説明

検量線生成装置、検量線生成システム、検量線生成方法及びプログラム

【課題】 検量線を示すパラメータを自動的に推定することができ、例えばフローコントローラにおけるボードコンピュータ等によっても実現可能な検量線生成装置等を提案する。
【解決手段】 濃度x及びパラメータpを含むロジスティック式y=f(x,p)において、パラメータpを推定することにより検量線を生成する自動検量線生成器5であって、計測装置3より複数の既知濃度及び計測値の組み合わせを受信する計測値受信部21と、パラメータp及びオフセット値X_Offsetの初期値に対して、計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)との差分を小さくする新たなパラメータpj及びオフセット値X_Offsetの推定値を計算するパラメータ推定手段を備える。また、計測データ収集部11は、例えば、磁気ビーズによる化学発光計測において、界面活性剤と酵素標識抗原の攪拌等を含め、全ての処理を自動的に実現可能なものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検量線生成装置、検量線生成システム、検量線生成方法及びプログラムに関し、特に、所定のロジスティック式におけるパラメータを推定することにより、自動的に検量線を生成する検量線生成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、これまで、例えば界面活性剤を用いた計測等において、化学発光検出器に対して計測対象を与えるフローコントローラを研究開発してきた(非特許文献1参照)。
【0003】
また、従来のフローコントローラにおいて、検量線を示すシグモナイド曲線のパラメータは、人手で求められていた。すなわち、シグモナイド曲線のパラメータは、既知濃度の界面活性剤とその計測値とを一対として、少数の測定ポイントに対して、図式的な方法でカーブフィットさせて求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.Zhang、外7名著,“Sequential injection chemiluminescence immunoassay for nonionic surfactants by using magnetic microbeads”,ANALYTICA CHIMICA ACTA 600,p.105-113,2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人手によってシグモナイド曲線のパラメータを求める場合、測定者の熟練度や状態などによって、求められたシグモナイド曲線のパラメータが変動することがあった。そのため、より安定的な結果を得るため、ボードコンピュータにより自動的にカーブフィットさせるパラメータを求めることが期待されていた。
【0006】
また、図6を参照して、非特許文献1に記載された、従来のフローコントローラによる、界面活性剤を用いた計測システム101について説明する。
【0007】
計測システム101は、光電子カウンティング装置117によりフローセル113から生じた光電子を数えて計測処理を行う化学発光検出器103と、化学発光検出器103のフローセル113に対して計測対象114を排出するフローコントローラ105を備える。化学発光検出器103とフローコントローラ105は、ケーブル111で接続されており、化学発光検出器103とフローコントローラ105の動作は、パーソナルコンピュータなどを用いて実現される制御装置109により制御されている。また、化学発光検出器103は、フローセル113において磁気ビーズの上昇及び下降を制御するための電磁石115と、レンズ118を用いて検出された光電子を数えて計測処理を行う光電子カウンティング装置117を有する。計測対象114は、計測処理後に、回収部119に排出される。
【0008】
フローコントローラ105は、液体の吸入及び排出を行うために、6個のバルブ1271,・・・,1276から1つのバルブを選択するバルブセレクタ125を有する。バルブセレクタ125の6個のバルブの接続関係は、以下のとおりである。バルブ1271は、抗体を固定するための磁気ビーズを保持する磁気ビーズ貯液部131に接続される。バルブ1272は、洗浄液を保持する洗浄液貯液部143に接続される。バルブ1273は、界面活性剤試料液又は酵素標識界面活性剤を保持する界面活性剤試料液等貯液部136に接続される。バルブ1274は、ルミノール基質液を保持するルミノール貯液部139に接続される。バルブ1275は、廃液を保持する廃液貯液部141に接続される。バルブ1276は、フローセル113に接続される。
【0009】
バルブセレクタ125は、保持コイル123及びシリンジポンプ121を経由してバッファ液を保持するバッファ液貯液部107と接続されている。フローコントローラ105は、予め、バッファ液が充填されており、バルブセレクタ125によりバルブ1271、1272、1273及び1274のいずれかが選択された場合には、各バルブに接続された貯液部が保持する液体を吸入し、バルブ1275又は1276が選択された場合には、フローコントローラ105に保持されている液体を、廃液貯液部141又は化学発光検出器103に排出する。
【0010】
しかしながら、従来のフローコントローラ105は、選択可能なバルブの数が少なく、さらに、各バルブを選択して吸入及び排出を行う場合にも、液体の容量及び単位時間あたりの流量について、微小な制御を行うことが難しかった。そのため、例えば、図6の界面活性剤試料液等貯液部136には、予め、試料又は酵素標識抗原(試料等)133と界面活性剤135を人手で攪拌したものを保持させていたように、検出処理として必要とされる全ての工程を自動で行うことは困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、検量線を示すパラメータを自動的に推定することができ、例えばフローコントローラにおけるボードコンピュータ等によっても実現可能な検量線生成装置等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)に対するロジスティック式y=f(x,pi)において、前記各パラメータpiを推定することによりyの検量線を生成する検量線生成装置であって、関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、J組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信する受信手段と、前記パラメータpj並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するパラメータ推定手段を備える。
【0013】
請求項2に係る発明は、濃度の対数値x及び3個のパラメータp1、p2及びp3を含むロジスティック式y=p1/(1+p2×exp(−p3×x))におけるパラメータp1、p2及びp3を推定することにより検量線を生成する検量線生成装置であって、J組(Jは、3以上の自然数)の既知濃度の対数値xj及び前記各既知濃度における計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信する受信手段と、前記パラメータp1、p2及びp3並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとp1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たなパラメータp1、p2及びp3の推定値を計算するパラメータ推定手段を備える。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の検量線生成装置であって、前記パラメータ推定手段は、前記オフセット値X_Offsetの初期値を、xj−X_Offsetの値が、計測値の最大値と最小値の平均値よりも大きい計測値に対応する濃度の対数値と、小さい計測値に対応する濃度の対数値とで正と負に分かれる値とし、前記オフセット値Y_Offsetの初期値を、前記計測値yjの最小値又は最大値とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3記載の検量線生成装置であって、前記パラメータ推定手段は、前記各パラメータに加えて、前記各オフセット値の新たな推定値を計算するものであり、y=p1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetに対して、前記各パラメータ及び前記各オフセット値の初期値の近傍で偏微分によるテイラー展開を行い、線形近似することにより、新たな前記各パラメータ及び前記各オフセット値の推定値を計算する。
【0016】
請求項5に係る発明は、界面活性剤又は試料を用いた計測処理を行う計測装置と、前記計測装置における既知濃度の界面活性剤を用いた計測処理による計測値に基づいて検量線を示すパラメータ及びオフセット値を生成する検量線生成装置を含む検量線生成システムであって、前記計測装置は、前記界面活性剤又は前記試料を用いた計測処理を行う計測データ収集手段と、前記計測データ収集手段がJ個(Jは、3以上の自然数)の既知濃度の界面活性剤に対する計測処理を行うことにより得られた前記各既知濃度の対数値xj(jは、J以下の自然数)及び当該各既知濃度に対応する計測値yjの組み合わせを、前記検量線生成装置に対して送信する計測値送信手段と、前記検量線生成装置が生成した前記パラメータ及び前記オフセット値を受信するパラメータ受信手段と、前記パラメータ及び前記オフセット値に基づく検量線を用いて、前記計測データ収集手段が試料に対する計測処理を行うことにより得られた計測値に対応する前記試料の濃度を求める試料濃度計測手段を有し、前記検量線生成装置は、濃度の対数値x及び3個のパラメータp1、p2及びp3を含むロジスティック式y=p1/(1+p2×exp(−p3×x))におけるパラメータp1、p2及びp3を推定するものであって、前記計測値送信手段から送信されたJ組の前記既知濃度の対数値xjと前記計測値yjの組み合わせを受信する計測値受信手段と、パラメータp1、p2及びp3並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとp1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たなパラメータp1、p2及びp3の推定値を計算するパラメータ推定手段と、前記計測装置に対して、フロー推定された前記パラメータ及び前記オフセット値を送信するパラメータ送信手段を有し、前記計測データ収集手段は、フローセルにおける光電子のカウンティングにより磁気ビーズを用いた化学発光計測を行う化学発光検出器に対して、検査対象となる液体を排出するものであって、複数のバルブから1つのバルブを選択するバルブセレクタを有し、予めバッファ液が充填されており、接続された貯液部が保持する液体を吸入して保持し、又は、選択されたバルブに接続された貯液部又は前記化学発光検出器に対して保持する液体を排出するものであり、前記バルブセレクタの複数のバルブには、前記磁気ビーズを保持する磁気ビーズ貯液部に接続される磁気ビーズバルブと、抗原を保持する抗原貯液部に接続される抗原バルブと、攪拌する液体を保持する攪拌貯液部に接続される攪拌バルブと、界面活性剤又は試料を保持する界面活性剤・試料貯液部に接続される界面活性剤・試料バルブと、前記化学発光検出器のフローセルに接続される検出器バルブが含まれており、前記磁気ビーズバルブを選択して前記磁気ビーズを吸入し、前記抗原バルブを選択して前記抗原を吸入し、前記攪拌バルブを選択して保持する液体の一部を排出し、前記界面活性剤・試料バルブを選択して前記界面活性剤又は前記試料を吸入し、前記攪拌バルブを選択して保持する液体の一部を排出して同量の液体を吸引することを複数回繰り返し、前記検出器バルブを選択して攪拌後の液体の一部を排出する。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の検量線生成システムであって、前記バルブセレクタの複数のバルブには、さらに、ルミノールを保持する貯液部に接続されるルミノールバルブが存在し、前記化学発光検出器は、前記検出器バルブを選択して前記攪拌後の液体の一部を排出する処理の後に、光量計測を開始するものであり、前記磁気ビーズバルブを選択して前記バッファ液に前記磁気ビーズを吸入した後に、前記検出器バルブを選択して保持する液体の一部を排出して前記化学発光検出器に前記磁気ビーズを捕捉させて、前記抗原バルブを選択して抗原を吸入し、前記検出器バルブを選択して前記攪拌後の液体の一部を排出した後に、前記ルミノールバルブを選択してルミノールを吸入して、前記計測器バルブを選択して光量計測を開始した前記化学発光検出器に保持する液体の一部を排出する。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6記載の検量線生成システムであって、前記バルブセレクタの複数のバルブには、前記磁気ビーズバルブ、前記ルミノールバルブ、前記検出器バルブ及び廃液を保持するための廃液貯液部に接続される廃液バルブが各一つずつ存在し、前記抗原バルブは、前記抗原が一種類である場合には1つ存在し、前記抗原が複数種類である場合には各種類に対応して複数存在し、前記界面活性剤・試料バルブが一つの場合は前記攪拌バルブも一つであり、前記界面活性剤・試料バルブが複数の場合は前記攪拌バルブの数が前記界面活性剤・試料バルブの数と同数又は前記界面活性剤・試料バルブの数よりも少なく、少なくとも、前記攪拌バルブが少ないときには攪拌処理後に前記攪拌貯液部の洗浄を行う。
【0019】
請求項8に係る発明は、濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)を含むロジスティック式y=f(x,pi)において、前記各パラメータpiを推定することにより検量線を生成する検量線生成方法であって、関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、受信手段が、J組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信するステップと、パラメータ推定手段が、前記パラメータpj並びに前記オフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するステップを含む。
【0020】
請求項9に係る発明は、コンピュータを、濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)を含むロジスティック式y=f(x,pi)における前記各パラメータpjを推定するものであり、関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、受信手段が受信したJ組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせにおいて、前記パラメータpj並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するパラメータ推定手段として機能させることにより、検量線を生成するためのプログラムである。
【0021】
なお、本願発明を、請求項5記載の計測データ収集手段として捉え、計測システムとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本願各請求項に係る発明によれば、所定のロジスティック式におけるパラメータを自動的に推定することが可能となる。特に、本願請求項2に係る発明は、3つのパラメータを含む。ロジスティック式の特性から、3つの既知濃度と計測値の組み合わせがあれば、検量線を作成することが可能となる。このパラメータ推定は、通常、約100回程度、近似精度を繰り返し高めていくことにより、実用可能な程度の精度を確保することができる。そのため、ボードコンピュータなどによって実現可能である。そして、自動的に検量線を求めることにより、人手により求めるよりも、安定的な結果を得ることが可能となる。
【0023】
さらに、本願請求項5に係る発明によれば、攪拌バルブは、攪拌を行うための攪拌貯液部に接続される構成とされている。さらに、磁気ビーズバルブ及び抗原バルブに接続して磁気ビーズ及び抗原を吸入し、攪拌バルブを選択して攪拌貯液部に排出し、界面活性剤・試料バルブを選択して界面活性剤又は試料を吸入する。このような準備を行った上で、攪拌バルブを選択して、保持する液体の一部を排出して同量の液体を吸引することを複数回(例えば3回くらい)繰り返すことにより、抗原と界面活性剤又は試料との攪拌を十分に行うことが可能となる。そして、検出器バルブを選択して攪拌後の液体の一部を化学発光検出器に排出することにより、界面活性剤と抗原の攪拌処理等を含め、化学発光計測に必要とされる処理を全て自動的に実現することができる。そのため、検量線作成処理も含め、自動的に実現することが可能となる。
【0024】
さらに、本願請求項6に係る発明によれば、磁気ビーズを吸入した段階で、化学発光検出器に磁気ビーズを捕捉させておき、さらに、ルミノールを吸入して、制御装置が光量計測を開始している化学発光検出器に排出することにより、より精確に化学発光計測が可能となる。
【0025】
さらに、本願請求項7に係る発明によれば、攪拌バルブの数を、界面活性剤・試料バルブの数と同数又は少ない数として、攪拌貯液部の洗浄を行いつつ計測処理を行うことにより、多濃度の界面活性剤を用いた検量線作成や多種類の試料に対する試料計測について、一連の計測処理を自動化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の実施の形態に係る検量線生成システム1の概要を示したブロック図である。
【図2】図1の検量線生成システム1の動作の一例を示すフロー図である。
【図3】図1の自動検量線生成器5により推定された検量線の一例を示すグラフである。
【図4】図1の計測データ収集部11の一例である、フローコントローラ55を用いた計測システム51の概要を示したブロック図である。
【図5】図4の計測システム51の動作の一例を示したフロー図である。
【図6】従来のフローコントローラを用いた界面活性剤計測システム101の概要を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
図1は、本願発明の実施の形態に係る検量線生成システム1の概要を示したブロック図である。検量線生成システム1は、界面活性剤又は試料を用いた計測処理を行う計測装置3(本願請求項の「計測装置」の一例)と、計測装置3における既知濃度の界面活性剤を用いた計測処理による計測値に基づいて検量線を示すパラメータ及びオフセット値を生成する自動検量線生成器5(本願請求項の「検量線生成装置」の一例)を含む。
【0029】
計測装置3は、界面活性剤又は試料を用いた計測処理を行う計測データ収集部11(本願請求項の「計測データ収集手段」の一例)と、検量線作成処理を行うか否かを判定する判定部13と、検量線作成処理を行う場合に、自動検量線生成器5に対して、既知濃度及び計測値の組み合わせを送信する計測値送信部15(本願請求項の「計測値送信手段」の一例)と、自動検量線生成器5が生成したパラメータ及びオフセット値を受信するパラメータ受信部17(本願請求項の「パラメータ受信手段」の一例)と、検量線作成処理を行わない場合に、パラメータ及びオフセット値に基づく検量線を用いて、計測値に対応する試料の濃度を求める試料濃度推定部19(本願請求項の「試料濃度計測手段」の一例)を有する。以下では、既知濃度に対する計測処理に得られる既知濃度及び計測値の組み合わせの数をJ(Jは、3以上の自然数)とする。濃度は、対数値で表わされ、xj(jは、J以下の自然数)と表わす。計測値は、yjと表わす。なお、本願発明においては、濃度は、対数値に限らず、そのままの値でもよく、また、他の処理により得られた値でもよい。また、計測値もそのままの値に限らず、特定の処理後に得られた値であってもよい。
【0030】
自動検量線生成器5は、計測値送信部15が送信した既知濃度の対数値xjと計測値yjの組み合わせを受信する計測値受信部21(本願請求項の「計測値受信手段」の一例)と、J組の既知濃度の対数値xjと計測値yjの組み合わせを収集する計測データ収集部23と、所定のロジスティック式に対するパラメータ及びオフセット値を推定する曲線演算部25(本願請求項の「パラメータ推定手段」の一例)と、計測装置3に対してパラメータ及びオフセット値を送信するパラメータ送信部27を有する。
【0031】
ここで、ロジスティック式は、一般的には、計測値yについて、濃度xに対する関数y=f(x,β)として表わされるものである。ここで、βは、n個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)のベクトルとする。関数f(x,β)は、単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものである。
【0032】
以下では、パラメータは3個であり、a,b及びcとする。そして、ロジスティック式の一例として、y=a/(1+b×exp(−c×x))の場合について説明する。また、濃度xに対するオフセット値をX_Offsetとする。計測値yに対するオフセット値をY_Offsetとする。
【0033】
続いて、図2のフロー図を参照して、図1の検量線生成システム1の動作の一例を説明する。計測データ収集部11は、既知濃度の界面活性剤に対して計測処理を行うことにより、J個の既知濃度と計測値の組み合わせを収集する(ステップSTP1)。そして、計測値送信部15は、計測値受信部21に対して、J個の既知濃度と計測値の組み合わせを送信する(ステップSTP2)。
【0034】
本実施例が想定する計測処理においては、ロジスティック式は、c<0となり、一般的に、単調減少となる(図3参照)。そのため、ロジスティック式は、xが無限大の場合、ゼロに収束する。そのため、曲線演算部25は、Y_Offsetの初期値を、既知濃度が最も小さい値に対する計測値とする。また、ロジスティック式は、ほぼ点対称な形状となる。そのため、曲線演算部25は、X_Offsetの初期値を、既知濃度の対数値及び計測値について正負で対称となるように決定する。例えば、曲線演算部25は、X_Offsetの初期値を、既知濃度の対数値xjの平均値として決定してもよい。また、計測値の変化が最も大きい濃度として決定してもよい。さらに、ロジスティック式は、無限大又はマイナス無限大の濃度に対して、計測値yjの最大値又は最小値に収束することが予想される。そのため、曲線演算部25は、X_Offsetの初期値を、計測値yjの最大値及び最小値の平均値を基準として、この値よりも大きい計測値と小さい計測値を区別可能な濃度により決定してもよい。
【0035】
パラメータa,b及びcの初期値は、予め定められたものでもよい。また、例えば、ロジスティック式は、xがマイナス無限大の場合、aに収束する。そのため、パラメータaの初期値を、計測値yjの最大値からY_Offsetの値を引いた値とするようにしてもよい。このように、既知濃度及び計測値に基づいて計算により求めてもよい。
【0036】
曲線演算部25は、例えば、非線形最小二乗法(Levenberg-Marquardt法。以下、「LM法」という。)に基づいて各パラメータ及び各オフセット値を推定する。LM法の概要について説明する。LM法は、パラメータのベクトルをβとして、ロジスティック式f(x,β)に対して、式(1)で表わされる偏差の二乗の和S(β)を最小化する問題の解法の一つである。その解法は、f(x,β)におけるβを、新たな推定値β+δにより置き換える。そして、式(2)にあるように、各xjにおいて線形近似を行うことにより、δを決定する。ここで、Gjは、式(3)で表わされるように、βに関するfの勾配(gradient)である(ステップSTP3)。この勾配は、予め計算することが可能である。そのため、ボードコンピュータ等によって実現が可能である。なお、ここでは、ベクトルβには、パラメータが含まれる場合について説明している。しかし、本願発明においては、ベクトルβは、パラメータa,b及びcだけでなく、オフセット値X_Offset又は/及びY_Offsetを含め、各パラメータ及び各オフセット値を推定するものであってもよい。ステップSTP3において、特に、最初の推定値を求める処理は、ロジスティック式に対して、各パラメータの初期値の近傍で偏微分によるテイラー展開を行い、線形近似することにより、前記新たなパラメータ及びオフセット値の推定値を計算することと表現されるものである。
【0037】
【数1】

【0038】
式(2)において、最小化されると、δに関するSの勾配は0となる。そのため、曲線演算部25は、収束したか否かの判断を行う(ステップSTP4)。勾配が一定の範囲内にあり収束していると判断される場合には、ステップSTP5の処理に進む。収束していないと判断される場合には、所定の反復回数を超えたときは、収束は困難であると判断し、ステップSTP5の処理に進む。所定の反復回数は、通常、100回程度で収束することから、それ以上の数(例えば200回)を設定する。所定の反復回数を超えていない場合には、再度ステップSTP3の処理を行い、近似精度を高める。
【0039】
パラメータ送信部27は、パラメータ及びオフセット値を計測装置に送信する。また、曲線演算部25が収束困難と判断した場合には、その旨を計測装置に通知する(ステップSTP5)。
【0040】
計測装置3では、パラメータ及びオフセット値が推定された場合、計測データ収集部11は、濃度が不明な試料に対して計測処理を行う(ステップSTP6)。そして、試料濃度推定部19は、計測値に対して、パラメータ及びオフセット値に基づく検量線を用いて、濃度推定処理を行う(ステップSTP7)。
【0041】
図3は、自動検量線生成器5により推定された検量線の一例を示すグラフである。表1に示されるように、既知濃度と計測値の組み合わせはP0〜P4の5点である。検量線Lは、推定されたものである。検量線Lを用いることにより、例えば、所要濃度と計算推定値の組み合わせとして、所要濃度0.02に対して計算推定値0.122145、0.05に対して0.122137、2に対して0.115221、5に対して0.097613、100に対して0.060431などの値を得ることができる。
【0042】
【表1】

【0043】
さらに、図4を参照して、図1の計測データ収集部11について、磁気ビーズによる化学発光イムノアッセイ計測を行う場合の一例として、フローコントローラ55を用いた計測システム51の構成について説明する。
【0044】
計測システム51は、光電子を数えて計測処理を行う化学発光検出器53と、化学発光検出器53に対して計測対象となる液体を排出するフローコントローラ55を備える。化学発光検出器53とフローコントローラ55はケーブル61で接続されており、化学発光検出器53及びフローコントローラ55の動作は、制御装置59により制御されている。制御装置59は、例えば、パーソナルコンピュータや、タッチパネルを用いたユーザインタフェースを備えたシステムに組み込まれたコンピュータなどを用いて実現されるものである。
【0045】
化学発光検出器53は、フローコントローラ55により計測対象64が与えられるフローセル63と、フローセル63において磁気ビーズの上昇及び下降を制御するための電磁石65と、レンズ68を用いて検出された光電子を数えて計測処理を行う光電子カウンティング装置67を有する。計測対象64は、計測処理後に、回収部69に排出される。
【0046】
フローコントローラ55は、液体の吸入及び排出を行うために、12個のバルブ771,・・・,7712(本願請求項の「バルブ」の一例)から1つのバルブを選択するバルブセレクタ75(本願請求項の「バルブセレクタ」の一例)を有する。バルブセレクタ75の12個のバルブの接続関係は以下のとおりである。バルブ771(本願請求項の「磁気ビーズバルブ」の一例)は、抗体を固定するための磁気ビーズを保持する磁気ビーズ貯液部81に接続される。バルブ772(本願請求項の「抗原バルブ」の一例)は、酵素標識抗原を保持する抗原貯液部83に接続される。バルブ773,・・・,776(本願請求項の「界面活性剤・試料バルブ」の一例)は、それぞれ、異なる濃度の界面活性剤又は異なる種類の試料を保持する界面活性剤・試料貯液部851,・・・,854に接続される。バルブ777(本願請求項の「ルミノールバルブ」の一例)は、ルミノールを保持するルミノール貯液部89に接続される。バルブ778(本願請求項の「廃液バルブ」の一例)は、廃液を保持するための廃液貯液部91に接続される。バルブ779,・・・,7711(本願請求項の「攪拌バルブ」の一例)は、それぞれ、攪拌する液体を保持するための攪拌貯液部871,・・・,873に接続される。バルブ7712(本願請求項の「検出器バルブ」の一例)は、化学発光検出器53のフローセル63に接続される。
【0047】
バルブセレクタ75は、保持コイル73及びシリンジポンプ71を経由してバッファ液を保持するバッファ液貯液部57と接続されている。フローコントローラ55は、計測処理を行うにあたり、予め、バッファ液を充填されている。フローコントローラ55は、バルブセレクタ75により選択されたバルブに接続された貯液部から、制御装置59により指定された容量の液体を指定された流速で液体を吸入し、又は、バルブセレクタ75により選択されたバルブに接続された貯液部若しくは化学発光検出器53に対して、制御装置59により指定された容量の液体を指定された流速で液体を排出する。
【0048】
続いて、図5を参照して、図4の計測システム51の動作について、界面活性剤・試料貯液部851(以下、図5の説明において「試料貯液部851」という。)に試料が保持されており、試料貯液部851に保持された試料について、攪拌貯液部871を用いて攪拌処理を行い、試料計測処理を行う場合を例として説明する。
【0049】
制御装置59は、化学発光検出器53及びフローコントローラ55の洗浄処理を行う(ステップST1)。ここでは、例えば、フローコントローラ55において、計測処理に使う磁気ビーズ貯液部81、抗原貯液部83、試料貯液部851、ルミノール貯液部89に接続されるバルブを選択させて吸入処理を行うことにより、各バルブから各貯液部に至るルートでの空気を除く処理、バルブ778を選択してバッファ液を廃液してフローコントローラ55内にバッファ液を充填する処理、バルブ7712を選択して化学発光検出器53にバッファ液を排出して洗浄する処理などを行う。
【0050】
続いて、制御装置59は、電磁石65を制御して、フローセル63において磁気ビーズが上昇する状態とする(ステップST2)。そして、制御装置59は、フローコントローラ55に対して、バルブ771を選択して磁気ビーズを吸入し(ステップST3)、バルブ7712を選択して化学発光検出器のフローセル63に排出して、化学発光検出器に吸入した磁気ビーズの一部を捕捉させる(ステップST4)。
【0051】
続いて、制御装置59は、フローコントローラ55に対して、バルブ772を選択して酵素標識抗原を吸入し(ステップST5)、バルブ779を選択して排出して、吸入した酵素標識抗原の一部を攪拌貯液部871に保持させ(ステップST6)、バルブ773を選択して試料を吸入し(ステップST7)、バルブ779を選択して排出して、吸入した試料の一部を攪拌貯液部871に保持させる(ステップST8)。続いて、攪拌貯液部871に保持された液体の一部について、同量の液体について、吸入(ステップST9)及び排出(ステップST10)を所定の回数(例えば3回など)繰り返して攪拌処理を行い(ステップST11)、攪拌後の液体を攪拌貯液部871から吸入する(ステップST12)。そして、バルブ7712を選択して攪拌後の液体を化学発光検出器53のフローセル63に排出する(ステップST13)。
【0052】
続いて、制御装置59は、化学発光検出器53に対して、光量計測を開始させる(ステップST14)。そして、制御装置59は、フローコントローラ55に対して、バルブ777を選択してルミノールを吸入し(ステップST15)、バルブ7712を選択して化学発光検出器53に排出して、化学発光検出器53における化学発光イムノアッセイ計測を行わせる(ステップST16)。計測処理の終了後、制御装置59は、化学発光検出器53に対して、光量計測を停止させる(ステップST17)。そして、制御装置59は、電磁石65を制御して、フローセル63において磁気ビーズが下降する状態とする(ステップST18)。
【0053】
続いて、制御装置59は、化学発光検出器53及びフローコントローラ55の洗浄処理を行う(ステップST19)。ここでは、例えば、フローコントローラ55において、バルブ778を選択して廃液してフローコントローラ55内にバッファ液を充填する処理、バルブ799を選択して攪拌貯液部871に所定量のバッファ液を排出して攪拌貯液部871が保持する液体を吸入することにより攪拌貯液部871を洗浄する処理、バルブ7712を選択して化学発光検出器53にバッファ液を排出してフローセル63を洗浄する処理などを行う。
【0054】
図4の計測システム51において、複数種類の酵素標識抗原が存在する場合には、各種類の抗原に対応してする抗原貯液部を複数設け、各抗原貯液部に対して複数のバルブを割り当てる。また、複数種類の試料を計測する場合には、各試料を界面活性剤・試料貯液部851,・・・,854に保持させ、各試料について同様の処理を行うことにより、各試料の計測処理を行うことができる。ここで、攪拌貯液部871,・・・,873は、各資料の計測処理後に洗浄処理を行うことができることから、界面活性剤・試料貯液部851,・・・,854と同数又は少ない数とし、割り当てるバルブは、界面活性剤・試料貯液部851,・・・,854に接続しうる予備として用意しておくことが望ましい。
【0055】
また、検量線作成処理についても、各界面活性剤・試料貯液部851,・・・,854に異なる濃度の界面活性剤を保持させ(例えば、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbなど)、各濃度の界面活性剤について同様の処理を行うことにより、実現することが可能である。
【0056】
なお、図5において、ステップST16の計測処理の前に光量計測が開始(ステップST14)されていればよく、光量計測を開始する前にルミノール吸入処理(ステップST15)を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明は、例えば、残留農薬を検出する計測システムなど、多方面への応用が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 検量線生成システム、3 計測装置、5 自動検量線生成器、11 計測データ収集部、15 計測値送信部、17 パラメータ受信部、19 試料濃度推定部、21 計測値受信部、23 計測データ収集部、25 曲線演算部、27 パラメータ送信部、51 計測システム、53 化学発光検出器、55 フローコントローラ、57 バッファ液貯液部、75 バルブセレクタ、771,・・・,7712 バルブ、83 抗原貯液部、851,・・・,854 界面活性剤・試料貯液部、871,・・・,873 攪拌貯液部、89 ルミノール貯液部、91 廃液貯液部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)に対するロジスティック式y=f(x,pi)において、前記各パラメータpiを推定することによりyの検量線を生成する検量線生成装置であって、
関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、
J組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信する受信手段と、
前記パラメータpj並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するパラメータ推定手段
を備える検量線生成装置。
【請求項2】
濃度の対数値x及び3個のパラメータp1、p2及びp3を含むロジスティック式y=p1/(1+p2×exp(−p3×x))におけるパラメータp1、p2及びp3を推定することにより検量線を生成する検量線生成装置であって、
J組(Jは、3以上の自然数)の既知濃度の対数値xj及び前記各既知濃度における計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信する受信手段と、
前記パラメータp1、p2及びp3並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとp1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たなパラメータp1、p2及びp3の推定値を計算するパラメータ推定手段
を備える検量線生成装置。
【請求項3】
前記パラメータ推定手段は、
前記オフセット値X_Offsetの初期値を、xj−X_Offsetの値が、計測値の最大値と最小値の平均値よりも大きい計測値に対応する濃度の対数値と、小さい計測値に対応する濃度の対数値とで正と負に分かれる値とし、
前記オフセット値Y_Offsetの初期値を、計測値yjの最小値又は最大値とする、
請求項2記載の検量線生成装置。
【請求項4】
前記パラメータ推定手段は、前記各パラメータに加えて、前記各オフセット値の新たな推定値を計算するものであり、
y=p1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetに対して、前記各パラメータ及び前記各オフセット値の初期値の近傍で偏微分によるテイラー展開を行い、線形近似することにより、新たな前記各パラメータ及び前記各オフセット値の推定値を計算する、請求項2又は3記載の検量線生成装置。
【請求項5】
界面活性剤又は試料を用いた計測処理を行う計測装置と、前記計測装置における既知濃度の界面活性剤を用いた計測処理による計測値に基づいて検量線を示すパラメータ及びオフセット値を生成する検量線生成装置を含む検量線生成システムであって、
前記計測装置は、
前記界面活性剤又は前記試料を用いた計測処理を行う計測データ収集手段と、
前記計測データ収集手段がJ個(Jは、3以上の自然数)の既知濃度の界面活性剤に対する計測処理を行うことにより得られた前記各既知濃度の対数値xj(jは、J以下の自然数)及び当該各既知濃度に対応する計測値yjの組み合わせを、前記検量線生成装置に対して送信する計測値送信手段と、
前記検量線生成装置が生成した前記パラメータ及び前記オフセット値を受信するパラメータ受信手段と、
前記パラメータ及び前記オフセット値に基づく検量線を用いて、前記計測データ収集手段が試料に対する計測処理を行うことにより得られた計測値に対応する前記試料の濃度を求める試料濃度計測手段を有し、
前記検量線生成装置は、濃度の対数値x及び3個のパラメータp1、p2及びp3を含むロジスティック式y=p1/(1+p2×exp(−p3×x))におけるパラメータp1、p2及びp3を推定するものであって、
前記計測値送信手段から送信されたJ組の前記既知濃度の対数値xjと前記計測値yjの組み合わせを受信する計測値受信手段と、
パラメータp1、p2及びp3並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとp1/(1+p2×exp(−p3×(xj−X_Offset)))+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たなパラメータp1、p2及びp3の推定値を計算するパラメータ推定手段と、
前記計測装置に対して、前記フロー推定された前記パラメータ及び前記オフセット値を送信するパラメータ送信手段を有し、
前記計測データ収集手段は、フローセルにおける光電子のカウンティングにより磁気ビーズを用いた化学発光計測を行う化学発光検出器に対して、検査対象となる液体を排出するものであって、複数のバルブから1つのバルブを選択するバルブセレクタを有し、予めバッファ液が充填されており、接続された貯液部が保持する液体を吸入して保持し、又は、選択されたバルブに接続された貯液部又は前記化学発光検出器に対して保持する液体を排出するものであり、
前記バルブセレクタの複数のバルブには、
前記磁気ビーズを保持する磁気ビーズ貯液部に接続される磁気ビーズバルブと、
抗原を保持する抗原貯液部に接続される抗原バルブと、
攪拌する液体を保持する攪拌貯液部に接続される攪拌バルブと、
界面活性剤又は試料を保持する界面活性剤・試料貯液部に接続される界面活性剤・試料バルブと、
前記化学発光検出器のフローセルに接続される検出器バルブが含まれており、
前記磁気ビーズバルブを選択して前記磁気ビーズを吸入し、
前記抗原バルブを選択して前記抗原を吸入し、
前記攪拌バルブを選択して保持する液体の一部を排出し、
前記界面活性剤・試料バルブを選択して前記界面活性剤又は前記試料を吸入し、
前記攪拌バルブを選択して保持する液体の一部を排出して同量の液体を吸引することを複数回繰り返し、
前記検出器バルブを選択して攪拌後の液体の一部を排出する、
検量線生成システム。
【請求項6】
前記バルブセレクタの複数のバルブには、さらに、ルミノールを保持する貯液部に接続されるルミノールバルブが存在し、
前記化学発光検出器は、前記検出器バルブを選択して前記攪拌後の液体の一部を排出する処理の後に、光量計測を開始するものであり、
前記磁気ビーズバルブを選択して前記バッファ液に前記磁気ビーズを吸入した後に、前記検出器バルブを選択して保持する液体の一部を排出して前記化学発光検出器に前記磁気ビーズを捕捉させて、前記前記抗原バルブを選択して抗原を吸入し、
前記検出器バルブを選択して前記攪拌後の液体の一部を排出した後に、前記ルミノールバルブを選択してルミノールを吸入して、前記計測器バルブを選択して光量計測を開始した前記化学発光検出器に保持する液体の一部を排出する、
請求項5記載の検量線生成システム。
【請求項7】
前記バルブセレクタの複数のバルブには、
前記磁気ビーズバルブ、前記ルミノールバルブ、前記検出器バルブ及び廃液を保持するための廃液貯液部に接続される廃液バルブが各一つずつ存在し、
前記抗原バルブは、前記抗原が一種類である場合には1つ存在し、前記抗原が複数種類である場合には各種類に対応して複数存在し、
前記界面活性剤・試料バルブが一つの場合は前記攪拌バルブも一つであり、
前記界面活性剤・試料バルブが複数の場合は前記攪拌バルブの数が前記界面活性剤・試料バルブの数と同数又は前記界面活性剤・試料バルブの数よりも少なく、少なくとも、前記攪拌バルブが少ないときには攪拌処理後に前記攪拌貯液部の洗浄を行う、
請求項5又は6記載の検量線生成システム。
【請求項8】
濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)を含むロジスティック式y=f(x,pi)において、前記各パラメータpiを推定することにより検量線を生成する検量線生成方法であって、
関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、
受信手段が、J組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせを受信するステップと、
パラメータ推定手段が、前記パラメータpj並びに前記オフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するステップ
を含む検量線生成方法。
【請求項9】
コンピュータを、
濃度x及びn個(nは3以上の自然数)のパラメータpi(iはn以下の自然数)を含むロジスティック式y=f(x,pi)における前記各パラメータpjを推定するものであり、
関数f(x,pi)は、xに対して単調増加又は単調減少の関数であり、xが無限大となる場合に一定の値に収束し、xがマイナス無限大となる場合にも一定の値に収束するものであり、
受信手段が受信したJ組(Jは、n以上の自然数)の既知濃度xj及び前記各既知濃度xjにおける計測値yj(jは、J以下の自然数)の組み合わせにおいて、前記パラメータpj並びにオフセット値X_Offset及びY_Offsetの初期値に対して、前記計測値yjとf(xj−X_Offset,pi)+Y_Offsetとの差分の全部又は一部を小さくする新たな前記パラメータpjの推定値を計算するパラメータ推定手段として機能させることにより、検量線を生成するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37332(P2012−37332A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176477(P2010−176477)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(509031899)矢部川電気工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】