説明

検査装置

【課題】第一回転体の回転を止めなくても検査対象保持対を保持した保持体の回転角度を調整できる検査装置を提供する。
【解決手段】チップホルダ47に検査チップ1をセットし、検査装置30の電源をONすると、主軸モータ35の軸36が回動し、プーリ37、ベルト39及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が回転する。検査チップ1に対してかかる遠心力の方向を変更する場合には、ステッピングモータ51が所定回転だけ回転して、カム板59の突起70がT型プレート48の溝部80を摺動してT型プレート48が上下動する。T型プレート48が一番下まで下がった状態では、チップホルダ47は、垂直状態から反時計回りに90°回動して水平状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象受体を回転する検査装置に関する。例えば、化学的、医学的、生物学的な検査を行うための検査対象受体、当該検査対象受体を保持して回転して遠心力を当該検査対象受体に付加する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学的、医学的、生物学的な検査の分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルス、細胞などの生体物質、及び化学物質等を検知したり定量する場合に使用するマイクロチップ又は検査チップと呼ばれる検査対象受体が提案されている。この検査対象受体では、内部の液体供給路に検査対象の液体を注入して、当該検査対象受体を遠心分離装置で回転させて、当該回転により生じる遠心力を利用して、検査対象受体内に形成された流路内の複数の混合槽に液体を移動させ検査を行うようになっている(例えば、特許文献1及び2参照)。この特許文献1及び2に記載遠心分離装置では、モータの主軸に円盤状の第一の回転体を接続し、当該第一の回転体の直径上に対向する一対の第二の回転体を設けている。第一の回転体は、モータの回転軸を中心に回転(主回転)するようになっている。また、当該第二の回転体には、検査対象受体の保持板が設けられており検査対象受体を保持して、モータの主軸に設けた副回転ギアにより、自転(副回転)するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110491号公報
【特許文献2】特開2008−8875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の発明では、第一の回転体の回転(主回転)と検査対象受体の回転(副回転)がモータの主軸の回転により一体に行われおり、第一の回転体の回転を止めないと第二の回転体を回転させて検査対象受体の保持角度を変更できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、第一回転体の回転を止めなくても検査対象受体を保持した保持体の回転角度を調整でき、そのことにより検量、混合等の検査作業を、第一回転体を止めることなく行うことが可能となる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の検査装置では、液体の検査対象を検査する用途に用いられ前記液体が移動する流体回路からなる検査対象受体を回転させて遠心力により前記液体を前記流体回路内にて移動させる検査装置であって、所定平面で回転する第一回転体と、当該第一回転体上で、前記所定平面と平行な軸線に対して、前記検査対象受体を所定角度回転した状態で保持する保持体と、前記第一回転体を回転させる回転駆動手段と前記保持体を所定角度回転した位置に角度を調整する角度調整手段とを備えている。
【0007】
この構成の検査対象受体では、第一回転体の回転を止めることなく、角度調整手段により、保持体を所定角度回転することができる。
【0008】
また、前記回転駆動手段は、主軸モータにより回動される内部が中空の主軸であり、前記角度調整手段は、前記主軸の内部を貫通し当該主軸の内部で可動する可動部と、当該可動部の動きを前記保持体の回転に変換する変換部とを備えてもよい。この場合には、主軸の内部で可動する可動部により、保持体を所定角度回転することができる。
【0009】
また、前記回転駆動手段は、主軸モータにより回動される主軸であり、前記角度調整手段は、前記主軸が中心部を貫通し当該主軸の外周部で可動する可動部と、当該可動部の動きを前記保持体の回転に変換する変換部とを備えてもよい。この場合には、主軸の外周部で可動する可動部により、保持体を所定角度回転することができる。
【0010】
また、前記可動部には、ラックギアが設けられ、前記変換部は、前記ラックギアに噛合するピニオンギアから構成されていてもよい。
【0011】
また、前記可動部は、前記主軸と平行に当該主軸の軸線方向に往復移動する第二軸であり、前記変換部は、当該第二軸の往復移動を前記保持体の回転に変換するリンク機構であってもよい。
【0012】
また、前記保持体は、検査対象受体の底面を前記所定平面と直交する状態で保持されてもよい。また、前記保持体は、前記第一回転体上に複数設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】検査チップの平面図である。
【図2】第一実施の形態の検査装置の正面図である。
【図3】第一実施の形態の検査装置の平面図である。
【図4】第一実施の形態の検査装置の動作状態の正面図である。
【図5】試薬を充填した状態の検査チップの平面図である。
【図6】遠心力の方向0°の状態を示す検査チップの平面図である。
【図7】遠心力の方向30°の状態を示す検査チップの平面図である。
【図8】遠心力の方向60°の状態を示す検査チップの平面図である。
【図9】遠心力の方向90°の状態を示す検査チップの平面図である。
【図10】遠心力の方向0°の状態を示す検査チップの平面図である。
【図11】第二実施の形態の検査装置の正面図である。
【図12】第二実施の形態の検査装置の動作状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施の形態について説明する。第一実施の形態では、検査対象受体及び当該検査対象を回転して検査対象受体に所定方向の遠心力を与える検査装置30を例に説明する。尚、以下の実施の形態では、検査対象受体の一例として検査チップ1を用い、検査チップ1の液体供給路7の延設方向の遠心力の方向に対する回転角度を変化させて、検査チップ1内で、液体を移動して検査を行う検査装置30について説明する。
【0015】
まず、検査チップ1の構造について図1を参照して説明する。図1に示すように、検査チップ1は平面視長方形で所定の厚みを有する合成樹脂の板材2から構成されている。検査チップ1には、液体を投入する液体投入口3、試薬を投入する第一試薬投入口4、第二試薬投入口5、第三試薬投入口6が平面視円形の窪みとして形成されている。液体投入口3、第一試薬投入口4、第二試薬投入口5、第三試薬投入口6は、検査チップ1を平面視した場合に、向かって右側から左側に向けて形成されている。従って、検査チップ1では、検査対象の液体に三つの試薬を投入することができるようになっている。
【0016】
また、液体投入口3には液体供給路7が接続され、第一試薬投入口4には第一試薬供給路8が接続され、第二試薬投入口5には第二試薬供給路9が接続され、第三試薬投入口6には第三試薬供給路10が接続されている。液体供給路7及び第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10は、板材2に溝状に形成されている。さらに、液体供給路7及び第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の末端部には、幅が狭くなった出口が各々設けられている。
【0017】
また、液体供給路7の下方側(図1に於ける下方側)には、液体供給路7から供給される検査対象の液体を所定量計量する計量部11が形成されている。計量部11は、第一壁部12と第二壁部13と、第一壁部12と第二壁部13との間に形成される空間部14とから構成されている。また、計量部11の第二壁部13の下方には、計量部11で所定量計量して第二壁部13から流れ出た液体(余った液体)を溜める余剰槽15が形成されている。図4に示す検査チップ1の下端部を水平方向とした場合には、第一壁部12の上面が、当該水平方向に対して、一例として、15°の角度となるように、第一壁部12が第一試薬供給路8方向に第一所定長さ延設されている。そして、第一壁部12の上面側に第一流路21が形成されている。また、第二壁部13は、第一壁部12の上面の延設方向に対して、180度未満から0度より大きい何れかの角度方向に第二所定長さ延設されている。尚、第一壁部12及び第二壁部13の延設方向の角度と長さは、計量部11で計り取る液体の量により決定する。
【0018】
また、第一試薬供給路8の下方側(図1に於ける下方側)には、計量部11の第一壁部12から流れ出た液体に第一試薬供給路8から供給された試薬を混合する第一混合槽16が形成されている。第一混合槽16には、第三壁部17が第二試薬供給路9方向に向けて所定長さ延設されている。第三壁部17の上面は、前記水平方向に対して、一例として、45°の角度で第二試薬供給路9方向に向けて斜め上方に所定長さ形成されている。第三壁部17の上面側には、第二流路22が形成されている。
【0019】
また、第二試薬供給路9の下方側(図1に於ける下方側)には、第一混合槽16の第三壁部17から流れ出た液体に第二試薬供給路9から供給された試薬を混合する第二混合槽18が形成されている。第二混合槽18には、第四壁部19が第三試薬供給路10方向に向けて所定長さ延設されている。第四壁部19の上面は、前記水平方向に対して、一例として、75°の角度で第三試薬供給路10方向に向けて斜め上方に所定長さ形成されている。第四壁部19の上面側には、第三流路23が形成されている。また、第三試薬供給路10の下方には、第二混合槽18の第四壁部19から流れ出た液体に第三試薬供給路10から供給された試薬を混合する第三混合槽20が形成されている。尚、計量部11、余剰槽15、第一混合槽16、第二混合槽18、第三混合槽20、第一流路21、第二流路22、第三流路23は、検査チップ1を構成する板材2に対する窪みとして形成されている。尚、流体回路の一例としては、余剰槽15、第一混合槽16、第二混合槽18、第三混合槽20、第一流路21、第二流路22、第三流路23等が該当する。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、上記のように構成された検査チップ1を保持したチップホルダ47を所定の自転角度に保持して、公転させて遠心力を付加する検査装置30について説明する。図2及び図3に示すように、検査装置30には、下部筐体31と、回転する円盤状のターンテーブル33と、ターンテーブル33に設けられたチップホルダ角度変更機構34とが設けられている。また、検査装置30には図示外の制御装置が接続されている。また、当該下部筐体31の上面部には、平面視長方形の板材から構成された上板32が設けられており、上板32上にターンテーブル33が回転可能に設けられている。
【0021】
ターンテーブル33には、図2及び図3に示すように水平方向と垂直方向の間で90度回転するチップホルダ47が一対設けられている。検査チップ1は平面視長方形に形成された板状の部材であるため、チップホルダ47は、検査チップ1を内部に収納できるように検査チップ1より一回り大きい正面視長方形に形成された箱状の部材である(図2及び図3参照)。このチップホルダ47は、検査チップ1の底面をターンテーブル33の上面と直交する状態で保持するようになっている。また、制御装置には、図示外のCPU、RAM、ROM等が内蔵され、ターンテーブル33の回転や、チップホルダ47の所定角度への自転を制御している。
【0022】
次に、図2〜図4を参照して、下部筐体31の構造を説明する。下部筐体31は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造となっており、図3に示すように、その上面には、平面視長方形の上板32が設けられ、当該上板32にターンテーブル33が回転可能に設けられている。また、図2に示すように、下部筐体31内には、内部を水平方向に貫く中フレーム部材52が設けられている。中フレーム部材52の左下側(図2における)には、ターンテーブル33を回転させるための主軸モータ35が設けられている。また、主軸モータ35の軸36には、プーリ37が固定されている。さらに、上板32の中央部をターンテーブル33を回動する主軸57が上方向に延設されて突き抜けている。この主軸57は、上板32の中央部下部に設けられた支持部材53の中央を貫通しターンテーブル33に接続されている。主軸57は支持部材53により回動可能に保持されている。支持部材53は、一対のフレーム54により中フレーム部材52に固定されている。また、主軸57には、プーリ38が固定され、ベルト39がプーリ37及びプーリ38間に掛け渡されている。従って、主軸モータ35の軸36の回動によりプーリ37、ベルト39及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が回転する。
【0023】
また、主軸57は、内部が中空になっており、その中で上下動する内軸である第二軸40が主軸57内を貫通して、チップホルダ角度変更機構34のラックギア43に接続されている。また、第二軸40の下端部は、当該第二軸40を回動可能に保持する軸受41により保持されている。軸受41の内部には、図示外のベアリングが設けられている。また、第二軸40は、その中間部を中フレーム部材52に固定された軸受55により、回動自在に保持されている。また、軸受41は、下部筐体31に設けられたT型プレート48に接続されている。T型プレート48は、ガイドレール56により、下部筐体31内で、上下方向に移動可能となっている。図2に示す状態が、T型プレート48が一番下まで下がった状態であり、図4に示す状態が、T型プレート48が一番上まで上がった状態である。
【0024】
また、下部筐体31内には、T型プレート48を上下動させるためのステッピングモータ51が図示外の固定具により固定されている。ステッピングモータ51の軸58には、円盤状のカム板59が固定されており、カム板59の正面には、円柱状の突起70が設けられている。また、T型プレート48の背面には、横長の溝部80が形成されており、突起70が溝部80内を摺動するようになっている。従って、ステッピングモータ51の軸58が回転すると、カム板59が回転し、突起70が上下して、当該突起70が摺動する溝部80が設けられているT型プレート48がガイドレール56に沿って上下動するようになっている。
【0025】
次に、図2〜図4を参照して、チップホルダ角度変更機構34の構造を説明する。チップホルダ角度変更機構34は、ターンテーブル33に一対のL型プレート60により固定されている。また、一対のL型プレート60の間には、第二軸40に固定されたラックギア43が設けられている。ラックギア43は、正面視縦長の金属製の板状の部材であり、その左右の端部にギアが各々刻まれている。また、各L型プレート60には、チップホルダ47が軸46により回動可能に支持されており、チップホルダ47には、ギア45が固定されており、ギア45には、L型プレート60に回動可能に支持されたピニオンギア44が噛合しており、ピニオンギア44は、ラックギア43に噛合している。そして、ラックギア43の上端部には、ガイド部材42が設けられており、ガイド部材42は、一対のフレーム62に保持された上部プレート61の中央の開口部により摺動可能に保持されている。従って、ラックギア43が上昇した場合には、ガイド部材42は、上部プレート61から突出する。
【0026】
次に、上記のように構成された、検査装置30の動作について説明する。使用者は、先ず、検査チップ1の液体投入口3に検査対象の液体を滴下し、第一試薬投入口4に第一の試薬を滴下し、第二試薬投入口5に第二の試薬を滴下し、第三試薬投入口6に第三の試薬を滴下する。次いで、検査装置30のチップホルダ47に検査チップ1をセットする。そして、検査装置30の図示外の制御装置の操作部を操作して、検査装置30の電源をONする。すると、主軸モータ35の軸36が回動し、プーリ37、ベルト39及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が回転する。
【0027】
この時に、検査チップ1に対してかかる遠心力の方向を変更する場合には、図示外の制御装置の制御により、ステッピングモータ51が所定回転だけ回転して、カム板59の突起70がT型プレート48の溝部80を摺動してT型プレート48が上下動し、第二軸40も上下動する。例えば、図2に示すようにT型プレート48が一番下まで下がった状態では、第二軸40も一番下まで下がり、図2に示す右側のチップホルダ47は、図4に示す垂直状態から反時計回りに90°回動し、図2に示す左側のチップホルダ47は、図4に示す垂直状態から時計回りに90°回動して、各々水平状態になる。また、図4に示すようにT型プレート48が一番上まで上がった状態では、第二軸40も一番上まで上がり、チップホルダ47は、図2に示す前記水平状態から各々90°回動して図4に示す垂直状態(0°)になる。従って、チップホルダ47の回動は、検査装置30のターンテーブル33の回転を止めることなく、ステッピングモータ51を所定ステップだけ回動することにより0°と90°の間であれば任意の角度にできる。従って、検査チップ1にかかる遠心力の方向を変更して液体や試薬を計量、混合するために一々、ターンテーブル33の回転を止める必要がない。
【0028】
次に、図5〜図10を参照して、本実施の形態の検査装置30と検査チップ1とを用いた検査方法の一例について説明する。先ず、図5に示すように、検査チップ1の液体投入口3に検査対象の液体を滴下し、第一試薬投入口4に第一の試薬を滴下し、第二試薬投入口5に第二の試薬を滴下し、第三試薬投入口6に第三の試薬を滴下する。
【0029】
次いで、検査装置30のチップホルダ47に検査チップ1をセットする。例えば、図2に示す検査装置30の向かって右側のチップホルダ47には、図1に示す検査チップ1の各供給路7〜10が水平となり、図1における検査チップ1の下端部が外側となり、検査チップ1の図1に示す平面が図2の手前側向きになるように検査チップ1を挿入する。また、図2に示す検査装置30の向かって左側のチップホルダ47には、図1に示す検査チップ1の各供給路7〜10が水平となり、図1における検査チップ1の下端部が外側となり、検査チップ1の図1に示す平面が図2の奥側向きになるように検査チップ1を挿入する。尚、検査チップ1の平面の向きは、上記とは逆にして、チップホルダ47に各々挿入しても良い。そして、図示外の制御装置の制御により検査装置30を駆動する。先ず、図6に示す検査チップ1の側面の延設方向(液体供給路7、第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の延設方向)と遠心力の方向の間の角度が0°になるようにして、遠心力が200g係るようにして回転を10秒間行う。この角度が0°の状態は、丁度、図6に示す状態である。この処理により、遠心力で図6に示すように、液体投入口3から投入した検査対象の液体は、遠心力により液体供給路7を経由して、計量部11に流出する。この時に、第二壁部13の重力方向と反対側方向に対する高さ(長さ)が、第一壁部12の重力方向と反対側方向に対する高さ(長さ)より低い(短い)ので、第一壁部12と第二壁部13との間で、第一壁部12の高さまでの容積を超える量の検査対象の液体は、第二壁部13を乗り越えて余剰槽15に流れ込む。従って、第一壁部12と第二壁部13とで作られる計量部11で所定量の検査対象の液体が計量される。この第一壁部12と第二壁部13との間の容積や第二壁部13の高さ(長さ)は、計量したい容積に基づいて予め設計しておく。ここで、水平に載置されている検査チップ1の図6における上方向への長さを高さとする。
【0030】
また、この処理により、図6に示すように、第一試薬投入口4から投入した試薬は、遠心力により第一試薬供給路8を経由して、第一混合槽16に流出して溜まる。同様に、第二試薬投入口5から投入した試薬は、遠心力により第二試薬供給路9を経由して、第二混合槽18に流出して溜まる。同様に、第三試薬投入口6から投入した試薬は、遠心力により第三試薬供給路10を経由して、第三混合槽20に流出して溜まる。
【0031】
次に図示外の制御装置の制御により、図2に示すステッピングモータ51が所定角度回転して、T型プレート48が上昇して、第二軸40が上昇し、ラックギア43が上昇して、ピニオンギア44が回転して、チップホルダ47が遠心力の方向に対して所定角度回転する。ここでは、一例として、図7に示す検査チップ1の側面の延設方向(液体供給路7、第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の延設方向)と遠心力の方向の間の角度が30°になるようにして、遠心力が200g係るようにして回転を10秒間行う。この処理により、第一壁部12の延設方向と図7に示す遠心力方向とのなす角の内、液体に接している面側の角度が鈍角になり、図7に示すように、計量部11で計り取られた検査対象の液体が第一壁部12の先端部を乗り越えて第一混合槽16に流れ込んで、第一混合槽16に溜まった試薬と混合される。この時に、第一混合槽16及び第二混合槽18に溜まった試薬はそのままで移動しない。第三壁部17、第四壁部19の傾斜角度が第一壁部12より大きく、図7に示す遠心力方向となす角の内、液体に接している面側の角度が鋭角となっているからである。
【0032】
次に、上記同様の制御で、一例として、図8に示す検査チップ1の側面の延設方向(液体供給路7、第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の延設方向)と遠心力の方向の間の角度が60°になるようにして、遠心力が200g係るようにして回転を10秒間行う。この処理により、第三壁部17の延設方向と図8に示す遠心力方向とのなす角の内、液体に接している面側の角度が鈍角になり、図8に示すように、第一混合槽16で混合された検査対象の液体と試薬が第三壁部17の先端部を乗り越えて第二混合槽18に流れ込んで、第二混合槽18に溜まった試薬と混合される。この時に、第二混合槽18に溜まった試薬はそのままで移動しない。第四壁部19の傾斜角度が第三壁部17より大きく、図8に示す遠心力方向となす角の内、液体に接している面側の角度が鋭角となっているからである。
【0033】
次に、上記同様の制御で、一例として、図9に示す検査チップ1の側面の延設方向(液体供給路7、第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の延設方向)と遠心力の方向の間の角度が90°になるようにして、遠心力が200g係るようにして回転を10秒間行う。この処理により、第四壁部19の延設方向と図9に示す遠心力方向とのなす角の内、液体に接している面側の角度が鈍角になり、図9に示すように、第二混合槽18で混合された検査対象の液体と試薬が第四壁部19の先端部を乗り越えて第三混合槽20に流れ込んで、第三混合槽20に溜まった試薬と混合される。
【0034】
次に、上記同様の制御で、一例として、図10に示す検査チップ1の側面の延設方向(液体供給路7、第一試薬供給路8〜第三試薬供給路10の延設方向)と遠心力の方向の間の角度が0°になるようにして、遠心力が200g係るようにして回転を10秒間行う。この処理により、遠心力で図5に示すように、第三混合槽20の下部に検査対象の液体と三種類の試薬が混合されたものが攪拌されて溜まる。このときに、余剰槽15に溜まった余剰の検査対象の液体はそのままである。その後、ターンテーブル3の回転が止まり、遠心力の付加が終了する。その後、図示外の光源と検出器とから構成される光学検査部に位置するようにターンテーブル3を停止して、検査チップ1に光源より光をあてて検出器にて透過光を測定する。
【0035】
次に、図11及び図12を参照して、第二実施形態の検査装置130について説明する。第二実施形態の検査装置130は、下部筐体31の構造は、第一実施形態の検査装置30と同じであるので、下部筐体31の構造の説明は省略し異なる部分だけ説明する。第二実施形態の検査装置130では、チップホルダ角度変更機構134の構造が第一実施形態の検査装置30と異なっているので、この部分を説明する。先に説明した第一実施形態の検査装置30のチップホルダ角度変更機構34では、ラックギア43とピニオンギア44とを使用していた。これに対して、第二実施形態の検査装置130のチップホルダ角度変更機構134では、一対のリンク71を使用し、第二軸40の上端部にリンク固定金具72を取り付け、当該リンク固定金具72の軸部73に一対のリンク71の一端部を回動自在に支持する。また、リンク71の当該一端部と反対の他端部をL型プレート60に軸65により、回動自在に支持された回転板66の軸64により回動自在に支持する。尚、回転板66はチップホルダ47に固定されている。
【0036】
次に、上記のように構成された、検査装置130の動作について説明する。使用者は、先ず、検査装置130のチップホルダ47に検査チップ1をセットする。そして、検査装置130の図示外の制御装置の操作部を操作して、検査装置130の電源をONする。すると、主軸モータ35の軸36が回動し、プーリ37、ベルト39及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が回転する。
【0037】
この時に、検査チップ1に対してかかる遠心力の方向を変更する場合には、図示外の制御装置の制御により、ステッピングモータ51が所定回転だけ回転して、カム板59の突起70がT型プレート48の溝部80を摺動してT型プレート48が上下動する。例えば、図11に示すようにT型プレート48が一番下まで下がった状態では、第二軸40も一番下まで下がり、リンク固定金具72が一番下まで下がるので、リンク71が水平になり、チップホルダ47は、垂直状態から反時計回りに90°回動して水平状態になる。また、図12に示すようにT型プレート48が一番上まで上がった状態では、第二軸40も一番上まで上がり、リンク固定金具72が一番上まで上がるので、リンク71が斜めになり、チップホルダ47は、前記水平状態から時計回りに90°回動して垂直状態(0°)になる。従って、チップホルダ47の回動は、検査装置130のターンテーブル33の回転を止めることなく、ステッピングモータ51を所定ステップだけ回動することにより0°と90°の間であれば任意の角度にできる。従って、検査チップ1にかかる遠心力の方向を変更して液体や試薬を計量、混合するために一々、ターンテーブル33の回転を止める必要がない。
【0038】
尚、第一回転体の一例としては、ターンテーブル33が相当し、保持体又は第二回転体の一例としては、チップホルダ47が相当し、回転駆動手段の一例としては、主軸モータ35が相当し、角度調整手段の一例としては、チップホルダ角度変更機構34、134が相当する。また、可動部の一例としては、第二軸40が相当し、変換部の一例としては、ラックギア43及びピニオンギア44又はリンク71が相当し、所定平面の一例としては、ターンテーブル33の上面又は検査装置30、130の上板32の上面が相当する。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能なことはいうまでもない。上記に実施の形態では、内部中空の主軸57の内側に、第二軸40を貫通して、当該第二軸40を上下動することで、チップホルダ47の角度を変更しているが、第二軸40は、主軸57の内部を通らずに、主軸57の外部に主軸57と平行に設けてもよい。また、チップホルダ角度変更機構34は、上記実施の形態に限られず、各種の力学的構成を用いても良い。
【0040】
尚、上記実施の形態の各壁の傾斜角度や遠心力の方向は単なる例示であり、測定する条件に合わせて予め決定すれば良い。例えば、上記実施の形態では、検査チップの回転角度は、0°〜90°あったが、角度の範囲の制約は無く、0°〜180°や0°〜360°回転できる構成としても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 検査チップ
3 液体投入口
4 第一試薬投入口
5 第二試薬投入口
6 第三試薬投入口
7 液体供給路
8 第一試薬供給路
9 第二試薬供給路
10 第三試薬供給路
11 計量部
12 第一壁部
13 第二壁部
14 空間部
15 余剰槽
16 第一混合槽
18 第二混合槽
20 第三混合槽
21 第一流路
22 第二流路
23 第三流路
30 検査装置
31 下部筐体
32 上板
33 ターンテーブル
34 チップホルダ角度変更機構
35 主軸モータ
36 軸
37 プーリ
38 プーリ
39 ベルト
40 第二軸
41 軸受
43 ラックギア
44 ピニオンギア
45 ギア
47 チップホルダ
48 T型プレート
51 ステッピングモータ
52 中フレーム部材
53 支持部材
55 軸受
56 ガイドレール
57 主軸
58 軸
59 カム板
60 L型プレート
64 軸
65 軸
66 回転板
70 突起
71 リンク
72 リンク固定金具
80 溝部
130 検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の検査対象を検査する用途に用いられ前記液体が移動する流体回路からなる検査対象受体を回転させて遠心力により前記液体を前記流体回路内にて移動させる検査装置であって、
所定平面で回転する第一回転体と、
当該第一回転体上で、前記所定平面と平行な軸線に対して、前記検査対象受体を所定角度回転した状態で保持する保持体と、
前記第一回転体を回転させる回転駆動手段と、
前記保持体を所定角度回転した位置に角度を調整する角度調整手段と
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記回転駆動手段は、主軸モータにより回動される内部が中空の主軸であり、
前記角度調整手段は、
前記主軸の内部を貫通し当該主軸の内部で可動する可動部と、
当該可動部の動きを前記保持体の回転に変換する変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、主軸モータにより回動される主軸であり、
前記角度調整手段は、
前記主軸が中心部を貫通し当該主軸の外周部で可動する可動部と、
当該可動部の動きを前記保持体の回転に変換する変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記可動部には、ラックギアが設けられ、
前記変換部は、前記ラックギアに噛合するピニオンギアから構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記主軸と平行に当該主軸の軸線方向に往復移動する第二軸であり、
前記変換部は、当該第二軸の往復移動を前記保持体の回転に変換するリンク機構であることを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項6】
前記保持体は、検査対象受体の底面を前記所定平面と直交する状態で保持することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の検査装置。
【請求項7】
前記保持体は、前記第一回転体上に複数設けられていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の検査装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−214897(P2011−214897A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81156(P2010−81156)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】