットドライバ、33…ナット部材保持部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを介して複数の椎骨を連結する椎骨連結部材であって、
一端部に椎骨にねじ込まれる第1雄ねじ部が形成され、前記第1雄ねじ部よりも他端側に第2雄ねじ部が形成され、前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部との間に前記第2雄ねじ部よりも径が大きい係止部が形成されるスクリュー部材と、
前記スクリュー部材における前記係止部よりも前記第2雄ねじ部側が挿入されて前記係止部が係止されるスクリュー部材挿入部と、前記ロッドが挿入されるロッド挿入部とが形成され、前記スクリュー部材と前記ロッドとを連結するコネクタ部材と、
内周面に前記第2雄ねじ部の形状と適合する雌ねじ部が形成され、外周面に前記雌ねじ部によるねじ込み方向後端から前記ねじ込み方向前方に向かって凹曲面状の係合凹部が形成される略円筒状のナット部材と、
を有することを特徴とする椎骨連結部材。
【請求項2】
前記係合凹部は、前記ナット部材の外周面を形成する円周上の点を中心とした円弧状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の椎骨連結部材。
【請求項3】
前記係合凹部は、前記ねじ込み方向前端まで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の椎骨連結部材。
【請求項4】
前記係合凹部は、前記雌ねじ部の前記ねじ込み方向前端の所定距離手前まで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の椎骨連結部材。
【請求項5】
前記係合凹部は、周方向において等間隔に形成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の椎骨連結部材。
【請求項6】
前記係合凹部は、3箇所形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の椎骨連結部材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のナット部材の外周面を覆うナット部材保持部を有し、
前記ナット部材保持部は、少なくとも1つの前記係合凹部に係合する凸曲面状の係合凸部を有することを特徴とするナットドライバ。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−194307(P2008−194307A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33975(P2007−33975)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
【出願人】(599088438)昭和医科工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】