説明

検査装置

【課題】容器に充填された液体の容量(入味量)の検査において、かかる入味量の誤判定を防止することを可能とする検査装置を提供する。
【解決手段】順次搬送されてくる容器に充填された液体の容量が所定量であるかどうかを検査するための検査装置であって、前記容器に前記所定量の液体が充填された場合の液面を示す基準線を有し、前記基準線は、前記液面に対して水平な方向に配置された2つのワイヤーによって形成されることを特徴とする検査装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に充填された液体の容量を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールを製造する工程は、製麦工程と、仕込工程と、発酵・貯酒工程と、ろ過工程と、パッケージング工程とを含む。このうちパッケージング工程は、ろ過工程を経たビールを缶や瓶などの容器に所定量ずつ充填する工程である。この際、所定量のビールが容器に充填された製品のみを出荷するために、実際に容器に充填されたビールの容量(入味量)が適正であるかどうかを検査する入味検査が実施されている。
【0003】
入味検査においては、ビールを充填する容器が缶である場合には、入味検査機(例えば、X線を用いた非破壊検査機)を用いた自動化が進んでいるが、ビールを充填する容器が瓶である場合には、検査者による目視に頼ることが多い。具体的には、検査者は、入味量が適切である(即ち、所定量のビールが瓶に充填されている)ときの液面(液面高さ)を示す基準線と実際に瓶に充填されたビールの液面とを比較して、入味量が適正であるかどうかを判定している。
【0004】
なお、容器に充填した液体の容量検査に関連する技術として、従来から幾つか提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】特開2001−147148号公報
【特許文献2】特開2001−315763号公報
【特許文献3】特開2006−281861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検査者の目視による入味検査においては、熟練の検査者であっても、入味量が実際には適正であるのに入味量が適正ではない(不適正)と判定したり、入味量が実際には適正ではないのに入味量が適正であると判定したりする誤判定を生じてしまっていた。本発明者は、このような誤判定が生じる理由を鋭意検討した結果、基準線に対する検査者の目線(目線の高さ)のずれに起因していることを見出した。なお、目線のずれが生じる原因は、複数の検査者間の体格差(例えば、身長差や座高差など)や姿勢の違いなどが考えられる。また、同じ検査者であっても、検査時間が長くなるにつれて疲労等から姿勢が変化し、目線がずれてしまう可能性がある。
【0006】
図4を参照して、瓶に充填したビールの入味量が適正である場合の入味検査について説明する。基準線に対して検査者の目線が水平(目線OE)であれば、図4に示すように、基準線と瓶に充填したビールの液面とが一致して見えるため、検査者は、入味量が適正であると判定することができる。一方、基準線に対して検査者の目線が上方にずれている(目線OE)と、図4に示すように、基準線よりも瓶に充填したビールの液面が下方に見えるため、検査者は、入味量が少ない、即ち、入味量が不適正であると判定してしまう。また、基準線に対して検査者の目線が下方にずれている(目線OE)と、図4に示すように、基準線よりも瓶に充填したビールの液面が上方に見えるため、検査者は、入味量が多い、即ち、入味量が不適正であると判定してしまう。
【0007】
このように、基準線に対して検査者の目線がずれている場合には、検査者は、入味量が実際には適正であるにもかかわらず、入味量が不適正であると判定してしまう。同様に、基準線に対して検査者の目線がずれている場合には、検査者は、入味量が所定量よりも多く又は少なく、実際には不適正であるにもかかわらず、入味量が適正であると判定してしまう。その結果、入味量が適正である製品がパッケージング工程に戻されてしまうため、不要な戻しビールが増えて作業効率の低下を招いたり、入味量が不適正である(入味量が多い又は少ない)製品が出荷されてしまったりする。
【0008】
なお、特許文献1は、液位目盛を撮影するカメラを水位測定シリンダー内のフロート上に配置し、かかるカメラで撮影した目盛(画像)を水位とみなす液位測定装置及び液位測定方法を開示している。特許文献1には、カメラの安定について、フロートによって液面の変動の影響を受けないと記載しているが、実際には、フロートは液面に浮いているため、液面の変動に伴って水平方向及び垂直方向に微細に変動してしまう。また、カメラの撮影線(撮影方向)を水平に維持する技術については何ら記載されていない。また、カメラの撮影線を水平に維持するためには、フロートの大きさだけではなく、フロート上の荷重の偏りも影響するが、これについても記載されていない。
【0009】
また、特許文献2は、液残量を簡単に目視で確認することができる飲料紙パックを開示している。但し、液残量を正確に判定するための技術や目視における目線に関しては何ら記載されていない。
【0010】
また、特許文献3は、ブレーキ液タンクの液量を2方向から目視することができる目盛付きタンクを開示している。但し、特許文献2と同様に、液量を正確に判定するための技術や目視における目線に関しては何ら記載されていない。
【0011】
従って、特許文献1乃至3を単独で、或いは、特許文献1乃至3を組み合わせて入味検査に適用したとしても、瓶に充填されたビールの入味量を正確に判定することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、容器に充填された液体の容量(入味量)の検査において、かかる入味量の誤判定を防止することを可能とする検査装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての検査装置は、順次搬送されてくる容器に充填された液体の容量が所定量であるかどうかを検査するための検査装置であって、前記容器に前記所定量の液体が充填された場合の液面を示す基準線を有し、前記基準線は、前記液面に対して水平な方向に配置された2つのワイヤーによって形成されることを特徴とする。かかる検査装置によれば、2つのワイヤーが重なって見えるように目線を維持することによって、基準線に対する検査者の目線のずれを低減することができる。前記容器を照明する照明部を更に有し、前記基準線は、前記容器と前記照明部との間に位置することを特徴とする。これにより、容器に充填された液体の液面を認識しやくすることが可能となる。前記2つのワイヤーを支持する支持部を更に有し、前記支持部は、前記液面に対して垂直な方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。これにより、2つのワイヤーによって形成される基準線を液面に対して垂直な方向に移動させることができる。前記2つのワイヤーは、前記液面に対して水平な方向において、5mmの間隔を有して配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、容器に充填された液体の容量(入味量)の検査において、かかる入味量の誤判定を防止することを可能とする検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一側面としての検査装置1の構成を示す概略斜視図である。検査装置1は、順次搬送されてくる容器に充填された液体の容量(入味量)が所定量であるかどうかを検査するための検査装置である。検査装置1は、本実施形態では、ビールを製造する工程において、中瓶や大瓶などの瓶に充填されたビールの入味量が適正であるかどうかを検査する入味検査の際に使用される検査装置として具現化される。検査装置1は、図2に示すように、所定量のビールが瓶に充填された製品を搬送する搬送ベルト(ベルトコンベアー)を介して、検査者と対向して配置される。図2は、検査装置1をビールの入味量を検査する入味検査に使用する場合の配置例を示す図である。
【0018】
検査装置1は、図1に示すように、照明部10と、ワイヤー部20と、支持部30とを有する。
【0019】
照明部10は、ビールが充填された瓶を照明する機能を有し、本実施形態では、搬送ベルトを介して搬送されてくる瓶を背面から照明する検瓶灯で構成される。ビールを充填する瓶は、日光によるビールの品質の劣化を防止するために、茶色や緑色に着色されていることが多く、検査者は、瓶に充填されたビールの液面を認識しにくい場合がある。照明部10は、ビールが充填された瓶を背面から照明することによって、検査者に対して、ビールの液面を認識しやすくしている。
【0020】
照明部10は、例えば、照明パネル12と、照明パネル12を支持するパネル枠14とを有する。照明パネル12は、蛍光灯やLEDを含み、ビールが充填された瓶を照明する光を照射する。従って、照明パネル12の前に位置する瓶が照明されることになり、照明パネル12の大きさ(特に、搬送ベルトの搬送方向の長さ)によって、入味量を検査することができる瓶の数(即ち、検査範囲)が規定される。例えば、照明パネル12の長さLが1240mm、搬送ベルトの搬送速度が19.5mm/分である場合、ビールを充填する瓶が大瓶(直径76mm)であれば1秒間で20.2本、ビールを充填する瓶が中瓶(直径73mm)であれば1秒間で20.4本の入味検査を実施することが可能である。
【0021】
ワイヤー部20は、中瓶や大瓶などの瓶に所定量(例えば、中瓶の場合には500ml、大瓶の場合には633ml)のビールが充填された場合の液面(液面高さ)を示す基準線を形成する機能を有する。ワイヤー部20は、本実施形態では、第1のワイヤー22と、第2のワイヤー24と、錘26とを有する。
【0022】
第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24は、後述する支持部30に支持され、瓶に充填されたビールの液面に対して水平な方向に配置される。第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24は、搬送ベルトを介して搬送されてくるビールが充填された瓶と照明部10との間に基準線を形成する。第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24の2つのワイヤーで基準線を形成することで、基準線に対する検査者の目線のずれを低減(防止)することが可能となる。具体的には、図3に示すように、第1のワイヤー22と第2のワイヤーとが重なって見えるように目線を維持することによって、基準線に対して検査者の目線が常に水平となり、基準線に対する検査者の目線のずれを防止することができる。従って、第1のワイヤー22は基準線を形成する機能を有し、第2のワイヤー24は検査者の目線を常に一定に(即ち、第1のワイヤー22によって形成される基準線に対して常に水平に)維持するための機能を有しているとも言える。また、第1のワイヤー22と第2のワイヤー24とは、瓶に充填されたビールの液面に対して水平な方向において、5mmの間隔を有して配置されていることが好ましい。これにより、第1のワイヤー22と第2のワイヤー24とが重なって見えるような目線の位置を容易に見つけることが可能となる。換言すれば、第1のワイヤー22と第2のワイヤー24との間隔が5mmより長かったり短かったりすると、第1のワイヤー22と第2のワイヤー24とが重なって見えるような目線の位置を見つけることが困難になる。ここで、図3は、検査装置1のワイヤー部20の機能を説明するための図である。
【0023】
錘26は、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24の両端部に接続され、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24を両端部から張力を加えることによって、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24がビールの液面に対して垂直な方向に弛むことを防止する。これにより、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成される基準線を常に直線状にすることができる。
【0024】
支持部30は、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24を支持する。支持部30は、図示しない移動機構に接続され、瓶に充填されたビールの液面に対して垂直な方向に移動可能に構成される。これにより、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成される基準線を液面に対して垂直な方向に移動させることができる。例えば、ビールを充填する瓶が大瓶である場合には、かかる大瓶に充填すべきビールの容量(所定量)は、633mlである。一方、ビールを充填する瓶が中瓶である場合には、かかる中瓶に充填すべきビールの容量(所定量)は、500mlである。従って、大瓶と中瓶とでは、所定量のビールが充填された場合の液面の位置が異なるため、支持部30をビールの液面に対して垂直な方向に移動させ、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成される基準線の位置を変更する必要がある。また、瓶が同じであっても、かかる瓶に充填すべきビールの容量が異なる場合には、同様に、支持部30をビールの液面に対して垂直な方向に移動させ、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成される基準線の位置を変更する必要がある。支持部30は、ビールを充填する瓶や充填すべきビールの容量に応じて、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成される基準線の位置を変更可能にする。
【0025】
以下、ビールの入味検査における検査装置1の使用について説明する。まず、検査者は、ビールを充填する瓶の種類(例えば、大瓶や中瓶など)及び充填すべきビールの容量(所定量)に応じて、支持部30を介して、所定量のビールが充填された場合の液面(液面高さ)に第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24を移動させる。換言すれば、所定量のビールが充填された場合の液面の位置に基準線が形成されるように、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24を移動させる。
【0026】
次いで、検査者は、第1のワイヤー22と第2のワイヤーとが重なって見えるように目線を維持する。具体的には、検査者が座る図示しない座席の座面高さを調整したり、姿勢を維持したりすることによって、第1のワイヤー22と第2のワイヤーとが重なって見えるように目線を維持する。これにより、基準線に対して目線を水平にすることができ、基準線に対する目線のずれを防止することができる。
【0027】
次に、検査者は、搬送ベルトを介して順次搬送されてくるビールが充填された瓶(製品)に対して、入味検査を実施する。具体的には、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成された基準線と瓶に充填されたビールの液面とを比較して、入味量が適正であるかどうかを判定する。検査者は、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成された基準線と瓶に充填されたビールの液面とが一致していれば、入味量は適正であると判定し、第1のワイヤー22及び第2のワイヤー24によって形成された基準線と瓶に充填されたビールの液面とが一致していなければ、入味量が不適正であると判定する。この際、検査者の目線は基準線に対して水平であるため、入味量が適正である場合に不適正であると判定してしまったり、入味量が不適正である場合に適正であると判定してしまったりする誤判定が防止され、入味量を正確に判定することができる。その結果、入味量が不適正である製品のみをパッケージング工程に戻すと共に、入味量が適正である製品のみを出荷することができる。なお、搬送ベルトを介して順次搬送されてくるビールが充填された瓶は照明部10によって背面から照明されており、検査者はビールの液面を認識しやすくなっている。従って、ビールの液面の誤認識に起因する入味量の誤判定も低減させることができる。
【0028】
このように、検査装置1によれば、容器に充填された液体の容量(入味量)の検査において、かかる入味量の誤判定を防止することができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一側面としての検査装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す検査装置をビールの入味量を検査する入味検査に使用する場合の配置例を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す検査装置のワイヤー部の機能を説明するための図である。
【図4】従来の検査者の目視による入味検査を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
1 検査装置
10 照明部
12 照明パネル
14 支持部
20 ワイヤー部
22 第1のワイヤー
24 第2のワイヤー
26 錘
30 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次搬送されてくる容器に充填された液体の容量が所定量であるかどうかを検査するための検査装置であって、
前記容器に前記所定量の液体が充填された場合の液面を示す基準線を有し、
前記基準線は、前記液面に対して水平な方向に配置された2つのワイヤーによって形成されることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記容器を照明する照明部を更に有し、
前記基準線は、前記容器と前記照明部との間に位置することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記2つのワイヤーを支持する支持部を更に有し、
前記支持部は、前記液面に対して垂直な方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項4】
前記2つのワイヤーは、前記液面に対して水平な方向において、5mmの間隔を有して配置されていることを特徴とする請求項1記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−20023(P2009−20023A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183601(P2007−183601)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】