説明

検体サンプルの濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法

【課題】キャリブレータと患者検体とで液性の違いを原因とする分注量の差異が生じても、特に部品等を追加しないで、適正な分析結果を得ることが可能で、しかも分析装置の管理者等の負担を大幅に軽減可能な検体サンプルの濃度自動分析システム及び方法を提供する。
【解決手段】通常モードと、分注動作の条件が異なる試験モードとを備え、代表検体サンプルとキャリブレータについて通常モード、試験モードでの特性を測定し、通常モードで測定した代表検体サンプル及びキャリブレータの特性値を用いて算出した代表検体サンプルの濃度と、試験モードで測定した代表検体サンプル及びキャリブレータの特性値を用いて算出した代表検体サンプルの濃度を用いて、以後の検査対象となる濃度が未知の検体サンプルの通常モードで測定した特性値及びキャリブレータの特性値を用いて算出した検体サンプルの濃度を補正する機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に血液、尿などの体液中の各種成分濃度を自動分析する臨床検査システムにおける検体サンプルの濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、検体サンプルの濃度自動分析装置では、濃度が既知のサンプルと試薬との反応状態を光学的に測定した値を基準として、濃度が未知の患者検体サンプルと試薬との反応状態を光学的に測定した値からその患者検体サンプルの濃度を算出する。濃度が既知のサンプルの反応による光学的測定値を基準として、濃度が未知のサンプルの反応による光学的測定値からその濃度を算出するための濃度換算係数を求める作業をキャリブレーションといい、そのときに使用する濃度が既知のサンプルをキャリブレータという。
【0003】
日常検査法での濃度が未知の患者検体サンプルの測定値は、キャリブレータを通じて標準物質にトレーサブルとなる。臨床検査分野における一般的な測定体系の一例を図7に示す。
図7に示すように、一般的な測定体系では、基準測定法により値付けした標準物質を次段階の校正に使用する。標準物質を校正に使用して、メーカ標準測定法により値付けしたキャリブレータを次段階の校正に使用する。キャリブレータを校正に使用して、日常検査法により患者検体サンプルの測定値を得る。したがって、患者検体サンプルの測定値は、キャリブレータを通じて標準物質の正確さにトレーサブルとなる。
【0004】
検体検査では、このように濃度が既知のサンプル(キャリブレータ)の測定値を基準とした相対測定が基本であり、そのためにはキャリブレータと患者サンプルとで同じ量を採取(分注)することが必要となる。しかるに、現在の検体検査においては、自動分析処理する検体の数および各検体についての検査項目数が多くあり、自動分析装置には高速処理が要求されている。その結果、分析の動作サイクルは、数秒にまで短縮されている。しかし、数秒にまで分析の動作サイクルを短縮すると、キャリブレータと患者サンプルとで、液性の違いを原因として採取量(分注量)が異なる場合が生じてくる。
【0005】
そこで、キャリブレータと患者サンプルとの液性の違いを原因とした採取量(分注量)の違いをなくすため、キャリブレータは、液性を患者サンプルに近似させるように、血清成分をベースとしたものが多く作られている。
【0006】
また、液性の違いを原因とする採取量(分注量)の差異による分析結果への悪影響を装置上で回避するために、例えば、次の特許文献1、2に記載の分注装置が提案されている。
【特許文献1】特開平06−174602号公報
【特許文献2】特開平06−174603号公報
【0007】
特許文献1に記載の分注装置は、サンプルの種類による液性の違いにより採取量が変わらないようにするための装置であり、チップの先端がサンプルの液面下に位置した状態においてチップに気体を供給してチップ内部の圧力を検出することによってサンプルの表面張力を算出し、算出した表面張力に基づいてサンプル吐出時にチップに接続するシリンジポンプの動作を制御するように構成されている。具体的な制御は、サンプルの表面張力が大きい場合は、サンプルを押出し難くなるため、通常より高い圧力を供給するようにシリンジポンプの移動量を多くする、一方、サンプルの表面張力が小さい場合は、サンプルを押出し易くなるため、吐出時の圧力を下げるようにシリンジポンプの移動量を少なくする、というものである。
【0008】
特許文献2に記載の分注装置は、サンプルの分注量や粘度に応じてプローブの先端口径の異なるものを選択して使用する、あるいは先端の口径が可変のプローブを使用してその都度、口径を調整するというものである。
【0009】
さらに、その他の手法として、キャリブレータを用いずに、厳密に管理した機器や器具を使用して、試験用サンプルについての分注量を事前に厳密な手法で測定(検定)し、その測定結果を用いて濃度を算出する手法がある。
例えば、血液中の酵素成分の濃度を求める場合、キャリブレータを使用せずに、予め厳密に検定したサンプル及び試薬の分注量や検液の吸光度測定用容器の光路長などから算出した装置定数を用いて濃度を算出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、現在の検体検査においては、大量のサンプル及び検査項目について検査処理を行うために検体検査用自動分析装置の動作サイクルを短縮化する傾向にあり、サンプルの種類による液性の違いで分注量の違いが目立つことがあるため、キャリブレータを血清成分ベースで作るようになってきている。
しかし、全ての検査項目についてキャリブレータを血清成分ベースで作ることはできないため、サンプルの種類による液性の違いで分注量の違いが目立つという問題が、依然として残る。
【0011】
また、特許文献1に記載の分注装置のように、チップ内部の圧力を検出することによってサンプルの種類の違いを表面張力の違いとして求め、吐出時におけるシリンジポンプの移動量を制御するようにすると、チップ内部の圧力を検出するためのセンサーが必要になり、その分、部品点数が増えてコスト増となる。
また、サンプルの種類の違いによる分注量への影響は吐出時だけではなく、吸引時も影響する。また、表面張力の違いは分注量への影響を及ぼす一つの要因ではあるが、それが全てではない。さらに、一般的にはチップの材質や表面処理などによっても分注量への影響を受ける。このため、特許文献1に記載の分注装置では、高精度な分注制御ができない。
【0012】
また、特許文献2に記載の分注装置では、先端口径が異なる複数のプローブが必要となり、器材が煩雑化するとともにコスト高となる。また、一つの口径可変のプローブを用いても、そのようなプローブは製作が非常に困難であるとともに、その都度、適正な口径調整の制御をする必要があり高コストとなる。
【0013】
また、キャリブレータを用いずに、事前にサンプルなどの分注量を検定し、その検定結果を用いてサンプルについての濃度を算出する手法は、分注の絶対量を求めるために適正に校正、管理された機器や器具を使用するとともに、作業者には高度の技能が要求される。しかも、分析装置を継続的に使用するような場合には、サンプルを採取するプローブの汚れによる影響を考慮して、時々このサンプルなどの分注量を検定するといった作業を実施する必要がある。このため、キャリブレータを用いずに濃度を算出する手法では、分析装置の管理者や作業者に与える負担が多大なものとなる。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、キャリブレータと患者検体とで液性の違いを原因とする分注量の差異が生じても、特に部品等を追加することなく、適正な分析結果を得ることが可能で、しかも分析装置の管理者や作業者の負担を大幅に軽減可能な検体サンプルの濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明による検体サンプルの濃度自動分析システムは、キャリブレータを用いて濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、通常のサンプル分注動作モードと、前記通常のサンプル分注動作モードとは分注動作の条件が異なる特定のサンプル分注動作モードとを備え、所定の代表検体サンプルと前記キャリブレータのそれぞれについて前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの所定の光学的特性と前記特定のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値、又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度を用いて、以後の検査対象となる濃度が未知の検体サンプルについての前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の光学的特性値、又は前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該通常のサンプル分注動作モードを介して測定した検体サンプルの濃度を補正する機能を備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析システムは、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度と該特定のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度との比率から濃度の補正係数を算出しておき、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値に対する該濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出するとともに、該算出した濃度を前記濃度の補正係数を用いて補正する機能を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析システムは、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値と前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した該代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値との比率から光学的特性値の補正係数を算出しておき、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記光学的特性値の補正係数と、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出する機能を備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析システムは、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度を用いて該代表検体サンプルを以後の通常モードにおける新たなキャリブレータとし、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記新たなキャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度とを用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出する機能を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードが切り替え可能であり、それぞれのサンプル分注動作モードに切り替えた場合に当該サンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えているのが好ましい。
【0020】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記通常のサンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えた通常の検体分析動作モードと、該通常の検体分析動作モードとは別機能を備えた特定の検体分析動作モードを有し、前記特定の検体分析動作モードが、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え、かつ、それぞれのサンプル分注動作モードを介して得られた当該サンプルの分注量を比較できる機能を備えているのが好ましい。
【0021】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記サンプル分注動作の条件が、分注の吸引・吐出時間であるのが好ましい。
【0022】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記サンプル分注動作の条件が、分注の吸引・吐出時間及び分注量であるのが好ましい。
【0023】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記代表検体サンプルが、プール血清であるのが好ましい。
【0024】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、検査対象となる複数の検体サンプルを用いて前記通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介してそれぞれ得た所定の光学的特性値、あるいは、それぞれのサンプル分注動作モードで得たキャリブレータの光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて算出した濃度値を得て、それらの各モード間での測定値の比の平均値を、補正係数として設定してもよい。
【0025】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析システムにおいては、前記特定のサンプル分注動作モードを介してキャリブレータで値付けされた前記代表検体サンプルを、以後の検査対象となる一般の検体サンプルについての該通常のサンプル分注動作モードにおいてキャリブレータとして用いるのが好ましい。
【0026】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析方法は、キャリブレータを用いて濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、通常のサンプル分注動作モードと、前記通常のサンプル分注動作モードとは分注動作の条件が異なる特定のサンプル分注動作モードとを介して、所定の代表検体サンプルと前記キャリブレータのそれぞれについて所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値、又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度を用いて、以後の検査対象となる濃度が未知の検体サンプルについての前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の光学的特性値、又は前記通常の検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該通常の検体サンプルの濃度を補正することを特徴としている。
【0027】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析方法は、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度と該特定のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度との比率から濃度の補正係数を算出しておき、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値に対する該濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出するとともに、該算出した濃度を前記濃度の補正係数を用いて補正することを特徴としている。
【0028】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析方法は、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値の比率を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値と前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した該代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値との比率から光学的特性値の補正係数を算出しておき、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記光学的特性値の補正係数と、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出することを特徴としている。
【0029】
また、本発明による検体サンプルの濃度自動分析方法は、キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値の比率を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、前記濃度が既知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度を用いて該代表検体サンプルを以後の通常モードにおける新たなキャリブレータとし、以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記新たなキャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度とを用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出することを特徴としている。
【0030】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え可能とし、それぞれのサンプル分注動作モードに切り替えた場合に当該サンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析するのが好ましい。
【0031】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記通常のサンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えた通常の検体分析動作モードと、該通常の検体分析動作モードとは別機能を備えた特定の検体分析動作モードを用意し、前記特定の検体分析動作モードで、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え、かつ、それぞれのサンプル分注動作モードを介して得られた当該サンプルの分注量を比較するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記分注動作の条件が、分注時間であるのが好ましい。
【0033】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記分注動作の条件が、分注時間及び分注量であるのが好ましい。
【0034】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記代表検体サンプルが、プール血清であるのが好ましい。
【0035】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、検査対象となる複数の検体サンプルを用いて前記通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介してそれぞれ得た所定の光学的特性値、あるいは、それぞれのサンプル分注動作モードで得たキャリブレータの光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて算出した濃度値を得て、それらの各モード間での測定値の比の平均値を、補正係数として設定してもよい。
【0036】
また、本発明の検体サンプルの濃度自動分析方法においては、前記特定のサンプル分注動作モードを介してキャリブレータで値付けされた前記代表検体サンプルを、以後の検査対象となる一般の検体サンプルについての該通常のサンプル分注動作モードにおいてキャリブレータとして用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、キャリブレータと患者検体とで液性の違いを原因とする分注量の差異が生じても、特に部品等を追加することなく、適正な分析結果を得ることが可能で、しかも、液性の違いによる分注量の違いをマニュアルにて確認する場合においても分析装置の管理者や作業者の負担を大幅に軽減可能な検体サンプルの濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は本発明の一実施形態にかかる検体サンプルの濃度自動分析システムの基本的な構成を示すブロック図である。
濃度自動分析システム1は、濃度自動分析装置における各部材やデータの駆動及び処理を制御するシステムとして構成されており、動作モード選択部2と、分析動作制御部3と、データ処理部4と、分析部5を有している。
動作モード選択部2は、日常のルーチン検査を行う「通常モード」と、日常のルーチン検査とは動作サイクルの異なる「試験モード」の2つの動作モードを選択することができるように構成されている。
分析動作制御部3は、動作モード選択部2で選択した動作モードに対応した分注動作条件で、少なくとも図1では不図示の分注器によるキャリブレータやサンプル等の反応容器への分注や試薬とサンプルの反応状態を光学的に測定する測光系の制御を行うように構成されている。
データ処理部4は、分注したキャリブレータやサンプル等に所定の試薬を分注し、それによって生じる反応状態を光学的に測定したデータを濃度に変換する等の処理部で構成されている。
分析部5は、分析動作制御部3に従い、実際に図示なきサンプル及び試薬分注器の動作や反応容器の移送、反応液の攪拌、加温、測光、反応容器の洗浄などの一連の分析を行うための機構系で構成されている。
【0039】
「通常モード」における動作サイクルと「試験モード」における動作サイクルとの違いは、サンプルの分注に関連した動作であり、特に、サンプルの吸引及び/又は吐出に係る動作である。即ち、分注器を介して行う、サンプル(検体サンプル、キャリブレータ)の分注(キャリブレータ容器、検体サンプル容器からの吸引、及び反応容器への吐出)動作の条件(動作速度、時間、動作量等)が異なる。
【0040】
「通常モード」は、日常のルーチン検査を実施する動作条件を設定している。この状態では、キャリブレータと濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであっても、液性の違いにより実際の分注量に差が生じる可能性がある条件で設定されている。
【0041】
「試験モード」は、サンプルの種類による液性の違いを原因とする分注量の差異が極力少なく、正確な量の分注が可能となるような分注動作を行う。ここでは、濃度が未知のサンプルとキャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、分注量も略同じとなる分注が可能な動作条件を設定したものである。
【0042】
一般に、サンプルの吸引、吐出を行う分注器は、図2に示すように、サンプル容器11に挿入して、その内部にサンプルを収容するプローブ12と、プローブ12に接続するチューブ13と、チューブ13の内部に圧力変化を与えるシリンジポンプ14等で構成される。
【0043】
上述したように、サンプルの液性の違いで採取量に差を生じる主な要因として、大量の検査を効率的に実施するために濃度自動分析装置の動作サイクルが非常に短くなっていることがある。短時間でのサンプルの吸引、吐出動作では、サンプルプローブに接続する配管内の陰圧あるいは陽圧変化に対して液性による応答(追従)の違いの影響が大きい。
【0044】
サンプルの粘性が高い場合、サンプルの吸引、吐出を行うためチューブ内に圧力変化を与えるシリンジポンプの動作にサンプル液の動きが瞬時には追従しなくなる。この追従遅れを低減するために通常、チューブ内は気体ではなく液体が満たされる。しかし、圧力変化への応答性を高めるだけでは十分ではなく、吐出においてはサンプルが接触しているプローブ内面からサンプルが乖離する時間が必要となる。
【0045】
しかし、上述のように、現在の検体検査においては、日常のルーチン検査を短時間に大量の分析テストを実施する必要があり、分析装置の動作サイクルは数秒にまで短縮されている。従って、「通常モード」はこの短縮された動作サイクルで分注動作を行わざるを得ず、その結果、粘性の高いサンプルについては、粘性の低いサンプルよりも分注量が少なくなる。
【0046】
このため、本実施形態の濃度自動分析システムでは、日常の検査を実施する「通常モード」での短サイクルでの分析動作とは異なるサイクルでの動作が可能な「試験モード」を設けている。
「試験モード」では、吸引及び吐出動作において液性の違いによる差が生じない程度に十分な時間をかけた動作サイクルが設定されている。
【0047】
図3は本実施形態の濃度自動分析システムにおける「通常モード」と「試験モード」とにおける分注動作ステップ及び分注動作ステップにおける分注動作時間を概念的に示すブロック図である。図3中、矢印の長さが動作時間を示している。
【0048】
「試験モード」での動作サイクルをこのように設定することにより、シリンジポンプによるチューブ内圧変化への追従遅れの影響もなく、吐出時のプローブ内面からのサンプル乖離も不足なく分注量の正確なサンプルの分注が可能となる。
【0049】
また、本実施形態の濃度自動分析システムでは、「通常モード」と「試験モード」の夫々を選択した場合に、分注したキャリブレータやサンプルの濃度分析までを自動的に行うことができるように構成されている。
その場合、キャリブレータと、例えば、プール血清などの患者検体を代表するサンプルを用いて、「通常モード」と「試験モード」のそれぞれにおける濃度の自動分析を行う。具体的には、代表検体サンプルの測定値をそれぞれのモードで測定すると共に、キャリブレータを用いて、例えば、次の表1に示すように、濃度CPN、CPTを算出する。算出した「通常モード」の代表検体サンプルの濃度CPNに対する「試験モード」の代表検体サンプルの濃度CPTの比率CPT/CPNを求め、これを濃度の補正係数とする。
以後、検査対象としての一般の検体サンプルについての濃度CXを「通常モード」を介して算出し、算出した濃度CXに上記濃度の補正係数CPT/CPNを乗じて補正する。
これにより、液性の違いを原因とする分注量の差異に影響されることなく、日常のルーチン検査を行う短時間の動作サイクルで大量に検体サンプルの濃度を正確に分析することが可能となる。
【0050】
表1:各モードでの測定濃度値(試薬ブランク減算後)
各モードでキャリブレータを使用して検量しプール血清の濃度値を算出(試薬ブランク減算後)

通常モードでの患者検体測定濃度(補正後) :CXC=CX × (CPT / CPN)
CCN=CCT
【0051】
あるいは、例えば、次の表2に示すように、「通常モード」と「試験モード」を介して夫々測定した代表検体サンプルの光学特性値ODCN、ODPN、ODCT、ODPTを用いて、光学特性の補正係数(ODPT×ODCN)/(ODPN×ODCT)を求める(実際上はODCN=ODCTであり、ODPT/ODPN)。以後、検査対象としての一般の検体サンプルについての濃度を「通常モード」を介して算出する際に、上記光学特性の補正係数を乗じて補正した光学特性値から濃度を算出するようにしてもよい。また、ここでの代表検体検体サンプルであるプール血清としては、各検査施設で自製したものや市販されている管理血清を用いてもよい。
【0052】
表2:各モードでの測定吸光度(水ブランク減算後)
各モードで色素添加サンプルの分注、希釈後の吸光度を測定
キャリブレータの表示値: CC

通常モードでの患者検体測定吸光度(補正後) :ODXC=ODX × [(ODPT×ODCN) / (ODPN×ODCT)]
通常モードでの患者検体測定濃度値(補正後) = ODXC × (CC / ODCN)
ODCN= ODCT
【0053】
なお、上述した動作サイクルの短縮化だけでなく、分析に使用するサンプルの微量化が、分注量の正確性を低下させる要因となる場合がある。そこで、そのような場合には、「試験モード」では、「通常モード」とは異なる分注量(即ち、各サンプルの光学特性値を正確に測定するために十分な分注量)となる分注動作の条件で分注を行い、分注量の正確性を高めた上で、キャリブレータと代表検体サンプルについての光学特性値の相対的関係を把握した後、「通常モード」における分注動作条件での分注を介して得られた光学特性値の相対的関係から、濃度又は光学特性値の補正係数を算出し、以後の一般の検体サンプルについて「通常モード」を介して得られる濃度又は光学特性値をその補正係数で補正するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態の濃度自動分析システムでは、事前に「通常モード」と「試験モード」での測定結果から光学測定値又は濃度の補正係数を用いて補正を行うようにしたが、代表検体サンプルとしてのプール血清として市販の管理血清や各施設で自製したものでも、小分けして凍結保存管理で長期に安定性が確認できている場合には、事前の作業モードを「試験モード」だけとし、そこで、得られた代表検体サンプルの測定値を用いて、以後の「通常モード」を介した一般の検体サンプルの濃度の分析に際し、このプール血清を新たなキャリブレータとして用いてもよい。
【0055】
また、上述のように、分注から濃度の分析までの一連の動作を行うようにしてもよいが、例えば、サンプル等の分注に係る動作のみを行うように特定機能に限定した動作を行うようにしてもよい。その場合には、「試験モード」の中で、上述してきた「通常モード」に相当する分注動作と「試験モード」に相当する分注動作とを切換ることができるようにする。これにより、動作の違いによるサンプルの種類を原因とする分注量の違いが把握できる。なお、この場合は、マニュアル作業が必要となるが、分注の絶対量を求めるわけではなく、各モードでのキャリブレータと代表検体サンプルとの相対的関係が把握できればよい。このため、使用する機器や器具は、厳密に校正の管理がされたものである必要はなく、高度の技能も必要ではない。また、この場合においても、事前の作業モードを「試験モード」だけとし、そこで、得られた代表検体サンプルの測定値を用いて、以後の「通常モード」を介した一般の検体サンプルの濃度の分析に際し、このプール血清を新たなキャリブレータとして用いてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態では、患者検体を代表する代表検体サンプルとしてプール血清を使用したが、直接、複数の患者検体サンプルを測定し、その平均値をプールの血清の測定値の代わりに用いてもよい。
【0057】
このように構成された本実施形態の濃度自動分析システムによれば、日常の検査を実施する「通常モード」とサンプルの液性によらず正確な分注が可能な「試験モード」を備えた分析システムにすることで各モードでのサンプルの種類によるサンプル分注量の違いを容易に確認することが可能となる。そして、その測定結果を基にその後の「通常モード」での患者検体の測定値を補正することで、キャリブレータと患者検体とでその液性の違いにより分注量に違いがあっても適正な測定結果を得ることができる。
【0058】
臨床検査データも検査する施設間でのデータ差がないように検査データの標準化が活発に取組まれている。その活動の基本は標準物質にトレーサブルなキャリブレータを使用することであるが、そのためにはキャリブレータと患者検体とでサンプル分注量に差がないことが必要である。しかし、上述したように、大量のサンプル及び検査項目についての検査処理を行うことが求められる現在の検体検査では、動作サイクルが短縮化されており、キャリブレータと患者検体とで差のないサンプリングが困難になっている。各装置で日常の検査におけるサンプルとキャリブレータとの液性の違いによる分注量の差が正確に把握できれば、補正が可能となる。しかるに、本実施形態の濃度自動分析システムによれば、簡単にサンプルとキャリブレータとの液性の違いによる分注量の差が確認できる。このため、サンプルプローブの使用状態でその液性の違いによる分注量に差が生じることが懸念される場合など正確な検査結果を得るために装置の管理者が頻繁にサンプルとキャリブレータとの液性の違いによる分注量の差を確認する作業を行ったとしても作業負担を軽減することができる。
【0059】
実施例1
以下、本発明の濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法の具体的な実施例について説明する。
図4は本発明の実施例1にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性値(吸光度)及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
実施例1の濃度自動分析システムは、図1に示した濃度自動分析装置において、キャリブレータ、代表検体サンプルをそれぞれの分注動作モード(通常モード、試験モード)で分注し、光学特性値を測定し、それらの光学特性値を介して代表検体サンプルの濃度を算出し、算出したそれぞれの分注動作モードでの代表検体サンプルの濃度の比率から濃度の補正係数を求めておき、以後の一般の検体サンプル(患者検体)を通常モードで分注し、光学特性値を測定し、その光学特性値とキャリブレータの光学特性値を介して算出した濃度を濃度の補正係数で補正するように制御されており、具体的には次の手順1−1.〜1−10.を介して一般の検体サンプルについての濃度を補正するようになっている。
【0060】
1−1.通常モードでキャリブレータを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODCNを測定する。
1−2.通常モードで代表検体サンプル(プール血清)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODPNを測定する。
1−3.通常モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCNに対する通常モードでの代表検体サンプル(プール血清)の光学特性値(吸光度)ODPNの比率(ODPN/ODCN)をキャリブレータの濃度CCNに掛け合わせて、通常モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPN(=CCN×(ODPN/ODCN))を算出する。
1−4.試験モードでキャリブレータを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODCTを測定する。
1−5.試験モードで代表検体サンプル(プール血清)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODPTを測定する。
1−6.試験モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCTに対する試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の光学特性値(吸光度)ODPTの比率(ODPT/ODCT)をキャリブレータの濃度CCT(=CCN)に掛け合わせて、試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPT(=CCT×(ODPT/ODCT))を算出する。
1−7.通常モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPNに対する試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPTの比率(CPT/CPN=[CCT×(ODPT/ODCT)]/[CCN×(ODPN/ODCN)])を濃度の補正係数として求める。ここで、CCT=CCNであるので、濃度の補正係数はCPT/CPN=(ODPT/ODCT)/(ODPN/ODCN)となる。
1−8.通常モードで一般の検体サンプルを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODxを測定する。
1−9.通常モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCNに対する通常モードでの一般の検体サンプルの光学特性値(吸光度)ODXの比率(ODX/ODCN)をキャリブレータの濃度CCNに掛け合わせて、通常モードでの一般の検体サンプルの濃度CX(=CCN×(ODX/ODCN))を算出する。
1−10.算出した通常モードでの一般の検体サンプルの濃度CXに濃度の補正係数CPT/CPNを掛け合わせる。これにより、通常モードでの一般の検体サンプルの濃度が補正される(補正した濃度CXC=CX×(CPT/CPN))。以後、1−8.〜1−10.の処理を繰り返すことによって、通常モードで分注動作を介して濃度の分析を行うその他の一般の検体サンプルについても濃度が補正される。
【0061】
実施例2
図5は本発明の実施例2にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
実施例2の濃度自動分析システムは、図1に示した濃度自動分析装置において、キャリブレータ、代表検体サンプルをそれぞれの分注動作モード(通常モード、試験モード)で分注し、光学特性値を測定し、代表検体サンプルにおけるそれぞれの分注動作モードによる光学特性値の比率から光学特性値の補正係数を求めておき、以後の一般の検体サンプルを通常モードで分注し、光学特性値を測定し、その光学特性値を光学特性値の補正係数で補正し、補正した光学特性値とキャリブレータの光学特性値を介して補正した濃度を算出する(なお、キャリブレータの濃度をCCとする)ように制御されており、具体的には次の手順2−1.〜2−8.を介して一般の検体サンプルについての補正した濃度を算出するようになっている。
【0062】
2−1.通常モードでキャリブレータを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODCNを測定する。
2−2.通常モードで代表検体サンプル(プール血清)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODPNを測定する。
2−3.試験モードでキャリブレータを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODCTを測定する。
2−4.試験モードで代表検体サンプル(プール血清)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODPTを測定する。
2−5.通常モードでの代表検体サンプル(プール血清)の光学特性値(吸光度)ODPNに対する試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の光学特性値(吸光度)ODPTの比率(ODPT/ODPN)を吸光度の補正係数として求める。なお、各モードにおいて例えば分注量を変えること等によりキャリブレータの光学特性値(吸光度)が変わる場合は、さらに、試験モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCTに対する通常モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCNの比率(ODCN/ODCT)を掛け合わせたものを吸光度の補正係数とする。
2−6.通常モードで一般の検体サンプル(患者検体)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODXを測定する。
2−7.測定した通常モードでの一般の検体サンプルの光学特性値(吸光度)ODXに吸光度の補正係数((ODPT/ODPN)又は[(ODPT/ODPN)×(ODCN/ODCT)])を掛け合わせる。これにより、通常モードでの一般の検体サンプルの補正した吸光度ODXC(=ODX×(ODPT/ODPN)又はODX×[(ODPT/ODPN)×(ODCN/ODCT)])が求まる。
2−8.通常モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCNに対する通常モードでの一般の検体サンプルの補正した吸光度ODXCの比率(ODXC/ODCN)をキャリブレータの濃度CCに掛け合わせる。これにより、通常モードでの一般の検体サンプルの補正した濃度CXC(=CC×(ODXC/ODCN))が求まる。以後、2−6.〜2−8.の処理を繰り返すことによって、通常モードで分注動作を介して濃度の分析を行うその他の一般の検体サンプルについても補正した濃度が求まる。
【0063】
実施例3
図6は本発明の実施例3にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
実施例3の濃度自動分析システムは、図1に示した濃度自動分析装置において、キャリブレータ、代表検体サンプルを試験モードで分注し、光学特性値を測定し、それらの光学特性値を介して代表検体サンプルの濃度を算出し、算出した試験モードでの代表検体サンプルの濃度を用いて代表検体サンプルを通常モードにおける新たなキャリブレータとし、以後の一般の検体サンプル(患者検体)を通常モードで分注し、光学特性値を測定し、その光学特性値と新たなキャリブレータの光学特性値を介して補正した濃度を算出するように制御されており、具体的には次の手順3−1〜3−6を介して一般の検体サンプルについての補正した濃度を算出するようになっている。
【0064】
3−1.試験モードでキャリブレータを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODCTを測定する。
3−2.試験モードで代表検体サンプル(プール血清)を分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODPTを測定する。
3−3.試験モードでのキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODCTに対する試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の光学特性値(吸光度)ODPTの比率(ODPT/ODCT)をキャリブレータの濃度CCTに掛け合わせて、試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPT(=CCT×(ODPT/ODCT))を算出する。
3−4.算出した試験モードでの代表検体サンプル(プール血清)の濃度CPTと、代表検体サンプル(プール血清)を以後の通常モードでの一般の検体サンプルの濃度を算出するためのキャリブレータとして用いる。
3−5.通常モードで一般の検体サンプルを分注し、試薬反応による光学特性値(吸光度)ODXを測定する。
3−6.通常モードでの新たなキャリブレータの光学特性値(吸光度)ODPNに対する通常モードでの一般の検体サンプルの光学特性値(吸光度)ODXの比率(ODX/ODPN)を新たなキャリブレータの濃度CPTに掛け合わせる。これにより、通常モードでの一般の検体サンプルの補正した濃度CXC(=CPT×(ODX/ODPN))が求まる。以後、3−5.〜3−6.の処理を繰り返すことによって、通常モードで分注動作を介して濃度の分析を行うその他の一般の検体サンプルについても補正した濃度が求まる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、大量の検体検査を迅速に行うことが求められる臨床医学の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態にかかる検体サンプルの濃度自動分析システムの基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】分注器の基本構造を示す説明図である。
【図3】本実施形態の濃度自動分析システムにおける「通常モード」と「試験モード」とにおける分注動作ステップ及び分注動作ステップにおける分注動作時間を概念的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
【図5】本発明の実施例2にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
【図6】本発明の実施例3にかかる濃度自動分析システム及び濃度自動分析方法における各動作モードでの光学特性及び濃度の測定値又は算出値を示す表である。
【図7】臨床分野における一般的な測定体系の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 濃度自動分析システム
2 動作モード選択部
3 分析動作制御部
4 データ処理部
5 分析部
11 サンプル容器
12 プローブ
13 チューブ
14 シリンジポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレータを用いて濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、
通常のサンプル分注動作モードと、前記通常のサンプル分注動作モードとは分注動作の条件が異なる特定のサンプル分注動作モードとを備え、所定の代表検体サンプルと前記キャリブレータのそれぞれについて前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの所定の光学的特性と前記特定のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値、又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度を用いて、以後の検査対象となる濃度が未知の検体サンプルについての前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の光学的特性値、又は前記通常の検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値を用いて算出した該通常の検体サンプルの濃度を補正する機能を備えたことを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項2】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度と該特定のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度との比率から濃度の補正係数を算出しておき、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値に対する該濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出するとともに、該算出した濃度を前記濃度の補正係数を用いて補正する機能を備えたことを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項3】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値と前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した該代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値との比率から光学的特性値の補正係数を算出しておき、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記光学的特性値の補正係数と、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出する機能を備えたことを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項4】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析システムにおいて、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを有し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度を用いて、該代表検体サンプルを通常モードにおける新たなキャリブレータとし、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記新たなキャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度とを用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出する機能を備えたことを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項5】
前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードが切り替え可能であり、それぞれのサンプル分注動作モードに切り替えた場合に当該サンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えていることを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項6】
前記通常のサンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えた通常の検体分析動作モードと、該通常の検体分析動作モードとは別機能を備えた特定の検体分析動作モードを有し、
前記特定の検体分析動作モードが、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え、かつ、それぞれのサンプル分注動作モードを介して得られた当該サンプルの分注量を比較できる機能を備えていることを特徴とする請求項1又は3に記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項7】
前記分注動作の条件が、分注時間である請求項1〜6のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項8】
前記分注動作の条件が、分注時間及び分注量である請求項1〜6のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項9】
前記代表検体サンプルが、プール血清である請求項1〜8のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項10】
検査対象となる複数の検体サンプルを用いて前記通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介してそれぞれ所定の光学的特性を測定し、モード間での各サンプルの測定値比率の平均値を、該通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介して得られた前記代表検体サンプルの測定値の比率として用いるようにした請求項1〜10のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項11】
前記特定のサンプル分注動作モードを介して所定の光学的特性をもとに濃度が測定された前記代表検体サンプルを、以後の検査対象となる一般の検体サンプルについての該通常のサンプル分注動作モードにおいてキャリブレータとして用いることを特徴とする請求項1に記載の検体サンプルの濃度自動分析システム。
【請求項12】
キャリブレータを用いて濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、
通常のサンプル分注動作モードと、前記通常のサンプル分注動作モードとは分注動作の条件が異なる特定のサンプル分注動作モードとを介して、所定の代表検体サンプルと前記キャリブレータのそれぞれについて所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値、又は前記所定の代表検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて算出した該所定の代表検体サンプルの濃度を用いて、以後の検査対象となる濃度が未知の検体サンプルについての前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記所定の光学的特性値、又は前記通常の検体サンプル及び前記キャリブレータについての前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて算出した該通常の検体サンプルの濃度を補正することを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項13】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度と該特定のサンプル分注動作モードを介して算出した該代表検体サンプルの濃度との比率から濃度の補正係数を算出しておき、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値に対する該濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出するとともに、該算出した濃度を前記濃度の補正係数を用いて補正することを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項14】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定するとともに、前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記通常のサンプル分注動作モードを介して測定した前記代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値と前記特定のサンプル分注動作モードを介して測定した該代表検体サンプルについての前記所定の光学的特性値との比率から光学的特性値の補正係数を算出しておき、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記光学的特性値の補正係数と、前記キャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出することを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項15】
キャリブレータについて所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定しておき、検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて前記所定試薬との反応による所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記濃度が未知の検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該濃度が未知の検体サンプルの濃度を算出する、検体サンプルの濃度自動分析方法において、
前記キャリブレータと前記濃度が未知の検体サンプルとで分注動作の条件が同じであり、かつ、該濃度が未知の検体サンプルを対象とした場合に該キャリブレータを対象とした場合に比べて実際の分注量に差が生じる可能性がある分注動作を行う通常のサンプル分注動作モードと、
前記濃度が未知のサンプルと前記キャリブレータとで分注動作の条件が同じであり、かつ、実際の分注量も略同じとなる分注動作を行う特定のサンプル分注動作モードを用意し、
前記濃度が未知の検体サンプルとしての略平均的な液性を有する、濃度が未知の所定の検体サンプルを代表検体サンプルとして用い、前記キャリブレータとともに前記特定のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、前記キャリブレータについて測定した前記所定の光学的特性値に対する前記代表検体サンプルについて測定した前記所定の光学的特性値との比率とキャリブレータの濃度値を用いて該代表検体サンプルの濃度を算出し、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度を用いて該代表検体サンプルを通常モードにおける新たなキャリブレータとし、
以後の検査対象としての濃度が未知の検体サンプルについて、前記通常のサンプル分注動作モードを介して前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性を測定し、該光学的特性値と、前記新たなキャリブレータについて測定しておいた前記通常のサンプル分注動作モードを介したときの前記所定試薬との反応による前記所定の光学的特性値と、前記特定のサンプル分注動作モードを介して算出した前記代表検体サンプルの濃度とを用いて該濃度が未知の検体サンプルについての補正された濃度を算出することを特徴とする検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項16】
前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え可能とし、それぞれのサンプル分注動作モードに切り替えた場合に当該サンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析することを特徴とする請求項12、13、15のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項17】
前記通常のサンプル分注動作モードを介して得られた測定値を用いて当該サンプルの濃度を自動分析する機能を備えた通常の検体分析動作モードと、該通常の検体分析動作モードとは別機能を備えた特定の検体分析動作モードを用意し、
前記特定の検体分析動作モードで、前記通常のサンプル分注動作モードと前記特定のサンプル分注動作モードとを切り替え、かつ、それぞれのサンプル分注動作モードを介して得られた当該サンプルの分注量を比較することを特徴とする請求項12又は14に記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項18】
前記分注動作の条件が、分注時間である請求項12〜17のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項19】
前記分注動作の条件が、分注時間及び分注量である請求項12〜17のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項20】
前記代表検体サンプルが、プール血清である請求項12〜19のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項21】
検査対象となる複数の検体サンプルを用いて前記通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介してそれぞれ所定の光学的特性を測定し、モード間での各サンプルの測定値比率の平均値を、該通常のサンプル分注動作モードと特定のサンプル分注動作モードを介して得られた前記代表検体サンプルの測定値の比率として用いるようにした請求項12〜20のいずれかに記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。
【請求項22】
前記特定のサンプル分注動作モードを介して所定の光学的特性を測定した前記代表検体サンプルを、以後の検査対象となる一般の検体サンプルについての該通常のサンプル分注動作モードにおいてキャリブレータとして用いることを特徴とする請求項12に記載の検体サンプルの濃度自動分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−261802(P2008−261802A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106295(P2007−106295)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】