説明

検査対象受体

【課題】流路の毛管現象による液体の意図しない流出を防止できる検査対象受体を実現すること。
【解決手段】検査対象受体1の板部材2には、所定深さの凹部からなる第一液溜部5、当該第一液溜部5から流出する検査対象の液体を所定量量り取る計量部4、第一液溜部5から計量部4に向けて液体を流す第一流路7が設けられている。また、板部材2には、計量部4で量り取った液体が流入する受け部17、計量部4から受け部17へ液体を流す第二流路20、第一液溜部5から第一流路7を介して流れ出し、計量部4で量り取った残りの液体が流れる第三流路30、第三流路30の先に設けられた余剰部10が設けられている。また、第二流路20には、断面積拡大部分24が設けられ、第三流路30には、断面積拡大部分34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象受体に関し、例えば、化学的、医学的、生物学的な検査を行うための検査対象受体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学的、医学的、生物学的な検査の分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルス、細胞などの生体物質、及び化学物質等を検知、定量する場合に使用するマイクロチップ又は検査チップと呼ばれる検査対象受体が提案されている。この検査対象受体では、内部の液体供給路に検査対象の液体を注入して、当該検査対象受体を水平に保持して公転させて、当該公転により生じる遠心力を利用して、検査対象受体内に形成された流路内の複数の混合槽に液体を移動させ検査を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。この検査対象受体では、試料計量室(本願の「計量部」に相当)で液体を所定量計量して、残りの液体が溢流室(本願の「余剰部」に相当)に流れ込むようになっている。また、試料計量室で計量された液体はキュペット室(本願の「受け部」に相当)に流入して他の液体や試薬と混合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−238760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体回路が形成されている検査対象受体は、マイクロタス(μ−TAS)と言われるように、微量な液体を用いるので、その流路は大変細いものとなっている。液溜部から計量部に液体を流す場合に、遠心力をかけたままで、検査対象受体の向きを変えると、液体が意図しない流路に流れ出てしまうことがあった。この場合に、流路は大変細いので毛管現象により、液体が流路の先まで流れてしまうという問題点があった。また、液溜部から計量部に液体を流す方向に遠心力をかけて、液体を液溜部から計量部に流す場合にも、液溜部の流路から流れ出た液体が、計量部に流れずに。試薬と混合される受け部への流路に毛管現象により流れてしまうという問題点があった。この場合には、正確な計量が出来なくなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、流路の毛管現象による液体の意図しない流出を防止できる検査対象受体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の検査対象受体では、公転により生じる遠心力の方向に対して、自転により複数の所定の回転角度に順次保持されて、検査対象の液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、当該検査対象受体は、所定の厚みの板部材と、当該板部材の表面を覆うカバー部材とから構成され、前記板部材の表面には、少なくとも、検査対象の液体を溜める液溜部と、当該液溜部に接続され、前記液溜部から液体が流出する第一流路と、当該第一流路の前記液溜部側と反対側の端部に対向して設けられ、前記液体を所定量量り取る計量部と、前記計量部で量り取られた液体が流れ込む受け部と、前記計量部で量り取られた液体を前記受け部に流す第二流路とを備え、前記第二流路には、前記計量部側から前記受け部に向けて、流路の断面積が連続的に拡大している断面積拡大部分が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成の検査対象受体では、液溜部から計量部に液体を流す場合に、受け部への第二流路には、断面積拡大部分が設けられているので、毛管現象による第二流路への意図しない液体の流出を防止できる。
【0008】
また、前記第二流路の断面積拡大部分は、当該流路の前記板部材の厚み方向での深さを連続的に深くすることにより、当該流路の断面積が連続的に拡大していても良い。この場合には、流路の深さを連続的に深くすることで、検査対象受体の面積を増やすことなく断面積拡大部分を形成することができる。
【0009】
前記第二流路の断面積拡大部分は、前記計量部の開口部の前記受け部側の端部から始まっているようにしても良い。この場合には、計量部の開口部の端部から第二流路への毛管現象による意図しない液体の流出を防止できる。従って、計量部にスムーズに液体を流すことができる。
【0010】
また、前記液溜部から液体を前記計量部に流すように遠心力を付加する状態で、前記第二流路の途中には、遠心力の上流方向に対しての変曲点が設けられていても良い。この場合には、第二流路に意図しない液体が流れた場合にも、変曲点から先に流れることを防止できる。
【0011】
また、前記検査対象受体は、さらに、当該計量部から溢れた液体を溜める余剰部と、前記計量部から溢れた液体を前記余剰部に流す第三流路とを備え、前記第三流路は、前記計量部側から前記余剰部に向けて、流路の断面積が連続的に拡大している断面積拡大部分を有するようにしても良い。この場合には、毛管現象で、第三流路に意図しない液体が流れることを防止できる。
【0012】
また、前記第三流路の断面積拡大部分は、当該流路の前記板部材の厚み方向での深さを連続的に深くすることにより、当該流路の断面積が連続的に拡大していても良い。流路の深さを連続的に深くすることで、検査対象受体の面積を増やすことなく断面積拡大部分を形成することができる。
【0013】
また、前記第三流路の断面積拡大部分は、前記計量部の開口部の前記余剰部側の端部から始まっていても良い。この場合には、この場合には、計量部の開口部の端部から第三流路の毛管現象による第三流路への意図しない液体の流出を防止できる。従って、計量部にスムーズに液体を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】検査装置50の平面図である。
【図2】検査対象受体1の正面図である。
【図3】第一実施形態の検査対象受体1の図2のX−X線に於ける矢視方向の屈曲断面図である。
【図4】第二実施形態の検査対象受体1の図2のX−X線に於ける矢視方向の屈曲断面図である。
【図5】第三実施形態の検査対象受体1の図2のX−X線に於ける矢視方向の屈曲断面図である。
【図6】第四実施形態の検査対象受体1の図2のX−X線に於ける矢視方向の屈曲断面図である。
【図7】第五実施形態の検査対象受体1の正面図である。
【図8】液体を注入した状態の検査対象受体1の正面図である。
【図9】検査対象受体1を90度反時計回りに自転させた状態の正面図である。
【図10】検査対象受体1に遠心力を付与して、計量部4に液体を流し込んだ状態の正面図である。
【図11】検査対象受体1の計量部4から液体を受け部17に流し込む状態の正面図である。
【図12】検査対象受体1の公転を止めた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態について説明する。本実施の形態では、検査対象受体1は、図1に示す検査装置50に当該検査対象受体1の底面が重力方向(図1の紙面方向)と平行にして装着されて公転されて遠心力が付加される。先ず、図1を参照して、検査装置50の構造を簡単に説明する。図1に示すように、検査装置50の上板52上には、回転する円盤状のターンテーブル53が設けられている。また、当該ターンテーブル53上には、ホルダ角度変更機構54が設けられている。ホルダ角度変更機構54には、検査対象受体1が挿入され固定されて、所定角度自転するホルダ57が一対設けられている。また、上板52の下方には、図示外のモータが設けられ、ターンテーブル53を回転駆動するようになっている。ターンテーブル53がその中心部分55を軸心として回転することにより各ホルダ57に各々挿入された検査対象受体1には、矢印A方向に遠心力が各々働くようになっている。また、ホルダ角度変更機構54の動作によりホルダ57が自転されて、検査対象受体1に働く遠心力の方向を変化させることができるようになっている。
【0016】
次に、検査対象受体1の構造について図2及び図3を参照して説明する。図2は、検査対象受体1が検査装置50に装着された場合の正面図であり、検査対象受体1の正面及び背面が重力方向(図2に於ける下方)と平行になっている。図2及び図3に示すように、検査対象受体1は正面視長方形で所定の厚みを有する板部材2から構成されている。板部材2の材質としては、一例として合成樹脂を用いることができる。検査対象受体1には、その表面側(図3では上側)に検査対象受体1の表面を覆うカバー部材3が貼り付けられている。このカバー部材3が後述する第一液溜部5、第二液溜部6、第一流路7、第二流路20、第三流路30、第四流路8、計量部4、余剰部10及び受け部17を封止する。
【0017】
図2及び図3に示すように、カバー部材3は、正面視、板部材2と同一形状の長方形の合成樹脂の透明の薄板から構成されている。また、カバー部材3には、第一液溜部5に検査対象の液体を注入する注入口15及び検査対象の液体と混合する試薬等を第二液溜部6に注入する注入口16が形成されている。
【0018】
図2に示すように、検査対象受体1の板部材2には、板の厚み方向に所定深さに掘り下げられた凹部からなる第一液溜部5、当該第一液溜部5から流出する検査対象の液体を所定量量り取る計量部4、第一液溜部5から計量部4に向けて液体を流す第一流路7が設けられている。また、板部材2には、計量部4で量り取った液体が流入する受け部17、計量部4から受け部17へ液体を流す第二流路20、第一液溜部5から第一流路7を介して流れ出し、計量部4で量り取った残りの液体が流れる第三流路30、第三流路30の先に設けられ計量部4で量り取った残りの液体が溜まる余剰部10が設けられている。また、板部材2には、板の厚み方向に所定深さに掘り下げられた凹部からなる第二液溜部6、第二液溜部6から受け部17へ試薬等の液体を流す第四流路8が設けられている。
【0019】
第一液溜部5は、注入口15から注入された検査対象の液体を溜める部分で板部材2に対して、正面視五角形で所定深さ掘り下げられている。また、第二液溜部6は、注入口16から注入された試薬等を溜める部分で板部材2に対して、正面視五角形で所定深さ掘り下げられている。図2に示すように、第一液溜部5からの第一流路7の液体流出方向の出口の対向面に、計量部4が設けられている。計量部4も板部材2に対して所定深さ掘り下げられ、所定長さ斜め方向に延設されている。また、図2に示すように、第二液溜部6からの第四流路8の液体流出方向の出口の対向面に、受け部17が設けられている。
【0020】
また、第三流路30の下流側の端部には板部材2の厚み方向に対して所定深さ掘り下げられた余剰部10が形成されている。この余剰部10には、第一液溜部5から流出して計量部4で所定量量計り取られた残りの液体が流れ込み溜まるようになっている。また、第二流路20の下流側の端部には受け部17が形成されている。この受け部17は、板部材2の厚み方向に所定深さ掘り下げられており、計量部4で所定量量り取られた液体が流入して、第二液溜部6から流入する試薬等と混合される。
【0021】
次に、第二流路20の構造について説明する。図2に示すように、第二流路20は、板部材2の厚み方向に対して所定深さ掘り下げられ、当該第二流路20の延設方向と直交する断面が矩形の溝である。第二流路20は、屈曲部22で受け部17方向に屈曲された流路となっており、第二流路20の延設方向と直交方向における第二流路20の幅は、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から変曲点21までは、連続的に拡大している。また、図3に示すように、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から変曲点21までは、第二流路20の深さ(板部材2の厚み方向に於ける)も受け部17側に向けて連続的に深くなっている。従って、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から変曲点21までは、第二流路20の断面積が連続的に拡大する断面積拡大部分24となっている。
【0022】
また、図2に示すように、第二流路20の変曲点21と受け部17との間には、第二流路20がヘアーピン状に屈曲する屈曲部22が設けられている。変曲点21は、図10に示すように、第一液溜部5から液体を計量部4に流すように遠心力を付加する状態で、第二流路20の遠心力の上流方向(図10の矢印Aと逆方向)への変曲点となっている。この変曲点21により、第二流路20が遠心力の上流方向に対して曲がっているので、第一液溜部5から計量部4に液体を流す際に第二流路20に漏れ出た液体が、受け部17に流れ込むことを防止できる。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、第三流路30の構造を説明する。図2に示すように、第三流路30は、板部材2の厚み方向に対して所定深さ掘り下げられ、当該第三流路30の延設方向(図2に於ける左斜め下方向)と直交する断面が矩形の溝である。第三流路30の延設方向と直交方向における第三流路30の幅は、計量部4の開口部の余剰部10側の端部42から幅が一旦広くなった拡大部31では、連続的に拡大している。また、図3に示すように、計量部4の開口部の余剰部10側の端部42から第三流路30が曲がる変曲点35までは、第三流路30の深さ(板部材2の厚み方向に於ける)も余剰部10側に向けて連続的に深くなっている。従って、計量部4の開口部の余剰部10側の端部42から変曲点35までは、第三流路30の断面積が連続的に拡大する断面積拡大部分34となっている。
【0024】
上記第一実施形態の検査対象受体1では、計量部4から受け部17へ液体を流す第二流路20に、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から断面積拡大部分24が所定長さ形成されているので、細い流路であっても毛管現象による第二流路への意図しない液体の流出を防止できる。また、同様に、計量部4から溢れた液体を余剰部10に流す第三流路30にも断面積拡大部分34が計量部4の開口部の余剰部10側の端部42から所定長さ形成されているので、細い流路であっても毛管現象による第三流路への意図しない液体の流出を防止できる。
【0025】
次に、図2及び図4を参照して、第二実施形態の検査対象受体1について説明する。この第二実施形態の検査対象受体1では、検査対象受体1を正面視した場合には、第二流路20及び第三流路30の形状は第一実施形態と同様に見えるが、図4に示すように、第二流路20及び第三流路30は、流路の深さは一定である。しかし、第二流路20は、変曲点21までは、流路の幅が連続的に広くなっているので、流路の断面積は連続的に拡大している。また、第三流路30においても、拡大部31が有るので、流路の幅が連続的に広くなっている部分があるので、流路の断面積は連続的に拡大している。この第二実施形態の検査対象受体1においても、流路の断面積は、連続的に拡大しているので、第二流路20及び第三流路30に対する、毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止できる。
【0026】
次に、図2及び図5を参照して、第三実施形態の検査対象受体1について説明する。この第三実施形態の検査対象受体1では、検査対象受体1を正面視した場合には、第二流路20及び第三流路30の形状は第一実施形態と同様に見える。図5に示すように、第三流路30の深さは一定であるが、第二流路20は、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から変曲点21までは、流路の深さが受け部17側に向けて連続的に深くなっている。従って、計量部4の開口部の受け部17側の端部41から変曲点21までは、第二流路20の断面積が連続的に拡大する断面積拡大部分24となっている。また、第三流路30においても、拡大部31が有るので、流路の幅が連続的に広くなっている部分があるので、流路の断面積は連続的に拡大している。この第三実施形態の検査対象受体1においても、流路の断面積は、連続的に拡大しているので、第二流路20及び第三流路30に対する毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止できる。
【0027】
次に、図2及び図6を参照して、第四実施形態の検査対象受体1について説明する。この第四実施形態の検査対象受体1では、検査対象受体1を正面視した場合には、第二流路20及び第三流路30の形状は第一実施形態と同様に見える。図6に示すように、第二流路20の深さは一定であるが、第三流路30は、計量部4の開口部の余剰部10側の端部42から変曲点35までは、流路の深さが連続的に深くなっている。従って、第三流路30の断面積が連続的に拡大する断面積拡大部分34となっている。また、第二流路20においても、流路の幅が連続的に広くなっている部分があるので、流路の断面積は連続的に拡大している。この第四実施形態の検査対象受体1においても、流路の断面積は、連続的に拡大しているので、第二流路20及び第三流路30に対する毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止できる。
【0028】
次に、図3及び図7を参照して、第五実施形態の検査対象受体1について説明する。図7に示すように、第五実施形態の検査対象受体1では、検査対象受体1を正面視した場合には、第二流路20及び第三流路30は、流路の幅は連続的に拡大している部分がない。しかし、図3に示すように、第二流路20に流路の深さが連続的に深くなる断面積拡大部分24があり、同様に、第三流路30に流路の深さが連続的に深くなる断面積拡大部分34がある。従って、この第五実施形態の検査対象受体1においても、流路の断面積は、連続的に拡大しているので、第二流路20及び第三流路30に対する毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止できる。
【0029】
次に、図8から図12を参照して、上記第一実施形態の検査対象受体1の使用方法について説明する。図8に示すように、検査対象受体1では、注入口15から第一液溜部5に検査対象の液体が注入され、注入口16から第二液溜部6に試薬が注入される。注入された液体は、第一液溜部5及び第二液溜部6に溜まる。次いで、検査対象受体1は、図1に示す検査装置50のターンテーブル53のホルダ57に各々固定される。そして、検査装置50のホルダ57が自転して、検査対象受体1を図9に示す状態に自転させる。次いで、図10に示すように、検査対象受体1は、重力方向(矢印B方向)と平行な回転軸で公転して、検査対象受体1には遠心力が矢印A方向に付与される。この時、図10に示すように、第一液溜部5に溜まっている液体が流れ出て、計量部4で所定量計量される。この時に、第二流路20には、断面積拡大部分24が設けられ、第三流路30には、断面積拡大部分34が設けられているので、第二流路20及び第三流路30に対する毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止し、スムーズに計量部4に液体を流すことができる。ここで、計量部4から溢れた余剰な液体は、付与されている遠心力により第三流路30を流れて余剰部10に溜まる。また、余剰部10に流れ込んだ液体は、遠心力(図10に於ける矢印A方向)により、余剰部10の奥に引き寄せられる。また、第二液溜部6に溜まっていた試薬は、受け部17に流れ込む。
【0030】
次いで、図11に示すように、検査対象受体1は、時計回りに90度自転されて公転による遠心力が付与される(図11に於ける矢印A方向)。図11に示すように、計量部4に溜まった液体は、付与されている遠心力により第二流路20を流れて受け部17に流入して、第二液溜部6から先に、受け部17に流入している試薬と混合される。その後、検査装置50のターンテーブル53の回転が止まると、図12に示すように、検査対象の液体の余剰液は余剰部10の奥部13に溜まり、試薬と混合された液体は、受け部17に溜まる。この後、受け部17で混合された液に光をあてて調べる光学等の方法で測定する。
【0031】
以上説明したように、上記実施形態の検査対象受体1では、第二流路20に断面積拡大部分24を設け、第三流路30に断面積拡大部分34を設けているので、計量部4での計量時に、第二流路20及び第三流路30に対する毛管現象による意図しない液体の流れ込みを防止して第一液溜部5の第一流路7からスムーズに液体を計量部4に流すことが出来る。また、第一液溜部5から液体を計量部4に流すように遠心力を付加する状態で、第二流路20に遠心力の上流方向に対しての変曲点21を設けているので、計量部4から溢れた余剰な液体が、第二流路20に流れ込んでも、受け部17に流れ込んでしまうことを防止できる。
【0032】
尚、本発明は、上記実施形態に限られず、各種の変形ができる。例えば、第二流路20の断面積拡大部分24は、変曲点21まででなく、屈曲部22より先まで形成しても良い。また、第三流路30の断面積拡大部分34も変曲点35より先の余剰部10まで形成しても良い。
【0033】
また、例えば、検査対象受体1の材質は特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料を用いることができる。また、シリコン、ガラス、石英等の無機材料を用いても良い。また、検査対象受体1では、液体の注入口は2つ設けているが、1つ、3つ、4つ等適宜設けても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 検査対象受体
2 板部材
3 カバー部材
4 計量部
5 第一液溜部
6 第二液溜部
10 余剰部
11 流路
13 貯溜部
15 注入口
16 注入口
17 受け部
20 第二流路
21 変曲点
22 屈曲部
24 断面積拡大部分
30 第三流路
31 拡大部
34 断面積拡大部分
35 変曲点
41 端部
42 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転により生じる遠心力の方向に対して、自転により複数の所定の回転角度に順次保持されて、検査対象の液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、
当該検査対象受体は、所定の厚みの板部材と、当該板部材の表面を覆うカバー部材とから構成され、
前記板部材の表面には、少なくとも、
検査対象の液体を溜める液溜部と、
当該液溜部に接続され、前記液溜部から液体が流出する第一流路と、
当該第一流路の前記液溜部側と反対側の端部に対向して設けられ、前記液体を所定量量り取る計量部と、
前記計量部で量り取られた液体が流れ込む受け部と、
前記計量部で量り取られた液体を前記受け部に流す第二流路と
を備え、
前記第二流路には、前記計量部側から前記受け部に向けて、流路の断面積が連続的に拡大している断面積拡大部分が設けられていることを特徴とする検査対象受体。
【請求項2】
前記第二流路の断面積拡大部分は、当該流路の前記板部材の厚み方向での深さを連続的に深くすることにより、当該流路の断面積が連続的に拡大していることを特徴とする請求項1に記載の検査対象受体。
【請求項3】
前記第二流路の断面積拡大部分は、前記計量部の開口部の前記受け部側の端部から始まっていることを特徴とする請求項1または2に記載の検査対象受体。
【請求項4】
前記液溜部から液体を前記計量部に流すように遠心力を付加する状態で、
前記第二流路の途中には、遠心力の上流方向に対しての変曲点が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の検査対象受体。
【請求項5】
前記検査対象受体は、さらに、
当該計量部から溢れた液体を溜める余剰部と、
前記計量部から溢れた液体を前記余剰部に流す第三流路と
を備え、
前記第三流路には、前記計量部側から前記余剰部に向けて、流路の断面積が連続的に拡大している断面積拡大部分が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の検査対象受体。
【請求項6】
前記第三流路の断面積拡大部分は、当該流路の前記板部材の厚み方向での深さを連続的に深くすることにより、当該流路の断面積が連続的に拡大していることを特徴とする請求項5に記載の検査対象受体。
【請求項7】
前記第三流路の断面積拡大部分は、前記計量部の開口部の前記余剰部側の端部から始まっていることを特徴とする請求項5または6に記載の検査対象受体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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