説明

検査用模擬電池および電池ケース検査装置

【課題】内部電極を備えた電池ケースの検査において、電池ケースの内部電極の形状や弾性の違いがあっても、確実に電気的な接触が行える電池ケースの検査装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る電池ケース検査装置は、
電池ケースの外部電極と内部電極間の導通状態を検査するための電池ケース検査装置であって、
当該電池ケース検査装置の基台には、
模擬電池の本体の一方の端面に形成された第1の電極と、他方の端面に形成された第2の電極とを、導通させかつ連結させる連結部材を、前記本体に対して、軸方向に相対的に移動可能に配設した検査用模擬電池が配設され、
検査対象の電池ケースが、前記模擬電池に被せられた状態で、当該電池ケースの外部電極に、検査電圧を印可するピンを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースに設けられた電極の導通状態の可否を検査するための検査用模擬電池および電池ケース検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池ケースは、電池を筐体の内部に収納する収納部を備え、前記収納部に収納した電池のプラス、マイナスの両電極を、前記筐体の内部に設けられた内部電極と電気的に接触させ、前記筐体の外部には、前記内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられた構成となっている。
図11に示した電池ケースの例のように、複数(この場合は6本)の電池を収納するように構成された電池ケース100の場合、電池ケース100の内面に形成された収納部110には、収納された各電池120のプラス極とマイナス極にそれぞれ接触する6組の内部電極131〜136が設けられ、電池ケース100の外面には外部電極140+、140−とが設けられている。
【0003】
第1の内部電極131はプラス極131+とマイナス極131−から構成され、隣接する第2の内部電極132はプラス極132+とマイナス極132−から構成され、続いて隣接する内部電極133はプラス極133+とマイナス極133−から構成され、続いて隣接する内部電極134はプラス極134+とマイナス極134−から構成され、続いて隣接する内部電極135はプラス極135+とマイナス極135−から構成され、続いて隣接する内部電極136はプラス極136+とマイナス極136−から構成されている。
そして、図12に示したように、前記電池ケース100のプラス極となる前記外部電極140+は前記プラス極131+と接続され、前記マイナス極131−は隣接するプラス極132+と接続され、前記マイナス極132−は隣接する前記プラス極133+と接続され,前記マイナス極133−は隣接する前記プラス極134+と接続され,前記マイナス極134−は隣接するプラス極135+と接続され、前記マイナス極135−は隣接する前記プラス極136+と接続され、前記マイナス極136−は、前記電池ケース100のマイナス極となる前記外部電極140−と接続されており、6本の電池が直列接続されるように接続されている。なお、以下においては、これらの内部電極の符号は+−を省いて131から136と表わす。また、1対の外部電極140+、140−は、+−を省いて外部電極140と表わす。
【0004】
以上のような電池ケース100の各電極の導通状態の可否の検査においては、プラス極とマイナス極とが短絡された模擬電池が用いられることがある。
そのような模擬電池を用いて、前述したような6本の電池を収納する電池ケース100を検査する場合には、6本の模擬電池を1本ずつ収納して、外部電極にテスタ等の検査器具を接続して、導通状態の確認を行うことがある。
【0005】
このように模擬電池を挿入する場合には、電池ケースの内部電極の弾性による挿入抵抗があるので、挿入しにくいという問題があった。特に、多数(例えば6本)の模擬電池を挿入する場合には、その挿入抵抗も大きくなり、作業性が悪いという問題があった。
模擬電池を引き抜く場合も同様に抵抗が大きくなり、作業性が悪いという問題があった。
【0006】
また、模擬電池を電池ケースに装着する際、電池ケースの内部電極の極性と模擬電池の極性とが一致するように注意して装着する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的背景から、本発明は、電池ケースの内部電極の形状や弾性の違いがあっても、確実に電気的な接触が行える模擬電池および電池ケースの検査装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る請求項1の検査用模擬電池は、
少なくとも1対の内部電極を備える電池ケースに装着して使用する検査用模擬電池であって、
本体部と、
前記本体部の一方の端面から突出する第1の電極部と、
前記本体部の他方の端面から突出する第2の電極部と、
前記第1の電極部と第2の電極部とを導通させ、かつ連結させる連結部材とからなり、
前記連結部材は、前記本体部の軸方向に相対的に移動可能に配設されている。
請求項2では、
前記連結部材の軸方向の移動範囲を規制する規制構造を備えている。
請求項3では、
前記本体が、基台に複数並べて固定されている。
本発明に係る請求項4の電池ケース検査装置は、
電池ケースの外部電極と内部電極間の導通状態を検査するための電池ケース検査装置であって、
当該電池ケース検査装置の基台には、
模擬電池の本体の一方の端面に形成された第1の電極と、他方の端面に形成された第2の電極とを、導通させかつ連結させる連結部材を、前記本体に対して、軸方向に相対的に移動可能に配設した検査用模擬電池が配設され、
検査対象の電池ケースが、前記模擬電池に被せられた状態で、当該電池ケースの外部電極に、検査電圧を印可するピンを備えている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3に係る検査用模擬電池は、
模擬電池の本体の一方の端面に形成された第1の電極と、他方の端面に形成された第2の電極とを導通状態で連結する連結部材が、前記本体に対して、軸方向に相対的に移動可能に配設されているので、
検査対象の電池ケースの内部電極の形状等が異なる場合でも、模擬電池の1対の電極と電池ケースの内部電極との接触が確実に行え、確実な導通検査が可能である。また、模擬電池と電池ケースとの装着/取り外しが容易になり、作業性が改善される。
請求項4に係る電池ケース検査装置は、
上記効果の得られる模擬電池を用いて検査するとき、当該電池ケースの外部電極に、検査電圧を印可するピンを備えているので、各電極間の導通状態が正常であるか否かを容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る検査用模擬電池の側面断面図である。
【図2】実施例1の電池ケース検査装置の正面図である。
【図3】実施例1の電池ケース検査装置の側面断面図である。
【0011】
【図4】実施例1の電池ケース検査装置の電気回路図である。
【図5】実施例1の電池ケース検査装置の検査準備状態の側面断面図である。
【図6】実施例1の電池ケース検査装置の検査中の側面断面図である。
【図7】実施例1の電池ケース検査装置の検査準備状態の正面図である。
【図8】実施例1の電池ケース検査装置の検査中の正面図である。
【図9】実施例1の電池ケース検査装置の検査準備状態における模擬電池近傍の斜視図である。
【図10】実施例1の電池ケース検査装置の検査中の斜視図である。
【図11】検査対象の電池ケースと模擬電池の説明用の斜視図である。
【図12】検査対象の電池ケースに模擬電池を収納した状態の各電極の接続状態を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図は、本発明に係る模擬電池の基本的な構成例を示した断面図である。
図1において、
10は模擬電池であり、筒状で絶縁性の本体11の一方の端面に形成された孔111には第1の電極部10Aが本体11の端面から突出して配設され、他方の端面に形成された孔112には第2の電極部10Bが本体11の端面から突出して配設されている。前記2つの電極部10A、10Bは、導電性でほぼ棒状の連結部材としてのシャフト13の両端に形成されており、前記シャフト13は、前記本体11の内部に形成された当該本体11の軸方向の空洞12内において、前記軸方向に移動可能に配設されている。前記2つの電極部10A、10Bは、前記導電性のシャフトによって電気的に接続されて短絡された状態となっているとともに、前記シャフト13によって一体となって軸方向に移動可能な状態となっている。前記孔111と孔112とは前記空洞12を介して連続している。
前記2つの電極部10A、10Bには、通常の電池のようにプラス極とマイナス極の区別はないので、当該模擬電池10を電池ケースに装着する際、電池ケースの内部電極の極性と模擬電池の極性とを気にすることなく、容易に装着することができる。
【0013】
前記シャフト13の中央近傍には突出部131が形成されており、前記空洞12の中央近傍には前記突出部13の軸方向の動きを規制する規制構造14が形成されている。この規制構造14は例えば図示したように本体11の中央部において側面から切り込まれた開口部で構成されている。
前記シャフトの長さ(2つの電極部10A、10Bの両端面間の長さ)は、実際に使用される電池の規格で指定された最小許容寸法(公差上認められる電池の最小寸法)に相当する長さとされている。
前記シャフト13は、前記本体11の内部の空洞12内で、軸方向に移動可能に形成されているが、移動可能な長さは、前記規制構造14の幅で設定された長さに限定されており、前記シャフト13が過度に移動して前記本体11の一方の端面からは大きくに突出するが、他方の端面からは埋没して突出しないような状態となることが防止されている。
したがって、当該模擬電池10を電池ケースに装着する際、本体11の両端面から必ずシャフト13の端部が電極部10A、10Bとして突出することになり、シャフト13両端の2つの電極部10A、10Bと、電池ケースの内部電極との電気的な接触を容易にする。
以上のような構成の模擬電池10を、検査対象の電池ケースに装着すると、前記2つの電極部10A、10Bは、電池ケースに配設された1対の内部電極に接触して、当該1対の内部電極を導通させる。
このようにして、模擬電池を電池ケースに装着した後、電池ケースの外部電極間の導通をテスター等で確認することで、電池ケースの通電検査を行うことができる。
【実施例1】
【0014】
図2は、6本の電池用電池ケースを検査するための電池ケース検査装置5の正面図であり、前記模擬電池10と同様の構造の模擬電池20が、複数本(この場合には6本)並べて固定されている。
前記電池ケース検査装置5の基台51の上面には前記模擬電池20が6本並行に固定されている。前記基台51の上面の端には、電池ケース100の1対の外部電極140に接触させるための一対のピン61,62が配設され、前記一対のピン61,62は、レバー71を備えた進退機構7によって、前記模擬電池方向に進退移動して、電池ケース100のクランプと開放とを行うように構成されている。
【0015】
前記ピン61,62の上部にはこれらのピンを保護するためのピンガード8が配設されている。前記ピンガード8は前記ピン61,62の進退とともに移動するように前記ピン61,62の軸部に固定されている。
前記ピン61,62のクランプ位置を検出するためのリミットスイッチ9が、クランプ状態で作動する位置に配設されている。
【0016】
図3は、前記電池ケース検査装置5の側面断面図であり、基台51の上面に、図1に示した模擬電池10とほぼ同様の模擬電池20が固定されているのである。これらの模擬電池20の内部構造は、図1の模擬電池と同じであるので、同じ番号を付してその説明を省略した。
【0017】
図4は、前記電池ケース検査装置5に内蔵された電気回路4の回路図を示したものであり、電池ケース100の外部電極140に接触する1対のピン61,62と、電源アダプタ(図示せず)を接続するための電源コネクタ41と、前記リミットスイッチ9の接点91と、導通状態のときに鳴動するブザー42とを備え、前記電源コネクタ41と前記接点91と前記ブザー42と前記外部電極140とが直列接続されてなるループが形成されている。
前記電気回路4においては、電池ケース100に6本分の模擬電池20が装着された状態で、1対の外部電極140と各内部電極131〜136間の導通が正常であれば、前記ループに電流が流れて前記ブザー42が鳴動することになり、1対の外部電極140と各内部電極131〜136間の導通の一カ所でも接触不良があれば、前記ループが開いて電流が流れないので前記ブザー42が鳴動することはない。
このようにして、電池ケース100の外部電極140と内部電極131〜136間の導通状態を検査することができるのである。
【0018】
図5は、前記電池ケース検査装置5の模擬電池20に電池ケース100を装着する前の側面断面図であり、図6は、前記電池ケース検査装置5の模擬電池20に電池ケース100を装着した状態の側面断面図である。
図6においては、電池ケース100の内部電極131〜136のバネの弾性によって、模擬電池20のシャフト13が軸方向に押圧されて移動するので、内部電極131〜136の位置や形状、もしくは弾性の違いがあっても、シャフト13はそれぞれの内部電極131〜136に応じてバランスする位置に移動するので、安定した接触状態が得られ、適正な検査が行える。
また、シャフト13が移動することによって、模擬電池20に電池ケース100を装着する作業に対する抵抗が少なくなり、電池ケース100を容易に装着することができる。
【0019】
図7は電池ケースを装着する前の正面図である。なお、電池ケースは説明の都合上正面断面図を示した。
前記進退機構7の前記レバー71をあげた状態では、図示したように、1対のピン61,62は電池ケース100から離れた位置に後退している。
この状態で、模擬電池20の上方から電池ケース100を、その開口面を下に向けて模擬電池20に被せるのである。こうすることで、模擬電池20は電池ケース100に装着される。なお、前記電池ケース100に形成された仕切り板101に対応させて、6本の模擬電池20の3本目と4本目の間には若干の隙間52が形成されている。
【0020】
図8は電池ケース100を装着してクランプした状態の正面図である。なお、電池ケースは説明の都合上正面断面図を示した。
図7の状態から前記レバー71を細い矢印方向に押し下げると1対のピン61,62は模擬電池(電池ケース100)の方向(太い矢印方向)に進出し、図8のように、前記1対のピン61,62が電池ケース100の1対の外部電極140に接触する。図8に示したクランプ状態になると、前記リミットスイッチ9がオンとなり、前記1対のピン61,62から前記電池ケース100の1対の外部電極140へ電圧が供給される。そして、模擬電池20の電極部により電池ケース100の内部電極が電気的に接続され、電池ケース100の各電極140、131〜136間の導通状態が正常であれば、前記電気回路のループに電流が流れて前記ブザー42が鳴動し、検査合格を報知し、電池ケース100の各電極間の一カ所でも非導通状態であれば、前記電気回路のループに電流が流れず前記ブザー42が鳴動しないので、検査不合格を報知する。
図9は電池ケース100を装着する前の状態における模擬電池近傍の斜視図であり、図10は電池ケース100を装着した状態の斜視図である。
【0021】
図8の状態から前記レバー71を引き上げると、1対のピン61,62は外部電極140から離れるので、電池ケース100を持ち上げて、模擬電池20から引き抜くことができ、当該電池ケース100の検査が終了する。この際も、電池ケース100の内部電極の形状等に応じてシャフト13は本体に対して相対的に移動が可能であるので、電池ケース100の取り外しが容易である。
そして、引き続いて、次の電池ケースを検査することができる。
【0022】
実施例1では、6本の電池を収納する電池ケースの検査の場合を例にとって説明したが、1本以上、何本の電池を収納する電池ケースの検査にも適応できることは言うまでもない。 また、前記進退機構7はレバー71を手動操作する構成で説明したが、電動でピン61,62を進退移動させる構成も可能であることは言うまでもない。また、前記進退機構7のレバー71を押し下げることでクランプ状態になるような構造で説明したが、逆に、前記進退機構7のレバー71を引き起こすことでクランプ状態になるような構造にしてもよい。
また、導通状態をブザーの鳴動/非鳴動で報知するように構成したが、LED等の発光手段の点灯/非点灯や、合成音声等によって「合格」/「不合格」等と発声させるように構成したり、検査結果を電気信号で出力するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 模擬電池
10A、10B 電極
11 本体
12 空洞
13 シャフト
14 規制構造
5 電池ケース検査装置
20 模擬電池
61,62 ピン
7 進退機構
100 電池ケース
131〜136 内部電極
140、140+、140− 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の内部電極を備える電池ケースに装着して使用する検査用模擬電池であって、
本体部と、
前記本体部の一方の端面から突出する第1の電極部と、
前記本体部の他方の端面から突出する第2の電極部と、
前記第1の電極部と第2の電極部とを導通させ、かつ連結させる連結部材とからなり、
前記連結部材は、前記本体部の軸方向に移動可能に配設されていることを特徴とする検査用模擬電池。
【請求項2】
前記連結部材の軸方向の移動範囲を規制する規制構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査用模擬電池。
【請求項3】
前記本体が、基台に複数並べて固定されていることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の検査用模擬電池。
【請求項4】
電池ケースの外部電極と内部電極間の導通状態を検査するための電池ケース検査装置であって、
当該電池ケース検査装置の基台には、
模擬電池の本体の一方の端面に形成された第1の電極と、他方の端面に形成された第2の電極とを、導通させかつ連結させる連結部材を、前記本体に対して、軸方向に相対的に移動可能に配設した検査用模擬電池が配設され、
検査対象の電池ケースが、前記模擬電池に被せられた状態で、当該電池ケースの外部電極に、検査電圧を印可するピンを備えていることを特徴とする電池ケース検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−159402(P2011−159402A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18050(P2010−18050)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】