説明

検査装置

【課題】第1シートと第2シートとの位置ずれを検出する検査装置を提供する。
【解決手段】複数の第1透明電極パッドを電気的に接続して構成される第1電極が複数組形成された第1シートと、複数の第2透明電極パッドを電気的に接続して構成される第2電極が複数組形成された第2シートとを貼り合わせて形成された静電容量センサ30において、第1透明電極パッドと第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを検査する検査装置100は、第1シート上を走査するプローブ1と、当該プローブ1が走査される位置に対向する第2シート上の位置を少なくとも含む所定の領域を接地する接地部4と、第1電極の夫々と電気的に接続された端子電極に入力する検査信号を生成する信号発生部5と、プローブ1を介して取得された信号に基づいて第1シートと第2シートとの位置ずれを示す位置ずれ情報を演算する位置ずれ情報演算部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行方向に並んだ所定の形状からなる複数の第1透明電極パッドを電気的に接続して構成される第1電極が複数組形成された第1シートと、列方向に並んだ所定の形状からなる複数の第2透明電極パッドを電気的に接続して構成される第2電極が複数組形成された第2シートとが貼り合わせて形成された静電容量センサにおいて、第1透明電極パッドと第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒューマン・インタフェース・デバイスの一つとしてタッチパネルが利用されている。このようなタッチパネルには、ユーザからの入力を静電容量の変化に基づいて検出するものがある。このため、この種のタッチパネルは、行方向に電気的に接続された透明電極パッド(以下「第1透明電極パッド」)が形成された透明シート(以下「第1シート」)と、列方向に電気的に接続された透明電極パッド(以下「第2透明電極パッド」)が形成された透明シート(以下「第2シート」)とを貼り合わせて形成される。第1シートと第2シートとを貼り合わせた際、第1透明電極パッドと第2透明電極パッドとの間に位置ずれがあるとユーザからの入力を誤検出する可能性がある。そこで、静電容量センサを作製する場合、第1シートと第2シートとを貼り合わせ後に、位置ずれが無いか否かを検出する検査が行われる。このような検査において利用される技術として下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の透明導電膜検査装置は、透明導電膜が塗布された基板上に赤外線領域の波長の光を照射する光源と、透明導電膜から反射された光を検出するカメラとを備えて構成される。当該透明導電膜検査装置では、カメラで検出した反射された光を目視或いは画像認識処理により透明導電膜の状態を検査し良否判定を行なっている。一方、近年、透明導電膜の形成に用いられるITO(酸化インジウム・スズ)材料は透明度を向上すべく改良され、上述のような赤外線領域の波長の光が反射し難いものもある。このため、特許文献1に記載の透明導電膜検査装置を利用した場合であっても、第1シートと第2シートとの位置ずれを適切に検出することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−273997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題に鑑み、行方向に電気的に接続された透明電極が形成された第1シートと、列方向に電気的に接続された透明電極が形成された第2シートとの位置ずれを適切に検出することが可能な検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る検査装置の特徴構成は、行方向に並んだ所定の形状からなる複数の第1透明電極パッドを電気的に接続して構成される第1電極が複数組形成された第1シートと、列方向に並んだ前記所定の形状からなる複数の第2透明電極パッドを電気的に接続して構成される第2電極が複数組形成された第2シートとが、前記複数の第1透明電極パッドと前記複数の第2透明電極パッドとが重複することなく貼り合わせて形成された静電容量センサにおいて、前記第1透明電極パッドと前記第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを検査するために、前記第1シート上を走査するプローブと、前記プローブが走査される位置に対向する前記第2シート上の位置を少なくとも含む所定の領域を接地する接地部と、前記第1電極の夫々と電気的に接続された端子電極が備えられ、前記端子電極に入力する検査信号を生成する信号発生部と、前記プローブを介して取得された信号に基づいて前記第1シートと前記第2シートとの位置ずれを示す位置ずれ情報を演算する位置ずれ情報演算部と、を備える点にある。
【0007】
このような特徴構成とすれば、第1シート及び第2シートが光を反射し難い材料であっても、第1シート上を走査されるプローブを介して取得される信号に基づき第1シート上の静電容量の変化を検出することができる。したがって、このように得られた静電容量の変化を示す分布と第1シート上に形成された第1透明電極パッドの設計パターンとを比較することにより、第1透明電極パッドと第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを容易に検査することが可能となる。また、位置ずれの検査に光源を利用しないので検査者の安全を確保できる。更には、静電容量センサを使用する時と同じ電気信号を印加して検査することができるので、第1シートと第2シートとの静電結合状態も検出することが可能となる。したがって、このような検出結果を第1透明電極パッド及び第2透明電極パッドの設計にフィードバックすることにより適正な設計指標を定めることが可能である。また、第1シート上の走査後に、静電容量センサを裏返して配置し、改めて第2シート上を走査することにより、第1透明電極パッド及び第2透明電極パッドの夫々が適切に電気的に接続されているか否か(断線していないか否か)を検査する装置としても使用することも可能である。
【0008】
また、前記プローブが、複数の行に亘って一括で走査可能に複数備えられていると好適である。
【0009】
このような構成とすれば、複数行の走査を一括で行うことができるので、第1シート上を走査する回数を減らすことができる。したがって、位置ずれの検査に要する時間を短縮することが可能となる。
【0010】
また、前記プローブが、所定領域毎に走査可能に複数備えられていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、1本のプローブが予め設定された所定領域を走査するだけで第1シート上の全面に亘って走査することができる。したがって、位置ずれの検査に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0012】
また、前記演算して求められた位置ずれ情報を明示する明示手段を備えていると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、貼り合わせ時に位置ずれを有して形成された静電容量センサに検査信号を入力した際に得られる信号強度分布がモアレとして表示されるので、位置ずれを容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】静電容量センサの構成の概略を示す図である。
【図2】図1におけるII−II線の断面を示す図である。
【図3】第1シートを示す図である。
【図4】第2シートを示す図である。
【図5】検査装置の概略構成を示す図である。
【図6】プローブでの走査の形態を示す図である。
【図7】明示部に表示されるマップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に係る検査装置100は、静電容量センサ30を構成する第1シート10と第2シート20とを貼り合わせた際に位置ずれが生じているか否かを検査する機能を備えている。図1は静電容量センサ30の構成の概略を示した図である。図2は本検査装置100の概略構成を模式的に示した図である。
【0016】
1.静電容量センサ
まず、本発明に係る検査装置100の検査対象となる静電容量センサ30の構成について説明する。静電容量センサ30は、第1シート10と第2シート20とを貼り合わせて形成される。このような静電容量センサ30が図1に示される。また、図2には、図1におけるII−II線の断面図が示される。
【0017】
図3には、第1シート10を模式的に示した図が示される。第1シート10は、PET(Polyethylene Terephthalate)フィルムを用いて構成される。第1シート10上に、行方向に延びるように形成された第1電極12と、第1電極12の一方端に電気的に接続され、第1シート10の周縁に沿って形成された線状の引き回し線40と、引き回し線40に電気的に接続された第1端子電極13とが形成されている。第1電極12は、一定間隔をあけて平行に複数(複数組)形成されている。第1電極12は、行方向に並んだ所定の形状からなる複数の第1電極パッド11と、隣り合う第1電極パッド11を互いに電気的に接続する配線14とから構成される。行方向とは、図3における横方向である。所定の形状とは、本実施形態では四角形が相当する。図3に示されるように、第1透明電極パッド11は第1シート10上に複数形成され、その中央の領域においては夫々が同サイズの四角形で構成される。例えば、第1透明電極パッド11は、一辺が4〜6mmの正方形で構成されると好適である。また、第1シート10上に形成された複数の第1透明電極パッド11は、行方向(図3においては横方向)に互いに隣接し合う第1透明電極パッド11と配線14で電気的に接続される。このような第1透明電極パッド11及び配線14は、ITO(酸化インジウム・スズ)膜を用いて形成される。
【0018】
このように接続された第1透明電極パッド11は1組の第1電極12を構成し、第1シート10には、第1電極12が複数組形成される。図3には、このような第1電極12が12組形成されている例が示される。また、第1シート10上には、第1電極12の夫々と電気的に接続された第1端子電極13が備えられる。すなわち、第1電極12と第1端子電極13とは、一対一で対応して形成される。第1端子電極13は、本発明に係る「端子電極」に相当する。
【0019】
図4には、第2シート20を模式的に示した図が示される。第2シート20も、PETフィルムを用いて構成される。第2シート20上に、列方向に延びるように形成された第2電極22と、第2電極22の一方端に電気的に接続され、第2シート20の周縁に沿って形成された線状の引き回し線50と、引き回し線50に電気的に接続された第2端子電極23とが形成されている。第2電極22は、一定間隔をあけて平行に複数形成されている。第2電極22は、列方向に並んだ所定の形状からなる複数の第2電極パッド21と、隣り合う第2電極パッド21を互いに電気的に接続する配線24とから構成される。第2透明電極パッド21は、第2シート20の中央の領域においては上述の第1透明電極パッド11と同サイズの形状で形成される。図4に示されるように、第2透明電極パッド21も、第2シート20上に複数形成される。また、第2シート20上に形成された複数の第2透明電極パッド21は、列方向(図4においては縦方向)に互いに隣接し合う第2透明電極パッド21と配線24で電気的に接続される。このような第2透明電極パッド21及び配線24も、ITO膜を用いて形成される。
【0020】
このように接続された第2透明電極パッド21は1組の第2電極22を構成し、第2シート20には、第2電極22が複数組形成される。図4には、このような第2電極22が7組形成される例が示される。また、第2シート20上には、第2電極22の夫々と電気的に接続された第2端子電極23が備えられる。すなわち、第2電極22と第2端子電極23とは、一対一で対応して形成される。
【0021】
静電容量センサ30は、図1及び図2に示されるように、複数の第1透明電極パッド11と複数の第2透明電極パッド21とが重複することなく、第1シート10と第2シート20とを貼り合わせて形成される。重複することなくとは、静電容量センサ30の上面視において、複数の第1透明電極パッド11と複数の第2透明電極パッド21とが重なっていないことを示す。係る場合、第1シート10と第2シート20とは、第1シート10の配線14と第2シート20の配線24とが重複するように貼り合わされる。第1シート10と第2シート20とを貼り合わせた場合には、上面視における複数の第1透明電極パッド11と複数の第2透明電極パッド21との間隔が一様であると更に好適である。この間隔としては、例えば0.1〜0.3mm程度とすることが可能である。静電容量センサ30は、このような構成からなる。このような場合には、第1透明電極パッド11と第2透明電極パッド21とに、相対的な位置ずれが生じていないことになる。
【0022】
2.検査装置
本発明に係る検査装置100は、上述のように構成される静電容量センサ30において、第1透明電極パッド10と第2透明電極パッド20との相対的な位置ずれを検査する。以下に、検査装置100について説明する。図5には、検査装置100の概略構成が示される。検査装置100は、プローブ1、プローブ移動手段2、モータ制御部3、接地部4、信号発生部5、位置ずれ情報演算部6、明示部7を備えて構成される。
【0023】
図5に示されるように、検査対象となる静電容量センサ30は、接地部4(後述する)に配置される。本実施形態では、静電容量センサ30は、第2シート20が接地部4と当接するように配置され、第1シート10がプローブ1側を向くように配置される。係る場合には、第2シート20を接地部4側から真空引きして吸着させると好適である。
【0024】
プローブ1は、第1シート10上を走査する。プローブ1は、先端が球状(例えば半径0.5mm程度)の金属製の棒で形成される。プローブ1は、この球状部分が静電容量センサ30の第1シート10上に当接され、当該第1シート10上を走査される。このような走査形態が、図6に示される。図6(a)は上面視であり、図6(b)は横方向からの断面図である。プローブ1は、図6に示されるように、第1シート10の所定の幅Wからなる領域を行方向及び列方向に移動しながら走査される。プローブ10が列方向の下端まで達すると、当該走査した所定の幅Wからなる領域と隣接する領域を列方向の上端から下端に向けて行方向及び列方向に移動しながら走査される。このような走査は、第1シート10の全面が完了するまで行われる。
【0025】
このようなプローブ1の移動は、プローブ移動手段2により行われる。プローブ移動手段2は、X軸移動手段2X、Y軸移動手段2Y、Z軸移動手段2Zからなる。X軸移動手段2Xはプローブ1をX軸方向に移動させるX軸モータからなり、Y軸移動手段2Yはプローブ1をY軸方向に移動させるY軸モータからなる。また、Z軸移動手段2Zはプローブ1をZ軸方向に移動させるZ軸モータからなる。静電容量センサ30においては、X軸方向は行方向が相当し、Y軸方向は列方向が相当し、Z軸方向は静電容量センサ30の鉛直方向が相当する。もちろん、これ以外に方向を定めることは当然に可能である。特にZ軸移動手段2Zは、プローブ1が第1シート10を押し付けすぎないように第1シート10に対するプローブ1の高さを調整する機能を備えている。これにより、プローブ1で第1シート10の表面に傷が付かないようにすることができる。
【0026】
モータ制御部3は、X軸モータ制御部3X、Y軸モータ制御部3Y、Z軸モータ制御部3Zからなる。X軸モータ制御部3XはX軸モータを制御し、Y軸モータ制御部3YはY軸モータを制御する。また、Z軸モータ制御部3ZはZ軸モータを制御する。このような構成により、プローブ1をXYZの各方向に自由に移動することが可能となる。
【0027】
接地部4は、プローブ1が走査される位置に対向する第2シート20上の位置を少なくとも含む所定の領域を接地する。プローブ1が走査される位置に対向する第2シート20上の位置とは、プローブ1が走査される位置の裏面の第2シート20上の位置である。接地部4は、このようなプローブ1が走査される位置の裏面の第2シート20上の所定の領域を接地する。図6(b)には、第2シート20が接地部4に吸着され接地されている状態が示される。これにより、第2シート20に起因する静電容量を一定にすることができるので、第1シート10に起因する静電容量を検出しやすくなる。したがって、第2透明電極パッド21に対する第1透明電極パッド11の相対的な位置ずれを適切に検出することが可能となる。
【0028】
信号発生部5は、第1端子電極13に入力する検査信号を生成する。検査信号とは第1透明電極パッド11と第2透明電極パッド21との相対的な位置ずれを検出するために第1端子電極13に入力される信号である。検査信号は交流信号であれば良い。本実施形態では、検査信号として正弦波信号が用いられる場合の例を示して説明する。特に、本実施形態では、検査信号として、周波数が250kHz、振幅が10Vppの正弦波信号が用いられる。なお、上述のようにプローブ1が走査される位置の裏側を含む第2シート20上の所定の領域は、接地部4により接地される。したがって、第2シート20の第2端子電極23には交流信号を入力する必要は無い。
【0029】
ここで、信号発生部5から第1端子電極13に検査信号を入力する場合には、信号発生部5の出力端子(図示せず)と第1端子電極13との間をケーブルで接続する必要がある。このような接続を行う際、ケーブルの一端に複数のクリップを設け、当該複数のクリップで第1端子電極13を個別に挟む構成とすると接続が容易にできる。また、当該クリップと信号発生部5との間に例えばトランジスタ等を備えると好適である。これにより、トランジスタ等をスイッチとして利用することができるので、当該トランジスタの導通状態を電気的に切り替えることにより、所望の第1端子電極に検査信号を入力することが可能となる。
【0030】
また、第1端子電極13との接続は、上述のクリップに代えて、第1端子電極13と対応する電極パターンが印刷されたプリント基板を利用することも可能である。係る場合には、当該プリント基板に形成された電極パターンと第1端子電極13とを当接させることにより、検査信号を容易に入力することが可能である。なお、プリント基板は、リジット基板又はプレキシブル基板の何れであっても良い。更には、プリント基板に印刷される電極パターンは、1つでも良いし、複数でも良い。このようにプリント基板を用いることにより、第1端子電極13のピッチを細くすることができるので第1シート10における静電容量の変化を検出する検出領域以外の部分のスペースをコンパクトにすることができる。
【0031】
位置ずれ情報演算部6は、プローブ1を介して取得された信号に基づいて第1シート10と第2シート20との位置ずれを示す位置ずれ情報を演算する。第1シート10の第1端子電極13には、信号発生部5から正弦波信号が入力される。一方、プローブ1は、第1シート10上を走査され、第1シート10を介して信号を取得する。この際、取得される信号は、信号発生部5から入力された正弦波信号が、第1透明電極パッド11に起因する静電容量に応じて変化した信号である。プローブ1を介して取得された信号は、位置ずれ情報演算部6に入力される。
【0032】
位置ずれ情報演算部6は、信号増幅部6Aと半波整流部6BとAD変換部6Cとを有して構成される。信号増幅部6AはOP―AMPで構成され、プローブ1を介して取得された信号の振幅を増幅する。例えば、100〜1000倍程度に増幅すると好適である。信号増幅部6Aで増幅された信号は、半波整流部6Bに伝達される。半波整流部6Bはダイオードで構成され、増幅された信号を半波整流する。本実施形態では、増幅された信号から正電位の信号のみを取得する。半波整流部6Bで整流された信号は、AD変換部6Cに伝達される。AD変換部6Cは、半波整流された信号から波高値を取得する。波高値は、増幅された信号を例えばコンデンサを用いて平滑し、平滑された電圧値を波高値として取得することが可能である。位置ずれ情報演算部6は、このような波高値を位置ずれ情報として第1シート10の全面に亘って演算して求める。なお、本実施形態における波高値は、第1透明電極パッド11が存在する部分は高くなり、第1透明電極パッド11が存在しない部分は低くなる。
【0033】
明示部7は、位置ずれ情報演算部6により演算して求められた位置ずれ情報を明示する明示手段に相当する。位置ずれ情報は、上述のように第1シート10においてプローブ1により走査された位置に対応して演算された波高値を示したものである。明示部は、このような波高値をマップで表示する。明示部7は、このようなマップを表示するモニタとすることが可能である。
【0034】
3.位置ずれ
図7には明示部7に表示されるマップの一例が示される。マップは、位置ずれ情報演算部6により求められた波高値(コンデンサを用いて平滑された電圧値)を基に色分けして表示される。図7に示される例では、電圧値の高い部分は濃い色で示され、電圧値の低い部分は薄い色で示される。このように表示されるマップを基に、位置ずれが生じているか否かを判断することが可能である(後述する)。
【0035】
図7(a)は位置ずれがない場合に表示されるマップの典型例である。図7(b)は、例えば第1シート10の一部分が第2シート20に対して列方向に平行にずれている場合等に得られるマップである。係る場合には、色の濃い部分と薄い部分とが列方向に沿って平行に区分けされるように表示される。また、図7(c)は、例えば第1シート10が第2シート20に対して回転してずれている場合(ずれ角度が1度未満)等に得られるマップである。係る場合には、色の濃い部分と薄い部分との双方がマップの全体に亘って斜め方向に延びるように表示される。
【0036】
3−1.電位差による判定
マップは、上述のように電圧値の違い(信号強度の違い)に応じて色分けして表示される。第1シート10と第2シート20とが、位置ずれがなく適切に貼り合わされている場合には、濃い色と薄い色との区分けが明確になる。そこで、マップに示される電圧値の判定基準値として濃い色の閾値電圧と薄い色の閾値電圧とを予め設定し、これらの閾値電圧に基づいて判定すると好適である。例えばマップ内の電圧値の最大電圧値が1.0Vである場合には、濃い色の閾値電圧を0.8V以上とし、薄い色の閾値電圧を0.4V未満とすると好適である。これにより、マップ上に0.4V以上0.8V未満で示される部分(例えば0.6Vで示される部分)があれば、位置ずれが生じていると判定することが可能である。
【0037】
3−2.最大値と最小値との差による判定
マップ内の電圧値の最大値(最大電圧値)と最小値(最小電圧値)との差に基づいて判定することも可能である。第1シート10と第2シート20とが、位置ずれがなく適切に貼り合わされている場合には、最大電圧値と最小電圧値との差が大きくなる。そこで、例えば、最大電圧値と最小電圧値との差の判定基準値を予め設定し、最大電圧値と最小電圧値との差が当該判定基準値より小さい場合には位置ずれが生じていると判定することが可能である。
【0038】
3−3.パターンの形状による判定
マップで示されるパターンの形状で判定することも可能である。パターンの形状とは、本実施形態では、第1透明電極パッド11のパターンである。当該第1透明電極パッド11は正方形で形成されているので、マップ内のパターンが正方形でない場合には位置ずれが生じていると判定することが可能である。このような場合には、マップにはモアレとなって表示される。したがって、このようなモアレが含まれている場合には位置ずれが生じていると判定することも可能である。
【0039】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、プローブ1は、1本のプローブ1で第1シート10上を走査するものとして図6に示した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、プローブ1が、複数の行に亘って一括で走査可能に複数備えられていても良い。例えば、プローブを第1電極12の組数に応じた本数を備えることにより、プローブ1の走査は、行方向への走査を一回行うだけで第1シート10上を全面に亘って走査することが可能である。或いは、プローブ1が、所定領域毎に走査可能に複数備えられていても良い。このような構成であれば、プローブ1の走査は、所定の領域のみを走査するだけで第1シート10上を全面に亘って走査することが可能である。したがって、走査する時間を短縮することができるので、検査に要する時間を短くできる。また、このように複数のプローブ1を設ける場合には、夫々のプローブ1が自由に出退できる構成とすると好適である。このような構成とすることにより、第1シート10の表面の凹凸に合わせてプローブ1を出退させることができるので、第1シート10に傷が付くことを防止できる。
【0040】
上記実施形態では、検査装置100は、明示部7を備えているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。検査装置100は、明示部7を備えずに構成することも当然に可能である。すなわち、例えば検査を行う検査者が位置ずれ情報を直接見て判断する構成とすることも可能であるし、位置ずれ情報を予め設定した判定閾値と比較して位置ずれを検出する構成とすることも当然に可能である。
【0041】
上記実施形態では、第1シート10上をプローブ1で走査するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1シート10を接地部4で接地し、第2シート20上をプローブ1で走査することも当然に可能である。
【0042】
上記実施形態では、プローブ1が第1シート10上を所定の幅を有して列方向に沿って走査されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。プローブ1が第1シート10上を所定の幅を有して行方向に沿って走査することも当然に可能である。
【0043】
上記実施形態では、位置ずれ情報演算部6は、半波整流を行って波高値を演算するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。半波整流に代えて全波整流を行って波高値を演算することも可能であるし、ピークホールド回路等を用いて波高値を演算することも当然に可能である。或いは、他の方法で波高値を演算することも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、行方向に並んだ所定の形状からなる複数の第1透明電極パッドを電気的に接続して構成される第1電極が複数組形成された第1シートと、列方向に並んだ所定の形状からなる複数の第2透明電極パッドを電気的に接続して構成される第2電極が複数組形成された第2シートとが貼り合わせて形成された静電容量センサにおいて、第1透明電極パッドと第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを検査する検査装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:プローブ
4:接地部
5:信号発生部
6:位置ずれ情報演算部
7:明示部(明示手段)
10:第1シート
11:第1透明電極パッド
13:第1端子電極(端子電極)
20:第2シート
21:第2透明電極パッド
30:静電容量センサ
100:検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向に並んだ所定の形状からなる複数の第1透明電極パッドを電気的に接続して構成される第1電極が複数組形成された第1シートと、列方向に並んだ前記所定の形状からなる複数の第2透明電極パッドを電気的に接続して構成される第2電極が複数組形成された第2シートとが、前記複数の第1透明電極パッドと前記複数の第2透明電極パッドとが重複することなく貼り合わせて形成された静電容量センサにおいて、
前記第1透明電極パッドと前記第2透明電極パッドとの相対的な位置ずれを検査する検査装置であって、
前記第1シート上を走査するプローブと、
前記プローブが走査される位置に対向する前記第2シート上の位置を少なくとも含む所定の領域を接地する接地部と、
前記第1電極の夫々と電気的に接続された端子電極が備えられ、前記端子電極に入力する検査信号を生成する信号発生部と、
前記プローブを介して取得された信号に基づいて前記第1シートと前記第2シートとの位置ずれを示す位置ずれ情報を演算する位置ずれ情報演算部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記プローブが、複数の行に亘って一括で走査可能に複数備えられている請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記プローブが、所定領域毎に走査可能に複数備えられている請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記演算して求められた位置ずれ情報を明示する明示手段を備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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