説明

検体を含有するポリマーフィルムを有する光学記憶媒体、その使用

【課題】センサー材料を光学記憶媒体基板に適用する方法を提供する。
【解決手段】ヒドロゲルを含むポリマー支持体と検体特異的試薬とからセンサーフィルムを構成し、センサーフィルムを光学記憶媒体の少なくとも一部分に取り付けてなるセンサーデバイスであって、対象とする試料に曝露した後、得られたセンサーを光学記憶媒体ドライブで読み取って、その試料の物理的、化学的及び生物学的パラメーターを定量分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的、化学的及び生物学的種の分析のためにセンサー材料を光学記憶媒体上に付着(deposition)させる方法、並びにそれにより製造される、流体中の揮発性及び非揮発性化合物の定量用センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的及び化学的化合物並びにその他のパラメーターの定量は、通例、この目的用に特別に設計された専用のセンサー系を用いて行われる。これらのセンサー系は、電気化学、光学、音響、磁気、及びその他の多くのタイプの検出を始めとする様々な原理に基づいて作動する。例えば、Mandelisら、Physics、Chemistry and Technology of Solid State Gas Sensor Devices、Wiley (New York、NY)、1993; Potyrailoら、“Optical Waveguide Sensors in Analytical Chemistry: Today’s Instrumentation、Applications and Future Development Trends”、Fresenius’J.Anal.Chem.1998、362、349−373; Albertら、“Cross−reactive Chemical Sensor Arrays”、Chem.Rev.2000、100、2595−2626参照。また、色変化の目視評価を行うための様々な比色分析用液体及び固体試薬が利用可能である。Kolthoff、“Acid−Base Indicators”、The MacMillan Company(New York)、1937;“Chemical Detection of Gaseous Pollutants” Ruch、W.E編、Ann Arbor Science Publishers (Ann Arbor、MI)、1968。
【0003】
既に、生物学的、化学的、及び生化学的試料の光学的検査を実施するのにCD/DVDドライブを使用することができるということが提案されている。しかし、これらのドライブが光学媒体に記憶されたデジタルデータと関連していないパラメーターの検出に有用であるためには、それらドライブの光学系を、ある場合には追加の光学検出器をもたせることにより、変更するのが好ましい。例えば、米国特許第5892577号参照。
【0004】
CD/DVDドライブの使用が進むにつれて、CD/DVDドライブで使用するために光学記憶媒体と関連したセンサーの開発も進められている。例えば、米国特許第6327031号には、光の一部分を1つの検出器に向けて反射すると共に光の一部分を別の検出器に伝送する半反射層を有する光ディスクが開示されている。
【0005】
米国特許第6342349号には、別の光学−ドライブに基づく測定系が記載されている。この系では、検体特異的信号素子が光学記憶媒体のトラッキング機構に配置されている。従って、検体特異的信号素子は、変更又は追加の光学素子が加わってはいるがトラッキングに用いた光学によって読み取り可能である。この系が適用できるように、信号応答部は、集束した光ビームのサイズと適合可能な小さいサイズであり、反射性である。最も好ましくは、直径1〜3マイクロメートルの金微小球である。また、従来のCDプレイヤーを用いて小分子リガンドと生体分子とを認識スクリーニングするための別の方法も既に記載されている。CDの読み取り面内に用いる一般的なポリマー複合材であるポリカーボネートの末端を活性化することによってリガンドをCDの読み取り面に付けるための手法が開発された。インクジェットプリンターを用いてリガンドのトラックをディスク上に印刷することによってCDの表面にディスプレイを作成した。この方法を使用して、リガンド分子の全アセンブリが別々のブロック中に分配されたディスクを作成した。これらのブロックを集めてディスクのデジタル層内に記憶されたCDROM−XAフォーマット済みのデータと相関させることによって分子アレイを開発した。所与のリガンド又は一組のリガンドを含有するディスクの領域を、トラッキング及びヘッダー情報を用いてそれらの空間的位置によりマークした。表面に表されたリガンドと生体分子のと間の認識は誤差決定ルーチンによってスクリーニングされた(Org.Biomol.Chem.、1、3244−3249(2003)参照)。
【0006】
光学記憶媒体上にセンサー領域及び/又はスポットを作成するのに使用する付着方法としては、ディスクの表面上へのインクジェット印刷及びロボット又は手動滴下添加(米国特許第6342349号)、ディスク上での生物学的マイクロアレイの光指向合成(国際公開第98/12559号)、並びにディスク上でのアレイのスポット形成(国際公開第99/35499号)がある。かかるセンサー領域又はスポットに利用される検体特異的試薬はアレイ、例えばコンビナトリアルアレイ状に配列することができる(国際公開第98/12559号)。固体及びゲルタイプの検体特異的試薬をディスクに適用するのに加えて、センサー領域/スポットに利用される他のタイプの試薬としては液体を含有する試薬がある(Anal.Chem.71、pp.4669−4678(1999)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−248007号公報
【特許文献2】特表2002−535623号公報
【特許文献3】特開平4−330298号公報
【特許文献4】米国特許第5892577号
【特許文献5】米国特許第6327031号
【特許文献6】米国特許第6342349号
【特許文献7】国際公開第98/12559号
【特許文献8】国際公開第99/35499号
【特許文献9】米国特許第6500547号
【特許文献10】米国特許第5668202号
【特許文献11】米国特許第5644017号
【特許文献12】米国特許第5356668号
【特許文献13】米国特許第5043203号
【特許文献14】米国特許第5028690号
【特許文献15】米国特許第4774315号
【特許文献16】米国特許出願公開第2002/0173040号
【特許文献17】欧州特許出願公開第1189062号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mandelisら、Physics、Chemistry〜Technology of Solid State Gas Sensor Devices、Wiley (New York、NY)、1993
【非特許文献2】Potyrailoら、J.Anal.Chem.1998、362、349−373
【非特許文献3】Albertら、Chem.Rev.2000、100、2595−2626
【非特許文献4】Kolthoff、“Acid−Base Indicators”、The MacMillan Company (New York)、1937
【非特許文献5】Ruch、W.E編、Ann Arbor Science Publishers(Ann Arbor、MI)、1968
【非特許文献6】Org.Biomol.Chem.、1、3244−3249(2003)
【非特許文献7】Anal.Chem.71、pp.4669−4678(1999)
【非特許文献8】USCD Scientists Develop Novel Way to Screen Molecules Using Conventional CDs and Compact Disk Players,Science and Engineering UCSD Press Release,August 20,2003
【非特許文献9】La Clair et al.,”Molecular Screening on a compact disc,”Org.Biomol.Chem.、2003,1(Advance Article)(Abstract)
【非特許文献10】La Clair et al.,”Molecular Screening on a compact disc,”Org.Biomol.Chem.、2003,1(Advance Article)(Paper)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
検知スポットを光学記憶媒体上に付着させるには、これらの検知スポットを明確な位置に再現性の高い方法で設けるのが有利であろう。従って、光学記憶媒体基板上にかかるセンサースポットを付着させるための改良された方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、センサーデバイス及びこれらのセンサーデバイスの作成方法に関する。このセンサーデバイスは、光学記憶媒体と、その光学記憶媒体の少なくとも一部分に設けられた検体特異的試薬と組み合わせてポリマー支持体を含むセンサーフィルムとを有している。センサーフィルムに利用されるポリマー支持体は、サイズ、相、溶解度、及びイオン電荷の点で検体に対して選択的に透過性であることができる。一実施形態では、センサーフィルムは、センサースポットとして光学記憶媒体の表面に設けられる。
【0011】
これらのセンサーデバイスを製造する方法は、基板として使用する光学記憶媒体を選択し、ポリマー支持体を選択し、検体特異的試薬をポリマー支持体に添加してセンサーフィルムを形成し、センサーフィルムを光学記憶媒体に付けることを含んでいる。一実施形態では、センサーフィルムを調製し、光学記憶媒体に付ける前に対象とする検体に曝露する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、物理的、化学的及び生物学的パラメーターの定量分析のために光学記憶媒体ドライブで読み取り可能なセンサーデバイスを形成する方法に関する。光学記憶媒体に付着した検知用物質の化学的及び生化学的に関連した変化に関する定量的情報が得られる。本発明は、センサーフィルム又はセンサー層が設けられた光学記憶媒体を提供する。本明細書で使用する場合、「センサー層」と「センサーフィルム」同義である。
【0013】
光学記憶媒体はオーディオ、ビデオ、及びコンピューターデータ用途で広く知れ渡っている。光学記憶媒体物品の例としては、限定されることはないが、光ディスク、例えばCD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD−RW、ブルーレイ(Blu-ray)並びに当技術分野で公知の他のあらゆる光学記憶媒体がある。DVD−5、DVD−9のような多層構造体、及びDVD−10やDVD−18のような多面フォーマット品、並びに光磁気ディスク(MO)も包含される。以下では、コンパクトディスク(CD)及び/又はデジタルバーサタイルディスク(DVD)に関連して本発明を説明するが、本明細書に記載する方法はいかなる光学記憶媒体でも実施することができる。
【0014】
本発明によると、最初に基板、すなわち光学記憶媒体を準備する。この光学記憶媒体基板はいかなるタイプのものでもよいが、少なくとも片面には予め情報がピット及び/又は連続の溝の形でコードされていなければならない。センサー基板は読み出し又は非読み出し面上に何らかのラベルを有するあらゆる工業用のCD又はDVDであることができる。ラベルが存在する場合、そのラベルはあらゆる色、透明/不透明、などであることができる。加えて、本発明によると、光学記憶媒体は、ディスク上のセンサー材料の配置に合致するか又は何らかの意味で関連した情報を有する必要はない。いかなる予め記録した情報も、センサーが作動するのに充分である。
【0015】
通例、CDは透明なポリカーボネートプラスチックの射出成形された一片である。製造中、プラスチックは、データの単一の連続した極めて長い螺旋状トラックとして配列された微細な隆起で刻印される。データの螺旋状トラックはディスクの内側から外側に向かって旋回する。透明なポリカーボネートが形成されるとき、薄い反射層(通例、アルミニウム、銀又は金)がディスク上にスパッターされ、微細な隆起を被覆する。次いで、反射層を覆ってアクリルの薄い層をスプレイ又はスピンコートして反射層を保護すると共にラベル用表面を提供する。CDについて論ずるときに隆起の代わりにピットに言及することが多い。ピットは反射面上に現れ、隆起はレーザーが読み出す面上に現れる。光学媒体プレイヤーは光学記憶媒体基板上に隆起として記憶されたデータを見出して読み出す機能を果たす。DVDの場合、データの螺旋状トラックが刻印された射出成形基板は厚さがCD(公称0.6mm)の半分である。基板に反射金属層をスパッターした後、UV−硬化性接着剤を用いて別のポリカーボネート基板(同様に、公称0.6mm)に接合する。
【0016】
例えば、図1を参照すると、様々な実施形態では、本発明の光学記憶媒体10は複数の層を含んでいることができ、その中にはセンサースポットのフィルム又は層70がある。これらの層には、限定されることはないが、ポリカーボネートなどのような熱可塑性材料から作成された第1基板層20、同様にポリカーボネートなどのような熱可塑性材料から作成された第2基板層60、アルミニウム、銀又は金、などのような金属から作成された反射層40、場合により、第2基板中に成形されたピット及びランドの領域を含む「データ層」及び/又はフタロシアニンなどのような記録可能な材料又はMO材料、相変化材料、カルコゲニドなどのような追記可能な材料から作成された記録層50、結合接着剤層30、並びに第2基板60の領域を被覆するセンサースポット層又はフィルム70がある。これらの各層については以下に詳述する。
【0017】
本明細書では好ましい層の組合せについて例示し説明するが、他の層の組合せも当業者には明かであり、本発明に包含されることに注意されたい。
【0018】
第1の基板20と第2の基板60の両方に使用するプラスチックは、ほぼ室温(約25℃)から約150℃までのスパッタリング温度のようなその後のプロセスパラメーター(例えば、その後の層の設置)、及びその後の貯蔵条件(例えば、約70℃までの温度の暑い車内)に耐えることができなければならない。すなわち、プラスチックは、様々な層付着段階の間及び末端消費者による貯蔵の間の変形を防ぐのに充分な熱的及び機械的安定性をもっているのが望ましい。可能なプラスチックとしては、ガラス転移温度が約100℃以上の熱可塑性材料があり、約125℃以上が好ましく、約140℃以上がより好ましく、約200℃以上がより一層好ましい(例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリカーボネート、など)。中でも、m−フェニレンジアミンがスルホンジアニリン又はオキシジアニリンに置換されているポリエーテルイミド、並びにポリイミド、以上のプラスチックを1種以上含む組合せ、などのような約250℃より高いガラス転移温度を有する材料が最も好ましい。一般に、ポリカーボネートを使用する。
【0019】
第1基板20及び第2基板60として使用できる材料のその他の例としては、限定されることはないが、非晶質、結晶性、及び半結晶性の熱可塑性材料、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(例えば、限定されることはないが、線状及び環状ポリオレフィン、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、など)、ポリエステル(例えば、限定されることはないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート、など)、ポリアミド、ポリスルホン(例えば、限定されることはないが、水素化ポリスルホン、など)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン(例えば、限定されることはないが、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−コ−アクリロニトリル、スチレン−コ−無水マレイン酸、など)、ポリブタジエン、ポリアクリレート(例えば、限定されることはないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−ポリイミドコポリマー、など)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(例えば、限定されることはないが、2,6−ジメチルフェノールから誘導されたもの及び2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマー、など)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、及びテトラフルオロエチレン(例えば、Teflon)がある。
【0020】
本発明の光学記憶媒体10を製造するには、まず最初に、単軸式又は二軸式押出機、ニーダー、ブレンダー、などのような様々な前駆体を適切に混合することができる従来の反応容器を用いて基板材料を形成することができる。押出機は、基板材料前駆体の分解を起こすことなくそれら前駆体を融解させるのに充分な高い温度に維持するべきである。例えばポリカーボネートの場合、約220〜約360℃の範囲、好ましくは約260〜約320℃の範囲の温度を使用することができる。同様に、押出機内の滞留時間は、分解を最小にするように制御するべきである。約2分(min)以上までの滞留時間を使用することができ、約1.5min以下が好ましく、約1min以下が殊に好ましい。所望の形態(通例ペレット、シート、ウェブ、など)に押し出す前に、混合物は、場合により、溶融ろ過、スクリーンパックの使用、又はそれらの組合せなどでろ過して、望ましくない汚染物質又は分解生成物を除去することができる。
【0021】
プラスチック組成物が生成したら、様々な成形技術、加工技術、又はこれらの組合せを用いて基板を形成することができる。可能な技術としては、射出成形、フィルムキャスティング、押出、プレス成形、ブロー成形、スタンピング、などがある。一旦基板を製造したら、電気メッキ、コーティング技術(例えば、スピンコーティング、スプレイコーティング、蒸着、スクリーン印刷、塗装、浸漬、など)、積層、スパッタリング、など、及び以上の加工技術を1種以上含む組合せのような追加の加工処理を用いて所望の層を基板上に配置することができる。通例、基板は厚さが約600ミクロン以下である。
【0022】
必要ではないが、幾つかの実施形態では、光学記憶媒体はデータがコードされている。記録可能な媒体において、データはレーザーによりコードされるが、このレーザーが活性データ層を照射すると、その層が相変化を起こし、その結果一連の高反射性又は非反射性領域が生じ、データストリームが作成される。この場合、レーザービームはまず基板を通過した後にデータ層に到達する。データ層で、ビームは、コードされているデータに従って反射するか、又は反射しない。次にこのレーザー光は基板内を通って戻り、光学検出器系に入り、そこでデータが解釈される。従って、データ層は基板と反射層との間に配置されている。光学用途用のデータ層は通例基板層上のピット、溝、又はそれらの組合せである。好ましくは、データ層は第1の基板20表面内に埋め込まれている。通例、金型が本明細書で定義される溶融ポリマーで充填される射出成形−圧縮技術によって基板を製造する。金型はプリフォーム、インサート、などを含有していてもよい。ポリマー系を冷却し、少なくとも部分的にまだ溶融状態にある間に圧縮して、基板の所望の部分、すなわち所望の区域の片面又は両面上に螺旋状の同心その他の配向で配列された所望の表面構造、例えばピット及び溝を刻印する。
【0023】
磁気又は光磁気用途用に可能なデータ層としては検索可能なデータを記憶することができるあらゆる材料を挙げることができ、その例としては、限定されることはないが、酸化物(例えば、酸化ケイ素)、希土類元素、遷移金属合金、ニッケル、コバルト、クロム、タンタル、白金、テルビウム、ガドリニウム、鉄、ホウ素、その他、並びに以上のものを1種以上含む合金及び組合せ、有機染料(例えば、シアニン又はフタロシアニンタイプの染料)、並びに無機相変化化合物(例えば、TeSeSn、InAgSb、など)がある。
【0024】
場合により、塵埃、オイル、その他の汚染物質に対して保護する保護層(1以上でもよい)を、本発明の光学記憶媒体に設けてもよい。これらの保護層は約100ミクロン(μ)超〜約10オングストローム(Å)未満の厚さであることができ、約300Å以下の厚さが好ましく、幾つかの実施形態では、約100Å以下の厚さが殊に好ましい。保護層の厚さは通常、少なくとも部分的に、使用するリード/ライト機構のタイプ、例えば、磁気、光学、又は光磁気によって決まる。可能な保護層としては、特に、金、銀、窒化物(例えば、特に、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素など)、酸化物(例えば、二酸化ケイ素など)、ポリマー材料(例えば、ポリアクリレート又はポリカーボネート)、炭素フィルム(ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、など)、及び以上の材料を1種以上含む組合せのような防食材料がある。
【0025】
場合により、本発明の光学記憶媒体には誘電体層が含まれていてもよい。誘電体層(1層以上)は、存在する場合、通例、データ層の片面又は両面に配置され、ヒートコントローラーとして使用されることが多く、約1000Å以下又はそれより厚く、また通例約200Å以下程度の厚さであることができる。可能な誘電体層としては、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、など)、酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、硫化物(例えば、硫化亜鉛)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、及び以上の材料を1種以上含む組合せがあり、中でも環境内で適合可能であり、好ましくは周囲の層と反応性でない材料がある。
【0026】
反射層40は、データ検索を可能にするのに充分な量のエネルギー(例えば、光)を反射するのに充分な厚さを有するべきである。場合により、1より多くの反射層が存在してもよい。通例、反射層(1以上)は約700Å程度以下の厚さを有することができ、約300〜約600Åの範囲の厚さが一般に好ましい。可能な反射層としては、金属(例えば、アルミニウム、銀、金、ケイ素、チタン、並びに以上の金属を1種以上含む合金及び混合物、など)を始めとして特定のエネルギー範囲を反射することができるあらゆる材料がある。
【0027】
また、上記層の任意の組合せを接着することができる接着剤層30が光学記憶媒体10内に存在していてもよい。接着剤層は、データ検索デバイスに出入する光の媒体を介した伝送を実質的に妨害しない(例えば、そのデバイスで利用される光の波長で実質的に透明である、及び/又は約50%以上の媒体からの反射率、好ましくは約65%以上のパーセント反射率、より好ましくは約75%以上のパーセント反射率を可能にする)あらゆる材料からなることができる。可能な接着剤材料としては、アクリレート(例えば、架橋アクリレート、など)シリコーンハードコート、などのようなUV材料、並びに以上の材料を1種以上含む反応生成物及び組合せがある。UV材料のその他の例が米国特許第4179548号及び同第4491508号に記載されている。幾つかの有用なモノアクリレートモノマーとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ドデシルなどがある。幾つかの有用な多官能性アクリレートモノマーとしては、例えば、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、及びこれらの組合せがある。接着剤層に使用することができるその他の接着剤として、熱可塑性アクリルポリマー、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリチオレン、UV硬化性有機樹脂、感圧接着剤、ポリウレタン、熱硬化可能なアクリルポリマー、アルキド、ビニル樹脂、並びに以上の接着剤を1種以上含む反応生成物及び組合せがある。
【0028】
接着剤層は前記多官能性アクリレートモノマーの1種のみ、又は1種以上の多官能性アクリレートモノマーを含む混合物(及びそのUV光反応生成物)を含有し得るが、好ましい層は2種の多官能性モノマーの混合物(及びそのUV光反応性生物)、好ましくはジアクリレート及びトリアクリレート(そのUV光反応性生物)を含有し、特定の場合にはモノアクリレートモノマーと共に使用する。場合により、接着剤層は、非アクリルUV硬化性の脂肪族性不飽和有機モノマーを、例えばN−ビニルピロリドン、スチレン、など、並びに以上の材料を1種以上含む反応生成物及び組合せのような材料を含む未硬化接着剤層の約50重量%以下の量で含んでいることができる。
【0029】
他の実施形態では、本発明の光学記憶媒体には接着剤層が存在しない。
【0030】
光学記憶媒体基板用の材料の種類は特に重要ではないが、好ましくは高い光透過率を有するべきである。適切な材料の例としては、限定されることはないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのような熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、などのような熱硬化性樹脂がある。これらのうち、ポリカーボネートのような光透過性の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】
光学記憶媒体基板として使用するのに適切な樹脂を製造する方法は当業者に公知である。ある場合には、末端封鎖することによって光学記憶媒体基板の重合を制御するのが好ましい。例えば、ポリマーの重合の際、成長するポリマー鎖はその末端に、そのポリマー鎖の継続した成長に利用可能な反応性の基をもっている。この反応性の基をもたない部分を組み込むという結果に至る代わりの反応が起こると、その鎖が鎖の延長を継続するという能力が失われる。このタイプの末端基を有する鎖は末端封鎖されているといわれる。幾つかの実施形態では、光学記憶媒体は、ジフェニルカーボネートをビスフェノールAと反応させるポリカーボネートから作成される。かかる場合、この反応では、ポリマー鎖の継続した成長に利用可能な反応性のヒドロキシル基を有する成長中のポリマーが生成する。この反応性のヒドロキシル基のない部分が組み込まれる結果に至る代わりの反応が起こると、その鎖が鎖の延長を継続する能力が失われ、すなわち末端封鎖される。当技術分野では、米国特許第4774315号、同第5028690号、同第5043203号、同第5644017号及び同第5668202号に記載されているものを始めとして様々な末端封鎖用試薬が既に開示されている。
【0032】
場合により、ポリカーボネート光学記憶媒体は、ビスフェノールモノマーとホスゲン又はジフェニルカーボネート並びに場合により処理された及び未処理の光学記憶媒体の表面エネルギーを変更するべく選択された任意のモノマーが関与する重縮合法によって作成することができる。表面エネルギーを変更するコモノマー又は添加剤の例としては、単官能性フェノールのような末端封鎖性モノマー、末端基の形成を増大させることになる枝分かれ剤、シロキサンを含有するモノマー及び添加剤、帯電防止剤、防雲剤、表面偏析性添加剤並びにその他の添加剤がある。
【0033】
光学記憶媒体が得られたら、CD又はDVDのような光学記憶媒体物品にセンサースポットとして検体特異的試薬を付ける。本明細書で使用する場合、「センサースポット」及び「センサー領域」は、光学記憶媒体の表面上に、又はその表面内ではあるがデジタル情報を含有する領域にまで貫通しないように設置された凹み内に、所定の空間的位置で配置された、光学記憶媒体ドライブを用いて検知するためのセンサー材料を記述するために同義語として用いる。用途に応じて、センサースポットは環境内の物理的、化学的、生化学的、及びその他の変化に応答する。
【0034】
好ましくは、検体特異的試薬はセンサーフィルムに付けるか又はその中に組み込んだ後、そのフィルムを光学媒体ディスクに付ける。最も好ましくは、センサーフィルム上の検体特異的試薬が、光学記憶媒体基板に付けられたときにセンサースポットを形成する。センサーフィルムに利用されるポリマーは、検体がセンサーによって検出されるある種の化学種又は1群の化学種である場合選択された検体に対して透過性である。
【0035】
一実施形態では、検体特異的センサー素子はポリマー支持体内又は予備成形されたポリマー支持体上に固定化されてセンサーフィルムを形成する。好ましくは、ポリマー支持体は試薬と相溶性である。センサーフィルムのポリマー支持体は、好ましくは、光学記憶媒体基板の厚さ及び物品の光学特性に悪影響を及ぼすことのないように低い濃度のプラスチックフィルム、すなわち樹脂である。ポリマー支持体を形成するのに利用される樹脂はセンサーの用途による。樹脂は溶媒に溶解し得、検体特異的試薬は液体媒体に分散し得る。或いは、検体特異的試薬を、既に形成されたプラスチックフィルムに直接付けてもよい。
【0036】
センサーフィルムを製造するのに使用するポリマー材料は選択性、感度、及び検出限界のような検出特性影響し得る。従って、センサーフィルムに適切な材料は、分析しようとする対象の物質に関連した所望の応答時間、所望の透過性、所望の溶解度、透明性及び硬さの程度、並びにその他類似の特性を提供することができるポリマー及び/又は無機材料から選択される。幾つかの実施形態では、フィルム形成性のポリマー支持体は無機物質も含んでいる。
【0037】
適切なポリマー支持体としては、導電性ポリマー、例えばポリ(アニリン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(ピロール)、ポリ(アセチレン)、など、主鎖炭素ポリマー、例えばポリ(ジエン)、ポリ(アルケン)、ポリ(アクリル)、ポリ(メタクリル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルチオエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(スチレン)、ポリ(アリーレン)、など、主鎖非環式ヘテロ原子ポリマー、例えばポリ(酸化物)、ポリ(カーボネート)、ポリ(エステル)、ポリ(無水物)、ポリ(ウレタン)、ポリ(スルホネート)、ポリ(シロキサン)、ポリ(スルフィド)、ポリ(チオエステル)、ポリ(スルホン)、ポリ(スルホンアミド)、ポリ(アミド)、ポリ(尿素)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シラン)、ポリ(シラザン)、など、及び主鎖複素環式ポリマー、例えばポリ(ベンズオキサゾール)、ポリ(オキサジアゾール)、ポリ(ベンゾチアジノフェノチアジン)、ポリ(ベンゾチアゾール)、ポリ(ピラジノキノキサリン)、ポリ(ピロメリトイミド)、ポリ(キノキサリン)、ポリ(ベンズイミダゾール)、ポリ(オキシインドール)、ポリ(オキソイソインドリン)、ポリ(ジオキソイソインドリン)、ポリ(トリアジン)、ポリ(ピリダジン)、ポリ(ピペラジン)、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピペリジン)、ポリ(トリアゾール)、ポリ(ピラゾール)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(カルボラン)、ポリ(オキサビシクロノナン)、ポリ(ジベンゾフラン)、ポリ(フタリド)、ポリ(アセタール)、ポリ(無水物)、炭水化物、などがある。ポリマー支持体は、ホモポリマー、上記ポリマー若しくは樹脂のモノマー構成成分のコポリマー、又は当業者に公知の方法を用いて製造される以上の樹脂のポリマーブレンドであることができる。
【0038】
好ましくは、熱可塑性ポリマーをポリマー支持体として使用することができる。これらには、例えば、以下のような樹脂がある。ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリインデン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリビニルピリジン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルベンジルエーテル、ポリビニルメチルケトン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアミドメタクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリアセトアルデヒド、ポリクロラール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ビスフェノールと炭酸のポリカーボネート、ポリ(ジエチレングリコール/ビス−アリルカーボネート)、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン、6,12−ナイロン、ポリエチルアスパルテート、ポリエチルグルタメート、ポリリジン、ポリプロリン、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アセチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローストリブチレート、ポリウレタン樹脂など、オルガノポリシロキサン、例えばポリ(フェニルメチルシラン)、オルガノポリゲルマニウム化合物、及び上記ポリマー又は樹脂中のモノマー構成成分のコポリマー又は共重縮合物。加えて、以上のポリマーのブレンドを利用してもよい。
【0039】
本発明に従ってポリマー支持体として使用できる他のタイプのポリマーはヒドロゲルである。ヒドロゲルは互いに結合して水膨潤性であるが水不溶性の構造を形成している親水性ポリマーの三次元網状組織である。用語ヒドロゲルは、米国特許第5744794号に記載されているように乾燥状態(キセロゲル)及び湿潤状態の親水性ポリマーに対して適用される。ヒドロゲルを使用する場合、幾つかの異なる方法を用いてこれらのヒドロゲルを互いに結合することができる。まず、親水性ポリマーの放射線又はフリーラジカル架橋によるヒドロゲルの結合を利用することができる。その例は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ナトリウム/カリウムポリ(アクリレート)、多糖類、例えばキサントゲン酸塩、アルギン酸塩、グアーガム、アガロースなど、ポリ(ビニルピロリドン)及びセルロース系誘導体である。第2に、適当な多官能性モノマーを用いた親水性ポリマー及びモノマーの化学的架橋による結合を利用することができ、その例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート並びにその他のジ−及びトリ−アクリレート及びメタクリレートのような適切な化合物を用いて架橋したポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマーとジメタクリレートエステル架橋剤との共重合、ヒドロキシル終止ポリ(エチレングリコール)とポリイソシアネートとの反応又はトリオールのような多官能性モノマーの存在下でのジイソシアネートとの反応によって製造されたポリ(エチレンオキシド)系ポリウレタン、並びにジアルデヒド、ジエポキシド及び多塩基酸で架橋されたセルロースがある。第3に、親水性モノマー及びポリマーをブロック及びグラフトコポリマー中に組み込むことによる結合があり、その例は、ポリ(エチレンオキシド)と、以下のような適切なポリマーとのブロック及びグラフトコポリマーである。ポリ(エチレングリコール)(PEG)、アクリル酸(AA)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ(アクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート−コ−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ポリスチレンコポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ビニルアルコールコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリ(エチレンオキシド)系ポリウレタン尿素、ポリウレタン尿素及びポリ(アクリロニトリル)−コ−ポリ(アクリル酸)コポリマー、並びにポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(アクリル酸)の様々な誘導体。また、分子複合体の形成は親水性ポリマーと他のポリマーの間でも起こり得、その例はポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)とのポリ(エチレンオキシド)ヒドロゲル複合体である。最後に、高分子量の親水性ポリマーの絡み合い架橋による結合があり、その例は多官能性アクリル又はビニルモノマーと混和した高分子量のポリ(エチレンオキシド)に基づくヒドロゲルである。既に述べたように、上記ポリマーのモノマー構成成分のコポリマー又は共重縮合物、及び以上のポリマーのブレンドも利用することができる。
【0040】
これらの材料の応用例はMichieら、「Distributed pH and water detection using fiber−optic sensors and hydrogels」、J.Lightwave Technol.1995、13、1415−1420;Bownassら、「Serially multiplexed point sensor for the detection of high humidity in passive optical networks」 Opt.Lett.1997、22、346−348;及び米国特許第5744794にある。
【0041】
ポリマー支持体を構成する樹脂は、限定されることはないが、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアセテートを始めとする適切な溶媒に溶解し得る。一般に、樹脂を含有する溶液中の溶媒の濃度は約70重量パーセント以上であり、約75重量パーセント以上が好ましい。
【0042】
その他の実施形態では、非晶質フルオロポリマーをペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)に溶解することができ、ポリマー溶液から薄いフィルムをディスクの表面上に付着させることができる。非晶質フルオロポリマーから作成したフィルムは、固定化された試薬を有する従来のポリマーフィルムを完全に溶解する非極性溶媒に曝露したときでさえ極めて安定である。従って、これらの材料を用いて極めて堅牢なセンサースポット及びセンサーアレイを構築することができる。この場合、非晶質フルオロポリマーフィルムをセンサーフィルムの上若しくは下又は両方に設けてセンサーフィルムを劣化から保護する。
【0043】
他の実施形態では、非ポリマーセンサーフィルムをディスクの表面上に設けることができる。かかる非ポリマーフィルムの一例は、環境に応じてその反射率及び/又は透過率が変化する金属フィルムである。
【0044】
センサーフィルムのポリマー支持体は、好ましくは、選択された検体に対して透過性である。センサーフィルムは、サイズ、すなわち分子量、疎水性/親水性特性、相、すなわち検体が液体、気体若しくは固体であるかどうか、溶解度、イオン電荷、又はコロイド状若しくは粒子状物質の拡散を阻止する能力の点で検体に対して選択的に透過性であることができる。
【0045】
ポリマー支持体の透過性は、空隙率、多孔率、ポリマー鎖の配向のようなポリマー特性の物理的変動によってもたらされる。幾つかの実施形態で使用する化学的に選択的なポリマーは、特定の検体を優先的に輸送することができるポリマーである。化学的に選択的なポリマーの例としては、非イオン性検体を輸送するがイオン性検体を検知できるほどには輸送しないシリコーンポリマーである。
【0046】
他の実施形態では、サイズ選択的なポリマーを使用できる。サイズ選択的なポリマーは、特定の検体をそれらの分子サイズ及び分子量に応じて優先的に輸送することができるポリマーである。その例としては、硝酸セルロース、酢酸セルロース、及び検体をその分子サイズ及び分子量に応じて輸送するマグナ−Rポリマーがある。
【0047】
ヒドロゲルをポリマー支持体として使用する場合、選択的透過性はサイズ排除(すなわち、分子量、又はコロイド状若しくは粒子状物質の拡散の阻止)に基づくことができる。同様に、Teflon AFはイオン性種より小さい非イオン性種の選択的な拡散を可能にするように利用することができ、コポリマーは選択的な疎水性/親水性拡散を優先するように設計することができる(例えば、米国特許第6500547号及び米国特許出願公開第2002/0173040号参照)。
【0048】
ポリマーのより詳細な例は、Freudら、「A chemically diverse conducting polymer−based ‘electronic nose’」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1995、92、2652−2656;Albertら、「Cross−reactive chemical sensor arrays」 Chem.Rev.2000、1000、2595−2626;Grateら「Handbook of Biosensors and Electronic Noses.Medicine、Food、and the Environment」; E.Kress−Rogers編;CRC Press:Boca Raton、FL、1997;pp 593−612;Grateら、「Solubility interactions and the design of chemically selective sorbent coatings for chemical sensors and arrays」Sens.Actuators B 1991、3、85−111;米国特許第6010616号及び同第6093308号に記載されている。
【0049】
利用することができるその他のポリマー支持体としては、以上のポリマーのコポリマー、ポリマーブレンド、及び物理的混合物であって、有機及び無機顔料、導電性、半導体、及び非導電性粒子、縮合反応で製造され、有機成分をドープすることができる無機ゾル−ゲル材料、並びに高分子電解質、例えばポリ(スチレンスルホン酸)をグラフトした高密度ポリエチレン、ペルフルオロスルホネートアイオノマー、例えばDuPontがNafion(登録商標)として販売しているもの、などのような添加剤を含むものがある。
【0050】
適当なポリマー支持体が選択されたら、化学的に感受性の試薬、すなわち検体特異的試薬をポリマー支持体中に組み込むか、又はポリマー支持体に付けてセンサーフィルムを製造する。検体特異的試薬として利用される材料は当技術分野でセンサー材料として公知の染料及び試薬を含んでいる。本明細書で使用する場合、「検体特異的試薬」は、物理的、化学的〜生物学的種を検出するのに有用な比色分析、光屈折、フォトクロミック、サーモクロミック、蛍光、弾性散乱、非弾性散乱、分極、及びその他あらゆる光学特性を示す化合物である。検体特異的試薬としては、有機及び無機染料及び顔料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機フルオロフォア、無機フルオロフォア及び類似の物質がある。
【0051】
検体特異的試薬として使用することができる有機化合物の例としては、有機染料、有機フルオロフォア、蛍光染料、IR吸収性染料、UV吸収性染料、フォトクロミック染料、サーモクロミック染料、及びこの目的に使用できるその他公知の染料がある。染料の具体例としては、キサンテン染料、例えばローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなど、アクリジン染料、例えばアクリジンオレンジ、アクリジンレッドなど、アゾ染料、例えばエチルレッド、メチルレッドなど、ポルフィリン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料、例えば3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなど、メロシアニン染料、スチリル染料、オキソノール染料、トリアリールメタン染料、メチレンブルー、フェノールブルーなどがある。ブロモチモールブルーやブロモクレゾールグリーンのようなpH感受性の染料を始めとしてその他の染料も同様に使用できる。これらの染料は所望の用途に応じて単独で又は組み合わせて使用できる。所与の用途に利用する有機化合物の選択及びその量はその有機化合物の特性及び使用する目的に依存する。例えば、蛍光染料は、当技術分野で公知のようにppmのオーダーで樹脂バインダーに加えるとよい。
【0052】
検体特異的試薬として使用できる蛍光物質はセンサーフィルム上の予め定めた特定の位置に結合し、特定の波長で励起されると蛍光を発する。適当な波長は約200〜約1100nm、より好ましくは約300〜約1000nmの範囲であり、約350〜約950nmの範囲が最も好ましい。これらの物質の非限定例を表1に挙げる。
【0053】
【表1】

【0054】
他の実施形態では、予め定めた特定の位置に結合する非蛍光性検体特異的試薬を使用することができる。かかる試薬としては、近赤外(NIR)吸収性物質のような光吸収性物質がある。NIR吸収性物質の例としては、カーボンブラック及びポリ(スチレンスルホネート)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ(3,4−b)−1,4−ジオキシン)がある。
【0055】
一実施形態では、検体特異的試薬は約650nmの光を吸収する光吸収性試薬である。別の実施形態では、検体特異的試薬は約780nmで光を吸収する光吸収性試薬である。別の実施形態では、検体特異的試薬は約405nmで光を吸収する光吸収性試薬である。検体特異的試薬として利用することができるその他の適切な光吸収性物質の非限定例及び検出のための適当な波長を表2に挙げる。
【0056】
【表2】

【0057】
検体特異的試薬として使用できる他の物質としてサーモクロミック化合物がある。サーモクロミック化合物の例としては、Matsui−colorから入手可能な幾つかの染料がある。また、IR吸収性化合物、例えばフタロシアニン染料、コバルト又は白金複合体/キレート、幾つかのVAT染料、例えばアントラキノン及びメチレンブルー、ニグロシン化合物、例えばKeystone Black R又はAnirox、及び共役ポリマー/オリゴマー殊にドープされた形態のもの(ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール及びこれらの誘導体)もある。
【0058】
熱吸収性化合物も検体特異的試薬として使用できる。熱吸収性化合物の例としては、マイクロカプセル化噴霧可能液晶、例えば室温液晶がある。これらは、例えばLiquid Crystal Resources、Inc.から広範囲の遷移温度のものが入手可能である。室温液晶の一例はLiquid Crystal Resources、Inc.のSPC/R25C5Wである。
【0059】
加えて、温度感受性の散乱化合物を本発明に従って利用することができる。温度感受性の散乱化合物の例としては、室温で結晶濃度のすぐ上のマトリックス内の塩、及び室温で下部結晶溶液温度(LCST)未満のポリマーブレンドがある。
【0060】
屈折率の変化を示す物質も検体特異的試薬として使用できる。屈折率変化を示す物質の例としては、液晶ポリマー、すなわちハログラフィック(halographic)データ記憶用に開発されたポリマーがあり、この場合その屈折率又は複屈折率は温度が上昇するときに変化する。
【0061】
既に述べたように、検体特異的試薬としては、ナノ結晶、ナノ粒子及び量子ドットもあり、これらは当業者に公知である。適切なナノ結晶としては、限定されることはないが、MoS2、ZnO、Si、CdTe、及びGeからなるものがある。適切なナノ粒子としては、限定されることはないが、Cu、SiO2、及びLaB6からなるものがある。量子ドットとしては、本発明で使用する場合、限定されることはないが、PbS、CdSe、及びPbSeからなるものがある。
【0062】
既に述べたように、検体特異的試薬は合成の間にポリマー支持体中に組み込むことができ、又は予備成形されたポリマー支持体に別途付けることができる。得られたセンサーフィルムは、塗装、噴霧、スピンコート、浸漬、スクリーン印刷などを始めとする幾つかの技術のいずれかを用いて光学記憶媒体基板の表面上に被覆することができる。例えば、一実施形態では、ポリマー支持体及び検体特異的試薬を、光学データ記憶ディスクに対して実質的に不活性な(すなわち、この溶媒が光学データ記憶ディスクを攻撃したり、その他の悪影響を及ぼすことがないという意味である)比較的揮発性の有機溶媒に溶解し、そのセンサーフィルムの溶液を光学記憶媒体基板の表面に直接塗布する。一般に、溶媒中のプラスチックセンサーフィルムの濃度は約1重量パーセントより高く約25重量パーセント未満であり、好ましくは約10重量パーセントより高く約20重量パーセント未満である。
【0063】
ある場合には、光学記憶媒体基板に付けたセンサーフィルムを処理して別々のセンサー区域、すなわちセンサースポットを形成してもよい。かかる方法は当業者に公知であり、例えば物理的マスキング系並びにネガ及びポジの両方のホトレジストの使用がある。
【0064】
一般に、物理的マスキング系を利用して光学記憶媒体の表面のマスクされてない領域を改変する。このマスクはそれを貫通して配置された1以上の穴又はその中に配置された開口を含んでいる。1以上の穴又は開口は各々、例えば、実質的に円形、長円形、正方形、長方形、三角形又はより複雑な形状であることができる。マスクは光学記憶媒体の表面に隣接して配置して、複数の穴の各々を通り抜ける光が光学記憶媒体の表面の所定の位置と接触するのを選択的に防ぐ又は遮蔽するようにする。マスクの上にシャッターを配置してもよい。このシャッターは、開閉により光学記憶媒体の表面と光が接触するのを選択的に許す/防ぐ機械的デバイスである。一例においては、約1〜約10mmの範囲の開口を有するマスクを光学記憶媒体の表面上に設置することができる。次いで、光、例えばUV光をそのマスクを通して当てて反応を触媒し、その結果所望のサイズと形状のセンサースポットを作成することができる。こうして改変された領域は物品の表面を横切る厚さ及び形状が異なり得る。通例、マスクはプレート、シート、フィルム、コーティングなどからなる。
【0065】
ネガレジストの実施形態の場合、検体特異的試薬は、センサーフィルム内に分散したメチレンブルーのような光感受性の染料であることができる。フォトマスクを通してフィルムに光を照射すると、照射された染料分子は破壊されるか又はそうでなくてもセンサーとしての効果がない状態に変換される。残った活性染料がセンサースポットを形成する。
【0066】
ポジレジストの実施形態の場合、検体特異的試薬は、例えば光に対して不安定な部分を含有する不活性形態でコーティング中に分散される。光を照射すると、試薬はセンサーの作動に必要な活性形態に変換される。ここでも、センサーのサイズと形状は、フォトマスクを通って伝搬することができる光によって決定されるであろう。ポジ及びネガホトレジストの化学と方法論のその他の例は公知であり、以下の文献に開示されているものが含まれる。Tetrahedron Letters、No.12、pp 1029−1030、1979;Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol 96、pp 1193−1200、February 1999;Tetrahedron Letters、40、pp 1441−1444、1999;Synthesis、pp 1−15、January 1980;米国特許第6472541号並びに米国特許出願公開第20030186427号及び同第20030144499号。上記文献に開示されている光に対して不安定な保護基はいずれもセンサー用途で前駆体又は試薬として有用であると考えられる。光の使用以外の手段で除去することができる他の保護基は当技術分野で公知である。米国特許第5625081号に記載されている1つの例は保護された蛍光染料であり、この場合アシルオキシ保護基がアンモニア水を使用して除去される。
【0067】
他の実施形態では、検体特異的試薬は予備成形されたポリマー支持体に付ける。これらの場合、検体特異的試薬は、限定されることはないが、インクジェット印刷、マイクロアレイ形成、ロボットによるスポット形成、スクリーン印刷、などを始めとして当業者に公知の方法によって、予備成形されたポリマー支持体に付けることができる。その後の段階で、この検体特異的試薬を有するフィルムに物理的マスキング系と組み合わせて光を照射して、所望のサイズと形状のセンサースポットが作成されることになる反応を触媒する。
【0068】
ある場合には、接着剤を光学記憶媒体基板の表面に付けた後その接着剤にセンサーフィルムを付けて、光学記憶媒体基板に対するセンサーフィルムの接着力を高めることができる。かかる場合に適切な接着剤は好ましくは透明であり、当業者に公知である。適切な接着剤の一例はDICのDaicure 2200のようなCDラッカーである。センサーフィルムを光学記憶媒体に結合するのに使用できる他の適切な接着剤としては、(図1に示したような)光学記憶媒体10中の接着剤層30として使用するのに適切なものとして上記したものがある。接着剤のコーティングは、塗装、噴霧、スピンコート、浸漬、スクリーン印刷などを始めとして当業者に公知の方法によって設けることができる。ある場合には、DVDのような光学記憶媒体基板のデータ面上に接着剤をスピンコートする。
【0069】
幾つか実施形態では感圧接着剤を使用することができる。光学記憶媒体基板とセンサーフィルムを接触させる際に、センサーフィルムの1つの表面に感圧接着剤を付け、次いで正圧の下で光学記憶媒体基板を感圧接着剤と接触させる。感圧接着剤は水系でよく、例えば、アクリル、ビニルアクリル、スチレンアクリル、ウレタンアクリル、アクリル酸ブチル及びその他のアクリルエマルション又は架橋アルキルアクリルエステル、ゴム系接着剤、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーに基づくもの、エポキシド、シリコーン系接着剤、例えばシリコーン樹脂とポリジオルガノシロキサンのブレンドがある。本発明の方法に従って使用するのに適切な水系アクリルポリマーエマルション感圧接着剤としては、SolutiaのGelva GME 2234、National Starch & Chemical Co.の72.9292、及びRohm & Haas Co.のPhoplex N−500がある。本発明の方法に従って使用するのに適切な溶剤系感圧接着剤としては、SolutiaのGelva GMS 1753、及びNational Starch & ChemicalのDurotak 80−1058、並びにこれらの混合物がある。水系及び溶剤系液体感圧接着剤は、Meyerロッド、グラビア、ナイフオーバーロール(knife over-roll)、並びに3及び4−ロールリバースロールコーティングを始めとする標準的なコーティング方法を用いてプラスチック保護フィルムの移動式ウェブに付けて、接着剤をコートしたプラスチックセンサーフィルムを形成することができる。その後、通例、感圧接着剤をコートしたプラスチックセンサーフィルムを乾燥し、適当なサイズと形状に切断し、次いで光学記憶媒体基板の表面と接触させる。得られたプラスチックセンサーフィルム、感圧接着剤及び光学記憶媒体基板からなるサンドイッチ構造を、次に積層機に通して、プラスチックセンサーフィルムと光学記憶媒体基板との良好な接着を確保するとよい。
【0070】
一実施形態では、感圧接着剤をコートしたプラスチックセンサーフィルムにシリコーン被覆裏打ちを積層して、感圧接着剤を保護する。使用の際には、裏打ちを除去して感圧接着剤を露出させることができ、次いでこれを利用してセンサーフィルムを光学記憶媒体基板に付ける。これらの感圧接着剤はまた、図1に示したような光学記憶媒体10の接着剤層30としても使用できる。
【0071】
一実施形態では、センサーフィルム片を光学記憶媒体基板に付けた後接着剤層を硬化させる。通例、被覆された光学記憶媒体基板をUV光源で照射して接着剤を硬化させる。また、接着剤は、熱、空気及び/又は水との反応、又は反応副生物の除去によっても硬化させることができる。適切なUV光源の例として、Xenon Corp.の、螺旋状ランプを備えたRC747パルスUV/Vis系がある。約0.5J/cm2の光エネルギーでUV光源に曝露した際の硬化時間は約0.5〜約10秒で変化し得、約1〜約5秒の範囲が好ましい。一実施形態では、硬化の時間は約2秒である。得られたフィルム/光学記憶媒体基板構造は透明で、良好な品質であり、センサーフィルムと光学記憶媒体基板との間の接着は良好である。別の光源もこの目的に使用できる。一部リストを表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
既に述べたように、本発明のセンサーフィルムは光学記憶媒体物品の全表面に設けた後、得られるセンサーが別々の位置、すなわちセンサースポットに検体特異的試薬を含有することになるように処理することができる。他の実施形態では、本発明のセンサーフィルムは光学記憶媒体基板の所定の領域上に配置してもよい。すなわち、このセンサーフィルムを使用することにより、対象とする流体に曝露する前にディスクの選択された領域に配置することができるセンサースポットの大量生産が可能になる。
【0074】
また、センサーフィルムは、場合により、艶消剤、表面活性剤、チキソトロープ剤、など、及び以上の添加剤を1種以上含む反応生成物及び組合せのような様々な添加剤を含有していてもよい。光学記憶媒体の材料は、光学記憶媒体基板の表面上に検体特異的試薬及びフィルムを保持するのに必要な特性が得られるように選択及び/又は改変することができる。これらの改変としては、限定されることはないが、異なるコポリマー材料、添加剤、末端封鎖及びその他当技術分野で公知のあらゆる改変の使用を挙げることができる。
【0075】
他の実施形態で、本発明のセンサーフィルムはまた第2の透明なプラスチックフィルムに付けてもよく、その後これを光学記憶媒体物品に付ける。かかる第2の透明プラスチックフィルムはそのフィルムの片面に自身の接着剤層をもっていてもよい。透明フィルム上にセンサーフィルムがあるこの構造体は、センサーフィルムを光学記憶媒体基板に付ける前又はその後検体に曝露することができる。
【0076】
ある場合には、センサーフィルムを透明フィルムに付けた後、これを光学記憶媒体基板に付けることができる。この場合、センサーフィルムは透明フィルムの上にあり、環境に曝露される。一方、透明フィルムは光学記憶媒体基板とセンサーフィルムとの間にある。この実施形態では、センサースポットを周期的に環境に曝露することができ、適時に読み取りを得て反応の動力学を追跡することができる。
【0077】
別の実施形態では、透明なフィルムに付けたセンサーフィルムを、センサーフィルムが透明なフィルムと光学記憶媒体基板との間になるようにして光学記憶媒体基板に付けてもよい。この実施形態では、センサースポットは、透明フィルムを環境に曝露することによって、一度環境に曝露され、その後は保護されることができる。
【0078】
上の実施形態で使用できる接着剤層を有する透明プラスチックフィルムの例としては、Lovett Brandがスコッチテープとして販売しているもののような市販のテープがある。このフィルムをDVD又はCDに付け、均一に配分された圧力をフィルムにかける。得られるフィルム/DVD構造は透明で良好な品質である。
【0079】
その他の実施形態では、d−skin LLCのd−表皮又はModel CLR−33のようなCD耐擦過性保護フィルムを始めとする予備成形された透明プラスチック円形フィルムを使用してもよく、ディスク全体の上に配置することができる。他の適切なフィルムがQuieve Technologies、Inc.から市販されている。このフィルムは上記したような接着剤を用いて光学記憶媒体基板に付けることができる。フィルムを付けたら、検体特異的試薬を含有するセンサー領域を透明円形フィルム上に設けることができる。センサーフィルムは、光ディスクに付ける前に透明なプラスチックフィルムに付けることができる。このようにして、センサー領域を有する透明プラスチックフィルムを対象とする試料に曝露することができ、次いで分析のために光ディスク上に付けることができる。
【0080】
他の実施形態では、センサーフィルムの付着は好ましくは接着剤のような中間層を用いないで行う。かかる付着を行うには、光学記憶媒体基板の表面を適切な溶媒(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、エタノール、及び/又は2−プロパノール)で濡らした後、試薬を含有するセンサーフィルムの一領域を付ける。このフィルムの一例は、ブロモチモールブルー又はブロモクレゾールグリーンのようなpH試薬を有するポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)フィルムである。このフィルムは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーを1−メトキシ−2−プロパノールに適切なポリマー濃度で溶解させることによって形成することができる。pH試薬を加えた後、そのポリマー溶液を光学記憶媒体のような平坦な不活性光学記憶媒体基板上に塗布することによってフィルムを製造することができる。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール中の適当なポリマー濃度のポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーを、センサースポットの上にスピンコートしてそれらをディスクに固定することができる。或いは、センサースポットを配置する前にディスクの表面を1−メトキシ−2−プロパノールのような適切な溶媒で濡らして接着を促進することができるであろう。
【0081】
別の実施形態では、上記したように予備成形されたフィルムから切り出した多数のセンサースポットを均一な外圧の下で簡単な静電気接着によって光学媒体に接着する。ある場合には、そのように圧力と静電気接着により媒体に接着したセンサースポットをさらに制御された熱アニーリングによってそれらの位置に固定する。光学媒体上のセンサースポットがある部分を選択的に赤外線に曝露してそれらスポットの温度をポリマーマトリックスのガラス転移温度(Tg)より高いがポリカーボネートのTgより低い温度まで上昇させ、その後周囲温度に冷却する。
【0082】
さらに別の実施形態では、架橋用試薬を使用して、センサーフィルムと支持体媒体を交差反応させることができ、例えばUV−活性化架橋剤を使用することができよう。この実施形態では、試薬は、溶媒中試薬溶液からセンサーフィルムのポリマーマトリックスベース中に固定化される。
【0083】
以上の付着技術の殆どで、制御されたUV曝露、化学的表面前処理若しくは高温における付着後アニーリング、又は溶媒に富む雰囲気中でのアニーリングによるディスクの表面前処理によって、センサースポットとディスクの接着をさらに改良することができる。
【0084】
一旦得られたら、本発明に従ってセンサースポットを有するディスクは、対象とする検体の検出のために試料に曝露することができる。例えば、ブロモチモールブルー又はブロモクレゾールグリーンのようなpH感受性試薬を使用する場合、アンモニアを含んでいる可能性があるセンサースポットを蒸気又は液体に曝露し、そのセンサーを読み取り、かかるアルカリ性蒸気の存在及びその量を確認することができる。かかるフィルムを光学記憶媒体基板上に配置した後検体に曝露してもよいし、又はかかるフィルムを検体を含有する試料に曝露した後に光学記憶媒体基板上に配置してもよい。
【0085】
環境汚染物質、汚染物質、溶媒、などと接触した際のセンサースポットの完全性の低下の問題を低減するために、本発明の一実施形態では、センサースポット上に追加の薄い耐溶剤性オーバーレイヤーを設ける。かかるオーバーレイヤーはセンサースポットを劣化から保護する。オーバーレイヤーは、化学的決定の選択性の改良を促進する別の添加剤を含有することができる。このオーバーレイヤー自身が、検知層に向けてオーバーレイヤーを通り抜ける種に対する選択的な膜として機能することができる。
【0086】
適切な耐溶剤性オーバーレイヤーは液体形態でも気体形態でも検体に対して透過性であるが、環境汚染物質、汚染物質、及び溶媒に対しては不透過性で抵抗性である。従って、耐溶剤性オーバーレイヤーは、該当する検体の透過を可能にするがセンサー内への汚染物質の浸入を防ぐ選択的な膜として機能する。既に述べたように、オーバーレイヤーは別個の透明フィルムであることができる。ある場合には、耐溶剤性オーバーレイヤーは、ディスク全体に渡って均一に設け、センサースポットを所定の位置に保持するのに利用することができる。
【0087】
他の実施形態では、センサーフィルムを対象とする流体に曝露し、保護オーバーレイヤーをセンサースポットの上に設けて、環境の影響を低減し、及び/又はセンサースポットの回復時間を増大し、かつ光学記憶媒体ドライブでのセンサースポットの測定を可能にする。かかる場合、センサーフィルムは、光学記憶媒体基板に付ける前又は後に対象とする流体に曝露することができる。
【0088】
一実施形態では、耐溶剤性オーバーレイヤーは、Teflon(登録商標)AFという商標で販売されているテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)のランダムコポリマーである。Teflon(登録商標)AFの用途に関する詳細は、Lowryら、「Optical Characteristics of Teflon AF Fluoroplastic Materials」、Opt.Eng.1992、31、pp.1982−1985を参照されたい。その他の耐溶剤性オーバーレイヤーとしては、Nafion(登録商標)という商標で販売されているペルフルオロスルホネートアイオノマー、及び水に溶解しないポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)のようなヒドロゲルがある。耐溶剤性オーバーレイヤーとして使用できる他の適切なヒドロゲルとして、センサーフィルムのポリマー支持体として使用するのに適切な材料として上記したように選択的な透過特性を保有するものがある。
【0089】
一実施形態では、検体特異的試薬を透明フィルム上に固定化してセンサースポットを形成する。この実施形態では、1以上のセンサースポットを有するセンサーフィルムを流体又は蒸気のような試料に曝露し、曝露後そのセンサーフィルムを光学記憶媒体ドライブでの読み取りのために光学記憶媒体に取り付ける。
【0090】
試料への曝露後、検体特異的試薬の読み出しは光学記憶媒体ドライブの内部で行うことができる。光学ドライブはセンサースポットの物理的及び化学的特性の変化を検出することができる。センサーデバイスを、検体特異的試薬の特性を分析して検体の存否を決定することができる光学記憶媒体ドライブ内に入れる。好ましくは、検体特異的試薬を含有する光学記憶媒体の読み出しは、光学記憶媒体基板の従来の読み取りにおいて光学記憶媒体ドライブで使われるレーザーを用いて行うことができる。
【0091】
光学記憶媒体から得られる情報は化学的/生物学的と非化学的/非生物学的性質のものとの両方である。センサースポットは、試験間の変動を最小にする平均信号を提供することができる。スポットのアレイは、試験間の変動を最小にする平均信号を提供することができる。
【0092】
一実施形態では、各センサースポットは多数のピット/ランド区域をカバーする。センサー領域のこの特徴により、同じセンサースポットの異なる領域に渡って信号を平均して信号対雑音比を改良することができる。用語「カバーする」とは、光学記憶媒体基板のレーザー入射面とピット及びランドを含有するデータ層との間に位置するスポットをいう。スポットは、ピット/ランド層に必ずしも隣接するわけではないが特異的ピット/ランド領域に向かうレーザーの光路内にあるコーティング層に位置することができる。
【0093】
対応する濃度のある特定の検体と完全に反応する化学的試薬をいろいろな濃度で含有するセンサースポットのアレイも使用することができるであろう。このセンサースポットの
アレイは、検体及び環境の物理的及び化学的特性に応答するいろいろな化学的試薬を含有する。ある場合には、このセンサースポットアレイは、光学ドライブからの刺激(すなわち、光)の際に触媒され反応し始める化学的試薬を含有する。
【0094】
また、検出を同じセンサースポットから経時的に行って反応動力学に関する情報を提供することもできる。
【0095】
別の実施形態では、センサースポットのアレイは環境の非化学的パラメーターを検出する。これらのパラメーターの非限定例としては、物理的、機械的、誘電、電気、磁気、及びその他の非化学的パラメーターがある。より具体的な例は温度、粘度、圧力、酸化−還元電位、透過性、分子量、多孔率、疎水性、表面エネルギー、溶液導電率、などである。
【0096】
フルオロフォアを検体特異的試薬として使用する場合、フルオロフォアの励起波長は各種入手可能な光源及び光学媒体の従来のリーダー/レコーダーで使われているレーザーダイオードの作動の範囲内である。一実施形態では、検体特異的試薬の読み出し(励起)はレーザーダイオードを用いて行うことができる。代わりの実施形態では、検体特異的試薬の読み出しは光学記憶媒体ドライブの外部で行う。センサーフィルムを有するディスクを読み取るのに使用できる光学媒体リーダーの一実施形態について以下で論ずるが、本発明の方法は当技術分野で公知の任意の光学媒体リーダーを用いて使用することができるものと了解されたい。
【0097】
センサーフィルムを有するディスクを読み取るのに使用できる従来の光学リーダーは、トラッキング機構に取り付けた光学的リード/ライトピックアップ機構を含有する。通例、光学的リード/ライトヘッドとトラッキング機構の両方が、作動中回転する光学記憶媒体基板の表面に隣接して位置している。光学的リード/ライトヘッドは、レーザー光などのようなコード化/非コード化光を光学記憶媒体基板の表面に伝送するように作動可能なレーザーダイオードなどのような光源を含んでいる。また、光学的リード/ライトヘッドは、光学記憶媒体基板の表面からのレーザー光などのようなコード化/非コード化光を受け取るように作動可能なフォトダイオードなどのような受光デバイスも含んでいる。半反射鏡、ビームスプリッター、などのような反射素子、及び集光レンズ又は他の集束オプティックスも、光学記憶媒体基板の表面へ光を伝送し及び/又はその表面からの光を受け取るのに使用してもよい。
【0098】
光学リード/ライトヘッドを用い、トラッキング機構及び光学リード/ライトヘッドの選択的な位置決めによって、検体特異的試薬及びデータを光学記憶媒体基板の表面の所定の部分から読み取ることができる。通例、トラッキング機構は、1以上のガイドレール(一部にネジが切ってあってもよい)に可動に取り付けたピックアップキャリヤーアセンブリを含んでいる。1以上のガイドレールは、サーボモーターなどと共同して、トラッキング機構及び光学リード/ライトヘッドを光学記憶媒体基板の表面に対して移動させるように作動可能である。読み取りは、環境試料に曝露する前にセンサースポットを測定する段階なしで環境試料に曝露した後にセンサースポットから行うことができる。或いは、センサースポットを有する光学記憶媒体物品に対するベースライン読み取り値を得てから、特異的検体の存在を決定するためにセンサースポットを環境試料のような試料に曝露することができる。検体が存在し、検体特異的試薬と反応する場合、検体特異的試薬との反応により、光学記憶媒体物品の光透過率、散乱、分極、光路長、又はこれらのパラメーターの組合せが変更されるため、該当する検体の存在を示す信号が得られる。同じ化学的組成を有し、同じ環境パラメーターの測定用に特化されたセンサースポットを、異なる量の時間その環境パラメーターに曝露して、1以上のセンサースポットを環境パラメーターに曝露せず、ベースラインの読み取り用として働かせる測定で改良された定量値を得ることが可能である。
【0099】
センサースポットをフィルム上に配置する実施形態の場合、そのスポットは最初に試料に曝露した後に読み取りのためにディスク上に配置することができる。該当する検体の存在は、そのセンサースポットの応答から、該当する検体に対する類似のセンサースポットの利用可能な応答曲線から決定する。
【0100】
加えて、既に述べたように、センサーフィルムは1より多くのセンサースポットを有することができる。同じ化学的組成を有し、同じ環境パラメーターの測定用に特化されたセンサースポットを、いろいろな量の時間環境パラメーターに曝露して、1以上のセンサースポットを環境パラメーターに曝露しないでベースライン読み取り用に供する測定において、改良された定量を得ることができる。
【0101】
以上、本発明のセンサーフィルムを光学リーダーで読み取る光学記憶媒体物品に関連して説明してきたが、他の実施形態では、本センサーフィルムは他の基板に用い、他の方法を用いて読み取ることもできる。適切な基板としては、センサースポットのレイアウトに合致する幾何学を有するあらゆるプラスチック又はガラス基板がある。基板はセンサーフィルム又は透明フィルムに対する支持体となる。有用な幾何学の例としては、ディスク幾何学、正方形幾何学、及びストリップ幾何学がある。かかる場合、センサーフィルム上のセンサー領域は対象とする試料に曝露した後何らかの利用可能な反射又は透過検出器によって分析することができる。かかる検出器の非限定例としては、UV−可視分光計(例えば、Hewlett Packard Model 8452A(ダイオードアレイ分光計))手持ち式光度計及び分光光度計、例えばOcean Optics Model USB2000、Hach Model DR−2010、Hach Model 890、Merck Reflectoquant、その他類似の当業者に公知の検出器がある。かかる場合、光学記憶媒体基板以外の基板を利用してもよい。
【実施例】
【0102】
以下の実施例に関連して本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示と説明のために挙げるものであり、網羅するものではなく、本発明を開示された具体例に限定するものでもない。
【0103】
実施例1
試薬フィルムを、予備成形されたフィルム上に固定化し、試験スポットを大量に(in mass)生成させ、次いで対象とする流体に曝露する前にディスクの選択領域に配置した。
【0104】
利用した透明プラスチックフィルムは、フィルム(3M 9483、光学的に透明な接着剤フィルム、10ミル)の片面に感圧接着剤層をもっていた。このフィルムをDVDに取り付け、均一に配分された圧力をフィルムにかけた。得られたフィルム/DVD構造体は透明であり良好な品質を有していた。このDVDを光学ドライブでスクリーニングした。その分析の結果を図2に示す。図2は被覆したフィルムを有するものと有しないDVDの領域から生成した信号を示す。図2から分かるように、透明なフィルムはフィルムを有するDVDの分析の際に大きい信号変化を生じた。この大きな信号変化のため、このフィルムはDVDセンサーの支持体として使用できなかった。
【0105】
次に、第2のディスクを調製した。最初に接着剤層をDVDに付けた。利用した接着剤はDICから市販されているCDラッカーDaicure 2200であった。Daicure 2200のコーティングをDVDのデータ面上にスピンコートした。次に、このラッカーに試薬フィルム片を付けた。次いで、この被覆されたDVDに、Xenon Corp.RC747フラッシュランプを用いてUVを2sec間照射してラッカーを硬化させた。得られたフィルム/DVD構造体は透明であり良好な品質であった。また、試薬フィルムとDVD間の接着は良好であった。
【0106】
以下のようにして追加のフィルム層を形成した。フィルムの片面に接着剤層が付いている透明なプラスチックフィルムを選択した(Lovett Brandスコッチテープ)。適当なサイズの試薬フィルムをDVDに付け、均一に配分された圧力をフィルムにかけた。得られたフィルム/DVD構造体は透明であり良好な品質を有していた。このDVDを光学ドライブでスクリーニングした。分析の結果を図3に示す。ここで、信号は被覆されたフィルムを有するものと有しないDVDの領域から得られた。このフィルムは、フィルムを有するDVDの分析の際に小さい信号変化しか生じなかった。従って、このフィルムは本発明に従って検体感受性材料と共に使用するのに適切であった。
【0107】
次に、接着剤層を有するディスクに付けた透明なフィルムを、アルコール系溶媒中に分散した低レベルの吸収性物質(この場合カーボンブラック)を用いて改変した。この吸収性物質は、ドローコーティング法でフィルムの中心を通る1−mm幅の線として塗布した。測定を行った後、残存する低吸収性の線の上に吸収性物質のほぼ二倍の装入量で1−mm幅の線として吸収性物質を再び塗布した。図3は、いろいろな吸収性レベルの吸収性物質で改変されたフィルムの領域から得られた増大するレベルの信号変化を示す。信号レベル0、1、及び2はフィルムからの吸収なし(信号0)及び増大する吸収値(信号1及び2)に対応する。
【0108】
実施例2
アルコール系溶媒に分散したカーボンブラックを、試験スポットが異なる吸収レベルを有するように濃度を減少させながら光ディスク上に固定化した。吸収性フィルムの吸収のレベルは光ディスク上のスポット当たりカーボンブラック顔料の量で与えられた。この光ディスクを光学ドライブ(Pioneer DVD Drive、Model 115)でスクリーニングした。図4Aに示すような予備成形された透明プラスチック円形フィルム(CD Protective Film Model CLR−33)を、ディスク全体の上に配置した。このフィルムを、図4Bに「X」で示されているようにフィルム(CD Protective Film Model CLR−33)に備えられた接着剤を用いてフィルムの内側端で接着した。
【0109】
得られたフィルム/光学記憶媒体構造体は透明であり良好な品質であった。この吸収性領域の上にフィルムを有するCDを再びスクリーニングした。分析の結果を図5に示す。ここで、信号は、フィルムが付いているものと付いていないものの両方で光ディスク上の増大する吸収の領域から得られた。オーバーコートフィルムを有するものと欠いているものの両方の領域で得られた吸収に関連した光ディスク信号間の相関を図6に示す。
【0110】
次に、微細に分散したカーボンブラックからなる光吸収性領域をオーバーコートフィルム上に設けた。カーボンブラックをアルコール系溶媒中に分散させ、予備成形された透明フィルム上にドローコーティング方法を用いて塗布した。信号は上記のように光学ドライブで得た。吸収性領域をもたないオーバーコートフィルム(ベースライン)と吸収性領域を有するもの(NIR吸収剤としてのカーボンブラックを有する)とから得られた信号の例を図7に示す。図7から分かるように、オーバーコートフィルムは感知できるほどの信号減衰を生じなかったのでセンサーフィルムの付着用支持体として適切であった。
【0111】
2つのレベルの吸収性物質をオーバーコートフィルム上に塗布して異なるレベルの測定される吸収を生成せしめた。図8に、NIR吸収剤の低レベル及び高レベルの吸収性領域を含有するセンサー領域を有するオーバーコートフィルムからの信号を示す。
【0112】
実施例3
pH試薬のブロモクレゾールグリーンを機械的固定化によりポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)フィルム中に固定化して、試験スポットを大量に生産させた後、アンモニア蒸気に曝露する前にディスクの選択領域上に配置した。従って、各フィルムではポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマー支持体中に試薬が組み込まれていた。このフィルムは、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーを1−メトキシ−2−プロパノールに適当なポリマー濃度で溶解させることによって形成した。センサー試薬の固定化後、フィルムをディスクの所定の領域上に配置した。
【0113】
このポリマー溶液を平坦な不活性光学記憶媒体基板上にドローコーティングすることによってフィルムを製造した。乾燥したフィルムを光学記憶媒体基板から剥ぎ取り、所定のサイズ(約3×4mm)に裁断した。このフィルムを、ディスクの表面を1−メトキシ−2−プロパノールで濡らした後圧力をかけて光学記憶媒体基板上にフィルムを付着させることによって、接着剤のような中間層を使用することなくディスク上に付着させた。
【0114】
酸塩基試薬のブロモクレゾールグリーンを有する幾つかのフィルムをDVD光学記憶媒体上に付けた。これらのフィルムを、室温、標準大気圧で飽和蒸気濃度のアルカリ性蒸気(アンモニア)にいろいろな曝露時間で曝露した。これらの曝露の異なるレベルは0〜約20秒で曝露時間を変えることによって調節した。図9に、光学ドライブ(LG Electronics、Inc.、Model GCC4480B)を用いて記録した3つのセンサー領域の応答を示す。ここで、いろいろなセンサー領域をいろいろな量の時間(t1<t2<t3)飽和アンモニア蒸気に曝露した。
【0115】
実施例4
水中でNH4+のようなイオン性種を検出するために、異なるpH染料を含有する薄いフィルム領域をDVD表面上に生成した。これらの染料は、ブロモクレゾールグリーン(Aldrich、11,435−9)、ブロモフェノールブルー(Nuritional Biochemicals、12−238)、及びブロモクレゾールパープル(Aldrich、86,089−1、90%染料含量)であった。染料をAldrichから購入したNafionポリマー溶液に溶解した。この染料−Nafion溶液をDVD上に付着させた。室温で溶媒を蒸発させた後、フィルムをオーバーコートで被覆した。このオーバーコートはTeflon AF 2400フィルムであった。このオーバーコートフィルム組成物は、Teflon AF 2400(DuPont)をFluorinert 75溶媒(3M)に溶解させることによって製造した。フィルムの初期信号を測定した後ディスクを0.001モル/リットルのNH4+溶液に曝露した。溶液から取り出した後、ディスクを再び測定した。NH4+に曝露した前後のセンサーフィルムのセンサー信号の変化が図10に示したように観察された。観察された信号変化は黄色から青色への色変化、及びDVDレーザーの波長におけるそれぞれの吸収増大に関連していた。
【0116】
典型的な実施形態に付いて本発明を例示し説明してきたが、本発明の思想からいかなる意味でも逸脱することなく様々な修正と置換が可能であるので、本発明はここに示した限定されるものではない。すなわち、本明細書に開示した本発明のさらなる修正と等価物が日常以上の実験を要することなく当業者には明かであり、従ってかかる修正と置換は全て特許請求の範囲に記載の本発明の思想と範囲内に入るものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、センサーフィルムを有する本発明の光学記憶媒体を示す図である。
【図2】図2は、本発明に従って被覆したDVDを光学ドライブでスクリーニングした結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明に従って被覆したDVDを光学ドライブでスクリーニングした結果を示すグラフである。
【図4】図4は、環境に感受性の領域を含有する澄んだ透明なフィルムが光学記憶媒体の全表面上に付着している本発明の一実施形態を示す図である。図4(A)はフィルムを付ける前の光学記憶媒体であり、図4(B)はフィルムを付けた後の光学記憶媒体である。
【図5】図5は、ディスクのオーバーレイヤーフィルムを有する領域ともたない領域の吸収測定の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、オーバーコートフィルムを有する場合と有しない場合とで測定された吸収に関連したCD信号間の相関を示すグラフである。
【図7】図7は、センサー領域をもたないオーバーコートフィルム(ベースライン)と吸収性センサー領域を有するもの(NIR吸収剤)とから得られた信号を示すグラフである。
【図8】図8は、弱い吸収性領域と強い吸収性領域の両方を有するNIR吸収剤センサー領域をもったオーバーコートフィルムから得られた信号を示すグラフである。
【図9】図9は、光学ドライブを用いて記録された3つのセンサー領域の応答を示すグラフである。いろいろなセンサー領域をいろいろな量の時間(t1<t2<t3)飽和アンモニア蒸気に曝露した。
【図10】図10は、NH4+の検出に対してセンサースポットの光学信号の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0118】
10 本発明の光学記憶媒体
20 第1基板層
30 結合接着剤層
40 反射層
50 任意の記録層
60 第2・秒基板層
70 センサースポットのフィルム又は層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光学記憶媒体(10)、及び
(b)光学記憶媒体の少なくとも一部分に取り付けられたセンサーフィルム(70)であって、リマー支持体検体特異的試薬を含むセンサーフィルム(70)
を含んでなるセンサーデバイスであって、上記ポリマー支持体がヒドロゲルを含んでおり、該ヒドロゲルが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(グリセリルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−アクリルアミド)、ポリ(エチレンイミン)、ナトリウムポリ(アクリレート)、カリウムポリ(アクリレート)、多糖類、ポリ(ビニルピロリドン)、セルロース系誘導体、及び以上のもののモノマー構成成分のコポリマーからなる群から選択される親水性ポリマーの架橋によって結合している、センサーデバイス
【請求項2】
前記ヒドロゲルが、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレートからなる群から選択される多官能性モノマーを用いた架橋によって結合したポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)ヒドロゲルである、請求項1記載のセンサーデバイス。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、ジアルデヒド、ジエポキシド及び多塩基酸からなる化合物を用いた架橋によって結合したセルロースである、請求項1記載のセンサーデバイス。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)、ポリアクリル酸、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ(アクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)及びポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート−コ−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)からなる群から選択されるポリマーとポリ(エチレンオキシド)とのグラフトコポリマーである、請求項1記載のセンサーデバイス。
【請求項5】
前記ヒドロゲルが、ポリ(ビニルピロリドン)−コ−ポリスチレンコポリマー、及びポリ(ビニルピロリドン)−コ−ビニルアルコールコポリマーからなる群から選択されるグラフトコポリマーである、請求項1記載のセンサーデバイス。
【請求項6】
ポリマー支持体がポリマーブレンドからなる、請求項1記載のセンサーデバイス。
【請求項7】
検体特異的試薬が、有機染料、無機染料、ナノ結晶、ナノ粒子、量子ドット、有機フルオロフォア、無機フルオロフォア、IR吸収性染料、近赤外吸収性物質、UV吸収性染料、フォトクロミック染料、及びサーモクロミック染料からなる群から選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のセンサーデバイス。
【請求項8】
検体特異的試薬が、キサンテン染料、アクリジン染料、アゾ染料、ポルフィリン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料、メロシアニン染料、スチリル染料、オキソノール染料、トリアリールメタン染料、メチレンブルー、フェノールブルー、ブロモチモールブルー及びブロモクレゾールグリーンからなる群から選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のセンサーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−174934(P2011−174934A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50905(P2011−50905)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2006−541179(P2006−541179)の分割
【原出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】