説明

検査システム

【課題】簡単な構成でマイクロチップに備えられた1次元バーコードを読みとることができる小型の検査システムを提供する。
【解決手段】マイクロチップを載置可能な第1の位置と載置したマイクロチップから反応結果を測定可能な第2の位置とを移動可能に構成されたチップ搬送トレイと、マイクロチップに設けられた黒バーと白バーからなるバーコードと、チップ搬送トレイを移動させるチップ搬送トレイ駆動手段と、チップ搬送トレイ駆動手段がマイクロチップを載置したチップ搬送トレイを移動させる間に黒バーからの光または白バーからの光を順次受光し電気信号に変換するバーコード受光部と、を有することを特徴とする検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラボ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、μ−TASを用いることによりコスト、必要試料量、所要時間を削減できる。
【0003】
本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、マイクロポンプによって微細流路に駆動液を注入して検体と試薬などの液体を移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる検査装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような検査装置では、マイクロチップの内部の試薬や検査項目等の情報を検査装置に入力する必要があるが、手動で検査装置に情報を入力すると効率が悪く、間違いが生じやすい。そのため、マイクロチップを特定する情報をバーコード化しマイクロチップに取り付けておく方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【特許文献3】特表2004−512514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロチップに取り付けられた1次元バーコードを検査時に読みとるためには、バーコードを読みとるための走査機構を検査装置の内部に設ける必要があり、機構が複雑になるため検査装置が大型化してしまう問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成でマイクロチップに備えられた1次元バーコードを読みとることができる小型の検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0008】
1.
マイクロチップから反応結果を測定する検査システムにおいて、
前記マイクロチップに設けられた黒バーと白バーからなるバーコードと、
前記マイクロチップを載置可能な第1の位置と載置した前記マイクロチップから反応結果を測定可能な第2の位置とを移動可能に構成されたチップ搬送トレイと、
前記チップ搬送トレイを移動させるチップ搬送トレイ駆動手段と、
前記チップ搬送トレイ駆動手段が前記マイクロチップを載置した前記チップ搬送トレイを移動させる間に前記黒バーからの光または前記白バーからの光を順次受光し電気信号に変換するバーコード受光部と、
を有することを特徴とする検査システム。
【0009】
2.
前記チップ搬送トレイの移動方向に沿った一方の側面を摺動可能に支持する直線状のガイドと、
前記側面と反対側の側面から前記チップ搬送トレイを前記ガイドに押し当てる方向に付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする1に記載の検査システム。
【0010】
3.
前記チップ搬送トレイの一部が通過したことを検知する検知手段と、
前記検知手段の検知した出力に基づいて通過時間を算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段の算出した前記通過時間に基づいて、前記チップ搬送トレイ駆動手段の速度を制御するトレイ駆動制御部と、
を有することを特徴とする1または2に記載の検査システム。
【0011】
4.
前記トレイ駆動制御部は、
前記通過時間を算出したときの移動方向と逆方向に前記チップ搬送トレイが移動するとき、前記通過時間に基づいて前記チップ搬送トレイ駆動手段の速度を制御することを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の検査システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロチップを載置したチップ搬送トレイが移動するときに1次元バーコードを読みとれるようにバーコード受光部を配置するので、簡単な構成でマイクロチップに備えられた1次元バーコードを読みとることができる小型の検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の検査システムに用いられる検査装置80の外観図である。
【0015】
検査装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0016】
マイクロチップ1をチップ搬送トレイ2に載置した後チップ搬送トレイ2を挿入口83にローディングし、筐体82の内部にセットするようになっている。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子、89はトレイ蓋、91は排出ボタンである。
【0017】
図1(a)はチップ搬送トレイ2がマイクロチップ1を載置可能な位置に排出された状態の外観図、図1(b)はチップ搬送トレイ2が検査可能な位置にローディングされた状態の外観図である。
【0018】
検査担当者はマイクロチップ1をチップ搬送トレイ2に載置し、排出ボタン91を押してチップ搬送トレイ2を図1(a)の矢印Aの方向に移動させる。チップ搬送トレイ2が図1(b)のように検査可能な位置まで移動すると、検査担当者は操作パネル87を操作して検査を開始させる。
【0019】
筐体82の内部では、制御手段の指令により図1には図示せぬマイクロポンプユニット75がマイクロチップ1に駆動液等の液体を注入し、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われる。検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0020】
検査担当者は、検査終了後、排出ボタン91を押してチップ搬送トレイ2を図1(a)のようにマイクロチップ1を取り出し可能な位置まで移動させる。検査担当者は、マイクロチップ1をチップ搬送トレイ2から取り出す。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2に載置したマイクロチップ1とバーコード受光部140の一例の斜視図である。図3はバーコード25の一例を説明するための平面図である。図2、図3を用いて説明する。なお、以下の説明は図2右下に示すX、Y、Zの座標軸に基づいて説明する。
【0022】
図2に示すように、マイクロチップ1のZ軸正方向の表面にはバーコード25が、接着により取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、バーコード25は棒状の黒バー26と白バー27からなる1次元バーコードであり、黒バー26と白バー27と直交する矢印Aの方向に黒バー26と白バー27の幅をそれぞれ読みとることにより符号化された情報を読みとることができる。図2に示すマイクロチップ1では、チップ搬送トレイ2の移動方向が黒バー26および白バー27と直交する方向になるようにバーコード25が設けられている。
【0024】
バーコード受光部140は黒バー26または白バー27からの光からの光をチップ搬送トレイ2が移動する間に順次受光し、電気信号に変換する。バーコード受光部140はフォトダイオードなどの光電変換素子と、バーコード25からの光を集光する光学系などから構成されている。
【0025】
図4は本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2を説明するための平面図である。
【0026】
図4(a)に示す状態は、チップ搬送トレイ2が図1(a)のように検査装置80から突き出した位置にありマイクロチップ1を載置可能である。図4(b)は、チップ搬送トレイ2が図1(a)のように検査装置80に収納され、マイクロチップ1から反応結果を測定可能な位置にある状態を示している。
【0027】
チップ搬送トレイ2は、Y軸方向に設けられた直線状のガイド53に摺動可能に支持されている。モータ50は、チップ搬送トレイを移動させる本発明のチップ搬送トレイ駆動手段であり、ベルトで連結されたピニオンギア51を回転させて、ピニオンギア51と噛み合うラック54を移動させる。ラック54はチップ搬送トレイ2の一部であり、モータ50を回転させることによりチップ搬送トレイ2はY軸方向に移動する。
【0028】
図4の55で示す部分は、本発明の付勢手段でありチップ搬送トレイ2のガイド53と反対側の側面からチップ搬送トレイ2をガイド53に押し当てる方向に付勢している。
【0029】
図5は55で示す部分の拡大図である。付勢手段55は、付勢バネ61とローラ60から成り、付勢バネ61により矢印F方向にローラ60を付勢し、チップ搬送トレイ2をガイド53に押し当てている。
【0030】
このように構成することにより、チップ搬送トレイ2が移動するときの横揺れを低減し、バーコード受光部140を用いて精度良くバーコード25を読みとることができる。
【0031】
図6は本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2の速度検出機構を説明するための側面図、図7は本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2の速度検出機構を説明するための正面図である。
【0032】
バーコード受光部140の出力からバーコード25の情報を正確に復号するためには、チップ搬送トレイ2が許容範囲内の速度で移動しなければならない。速度の変動が大きいとバーコード受光部140の出力から黒バー26、白バー27の幅を正確に測定できなくなりバーコード25の情報を解読できなくなる。
【0033】
本発明では、チップ搬送トレイ2に設けた遮光板32が移動する時間を計測し、目標とする時間と比較して次にチップ搬送トレイ2を移動させるときの制御にフィードバックしている。以下、速度検出機構の詳細について説明する。
【0034】
図6(a)は、チップ搬送トレイ2が、図1(b)のように検査装置80に収納されマイクロチップ1から反応結果を測定可能な位置にある状態を示している。フォトインタラプタ31は、X軸方向に対向する位置に図示せぬ発光部と受光部を有している。チップ搬送トレイ2に設けられた遮光部32は、図7に示すようにチップ搬送トレイ2が移動する間にフォトインタラプタ31の発光部と受光部との間を通過し、光路を遮るように構成されている。フォトインタラプタ31は本発明の検知手段である。
【0035】
本実施形態では、フォトインタラプタ31の光路が遮られていないときは、フォトインタラプタ31の出力電圧は‘H’であり、発光部と受光部との光路が遮られると‘L’になるものとして説明する。
【0036】
図6(b)は、チップ搬送トレイ2がモータ50により駆動され、矢印Aと逆方向に移動中の状態を示している。図6(b)に示すように遮光部32はフォトインタラプタ31の光路を遮るように通過するので、フォトインタラプタ31の出力電圧は‘L’である。
【0037】
図6(c)は、図1(a)のようにチップ搬送トレイ2が検査装置80から突き出してマイクロチップ1を載置可能な位置まで移動した状態である。このとき遮光部32は図6(c)に示すようにフォトインタラプタ31の光路を遮らないので、フォトインタラプタ31の出力電圧は‘H’である。
【0038】
図6(d)は、チップ搬送トレイ2が検査装置80に収納された状態から、矢印Aと逆方向に移動するときのフォトインタラプタ31の出力の変化を示している。図中のt0は図6(a)の状態からチップ搬送トレイ2が移動を開始した時刻であり、フォトインタラプタ31の出力は‘H’である。
【0039】
時刻t1では移動する遮光板32がフォトインタラプタ31の光路を遮り、フォトインタラプタ31の出力は‘L’になる。t1からt2の期間は図6(b)のように遮光板32がフォトインタラプタ31の光路を遮っているのでフォトインタラプタ31の出力は‘L’である。
【0040】
時刻t2では遮光板32が図6(c)のようにフォトインタラプタ31の光路を遮らない位置まで移動し、フォトインタラプタ31の出力は‘H’になる。t3は、図1(c)のようにチップ搬送トレイ2が検査装置80から突き出したマイクロチップ1を載置可能な位置まで移動した時刻である。
【0041】
このように、フォトインタラプタ31の出力は遮光板32がフォトインタラプタ31の光路を遮っている間‘L’になる。遮光板32のY軸方向の長さは予め所定の長さに設定されているので、フォトインタラプタ31が‘L’になっている時間TRはこの区間をチップ搬送トレイ2が移動する平均速度に反比例する。本発明ではこのように簡単な構成で時間TRを求め、チップ搬送トレイ2の速度を制御している。
【0042】
図8は、本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【0043】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory)、ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って検査装置80の各部を集中制御する。
【0044】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0045】
チップ検知部95はマイクロチップ1が規制部材に当接すると検知信号をCPU98に送信する。CPU98は検知信号を受信すると、機構駆動部32に指令し所定の手順でマイクロチップ1を下降または上昇させる。
【0046】
ポンプ駆動部500は各マイクロポンプの圧電素子を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部412の指令を受けて、圧電素子を駆動する。
【0047】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。CPU98は、バーコード読み取り部409、光量算出部410、トレイ駆動制御部411、ポンプ駆動制御部412、通過時間算出部413を備えている。トレイ駆動制御部411は本発明のトレイ駆動制御手段、通過時間算出部413は本発明の通過時間算出手段である。
【0048】
トレイ駆動制御部411は、モータ50を所定の速度で回転させてチップ搬送トレイ2を移動させる。通過時間算出部412は、フォトインタラプタ31の出力を監視し、遮光部32がフォトインタラプタ31を通過する時間を算出する。バーコード読み取り部409は、バーコード読み取り部409は、バーコード受光部140が出力する電気信号からバーコードを読み取り、バーコード情報を解読する。ポンプ駆動制御部412は、ポンプ駆動部500を制御してマイクロチップ1の流路内の液体の移動を制御し、試薬と検体を反応させる。
【0049】
温度調節ユニット152はマイクロチップ1の温度を調節する。発光部160は、マイクロチップ1の後に説明する検出部111に光を照射し、受光部161は検出部111から受光する。光量算出部410は受光部161の出力する電気信号から光量を算出し検査結果とする。機構駆動部32は、温度調節ユニット152など各部機構を駆動し所定の位置に移動させる。
【0050】
検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0051】
図9は本発明の実施形態の検査システムにおけるチップ搬送トレイ2の速度制御の手順を説明するフローチャートである。
【0052】
本実施形態では、図1(b)のようにチップ搬送トレイ2が収納された状態から、図1(a)のようにマイクロチップ1を載置可能な位置までチップ搬送トレイ2を移動させる間に移動速度を計測し、逆方向に移動するときにフィードバックする例を説明する。また、トレイ駆動制御部411は、モータ50を駆動するパルス幅を変調して速度制御するものとする。
【0053】
S100:チップ搬送トレイ2の駆動を開始する。
【0054】
トレイ駆動制御部411は、モータ50を駆動するパルス幅を設定し、モータ50を回転させてチップ搬送トレイ2の駆動を開始する。本実施形態では、矢印Aと逆方向に移動させる例を説明する。
【0055】
S101:フォトインタラプタの出力が‘H’から‘L’に変化するのを検知するステップである。
【0056】
通過時間算出部413は、フォトインタラプタ31の出力を監視し、‘H’から‘L’に変化したか、否かを検知する。
【0057】
‘H’から‘L’に変化していない場合、(ステップS101;No)、ステップS101に戻る。
【0058】
‘H’から‘L’に変化した場合、(ステップS101;Yes)、ステップS102に進む。
【0059】
S102:タイマカウントを開始する。
【0060】
通過時間算出部413は、CPU98の内部カウンタをスタートさせて遮光部31が通過する時間を計測する。
【0061】
S103:フォトインタラプタの出力が‘L’から‘H’に変化するのを検知するステップである。
【0062】
通過時間算出部413は、フォトインタラプタ31の出力を監視し、‘L’から‘H’に変化したか、否かを検知する。
【0063】
‘L’から‘H’に変化していない場合、(ステップS103;No)、ステップS103に戻る。
【0064】
‘L’から‘H’に変化した場合、(ステップS103;Yes)、ステップS104に進む。
【0065】
S104:タイマカウントを停止する。
【0066】
通過時間算出部413は、CPU98の内部カウンタを停止させる。
【0067】
S105:通過時間TRを算出する。
【0068】
通過時間算出部413は、内部カウンタの値から通過時間TRを算出する。
【0069】
S106:目標時間To/通過時間TRを算出する。
【0070】
通過時間算出部413は、目標時間Toと通過時間TRの比を算出する。
【0071】
S107:トレイ駆動速度を補正する。
【0072】
トレイ駆動制御部411は、前ステップで算出したTo/TRから次回チップ搬送トレイ2を駆動するときのモータ50の駆動条件を変更する。
【0073】
例えば、To/TR>1のときは通過時間TRが目標時間Toより短いので、チップ搬送トレイ2の移動速度を遅くするように制御する。本実施形態では、トレイ駆動制御部411はモータ50を駆動するパルス幅の設定値を次回の逆方向への移動時に移動速度が遅くなるようTo/TRに比例した割合で小さくする。
【0074】
チップ搬送トレイ2の速度制御の手順は以上である。
【0075】
このように次回の逆方向への移動時には、モータ50を駆動するパルス幅の設定値が補正されているので、目標値に近い移動速度でチップ搬送トレイ2を移動させることができる。また、このことにより、バーコード読み取り部409はバーコード受光部140の出力から正確にバーコードを復号することができる。
【0076】
次に、マイクロチップ1の一例について、図10を用いて説明する。
【0077】
図10(a)、図10(b)はマイクロチップ1の外観図である。図10(a)において矢印は、筐体82にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図10(a)は挿入時にマイクロチップ1の下面となる面を図示している。図10(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0078】
図10(a)の検出部の窓111aと検出部の流路111bは検体と試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入口であり、各駆動液注入口110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。213はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0079】
図10(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。次に、マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0080】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0081】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラスチック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0082】
検出部111において、呈色反応の生成物や蛍光物質などの検出を光学的に行う場合は、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。本実施形態においては、検出部の窓111aと、少なくとも検出部の流路111bを形成する溝形成基板は、光透過性の材料が用いられていて、検出部111を光が透過するようになっている。
【0083】
マイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。ここでは、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図10(c)を用いて説明する。
【0084】
図10(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0085】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部221、試薬類を収容する試薬収容部220などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部220には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図10(c)において、試薬収容部220、検体収容部221および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0086】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0087】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0088】
検体注入部213はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入口110はマイクロチップ1に駆動液を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部213から注射器などを用いて注入する。図10(c)に示すように、検体注入部213から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部221に収容される。
【0089】
次に、駆動液注入口110aから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って検体収容部221に収容されている検体を押し出し、増幅部222に検体を送り込む。
【0090】
一方、駆動液注入口110bから注入された駆動液は、連通する微細流路を通って試薬収容部220aに収容されている試薬aを押し出す。試薬収容部220aから押し出された試薬aは増幅部222に駆動液によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部222の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように筐体82の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0091】
所定の反応時間の後、さらに駆動液により増幅部222から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部111に注入される。注入された溶液は検出部111の流路壁に担持されている反応物質と反応し流路壁に固定化する。
【0092】
次に、駆動液注入口110cから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220bに収容されている試薬を押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0093】
同様に、駆動液注入口110dから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220cに収容されている試薬を押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0094】
最後に、駆動液注入口110eから駆動液を注入して、洗浄液収容部223から洗浄液を押しだし、検出部111に注入する。洗浄液によって検出部111内に残留している未反応の溶液41を洗浄する。
【0095】
洗浄後、検出部111の流路壁に吸着した反応物の濃度を光学的に測定することによって、増幅した遺伝子など被検出物を検出する。このように、駆動液注入口110から駆動液を順次注入することにより、マイクロチップ1の内部で所定の処理が行われる。
【0096】
図11は、実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。検査装置80は温度調節ユニット152、発光部160、受光部161、中間流路部180、マイクロポンプユニット75、パッキン90a、90b、チップ接続部8、駆動液タンク91などから構成される。以下、これまでに説明した構成要素と同一の構成要素には同番号を付し、説明を省略する。
【0097】
図11は、マイクロチップ1の下面をチップ接続部8に密着させ、駆動液注入口110とチップ接続部8の流路開口185とを連通している状態である。マイクロチップ1は、図11には図示せぬチップ搬送トレイ2に載置されており、チップ搬送トレイ2の移動に伴って紙面左右方向に移動する。駆動液注入口110と流路開口185が連通可能な位置にチップ搬送トレイ2が移動すると、図11には図示せぬ押圧板3が紙面下方向に下降し、マイクロチップ1の上面を押圧して駆動液注入口110と流路開口185を密着させる。また、温度調節ユニット152は、図11には図示せぬ押圧板3に取り付けられており、押圧板3が下降するとマイクロチップ1の上面に密着する。
【0098】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の上面を所定の温度に調整するユニットである。
【0099】
所定の位置にチップ搬送トレイ2によってマイクロチップ1が搬送されると、検知部95はチップ搬送トレイ2を検知し、オンになる。
【0100】
マイクロチップ1の駆動液注入口110は、マイクロチップ1とチップ接続部8を密着させたときに、チップ接続部8に設けられた対応する流路開口185とそれぞれ連通する位置に設けられている。中間流路部180は、中間流路182の溝を設けた透明な第1基板184と、第1基板184を覆う透明な第2基板183から構成され、中間流路182の一端は流路開口185と連通し、他端はパッキン90bの流路開口186と連通している。中間流路182は流路開口186を介してマイクロポンプユニット75の入出力口146と連通している。
【0101】
マイクロポンプユニット75の吸込側には、パッキン90aを介して駆動液タンク91が接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液をパッキン90aを介して吸い込むようになっている。一方、マイクロポンプユニット75の吐出側の端面に設けられた入出力口146は中間流路182を介してマイクロチップ1の駆動液注入口110と連通しているので、マイクロポンプユニット75から送り出された駆動液は、マイクロチップ1の駆動液注入口110からマイクロチップ1内に形成された流路250に注入される。このようにして、マイクロポンプユニット75から駆動液注入口110に駆動液を注入する。
【0102】
マイクロポンプユニット75には少なくとも一つのマイクロポンプが設けられている。図10に図示したマイクロチップ1を駆動する場合は、5つの駆動液注入口110a、110b、110c、110d、110eに対応する5つのマイクロポンプMPが必要である。また、5つのマイクロポンプMPが5つの駆動液注入口110a、110b、110c、110d、110eにそれぞれ連通するように対応する5つの流路開口186、中間流路182、流路開口185が必要である。
【0103】
マイクロチップ1の検出部111では、検体とマイクロチップ1内に貯蔵された試薬が反応して、例えば呈色、発光、蛍光、混濁などをおこす。図10で説明したように、本実施形態の検査システムは検出部111でおこる試薬の反応結果を光学的に検出する。
【0104】
以上このように、本発明によれば、簡単な構成でマイクロチップに備えられた1次元バーコードを読みとることができる小型の検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2に載置したマイクロチップ1とバーコード受光部140の一例の斜視図である。
【図3】バーコード25の一例を説明するための平面図である。
【図4】チップ搬送トレイ2を説明するための平面図である。
【図5】55で示す部分の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2の速度検出機構を説明するための側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るチップ搬送トレイ2の速度検出機構を説明するための正面図である。
【図8】本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【図9】本発明の実施形態の検査システムにおけるチップ搬送トレイ2の速度制御の手順を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図11】本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 マイクロチップ
2 チップ搬送トレイ
25 バーコード
26 黒バー
27 白バー
31 フォトインタラプタ
32 遮光部
75 マイクロポンプユニット
80 検査装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
87 操作ボタン
90 パッキン
110 駆動液注入口
111 検出部
113 検体注入部
121 検体収容部
140 バーコード受光部
152 温度調整ユニット
409 バーコード読み取り部
413 通過時間算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチップから反応結果を測定する検査システムにおいて、
前記マイクロチップに設けられた黒バーと白バーからなるバーコードと、
前記マイクロチップを載置可能な第1の位置と載置した前記マイクロチップから反応結果を測定可能な第2の位置とを移動可能に構成されたチップ搬送トレイと、
前記チップ搬送トレイを移動させるチップ搬送トレイ駆動手段と、
前記チップ搬送トレイ駆動手段が前記マイクロチップを載置した前記チップ搬送トレイを移動させる間に前記黒バーからの光または前記白バーからの光を順次受光し電気信号に変換するバーコード受光部と、
を有することを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記チップ搬送トレイの移動方向に沿った一方の側面を摺動可能に支持する直線状のガイドと、
前記側面と反対側の側面から前記チップ搬送トレイを前記ガイドに押し当てる方向に付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記チップ搬送トレイの一部が通過したことを検知する検知手段と、
前記検知手段の検知した出力に基づいて通過時間を算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段の算出した前記通過時間に基づいて、前記チップ搬送トレイ駆動手段の速度を制御するトレイ駆動制御部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記トレイ駆動制御部は、
前記通過時間を算出したときの移動方向と逆方向に前記チップ搬送トレイが移動するとき、前記通過時間に基づいて前記チップ搬送トレイ駆動手段の速度を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate