説明

検出方法、検出用試料セルおよび検出用キット

【課題】蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法において、より高感度かつ定量性の高い検出を可能とする。
【解決手段】蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法において、蛍光標識として、蛍光色素分子15を、この蛍光色素分子15から生じる蛍光Lfを透過させる透光材料16により包含してなる蛍光物質Fを用いる。そして、蛍光物質Fを光導波モードの染み出しによるエバネッセント波Ewによって励起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の被検出物質を検出する検出方法、検出用試料セルおよび検出用キットに関するものであり、特に詳細には光導波モードを利用した検出方法、検出用試料セルおよび検出用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ測定等において、蛍光法は高感度かつ容易な測定法として広く用いられている。蛍光法とは、特定波長の光に励起されて蛍光を発する被検出物質を含むと考えられる試料に、上記特定波長の励起光を照射し、このとき発せられる蛍光を検出することによって定性的または定量的に被検出物質の存在を確認する方法である。また、被検出物質自身が蛍光材料ではない場合、この被検出物質を有機蛍光色素等の蛍光標識で標識し、その後同様にして蛍光を検出することにより、その標識の存在をもって被検出物質の存在を確認する方法である。
【0003】
とりわけここ数年、蛍光法は、冷却CCDの発達など光検出器の高性能化と相まって、バイオ研究には欠かせない道具となっている。また、蛍光標識に用いる材料においても、特に可視領域では蛍光量子収率の高い蛍光色素、例えばFITC(蛍光 525nm、蛍光量子収率 0.6)やCy5(蛍光 680nm、蛍光量子収率 0.3)のような実用の目安となる0.2を超える蛍光色素が開発され広く用いられている。
【0004】
また、非特許文献1に示すように、金属層のプラズモンによる電場増強効果を用いて蛍光信号を増大することにより1pMを切るような高感度検出が可能である蛍光法、いわゆる表面プラズモン電場増強蛍光分光法(SPF)も報告されている。
【0005】
さらに、非特許文献2に示すように、エバネッセント波の染み出し長の長い光導波モードによる電場増強効果を用いて蛍光信号を増大することにより、高感度検出が可能であるという報告もされている。
【非特許文献1】Margarida M. L. M. Vareiro, et al., Analytical Chemistry, Vol. 77, No. 8, p.2426-2431 (2005)
【非特許文献2】坪井一真、外2名、「光導波モード増強蛍光観察を用いたカテコールアミンの高感度検出」、第54回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、応用物理学会、2007年、p.1378(28p−SA−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的にさらなるS/N比の向上が望まれており、ノイズの低減のみではなく、蛍光強度の増幅も必要とされている。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、より高感度かつ定量性の高い検出を可能とする検出方法、検出用試料セルおよび検出用キットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による検出方法は、
誘電体プレートの一面に、金属層と光導波層とをこの順に有するセンサチップを用意し、
光導波層上に被検出物質および蛍光標識物質を含む試料を接触させると共に、
誘電体プレートと金属層との界面に対し、誘電体プレート側から全反射条件を満たすように励起光を入射して、この界面に第1のエバネッセント波を発生せしめ、
第1のエバネッセント波を、光導波層内で光導波モードと結合させることにより、光導波層の上面に第2のエバネッセント波を発生せしめ、
第2のエバネッセント波により、蛍光標識物質の蛍光標識を励起し、
蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する方法であって、
蛍光標識として、蛍光色素分子を、蛍光色素分子から生じる蛍光を透過させる透光材料により包含してなる蛍光物質を用いることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「蛍光標識物質」は、蛍光標識が付与された被検出物質であってもよいし、蛍光標識が付与された、被検出物質と競合する競合物質であってもよい。すなわち、サンドイッチ法によるアッセイを行う場合には、蛍光標識が付与された被検出物質のことを意味し、競合法によるアッセイを行う場合には、蛍光標識が付与された、被検出物質と競合する競合物質のことを意味するものとする。本発明の検出方法は、サンドイッチ法、競合法のいずれの方法によるアッセイにも対応可能である。
【0010】
「蛍光標識の励起に起因して生じる光」とは、蛍光標識が励起することにより直接的または間接的に生じる光であって、その光の発生量と励起した蛍光標識の数量との間に相関性を有するものを意味するものとする。
【0011】
「被検出物質の量を検出する」とは、被検出物質の存在の有無を含み定性的な量のみならず、定量的な量を検出することも意味するものとする。
【0012】
また、蛍光物質の透光材料により包含される蛍光色素分子の数は1個でもよいが、複数であることがより好ましい。なお、蛍光物質が複数の蛍光色素分子を備えるものである場合には、少なくとも1つの蛍光色素分子が透光材料により包まれていればよく、他の蛍光色素分子の一部が透光材料の外部に露出していてもよい。
【0013】
本発明による検出方法において、蛍光物質の粒径は、5300nm以下であることが好ましく、100nm〜700nmであることがより好ましい。なお、本明細書において、蛍光物質の粒径は、略球状の粒子の場合にはその直径であり、球状でない粒子の場合にはその最大幅と最小幅との平均の長さで定義するものとする。
【0014】
また、蛍光物質の表面に上記蛍光を透過する厚みの金属皮膜が設けられていてもよい。
【0015】
そして、光導波層は、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることが好ましく、この積層構造は、金属層側から順に内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることが好ましい。
【0016】
さらに、蛍光標識の励起に起因して生じる光として、励起によって蛍光標識から生じる蛍光を検出することが好ましく、或いは、励起によって蛍光標識から生じる蛍光が金属層に表面プラズモンを励起することにより上記界面の誘電体プレート側へ放射される、表面プラズモンからの放射光を検出することが好ましい。
【0017】
さらに、本発明による検出用試料セルは、
蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法に使用される検出用試料セルであって、
液体試料が流下される流路を有する基台と、
流路の上流側に設けられた流路に液体試料を注入するための注入口と、
流路の下流側に設けられた、注入口から注入された液体試料を下流側に流すための空気孔と、
注入口と空気孔との間の流路に設けられたセンサチップ部であって、流路の内壁面の一部として設けられた誘電体プレート、このプレートの試料接触面側の所定領域に順に設けられた金属層および光導波層からなるセンサチップ部と、
光導波層上に固定された、被検出物質と特異的に結合する第1の結合物質と、
センサチップ部より上流側の流路内に固定された、被検出物質と特異的に結合する第2の結合物質、または第1の結合物質と特異的に結合すると共に被検出物質と競合する第3の結合物質が修飾された蛍光物質とを備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
さらに、本発明による検出用キットは、
蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法に使用される検出用キットであって、
液体試料が流下される流路を有する基台と、流路の上流側に設けられた流路に液体試料を注入するための注入口と、流路の下流側に設けられた、注入口から注入された液体試料を下流側に流すための空気孔と、注入口と空気孔との間の流路に設けられたセンサチップ部であって、流路の内壁面の一部として設けられた誘電体プレート、このプレートの試料接触面側の所定領域に順に設けられた金属層および光導波層からなるセンサチップ部と、光導波層上に固定された、被検出物質と特異的に結合する第1の結合物質とを備えた試料セル、および
液体試料と同時もしくは液体試料の流下後に、流路内に流下される標識用溶液であって、被検出物質と特異的に結合する第2の結合物質、または第1の結合物質と特異的に結合すると共に被検出物質と競合する第3の結合物質が修飾された蛍光物質を含む標識用溶液とを備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
なお、本発明による検出用試料セルおよび検出用キットにおいて、第2の結合物質が修飾された蛍光物質を備えている場合には、サンドイッチ法によるアッセイ、第3の結合物質が修飾された蛍光物質を備えている場合には競合法によるアッセイを行うのに好適なものとなる。
【0020】
ここで、「蛍光物質」は、蛍光色素分子を、蛍光色素分子から生じる蛍光を透過する透光材料により包含してなるものである。
【0021】
また、蛍光物質の透光材料により包含される蛍光色素分子の数は1個でもよいが、複数であることがより好ましい。なお、蛍光物質が複数の蛍光色素分子を備えるものである場合には、少なくとも1つの蛍光色素分子が透光材料により包まれていればよく、他の蛍光色素分子の一部が透光材料の外部に露出していてもよい。
【0022】
本発明による検出用試料セルおよび検出用キットにおいて、蛍光物質の粒径は、5300nm以下であることが好ましく、100nm〜700nmであることがより好ましい。
【0023】
また、蛍光物質の表面に上記蛍光を透過する厚みの金属皮膜が設けられていてもよい。
【0024】
そして、光導波層は、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることが好ましく、この積層構造は、金属層側から順に内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による検出方法、検出用試料セルおよび検出用キットでは、蛍光物質の励起に光導波モードを利用した光導波モード増強蛍光分光法(optical waveguide mode enhanced fluorescence spectroscopy:OWF)を用いる。より具体的には、蛍光物質の励起を、従来SPFで用いられていた励起光の全反射によって生じるエバネッセント波(第1のエバネッセント波)ではなく、光導波モードの染み出しによるエバネッセント波(第2のエバネッセント波)によって行う。この第2のエバネッセント波は、第1のエバネッセント波に比して、電場減衰の程度が緩やかで染み出し長(検出面表面における電場増強度が1/eになるまでの長さ)が長いという特徴を有する。
【0026】
この結果、染み出し長の長い第2のエバネッセント波を最大限利用して、蛍光物質内の蛍光色素分子を効率よく励起することができ、より高感度かつ定量性の高い検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0028】
本発明は、光導波モードを利用する。そこで図1を用いて、光導波モードおよびこの光導波モードを利用したOWFについてまず簡単に説明する。
【0029】
なお、光導波モードとは、ある有限の空間内に光が閉じこめられて伝搬していく状態のことで、誘電体等の光導波路内の多重反射に基づくものである。最も良く知られている光導波モードとしては光ファイバ内の光の伝搬状態が挙げられる。光ファイバは、屈折率が低いファイバ状(通常非常に細長い円筒型)の材料の中心に屈折率の高い部位(通常、コアと呼ばれる)を形成し、この屈折率差によって生じる光の反射によって、光をコア中に閉じ込めて伝搬させる。屈折率の低い物質(空気や真空状態も含む)に挟まれた板状の材料中を光が伝搬するスラブ型光導波路も良く知られている。
【0030】
図1に、OWFにおいて光導波モードを発現するためのセンサチップの例を示す。このセンサチップ3は、誘電体プリズム11、および誘電体プリズム11の上面に順に設けられた金属層12aと光導波層12bとからなる。このとき、光導波層12bの上側(表面側)が、光導波層12bよりも屈折率の低い物質(例えば空気や水)に触れている場合、光導波層12bはスラブ型光導波路と似た構造となる。そして、このような光導波層12bに光が閉じ込められて伝搬する状態が、本発明における光導波モードとなる。
【0031】
このセンサチップ3に、SPFで用いる光学系と同様の光学系を用いて入射光Loを照射することにより、入射光Loの全反射によって生じるエバネッセント波(第1のエバネッセント波)が光導波層12b内で多重反射を起こし光導波モードとなる。そして、この光導波モードの染み出しによるエバネッセント波(第2のエバネッセント波)が光導波層12b上に生じることとなる。
【0032】
すなわち、誘電体プリズム11と金属層12aとの界面に対し全反射条件を満たすように誘電体プリズム11側から入射された入射光Loは、誘電体プリズム11を透過しこの界面で全反射して、光導波層12b側に第1のエバネセント波を生じせしめる。この第1のエバネセント波を生じせしめた状態で入射光Loの入射角度を変化させると、ある特定の入射角度で第1のエバネセント波が光導波層12b内を伝搬するようになる。このような状態を、「第1のエバネセント波が光導波モードと結合する」、或いは「光導波モードが誘起される」と表現する。第1のエバネセント波が光導波モードと結合すると、第1のエバネセント波の一部又は全部が、光導波層12b内を伝搬すると共にその中に閉じ込められる。そして、その閉じ込められた光の一部が光導波層12bの外部に染み出して、前述した第2のエバネッセント波となるのである。
【0033】
OWFでは、上記のように発生した第2のエバネッセント波を用いて、光導波層12b上の被検出物質の量に応じた量の蛍光標識を励起し、この蛍光標識の励起に起因して生じる蛍光を検出し、検出された蛍光量に基づいて被検出物質の量を検出する。
【0034】
なお、光導波モードは必ずしも1つではなく、入射光Loの波長、光導波層12bの層厚および屈折率等の条件により、特定の入射角度の異なる位置に複数の光導波モードを有する場合がある。図1には、TE(transverse electric)モードにおける、0次(基準)の光導波モード(TE)、1次の光導波モード(TE)、2次の光導波モード(TE)のy成分電場の状態も概念的に示している。なお、併せてSPRによる電場の状態も概念的に示している
この特定の入射角度は、反射光(全反射した入射光Lo)をモニタリングすることにより確認することができる。これは、第1のエバネセント波が光導波モードと結合するときに、反射光が急激に増減するためである。
【0035】
例えば図2は、p偏光入射光の入射角度と反射光の反射率の関係を示した概念図である。図2には、4カ所の反射率の鋭い減少(ディップ)が見られる(θは臨界角)。このような反射率のディップの原因は主に2つある。
【0036】
1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)に起因するものであり、図2のθの入射角度で生じる反射率のディップがこれに対応する。SPRは、負の誘電率を持つ金属、特にAu、Ag等の貴金属などを金属層として用いた場合に生じる現象であり、光導波層が無くても生じる現象である。
【0037】
そしてもう1つが、光導波モードに起因するものであり、図2のθ、θ、θの入射角度で生じる反射率のディップがこれに対応する。この反射率のディップは、図1に示す光導波層が無い場合や光導波層が薄い場合には生じない。光導波モードが発生する光導波層の最低の厚さは、入射光の波長や偏光状態、そして光導波層の屈折率等によって異なる。一般的に光導波層の屈折率が大きければ薄くても良く、入射光の波長が短い場合も薄くて良い。一方、光導波層の屈折率が小さい場合や入射光の波長が長い場合は、厚い光導波層が要求される。
【0038】
上記のように、このSPRと光導波モードは同様の光学系で観測することができるが、一般的にSPRが生じる角度と、第1のエバネセント波が光導波モードと結合する角度とは異なる。またSPRに起因する反射率の増減は、一般的に入射光がp偏光の場合のみに生じる現象であるが、光導波モードに起因する反射率の増減は、p偏光およびs偏光の両方の場合で生じる。さらに、一般的に反射率の増減が光導波モードに起因する場合は、光導波層の層厚が厚いほど特定の入射角度の異なる位置により多くの光導波モード(高次の光導波モード)が生じうる点、s偏光入射光では逆に鋭く増加する(上に凸のピークを有する)点も特徴である。
【0039】
また、第2のエバネッセント波は、第1のエバネッセント波に比して、電場減衰の程度が緩やかで染み出し長が長いという特徴を有する。そして、高次の光導波モードほど光の閉じ込め効果が小さくなり染み出し長が長くなる。
【0040】
<第1の実施形態>
以上を踏まえ図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出方法およびそれに用いられる蛍光検出装置について説明する。図3Aは装置の全体図である。各図において説明の便宜上、各部の寸法は実際のものとは異ならせている。
【0041】
本実施形態に係る検出方法は、誘電体プレート11の一面に、金属層12aと光導波層12bとをこの順に有するセンサチップ10を用意し、光導波層12b上に被検出物質Aおよび蛍光標識物質を含む試料を接触させると共に、誘電体プレート11と金属層12aとの界面に対し、誘電体プレート11側から全反射条件を満たすように励起光Loを入射して、この界面に第1のエバネッセント波(図示省略)を発生せしめ、第1のエバネッセント波を、光導波層12b内で光導波モードと結合させることにより、光導波層12bの上面に第2のエバネッセント波Ewを発生せしめ、第2のエバネッセント波Ewにより、蛍光標識物質の蛍光物質Fを励起し、蛍光物質Fの励起により生じる蛍光を検出し、検出された蛍光量に基づいて被検出物質の量を検出するものである。
【0042】
そして、上記の検出方法を実施する本実施形態に係る蛍光検出装置1は、誘電体プレート11と、その一面の所定領域に順に設けられた金属層12aおよび光導波層12bとを備えたセンサチップ10、励起光Loを誘電体プレート11と金属層12aとの界面で全反射条件となる入射角度で、誘電体プレート11通して励起光Loを照射する励起光照射光学系20と、光導波層12bに接触している試料S中に蛍光物質Fが付与された被検出物質が存在する場合に、この蛍光物質Fから生じる蛍光Lfを検出する光検出器30とを備えている。
【0043】
励起光照射光学系20は、励起光Loを出力する半導体レーザ(LD)等からなる光源21と、誘電体プレート11に一面が接触するように配置されたプリズム22とを備えている。プリズム22は、誘電体プレート11と金属層12aとの界面で励起光Loが全反射するように誘電体プレート11内に励起光Loを導光するものである。なお、プリズム22と誘電体プレート11とは、屈折率マッチングオイルを介して接触されている。光源21は、プリズム22の他の一面から上記界面にて励起光Loが全反射角以上で入射するように配置されている。さらに、光源21とプリズム22との間に必要に応じて導光部材を配置してもよい。なお、励起光Loは、第1のエバネッセント波を効果的に誘起するようにp偏光で界面に対して入射する。
【0044】
センサチップ10は、ガラス板などの誘電体プレート11の一表面の所定領域に順に金属層12aおよび光導波層12bが成膜されたものである。
【0045】
金属層12aは、所定領域に開口を有するマスクを誘電体プレート11の一表面に形成し、既知の蒸着法やスパッタ法等で成膜形成することができる。金属層12aの層厚は、金属層12aの材料と、励起光の波長により表面プラズモンが強く励起されるように適宜定めることが好ましい。例えば、励起光Loとして780nmに中心波長を有するレーザ光を用い、金属層12aとしてAu膜を用いる場合には、金属層12aの層厚は40nm±30nmが好適である。さらに好ましくは、40nm±10nmである。なお、金属層12aは、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Ti、およびこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属を主成分とするものが好ましい。ここで、「主成分」は、含量90質量%以上の成分と定義する。
【0046】
光導波層12bは、金属層12a上に形成されるものであり、金属層12aと同様の方法により形成することができる。光導波層12bの層厚は、特に制限されることはなく、光導波モードが誘起されるように、励起光Loの波長、入射角度および光導波層12bの屈折率等を考慮して定めることができる。例えば、上記と同様に励起光Loとして780nmに中心波長を有するレーザ光を用い、光導波層12bとしてシリコン酸化膜を用いる場合には、500〜600nm程度が好ましい。そして、光導波層12bは、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることが好ましく、この積層構造は、金属層側から順に内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることが好ましい。上記光導波材料としては、SiO 、TiO、HfOなどの無機酸化膜、ポリスチレン、PMMAなどの有機ポリマー等が挙げられる。このような積層構造とすることにより、第2のエバネッセント波Ewの染み出し長を制御することができる。さらに、内部光導波層が金属層12aおよび内部金属層に挟まれた構造(共振器構造)を構成することにより光閉じ込めによる増強効果、および表面に内部金属層が存在する場合には、条件下によってはプラズモンによる増強効果も期待できる。
【0047】
なお、本実施形態においては、センサチップ10上に液体試料Sを保持する試料保持部13が備えられ、センサチップ10と試料保持部13により液体試料Sを保持可能な箱状セルが構成されている。なお、センサチップ10上に表面張力で留まる程度の微量な液体試料Sを測定する場合には、試料保持部13を備えない態様であってもよい。
【0048】
以下、本実施形態に係る検出方法および蛍光検出装置を用いた蛍光検出の原理について説明する。まず、本実施形態に係る蛍光物質Fの励起方法は以下の通りである。
励起光照射光学系20により励起光Loが誘電体プレート11と金属層12aとの界面に対して全反射角以上の特定の入射角度で入射されることにより、この界面上に生じる第1のエバネッセント波(図示省略)が光導波モードと結合して、光導波層12b上の液体試料S側に第2のエバネッセント波Ewが誘起される。この第2のエバネッセント波Ewにより光導波層12b表面に電場増強領域が形成される。このとき、第2のエバネッセント波Ewによる電場増強領域内に蛍光物質Fが存在する場合には、その蛍光物質Fが励起されて蛍光Lfが発生する。なお、この電場増強領域外の蛍光物質Fは励起されず蛍光Lfを発しない。光検出器30は、この蛍光Lfを検出する。
【0049】
本実施形態では、蛍光物質Fは、複数の蛍光色素分子15を内包するものであるため、従来の蛍光色素分子15単体を蛍光標識として用いる場合と比較すると、発光する蛍光量を大幅に増加することができる。
【0050】
なお、蛍光物質Fは粒径が5300nm以下のものが好ましく、100nm〜700nmのものがさらに好ましく、130nm〜500nmのものが特に好ましい。透光材料16としては、具体的には、ポリスチレンやSiO2などが挙げられるが、蛍光色素分子15を内包でき、かつ、蛍光色素分子15からの蛍光Lfを透過させて外部に放出できるものであれば特に制限されない。
【0051】
上記構成の蛍光検出装置1を用いた検出方法でのセンシングについて説明する。
【0052】
まず、センサチップ10の光導波層12b上に検査対象となる試料Sを接触させる。ここでは、一例として、試料Sに含まれる被検出物質として抗原Aを検出する場合について説明する。光導波層12b上には抗原Aと特異的に結合する1次抗体B(第1の結合物質)が修飾されている。試料保持部13中に試料Sが流され、次いで同様に抗原Aと特異的に結合する2次抗体B(第2の結合物質)が表面に修飾された蛍光物質Fが流される。この場合、光導波層12bに表面修飾される1次抗体Bと蛍光物質Fに表面修飾される2次抗体Bとは、抗体Aに対して互いに別の結合部位(エピトープ)に結合するものが用いられる。その後、誘電体プレート11の所定領域に向けて励起光照射光学系20から励起光Loが照射され、光検出器30により蛍光検出がなされる。このとき、光検出器30によって所定の蛍光Lfが検出されたなら、上記2次抗体Bと抗原Aとの結合、すなわち試料S中における抗原Aの存在を確認できることになる。
なお、被検出物質(抗原A)の標識のタイミングは特に制限されず、被検出物質(抗原A)を第1の結合物質(1次抗体B)に結合させる前に、予め試料に蛍光標識(蛍光物質F)を添加しておいてもよい。
【0053】
蛍光物質Fは、以下のようにして作製することができる。
まず、ポリスチレン粒子(Estapor社、φ500nm、10%Solid、カルボキシル基、製品番号K1―050)を調液して0.1%Solid in phosphate(ポリスチレン溶液:pH7.0)を作製する。
次に、蛍光色素分子(林原生物化学研究所、NK−2014、励起波長:780nm)0.3mgの酢酸エチル溶液(1mL)を作製する。
上記ポリスチレン溶液と蛍光色素溶液を混合し、エバポレートしながら含浸を行った後、遠心分離(15000rpm、4℃、20分を2回)を行い、上清を除去する。
以上の工程により、蛍光色素分子から生じる蛍光を透過する機能を有するポリスチレンにより蛍光色素分子15を内包してなる蛍光物質Fを得ることができる。このような手順で、ポリスチレン粒子に蛍光色素を含浸させて作製された蛍光物質Fの粒径はポリスチレン粒子の粒径と同一(上記例ではφ500nm)となる。
【0054】
以下、本実施形態における作用を説明する。
本発明では、蛍光標識として、蛍光色素分子を、該蛍光色素分子から生じる蛍光を透過する材料により包含してなる蛍光物質を用いることにより、染み出し長の長い第2のエバネッセント波を最大限利用して、蛍光物質内の蛍光色素分子を効率よく励起することができ、より高感度かつ定量性の高い検出が可能となる。
【0055】
また、第1のエバネッセント波を用いて蛍光検出を行う場合には、この第1のエバネッセント波の短い染み出し長が問題である。すなわち、第1のエバネッセント波の染み出し長は励起光の波長程度であり、その電場増強度は検出面(表面プラズモンを誘起する金属層)表面からの距離に応じて指数関数的に急激に減衰する。したがって、蛍光信号強度を稼ぐために、複数の蛍光色素分子が内包されている蛍光物質を使用してもそれらを効率よく励起することができない。これが蛍光信号強度の低下やばらつきの原因となる。
【0056】
しかしながら、本発明に係る検出方法では、第1のエバネッセント波に比して、電場減衰の程度が緩やかで染み出し長が長い第2のエバネッセント波を利用して、効率よく蛍光物質の励起を行う。したがって、従来のSPFを用いた場合に比して、試料液の流れや立体障害等により蛍光物質の位置(検出面表面からの距離)にばらつきが生じたとしても、蛍光物質に内包される蛍光色素分子を効率よく励起することができ、蛍光信号強度の低下およびばらつきを抑制して、より高感度かつ定量性の高い検出が可能となる。
【0057】
また、第2のエバネッセント波は、励起光の入射角度や光導波層の層厚によって、光導波モードの次数を変化させその染み出し長を変化させることができる。したがって、本発明に係る検出方法では、測定条件や蛍光物質の粒経等に応じて、第2のエバネッセント波の染み出し長を制御することが可能である。
【0058】
さらに、バイオセンシングにおけるノイズは、試料内に存在するタンパク等の非特異吸着が主要因で、吸着のメカニズムは検出面とタンパク間との疏水的な相互作用がメインである。そのため、例えばSPRにおいては、金膜表面の表面修飾による親水化が高感度検出における大きな問題となっており、実際にこれらの非特異吸着の問題を解消し実用化するための発明が多く出願されている。それに対し本発明において、光導波層としてSiO膜を用いた場合には、SiOが著しい親水性を有するため、非特異吸着はほとんど存在せず、複雑な表面修飾を行うことなくノイズを下げることが可能となる。
【0059】
一方、光導波層が積層構造の最表面に内部金属層を有している場合には、この内部金属層による蛍光色素分子の金属消光の影響が強くなるため、内部金属層と蛍光色素分子との距離を精密に制御する必要がある。金属消光の影響の程度は、金属が半無限の厚さを持つ平面なら距離の3乗に反比例して、金属が無限に薄い平板なら距離の4乗に反比例して、また、金属が微粒子なら距離の6乗に反比例して小さくなる。従って、内部金属層と蛍光色素分子15との間の距離は少なくとも数nm以上、より好ましくは10nm以上確保しておくことが好ましい。このような制御は、一般的にはポリマー膜、SiO膜、SAM膜もしくはCMD膜のようなバリア層を金属層上に設けることにより行われているが、面倒かつ煩雑であり実用にはあまり向いていない。しかしながら、本発明において、蛍光物質が、蛍光色素分子を充分多く含有する場合には、内部金属層上に金属消光防止のための膜を設けなくても、必然的に内部金属層と多くの蛍光色素分子との距離をある程度離間させることができる。これにより従来、金属消光防止のために必要であったCMD膜およびSAM膜を形成する手間をなくすことができ、非常に簡便な方法で効果的に金属消光を防止すると共に、安定して蛍光信号を検出することができる。
【0060】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の検出方法および装置について図3Bを参照して説明する。図3Bに示す放射光検出装置1’は、第1の実施形態の蛍光検出装置1と光検出器30の配置位置が異なる。具体的に放射光検出装置1’は、光検出器30を、蛍光が金属層に表面プラズモンを励起することによって誘電体プレートと金属層との界面の誘電体プレート側へ放射される、表面プラズモンからの放射光を検出するように配置したものである。ここでは、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付してあり、第1の実施形態と同様の要素についての説明は特に必要のない限り省略する。
【0061】
以下、本実施形態に係る検出方法の原理について説明する。
第1の実施形態と同様に、励起光照射光学系20により励起光Loが誘電体プレート11と金属層12aとの界面に対して全反射角以上の特定の入射角度で入射されることにより、この界面上に生じる第1のエバネッセント波(図示省略)が光導波モードと結合して、光導波層12b上の液体試料S側に第2のエバネッセント波Ewが誘起される。この第2のエバネッセント波Ewにより光導波層12b表面に電場増強領域が形成される。このとき、第2のエバネッセント波Ewによる電場増強領域内に蛍光物質Fが存在する場合には、その蛍光物質Fが励起されて蛍光Lfが発生する。なお、この電場増強領域外の蛍光物質Fは励起されず蛍光Lfを発しない。そして、光導波層12b上で生じた蛍光Lfが、金属層12aに表面プラズモンを励起することによって、誘電体プレートと金属層との界面の誘電体プレート側へ特定の角度で放射光Leが放射される(この現象をSurface Plasmon-Coupled Emission(SPCE)という。)。光検出器30は、この放射光Leを検出するように配置されている。
【0062】
放射光Leは蛍光Lfが金属層12aの特定の波数の表面プラズモンと結合する際に生じるものであり、蛍光Lfの波長に応じてその結合する波数が定まるため、その波数に応じて放射光Leの放射角度が定まる。通常、励起光Loの波長と蛍光Lfの波長とは異なることから、蛍光Lfにより励起される表面プラズモンは励起光Loにより励起される表面プラズモンとは異なる波数に起因するものであるため、放射光Leは励起光Loの入射角度とは異なる角度で放射される。
【0063】
本実施形態の検出方法においても、被検出物質Aに、蛍光標識として蛍光物質Fを付与して第1の実施形態と同様のセンシングを行う。したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、SPCEを利用することにより、蛍光Lfが光吸収の大きい溶媒を通過する距離を数十nm程度と削減することができる。したがって、例えば血液における光吸収をほぼ無視することができ、血液を遠心分離し赤血球などの着色成分を除去したり、血球フィルタを通して血清あるいは血漿状態にしたりするという前処理を行うことなく測定が可能となる。
【0065】
<第3の実施形態>
第3の実施形態の検出方法および装置について図4〜6を参照して説明する。ここでは、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。
【0066】
図4に示す蛍光検出装置2は、蛍光検出装置2における検出方法に使用される本発明の一実施形態の試料セル50と、試料セル50の所定領域に励起光Loを照射させる励起光照射光学20と、蛍光Lfを検出する光検出器30とを備えている。
【0067】
励起光照射光学系20は、励起光Loを出力する半導体レーザ(LD)からなる光源21と、試料セル50の基台51に一面が接触するように配置されたプリズム22とに加え、光源21から出射された励起光Loを集光しプリズム22の一面から入射させるレンズ24およびミラー25からなる導光部材と、半導体レーザ光源21を駆動するドライバ28とを備えている。
【0068】
図5Aは、試料セル50の構成を示す平面図、図5Bは試料セル50の側断面図である。
試料セル50は、基台51と、基台51上に液体試料Sを保持し、液体試料Sの流路52を形成するスペーサ53と、液体試料Sを注入する注入口54aおよび流路52を流下した液体試料Sを排出する排出口となる空気孔54bを備えたガラス板からなる上板54とを備えている。また、注入口54aから流路52に至る箇所にはメンブレンフィルター55が備えられ、流路52下流の空気孔54bに接続する部分には廃液だめ56が形成されている。なお、本実施形態では、スペーサ53により構成された流路52を上部に有する基台51は誘電体プレートで構成されており、センサチップ部の誘電体プレートを兼ねている。基台51はセンサチップ部となる一部のみ誘電体プレートで構成されたものであってもよい。
【0069】
試料セル50の基台51上には流路52上流側から、被検出物質である抗原と特異的に結合する2次抗体B(第2の結合物質)が表面修飾された蛍光物質F(以下、標識2次抗体という)を物理吸着させてある標識2次抗体吸着エリア57、被検出物質である抗原と特異的に結合する1次抗体B(第1の結合物質)が固定された第1の測定エリア58、被検出物質である抗原とは結合せず標識2次抗体Bと特異的に結合する1次抗体Bが固定された第2の測定エリア59が順に設けられている。この第1および第2の測定エリア58,59がセンサチップ部に相当する。なお、図4においては、液体試料Sが注入されて抗体が標識2次抗体と結合して流れた後の試料セル50を示しているために、標識2次抗体吸着エリア57にはもはや標識2次抗体は存在していない。本例では、センサチップ部に2つの測定エリアを設けた例を挙げているが、測定エリアは1つのみであってもよい。
【0070】
第1の測定エリア58および第2の測定エリア59の基台51上にはそれぞれ金属層および光導波層として、Au膜(図示省略)およびSiO膜(58bおよび59b)が形成されている。第1の測定エリア58のSiO膜58b上にはさらに1次抗体Bが固定され、第2の測定エリア59のSiO膜59b上にはさらに1次抗体Bとは異なる1次抗体Bが固定されている。互いに異なる1次抗体が設けられている点以外は第1の測定エリア58と第2の測定エリア59は同一の構成である。第2の測定エリア59に固定されている1次抗体Bは抗原Aとは結合せず、標識2次抗体Bと直接結合するものである。これにより、流路を流れた標識2次抗体の量、活性など反応に関する変動要因と励起光照射光学系20、SiO膜58b・59b、液体試料Sなど光導波モードによる増強度に関する変動要因を検出し、較正に利用することができる。なお、第2の測定エリアには1次抗体Bではなく、既知量の標識物質が予め固定されていてもよい。上記標識物質は2次抗体により表面修飾された蛍光物質(標識2次抗体B)と同種のものであってもよいし、波長、サイズの異なる蛍光物質であってもよい。さらには金属微粒子などであってもよい。この場合、励起光照射光学系20、SiO膜58b・59b、液体試料Sなど光導波モードによる増強度に関する変動要因のみを検出し、較正に利用することができる。第2の測定エリア59に標識2次抗体B、既知量の標識物質のどちらを固定するかは、較正目的・方法によって適宜定めればよい。
【0071】
試料セル50は、励起光照射光学系20および検出器30に相対的にX方向に移動可能とされており、第1の測定エリア58からの蛍光検出測定の後、第2の測定エリア59を蛍光検出位置に移動させて第2の測定エリア59からの蛍光検出を行うように構成されている。
【0072】
上記構成の蛍光検出装置2を用いた検出方法の原理は、第1の実施形態と同様であり、本実施形態においても蛍光標識として蛍光物質を用いて、かつ第2のエバネッセント波を利用して蛍光物質Fの励起を行っているから、第1の実施形態の場合と同様の効果を得ることができ、簡易な方法で非常に精度の高い測定を行うことができる。
【0073】
さらに、この第3の実施形態の蛍光検出装置2および検出方法を利用した、センシングについて説明する。
被検出物質である抗原を含むか否かの検査対象である血液(全血)を試料セル50の注入口から注入し、アッセイを行う手順について図6を参照して説明する。
【0074】
step1:注入口54aから検査対象である血液(全血)Soを注入する。ここでは、この血液So中に被検出物質である抗原Aが含まれている場合について説明する。図6中において血液Soは網掛け領域で示している。
step2:血液Soはメンブレンフィルター55により濾過され、赤血球、白血球などの大きな分子が残渣となる。
step3:血漿S(メンブレンフィルター55で血球分離された血液)が毛細管現象で流路52に染み出す。または反応を早め、検出時間を短縮するために、空気孔54bにポンプを接続し、血漿Sをポンプの吸引、押し出し操作によって流下させてもよい。図6中において血漿Sは斜線領域で示している。
step4:流路52に染み出した血漿Sと2次抗体Bが付与された蛍光物質とが混ぜ合わされ、血漿S中の抗原Aが標識2次抗体Bと結合する。
step5:血漿Sは流路52に沿って空気孔54b側へと徐々に流れ、標識2次抗体Bと結合した抗原Aが、第1の測定エリア58上に固定されている1次抗体Bと結合し、抗原Aが1次抗体Bと標識2次抗体Bで挟み込まれたいわゆるサンドイッチが形成される。
step6:抗原Aと結合しなかった標識2次抗体Bの一部は第2の測定エリア59上に固定されている1次抗体Bと結合する。さらに抗原Aまたは1次抗体Bと結合しなかった標識2次抗体Bが測定エリア上に残っている場合があっても、後続の血漿Sが洗浄の役割を担い、プレート上に浮遊および非特異吸着していた標識2次抗体Bを洗い流す。
【0075】
このように、血液Soを注入口54aから注入し、第1の測定エリア58上に抗原Aが1次抗体Bと標識2次抗体Bで挟まれたサンドイッチが形成されるまでのstep1からStep6の後、第1の測定エリア58からの蛍光信号を検出することにより、抗原の有無および/またはその濃度を検出することができる。その後、第2の測定エリア59からの蛍光信号を検出できるように試料セル50をX方向に移動させ、第2の測定エリア59からの蛍光信号を検出する。標識2次抗体Bと結合する1次抗体Bを固定している第2の測定エリア59からの蛍光信号は標識2次抗体Bの流下した量、活性などの反応条件を反映した蛍光信号であると考えられ、この蛍光信号をリファレンスとして、第1の測定エリア58からの蛍光信号を補正することにより、より精度の高い検出結果を得ることができる。また、既述の通り、第2の測定エリア59に既知量の標識物質(蛍光物質、金属微粒子)をあらかじめ固定した場合であっても、同様に、第2の測定エリア59からの光信号をリファレンスとして第1の測定エリア58からの蛍光信号を補正することができる。
【0076】
図4〜6では、第1の測定エリア58に固定されている1次抗体Bは、光導波層58b表面に2次元的に設けられているが、図7Aに示すように、光導波層58b上のメンブレンの3次元的に広がった領域に1次抗体Bが固定化されていてもよいし、図7Bに示すように、光導波層58b表面に、表面積を広げるための構造70を設けてその上に1次抗体Bが3次元的に固定化されていてもよい。
【0077】
構造70はポリスチレン、ガラスなどの透光性物質であればなんでもよいが、後述する第2のエバネッセント波の擾乱を起こさないように、屈折率が低く、構造体の大きさ(厚さ)が小さいものが好ましい。作製方法は蒸着法、スパッタ法、スピンコートなどの方法で薄膜を作り、その後、プラズマ処理や溶剤処理によって表面をランダムに粗くする方法、あるいは直径10〜500nm程度のポリスチレン微粒子を光導波層58b表面に物理吸着や化学結合により固定化させる方法がある。
【0078】
さて、第3の実施形態で示したような、マイクロ流路中で流路壁面に蛍光物質を標識として固定化するアッセイを行うとき、流路内の蛍光物質の運動は拡散が支配的になる。蛍光物質の拡散時間はその粒径によって顕著な違いが現れることから、蛍光物質の粒径の好ましい範囲を以下のように導出した。なお、以下においては、蛍光物質が球状であるとして粒径の範囲を導出した。
【0079】
蛍光物質の拡散時間τは、式(1)で表される。
τ=h2/D ・・・(1)
ここで、h:拡散距離、D:拡散定数である。
【0080】
アインシュタイン−ストークスの式(2)を用いると、蛍光物質の流体力学半径dから拡散定数Dが求まるので、サンドイッチ形成に必要な1次抗体までの距離(拡散距離)hだけ拡散するのに要する拡散時間τが得られる。拡散距離hは流路内の2次元平面上にサンドイッチを形成する場合は流路の高さを表し、メンブレンなどの3次元構造内にサンドイッチを形成する場合は3次元構造上に固定されている1次抗体までの距離を表す。
D=KBT/3πηd ・・・(2)
ここで、KB:ボルツマン定数、T:絶対温度、η:溶媒の粘性、d:流体力学半径である。
【0081】
図8は、サンドイッチ形成に必要な1次抗体までの距離hを30μmとし、蛍光物質の直径φに対する、蛍光物質が距離30μm拡散するのに要する時間を図示したものである。一般に、診断レベルで実用的なアッセイ時間は10分以下である。図8から、30μmの高さのマイクロ流路で10分以下のアッセイ時間を達成するためには、蛍光物質の粒径はφ5300nm以下が有効であるといえる。このことから、マイクロ流路での反応においては、蛍光物質の粒径がφ5300nm以下であることが好ましい。
【0082】
さらに、光導波モード増強による蛍光検出にあたり、蛍光物質による第2のエバネッセント波の擾乱を考慮する必要がある。
既述のように、蛍光物質の材質には水溶媒(屈折率n=1.33)より屈折率の高いポリスチレンやガラスを用いている。例えばポリスチレンの屈折率n=1.59〜1.60である。このような高屈折率の蛍光物質が光導波層近傍に位置することによって第2のエバネッセント波の発生が阻害される場合がある。この現象を例えばプリズム層101、金属層102a(屈折率n<1)、SiO光導波層102b(屈折率n=1.45〜1.46)、溶媒層103の4層に分けた多層膜近似で考察した。図9AはSiO光導波層102b上に水溶媒層のみである場合に、図9BはSiO光導波層102bにポリスチレンの蛍光物質104が存在する場合に、プリズム層101側から光ビームを入射してSiO光導波層102b表面に生じせしめた電場Eを模式的に示している。
プリズム層101、溶媒層103(103’)は十分な膜厚があり、プリズム層101、金属層102aおよびSiO光導波層102bの屈折率、膜厚がすでに決まっていると仮定すると、SiO光導波層102b表面上に誘起される第2のエバネッセント波の状態はSiO光導波層102b上の溶媒屈折率によって決まる。図10は、SiO光導波層102b上に水溶媒層のみである場合(実線で示す)と、SiO光導波層102b上にポリスチレン層が存在する場合(破線で示す)について、励起光の界面への入射角度と反射率との関係をシミュレーションにより求めたグラフである。このグラフから溶媒側に水溶媒層がある場合には、第2のエバネッセント波が発生する共鳴角が存在するが、ポリスチレン層がある場合には第2のエバネッセント波が発生しない(共鳴角が現れない)ことがわかる。
これは、第1のエバネッセント波がSiO光導波層102b内で光導波モードと結合するための条件が満たされなくなったためである。すなわち、SiO光導波層102b(屈折率n=1.45)は、両側を屈折率の小さい金属層102a(屈折率n<1)および水溶媒(屈折率n=1.33)によって挟まれることにより、光導波路としての役割を果たしていたが、水溶媒側にポリスチレン(屈折率n=1.59)が存在することにより、この界面で全反射が生じなくなったためである。このことから、屈折率の高い蛍光物質(ポリスチレンやガラス製)を用いてアッセイを行い、光導波層102b近傍に蛍光物質が固定されると、第2のエバネッセント波の発生が阻害されてその電場強度が低減してしまい、蛍光測定ができなくなると推察される(図9B)。
【0083】
このような、蛍光物質による第2のエバネッセント波の擾乱を考慮に入れ、蛍光物質の粒径と蛍光量との関係をシミュレーションした結果を図11に示す。粒径が大きくなれば内包される蛍光分子数が増えるので、粒径が400nmまでは蛍光量は粒径の増加に伴い増大するが、粒径500nmを超えると急激に蛍光量が減少していくことが分かった。これは、粒径500nmを超えると上述の蛍光物質による第2のエバネッセント波の擾乱が大きくなってくるためである。図11から、蛍光物質の粒径の増加による蛍光量の増加と蛍光物質による第2のエバネッセント波の擾乱とを考慮し、蛍光物質の好適な粒径を判断する必要がある。したがって、蛍光量が最大ピークを示した粒径300nmの蛍光量から、蛍光物質の粒径を、1桁程度以上蛍光量が落ちないようにするために70nm〜900nmの範囲とすることが好ましく、0.5桁程度以上蛍光量が落ちないようにするために100nm〜700nmの範囲とすることがより好ましい。なお、上記においては、蛍光物質が球状であるとみなして好ましい粒径範囲を求めたが、蛍光物質は球状でなくてもよく、球状でない場合には、粒子の最大幅と最小幅との平均の長さを粒径とする球状で近似することができる。
【0084】
さらに、流路内で1次抗体を固定するための3次元構造を作成する手間を省き、簡素化した2次元平面上でアッセイを行うとき、蛍光物質の粒径の好ましい範囲を以下のように導出した。
【0085】
一般的な診断用途において、検出限界の抗原濃度として1pM(ピコモーラ:×10-12mol/l)程度は必要であるといわれている。そこで、この1pM以下の抗原濃度を検出し、ダイナミックレンジ2桁、すなわち、100pMまで検出できる感度特性を目標値として蛍光物質の好ましい粒径を導出した。
1pMの抗原濃度の検体について、アッセイ時の条件を検出領域の直径を1mm(面積3.1mm2)、流路を流下する検体量を30μl(この検体量は一般的な簡易血液診断装置において、流路に流す前の前処理後、あるいはメンブレンフィルターによって血球分離された後の標準的な値である。)、抗原捕捉率を0.2%(一般的に抗原捕捉率は、0.2%〜2%程度であることから、ここでは、捕捉率が最低であった場合でも検出可能とするため、0.2%に設定した。)とすると、1.2×104個/mm2の抗原を検出領域に固定し検出できればよい。ここで、1.2×104個/mm2を目標固定量とする。一方、落射蛍光検出装置(LAS−4000、落射蛍光式、富士フイルム社製)を用いて測定した、前述の手順で作製した蛍光物質(直径300nm、励起波長542nm、蛍光波長612nm)の検量線データを図12に示す。ここでは中心波長520nmの緑色LEDの励起光を用い、緑色蛍光用フィルタを通して蛍光を検出した結果を示している。このときの検出限界密度はエラーバーが蛍光検出装置のバックグラウンド値の3σ(σは標準偏差)と交わった1.0×103個/mm2であった。
【0086】
この結果、φ300nmの蛍光物質を用いると目標固定量(1.2×104個/mm2)の12分の1の固定量で検出可能であるといえ、1pM以下の抗原濃度で抗原検出が可能となる高感度化が達成できていることが明らかとなった。また、この結果から、蛍光物質の粒径を300nmより小さくしても1pMの検体について測定可能であることが明らかである。同一密度で蛍光色素分子が内包されている場合、蛍光物質1個あたりの蛍光発光量は蛍光物質半径の三乗(r3)に比例する。従って、φ130nmの蛍光物質を用いた場合、1個あたりの蛍光量はφ300nmの蛍光物質の1/12倍になるが1pMの抗原濃度での検出が十分可能であるといえる。ここから、1pMの抗原濃度での検出を行うための蛍光物質粒径の下限値はφ130nm程度と定められる。なお、ここでは、蛍光物質中の蛍光色素分子密度が略一定であると想定している。
一方、蛍光物質の粒径を大きくすると内包される蛍光色素分子量が増加するため蛍光信号強度も増大し検出光量の点で有利になるが、2次元平面上の一定面積に固定できる蛍光物質の個数は立体障害の観点から固定量に限界がある。ダイナミックレンジ2桁として100pMを検出上限濃度とすると、固定量は1.2×106個/mm2となる。このとき、1つの抗原に対し1つの蛍光物質が結合するとして最密充填となる大きさは、φ500nmである。このことから目標固定量を実現できる蛍光物質の上限サイズはφ500nmである。
以上の観点から、蛍光物質のさらに好ましい粒径は130nm〜500nmである。
【0087】
<第4の実施形態>
第4の実施形態の検出方法として、本発明の一実施形態の検出用キットを用いた方法について図13および14を参照して説明する。図13および14において、上述の試料セルと同一の要素には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0088】
図13Aは検出用キット60の試料セル61の構成を示す平面図、図13Bは試料セル61の側断面図、図13Cは標識用溶液入りアンプル62を示す図である。
【0089】
検出用キット60は、試料セル61と、蛍光検出測定を行うにあたり、液体試料と同時もしくは液体試料の流下後に、試料セル61の流路内に流下される、抗原Aと特異的に結合する2次抗体Bが修飾された蛍光物質Fを含む標識用溶液63とを備えている。
【0090】
試料セル61は、試料セル61内に2次抗体Bで表面修飾した蛍光物質Fを物理吸着した物理吸着エリアを備えない点でのみ上述の第3の実施形態の試料セル50と異なり、その他は試料セル50と略同一の構成である。
【0091】
蛍光検出装置としては図4に示した第3の実施形態のものを同様に用いることができ、本実施形態の検出用キット60を用いれば、第3の実施形態の場合と同様に被検出物質に蛍光物質による標識がなされ、かつ第2のエバネッセント波を利用して蛍光物質の励起を行うため、同様に精度の高い測定を行うことができる。
【0092】
さらに、この検出用キット60を用いた場合の蛍光検出装置2におけるセンシングについて説明する。
被検出物質である抗原を含むか否かの検査対象である血液(全血)を試料セル61の注入口から注入し、アッセイを行う手順について図14を参照して説明する。
【0093】
step1:注入口54aから検査対象である血液(全血)Soを注入する。ここでは、この血液So中に被検出物質である抗原Aが含まれている場合について説明する。図14において血液Soは網掛け領域で示している。
step2:血液Soはメンブレンフィルター55により濾過され、赤血球、白血球などの大きな分子が残渣となる。引き続き、血漿S(メンブレンフィルター55で血球分離された血液)が毛細管現象で流路52に染み出す。または反応を早め、検出時間を短縮するために、空気孔にポンプを接続し、血漿Sをポンプの吸引、押し出し操作によって流下させてもよい。図14において血漿Sは斜線領域で示している。
step3:血漿Sは流路52に沿って空気孔54b側へと徐々に流れ、血漿S中の抗原Aが、第1の測定エリア58上に固定されている1次抗体Bと結合する。
step4:2次抗体Bが修飾された蛍光物質Fを含む標識用溶液63を供給口54aから注入する。
step5:2次抗体Bが修飾された蛍光物質Fが毛細管現象により流路52に染み出す。または反応を早め、検出時間を短縮するために、空気孔にポンプを接続し、標識用溶液63をポンプの吸引、押し出し操作によって流下させてもよい。
step6:蛍光物質Fは徐々に下流側に流れ、標識2次抗体Bが抗原Aと結合し、抗原Aが1次抗体Bと標識2次抗体Bで挟み込まれたいわゆるサンドイッチが形成される。
【0094】
このように、血液Soを注入口から注入し、抗原Aが1次抗体Bおよび2次抗体Bと結合するまでのstep1からStep6の後、第1の測定エリア58からの蛍光信号を検出することにより、抗原の有無および/またはその濃度を検出することができる。その後、第2の測定エリア59からの蛍光信号を検出できるように試料セル61をX方向に移動させ、第2の測定エリア59からの蛍光信号を検出する。標識2次抗体Bと結合する1次抗体Bを固定している第2の測定エリア59からの蛍光信号は標識2次抗体Bの流下した量、活性などの反応条件を反映した蛍光信号であると考えられ、この蛍光信号をリファレンスとして、第1の測定エリア58からの蛍光信号を補正することにより、より精度の高い検出結果を得ることができる。また、第2の測定エリア59に既知量の標識物質(蛍光物質、金属微粒子)をあらかじめ固定しておき、第2の測定エリア59からの光信号をリファレンスとして第1の測定エリア58からの蛍光信号を補正してもよい。
【0095】
蛍光物質への2次抗体修飾方法および標識用溶液の作製方法の一例を説明する。
前述の手順で作製した蛍光物質溶液(蛍光物質の直径500nm、励起波長502nm、蛍光波長510nm)に50mM MESバッファーおよび、5.0mg/mLの抗hCGモノクローナル抗体(Anti−hCG 5008 SP−5、Medix Biochemica社)溶液を加えて撹拌する。これにより蛍光物質への抗体の修飾がなされる。
次に、400mg/mLのWSC(品番01−62−0011、和光純薬)水溶液を加え室温で攪拌する。
さらに、2mol/L Glycine水溶液を添加し撹拌した後、遠心分離にて、粒子を沈降させる。
最後に、上清を取り除き、PBS(pH7.4)を加え、超音波洗浄機により蛍光物質を再分散させる。さらに遠心分離を行い、上清を除いた後、1%BSAのPBS(pH7.4)溶液500μL加え、蛍光物質を再分散させて標識用溶液とする。
【0096】
上述の各実施形態においては蛍光標識として、多数の蛍光色素分子15と蛍光色素分子15を内包する透光材料16とからなる蛍光物質Fを用いる形態について説明したが、図15に示すように、さらに、蛍光物質Fの表面に蛍光を透過する厚みの金属皮膜19が設けられていてもよい。金属被膜19は、透光材料16の全表面を覆うものであってもよいし、全表面を覆うものでなく、一部透光材料16が露出するように設けられたものであってもよい。金属被膜19の材料としては、上述の金属層と同様の金属材料を用いることができ、層厚としては15nm程度が好ましい。
蛍光物質Fの表面に金属被膜19を備えた場合、センサチップ10の光導波層12b上に発生した第2のエバネッセント波が蛍光物質Fの金属被膜19のウィスパリング・ギャラリー・モードにカップリングし、蛍光物質F内の蛍光色素分子15をさらに高効率に励起できる。なお、ウィスパリング・ギャラリー・モードとは、ここで用いられるφ5300nm以下程度の蛍光物質Fのような微小球の球表面に局在し、周回する電磁波モードである。
この金属被膜された蛍光物質F’は、例えば、この金属被膜19上に抗原Aと特異的に結合する2次抗体Bを修飾し、上述の第1の実施形態から第4の実施形態における蛍光物質Fと同様にして利用することができる。
【0097】
蛍光物質への金属被膜方法の一例を挙げる。
まず、前述手順により蛍光物質を作製し、その表面にポリエチレンイミン(PEI)(エポミン、日本触媒社)を修飾する。
次に、粒子表面のPEIに粒径15nmのPdナノ粒子(平均粒径19nm、徳力本社)を吸着させる。
Pdナノ粒子が吸着したポリスチレン粒子を無電解金メッキ液(HAuCl、小島化学薬品社)に浸漬させることで、Pdナノ粒子を触媒とする無電界メッキを利用して、ポリスチレン粒子表面に金膜を作製する。
【0098】
さて、上述の各実施形態においては励起光Loとして、界面に所定の角度θで入射する平行光を入射するものとしたが、励起光Loとしては、図16に模式的に示すような、角度θを中心に角度幅Δθを持つファンビーム(集束光)を用いてもよい。ファンビームの場合、プリズム122とプリズム上の金属層112aとの界面に対して、角度θ−Δθ/2〜θ+Δθ/2の範囲の入射角度で入射することになり、この角度範囲内に共鳴角があれば、光導波層上に第2のエバネッセント波を励起することができる。光導波層上への試料供給の前後において、光導波層上の媒質の屈折率が変化し、そのために光導波モードが誘起される共鳴角が変化する。このため、上述の実施形態のように平行光を励起光Loとして用いる場合、共鳴角が変化するたびに平行光の入射角度を調整する必要がある。しかし、図16に示すような、界面に入射する入射角度に幅を持たせたファンビームを励起光Loとして用いることにより、入射角度の調整をすることなく、共鳴角の変化に対応することができる。なお、ファンビームは入射角度による強度変化が少ないフラットな分布を持つものであることがより好ましい。
【0099】
また、上記各実施形態においては、全て非競合法であるサンドイッチ法によるアッセイについて説明したが、本発明の検出方法および装置、試料セルおよび測定キットはサンドイッチ法のみならず、競合法によるアッセイの場合にも適用することができる。
【0100】
図17A〜Cを参照して、競合法について簡単に説明する。
図17Aに示すように、例えば、抗原Aと同一の免疫反応を示す2次抗体C(第3の結合物質)を蛍光物質Fに修飾させておく。光導波層12b上には、抗原Aおよび2次抗体Cといずれとも特異的に結合する1次抗体C(第1の結合物質)を固定化しておく。2次抗体Cが修飾された蛍光物質Fを所定濃度で、抗原Aと混合し、光導波層12b上に固定化された1次抗体Cに競合的に反応させる(抗原−抗体反応)。抗原Aと蛍光物質Fとの混合時における蛍光物質Fの濃度は既知である。
【0101】
競合法では、図17Bに示すように、抗原Aの濃度が高ければ、1次抗体Cと結合する2次抗体Cの量が少なく、すなわち光導波層12b上の蛍光物質Fの数が少なくなるため蛍光強度が小さくなる。一方、図17Cに示すように、抗原Aの濃度が低ければ、1次抗体Cと結合する2次抗体Cの量が多く、すなわち光導波層12b上の蛍光物質Fの数が多くなるため蛍光強度が大きくなる。競合法は抗原Aにエピトープが一つあれば測定が可能であることから、低分子量の物質の検出に適している。
【0102】
図18は、本発明の他の実施形態の試料セル50’を用いた競合法によるアッセイ手順を示す図である。試料セル50’は、第3の実施形態の蛍光検出装置2において、試料セル50に換えて用いることができる。試料セル50とは、流路内に備えられている抗体が異なり、本試料セル50’は競合法によるアッセイに適用されるものである。
【0103】
試料セル50’においては、基台51上には流路52上流側から、被検出物質である抗原Aとは結合せず、後述の1次抗体C(第1の結合物質)と特異的に結合する2次抗体C(第3の結合物質)が表面修飾された蛍光物質Fを物理吸着させてある標識2次抗体吸着エリア57’、抗原Aおよび標識2次抗体Cと特異的に結合する1次抗体Cが固定された第1の測定エリア58’、抗原Aとは結合せず標識2次抗体Cと特異的に結合する1次抗体Cが固定された第2の測定エリア59’が順に設けられている。
【0104】
第1の測定エリア58’および第2の測定エリア59’の基台51上にはそれぞれ金属層および光導波層として、Au膜(図示省略)およびSiO膜(58bおよび59b)が形成されている。第1の測定エリア58’のSiO膜58b上にはさらに1次抗体Cが固定され、第2の測定エリア59’のSiO膜59b上にはさらに1次抗体Cとは異なる1次抗体Cが固定されている。互いに異なる1次抗体が設けられている点以外は第1の測定エリア58’と第2の測定エリア59’は同一の構成である。抗原Aと標識2次抗体Cとは、第1の測定エリア58’に固定されている1次抗体Cに競合的に結合するものである。第2の測定エリア59’に固定されている1次抗体Cは抗原Aとは結合せず、標識2次抗体Cと直接結合するものである。これにより、流路を流れた標識2次抗体の量、活性など反応に関する変動要因と励起光照射光学20、SiO膜58b・59b、液体試料Sなど光導波モードによる増強度に関する変動要因を検出し、較正に利用することができる。なお、第2の測定エリア59’には1次抗体Cではなく、既知量の標識物質が予め固定されていてもよい。上記標識物質は2次抗体により表面修飾された蛍光物質(標識2次抗体C)と同種のものであってもよいし、波長、サイズの異なる蛍光物質であってもよい。この場合、励起光照射光学20、SiO膜58b・59b、液体試料Sなど光導波モードによる増強度に関する変動要因のみを検出し、較正に利用することができる。第2の測定エリア59’に標識2次抗体C、既知量の標識物質のどちらを固定するかは較正目的・方法によって適宜、選択することができる。
【0105】
被検出物質である抗原を含むか否かの検査対象である血液(全血)を試料セル50’の注入口54aから注入し、アッセイを行う手順について図18を参照して説明する。
【0106】
step1:注入口54aから検査対象である血液(全血)Soを注入する。ここでは、この血液So中に被検出物質である抗原Aが含まれている場合について説明する。図18において血液Soは網掛け領域で示している。
step2:血液Soはメンブレンフィルター55により濾過され、赤血球、白血球などの大きな分子が残渣となる。
step3:血漿S(メンブレンフィルター55で血球分離された血液)が毛細管現象で流路52に染み出す。または反応を早め、検出時間を短縮するために、空気孔54bにポンプを接続し、血漿Sをポンプの吸引、押し出し操作によって流下させてもよい。図18において血漿Sは斜線領域で示している。
step4:流路52に染み出した血漿Sと標識2次抗体Cが付与された蛍光物質Fとが混ぜ合わされる。
step5:血漿Sは流路52に沿って空気孔54b側へと徐々に流れ、抗原Aと標識2次抗体Cとが競合して、第1の測定エリア58’上に固定されている1次抗体Cと結合する。
step6:第1の測定エリア58’上の1次抗体C1と結合しなかった標識2次抗体Cの一部は、第2の測定エリア59’上に固定されている1次抗体Cと結合する。さらに1次抗体CまたはCと結合していない標識2次抗体Cが測定エリア上に残っている場合があっても、後続の血漿Sが洗浄の役割を担い、プレート上に浮遊および非特異吸着していた標識2次抗体Cを洗い流す。
【0107】
このように、血液Soを注入口から注入し、第1の測定エリア58’上の1次抗体Cに抗原Aおよび2次抗体Cが競合結合するまでのstep1からStep6の後、第1の測定エリア58’および第2の測定エリア59’からの蛍光強度を検出することにより、抗原Aの有無および/またはその濃度を検出することができる。
【0108】
本実施形態の試料セルを用いた検出方法においても蛍光標識として蛍光物質を用い、かつ第2のエバネッセント波を利用して蛍光物質の励起を行っているから、上記各実施形態の場合と同様の効果を得ることができ、簡易な方法で精度の高い測定を行うことができる。
【実施例】
【0109】
以下の実施例1〜3のセンサチップ上に蛍光物質(林原生物化学研究所、NK−2014、励起波長:780nm、粒経:200nmあるいは500nm)を固定し、光導波モードによる電場増強を実施した場合について、電場増強度(励起光の強度に対する、電場増強場の強度の割合)および蛍光信号増強度(比較例で得られる蛍光信号量に対する、実施例で得られる蛍光信号量の割合)の評価を行った。なお、実施例1〜3において、励起光の波長は780nm、誘電体プリズムの材質は石英、センサチップ上の媒質は水である。
【0110】
<実施例1>
図19Aに示すように、石英プリズム上に金膜(50nm)、SiO2膜(600nm)を順に有するセンサチップを用いた。
【0111】
<実施例2>
図19Bに示すように、石英プリズム上に金膜(50nm)、SiO2膜(550nm)、金膜(5nm)を順に有するセンサチップを用いた。
【0112】
<実施例3>
図19Cに示すように、石英プリズム上に金膜(30nm)、SiO2膜(550nm)、金膜(30nm)、SiO2膜(550nm)を順に有するセンサチップを用いた。
【0113】
<比較例>
一般的に用いられる表面プラズモンによる電場増強を比較例とした。すなわち図19Dに示すように、石英プリズム上に金膜(50nm)を有するセンサチップを用いて表面プラズモンを誘起した。
【0114】
図20は、実施例1〜3および比較例における電場増強度とセンサチップ表面からの距離との関係を示す図である。また、参考のために粒経が200nmの蛍光物質も模式的に図示している。これにより、光導波モードによる第2のエバネッセント波は、表面プラズモンによる第1のエバネッセント波に比して、減衰の程度が緩やかでその染み出し長(センサチップ表面における電場増強度が1/eになるまでの長さ)が長いことがわかる。例えば、比較例における染み出し長はおよそ200nmであるのに対し、実施例1における染み出し長はおよそ450nmである。また、実施例2および3における染み出し長は、500nmを超える染み出し長を有する。つまり、第2のエバネッセント波は第1のエバネッセント波に比して染み出し長が長いこと、そして光導波層を積層構造として厚くすることにより染み出し長がより長くすることができることが実証された。
【0115】
一方図21は、実施例1〜3および比較例における蛍光信号増強度を示す図である。200nmの蛍光物質を用いた比較例で得られた蛍光信号量を基準にして、その他の場合について何倍の蛍光信号量が得られたかを示している。200nmの蛍光物質を用いた実施例では、蛍光信号増強度は2.4〜3.2という結果となった。ある程度の増強度は得られているが、実施例間ではそれほど大きな変化はなかった。これは、励起され蛍光を発する、蛍光物質中に包含される蛍光色素分子の数に限りがあるためと考えられる。このことを示すように、500nmの蛍光物質を用いた実施例では、蛍光信号増強度は実施例1で28.9倍、実施例2で35.9倍、実施例3で49.2倍という結果になった。
【0116】
以上により、光導波モードによる電場増強を利用する本発明に係る検出方法を用いれば、500nmという大きな蛍光物質を蛍光標識に用いても、蛍光物質に内包される蛍光色素分子を効率よく励起することができ、蛍光信号強度の低下およびばらつきを抑制して、より高感度かつ定量性の高い検出が可能であることが実証された。
【0117】
<設計変更>
上記第3および第4の実施形態においては、蛍光標識の励起に起因して生じる光として、蛍光物質に内包される蛍光色素分子から生じる蛍光を用いる場合について述べてきたが、これらの実施形態はこのような場合に限られるものではない。すなわち、上記第3および第4の実施形態においても、蛍光標識の励起に起因して生じる光として、蛍光物質に内包される蛍光色素分子から生じる蛍光が金属層に表面プラズモンを励起することにより誘電体プレートと金属層との界面の誘電体プレート側へ放射される、表面プラズモンからの放射光を検出することによって、測定をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】光導波モードを誘起するための光学配置の例を示す概略断面図
【図2】光導波モードの発生と入射光の入射角度の関係を示す概略図
【図3A】第1の実施形態による蛍光検出装置を示す概略構成図
【図3B】第2の実施形態による放射光検出装置を示す概略構成図
【図4】第3の実施形態による蛍光検出装置を示す概略構成図
【図5】第3の実施形態の試料セルを示す(A)平面図および(B)側断面図
【図6】第3の実施形態による試料セルを用いたアッセイ手順を示す図
【図7A】光導波層上に固定される抗体B1のその他の固定例(その1)
【図7B】光導波層上に固定される抗体B1のその他の固定例(その2)
【図8】蛍光物質の粒径に対する拡散時間を示すグラフ
【図9A】光導波層上に水溶媒層がある場合の電場Eを示す模式図
【図9B】光導波層上に蛍光物質がある場合の電場Eを示す模式図
【図10】図9AおよびBの場合の入射角度と反射率との関係を示すグラフ
【図11】蛍光物質の粒径と蛍光量の関係を示す図
【図12】蛍光物質の検量線データを示す図
【図13】第4の実施形態の検出用キットの(A)試料セルを示す平面図、(B)試料セルを示す側断面図および(C)標識用溶液を示す図
【図14】検出用キットを用いた場合のアッセイ手順を示す図
【図15】金属被膜を有する蛍光物質を示す模式図
【図16】励起光照射光学系の他の例を示す図
【図17】競合法の原理を説明するための模式図
【図18】第3の実施形態による試料セルを用いた競合法アッセイ手順を示す図
【図19】(A)実施例1(B)実施例2(C)実施例3(D)比較例におけるセンサチップの構造を示す概略断面図
【図20】実施例における電場増強度とセンサチップ表面からの距離の関係を示す図
【図21】実施例における蛍光信号増強度を示す図
【符号の説明】
【0119】
1、2 蛍光検出装置
1’ 放射光検出装置
3、10 センサチップ
11 誘電体プレート
12a 金属層
12b 光導波層
13 試料保持部
15 蛍光色素分子
16 透光材料
19 金属被膜
20 励起光照射光学系
21 光源
22 プリズム
30 光検出器
50、61 試料セル
51 誘電体プレート
52 流路
53 スペーサ
54 上板
57 蛍光物質吸着エリア
58、59 検出エリア
A 抗原(被検出物質)
B1 1次抗体(第1の結合物質)
B2 2次抗体(第2の結合物質)
F 蛍光物質
Lo 励起光
Lf 蛍光
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体プレートの一面に、金属層と光導波層とをこの順に有するセンサチップを用意し、
前記光導波層上に試料を接触させることにより、前記試料に含有される被検出物質の量に応じた量の蛍光標識物質を前記光導波層上に結合させると共に、
前記誘電体プレートと前記金属層との界面に対し、該誘電体プレート側から全反射条件を満たすように励起光を入射して、該界面に第1のエバネッセント波を発生せしめ、
前記第1のエバネッセント波を、前記光導波層内で光導波モードと結合させることにより、該光導波層の上面に第2のエバネッセント波を発生せしめ、
該第2のエバネッセント波により、前記蛍光標識物質の蛍光標識を励起し、
該蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて前記被検出物質の量を検出する検出方法であって、
前記蛍光標識として、蛍光色素分子を、該蛍光色素分子から生じる蛍光を透過させる透光材料により包含してなる蛍光物質を用いることを特徴とする検出方法。
【請求項2】
前記蛍光物質の粒径が、5300nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記蛍光物質の粒径が、100nm〜700nmであることを特徴とする請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記蛍光物質の表面に、前記蛍光を透過する厚みの金属皮膜が設けられていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の検出方法。
【請求項5】
前記光導波層が、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の検出方法。
【請求項6】
前記積層構造が、前記金属層側から順に前記内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることを特徴とする請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記蛍光標識の励起に起因して生じる前記光として、該励起によって該蛍光標識から生じる蛍光を検出することを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の検出方法。
【請求項8】
前記蛍光標識の励起に起因して生じる前記光として、該励起によって該蛍光標識から生じる蛍光が前記金属層に表面プラズモンを励起することにより前記界面の前記誘電体プレート側へ放射される、前記表面プラズモンからの放射光を検出することを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の検出方法。
【請求項9】
蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法に使用される検出用試料セルであって、
液体試料が流下される流路を有する基台と、
前記流路の上流側に設けられた該流路に前記液体試料を注入するための注入口と、
前記流路の下流側に設けられた、前記注入口から注入された前記液体試料を該下流側に流すための空気孔と、
前記注入口と前記空気孔との間の前記流路に設けられたセンサチップ部であって、前記流路の内壁面の一部として設けられた誘電体プレート、該プレートの試料接触面側の所定領域に順に設けられた金属層および光導波層からなるセンサチップ部と、
前記光導波層上に固定された、被検出物質と特異的に結合する第1の結合物質と、
前記センサチップ部より上流側の前記流路内に固定された、前記被検出物質と特異的に結合する第2の結合物質、または前記第1の結合物質と特異的に結合すると共に前記被検出物質と競合する第3の結合物質が修飾された蛍光物質とを備えてなることを特徴とする検出用試料セル。
【請求項10】
前記蛍光物質の粒径が、5300nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の検出用試料セル。
【請求項11】
前記蛍光物質の粒径が、100nm〜700nmであることを特徴とする請求項10に記載の検出用試料セル。
【請求項12】
前記蛍光物質の表面に、前記蛍光を透過する厚みの金属皮膜が設けられていることを特徴とする請求項9から11いずれかに記載の検出用試料セル。
【請求項13】
前記光導波層が、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることを特徴とする請求項9から12いずれかに記載の検出用試料セル。
【請求項14】
前記積層構造が、前記金属層側から順に前記内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることを特徴とする請求項13に記載の検出用試料セル。
【請求項15】
蛍光標識の励起に起因して生じる光の量に基づいて被検出物質の量を検出する検出方法に使用される検出用キットであって、
液体試料が流下される流路を有する基台と、前記流路の上流側に設けられた該流路に前記液体試料を注入するための注入口と、前記流路の下流側に設けられた、前記注入口から注入された前記液体試料を該下流側に流すための空気孔と、前記注入口と前記空気孔との間の前記流路に設けられたセンサチップ部であって、前記流路の内壁面の一部として設けられた誘電体プレート、該プレートの試料接触面側の所定領域に順に設けられた金属層および光導波層からなるセンサチップ部と、前記光導波層上に固定された、前記被検出物質と特異的に結合する第1の結合物質とを備えた試料セル、および
前記液体試料と同時もしくは前記液体試料の流下後に前記流路内に流下される標識用溶液であって、前記被検出物質と特異的に結合する第2の結合物質、または前記第1の結合物質と特異的に結合すると共に前記被検出物質と競合する第3の結合物質が修飾された蛍光物質を含む標識用溶液とを備えてなることを特徴とする検出用キット。
【請求項16】
前記蛍光物質の粒径が、5300nm以下であることを特徴とする請求項15に記載の検出用キット。
【請求項17】
前記蛍光物質の粒径が、100nm〜700nmであることを特徴とする請求項16に記載の検出用キット。
【請求項18】
前記蛍光物質の表面に、前記蛍光を透過する厚みの金属皮膜が設けられていることを特徴とする請求項15から17いずれかに記載の検出用キット。
【請求項19】
前記光導波層が、1層以上の光導波材料からなる内部光導波層を含む積層構造を有するものであることを特徴とする請求項15から18いずれかに記載の検出用キット。
【請求項20】
前記積層構造が、前記金属層側から順に前記内部光導波層および内部金属層の交互積層構造であることを特徴とする請求項19に記載の検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−8263(P2010−8263A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168690(P2008−168690)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】