説明

検査周期管理装置、管理周期管理装置、及びプログラム

【課題】適正な検査周期又は管理周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができるようにする。
【解決手段】入力部12から、設備を検査する検査の種類、検査の範囲、及び検査の結果得られた劣化度を示す情報が入力される。テーブル記憶部20に、設備に対する検査有効指数及び劣化度に応じて、設備に対する検査周期の算出方法を定めた検査周期テーブルを記憶する。検査有効指数算出部18によって、入力部12から入力された検査の種類及び検査の範囲に基づいて、検査有効指数を算出し、検査周期算出部24によって、算出された検査有効指数と検査周期テーブルとに基づいて、算出された検査有効指数と入力部12から入力された劣化度とに対応する検査周期の算出方法を取得し、限界検査周期を算出する。そして、次回検査期限算出部24によって、限界検査周期に基づいて、次回検査期限を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査周期管理装置、管理周期管理装置、及びプログラムに係り、特に、機器を検査する検査周期を管理する検査周期管理装置及びプログラム、及び機器を管理する周期を管理する管理周期管理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学及び石油精製等における装置産業では、多くの設備を所有し、維持及び管理を行っている。これらの設備の経済性を考慮しつつ、万全の安全を確保する為に、各企業の設備管理部門は、設備の劣化及び損傷に対し、適切な検査プログラムや検査周期を決定している。例えば、プラントや系統機器の経年劣化や性能低下の長期傾向を把握し、プラント寿命に亘る保全計画を立案して提示するプラントのライフサイクル保全計画立案システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、国内において、設備を設置してから、30年近くを経過するプラントが多くなってきている。設計当初、設備寿命は30年と言われながら、今なお使い続けようとしている設備は多くある。また、生産拠点を海外へ移転する動きが活発化していく中で、国内設備に対しより一層の安全及び安定と低コストとが望まれている。
【0004】
設備は、設計当初である初期故障期間には故障が多く、その後の偶発故障期間では故障率は低く一定するが、ある程度期間が経過した磨耗故障期間には、再び故障率が多くなる。初期故障期間では、「保全性設計」、「信頼性設計」、「ライフサイクル設計」といった事が重要なテーマとなる。偶発故障期間では、時間ベースの設備管理がテーマとなり、「重要度分類」、「非破壊検査」、「モニタリング」といった手法がとられる。しかし、現在多くの国内設備は、磨耗故障期間に入っており、疲労、SCC、クリープ損傷、外面腐食などの経年劣化現象により、劣化損傷の顕在化が増加し、その形態も複雑化している。
【特許文献1】特開2004−170225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来型のTBM(Time Based Maintenance)や、CBM(Condition Based Maintenance)、RCM(Reliability Centered Maintenance)は、化学及び石油精製等のプラントのように安全及び安定に長期間の連続稼動を要求する設備に対し、その設備の損傷状態及び環境を反映して設備の検査時期を設定することについて、十分な要求を満たしていないため、適正な検査周期を求めることができず、保全コストの適正配分を行なうことができなかった、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、適正な検査周期又は管理周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる検査周期管理装置、管理周期管理装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る検査周期管理装置は、機器を検査する検査の種類、該検査の範囲、及び該検査の結果得られた劣化度を示す情報を入力するための入力手段と、前記機器に対する前記検査の有効性を表わす有効指数及び前記劣化度に応じて、機器に対する検査周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段と、前記入力手段から入力された前記検査の種類及び前記検査の範囲に基づいて、前記有効指数を算出する第1の算出手段と、前記テーブルに基づいて、前記算出された前記有効指数と前記入力手段から入力された前記劣化度とに対応する検査周期を算出する第2の算出手段とを含んで構成されている。
【0008】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、機器を検査する検査の種類、該検査の範囲、及び該検査の結果得られた劣化度を示す情報を入力するための入力手段、前記機器に対する前記検査の有効性を表わす有効指数及び前記劣化度に応じて、機器に対する検査周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段、前記入力手段から入力された前記検査の種類及び前記検査の範囲に基づいて、前記有効指数を算出する第1の算出手段、及び前記テーブルに基づいて、前記算出された前記有効指数と前記入力手段から入力された前記劣化度とに対応する検査周期を算出する第2の算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0009】
第1の発明及び第2の発明によれば、入力手段によって、機器を検査する検査の種類、該検査の範囲、及び該検査の結果得られた劣化度を示す情報が入力される。また、記憶手段に、機器に対する検査の有効性を表わす有効指数及び劣化度に応じて、機器に対する検査周期を定めたテーブルを記憶する。
【0010】
そして、第1の算出手段によって、入力手段から入力された検査の種類及び検査の範囲に基づいて、有効指数を算出し、第2の算出手段によって、テーブルに基づいて、算出された有効指数と入力手段から入力された劣化度とに対応する検査周期を算出する。
【0011】
このように、機器に対する検査の有効性と検査の結果得られた劣化度とに応じた検査周期を算出することにより、適正な検査周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる。
【0012】
上記の検査の種類が、機器を構成する容器壁面の内面の目視による検査、容器壁面の肉厚を測定する測定器による検査、容器壁面の外面の目視による検査、容器壁面に対する探傷検査、及び容器壁面のサンプリングによる劣化検査の少なくとも一つを含むことができる。
【0013】
上記の第1の算出手段は、入力手段から前記検査の結果得られる劣化度を示す情報が、複数の劣化因子について入力された場合に、劣化度が最も高い劣化因子に対する検査有効性を表わす有効指数を算出し、第2の算出手段は、算出された有効指数と入力手段から入力された劣化度が最も高い劣化因子の劣化度とに対応する検査周期を算出することができる。これによって、劣化度が最も高い劣化因子に対する検査有効性と劣化度とに応じて、検査周期を算出することができるため、より適正な検査周期を求めることができる。
【0014】
第3の発明に係る管理周期管理装置は、機器を管理した管理履歴を示す情報を入力するための入力手段と、前記機器に対する前記管理の密度を表わす管理密度及び劣化潜在度に応じて、前記機器に対する管理周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段と、前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報から得られる管理の回数及び時期に基づいて、前記管理密度を算出する第1の算出手段と、前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報に基づいて、前記劣化潜在度を算出する第2の算出手段と、前記テーブルに基づいて、前記算出された前記管理密度と前記算出された前記劣化潜在度とに対応する管理周期を算出する第3の算出手段とを含んで構成されている。
【0015】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、機器を管理した管理履歴を示す情報を入力するための入力手段、前記機器に対する前記管理の密度を表わす管理密度及び劣化潜在度に応じて、前記機器に対する管理周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段、前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報から得られる管理の回数及び時期に基づいて、前記管理密度を算出する第1の算出手段、前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報に基づいて、前記劣化潜在度を算出する第2の算出手段、及び前記テーブルに基づいて、前記算出された前記管理密度と前記算出された前記劣化潜在度とに対応する管理周期を算出する第3の算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0016】
第3の発明及び第4の発明によれば、入力手段によって、機器を管理した管理履歴を示す情報が入力される。また、記憶手段に、機器に対する管理の密度を表わす管理密度及び劣化潜在度に応じて、機器に対する管理周期を定めたテーブルが記憶される。
【0017】
そして、第1の算出手段によって、入力手段から入力された管理履歴を示す情報から得られる管理の回数及び時期に基づいて、管理密度を算出し、第2の算出手段によって、入力手段から入力された管理履歴を示す情報に基づいて、劣化潜在度を算出する。
【0018】
そして、第3の算出手段によって、テーブルに基づいて、算出された管理密度と算出された劣化潜在度とに対応する管理周期を算出する。
【0019】
このように、機器に対する管理の密度と機器の劣化潜在度とに応じた管理周期を算出することにより、適正な管理周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる。
【0020】
第3の発明に係る入力手段は、機器に対する処置の有無を含む管理履歴を示す情報を入力し、第2の算出手段は、入力手段から入力された管理履歴を示す情報の処置の有無に基づいて、劣化潜在度を算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の検査周期管理装置及びプログラムによれば、機器に対する検査の有効性と検査の結果得られた劣化度とに応じた検査周期を算出することにより、適正な検査周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる、という効果が得られる。
【0022】
本発明の管理周期管理装置及びプログラムによれば、機器に対する管理の密度と機器の劣化潜在度とに応じた管理周期を算出することにより、適正な管理周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、化学及び石油精製等における装置産業の機器としての圧力設備の検査周期を管理する検査周期管理装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0024】
第1の実施の形態に係る検査周期管理装置は、パーソナルコンピュータであり、パーソナルコンピュータは、CPU、データおよび各種命令にかかる演算情報を一時的に記憶するRAM、コンピュータの起動および基本的な動作を指示するためのプログラムを格納するROM、OS(オペレーティングシステム)およびアプリケーションソフトウェアを記憶するハードディスク等の外部記憶装置、及びこれらを接続するバス、並びにこれらを制御するチップセットから構成される。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係る検査周期管理装置10を、ハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、キーボードやマウスなどのポイントデバイスで構成され、かつ、検査の種類及び検査結果を示す情報を入力するための入力部12と、入力された検査の種類及び検査結果を示す情報を記憶する検査データ記憶部13と、検査データ記憶部13に記憶された検査結果に基づいて、想定される複数の劣化因子の各々について劣化度を算出する劣化度算出部14と、算出された劣化度に基づいて、劣化度が最も高い劣化因子を、検査対象の設備の寿命支配因子として決定する寿命因子決定部16と、検査データ記憶部13に記憶された検査の種類及び検査の内容に基づいて、寿命支配因子に対する検査の有効性を表わす検査有効指数を算出する検査有効指数算出部18と、検査有効指数及び劣化度に応じて、次回検査までの保障期間である限界検査周期の算出方法を定めた検査周期テーブルを記憶したテーブル記憶部20と、算出された検査有効指数、算出された寿命支配因子の劣化度、及び記憶された検査周期テーブルに基づいて、限界検査周期を算出する検査周期算出部22と、前回の検査年及び算出された限界検査周期に基づいて、次回の検査期限を算出する次回検査期限算出部24と、ディスプレイから構成され、かつ、検査の種類及び検査結果の入力画面や算出された次回検査期限を表示する表示部26とを備えている。
【0026】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。まず、API(アメリカ石油学会)に規定されるRBI(Risk Based Inspection)では、破損の起こりやすさが、以下の(1)式で定義されている。
破損の起こりやすさ=一般破損確率×機器修正係数の合計×管理評価係数 ・・・(1)
ここで、上記(1)式における機器修正係数の合計の内訳は、以下の表1に示すように、TMSF(テクニカルモジュールサブファクター)、機械的要因、一般要因、及びプロセス要因からなる。
【0027】
【表1】

【0028】
ここで、TMSFは、劣化速度と検査有効度とから算出されるものであり、上記の(1)式の中で圧倒的に高い点数を持っている。発明者らはこの事に注目し、検査活動(検査の精度と範囲及び頻度)により、リスク低減が可能となると考えた。
【0029】
そこで、本実施の形態では、過去の検査データに関する検査方法、検査範囲、及び検査周期を系統的に分析の上、使用環境や運転条件に起因する劣化損傷要因に応じた検査有効指数を評価し、検査有効指数と検査により得られた欠陥の劣化度とから、次回検査(対応)の保障期限である次回検査期限を算出することにした。
【0030】
次に、次回検査期限について以下に説明する。次回検査期限とは、次回の検査を、最大いつまでにしないといけないかの指標である。余寿命評価において実質的に管理すべき項目は、次回検査の時期である。次回検査期限は、現状の検査状況と設備状況とから最大どれくらいの期間まで、安全及び安定を保証しうるかを示した指標と位置づけられる。
【0031】
本実施の形態では、検査対象の設備の劣化度と検査有効指数とに基づき、最低いつまでに検査を行なわないといけないかを表わす指標として、次回検査期限を算出する。また、図2に示すように、次回検査期限を限界検査周期と考えると、限界検査周期を現状周期が上回る次回検査時期の設定は危険側であり、逆に限界検査周期を下回る次回検査時期の設定はオーバーメンテナンスであると言える。
【0032】
このように、各設備に対し、十分な検査が出来ているか、検査周期が適正であるかを評価する事によって、特に予期せぬ劣化の進展を、事前に検知する事が可能となり、また、次回検査時期を適正化していくことで、保全コストの適正配分が可能となると考えられる。
【0033】
次に、本実施の形態に係る検査周期管理装置10の構成について詳細に説明する。検査周期管理装置10では、入力部12から、オペレータによって、検査対象の設備に対する検査の種類及び検査結果を示す情報が入力される。本来RBIは、高度専門技術者によるエンジニアリングジャッジが必要である。しかし、膨大な数を有するプラント設備の管理において、毎年これらを実施するのは、物理的に難しい。そこで、本実施の形態では、検査会社等のアウトソーサーでも入力ができるよう、入力部12から、検査の種類((1)設備を構成する容器壁面の内面の目視による検査(内面目視)、(2)容器壁面の肉厚を測定する測定器による検査(肉厚測定)、(3)容器壁面の外面の目視による検査(外面目視)、(4)容器壁面に対する探傷検査(探傷検査)、(5)容器壁面の外食検査、(6)容器壁面のサンプリングによる劣化検査(サンプリングによる劣化検査)、(7)容器壁面のSUMPによる劣化検査、(8)容器壁面の硬さ測定による劣化検査)と、各検査の種類に対する検査の内容としての検査の詳細な種類、及び検査範囲と、各検査の種類に対する検査結果としての寿命予測の実施結果(実施有無を含む)、劣化度、劣化因子、及び処置を示す情報とが入力される。
【0034】
検査の詳細な種類としては、例えば、内面目視について、目視による検査や内視鏡による検査が入力され、肉厚検査については、面探傷や他の検査が入力される。また、検査範囲については、図3に示すように、0%、25%未満、25%以上、70%以上、及び90%以上の何れかが入力される。
【0035】
また、劣化度は、文献等で環境(温度/材質/等)から想定される複数の劣化因子(減肉、孔食、高温酸化、割れSCC、脆化、クリープ、水素侵食、窒化浸炭、外食など)毎に入力される。劣化度は、図4に示すように、例えば5段階で表わされる。劣化度「5」は、即時補修を要する顕在化した損傷があることを示し、劣化度「4」は、余寿命10年以内であること、または傾向監視を要する顕在化した損傷があることを示し、劣化度「3」は、現在は損傷がないが、過去に損傷の発生があるため、損傷の予兆があることを示す。また、劣化度「2」は、何らかの変化があって、材料、環境から損傷が発生する可能性があり、損傷の予兆があることを示し、劣化度「1」は、劣化が認められないことを示す。
【0036】
処置を示す情報としては、処置の有無として、「対策処置有り」、「同一材質等による現状回復」、「対策不完全」、及び「放置」の何れかが入力され、「対策処置有り」、「同一材質等による現状回復」、及び「対策不完全」については、更に、処置の内容として、「一部または全体更新」、「溶接補修または当て板補修」、「グラインダー除去」、「プラグ」、「洗浄」、及び「その他;塗装、ブラスト、拡管など」の何れかが入力される。
【0037】
検査データ記憶部13には、入力部12から入力された上記のような検査の種類、検査の内容、及び検査結果を示す検査データが記憶される。
【0038】
劣化度算出部14は、検査データ記憶部13に記憶された検査データの検査結果に基づいて、想定される劣化因子毎に、現状の劣化度を算出する。同じ劣化因子を検出した複数の検査の種類に関する検査データがある場合、例えば、劣化因子「減肉」に対して、「内面目視」の検査データと「肉厚測定」の検査データとがある場合、両者の検査データの劣化度を比較し、高い方の劣化度を現状の劣化度として算出する。また、損傷が顕在化している場合(劣化度が4、5の場合)、図5に示すように、処置の有無及び処置の内容に基づいて、処置後の劣化度を現状の劣化度として算出する。
【0039】
寿命因子決定部16は、算出された各劣化因子の劣化度を比較して、劣化度が最も高い劣化因子を、検査対象の機器の寿命支配因子として決定する。劣化度が最も高い劣化因子が複数存在する場合は、検査密度が低い方を優先して寿命支配因子として決定する。
【0040】
検査有効指数算出部18は、検査データ記憶部13に記憶された検査データの検査の種類及び検査の内容に基づいて、以下に説明するように、寿命支配因子に対する検査の有効性を表わす検査有効指数を算出する。
【0041】
まず、ある検査の種類が全ての劣化因子に対し有効であるとは限らないため、図6に示すような、各検査の種類の各劣化因子に対する有効性を示すマトリックスに基づいて、寿命支配因子に対して有効な検査の種類を選択する。なお、上記図6のマトリックスでは、「非常に有効」(図6の「◎」参照)、「有効」(図6の「○」参照)、「ある程度有効」(図6の「△」参照)、「有効でない」(図6の空欄参照)によって有効性が表わされている。
【0042】
そして、例えば、寿命支配因子である「減肉」に対して有効な検査の種類として、「内面目視」と「肉厚測定」とが選択された場合、有効な検査の種類の各々について、検査範囲及び検査の詳細な種類に基づいて、検査有効指数を算出する。検査有効指数は、検査の詳細な種類と検査範囲とに基づいて算出される。検査有効指数は、例えば6段階で表わされ、検査有効指数「5」は、非常に有効であることを示し、検査有効指数「4」は、かなり有効であることを示し、検査有効指数「3」は、ある程度有効であることを示している。また、検査有効指数「2」は、あまり有効でないことを示し、検査有効指数「1」は、有効でないことを示し、検査有効指数「0」は、検査なしであることを示している。検査有効指数が3以上であれば、検査が十分であることを示しており、検査有効指数が1又は2であれば、検査が不十分であることを示しており、検査有効指数が0であれば、検査されていないことを示している。
【0043】
複数の検査の種類について、検査有効指数が得られた場合には、複数の検査の種類に対する検査有効指数から、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。
【0044】
テーブル記憶部20には、図7に示すような、検査有効指数と劣化度とに応じた限界検査周期の算出方法のパターンを定めた検査周期テーブルが記憶されている。検査周期テーブルには、劣化度が5である場合(例えば、著しい損傷があり、早急な対応が必要な場合)に対応して、算出パターンIが定められており、劣化度が4である場合(例えば、損傷の程度が小さく、余寿命予測により対応を決定できる場合)に対応して、算出パターンIIが定められている。
【0045】
また、検査周期テーブルには、劣化度が2又は3であって、かつ、補修してから4年以内であり、補修以降の検査有効指数が2以下である場合に対応して、算出パターンIが定められており、劣化度が2又は3であって、かつ、補修してから4年以内であり、補修以降の検査有効指数が3以上である場合に対応して、算出パターンIIIが定められている。
【0046】
また、検査周期テーブルには、劣化度が2又は3であって、かつ、設置以来、検査有効指数が0である場合に対応して、算出パターンIが定められており、劣化度が2又は3であって、かつ、更新以来、過去の寿命実績以上の期間、検査有効指数が0である場合に対応して、算出パターンIVが定められている。
【0047】
また、検査周期テーブルには、劣化度が2又は3であって、かつ、更新以来、2年間以上の期間、検査有効指数が0である場合に対応して、算出パターンIが定められており、劣化度が2又は3であって、かつ、過去の検査有効指数が1であり、近年の検査有効指数が2以下である場合(例えば、過去、定点肉厚測定程度の検査はあるが、近年、検査不足である場合)に対応して、算出パターンIIIが定められている。
【0048】
また、検査周期テーブルには、劣化度が2又は3であって、かつ、検査有効指数1が継続している場合(例えば、定点肉厚測定のみを継続している場合)に対応して、算出パターンIIIが定められており、劣化度が2又は3であって、かつ、検査有効指数が1又は2である場合(例えば、劣化因子に対し検査しているが検査有効性不足である場合)に対応して、算出パターンIIIが定められている。
【0049】
また、検査周期テーブルには、劣化度が2又は3であって、かつ、過去の検査有効指数が3以上であり、近年の検査有効指数が2以下である場合(例えば、過去に十分な検査をしたが、近年検査不足である場合)に対応して、算出パターンIVが定められており、劣化度が2又は3であって、かつ、検査有効指数が3以上である場合(例えば、想定される劣化因子があるが、十分な検査で健全性を確認している場合)に対応して、算出パターンIVが定められている。
【0050】
また、検査周期テーブルには、劣化度が1であって、かつ、検査有効指数が1〜4の何れかである場合(期限内の検査実績がある場合)に対応して、算出パターンVが定められている。
【0051】
また、算出パターンIは、限界検査周期を0年(即時補修要)とする算出方法であり、算出パターンIIは、余寿命予測を実施していなければ、限界検査周期を0年(即時補修要)とし、余寿命予測をしていれば、予測された余寿命の1/2、現状周期、及び3年のうちの最小値を限界検査周期として算出する方法である。
【0052】
また、算出パターンIIIは、現状周期及び3年のうちの最小値を限界検査周期として算出する方法であり、算出パターンIVは、12年と、現状周期、健全な状態が維持されてきた期間、及び過去に健全な状態が維持された実績期間のうちの最大値との最小値を、限界検査期限として算出する方法である。また、算出パターンVは、限界検査周期を12年とする算出方法である。
【0053】
検査周期算出部22は、記憶された検査周期テーブルに基づいて、算出された寿命支配因子に対する検査有効指数、及び算出された寿命支配因子の劣化度に応じて定められた算出方法を取得して、取得した算出方法に従って、限界検査周期を算出する。
【0054】
次回検査期限算出部24は、算出された限界検査周期を用いて、以下の(2)式に従って、次回検査期限を算出する。
前回検査年 + 限界検査周期 = 次回検査期限 ・・・(2)
なお、上記の(2)式における前回検査年は、検査データ記憶部13に記憶された検査データに基づいて取得すればよい。
【0055】
次に、第1の実施の形態に係る検査周期管理装置10の作用について説明する。まず、オペレータが、表示部26によって表示された図8に示すような入力画面に対して、検査の種類、検査の内容(検査範囲及び検査の詳細な種類)、及び検査結果(寿命予測の結果、劣化度、劣化因子、処置の有無、及び処置の内容)を、実施された検査の種類毎に入力し、入力された検査データが、検査データ記憶部13に記憶される。
【0056】
そして、検査周期管理装置10において、図9に示す検査周期管理処理ルーチンが実行される。
【0057】
まず、ステップ100において、検査対象の設備の現状の劣化度を算出する処理が実行される。上記ステップ100は、図10に示す劣化度算出処理ルーチンによって実現される。
【0058】
ステップ120において、対象の劣化因子が検出された検査データを、検査データ記憶部13に記憶された前回の検査に関する検査データから取得し、ステップ122において、上記ステップ120で取得された検査データについて、処置を示す情報を取得する。
【0059】
そして、ステップ124において、上記ステップ120で取得された検査データのうち、劣化度が「4」又は「5」である検査データが存在するか否かを判定する。劣化度が「4」又は「5」である検査データが存在しない場合には、ステップ128へ移行するが、一方、劣化度が「4」又は「5」である検査データが存在する場合には、ステップ126において、上記ステップ122で取得した処置を示す情報(処置の有無及び処置の内容)に基づいて、検査データの劣化度を、処置後の劣化度に修正して、ステップ128へ移行する。
【0060】
ステップ128では、上記ステップ120で複数の検査の種類の検査データが取得されたか否かを判定する。上記ステップ128で、1つの検査の種類の検査データのみが取得されたと判定された場合には、ステップ130において、1つの検査の種類の検査データの劣化度を、対象の劣化因子に対する劣化度として出力し、劣化度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ128で、複数の検査の種類の検査データが取得されたと判定された場合には、ステップ132において、複数の検査の種類のうち、劣化度の大きい方の検査の種類の検査データを選択して、選択された検査の種類の検査データの劣化度を、対象の劣化因子に対する劣化度として出力し、劣化度算出処理ルーチンを終了する。
【0061】
上記の劣化度算出処理ルーチンを、各劣化因子について実行し、各劣化因子について現状の劣化度を算出する。
【0062】
そして、検査周期管理処理ルーチンのステップ102において、上記ステップ100で算出された各劣化因子の劣化度を比較して、最も高い劣化度の劣化因子を、寿命支配因子として決定する。なお、最も高い劣化度の劣化因子が複数存在する場合には、検査データ記憶部13に記憶された検査データに基づいて、最も高い劣化度の劣化因子の各々について、劣化因子に有効な検査の検査密度を算出し、有効な検査の検査密度が低い劣化因子、寿命支配因子として決定すればよい。
【0063】
そして、ステップ104において、検査データ記憶部13に記憶された検査データから、上記ステップ102で決定された寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データを取得する。
【0064】
次のステップ106では、上記ステップ104で取得した寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データの検査範囲及び検査の詳細な種類に基づいて、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。なお、上記ステップ104で取得した寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データが複数ある場合には、各検査の種類に対する検査有効指数に基づいて、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。なお、上記ステップ106では、過去の各検査年度についても、検査有効指数を算出する。
【0065】
そして、ステップ108において、テーブル記憶部20に記憶された検査周期テーブルに基づいて、上記ステップ100で算出された劣化度のうちの寿命支配因子の劣化度と、上記ステップ106で算出した寿命支配因子に対する検査有効指数とに応じた限界検査周期の算出方法を取得する。
【0066】
次のステップ110では、上記ステップ108で取得した限界検査周期の算出方法に従って、限界検査周期を算出し、ステップ112において、前回の検査年と、上記ステップ110で算出された限界検査周期とに基づいて、上記(2)式に従って、次回検査期限を算出する。そして、ステップ114において、上記ステップ112で算出された次回検査期限を表示部26に表示させて、検査周期管理処理ルーチンを終了する。
【0067】
そして、オペレータは、表示部26に表示された次回検査期限を用いて、保全計画を策定する。
【0068】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る検査周期管理装置によれば、設備に対する検査の有効性と検査の結果得られた劣化度とに応じた検査周期を算出することにより、適正な検査周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる。
【0069】
また、劣化度が最も高い劣化因子に対する検査有効性と劣化度とに応じて、検査周期を算出することができるため、より適正な検査周期を求めることができる。
【0070】
また、検査の有効性について定量的に判断する事ができ、また、各年度の検査の有効性及び検査結果としての劣化度から、前回の検査結果が保証しうる期間を定義する事が出来る為、損傷トラブルに対するリスクを大幅に軽減することができる。
【0071】
また、従来保全担当者の定性的判断に頼っていた保全管理に対し、定量的な判断基準を導入して、保全管理を行なうことができる。また、限界検査周期の考え方により適正周期を設定していく事が可能であり、保全コストの適正配分が可能となる。
【0072】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
第2の実施の形態では、前回の検査より前の検査に関する検査有効指数も考慮して、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0074】
第2の実施の形態に係る検査周期管理装置では、検査データ記憶部13に、過去の各年度の検査データが記憶されており、また、前回より前の検査に関する検査データに基づいて、限界検査期限が予め算出され、前回より前の検査に関する検査データと共に限界検査期限が記憶されている。
【0075】
検査有効指数算出部18は、各年度の寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。また、各年度の寿命支配因子に対する検査有効指数が算出されると、過去に行なった検査が、評価対象年度において、有効と判断されるかを決定する。これは、例えば3年の周期をもって検査している設備(検査後3年間しか保証しない)に対し、3年を過ぎた時点で、その直近の検査の有効性は効力を無くすという考え方である。また、検査の有効性の高い検査を実施した場合、その有効期限内であれば、直近の検査の有効性が低くても、高い検査の有効性の効力が優先される。
【0076】
上記のように、各年度の寿命支配因子に対する検査有効指数に基づいて、現在効力を有する寿命支配因子に対する検査有効指数を、最終的な寿命支配因子に対する検査有効指数として算出する。
【0077】
第2の実施の形態に係る検査周期管理装置では、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する場合に、図11に示す検査有効指数算出処理ルーチンが実行される。
【0078】
まず、ステップ200において、検査データ記憶部13に記憶された検査データから、寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データを、各検査年度について取得する。
【0079】
次のステップ202では、各検査年度について、上記ステップ200で取得した寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データの検査範囲及び検査の詳細な種類に基づいて、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。なお、取得した寿命支配因子に有効な検査の種類の検査データが複数ある場合には、各検査の種類に対する検査有効指数に基づいて、寿命支配因子に対する検査有効指数を算出する。
【0080】
そして、ステップ204において、前回の検査年度より前の検査年度について、前回の検査における寿命支配因子に対する検査有効指数より、寿命支配因子に対する検査有効指数が高い検査年度があるか否かを判定する。
【0081】
上記ステップ204において、前回の検査における寿命支配因子に対する検査有効指数が最も高い場合には、ステップ212へ移行する。一方、前回の検査における寿命支配因子に対する検査有効指数より、寿命支配因子に対する検査有効指数が高い検査年度がある場合には、ステップ206において、当該年度を変数Zにセットする。
【0082】
そして、ステップ208において、検査データ記憶部13の検査データから、Z年度の検査に対して得られた限界検査周期を取得し、ステップ210において、現在の年度からZ年度を引いた値が、上記ステップ208で取得した限界検査周期より大きいか否かを判定する。
【0083】
上記ステップ210において、現在の年度からZ年度を引いた値が、Z年度の検査に対して得られた限界検査周期より大きい場合には、Z年度の検査の検査有効性の効力が消滅していると判断し、ステップ212において、前回の検査における寿命支配因子に対する検査有効指数を出力して、検査有効指数算出処理ルーチンを終了する。
【0084】
一方、上記ステップ210において、現在の年度からZ年度を引いた値が、Z年度の検査に対して得られた限界検査周期以下である場合には、Z年度の検査の検査有効性が有効であると判断し、ステップ214において、Z年度の検査における寿命支配因子に対する検査有効指数を、現状の寿命支配因子に対する検査有効指数として出力して、検査有効指数算出処理ルーチンを終了する。
【0085】
このように、前回以前の検査に関する有効性も考慮して、設備に対する検査の有効性を判断することができる。
【0086】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
第3の実施の形態では、消耗部品を交換しながら供用する動機器の管理周期を管理する管理周期管理装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0088】
図12に示すように、第3の実施の形態に係る管理周期管理装置310は、キーボードやマウスなどのポイントデバイスで構成され、かつ、管理内容及び管理結果を含む管理履歴を示す情報を入力するための入力部312と、入力された管理履歴を示す情報を記憶する管理データ記憶部313と、管理データ記憶部313に記憶された管理履歴に基づいて、管理対象の機器の複数の部位の各々について劣化潜在度を算出する劣化潜在度算出部314と、算出された劣化潜在度に基づいて、劣化潜在度が最も高い部位を、管理対象の機器の寿命支配部位として決定する寿命部位決定部316と、管理データ記憶部313に記憶された管理履歴に基づいて、寿命支配部位に対する管理密度を算出する管理密度算出部318と、管理密度及び劣化潜在度に応じて、次回管理までの保障期間である限界管理周期の算出方法を定めた管理周期テーブルを記憶したテーブル記憶部320と、算出された管理密度、算出された寿命支配部位の劣化潜在度、及び記憶された管理周期テーブルに基づいて、限界管理周期を算出する管理周期算出部322と、前回の管理年及び算出された限界管理周期に基づいて、次回の管理期限を算出する次回管理期限算出部324と、表示部26とを備えている。
【0089】
管理周期管理装置310では、入力部312から、オペレータによって、管理対象の機器に対する管理内容及び管理結果を含む管理履歴を示す情報が、実施された消耗品の交換などの管理毎に入力される。入力部312によって、管理の内容としての管理の種類、部位、及び管理範囲と、管理結果としての劣化度及び処置を示す情報とが入力される。
【0090】
管理データ記憶部313には、入力部312から入力された上記のような管理の内容及び管理結果を含む管理履歴を示す管理データが記憶される。
【0091】
劣化潜在度算出部314は、管理データ記憶部313に記憶された管理データの管理履歴から得られる処置の有無及び処置の内容に基づいて、機器の部位毎に、現状の劣化潜在度を算出する。
【0092】
劣化潜在度は、管理対象の機器の複数の部位(ケーシング、回転体、継手、軸受、シール、潤滑油、その他など)毎に算出される。
【0093】
劣化潜在度は、例えば4段階で表わされる。劣化潜在度「4」は、劣化が排除されていないことを示し、劣化潜在度「3」は、劣化が潜在している可能性が高く、損傷の再発を否定できないことを示し、劣化潜在度「2」は、劣化が潜在している可能性は低いが、損傷の再発を否定できないことを示し、劣化潜在度「1」は、劣化が認められないことを示す。
【0094】
寿命部位決定部316は、算出された各部位の劣化潜在度を比較して、劣化潜在度が最も高い部位を、管理対象の機器の寿命支配部位として決定する。
【0095】
管理密度算出部318は、管理データ記憶部313に記憶された管理データの管理履歴から得られる管理回数や管理期間に基づいて、以下に説明するように、寿命支配部位に対する管理密度を算出する。
【0096】
管理密度は、管理回数と管理期間とに基づいて算出される。管理密度は、例えば4段階で表わされ、管理密度「4」は、管理されていることを示し、管理密度「3」は、近年管理されていないことを示し、管理密度「2」は、管理周期が長いことを示し、管理密度「1」は、全く管理されていないことを示している。
【0097】
テーブル記憶部320には、管理密度と劣化潜在度とに応じた限界管理周期の算出方法のパターンを定めた管理周期テーブルが記憶されている。
【0098】
管理周期算出部322は、記憶された管理周期テーブルに基づいて、算出された寿命支配部位に対する管理密度、及び算出された寿命支配部位の劣化潜在度に応じて定められた算出方法を取得して、取得した算出方法に従って、限界管理周期を算出する。
【0099】
次回管理期限算出部324は、算出された限界管理周期を用いて、以下の(3)式に従って、次回管理期限を算出する。
前回管理年 + 限界管理周期 = 次回管理期限 ・・・(3)
なお、上記の(3)式における前回管理年は、管理データ記憶部313に記憶された管理データに基づいて取得すればよい。
【0100】
次に、第3の実施の形態に係る管理周期管理装置310の作用について説明する。まず、オペレータが、表示部26によって表示された入力画面に対して、管理の内容(管理の種類、部位、管理範囲)、及び管理結果(劣化度、処置の有無、及び処置の内容)を含む管理履歴を、実施された管理毎に入力し、入力された管理データが、管理データ記憶部313に記憶される。
【0101】
そして、管理周期管理装置310において、図13に示す管理周期管理処理ルーチンが実行される。
【0102】
まず、ステップ350において、管理対象の機器の劣化潜在度を算出する処理が実行される。上記ステップ350は、図14に示す劣化潜在度算出処理ルーチンによって実現される。
【0103】
ステップ370において、対象の部位に対する管理データを、管理データ記憶部313に記憶された検査データから取得し、ステップ372において、上記ステップ370で対象の部位に対する管理データが取得されたか否かを判定する。
【0104】
上記ステップ372で、管理データが取得されなかった場合には、対象の部位に対する管理履歴がないと判断して、ステップ374において、管理対象の機器が、使用開始から10年以上経過しているか否かを判定する。上記ステップ374で、使用開始から10年以上経過していると判定された場合には、全く管理されていないと判断し、ステップ376において、管理密度「1」を出力して、劣化潜在度算出処理ルーチンを終了する。
【0105】
上記ステップ374において、使用開始から10年以上経過していないと判定された場合には、ステップ378へ移行する。
【0106】
また、上記ステップ372において、管理データが取得された場合には、対象の部位に対する管理履歴があると判断し、ステップ378へ移行する。
【0107】
ステップ378では、上記ステップ370で取得された管理データに基づいて、対象の部位に対する管理回数をカウントし、ステップ380で、上記ステップ370で取得された管理データに基づいて、管理対象の機器の使用開始から前回の管理までの管理期間を算出する。
【0108】
次のステップ382では、上記ステップ380で算出された管理期間を、上記ステップ378でカウントされた管理回数で除算して、平均管理周期Tを算出する。そして、ステップ384で、上記ステップ382で算出された平均管理周期Tが予め定められた閾値より大きいか否かを判定する。なお、上記の閾値は、部位毎に定められており、例えば、ケーシング、回転体、及び継手に対して、閾値として12が定められ、軸受に対して、閾値として4が定められ、シールに対して、閾値2が定められ、潤滑油に対して、閾値1が定められている。
【0109】
上記ステップ384で、平均管理周期Tが閾値より大きい場合には、管理周期が長いと判断し、ステップ386で、管理密度「2」を出力して、劣化潜在度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ384で、平均管理周期Tが閾値以下である場合には、ステップ388で、平均管理周期Tが、現在の年度から前回の管理の年度を引いた値未満であるか否かを判定する。上記ステップ388で、平均管理周期Tが、現在の年度から前回の管理の年度を引いた値未満である場合には、近年管理されていないと判断し、ステップ390において、管理密度「3」を出力して、劣化潜在度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ388で、平均管理周期Tが、現在の年度から前回の管理の年度を引いた値以上である場合には、管理されていると判断し、ステップ392において、管理密度「4」を出力して、劣化潜在度算出処理ルーチンを終了する。
【0110】
上記の劣化潜在度算出処理ルーチンを、各部位について実行し、各部位について劣化潜在度を算出する。
【0111】
そして、管理周期管理処理ルーチンのステップ352において、上記ステップ350で算出された各部位の劣化潜在度を比較して、最も高い劣化潜在度の部位を、寿命支配部位として決定する。なお、最も高い劣化潜在度の部位が複数存在する場合には、管理データ記憶部313に記憶された管理データに基づいて、最も高い劣化潜在度の部位の各々について、部位に対する管理密度を算出し、管理密度が低い部位を、寿命支配部位として決定すればよい。
【0112】
そして、ステップ354において、上記ステップ352で決定された寿命支配部位に対する管理密度を算出する処理を行う。ここで、上記ステップ354は、図15に示す管理密度算出処理ルーチンによって実現される。
【0113】
まず、ステップ400において、管理データ記憶部313に記憶された管理データから、寿命支配部位に対する管理の管理データを取得する。そして、ステップ402で、上記ステップ400で取得した管理データのうちの前回の管理に関する管理データの劣化度に基づいて、寿命支配部位に劣化があったか否かを判定する。上記ステップ402で、劣化がなかったと判定された場合には、ステップ404で、上記ステップ400で取得した管理データのうちの2回前の管理に関する管理データに基づいて、2回前の管理において寿命支配部位に対する処置があったか否かを判定する。
【0114】
上記ステップ404で、2回前の管理で処置がなかった場合には、寿命支配部位に劣化がないと判断し、ステップ406において、劣化潜在度「1」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ404で、2回前の管理において処置があった場合には、ステップ408において、2回前の管理に関する管理データに基づいて、2回前の管理において寿命支配部位に対する改善処置があったか否かを判定する。
【0115】
上記ステップ408で、2回前の管理で改善処置がなかった場合には、再発を否定できないと判断し、ステップ418において、劣化潜在度「2」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ408で、2回前の管理で改善処置があり、現状回復が行なわれていた場合には、寿命支配部位に劣化がないと判断し、ステップ406において、劣化潜在度「1」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。
【0116】
また、上記ステップ402で、劣化があったと判定された場合には、ステップ410で、前回の管理に関する管理データに基づいて、前回の管理において寿命支配部位に対する処置があったか否かを判定する。上記ステップ410で、前回の管理で処置がなかった場合には、劣化が排除されていないと判断し、ステップ412において、劣化潜在度「4」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ410で、前回の管理で処置があった場合には、ステップ414で、2回前の管理に関する管理データに基づいて、2回前の管理において寿命支配部位に対する処置があったか否かを判定する。
【0117】
上記ステップ414で、2回前の管理において寿命支配部位に対する処置があった場合には、再発を否定できないと判断し、ステップ416において、劣化潜在度「3」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ414で、2回前の管理において寿命支配部位に対する処置がなかった場合には、再発を否定できないと判断し、ステップ418において、劣化潜在度「2」を出力して、管理密度算出処理ルーチンを終了する。
【0118】
そして、管理周期管理処理ルーチンのステップ356において、テーブル記憶部320に記憶された管理周期テーブルに基づいて、上記ステップ350で算出された劣化潜在度のうちの寿命支配部位の劣化潜在度と、上記ステップ354で算出した寿命支配部位に対する管理密度とに応じた限界管理周期の算出方法を取得する。
【0119】
次のステップ358では、上記ステップ356で取得した限界管理周期の算出方法に従って、限界管理周期を算出し、ステップ360において、前回の管理年と、上記ステップ358で算出された限界管理周期とに基づいて、上記(3)式に従って、次回管理期限を算出する。そして、ステップ362において、上記ステップ360で算出された次回管理期限を表示部26に表示させて、管理周期管理処理ルーチンを終了する。
【0120】
そして、オペレータは、表示部26に表示された次回管理期限を用いて、保全計画を策定する。
【0121】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る管理周期管理装置によれば、動機器に対する管理の密度と動機器の劣化潜在度とに応じた管理周期を算出することにより、適正な管理周期を求めることができ、保全コストの適正配分を行なうことができる。
【0122】
また、劣化潜在度が最も高い部位に対する管理密度と劣化潜在度とに応じて、管理周期を算出することができるため、より適正な管理周期を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る検査周期管理装置の構成を示す概略図である。
【図2】限界検査周期と現状周期との関係を説明するためのグラフである。
【図3】検査範囲を示すイメージ図である。
【図4】劣化度を説明するための図である。
【図5】処置の有無及び処置の内容と、処置後の劣化度との関係を示すマトリックスである。
【図6】検査の種類と劣化因子とに対応する有効性を示すマトリックスである。
【図7】検査有効指数と劣化度とに応じた限界検査周期の算出方法のパターンを定めた検査周期テーブルを示すイメージ図である。
【図8】検査の種類、検査の内容、及び検査結果を入力するための入力画面を示すイメージ図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る検査周期管理装置における検査周期管理処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る検査周期管理装置における劣化度算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る検査周期管理装置における検査有効指数算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る管理周期管理装置の構成を示す概略図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る管理周期管理装置における管理周期管理処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る管理周期管理装置における劣化潜在度算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る管理周期管理装置における管理密度算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
10 検査周期管理装置
12、312 入力部
13 検査データ記憶部
14 劣化度算出部
16 寿命因子決定部
18 検査有効指数算出部
20、320 テーブル記憶部
22 検査周期算出部
24 次回検査期限算出部
310 管理周期管理装置
313 管理データ記憶部
314 劣化潜在度算出部
316 寿命部位決定部
318 管理密度算出部
322 管理周期算出部
324 次回管理期限算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を検査する検査の種類、該検査の範囲、及び該検査の結果得られた劣化度を示す情報を入力するための入力手段と、
前記機器に対する前記検査の有効性を表わす有効指数及び前記劣化度に応じて、機器に対する検査周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段と、
前記入力手段から入力された前記検査の種類及び前記検査の範囲に基づいて、前記有効指数を算出する第1の算出手段と、
前記テーブルに基づいて、前記算出された前記有効指数と前記入力手段から入力された前記劣化度とに対応する検査周期を算出する第2の算出手段と、
を含む検査周期管理装置。
【請求項2】
前記検査の種類が、前記機器を構成する容器壁面の内面の目視による検査、前記容器壁面の肉厚を測定する測定器による検査、前記容器壁面の外面の目視による検査、前記容器壁面に対する探傷検査、及び前記容器壁面のサンプリングによる劣化検査の少なくとも一つを含む請求項1記載の検査周期管理装置。
【請求項3】
前記第1の算出手段は、前記入力手段から前記検査の結果得られる劣化度を示す情報が、複数の劣化因子について入力された場合に、前記劣化度が最も高い劣化因子に対する検査有効性を表わす有効指数を算出し、
前記第2の算出手段は、前記算出された前記有効指数と前記入力手段から入力された前記劣化度が最も高い劣化因子の劣化度とに対応する検査周期を算出する請求項1又は2記載の検査周期管理装置。
【請求項4】
機器を管理した管理履歴を示す情報を入力するための入力手段と、
前記機器に対する前記管理の密度を表わす管理密度及び劣化潜在度に応じて、前記機器に対する管理周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段と、
前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報から得られる管理の回数及び時期に基づいて、前記管理密度を算出する第1の算出手段と、
前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報に基づいて、前記劣化潜在度を算出する第2の算出手段と、
前記テーブルに基づいて、前記算出された前記管理密度と前記算出された前記劣化潜在度とに対応する管理周期を算出する第3の算出手段と、
を含む管理周期管理装置。
【請求項5】
前記入力手段は、前記機器に対する処置の有無を含む前記管理履歴を示す情報を入力し、
前記第2の算出手段は、前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報の処置の有無に基づいて、前記劣化潜在度を算出する請求項4記載の管理周期管理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
機器を検査する検査の種類、該検査の範囲、及び該検査の結果得られた劣化度を示す情報を入力するための入力手段、
前記機器に対する前記検査の有効性を表わす有効指数及び前記劣化度に応じて、機器に対する検査周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段、
前記入力手段から入力された前記検査の種類及び前記検査の範囲に基づいて、前記有効指数を算出する第1の算出手段、及び
前記テーブルに基づいて、前記算出された前記有効指数と前記入力手段から入力された前記劣化度とに対応する検査周期を算出する第2の算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
機器を管理した管理履歴を示す情報を入力するための入力手段、
前記機器に対する前記管理の密度を表わす管理密度及び劣化潜在度に応じて、前記機器に対する管理周期を定めたテーブルを記憶した記憶手段、
前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報から得られる管理の回数及び時期に基づいて、前記管理密度を算出する第1の算出手段、
前記入力手段から入力された前記管理履歴を示す情報に基づいて、前記劣化潜在度を算出する第2の算出手段、及び
前記テーブルに基づいて、前記算出された前記管理密度と前記算出された前記劣化潜在度とに対応する管理周期を算出する第3の算出手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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