説明

検査ディスク

【課題】情報記録層の破壊や変形による流路断面積の精度喪失、接着剤からの有機性の発ガスによる流路内の試薬、酵素への影響のない検査ディスクを提供する。
【解決手段】円盤プレートを張り合わせて成る検査ディスクであって、表面に流路を形成するための凹部を有する円盤プレート3上に当該円盤プレートの凹部周辺にカーボンブラックを塗布し、該凹部を有する円盤プレート3を覆う中間円盤プレート10をカーボンブラック9塗布部にレーザビームを照射して溶着された第1の円盤プレートと、情報記録層5を有する円盤プレートの第2の円盤プレートからなり、当該第2の円盤プレートの情報記録層5側に遅延性の紫外線硬化性接着剤14を塗布し、所定の時間内に前記第1の円盤プレートの中間円盤プレート10上に前記第2の円盤プレートを紫外線硬化性接着剤14により貼り合せて積層して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や体液など液体を遠心力、圧力、毛細管現象を利用し、分離や結合をさせるための流路を内部に有する検査ディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、血液、体液またはそれらから抽出された液体から人の健康状態を検査をする目的のディスクに関するものであり、そのディスクは流路を有する円盤プレートの流路の面と情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの情報記録層(金属薄膜層)の面を貼り合せることで作られる。流路を有する側の円盤プレートは流路を金型に刻み射出成形で作られ、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の単一の樹脂材料が用いられる。情報記録層(金属薄膜層)を有する側の円盤プレートは、CDやDVDなどの光ディスクと同様に、表面に記録信号を表すピットを形成したスタンパを射出成形機の金型内に取り付けて、熱溶融した同じくポリカーボネートやアクリル樹脂等の単一の樹脂を高圧で注入する。この工程により片面にピットを有する厚さ約0.6mmの円盤プレートを作る。この円盤プレートのピット形成面にスパッタリングによりアルミニウムや金の薄膜を形成し情報記録層(金属薄膜層)として使用する。
【0003】
従来、樹脂部材同士を貼り合せる、すなわち、接合する方法として、熱を加えて溶着する物理的接合方法、接着剤等を用いて接合する化学的接合方法、あるいはレーザービームを用いて溶着するレーザービーム溶着法等の接合方法が知られている。
【0004】
物理的接合方法は、接合しようとする樹脂部材の接合面で、メタルメッシュや金属板等の発熱体を発熱させ、この接合面を溶融させるとともに、樹脂部材を圧接した状態で冷却、硬化させて接合させる方法である。
【0005】
化学的接合方法は、例えば、樹脂部材の接合面に、ホットメルト等の接着剤を介在させ、一方の樹脂部材表面から高周波あるいは超音波を付与することで接着剤を加熱、溶融させた後に、樹脂部材を圧接し、冷却、硬化させることで接合させる方法である。また、CDやDVDなどの光ディスクは紫外線硬化性の接着剤を用いることは広く知られている。現在市販されている光ディスクのCDやDVDは、情報記憶層(金属薄膜層)側の面上に紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性の接着剤を既存技術であるスピンコート法、スクリーン印刷法等によって接着面に一様に塗布して、情報記録層(金属薄膜層)の保護を目的とする厚さ、約0.6mmの樹脂の円盤プレートを貼り付け、紫外線ランプで紫外線を照射して硬化させる。図7がその概要図である。
【0006】
レーザービーム溶着方法は、特開昭60−214931号に開示されているように、レーザービームに対して非吸収性(透過性)の樹脂部材と、レーザービームに対して吸収性の樹脂部材とを溶着させる方法である。非吸収性(透過性)の樹脂部材側からレーザービームを接合面に照射して、接合面を形成する吸収性を示す樹脂部材をレーザービームのエネルギーで溶融させ接合する方法である。この方法は片方がレーザビームに対して非吸収性(透過性)で片方が吸収性の場合であり、本発明に関する流路を有するディスクにおける円盤プレートも情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートも非吸収性(透過性)もレーザービームに対して非吸収性(透過性)の樹脂材料であり、このような場合はどちらかにレーザービームを吸収させるために着色をしたり、カーボンブラックなどに代表されるレーザービーム吸収剤を塗布することでレーザービームの吸収性を持たせることでレーザビーム溶着を可能にさせる。図10がその概念図である。
【特許文献1】特開昭61−217945号公報
【特許文献2】特開昭60−214931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流路を有する円盤プレートと情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートを貼り合せることで、血液、体液やそれらを分離、結合させた液体から人の健康状態を検査をする目的とするディスクを作るため、流路面側と情報記録層(金属薄膜層)の面側を貼り合せ、すなわち接合させる。
【0008】
この二つの円盤プレートはポリカーボネートまたはアクリル樹脂等のプラスチックが材料であり、通常、これら樹脂を貼り合せる、すなわち結合させる場合の工法として、物理的な結合、化学的な結合、レーザービーム溶着がその工法として用いられる。しかし、どの方法も光ディスクと違い、内部の流路を有し、その流路内に検査などに必要な薬品や酵素を持ち、なおかつ光ディスクの様に情報記録層(金属薄膜層)を有するこの特殊なディスクにおいては、以下に述べる問題がある。
【0009】
熱でお互いを融解し溶着させる物理的な方法は、むろん貼り合せることは可能であるが、流路もしくは情報記録層(金属薄膜層)を融解により物理的に変形などでダメージを与えることで、流路の断面積が歪み、つぶれ、などで大きく変化したり、情報記録層(金属薄膜層)の破壊で情報記録層(金属薄膜層)のデータの読み書きが出来なくなるため、使うことが出来ない。
【0010】
次にホットメルトや紫外線硬化性接着剤などによる化学的な接合であるが、まず、ホットメルトの場合はホットメルトシート自体の厚みが標準のもので100μmあり、接着剤の層は半ジェル状であるため、貼り合せの要求精度約10μm程度に対してばらつきが大きくなり、適さない。この貼り合せの要求精度は、血液、体液やそれらを分離、結合させたもの液体の流れる量、速度を一定にするため、流路の断面積が重要であるため約10μm程度という厳しいものになる。なぜならば、貼り合せた後の流路断面積がディスク毎にバラツキがあれば、血液、体液やそれらを分離、結合させたもの流れる量や速度が、当然一定にならないためである。最終的に設計上流れてくる検体である血液、体液やそれらを分離、結合させた液体の量に対して検査や反応に用いられる薬品、酵素の種類、量などが決定され、それらが流路を有する円盤プレートの流路内に仕込まれており、設計通りの量でないと検査や反応が正しく行なわれない結果になる。
【0011】
図8、図9、図10に従来の円盤プレートを接着剤で貼り合わせる例を示すが、紫外線硬化性の接着剤の場合は、貼り合せ精度の点でも取扱いの面でも優れているが、その工法で情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートと流路を有する円盤プレートを貼り合わせに利用する場合は、その紫外線硬化性接着剤からの発ガスによる検体である血液、体液やそれらを分離、結合させたもの、また、それら検体を反応させる酵素、薬品への影響が懸念される。何故ならば、流路を有する円盤プレートには分離や結合をさせた血液や体液などの検体に対して化学的な反応をさせ検査を行うため必要な酵素や薬品が仕込まれており、それらの酵素や薬品へのガスへの影響があるからである。例えば紫外線硬化性の接着剤は紫外線によって硬化させても100%完全に硬化させることは出来ず、数%と言え乾燥していない状態であり、図8で接着剤18が流路に被さる部分からの発ガスの影響がある。従って、流路に接着剤に被さるようなスピンコータなどによる全面塗布は行えない。
【0012】
流路に紫外線硬化性接着剤がはみ出さないように塗るために、図9で接着剤17の示すようにシルク印刷のように流路の外側に沿って接着剤などを印刷することも考えられるが、密着した場合、図9ではみ出し部分19に示すように紫外線硬化性接着剤が流路の内側にはみ出し、流路に被さるとは容易に推測され、完全な対応ではない。また、そのはみ出しを計算し、紫外線硬化性接着剤を塗る箇所と流路の間の距離や接着剤の量にマージンをとる場合は、逆に密着性が落ち、図9で接着剤不足部分20に示すように密着が不十分なため流路からの液体の滲み、漏れが発生する場合がある。従って、紫外線硬化性接着剤など有機系接着剤で直接接合させる方法にも問題がある。
【0013】
最後にレーザービームによる溶着であるが、図10の示すようにレーザービーム11,12で両方の円盤プレートを溶着させる工法があるが、図10で破壊された情報記録層21に示すように、特に情報記録層(金属薄膜層)に熱によるダメージを与えるになる。流路の外周にそってのレーザービーム溶着であるので流路の断面積には影響はしないが、これは最初に述べた熱による物理的な結合と同様に情報記録層(金属薄膜層)にダメージを与えたり、破壊する結果となる。情報記録層(金属薄膜層)には血液や体液などを分離、結合させるため遠心力や毛細管現象を利用ためのディスク回転数、回転速度、回転時間、停止時間など、必要な基本データが書き込まれており、破壊やダメージで読み込みや書き込みが阻害されることがあってはならない。特に円盤プレートの材質はポリカーボネートやアクリル樹脂のように高温で溶け易い材質のものに対してレーザービームなどを当てると図10で破壊された情報記録層21に示すように情報記録層(金属薄膜層)を破壊することになる場合もあり、結果、情報記録層(金属薄膜層)に書かれているデータの読み出しや書き込みが正しく行なえない。
【0014】
本発明は、従来の課題を解決するもので、流路を有する円盤プレートと情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートを貼りあわせるための構造、工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来の課題を解決するために、本発明の検査ディスクは、円盤プレートを張り合わせて成る検査ディスクであって、表面に流路を形成するための凹部を有する円盤プレート上に当該円盤プレートの凹部周辺にカーボンブラックを塗布し、前記凹部を有する円盤プレートを覆う中間円盤プレートを該カーボンブラック塗布部にレーザビームを照射して溶着された第1の円盤プレートと、情報記録層を有する円盤プレートの第2の円盤プレートからなり、前記第2の円盤プレートの情報記録層側に遅延性の紫外線硬化性接着剤を塗布し、所定の時間内に前記第1の円盤プレートの前記中間円盤プレート上に前記第2の円盤プレートを紫外線硬化性接着剤により貼り合せて積層して構成することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディスク構造、接合工法によって、血液や体液から人の健康状態を検査をする目的のディスクの内部に仕込まれる試薬、酵素に対して悪影響を及ぼさず、また、情報記録層(金属薄膜層)の保護、流路断面積を高精度に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
血液、体液やそれらを分離、結合させたものから人の健康状態を検査する目的のディスクは、従来の課題を解決するために、流路を有する円盤プレートと情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートとで構成されての2層構造から中間円盤プレートを間に入れる3層構造である。
【0018】
流路を有する円盤プレートと情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートを直接貼り合せ、すなわち接合させるのではなく、まず、中間円盤プレートを用意し、流路を有する円盤プレートの流路面とをレーザービーム溶着で接合し、このことで発ガスを防ぎ、血液や体液などの検体や流路内部に仕込まれている薬品や酵素への影響を無くする。このようにして流路を有する円盤プレートと中間円盤プレートをレーザビーム溶着で接合させものを、以降、半完成品ディスクと呼ぶ。
【0019】
次にこの半完成品ディスクの中間円盤プレートの面と情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの情報記録層(金属薄膜層)の面を貼り付ける。この接合は、情報記録層(金属薄膜層)へのダメージを防ぐために、メタルメッシュなどによる物理的な結合やレーザービーム溶着などの工法は使わない。ホットメルトでも良いのであるが、厚みのバラツキを少しでも無くするために、使い勝手の良い紫外線硬化性の接着剤を用いる。
【0020】
この紫外線硬化性の接着剤の使用であるが、半完成ディスクと情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートを重ねた状態での紫外線の照射は不可である。何故ならば、半完成ディスクの一部である流路を有する円盤プレート内に仕込まれている薬品や酵素に対して紫外線が悪影響を与えたり、性質の変化を引き起こしたりするからである。従って、遅延硬化性の紫外線硬化性の接着剤を、先ず情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの情報記録層(金属薄膜層)側の面に塗っておき、この情報記録層(金属薄膜層)円盤プレートだけに紫外線を必要なだけ照射する。
【0021】
その照射後、情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの接着剤面と半完成ディスクの中間円盤プレート面を接合する。このことで、情報記録層(金属薄膜層)を物理的な破壊から守り、流路内の試薬や酵素も紫外線からの影響を防ぐ。
【0022】
以下に本発明の検査ディスクの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1、図2は、流路を有する円盤プレートと情報記録層を有する円盤プレートを示すものである。
【0024】
図1、図2において、血液、体液やそれらを分離、結合させたものから人の健康状態の検査をする目的のディスクは、基本構成として、血液、体液やそれらを分離、結合させたものを流し、またそれらと反応させる薬品や酵素を予め仕込んでおくための流路1を片面に有する光透過性(レーザービーム非吸収性)ポリカーボネ−トまたはアクリル樹脂性などのプラスチック性材料で作られた円盤プレート3と、血液や体液などを分離、結合させるため遠心力や毛細管現象を利用するためのディスク回転数、回転速度、回転時間、停止時間など、必要な基本データを記録する情報記録層(金属薄膜層)5を片面に有する同じく光透過性(レーザービーム非吸収性)のポリカーボネ−トまたはアクリル樹脂性などのプラスチック性で作られた円盤プレート4とで構成されている。
【0025】
ともに図1と図2に示すようにCDやDVDなどの一般的な光ディスクと同じく円盤内部に円形の穴があるドーナツ形状である。この2種類のドーナツ型円盤プレートは外形寸法や内周の穴である円の寸法も同一である。
【0026】
図3は、図1と図2で示す2種類のプレートを接合させた時の概念図である。2枚の円盤プレーとを貼り合せて1枚のディスクにさせることになり、図3において接合部6の工法及びその構成が重要となる。図3に示すように、流路1を形成するための凹部を有する円盤プレート3の流路側の面と、もう一方の情報記録層(金属薄膜層)5を有する円盤プレート4の情報記録層である金属薄膜層の面をお互い向き合うようにし、接合させる。図3はあくまでも貼り合わせ面を示した概念図であり、その2枚の円盤プレートを貼り合わせる工程、すなわち接合させる工程は、次のように行う。
【0027】
図3に示すように流路1を有する円盤プレート3と情報記録層(金属薄膜層)5を有する円盤プレート4を直接貼り合せるのではなく、流路を有する円盤プレート及び情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートと外寸の直径寸法、そして内部にある穴も同一寸法で、両面ともに平滑なドーナツ型の円盤プレートを用意し、図6に示す流路を有する円盤プレート3の流路1の面と情報記録層(金属薄膜層)5を有する円盤プレート4の情報記録層である金属薄膜層5の面でその中間円盤プレート10を挟む形で配置し、それぞれを接合する。次に、その接合手順を説明する。
【0028】
図6において、中間円盤プレート10の材質は、流路を有する円盤プレート3及び情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4と同様に光透過性(レーザビーム非吸収性)ポリカーボネートまたはアクリル樹脂などのプラスチック性の材料を選ぶ。中でも価格や加工の面で最も適しているのはポリカーボネートである。中間円盤プレート10の厚さは0.数mm〜数mm程度で良いが、あまりに薄いと取扱いが難しいし、接合を行う場合、ある程度の剛性は必要である。また、最終検査では検査用のレーザービームを血液、体液やそれらを分離、結合させたものと薬品や酵素と反応させた被検査物に照射し、ディスクを挟んでレーザービーム光源とは逆の位置に配置されているセンサ、いわゆるフォトデテクタにて色を検出し、その光スペクトルにて検査結果を判断する。そのため、検査用レーザビームをディスクに照射する時に、流路を有する円盤プレート3と情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の両方を透過させる必要があり、中間円盤プレート10の厚みがあまりに厚いと、レーザビーム非吸収性(透過性)とは言え、レーザービームの減衰が懸念されるので、ポリカーボネートで約0.5mm程度とする。中間円盤プレートの製作は、通常の金型による射出成形で良く、CDやDVDなどの一般的な光ディスクと同等の寸法精度で良い。
【0029】
最初に、図5に示すように、流路を有する円盤プレート3と中間円盤プレート10を貼り合わせる。中間円盤プレート10に貼り合わせる流路を有する円盤プレート3の貼付け面は、流路1がある側である。この時の中間円盤プレート10の貼り合わせる面は裏表どちら側でも良い。流路を有する円盤プレート3の流路面と中間円盤プレート7を貼り合わせは、すなわち接合する方法はレーザービーム11、12を用いて溶着する。しかし、図5に示す流路を有する円盤プレート3も中間円盤プレート10もレーザービーム非吸収性(透過性)であるために、どちらのプレートからレーザービーム11、12を当ててもレーザビームは透過してしまうために、お互いを溶着にて接合することが出来ない。そのため、レーザビーム吸収性を持たせるため、レーザビーム吸収剤の役目を果たすレーザビーム吸収剤9をスクリーン印刷法等で図4に示す領域7に塗布をする。
このレーザビーム吸収剤は様々なものがあるが安価で手に入りやすいカーボンブラックを使う。ここでいうカーボンブラックとは炭素を含む化合物を不完全燃焼させる時に得られる一般的な黒色顔料である。カーボンブラックは、一般にすべての光を吸収する物質として知られている。
【0030】
その塗布は、図4に示す流路以外の部分2全体にも行っても良いが、重要なのは流路であり、流路からの滲みや漏れが無いことを目的としており、全体に行う必要は無い。またスピンコータで全体塗布を行うとカーボンブラックが流路1に入り込んでしまうため必要な部分7にスクリーン印刷工法で行う。
【0031】
カーボンブラックはオリエント化学工業のレーザー透過用のLTWシリーズを用い、トルエンなどの溶剤で10〜20倍に希釈をして、塗布できる様に液状にして使用する。図5において、その塗布するカーボンブラック7の厚みは50μ〜100μとする。幅は1mm〜数mm程度とする。この塗布を中間円盤プレート10のほうにカーボンブラックをスクリーン印刷工法にて、施すことは可能ではあるが、工程上の余分な位置決め作業を省くために、カーボンブラック9の塗布は流路を有する円盤プレート3の流路1の面に施すようにする。
【0032】
流路を有する円盤プレート3にカーボンブラック9を塗布した後、中間円盤プレート10と流路を有する円盤プレート3の流路面の側をきちんと重ね合わせ動かないように治具、治工具で固定をする。その上で、流路のエッジのカーボンブラック9を塗布した部分7(図4参照)に沿ってレーザービーム11,12で溶着を行なう。その溶着に用いるレーザービームの種類には、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザービーム[波長:1064nm]や半導体レーザービーム[808、840、940nm]などがあるが、ビーム品質(熱源)、コストの点でこの溶着には、半導体レーザービームを使用する。流路の部分は滲み、漏れが無い様に図5に示すレーザービーム11、12で流路の端に沿って確実に溶着させていく。中間円盤プレート10側から照射するレーザビーム12と流路を有する円盤プレート3側から照射するレーザービーム11を示しているが両方から照射する必要は無く、どちらかからでも良いが、流路を有する円盤プレート3側から照射するほうが狙いを定めやすい。
【0033】
レーザービーム11,12が半導体レーザを用いる場合は出力は10〜30Wで良い、約15Wの場合スキャン速度は約10mm/秒、レーザービームのスポットはデフォーカスして約5mmで行う。この条件は、流路を有する円盤プレート3、中間円盤プレート7ともに0.6mmで、塗布するカーボンブラック9は約50μの場合である。レーザビーム11,12のパワーやレーザビームが流路1の端に塗布したカーボンブラック9をなぞるように進むスキャン速度は、流路を有する円盤プレート3の厚み、中間円盤プレート10の厚み、そして図5で溶着部分13とレーザビーム光源との距離などに依存するため、いくつかの試作で最適なレーザビームのパワーや送り速度を決定するが、少なくとも固定治具でレーザビーム光源と溶着部分13は一定の距離で行うようにする。レーザビームによる溶着がなされているかの確認は目視で行うことが出来る。具体的には、溶着によりお互いのプレート及び液状にしたカーボンブラックのギャップがなくなるため透過率が上がり、そこの部分の透明度が上がり、目視で確認することが出来る。
【0034】
図5で示す流路1の断面積の保持、流路からの漏れ、滲みを無くすることが重要であり、先に述べた流路の端に沿ったレーザービーム11,12による溶着が最重要であり、基本的には、このレーザービーム溶着だけで流路を有する円盤プレート3と中間円盤プレート10の接合は完了である。
【0035】
但し、中間円盤プレート10と流路を有する円盤プレート3はカーボンブラック9で接合した、すなわち図4に示すシルク印刷でカーボンブラックを塗布した部分7の部分だけで接合がなされており、ディスクの種類、すなわち検査用途によって、流路の大きさ、載っている流路数など固有である。従って、ディスクによっては、流路そのものが円盤面積に対して非常に小さなものであったり、ある領域だけに片寄っている場合は、円盤面積に対して、極わずかな接合面積となる。
【0036】
その場合、図4に示すで流路以外の部分2が、全く接合されていないため、流路を有する円盤プレート3と中間円盤プレート10の間の部分が、浮いてしまい中途半端な状態になることがある。その場合、回転時にその影響でフラッタが起こることもあれば、何よりも見栄えが悪くなる。最悪の場合は、その浮いた部分から回転時の風の影響で図5に示すレーザ溶着した部分13が剥離したり、その部分でどちらかのプレートが変形することも考えられる。
【0037】
その状態を避ける場合は、レーザビーム溶着を行った図4に示す溶着部分7の外側の部分2も接着剤などで接合をする。図4で流路以外の部分2を接合させる場合は、カーボンブラックの塗布と同じくスクリーン印刷にて流路を有する円盤プレート3の流路面に接着剤を塗布する。中間円盤プレートへの塗布でない理由は、カーボンブラックの塗布と同じく、図5で説明したように中間円盤プレート10に塗布すると位置決めが煩雑になるからである。流路1の部分にはみ出さないように、接着剤の量に注意をする。
【0038】
但し、通常は全面に行う必要は無く、図4に示す外周、内周8にだけ沿って接着による接合を行うのが効率的である。また、この外周、内周だけの塗布であると、流路を有する円盤プレートに接着剤の塗布を行う必要は無く、中間円盤プレート10に塗布を行っても煩雑な位置決めを行う必要はない。
【0039】
流路以外の部分2へのスクリーン印刷による接着剤の塗布の場合も、円盤プレートの外周、内周だけへの塗布8の場合も、接着剤の塗布とカーボンブラック9の塗布の順番はどちらからでも良い。
【0040】
次に、図6において、図5に示す流路を有する円盤プレート3と中間円盤プレート10をレーザビーム溶着して接合した半完成品のディスクの中間円盤プレート10上に情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の情報記録層(金属薄膜層)5の面側を貼り合せる。ここでの貼り合わせ、すなわち結合はレーザビーム溶着やメタルメッシュなどを使用する物理的な結合工法などを使用し、情報記録層である金属薄膜層3への物理的なダメージとなる工法は使用しない。情報記録層(金属薄膜層)は、動作時に、検査ディスクを遠心力、毛細管現象を得るためディスクを回転させたり、停止させたりするための回転数、回転速度、回転時間や停止時間などの必要なデータが記録されている。
【0041】
この貼り合せは、先ず、図6で情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の情報記録層(金属薄膜層)5側に塗布にスピンコータなどを利用して一様に紫外線硬化性の接着剤14を塗布する。但し、通常は図7の様に紫外線硬化性の接着剤は塗布した後、貼り合わせるものをお互いに密着した状態で紫外線を照射するが、ここで使用する紫外線硬化性の接着剤は、通常の紫外線硬化性の接着剤ではなく、遅延硬化性のものを用いる。通常の紫外線硬化性の接着剤は紫外線の照射と同時に硬化が始めるが、遅延硬化性紫外線接着剤とは紫外線を照射してもすぐには硬化せず、遅れて硬化を始める性質があり、これを使用する。
【0042】
通常の紫外線硬化性の接着剤を用いる場合は図6で情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の情報記録層(金属薄膜層)5の側に紫外線硬化性の接着剤を塗布し、流路を有する円盤プレート3と中間プレートを先の工程で接合した半完成ディスクの中間円盤と情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート3を密着した状態で、通常の紫外線硬化性の接着剤を用いて、紫外線を当てる手順であるが、そうしてしまうと、流路1内に仕込んでいる薬品や酵素に影響を与えてしまう。これらの薬品や酵素には紫外線によって変質する性質を持つ物があるからである。
【0043】
そのため、先に述べた図6で遅延性の紫外線硬化性接着剤14を用いて情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の情報記録層(金属薄膜層)の面にスピンコータで全面塗布し、その情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4の情報記録層(金属薄膜層)5に向けて紫外線15を照射する。この時に流路を有する円盤プレートと中間円盤プレートで作られた半完成品ディスクには紫外線が当たらないようにする。所定の照射を終了した後、硬化開始は3分以内に始まるので、なるべく早く、情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの接着剤を塗布した情報記録層(金属薄膜層)5の面と半完成品ディスクの中間円盤プレート10の面を密着させて硬化を待つ。
【0044】
ここの工程では遅延硬化性の紫外線硬化性の接着剤14は、カチオン重合系樹脂を主成分とするものである。接着層の厚みは、5μm〜10μmが好ましい。このカチオン重合系樹脂を主成分とする遅延硬化性の紫外線硬化型接着剤であるが、図6で情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート4へは、粘度の低い、例えば、(株)スリーボンド製「ThreeBond 3115B」(粘度300mPa・s)を用い、塗布方法としては、膜厚コントロールのしやすいスピンコート法などで塗布する。
【0045】
波長が200〜400nmの紫外線を紫外線照射機にて積算光量が400〜600mJ/cm2になるように照射することで、紫外線照射後から接着剤硬化開始までの時間は1分〜3分程度になる。最後に図6の最下段のように貼り合わせ硬化を待ち、ディスクの完成させる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
人の健康状態を調べるため、血液、細胞を採取し、それらを検査する方法がある。それらの検体に対しての検査方法は、さまざまな検査方法があるが、一般的に検査技師が器具、設備を使って行なう。そのため、規模の大きな病院では器具、装置を備え、内部でそれらの検査を行なえるが、中小の病院では検査を外部へ委託することがある。この場合、検体の運送に時間を取られ、また、その運送コストも最終的には患者負担となる。従って、それらの検査を簡単な装置で実現することは病院の利便性だけではなく、患者へのサービス向上、迅速な治療を実現することになる。加えて病院もサービス業であり、迅速な結果の
患者へのフィードバックも病院の競争力にも繋がるはずである。
【0047】
そういうニーズの中で、その検査装置への検体の供給を流路を有するディスクで行なう技術が注目されて来ている。そのディスクに検体となる血液、体液を充填し、装置がディスクを回転させ、それによる遠心力や、装置から円盤プレート内への加圧、減圧を施すことによる検体の流れの制御、またディスクそのものの流路の毛細管現象を利用し、分離や結合をさせ、最終的に検査に必要な状態に検体を導いた後に、所定の検査を目視、光学的、電気的、物理的そして化学的に行なわせる。
【0048】
本発明に係るディスク構造により、より安定な検査精度を得ることが出来、結果その検査を必要としている人や動物、またその検査を行なう側にもより正確な検査結果をより迅速に提供することが出来、医療分野に対して多大な貢献をすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例1における検査ディスクの流路を有する円盤プレートの平面図と断面図
【図2】本発明の実施例1における検査ディスクのもう一方の情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレートの平面図と断面図
【図3】本発明の実施例1における検査ディスクの円盤プレートを貼り合わせた状態を示す断面図
【図4】本発明の実施例1における検査ディスクの流路を有する円盤プレートの流路に沿ってカーボンブラックを塗布する箇所と接着剤を塗布する箇所を示す図
【図5】本発明の実施例1における検査ディスクの流路を有する円盤プレートと中間円盤プレートとの接着を説明するための図
【図6】本発明の実施例1における検査ディスクの円盤プレートの接合を説明するための図
【図7】DVD、CDなどの光ディスクの接着工法を説明するための図
【図8】従来の接着工法を説明するための図(紫外線硬化性接着剤:全面塗布)
【図9】従来の他の接着工法を説明するための図(紫外線硬化性接着剤:シルク印刷)
【図10】従来の更に他の接着工法を説明するための図(レーザービーム溶着)
【符号の説明】
【0050】
1 流路
2 流路以外の部分
3 流路を有する円盤プレート
4 情報記録層(金属薄膜層)を有する円盤プレート
5 情報記録層(金属薄膜層)
6 接合面
7 レーザービーム吸収剤を塗る領域
8 接着剤を塗る領域
9 レーザービーム吸収剤
10 光透過性樹脂の中間円盤プレート
11 溶着させるためのレーザービーム1
12 溶着させるためのレーザービーム2
13 溶着部分
14 遅延性の紫外線硬化性の接着剤
15 紫外線ランプから照射する紫外線
16 情報記録層(金属薄膜層)を保護する円盤プレート
17 紫外線硬化性の接着剤
18 流路に接着剤が被り発ガスする部分
19 接着剤のはみ出しで発ガスがある部分
20 接着剤の不足で漏れ、滲みがある部分
21 熱によって破壊された情報記録層(金属薄膜層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤プレートを張り合わせて成る検査ディスクであって、
表面に流路を形成するための凹部を有する円盤プレート上に当該円盤プレートの凹部周辺にカーボンブラックを塗布し、前記凹部を有する円盤プレートを覆う中間円盤プレートを該カーボンブラック塗布部にレーザビームを照射して溶着された第1の円盤プレートと、
情報記録層を有する円盤プレートの第2の円盤プレートからなり、
前記第2の円盤プレートの情報記録層側に遅延性の紫外線硬化性接着剤を塗布し、所定の時間内に前記第1の円盤プレートの前記中間円盤プレート上に前記第2の円盤プレートを紫外線硬化性接着剤により貼り合せて積層して構成することを特徴とする検査ディスク。
【請求項2】
前記凹部を有する円盤プレートと中間円盤プレートはレーザビーム非吸収性であることを特徴とする請求項1に記載の検査ディスク。
【請求項3】
前記レーザビームは、前記円盤プレートに塗布されるカーボンブラックに前記中間円盤プレート側から照射することを特徴とする請求項2に記載の検査ディスク。
【請求項4】
前記円盤プレートに塗布されるカーボンブラックは、スクリーン印刷にて塗布されることを特徴とする請求項1に記載の検査ディスク。
【請求項5】
前記中間円盤プレートは、光透過性のポリカーボネート又はアクリル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の検査ディスク。
【請求項6】
前記情報記録層には、動作時のディスク回転数、回転時間及び停止時間が記録されていることを特徴とする請求項1に記載の検査ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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