説明

検査ストリップを検査計から取り外すための形状記憶合金取り外し機構

検査ストリップ取り外し機構検査ストリップ受け入れポート及び検査ストリップと共に使用するための検査ストリップ取り外し機構は、フレームと、細長い形状記憶合金(SMA)ストリップ(例えば、SMAワイヤ)と、スライダと、加熱モジュールとを含む。SMAストリップは、フレームに取り付けられた第1及び第2の末端部を有し、かつ固体遷移温度を示す。スライダは、フレームに沿って移動するように構成される。加熱モジュールは、SMAストリップを、固体遷移温度未満の温度から固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成される。更に、SMAストリップ及びスライダは、形状記憶ストリップが加熱モジュールによって固体遷移温度未満の温度から固体温度を超える温度まで加熱されると、SMAストリップによってスライダに加えられた印加力下で、スライダがフレームに沿って移動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、医療装置に関し、特に、検査ストリップ取り外し機構、関連する検査計、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中の検体の判定(例えば、検出及び/又は濃度測定)は医療分野において特に関心が寄せられている。例えば、尿、血液又は組織液などの体液の試料中のグルコース、ケトン類、コレステロール、アセトアミノフェン、及び/又はHbA1c濃度を求めることが望ましい場合がある。こうした判定は、例えば、測光的又は電気化学的方法に基づいた検体検査ストリップを関連した検査計と共に使用することで行うことが可能である。
【0003】
使用中、典型的には1つの検査ストリップが検査計に挿入される。検査ストリップに適用された体液サンプル中の検体の判定の後、検査ストリップは、検査計から除去されて廃棄される。検査計への検査ストリップの挿入及び検査計からの検査ストリップの除去に対する従来のアプローチは、例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3、並びに特許文献4に記載されており、当該文献のそれぞれは参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,266,179号明細書
【特許文献2】米国特許第5,366,609号明細書
【特許文献3】米国特許第5,738,244号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0108013号明細書
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の新規特徴は、特に添付の「特許請求の範囲」に記載される。本発明の特徴及び利点は、次の、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、並びに同様の数表示が同様の要素を示す添付の図面を参照することによって、より理解されるであろう。
【図1】検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、検査計の光モジュール、及び検査ストリップと共に使用する、本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構の概略分解図。
【図2A】図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップと共に使用する、図1の検査ストリップ取り外し機構の概略側面図及び底面図。
【図2B】図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップと共に使用する、図1の検査ストリップ取り外し機構の概略側面図及び底面図。
【図2C】図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップと共に使用する、図1の検査ストリップ取り外し機構の概略側面図及び底面図。
【図3】図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップを有する、取り外し前の状態にある図1の検査ストリップ取り外し機構の(底面からの)概略斜視図。
【図4】検査ストリップを取り外す間の、図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップを有する、図1の検査ストリップ取り外し機構の(底面からの)概略斜視図。
【図5】検査ストリップの取り外し及び形状記憶合金ストリップの変形後の、図1の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ、光モジュール、及び検査ストリップを有する、図1の検査ストリップ取り外し機構の(底面からの)概略斜視図。
【図6】本発明の実施形態による検査計の概略ブロック図。
【図7】本発明の実施形態による検査計から検査ストリップを取り外すための方法の各段階を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は、必ずしも実物大ではなく、説明目的のみのために例示的な実施形態を図示するものであり、本発明の範囲を制限することは意図されない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0007】
広くは、検査ストリップ受け入れポート及び検査ストリップと共に使用するための検査ストリップ取り外し機構は、フレームと、細長い形状記憶合金(SMA)ストリップ(例えば、SMAワイヤ)と、スライダと、加熱モジュールとを含む。SMAストリップは、フレームに取り付けられる第1及び第2の末端部を有し、かつ固体遷移温度を示す。スライダは、フレームに沿って移動するように構成される。
【0008】
加熱モジュールは、SMAストリップを、固体遷移温度未満の温度から、固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成される。更に、SMAストリップ及びスライダは、SMAストリップが固体遷移温度未満の温度から固体温度を超える温度まで加熱されると、SMAストリップによってスライダに加えられた印加力下で、スライダがフレームに沿って移動するように構成される。更に、スライダは、検査ストリップ受け入れポート内に受容された検査ストリップに係合しかつ、スライダがフレームに沿って移動すると、検査ストリップを検査ストリップ受け入れポートから取り外すように構成された近位端を有する。
【0009】
形状記憶合金(SMA)は、固体遷移温度よりも高い温度まで加熱されると、変形した形状(本明細書では「変形形状(deformed configuration)」とも呼ばれる)から元の形状(本明細書では「プログラムされた形状」とも呼ばれる)へと変形する材料である。その挙動は、元の形状(プログラムされた形状)への復帰とも呼ばれる。
【0010】
固体遷移温度より低い温度では、形状記憶合金ニチノールはマルテンサイト相にある。ニチノールSMAストリップ(例えば、ニチノールSMAワイヤ)を、所定の「プログラムされた形状」又はプログラムされた状態に設定するためには、SMAストリップをプログラムされた形状に保持して、SMAストリップの原子がオーステナイト相に自らを配置する温度である約500℃までSMAストリップを加熱する。その後、固体遷移温度を超えて加熱されると、ニチノールSMAワイヤは、マルテンサイト相からオーステナイト相へと自動的に復帰することになり、このことは、形状記憶合金を(固体相転移を介して)任意の変形形状からプログラムされた形状に戻すように作用する。換言すれば、形状記憶合金ストリップは、温度に応答して形状を変化させる。こうした遷移の間に、SMAは、検査ストリップを取り外すために、本発明の実施形態で採用される円滑かつ制御された力を発揮する。
【0011】
一旦本開示を知るところとなると、当業者は、形状記憶合金の固体遷移温度及び機械的特性に応じて本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構で使用するのに好適であり得る、様々な形状記憶合金が存在することを認識するであろう。既知の形状記憶合金材料としては、例えば次のものが挙げられる。
【0012】
ニッケル/チタン合金(Nitinol及びTinelとして市販のニッケル/チタン合金など)
銅/亜鉛/アルミニウム合金
銅/アルミニウム/ニッケル合金
銀/カドミウム合金
金/カドミウム合金
銅/スズ合金
銅/亜鉛合金
インジウム/チタン合金
ニッケル/アルミニウム合金
鉄/白金合金
マンガン/銅合金
鉄/マンガン/シリコン合金
【0013】
本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構は、自動で動作するという点で有利である。換言すれば、本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構は、最低限の人の介入で、人的エネルギー不在で(従来型の手動の取り外し機構とは対照的に)、及び外部からの影響又は制御と本質的に無関係なやり方で動作する。本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構はまた、人が取り扱う必要がない、及び汚染する可能性がない、取り外しが有利な検査ストリップを提供する。この検査ストリップ取り外し機構はまた、取り外しに関連したモーター及び/又はギアがないので、小型かつ比較的静かであり、したがって、手持ち式携帯検査計(例えばグルコース測定のための検査計など)に組み込むのに適している。
【0014】
図1は、関連検査計の検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200及び光モジュール300、並びに検査ストリップTSと共に使用する、本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構100の概略分解図である。図2A、図2B、及び図2Cは、検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200、光モジュール300、及び検査ストリップTSと共に使用する検査ストリップ取り外し機構100の、概略上面図、側面図、及び底面図である。図3は、取り外し前の状態にある(例えば、ストリップ挿入及び検体判定の後)検査ストリップ取り外し機構100の(底面からの)概略斜視図である。図4は、プログラムされた形状の形状記憶合金ストリップを有する、検査ストリップTSの取り外し中の検査ストリップ取り外し機構100の(同じく底面からの)概略斜視図である。図5は、検査ストリップTSの取り外し及び形状記憶合金ストリップの変形形状への復帰後の、検査ストリップ取り外し機構100の概略斜視図である。
【0015】
図1、図2A〜図2C、図3、図4、及び図5を参照すると、検査ストリップ取り外し機構100は、検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200及び検査ストリップTSと共に使用するように構成される。検査ストリップ取り外し機構100は、フレーム102と、細長い形状記憶ワイヤ104と、スライダ106と、バネ108と、スピンドル110と、コネクタ112(即ち、ねじとワッシャの組み合わせ)と、を含む。検査ストリップ取り外し機構100は加熱器モジュールも含むが、簡略化のために図1、図2A〜図2C、図3、図4、及び図5には示されていない。加熱器モジュールは、例えば、細長い形状記憶合金ワイヤ104を通して所定の電流を制御可能な方法で流し、それによって、細長い形状記憶合金ワイヤを加熱するように構成された加熱器モジュールなど、当業者には既知の任意の好適な加熱器モジュールであり得る。
【0016】
検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200は、検査ストリップ受け入れポート202と、検査ストリップ受け入れフレーム204とを含む。光モジュール300は、検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200の中の検査ストリップの有無を感知するように構成される。光モジュール300は、当業者には既知の任意の好適な光モジュールであり得、例えば、スライダ106に任意に含まれる不透明な遮光フィン又は反射体の位置に基づいて、検査ストリップの有無を検出するように構成された、LEDベースの光源及びフォトダイオードベースの光検出器などであり得る。そのような検出は、必要に応じて、細長い形状記憶合金ワイヤ104の動作停止を自動で制御するために及び/又は検査ストリップ取り外し機構100の機械的故障を監視するために、採用され得る。別の方法としては、例えば、スライダ106の位置に基づいて検査ストリップの有無を検出するために、好適な機械スイッチを採用することも可能である。
【0017】
検査ストリップの有無を知ることは、検査計目的で(例えば、検査計による検体判定を開始するため)、又は、検査ストリップが取り外された時点で検査ストリップ取り外し機構内の細長い形状記憶合金ワイヤの加熱を終了する(動作停止する)ために用いることができるので、光モジュール300を、検査計の構成要素又は検査ストリップ取り外し機構の任意の構成要素のいずれかであると考えることができる。
【0018】
フレーム102は、検査ストリップ受け入れポートアセンブリ200に取り付けられ、かつスライダガイドスロット114と、ストリップ取り付けスロット116a及び116bとを含む。細長い形状記憶合金ワイヤ104は、長手方向軸と、第1の末端部118aと、第2の末端部118bとを有する。細長い形状記憶合金104の第1の末端部118a及び第2の末端部118bは、ストリップ取り付けスロット116a及び116b、並びに細長い形状記憶合金ワイヤ104のクリンプ120a及び120bを介してフレーム102に取り付けられることによって拘束される。
【0019】
前述の通り、細長い形状記憶合金ワイヤ104は、好適な形状記憶合金材料(例えば、ニッケル/チタン合金)で形成されていることから、固体遷移温度を本質的に示す。本発明の実施形態では、固体遷移温度は、典型的には65℃〜95℃の範囲内である。この範囲の低い方の温度は、通常の使用中に遭遇する最高周囲温度よりも高く、この範囲の高い方の温度は、検査ストリップ取り外し機構のフレーム102、スライダ106、及び他の構成要素を作製するのに使用される材料(例えば、プラスチック材料)との熱的適合性に基づいて選択される。固体遷移温度を超えて加熱すると、細長い形状記憶合金ワイヤ104の形状記憶挙動により、収縮率は、例えば、1%〜3%の範囲内となる。
【0020】
検査ストリップ取り外し機構100において、細長い形状記憶合金ワイヤ104は、代表的であるが限定を意図しない直径0.2mm及び長さ55.8mmを有し、かつ、例えば、54%のニッケルと46%のチタンとを含有する形状記憶合金で構成され得る。そのような細長い形状記憶合金ワイヤは、例えば、0.5アンペアの電流を約1.0秒〜1.2秒の範囲内の時間、細長い形状記憶合金ワイヤに流すことによって、室温から、3%収縮のその固体遷移温度を超えるまで加熱されることができる。
【0021】
変形形状から予めプログラムされた形状への遷移の間(即ち、固体遷移温度未満から固体遷移温度を超えるまで加熱すると、具体的には図3及び図4を参照のこと)、細長い形状記憶合金ワイヤのこの両端の拘束は、取り外し前の状態の変形形状と所定のプログラムされた形状とがあいまって、スライダに加わる力を生み出す。力が加わると、検査ストリップが取り出される。
【0022】
図1〜図5の実施形態において、形状記憶合金ストリップが固体遷移温度未満の温度(例えば、約25℃の周囲室温)である場合、形状記憶合金ワイヤは変形形状にあり、形状記憶合金ストリップが固体遷移温度より高い温度まで(例えば、65℃超過)加熱されると、形状記憶合金ストリップはプログラムされた形状となる。更に、検査ストリップ取り外し機構100の実施形態において、変形形状の形状記憶合金ワイヤの長手方向軸は、本質的に等辺鈍角三角形形状であり、(図1、図2C、図3、及び図5参照)、プログラムされた形状の形状記憶合金ストリップの長手方向軸は、検査ストリップ取り外し方向と垂直な、本質的に直線形状である(図4参照)。これらの所定の形状は、検査ストリップの取り外しの間、スライダの滑らかで直線的な動きを作り出す働きをする。
【0023】
形状記憶合金ワイヤの等辺鈍角三角形形状は、スライダ106を押して検査ストリップを取り外すように機能しながら直線形状に遷移する「湾曲」形状である。これらの形状及び機能は、弓矢の形状及び機能によく似ている。非限定的な説明目的のみで提供される弓矢との類似性において、フレームと長い形状記憶合金ワイヤは、弓と弓弦によく似ており、スライダと検査ストリップは、矢によく似ている。しかしながら、一旦本開示を知るところとなると、当業者は、本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構は、形状記憶合金の挙動を有利に採用して自動的に動作し、かつ、従来の弓矢と異なる、他の独自の自明でない有利な側面を有することを認識するであろう。
【0024】
検査ストリップ取り外し機構100の実施形態において、スライダ106は、スライダガイドスロット114の中をフレーム102に沿って移動するように構成され(具体的には図1参照)、細長い形状記憶合金ワイヤ104と検査ストリップTSとの間に機械的結合をもたらす。具体的には、スライダ106は、検査ストリップ受け入れポート202の中に受容された検査ストリップTSを係合するように構成され、かつスライダ106がフレーム102に沿って移動すると、検査ストリップTSを検査ストリップ受け入れポート202から取り外すように構成された近位端107を有する(具体的には図3、図4、及び図5参照)。検査ストリップの取り外しの間のスライダの移動距離は、例えば、4mmの範囲内である。
【0025】
バネ108及びスピンドル110は、形状記憶合金ストリップが固体遷移温度未満の温度であるときに、形状記憶合金ストリップを変形形状に復帰させかつ保持するように構成され(具体的には図3及び5参照)、形状記憶合金ストリップが固体遷移温度を超える温度まで加熱されると、形状記憶合金ストリップがプログラムされた形状に移動させることができるように構成される(具体的には図4参照)。バネ108及びスピンドル110は、検査ストリップ取り外し機構100の作動中、細長い形状記憶合金ワイヤに好適な動作時の力を加えるように構成され得る。例えば、ほぼ無負荷状態である約1Nの力、及びバネ108が圧縮中の3.2Nの最大力を、動作中に加えることができる。コネクタ112は、細長い形状記憶合金ワイヤ104をフレーム102上で変形形状に(バネ108並びにストリップ取り付けスロット116a及び116bと一緒に)保持するように構成される。コネクタ112は、細長い形状記憶合金ワイヤ104とスライダ106との間に機械的接触も提供する。
【0026】
検査ストリップ取り外し機構100の加熱モジュール(図示せず)は、形状記憶合金ストリップを、固体遷移温度未満の温度から固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成される。こうした加熱は、形状記憶合金ワイヤに電流を流す加熱モジュールを採用することによって達成されることができ、この加熱は、電気抵抗加熱効果の結果として生じる。
【0027】
検査ストリップ取り外し機構100において、細長い形状記憶合金ワイヤ104及びスライダ106は、形状記憶ストリップが加熱モジュール(図示せず)によって加熱されると、細長い形状記憶合金ワイヤ104によってスライダ106に加えられた印加力下で、スライダ106がフレーム102に沿って移動するように構成される。この加熱は、細長い形状記憶合金ワイヤ104の温度を、固体遷移温度未満の温度(例えば、周囲室温)から、固体温度を超える温度まで上昇させる。
【0028】
本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構の利点は、回転運動を直線状の検査ストリップ取り外し運動に変換する機構を含む必要がないことである。本発明の実施形態による検査ストリップ取り外し機構はまた、有利に薄く、軽量、低価格で、比較的静かであり、検査ストリップを滑らかに取り外す。
【0029】
広くは、本発明の実施形態による、検査ストリップ(例えば、光学的測定法又は電気化学に基づいた方法によって、全血液サンプル中のグルコースを測定するよう構成された検査ストリップ)と共に使用するための検査計は、検査ストリップ受け入れポートと検査ストリップ取り外し機構とを含む。更に、検査ストリップ取り外し機構は、フレームと、細長い形状記憶合金(SMA)ストリップと、スライダと、加熱モジュールとを含む。
【0030】
検査ストリップ取り外し機構のSMAストリップは、フレームに取り付けられることによって拘束される第1及び第2の末端部を有し、かつ固体遷移温度を示す。更に、スライダは、フレームに沿って移動するように構成され、加熱モジュールは、SMAストリップを、固体遷移温度未満の温度から固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成される。更に、SMAストリップ及びスライダは、形状記憶ストリップが加熱モジュールによって固体遷移温度未満の温度から固体温度を超える温度まで加熱されると、SMAストリップによってスライダに加えられた印加力下で、スライダがフレームに沿って移動するように構成される。更に、スライダは、検査ストリップ受け入れポート内に受容された検査ストリップに係合しかつ、スライダがフレームに沿って移動すると、検査ストリップを検査ストリップ受け入れポートから取り外すように構成された近位端を有する。
【0031】
図6は、本発明の実施形態による検査計600の概略ブロック図である。検査計600は、ハウジング602と、検査ストリップ(TS)を受容しかつ査ストリップ(TS)をそこから取り外させるように構成された検査ストリップ受け入れポート604と、検査ストリップ(TS)と、検査ストリップ取り外し機構606(例えば、図1、図2A〜図2C、図3、図4、及び図5に関して記載したような検査ストリップ取り外し機構100)と、信号処理モジュール608とを含む。
【0032】
検査ストリップ取り外し機構606は、本明細書の別の箇所に記載される次の構成要素(図6には示されず)を含む:(i)検査ストリップ受け入れポート604に取り付けられたフレーム、(ii)長手方向軸と、フレームに取り付けられた第1の末端部及び第2の末端部と、を有する細長い形状記憶合金ストリップ、(iii)フレームに沿って移動するように構成されたスライダ、及び(iv)形状記憶合金ワイヤを、形状記憶合金の固体遷移温度未満の温度から、形状記憶合金の固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成された加熱モジュール。
【0033】
更に、本明細書の別の箇所で更に記載されるように、形状記憶合金ストリップ及びスライダは、印加力下でフレームに沿って移動するように構成され、この印加力は、形状記憶合金ストリップが加熱モジュールによって固体遷移温度未満の温度から固体温度を超える温度まで加熱される際に、形状記憶合金ストリップによって加えられる。更に、スライダは、(検査ストリップ受け入れポート604内に受容されている)検査ストリップTSに係合しかつ、スライダがフレームに沿って移動すると、検査ストリップTSを検査ストリップ受け入れポート604から取り外すように構成された近位端を有する。
【0034】
信号処理モジュール608は、検体判定中に信号(電気信号、光信号、又はこれらの組み合わせ)を測定して処理するように構成される。信号処理モジュール608は、簡略化した図6には示されていない様々なセンサ及び回路を含み、かつ検体を測定する間にこれらを使用することができることが、当業者には理解されよう。
【0035】
実施形態による検査計は、例えば、(i)嵩高で複雑なモーターによる検査ストリップ取り外しシステムがないので、比較的簡易かつ安価である、(ii)検査ストリップの自動取り外し(即ち、人の介入が最低限であるか、あるいは存在せずに検査ストリップの取り外しが生じる)、(iii)移動する構成要素の数が最小であるので、検査ストリップの取り外し中にほとんど音が立たない、及び(iv)拘束された形状記憶合金ストリップの制御された形状変換に基づいた、円滑かつ制御された検査ストリップの取り外しをもたらす、といった複数の利点と独自の特性とを有する。
【0036】
更に、一旦本開示を知るところとなると、当業者は、本発明の実施形態による検査計は、本発明の実施形態による及び本明細書に記載される検査ストリップ取り外し機構及び検査計から検査ストリップを取り外す方法の特性、構成要素、技術、利点、及び特徴のいずれかを組み込むことができることを認識するであろう。
【0037】
図7は、本発明の実施形態による検査計から検査ストリップを取り外すための方法700の各段階を示すフローチャートである。方法700のステップ710において、取り外し前の状態にある検査計の検査ストリップ取り外し機構の作動を開始する。方法700では、検査ストリップ取り外し機構は、固体遷移温度を示す形状記憶合金ストリップを含んでいる。更に、形状記憶合金ストリップ(例えば、ニッケル−チタン形状記憶合金で製造された形状記憶合金ワイヤ)は、プログラムされた形状と変形形状とを有する。更に、検査ストリップ取り外し機構の取り外し前の状態では、検査ストリップ(例えば、全血液サンプル中のグルコースを測定するよう構成された検査ストリップ)は、検査計の検査ストリップ受け入れポート内に収容されており、形状記憶合金ストリップは変形形状にある。
【0038】
開始するステップは、例えば、ユーザーが検査計の開始ボタンを押すことにより、あるいは、検査計による検体判定が完了したことを感知する好適な電子モジュール及び/又はソフトウェアにより達成され得る。一旦本開示を知るところとなると、そのような開始を達成することができる好適な電子モジュール及びソフトウェアは、当業者には明らかであろう。
【0039】
図3のステップ720に示されるように、方法700は、開始ステップに応答して、固体遷移温度未満から固体遷移温度超過まで形状記憶合金ストリップを加熱することも含む。ステップ720の加熱により、形状記憶合金ストリップは、変形形状からプログラムされた形状へと変形する。
【0040】
ステップ730において、本方法は、変形形状からプログラムされた形状への変形によって生じた力を検査ストリップに適用し、それによって、検査計の検査ストリップ受け入れポートから検査ストリップを取り外すことも含む。
【0041】
一旦本開示を知るところとなると、当業者は、本発明の実施形態による及び本明細書に記載の検査ストリップ取り外し機構及び検査計の技術、利点、及び特徴のいずれかを取り入れるように、方法700を容易に修正することができることを認識するであろう。
【0042】
本明細書に、好ましい本発明の実施形態が示され、記載されてきたが、このような実施形態は、単なる例として提供されていることが、当業者に明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、数々の変形、変更、及び置換を思い付くであろう。本発明を実施するに当たって本明細書で述べた実施形態には、様々な代替例が考えられる点は理解されるべきである。以下の「特許請求の範囲」は、本発明の範囲を定義すると共に特許請求の範囲内の装置及び方法、並びにそれらの均等物をこれによって網羅することを目的としたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査ストリップ受け入れポート及び検査ストリップと共に使用するための検査ストリップ取り外し機構であって、前記検査ストリップ取り外し機構が、
前記検査ストリップ受け入れポートに取り付けられたフレームと、
長手方向軸と、第1の末端部と、第2の末端部とを有する細長い形状記憶合金ストリップであって、前記第1の末端部及び前記第2の末端部は、前記フレームに取り付けられることによって拘束され、前記形状記憶合金ストリップは固体遷移温度を有する、細長い形状記憶合金ストリップと、
前記フレームに沿って移動するように構成されたスライダと、
前記形状記憶合金ストリップを、固体遷移温度未満の温度から固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成された加熱モジュールと、を含み、
前記形状記憶ストリップが前記加熱モジュールによって前記固体遷移温度未満の温度から前記固体温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップによって前記スライダに加えられた印加力下で、前記スライダが前記フレームに沿って移動するように前記形状記憶合金ストリップ及び前記スライダが構成され、
前記スライダが、前記検査ストリップ受け入れポート内に受容された検査ストリップに係合しかつ、前記スライダが前記フレームに沿って移動すると、前記検査ストリップを前記検査ストリップ受け入れポートから取り外すように構成された近位端を有する、検査ストリップ取り外し機構。
【請求項2】
前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度未満の温度であるときに、前記形状記憶合金ストリップを変形形状に復帰させて保持し、かつ、前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップをプログラムされた形状に移動させることができるように構成されたバネを更に含む、請求項1に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項3】
スピンドルを更に含み、
前記バネが、前記スピンドルの周囲に環状配置で配置され、前記バネが、前記スピンドルを介して前記スライダに力を加える、請求項2に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項4】
前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度未満の温度である場合、前記形状記憶合金ストリップが変形形状にあり、前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップがプログラムされた形状となる、請求項1に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項5】
前記変形形状における前記形状記憶合金の前記長手方向軸が、湾曲形状であり、前記プログラムされた形状にある前記形状記憶合金ストリップの前記長手方向軸が、本質的に直線形状である、請求項4に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項6】
前記直線形状が、検査ストリップ取り外し方向と本質的に垂直である、請求項5に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項7】
前記加熱モジュールが、前記形状記憶合金ストリップに電流を流させることによって、前記形状記憶合金ストリップを加熱するように構成される、請求項1に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項8】
前記形状記憶合金ストリップが形状記憶合金ワイヤである、請求項1に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項9】
前記形状記憶合金ワイヤがニッケル−チタン形状記憶合金ワイヤである、請求項8に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項10】
第1のクリンプと、
第2のクリンプと、を更に含み、
前記形状記憶合金ストリップの前記第1の末端部及び前記第2の末端部が、それぞれ、前記第1のクリンプ及び前記第2のクリンプを介して前記フレームに取り付けられることによって拘束される、請求項1に記載の検査ストリップ取り外し機構。
【請求項11】
検査ストリップと共に使用するための検査計であって、前記検査計が、
検査ストリップを受容しかつ前記検査ストリップを検査ストリップ受け入れポートから取り外させるように構成された該検査ストリップ受け入れポートと、
検査ストリップ取り外し機構であって、
前記検査ストリップ受け入れポートに取り付けられたフレーム、
長手方向軸と、第1の末端部と、第2の末端部とを有する細長い形状記憶合金ストリップであって、前記第1の末端部及び前記第2の末端部は前記フレームに取り付けられ、前記形状記憶合金ストリップは固体遷移温度を示す、細長い形状記憶合金ストリップ、
前記フレームに沿って移動するように構成されるスライダ、
及び前記形状記憶合金ワイヤを、固体遷移温度未満の温度から固体遷移温度を超える温度まで加熱するように構成された加熱モジュール、を含む検査ストリップ取り外し機構と、
を含み、前記形状記憶ストリップが前記加熱モジュールによって前記固体遷移温度未満の温度から前記固体温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップによって前記スライダに加えられた印加力下で、前記スライダが前記フレームに沿って移動するように前記形状記憶合金ストリップ及び前記スライダが構成され、
前記スライダが、前記検査ストリップ受け入れポート内に受容された検査ストリップに係合しかつ、前記スライダが前記フレームに沿って移動すると、前記検査ストリップを前記検査ストリップ受け入れポートから取り外すように構成された近位端を有する、検査計。
【請求項12】
検査ストリップ受け入れポートのフレームを更に含み、
前記検査ストリップ受け入れポート及び前記検査ストリップ取り外し機構が、前記検査ストリップ受け入れポートのフレームに取り付けられる、請求項11に記載の検査計。
【請求項13】
前記フレームに取り付けられた光学センサモジュールと、
信号処理モジュールと、を更に含む、請求項12に記載の検査計。
【請求項14】
前記検査ストリップ取り外し機構が、
前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度未満の温度であるときに、前記形状記憶合金ストリップを変形形状に復帰させて保持し、かつ、前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップをプログラムされた形状に移動させることができるように構成されたバネを更に含む、請求項11に記載の検査計。
【請求項15】
前記検査ストリップ取り外し機構が、
スピンドルを更に含み、
前記バネが、前記スピンドルの周囲に環状配置で配置され、前記バネが、前記スピンドルを介して前記スライダに力を加える、請求項14に記載の検査計。
【請求項16】
前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度未満の温度である場合、前記形状記憶合金ストリップが変形形状にあり、前記形状記憶合金ストリップが前記固体遷移温度を超える温度まで加熱されると、前記形状記憶合金ストリップがプログラムされた形状となる、請求項11に記載の検査計。
【請求項17】
前記変形形状にある前記形状記憶合金の前記長手方向軸が、本質的に湾曲形状にあり、前記プログラムされた形状にある前記形状記憶合金ストリップの前記長手方向軸が、本質的に直線形状である、請求項16に記載の検査計。
【請求項18】
前記直線形状が、検査ストリップ取り外し方向と本質的に垂直である、請求項17に記載の検査計。
【請求項19】
前記加熱モジュールが、前記形状記憶合金ストリップに電流を流させることによって、前記形状記憶合金ストリップを加熱するように構成される、請求項11に記載の検査計。
【請求項20】
前記形状記憶合金ストリップが形状記憶合金ワイヤである、請求項11に記載の検査計。
【請求項21】
前記形状記憶合金ワイヤがニッケル−チタン形状記憶合金ワイヤである、請求項20に記載の検査計。
【請求項22】
前記検査ストリップ取り外し機構が、
第1のクリンプと、
第2のクリンプと、を更に含み、
前記形状記憶合金ストリップの前記第1の末端部及び前記第2の末端部が、それぞれ、前記第1のクリンプ及び前記第2のクリンプを介して前記フレームに取り付けられる、請求項11に記載の検査計。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−519080(P2013−519080A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551674(P2012−551674)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000143
【国際公開番号】WO2011/095775
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【Fターム(参考)】