説明

検体の定量的検出方法

【課題】複数の食品アレルギー物質を含んだ検体の迅速・簡便な定量的検出方法の提供。
【解決手段】光変形を起こし得る光固定化材料を表面にもつ担体上に、抗体を配置するステップと、光照射で光固定化材料を光変形させるステップとをもち、抗体固定化担体を調製する工程と、試験試料を接触させる工程と、検知する物質に対して特異性をもち且つ標識された抗体を含む抗体を接触させる工程と、検出定量工程と、を有することを特徴とする。固定化の機構として化学的相互作用よりも、分子レベルでの相互作用にて固定化されているので、各種の抗体における表面特性の違いに関係なく固定化できる。従って、従来の単純なELISA法のように疎水結合などにより抗体を担体上に固定化する方法と比較して、より高濃度且つ高活性で抗体を固定化できる。従って、本発明方法は、食品に含まれる食品アレルギー物質の検出・定量を従来のELISA法と比較しても迅速・簡便に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパクなど抗体抗原反応が適用できる被検物質を含む検体について定量的に検出可能な検体の定量的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JAS法と食品衛生法においてアレルギーを引き起こす特定原材料として、卵、そば、小麦、乳、落花生の5種類が含まれる加工食品には特定原材料の表示が義務付けられている。またそれに準じる原材料として15種類に対しても表示することが推奨されている。検査対象が多種にわたり、加工、梱包工程中の不慮の事故や仕入れ前の段階での混入など、どこで混入するか把握することが困難になっている。
【0003】
従来、アレルギー物質を検出する通常の方法としては、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー、マススペクトルなどを利用する方法が知られていた。ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、マススペクトルは試験試料の精製に多くの工程を必要とし、また装置自体も大きく高価になっていた。適正に測定を行うためには、これら装置の特性上、技術者の知識や経験に頼る部分が多かった。また分析時間も長時間必要とするために流通後の後追い検査となることが多く、食品業界では適した方法ではない。近年、バイオアッセイ法において抗原抗体反応を用いたELISA法を利用し簡易に検出する方法(特許文献1)が公定法として認可された。また食品中の成分を抗原抗体反応によって抽出する方法(特許文献2)も開発されている。これらの方法は高価な分析機器を必要とせず、その日のうちに結果が得られるため食品加工現場では普及しつつある方法である。
【特許文献1】特開2003−155297号公報
【特許文献2】特開2005−106811号公報
【特許文献3】特開2003−329682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した通りアレルギーを引き起こす物質が多種にわたるなかで1つのアレルギー物質しか測定できない方法は、実際に利用するにはすべてを満たした方法ではない。また、反応工程が短縮されたとはいえ実質5時間程度を必要としている。
【0005】
すなわち、ELISA法は一般に免疫反応の時間を各工程30分〜1時間で行う。しかしながら免疫抗体の全ての反応は完了させるには充分な時間ではない。これは分子拡散の公式(t=L/D)からも明らかで、D:分子拡散係数を1.0×10−3(mm/s)とすると液面の高さが5mmとしても全てが拡散するのに7時間必要である。
【0006】
これを回避するために蓋をして反応中に撹拌を行うこともあるが、蓋を操作する際にコンタミネーションの危険があり充分に撹拌を行うことができない。実際にELISA法での全工程を完了するには4〜5時間程度必要である。
【0007】
このことは食品という鮮度が重要なものに対しては時間がかかり過ぎている。また、専門の検査員が必要になり人的コストも増大する。イムノクロマト法を用いた検査キットは迅速検査の面では優れているが定性確認しかできない。従って、濃度の確認ができず陽性の場合の再検査が必要になり結果の確定までの時間を要する。
【0008】
本発明は上記実情に鑑み完成されたものであり、複数の食品アレルギー物質などを含んでいてもそれぞれの検出が可能な検体の定量的検出方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数の検体を同時に検出・測定する目的で、1つの担体に検体を接触させることで検体中に含まれる複数の被検物質を測定できるようにする方法に想到し、複数の被検物質を同時に検出・測定する場合に生起する問題について鋭意検討を行った結果、光固定化材料により抗体を固定化すると、多量の抗体を高活性のまま固定化できるので、効率的に抗体を固定化できることを活用し、以下の発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の検体の定量的検出方法は、光変形を起こし得る材料である光固定化材料を備える表面をもつ担体の該表面に、被検物質のうちの1以上に対して特異性をもつ抗体を1種以上含むグループを1以上備える第1抗体群を該グループ毎に配置するステップと、その後、光照射を行い該光固定化材料を光変形させるステップとをもち、該担体上に該第1抗体群が固定された抗体固定化担体を調製する固定化工程と、
前記被検物質の検出を行う対象物である検体を含む試験試料を前記担体の前記表面に接触させる工程と、
前記被検物質のうち検知する物質に対して特異性をもち且つ標識された抗体を1種以上含む第2抗体群を接触させる工程と、
前記標識された抗体の量から前記被検物質を検出乃至定量する検出定量工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
抗体の機能は特定のデリケートな立体構造に基づいており、固定化の際に加えられる化学処理、pH、熱等の外部刺激により機能を失い易い。しかし、本発明で採用する光固定化の場合にはその恐れが少ない。また、本発明で採用する光固定化では、固定化の機構として化学的相互作用よりも、分子レベルでの相互作用にて固定化されているものと考えられるので、各種の抗体における表面特性の違いに関係なく抗体を固定化することができる。従って、抗体を分子レベルで保持できる光固定化材料により固定化しているので、従来の単純なELISA法のように疎水結合などにより抗体を担体上に固定化する方法と比較して、より高濃度且つ高活性で抗体を固定化できる。
【0012】
なお、本発明にて採用した光固定化材料については特許文献3に記載がある。
【0013】
ここで、前記標識は定量可能な反応を促進する酵素であり、
前記検出定量工程は、該酵素反応における基質を添加して酵素反応を進行させるステップと、酵素反応の進行の程度を検知するステップと、を備えることで前記酵素の量を定量化する工程が採用できる。
【0014】
第1抗体群に結合した被検物質の検出に用いる第2抗体群に対する標識を酵素反応の進行程度により定量を行う酵素を採用することで、簡便且つ安価に検出を行うことができる。特に、酵素としては、後述するような発色乃至発光反応を促進する酵素を採用することが望ましい。
【0015】
そして、前記担体の表面に前記第1抗体群を配置するステップは、該第1抗体群を溶解した溶液を該表面に載置した後、溶媒を蒸発させるステップを採用できる。溶液の濃度と担体の表面に載置する量を制御することで、担体を固定化する量を精密に制御することができる。
【0016】
前記光固定化材料はアゾ基を有する色素構造を含む材料であることが望ましい。前記アゾ基を有する色素構造としては、ハメット(Hammet)則における置換基定数σが負である1又は2以上の電子供与性置換基を含む芳香環と、同置換基定数σが正である1又は2以上の電子吸引性置換基を含む芳香環とを、それぞれアゾ基の両側に備えたアゾベンゼン構造であることが望ましい。
【0017】
特に、前記アゾ基を有する色素構造は、下記式(1)が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造であることが望ましい。
Σ|σ|≦|σ1|+|σ2| …(1)
(上記の式(1)において、σはハメット則における置換基定数、σ1はシアノ基の置換基定数、σ2はアミノ基の置換基定数である。)
【0018】
ところで、測定する検体の数が複数あったり、被検物質の含有量について検量線を同時に作成する場合など、複数の試験試料に対して、本発明の検体の定量的検出方法を適用する場合は、前記担体は複数あり、複数の凹部をもつプレートにおけるそれぞれの凹部の底面に配置されていることが望ましい。つまり、複数の担体を同一のプレート上に形成することで、複数の試験試料に対する反応条件などを容易に揃えることができ、検出される被検物質の量の信頼性を向上することができる。
【0019】
また、複数の試験試料に対して、含有する複数の被検物質を同時に検出・測定する場合(つまり、前記第1抗体群の前記グループが複数ある場合)、複数の前記グループはそれぞれのグループ毎に識別可能になるように所定のパターンで配置されていることが望ましい。第1抗体群の各グループを所定のパターンで配置することで、容易に各グループに対応する被検物質の有無や量の測定ができる。その場合に、試験試料毎に定量結果を比較する際に容易であるように、前記担体の表面に固定化された前記抗体の該表面における密度は、対応する前記グループ毎に概ね等しいことが望ましい。例えば、前記担体の表面において、前記グループ毎に前記溶液をそれぞれ載置する領域を所定面積にて区画した上で、その領域上に所定濃度で所定量の抗体溶液を載置・乾燥することで達成できる。
【0020】
ここで、前記標識された抗体は発色乃至発光反応を促進する酵素で標識されており、前記検出定量工程としては、前記担体毎に前記グループ毎の発色乃至発光の程度を画像処理により検出・定量する方法を採用することで、更に迅速に試験試料の測定を行うことができる。
【0021】
本発明の検体の定量的検出方法を適用する前記検体としては、食品、食品加工物、食品原料、食品製造工程における生産物・副生産物が例示できる。この場合に、前記被検物質は小麦、そば、卵、乳、落花生、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、桃、やまいも、リンゴ、ゼラチン、ホタテ、トマト、ポテトのいずれかのタンパク質、糖、脂質、核酸及びハプテンからなる群から選択される1種以上の食品アレルギー物質とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の検体の定量的検出方法は、食品に含まれる食品アレルギー物質の検出・定量など、夾雑物などの存在により、純粋な化学的方法では簡単に行うことが困難な測定を従来のELISA法と比較しても迅速・簡便に行うことができる。更に、複数の被検物質を同時に検出することができる。
【0023】
本発明の検体の定量的検出方法では多量の抗体を高活性のまま担体上に固定化できるので、定量に必要な検体の量を少なくできることから、結果として液面の高さを低くできる。従って拡散も速やかに進行し、反応に必要な時間を短縮できる。例えば、液面の高さを0.5mm程度にすると、反応に必要な時間は250秒程度と非常に短い時間にまで短縮でき、全工程を1時間以内で終了することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の検体の定量的検出方法は固定化工程と試験試料接触工程と第2抗体群接触工程と検出定量工程とその他必要な工程とを有する。
【0025】
・固定化工程
固定化工程は被検物質に対する抗体である第1抗体群を担体表面に固定化して抗体固定化担体を調製する工程である。担体表面には光固定化材料を備えており、担体表面に第1抗体群を配置した後、光照射を行うことで、担体の表面に第1抗体群が固体化され抗体固定化担体となる。照射する光の波長及び照射時間としては光固定化材料に応じて適正な波長及び照射時間が変化する。
【0026】
担体は複数個をまとめて1つとすることもできる。例えば、単一の板状体の表面を区画し、各区画を本定量的検出方法の担体とすることができる。
【0027】
第1抗体群には抗体抗原反応により被検物質に特異的に反応する抗体が含有されている。抗体は検出するに当たり最良の液体状のもののであり1種又は2種以上のものが採用できる。対応する被検物質としては糖、脂質、核酸、ハプテンのようなタンパク以外の物質も抗体抗原反応に関与する物質である限り対象にすることができる。例えば、小麦、そば、卵、乳、落花生、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、桃、やまいも、リンゴ、ゼラチン、ホタテ、トマト、ポテトのいずれかのタンパク質、糖、脂質、核酸、ハプテンなどの人体に対するアレルギー反応を示す可能性がある物質群から選択される1種以上の食品アレルギー物質である。より具体的には、アルブミン、グロブリン、プロラミン、グリアジン、グルテン、オボアルブミン、オボムコイド、カゼイン、ラクトグロブリン、Arah1、Arah2、Arah3、β−ブラインコンポーネント、トロポミオシン、アルギニンキナーゼ、GAPDH、パルブアルブミン、フィッシュコラーゲン、β−コングリシニン、β−コングリシニンαサブユニット、FBPA、クラスIエンドキナーゼ、PG、Fface、SOD、Pease、パタチン、プロフィン、リピットトランスファープロテイン、α−アミラーゼトリプシンインヒビター、カルシウムバインディングプロテイン−α−B鎖などである。このような被検物質を含む検体としては食品や食品加工物、食品原料、食品製造工程における生産物・副生産物が挙げられる。
【0028】
この抗体としてはポリクローナル抗体が好ましいが、モノクローナル抗体、その他被検物質を特異的に認識結合できるものであれば採用できる。この場合滴下される抗体の量や配置は被検体の種類により決められる。
【0029】
第1抗体群に含まれる抗体は被検物質のうちの1種以上を抗原として特異的に反応するものである。第1抗体群は1以上のグループに分けられている。担体表面には、このグループ毎に固定され、各グループに含まれる抗体に特異性をもつ被検物質を検出・定量する。例えば、3つの被検物質を別々に測定する場合には第1抗体群として、3つのグループを設定し、各々に対して3つの被検物質のうちの1つずつに特異性をもつ抗体を含有させる。2つ以上の被検物質について、区別することなく全体として検出・定量することで充分な場合や、1つの被検物質を対象とする場合でも被検物質における異なるサイトをを特異的に認識する異なる抗体などの場合には、1つのグループ中にそれら複数の抗体を含有させることもできる。
【0030】
また、複数のグループに対して、抗体の種類は同一とした上で、抗体の含有量(抗体を溶液で供給する場合には溶液の濃度と溶液の量とで決定される)のみを変化させることもできる。つまり、抗体の固定化量を変化させることで、それぞれのグループで被検物質は同じであっても定量できる濃度範囲を変化させる。
【0031】
第1抗体群を構成する各グループ毎に担体表面に配置する方法としては特に限定しない。各グループ毎に溶液乃至懸濁液とした後に担体表面上に滴下した後、そのまま溶液等の状態で、又は、溶媒を蒸発させた状態で配置する方法が、固定化する抗体の量を精密に制御できる方法として例示できる。特に、溶媒を蒸発させる方法が固定化する抗体の量をより精密に制御できるので望ましい。これら溶液乃至懸濁液は、抗体の活性を保つために、緩衝液に抗体を溶解乃至懸濁させたものを採用することができる。また、担体の表面において抗体を固定化した密度(単位表面積当たりで固定化した抗体の質量、活性単位量など)は複数の試験試料の間で比較検討を容易に行うためには概ね等しくすることが望ましい。例えば、抗体を溶解乃至懸濁させた液中に含まれる抗体濃度と、その液の量、担体表面において付着させる領域の面積から算出できる抗体の密度の値が等しくなるように調節することで実現できる。より好ましくは、担体表面において抗体を含む液を付着する領域の面積を等しくできるように、各グループ毎で担体表面に付着させる領域を区画して、その領域内に所定濃度・所定量の抗体を含む液を載置・乾燥する方法が挙げられる。
【0032】
担体表面が備えている光固定化材料は光の照射によって光変形を起こしうる材料である。ここで、「光変形」とは、通常のマクロな意味での形状変化の他、分子レベルでの運動による抗体と担体表面との絡み合い等による変形も含む。このような光変形には、光学顕微鏡や電子顕微鏡等により明瞭に観察できるものもあるし、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察することが困難なものもある。固定化材料は通常の方法によって担体の表面に塗布などの方法で配置することができる。また、担体のすべてを光固定化材料にて形成することも可能である。
【0033】
固定化に用いる光源は、採用した光固定化材料に応じて適正なものを選択することが望ましく、紫外線から赤外線に至るまでの波長領域で可能であり、好ましくは紫から青の可視波長が挙げられる。
【0034】
光固定化材料としては、基本的には、光変形を起こし得る材料であれば、表面に配置された第1抗体群に対して光照射時に固定化能力を示し得る、と考えられる。このような効果が得られる光固定化材料として、後述するように、光吸収によって分子構造を変化できるフォトクロミック材料、特にシス−トランス異性化のような大きな構造変化を起こす光異性化材料が好ましく例示される。
【0035】
光反応性成分の種類は限定されないが、例えば材料の形状変化を伴う異方的光反応を起こし得る成分である光異性化成分や光重合性成分を、好ましく例示することができる。光反応性成分として光異性化成分が好ましい。そして光異性化成分としては、例えばトランス−シス光異性化を生じる成分、特に代表的にはアゾ基(−N=N−)を有する色素構造、とりわけ、アゾベンゼンやその誘導体の化学構造を持つ成分が好ましいものとして例示できる。
【0036】
アゾ基を有する色素構造としては、ハメット則における置換基定数σが負である1又は2以上の電子供与性置換基を含む芳香環と、同置換基定数σが正である1又は2以上の電子吸引性置換基を含む芳香環とを、それぞれアゾ基の両側に備えたアゾベンゼン構造であることが望ましい。アゾ基は光照射によりシス−トランス異性化を生起しやすく、シス−トランス異性化が生起することで光固定化材料を構成する分子の立体配置が変化して光変形が生じる。
【0037】
ハメット則は「log(K/K )=ρσ」の式で表されるものであり、公知である。この式において、Kは m-, p- 置換フェニル化合物の反応に関するもの(例えば、無置換安息香酸のイオン化定数)である。ρはある反応で必要とされる電子吸引性と電子供与性の度合いを相対的に示す比例定数である。置換基定数σが正であれば電子吸引性置換基であり、置換基定数σが負あれば電子供与性置換基である。置換基定数σは、文献によりやや異なった値が示されることがあり、その一例を表1に示す。表の出典は、「J. Hine, "Physical Organic Chemistry", McGraw-Hill(1956), p.72」である。
【0038】
【表1】

【0039】
そして、前記アゾ基を有する色素構造が、下記式(1)が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造であることが望ましい。
Σ|σ|≦|σ1|+|σ2| …(1)
(上記の式(1)において、σはハメット則における置換基定数、σ1はシアノ基の置換基定数、σ2はアミノ基の置換基定数である。)
【0040】
光固定化材料は、固有の吸収波長を変化させた色素構造を含む材料とすることができる。一般的に、アゾベンゼン等の芳香環を持つ色素構造は、一定の電子吸引性官能基や電子供与性官能基を備えることにより、吸収波長が長波長側にシフトする。これらの基の電子吸引性や電子供与性が強いほどシフトする割合が大きい。
【0041】
そのシフトの割合は、一般的に、色素構造において置換した全ての置換基のσの絶対値の和が大きいほど、長波長側にシフトする。従って、上記の式(1)の左辺の値がある一定値以下になるように置換基を選択することで、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造を実現できる。表1に基づくと、p-ニトロ基(0.778)とp-アミノ基(ジメチルアミノ基:3級:−0.600)との組み合わせの場合には、式(1)の値は1.378であり、その時のカットオフ波長は650nmである。一方、p-シアノ基(0.628)とp-アミノ基(3級)の組み合わせの場合には、式(1)の値は1.228であり、カットオフ波長は570nmとなる。すなわち、各種置換基のσの値を基にして、式(1)の左辺の値が1.228以下になるような置換基の組み合わせを選択することにより、カットオフ波長が570nm以下である色素構造を設計できる。
【0042】
このようにカットオフ波長を制御することで、後述する定量を行う工程で蛍光分析を採用する場合でも、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光バンドに重ならないようにすることもできる。従って、被検物質の量を蛍光色素を利用した蛍光分析にて検出・定量する場合に、光固定化材料の色素構造が蛍光を吸収して(蛍光励起エネルギーの移動を生じて)蛍光を検出できなくなる、と言う不具合が回避できる。
【0043】
カットオフ波長として570nm以下を設定した光固定化材料を採用した場合に、実用性のある有効な蛍光色素としては、インドジカルボサイアニン系の Cy3や Cy5、あるいは Molecular Probe社の各種サイアニンダイマー系蛍光色素又は各種サイアニンモノマー系蛍光色素、Alexa Fluoro蛍光色の一群等の蛍光ピーク波長は565nm以上である。よってこの場合、光固定化材料における色素構造の光吸収波長の長波長側のカットオフ波長が 570nm以下であると、上記の作用・効果が確保できる。
【0044】
光固定化材料の光反応成分を分散するマトリクス中において、光反応性成分は単純に分散する以外に、マトリクスの構成分子と化学結合をしていても良い。マトリクス中の光反応性成分の分布密度をほぼ完全に制御できる点や、材料の耐熱性又は経時的安定性等の点からは、マトリクスの構成分子に対して光反応性成分が化学的に結合していることが特に好ましい。
【0045】
マトリクス材料としては、通常の高分子材料等の有機材料や、ガラス等の無機材料を用いることができる。マトリクスに対する光反応性成分の均一分散性あるいは結合性を考慮するなら、有機材料、とりわけ高分子材料が好ましい。
【0046】
上記高分子材料の種類は限定されないが、高分子の繰返し単位の中にウレタン基、ウレア基、又はアミド基を含んだものが、更には高分子の主鎖中にフェニレン基のような環構造を備えたものが、耐熱性の点では好ましい。高分子材料は必要な形状に成形可能である限りにおいて分子量や重合度を問わず、重合形態も直鎖状、分岐状、はしご状、星形等の任意の形態で良く、又、ホモポリマーでも共重合体であっても良い。光変形の経時的な安定性(経時的な固定力の維持)のためには、高分子材料のガラス転移温度が例えば100°C以上と言った高いものの方が好ましいが、ガラス転移温度が室温程度やそれ以下のものでも使用可能である。
【0047】
以上の点から、光反応性成分を含む高分子材料として特に好ましいものの2、3の具体例として、実施例で述べるものの他、次の一般式(1)〜(4)で表される高分子材料を挙げる。これらの例において、−Xはニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アルデヒド基又はカルボキシル基を、−Y−は−N=N−、−CH=N−又は−CH=CH−を、−R−はフェニレン基、オリゴメチレン基、ポリメチレン基又はシクロヘキサン基を、それぞれ示す。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
・試験試料接触工程
本工程は抗体を固定化した抗体固定化担体表面上に試験試料を接触させる工程である。試験試料は液体状に調製してあることが望ましい。液体状に調製する方法は特に限定しない。例えば、適正な緩衝液などの抽出液を用いて試験試料をホモジナイズした後に静置し上澄みを分取したり、ろ別することなどで液体状の試験試料が用意できる。
【0053】
試験試料の接触は比較する試験試料(コントロール、ネガティブコントロールなど)との間で同じ時間、同じ温度に調節されていることが望ましい。そのためには、1つの板状体の上に複数の抗体固定化担体が形成されたプレート上にて複数の試験試料を同時に本工程に供することが望ましい。その後、緩衝液等によって抗体固定化担体表面から試験試料を速やかに除去することで本工程は終了する。
【0054】
接触させる試験試料としては食品アレルギー物質の存在の有無を検出する食品などの検体の他、検量線を作成するために用いる被検物質の含有量が既知の溶液や、対照試験用の試料などが採用される。
【0055】
ここで、試験試料の注入口と空気抜き孔とを天板に設け、その注入口と空気抜き孔以外は閉じた容器内の底部に抗体固定化担体を形成することで、従来のELISA法のように蓋をする際のコンタミネーション発生のおそれを少なくできる。本方法では高濃度の抗体溶液を用いることができ、尚かつ溶解している抗体を効率的に利用できるので、従来のELISA法のように多量の抗体溶液を充填する必要がなくなるので、天板が閉じていても検出結果に与える影響を少なくできるからである。
【0056】
・第2抗体群接触工程
本工程は試験試料接触工程後の抗体固定化担体表面に第2抗体群を接触させる工程である。第2抗体群は適正な緩衝液にて溶解乃至懸濁させることが一般的である。第2抗体群には試験試料から検出したい被検物質に対応する抗体を含む。第2抗体群に含まれる抗体は第1抗体群に含まれる抗体と同じ被検物質に対して特異性をもつものであっても、被検物質を構成するタンパク質などの分子における別の部位に特異性をもつものが望ましい。第2抗体群に含まれる抗体は被検物質のうち検知する物質に対して特異性をもつほか、何らかの標識がなされている。標識としては特に限定しないが、前記標識は定量可能な反応を促進する酵素や、蛍光物質、発色物質などを結合することで行うことができる。これらの標識の方法は従来のELISA法において採用されるものを同様に採用できる。例えば、標識する酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼなどが用いられる。
【0057】
・検出定量工程
本工程は標識された抗体の量から被検物質を検出乃至定量する工程である。本工程は標識の種類により変化する。ELISA法に類似する方法(酵素反応により基質を変換して変換前後の発色・発光・蛍光の変化を検出する方法)では、標識である酵素に対応した基質を含む溶液を所定時間接触させた後に酵素反応を停止させ、その後の発色などから標識酵素によって変換された基質の量を定量する。変換された基質の量から標識酵素の量(=第2抗体群に含まれる抗体が結合した量)、つまり、試験試料から抗体固定化担体表面の抗体に結合・捕獲された被検物質の量に関連する量が求められる。被検物質の濃度が既知の試験試料を用いて検量線を作成している場合には試験試料中に含まれる被検物質の量が定量できる。
【0058】
変換された基質の量は分光学的方法にて検出できる。一般的な分光光度計はもちろん、撮像素子を用いても検出・定量することができる。特に撮像素子を採用して2次元的に測定する方法は複数の抗体固定化担体上における反応を同時に検出・定量することができるので望ましい。
【実施例1】
【0059】
(抗体の固定化:抗体固定化担体の調製)
1.光固定化材料としてのアゾ色素化合物(下記化学式参照)をピリジンに溶解した溶液、数mLを担体としてのガラス基板上に滴下した後、ガラス基板を2000rpmにて回転し、厚さ40〜50nmの薄膜を形成した(スピンコート法)。
【0060】
【化5】

【0061】
2.アゾ色素化合物にてコートされたガラス基板上に10μg/mLに調製した抗体溶液を1μLずつ複数スポットし、減圧下にて乾燥を行った。その後、青色LED下にて30分間静置し、スポットした抗体をガラス基板上に固定化した。
【0062】
3.PBST(0.01%Tween20/リン酸緩衝生理食塩水)による洗浄を行い滅菌水にてリンス後、乾燥させることでガラス基板上に抗体を固定化して本実施例の抗体固定化担体とした。
【0063】
(公定法(ELISA)との相関比較)
1.FASTKITエライザ卵(日本ハム社製)を用い、付属の試薬及びプロトコールに準じオボアルブミン標品の検出を行った。
【0064】
2.次いで抗オボアルブミン抗体を固定化した抗体チップを作成した。
【0065】
3.コントロールとしてオボアルブミン標品を1〜100ng/mLとなるようにPBSTにて調整を行い、抗オボアルブミン抗体の固定化部位に1μL滴下した。また、ネガティブコントロールとしてPBSTを同様に抗体の固定化部位に1μL滴下した。
【0066】
4.保湿、遮光下にて10分間静置により、抗原抗体反応を行い、その後、PBSTにて洗浄を行った。
【0067】
5.固定化チップ上面にギャップカバーガラス(松浪硝子工業:CG00044)を設置し、ビオチン標識抗オボアルブミン抗体(abccam社:ab8389)を1/1000に希釈したものを60μL添加した。
【0068】
6.保湿、遮光下にて10分間静置により1次抗体反応を行い、その後PBSTにて洗浄を行った。
【0069】
7.固定化チップ上面にギャップカバーガラスを設置し、Alkaline phosphatase labeled Streptavidin(KPL社:475-3000)を1/10000に希釈したものを60μL添加した。
【0070】
8.保湿、遮光下にて10分間静置によりビオチン/ストレプトアビジン反応を行い、その後PBSTにて洗浄を行った。
【0071】
9.固定化チップ上面にギャップカバーガラスを設置し、CDP-Star(R) Substrate with Emerald-IITMEnhancer(Applied Biosystems社:T2216)を充填し、ルミビジョンプロ400EX(アイシン精機社製)にて化学発光検出を行った。
10.それぞれの試験から得られたデータから相関比較を行った(図1)。
【0072】
(食品サンプルからの食品アレルギー物質の検出)
1.抗オボアルブミン抗体を固定化した抗体チップを作成した。
【0073】
2.コントロールとしてオボアルブミン標品が1〜50ng/mLとなるようにPBSTにて調製を行い、抗オボアルブミン抗体を固定化した部位に1μL滴下した。
【0074】
3.検体としての食品サンプル(プリン)を公定法に準じて、被検溶液として調製を行った。この溶液として、元の食品からの希釈率が1/100、1/500、1/1000となるようにした。それぞれの試験試料の溶液を抗体固定化担体における抗オボアルブミン抗体の固定化部位に1μLずつ滴下した。その後、公定法との相関比較にて行った工程にて反応・画像処理を行い、検出を行った(図2)。
【0075】
4.得られた画像データから検量線を作成し(図3)、食品中のアレルゲンタンパクの定量を行った。
【0076】
(結果)
公定法との相関比較を行った結果、公定法であるELISA法と高い相関性(R=0.98)を示すことが認められ、本技術の有用性が立証できた。
【0077】
加工食品であるプリン中からの食品アレルギーの原因物質であるオボアルブミンが約7.3ppm検出された。
【0078】
また、担体に対して高濃度で抗体を固定化することができたので、S/N比を高くすることができた。更に抗体の量も極めて少量で充分であると共に、従来の公定法では一晩必要だった固定化時間を30分間と極めて短時間にすることができた。特に従来の公定法では、反応時間として5時間必要であったのに対し、本方法では1時間以内と極めて短時間にすることが可能になり、迅速性が求められる食品検査において有効な技術であるといえる。
【0079】
更に、ルミビジョンプロ400EX(撮像素子による画像処理)を用いることで、複数の検体について発光の程度を二次元画像により一度に測定することが可能になり、測定時間を短縮できた。
【実施例2】
【0080】
スライドガラス上にcoverwell perfusion chamber gaskets(インビトロジェン社:C18139)を設置した基板を作成した。この底面に対して実施例1と同様のアゾ色素を光固定化材料として付着させた。
【0081】
10μg/mLで調製した被検物質としての抗オボアルブミン抗体溶液を各担体上に1μLずつ複数箇所(3箇所)にスポットした。減圧下にて乾燥して配置した。被検物質としての抗shrimp抗体(えび抽出タンパクに対応、Abkemiberia社:A1065)についても、抗オボアルブミン抗体(卵抽出タンパクに対応)と同様に担体表面に配置した。
【0082】
その後、青色LED下にて30分間静置し、スポットした抗体をガラス基板上に固定化した。PBSTによる洗浄を行い滅菌水にてリンス後、乾燥させることでガラス基板上に抗体を固定化した抗体固定化担体を調製した。
【0083】
次に直径1mmの試験試料注入口と空気抜き口とを設けた蓋板で覆った。この内部空間の容積は35μLとした。従って、専用の治具を用いなくても定量の試験試料を注入できる。
【0084】
コントロールとして卵抽出タンパクと、エビ抽出タンパクとをそれぞれ0〜160ng/mLの範囲になるようにPBSTにて調製し、注入した。具体的には、(オボアルブミン、トロポミオシン)の組み合わせとして(0ng/mL、160ng/mL)、(2.5ng/mL、80ng/mL)、(5ng/mL、40ng/mL)、(10ng/mL、20ng/mL)、(20ng/mL、10ng/mL)、(40ng/mL、5ng/mL)、(80ng/mL、2.5ng/mL)、(160ng/mL、0ng/mL)の8種類とした。また、ネガティブコントロールとしてPBSTを採用し、同様に注入・充填した。
【0085】
保湿、遮光下にて10分間静置して抗体抗原反応を行った後、PBSTにて洗浄を行った。
【0086】
ビオチン標識抗アルブミン抗体(abccam社:ab8389)及びBiotinylation kit(フナコシ社製:IM30)によりビオチン標識を行ったビオチン標識抗shrimp抗体のそれぞれが1μg/mLの濃度になるように希釈したものを注入・充填した。
【0087】
保湿、遮光下にて10分間静置により1次抗体反応を行い、その後PBSTにて洗浄を行った。
【0088】
Alkaline phosphatase labeled Streptavidin(KPL社:475-3000)を1/10000に希釈したものを注入・充填した。
【0089】
保湿、遮光下にて10分間静置によりビオチン/ストレプトアビジン反応を行い、その後PBSTにて洗浄を行った。
【0090】
CDP-Star Substrate with Emerald-II Enhancer(Applied Biosystems社:T2216)を充填し、ルミビジョンプロ400EX(アイシン精機社製)にて化学発光検出を行った。
【0091】
(結果)
結果を図4〜図6に示す。なお、図4において卵抽出タンパクにおける信号強度と、エビ抽出タンパクに対する信号強度とはそれぞれ強度が異なるので、それぞれグラフに収まるように記載している。図5及び図6には実際に発色させた担体の写真を示す(黒色に近いほど発色が進行している)。
【0092】
図4〜図6から明らかなように、両者共に、被検物質の濃度が高くなるに従い、発色も大きくなることが分かった。また、両者を混合しても各々の被検物質に対する特異性を示すことから、複数の被検物質について独立且つ同時に濃度を測定できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の検体の定量的検出方法は、食品に含まれる食品アレルギー物質などの微量物質の検出・定量などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1において検証した本発明の方法と従来方法(公定法)との相関性を示すグラフである。
【図2】実施例1にて使用した担体の発色の様子を示す図である。
【図3】実施例1において求めた検量線である。
【図4】実施例2において求めた検量線である。
【図5】実施例2にて使用した担体の発色の様子を示す図である。
【図6】実施例2にて使用した担体の発色の様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変形を起こし得る材料である光固定化材料を備える表面をもつ担体の該表面に、被検物質のうちの1以上に対して特異性をもつ抗体を1種以上含むグループを1以上備える第1抗体群を該グループ毎に配置するステップと、その後、光照射を行い該光固定化材料を光変形させるステップとをもち、該担体上に該第1抗体群が固定された抗体固定化担体を調製する固定化工程と、
前記被検物質の検出を行う対象物である検体を含む試験試料を前記担体の前記表面に接触させる工程と、
前記被検物質のうち検知する物質に対して特異性をもち且つ標識された抗体を1種以上含む第2抗体群を接触させる工程と、
前記標識された抗体の量から前記被検物質を検出乃至定量する検出定量工程と、を有することを特徴とする検体の定量的検出方法。
【請求項2】
前記標識は定量可能な反応を促進する酵素であり、
前記検出定量工程は、該酵素反応における基質を添加して酵素反応を進行させるステップと、酵素反応の進行の程度を検知するステップと、を備えることで前記酵素の量を定量化する工程である請求項1に記載の検体の定量的検出方法。
【請求項3】
前記担体の表面に前記第1抗体群を配置するステップは、該第1抗体群の前記各グループ毎に前記担体を溶解した溶液を該表面に載置した後、溶媒を蒸発させるステップである請求項1又は2に記載の検体の定量的検出方法。
【請求項4】
前記光固定化材料はアゾ基を有する色素構造を含む材料である請求項1〜3のいずれかに記載の検体の定量的検出方法。
【請求項5】
前記アゾ基を有する色素構造は、ハメット(Hammet)則における置換基定数σが負である1又は2以上の電子供与性置換基を含む芳香環と、同置換基定数σが正である1又は2以上の電子吸引性置換基を含む芳香環とを、それぞれアゾ基の両側に備えたアゾベンゼン構造であることを特徴とする請求項4に記載の検体の定量的検出方法。
【請求項6】
前記アゾ基を有する色素構造が、下記式(1)が成立する条件下で前記電子供与性置換基と電子吸引性置換基とを備えることにより、蛍光分析用の蛍光色素における蛍光ピーク波長よりも短い波長域に光吸収波長の長波長側のカットオフ波長があるように制御した色素構造であることを特徴とする請求項5に記載の検体の定量的検出方法。
Σ|σ|≦|σ1|+|σ2| …(1)
(上記の式(1)において、σはハメット則における置換基定数、σ1はシアノ基の置換基定数、σ2はアミノ基の置換基定数である。)
【請求項7】
前記第1抗体群の前記グループは複数あり、
複数の前記グループはそれぞれのグループ毎に識別可能になるように所定のパターンで配置されている請求項1〜6のいずれかに記載の検体の定量的検出方法。
【請求項8】
前記担体の表面に固定化された前記抗体の該表面における密度は、対応する前記グループ毎に概ね等しい請求項7に記載の検体の定量的検出方法。
【請求項9】
前記検出定量工程は、前記担体毎に前記グループ毎の発色、蛍光及び/又は発光の程度を画像処理により検出・定量する請求項1〜8のいずれかに記載の検体の定量的検出方法。
【請求項10】
前記検体は食品、食品加工物、食品原料又は食品製造工程における生産物、副生産物である請求項1〜9のいずれかに記載の検体の定量的検出方法。
【請求項11】
前記被検物質が小麦、そば、卵、乳、落花生、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、桃、やまいも、リンゴ、ゼラチン、ホタテ、トマト、ポテトのいずれかに含まれる、タンパク質、糖、脂質、核酸及びハプテンなどの人体に対するアレルギー反応を示す可能性がある物質群から選択される1種以上である請求項1〜10のいずれかに記載の検体の定量的検出方法。
【請求項12】
前記被検物質は、アルブミン、グロブリン、プロラミン、グリアジン、グルテン、オボアルブミン、オボムコイド、カゼイン、ラクトグロブリン、Arah1、Arah2、Arah3、β−ブラインコンポーネント、トロポミオシン、アルギニンキナーゼ、GAPDH、パルブアルブミン、フィッシュコラーゲン、β−コングリシニン、β−コングリシニンαサブユニット、FBPA、クラスIエンドキナーゼ、PG、Fface、SOD、Pease、パタチン、プロフィン、リピットトランスファープロテイン、α−アミラーゼトリプシンインヒビター、カルシウムバインディングプロテイン−α−B鎖からなる物質群から選択される1種以上である請求項11に記載の検体の定量的検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−240321(P2007−240321A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62972(P2006−62972)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】