説明

楔を備えたワンウェイクラッチ

【課題】減少させられた軸方向の寸法を備えたワンウェイクラッチを提供する。
【解決手段】相対回動不能な結合のために、少なくとも1つの楔エレメント106の周の、第2のレース102に接触する部分の寸法130が、該部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンウェイクラッチに関する。
【0002】
さらに、本発明は、ステータワンウェイクラッチに関する。
【0003】
さらに、本発明は、力伝達のための装置における改善に関する。力は、回転型の入力ユニット(たとえば原動機付き車両の原動機)と、回転駆動されるユニット(たとえば原動機付き車両に設けられた自動変速機)との間で伝達することができるかまたは回転型の入力ユニット(たとえば原動機付き車両の変速機)の内部で伝達することができる。特に本発明は、軸方向の寸法よりも大きい周方向寸法を有する楔を備えたワンウェイクラッチに関する。
【背景技術】
【0004】
図1には、一般的なブロック線図が示してある。このブロック線図には、一般的な車両に設けられた原動機7と、トルクコンバータ10と、変速機8と、ディファレンシャル/アクスルアッセンブリ9との間の関係が示してある。知られているように、トルクコンバータは、トルクを原動機付き車両の原動機から変速機に伝達するために働く。
【0005】
ポンプ37と、タービン38と、ステータ39とが、トルクコンバータの主構成要素を成している。ポンプがカバー11に溶接されると、トルクコンバータは、閉鎖されたチャンバになる。カバーはコンバータ連行ディスク41(フレキシブルプレート)に結合されている。さらに、このコンバータ連行ディスク41は原動機7のクランクシャフト42にねじ締結されている。カバーは、このカバーに溶接されたウェブまたはピンを使用してコンバータ連行ディスクに結合することができる。ポンプとカバーとの間の溶接結合部は原動機トルクをポンプに伝達する。したがって、このポンプは常に原動機回転数で回転させられる。ポンプの機能は、この回転運動を使用して液体を半径方向外向きでかつ軸方向でタービンに搬送することにある。したがって、ポンプとして遠心ポンプが働く。この遠心ポンプは液体を半径方向の小さな入口から半径方向の大きな出口に搬送し、したがって、液体のエネルギを増加させる。変速機クラッチとトルクコンバータクラッチとを繋ぐための圧力は、変速機に設けられた付加的なポンプによって形成される。このポンプはポンプハブによって駆動される。
【0006】
トルクコンバータ10内には、ポンプ(時折インペラとも呼ばれる)と、タービンと、ステータ(時折リアクタとも呼ばれる)とによって、液体循環路が形成される。この液体循環路によって、車両が停止している場合に、原動機が引き続き回転することができ、運転者によって所望される場合に、車両が再び加速することができる。変速機変速比に類似して、トルクコンバータは原動機トルクをトルク比によって助成する。このトルク比は入力トルクに対する出力トルクの比に等しい。トルク比は、タービンのトルクが低いかまたは零に等しい場合(ストールとも呼ばれる)に最高となる。ストール時のトルク比は、通常、1.8〜2.2の範囲内にある。これは、トルクコンバータの出力トルクが入力トルクの1.8〜2.2倍の大きさに等しいことを意味している。これに対して、出力回転数は入力回転数よりも著しく低い。なぜならば、タービンが出力側に結合されていて、入力側が原動機回転数で回転する間に回転させられないからである。
【0007】
タービン38は、液体によってポンプ37から吸収されたエネルギを車両の駆動のために使用する。タービンハウジング22はタービンハブ19に結合されている。このタービンハブ19はタービンのトルクをスプライン結合部によって変速機の入力軸43に伝達する。この入力軸は、変速機8に設けられた歯車および軸と、アクスルディファレンシャル9とを介して車両のホイールに結合されている。液体の、タービン羽根に作用する力は、タービンによってトルクの形で出力される。軸方向のスラスト軸受け31は、液体によって構成要素に作用する軸方向の力を吸収する。出力トルクが、静止している車両の慣性を上回るために十分となるやいなや、車両が動き始める。
【0008】
液体のエネルギがタービンによってトルクに変換された後、液体はまだ残りのエネルギを有している。半径方向の小さな出口開口44から流出した液体は、通常、ポンプの回転に抗して作用するように、ポンプ内に流入する。ステータ39は、液体を変向させるために働き、したがって、ポンプの加速に寄与し、これによって、トルク比が高められる。ステータ39はワンウェイクラッチ46によってステータシャフト45に結合されている。このステータシャフトは変速機ハウジング47に結合されていて、回転させられない。ワンウェイクラッチ46は、ステータ39が低い回転数比の場合(ポンプがタービンよりも迅速に回転させられる場合)に回転させられることを阻止する。タービン出口44からステータ39内に流入した液体はステータ羽根48によって変向させられ、これによって、液体が回転方向でポンプ37内に流入する。
【0009】
羽根の流入角および流出角、ポンプハウジングおよびタービンハウジングの形状ならびにトルクコンバータの全直径は、トルクコンバータの出力パラメータに影響を与える。設計に対するパラメータとして、原動機が「過回転」し得ることなしに、原動機トルクを吸収するために、トルクコンバータのトルク比、効率および能力が考慮される。このことは、トルクコンバータが過度に小さく、ポンプが原動機を制動することができない場合に生ぜしめられる。
【0010】
車両が静止している間、トルクコンバータが原動機を回転させることができ、原動機トルクを出力向上のために助成することによって、低い回転数状況でトルクコンバータは満足のいく形で作業する。1よりも小さい回転数状況では、トルクコンバータが100%よりも少ない効率を有している。タービンの回転数がポンプの回転数に同化されることによって、トルクコンバータのトルク比は、約1.8〜2.2の高い値から徐々に約1のトルク比に戻される。この1の回転数状況の達成時の回転数比はカップリングポイントと呼ばれる。このポイントでは、ステータ内に流入した液体がもはや変向させられる必要はなく、ステータに設けられたワンウェイクラッチが回転をポンプおよびタービンと同じ方向に許容する。ステータは液体を変向させないので、トルクコンバータから放出されたトルクが、吸収されたトルクに等しくなる。全液体循環路が1つのユニットとして回転させられる。
【0011】
液体における損失に基づき、トルクコンバータの最大の効率は92〜93%にある。したがって、トルクコンバータの入力側と出力側との機械的な結合のために、トルクコンバータクラッチ49が使用される。このトルクコンバータクラッチ49は効率を100%に高める。クラッチピストン金属薄板17は変速機制御装置の命令によってハイドロリック的に操作される。ピストン金属薄板17はその内径でOリング18によってタービンハブ19に対してシールされていて、その外径で、摩擦材料から成るリング51によってカバー11に対してシールされている。これらのシール部材は圧力チャンバを形成し、ピストン金属薄板17をカバー11に結合する。この機械的な結合部はトルクコンバータの液体循環路を回避している。
【0012】
トルクコンバータクラッチ49の機械的な結合部は、著しく多くのねじり変動をパワートレーンに伝達する。このパワートレーンは基本的にばね・質量系を成しているので、原動機のねじり変動が系の共鳴振動を励起し得る。パワートレーンの共鳴振動を走行領域から除去するために、ダンパが使用される。このダンパは、原動機7および変速機8と共に直列に配置されたばね15を有しており、これによって、系の有効なばね定数ひいては共鳴周波数が減少させられる。
【0013】
トルクコンバータクラッチ49は一般的に4つの構成要素:ピストン金属薄板17、カバープレート12,16、ばね15およびフランジ13を有している。カバープレート12,16はトルクをピストン金属薄板17から圧縮ばね15に伝達する。カバープレートには、ばね15を軸方向に保持するために、このばねを取り囲んで突起52が形成されている。トルクは、リベット締めされた結合部を介してピストン金属薄板17からカバープレート12,16に伝達される。このカバープレート12,16はトルクを、ばねのための切欠きの縁部との接触によって圧縮ばね15に作用させることができる。両カバープレートは一緒にばねをその中心軸線の両側で支持する。ばね力は、フランジばねのための切欠きの縁部との接触によってフランジ13に伝達される。時折、フランジは回転方向にも舌片またはスリットを有している。このスリットはカバープレートの一部に係合しており、これによって、高いトルクの伝達の間、ばねの、過度に強い圧縮が阻止される。トルクはフランジ13からタービンハブ19と変速機の入力軸43とに伝達される。
【0014】
エネルギは、必要な場合、時折ヒステリシスとも呼ばれる摩擦によって吸収することができる。このヒステリシスは減衰プレートのねじりと弛緩とから生ぜしめられ、したがって、本来の摩擦トルクの2倍の大きさである。ヒステリシスアッセンブリは、一般的に、フランジ13と一方のカバープレート16との間のダイヤフラムばね(または皿ばね)14から成っており、これによって、フランジ13が他方のカバープレート12に向かって押圧される。ダイヤフラムばね14に加えられる力の制御によって、摩擦トルクの量も制御することができる。一般的なヒステリシス値は10〜30Nmの範囲内にある。
【0015】
ローラクラッチ、たとえばクラッチ46の使用は、クラッチに設けられたローラと、このローラを側方で保持する構成要素との間の僅かな接触に基づき、強い負荷に繋がる。したがって、ローラクラッチの軸方向の延在長さが増加させられなければならない。このことは、ローラクラッチを収容する構成要素、たとえばステータ39のために必要となる軸方向のスペースを不利に増加させる。米国特許第7040469号明細書(Shirataki et al.)では、ローラクラッチのための保持部に作用する負荷の問題が取り扱われるものの、ローラの軸方向の延在長さの減少の問題は取り扱われない。ワンウェイクラッチは、類似の理由から、同じく軸方向の寸法のこのような望ましくない増加によって損なわれる。米国特許第6953112号明細書(Miura)では、ワンウェイクラッチのためのフレームの非対称性の問題が取り扱われるものの、クラッチの軸方向の延在長さの減少の問題は取り扱われない。したがって、ローラ・ワンウェイクラッチが、ステータ39ひいてはトルクコンバータ10のコスト、重量および複雑さの増加に繋がる。念のために明らかにしておくと、ワンウェイクラッチの上記論議は、トルクコンバータと異なる使用事例にも適用され得る。
【0016】
したがって、数年来、負荷力のより良好な分配を提供しかつ減少させられた軸方向の寸法を有するワンウェイクラッチに課せられる要求がある。
【特許文献1】米国特許第7040469号明細書
【特許文献2】米国特許第6953112号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一般的な課題は、減少させられた軸方向の寸法を備えたワンウェイクラッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するために本発明の第1のワンウェイクラッチでは、当該ワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、第1のレースを有しており、該第1のレースが、その周で当該ワンウェイクラッチの軸線を取り囲んで配置されていて、第1の周面を有しており;第2のレースを有しており、該第2のレースが、その周で軸線を取り囲んで配置されていて、第2の周面を有しており、該第2の周面が、第1の周面に半径方向で向かい合って位置しており;第1のレースおよび第2のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向で第1のレースと第2のレースとの間に配置されており、第1のレースが、自動車ユニットに設けられたトルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されていて、第2のレースに依存することなく第1の回動方向に回動させられるように配置されており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面のそれぞれ他方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2のレースに対する、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への第1のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とに連結されるように配置されており、これによって、第1のレースと第2のレースとが、互いに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合のために、少なくとも1つの楔エレメントの周の、第2のレースに接触する部分の寸法が、該部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されているようにした。
【0019】
本発明の有利な構成によれば、当該ワンウェイクラッチが、さらに、少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、両レースの一方、つまり、第1のレースまたは第2のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっている。
【0020】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、第1のレースおよび第2のレースに依存することなく回動するようになっている。
【0021】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に半径方向で向かい合って位置していて、両周面の一方の鏡像を成すように成形されている。
【0022】
本発明の有利な構成によれば、楔の周面が、相対回動不能な結合の間、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に緊密に接触している。
【0023】
本発明の有利な構成によれば、内側のレースと外側のレースとの相対回動不能な結合時に、少なくとも1つの楔エレメントによって発生させられる負荷の大部分が、周方向応力にある。
【0024】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、対称的に軸線を取り囲んで配置された多数の楔エレメントを有している。
【0025】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、互いに結合された多数の楔エレメントを有している。
【0026】
本発明の有利な構成によれば、第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、互いに共線的である。
【0027】
本発明の有利な構成によれば、第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、当該ワンウェイクラッチの軸線に対して共線的である。
【0028】
本発明の有利な構成によれば、第1のレースが、相対回動不能に取り付けられている。
【0029】
本発明の有利な構成によれば、第2のレースが、相対回動不能に取り付けられている。
【0030】
本発明の有利な構成によれば、第1のレースが回動可能である。
【0031】
本発明の有利な構成によれば、第2のレースが回動可能である。
【0032】
本発明の有利な構成によれば、当該ワンウェイクラッチが、トルクコンバータに設けられたステータに用いられるワンウェイクラッチである。
【0033】
さらに、前述した課題を解決するために本発明の第2のワンウェイクラッチでは、当該ワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、第1のレースを有しており、該第1のレースが、その周で当該ワンウェイクラッチの軸線を取り囲んで配置されていて、第1の周面を有しており;第2のレースを有しており、該第2のレースが、その周で軸線を取り囲んで配置されていて、第2の周面を有しており、該第2の周面が、第1の周面に半径方向で向かい合って位置しており;第1のレースおよび第2のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向で第1のレースと第2のレースとの間に配置されていて、第1のレースの回動と第2のレースの回動とに依存しないようになっており;少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、両レースの一方、つまり、内側のレースまたは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっており、第1のレースが、自動車ユニットに設けられたトルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されていて、第1の回動方向に第2のレースに依存することなく回動させられるように配置されており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2のレースに対する、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への第1のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とを互いに連結するように配置されており、これによって、第1のレースと第2のレースとが、互いに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、第2のレースに接触する少なくとも1つの楔エレメントの周の部分の寸法が、該部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されており、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方に向かい合って位置していて、相対回動不能な結合の間、両周面の一方に緊密に接触しているようにした。
【0034】
さらに、前述した課題を解決するために本発明の第1のステータワンウェイクラッチでは、当該ステータワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、ハブを有しており、該ハブが、ステータシャフトに結合されているように配置されていて、外側の周面を有しており;外側のレースを有しており、該外側のレースが、周でハブを取り囲んで配置されていて、内側の周面を有しており、該内側の周面が、外側の周面に半径方向で向かい合って位置しており、外側のレースが、第1の回動方向にハブに対して回動するようになっており;多数の楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、ハブおよび外側のレースと別個にかつ半径方向でハブと外側のレースとの間に配置されており、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方が、半径方向の多数の突出部を有しており、多数の楔エレメントが、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への外側のレースの回動時に、多数の突出部と、両周面の一方とに連結されるように配置されており、これによって、ハブが、外側のレースに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの周方向寸法が、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの軸方向の寸法よりも大きく設定されているようにした。
【0035】
本発明の有利な構成によれば、当該ワンウェイクラッチが、さらに、少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、ハブもしくは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっている。
【0036】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、ハブの回動と外側のレースの回動とに依存しないようになっている。
【0037】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に向かい合って位置しており、楔の周面が、相対回動不能な結合の間、両周面の一方に相応に接触している。
【0038】
本発明の有利な構成によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、対称的に軸線を取り囲んで配置された多数の楔エレメントを有している。
【0039】
本発明の有利な構成によれば、第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、当該ワンウェイクラッチの軸線に対して共線的である。
【0040】
さらに、前述した課題を解決するために本発明の第2のステータワンウェイクラッチでは、当該ステータワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、ハブを有しており、該ハブが、ステータシャフトに相対回動不能に結合されているように配置されていて、内側の周面を有しており;外側のレースを有しており、該外側のレースが、周でハブを取り囲んで配置されていて、内側の周面を有しており、該内側の周面が、外側の周面に半径方向で向かい合って位置しており、外側のレースが、ハブに対して第1の回動方向に回動するようになっており;ハブおよび外側のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向でハブと外側のレースとの間に配置されていて、ハブの回動と外側のレースの回動とに依存しないようになっており;少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、ハブもしくは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向に押圧するようになっており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2の回動方向への外側のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方とに連結されるように配置されており、これによって、ハブが、外側のレースに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの周方向の寸法が、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの軸方向の寸法よりも大きく設定されており、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方に半径方向で向かい合って位置していて、両周面の一方の鏡像を成すように配置されているようにした。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、一般的に、ワンウェイクラッチを含んでいる。このワンウェイクラッチは、以下の構成部材:すなわち、第1のレースを有しており、この第1のレースが、周でワンウェイクラッチの軸線を取り囲んで配置されていて、第1の周面を有しており;第2のレースを有しており、この第2のレースが、周で軸線を取り囲んで配置されていて、第2の周面を有しており、この第2の周面が、半径方向で第1の周面に向かい合って位置しており;少なくとも1つの楔エレメントを有しており、この楔エレメントが、第1のレースおよび第2のレースと別個にかつ半径方向で第1のレースと第2のレースとの間に配置されている。第1のレースが、自動車ユニットに設けられたトルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されていて、第2のレースに依存することなく第1の回動方向に回動させられるように配置されている。両周面の一方の周が、ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置している。両周面の他方の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有している。第1のレースが第2のレースに対して、第1の回動方向と逆方向である第2の回動方向に回動させられるように、少なくとも1つの楔エレメントが、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とに係合するように配置されており、これによって、第1のレースと第2のレースとが、互いに相対回動不能に結合される。相対回動不能な結合部を形成するために、第2のレースに接触する少なくとも1つの楔エレメントの部分の周方向寸法が、この部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されている。
【0042】
ワンウェイクラッチが、少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、このエレメントが、両レースの一方と、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、この少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧する。楔エレメントが、第1のレースの回動と第2のレースの回動とに依存しない。
【0043】
幾つかの観点によれば、楔エレメントの、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に半径方向で向かい合って位置する周面が、両周面の一方の鏡像を成すように成形されている。幾つかの観点によれば、楔エレメントの周面が、相対回動不能な結合の間、両周面の一方に緊密に接触している。幾つかの観点によれば、内側のレースと外側のレースとの相対回動不能な結合時に、少なくとも1つの楔エレメントによって発生させられる負荷の最大の部分が、周方向応力にある。
【0044】
幾つかの観点によれば、少なくとも1つの楔エレメントが、対称的に軸線を取り囲んで配置された多数の楔エレメントを有しているかまたは少なくとも1つの楔エレメントが、互いに結合された多数の楔エレメントを有している。第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、ワンウェイクラッチの軸線に対して共線的である。
【0045】
幾つかの観点によれば、外側のレースまたは内側のレースが相対回動不能であるかもしくは外側のレースまたは内側のレースが回動可能である。
【0046】
本発明は、一般的に、ステータワンウェイクラッチも含んでいる。このステータワンウェイクラッチは、以下の構成部材:すなわち、ステータシャフトに相対回動不能に結合するためのハブと、外側の周面とを有しており;外側のレースを有しており、この外側のレースが、周でハブを取り囲んで配置されていて、内側の周面を有しており、この内側の周面が、外側の周面に半径方向で向かい合って位置しており、外側のレースが、ハブに対して第1の方向に回動するようになっており;多数の楔エレメントを有しており、これらの楔エレメントが、内側のレースおよび外側のレースと別個にかつ半径方向で内側のレースと外側のレースとの間に配置されている。両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面が、ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置している。両周面の他方が、半径方向の多数の突出部を有している。外側のレースが、第1の回動方向と逆方向である第2の回動方向に回動させられるように、多数の楔エレメントが、多数の突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とに係合するように配置されており、これによって、ハブと外側のレースとが、互いに相対回動不能に結合される。相対回動不能な結合部を形成するために、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの周方向寸法が、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの軸方向の寸法よりも大きく設定されている。
【0047】
本発明の前述した課題ならびに別の課題および利点は、本発明の有利な実施例の以下の説明、添付した図面および特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0049】
念のために最初から明らかにしておくと、同じ符号は、種々異なる図面において、本発明の同一のまたは機能的に類似の構造エレメントを示している。本発明を、現在有利であると見なされる観点に関して説明するにもかかわらず、念のために明らかにしておくと、本発明は、説明した観点に限定されていない。
【0050】
さらに、明らかであるように、本発明は、説明した特定の方法、材料および変更に限定されておらず、この限りおいて当然ながら変えられてよい。さらに、明らかであるように、ここで使用される概念は特定の観点の説明のためにしか役立たず、本発明の、従属請求項によってしか限定されない構成範囲の限定として解されるべきものではない。
【0051】
その他の点で規定しない限り、ここで使用される全ての技術的なかつ科学的な概念は、本発明が関係する当業者に慣用である意味と同じ意味を有している。本発明の実施またはテストのために、ここで説明する方法、装置または材料に類似であるかまたは等価である任意の方法、装置または材料を使用することができるにもかかわらず、以下に有利な方法、装置および材料を説明する。
【0052】
図7Aは、円筒座標系80の斜視図である。この円筒座標系80は、本発明に使用される空間的な概念を成している。本発明を少なくとも部分的に円筒座標系80に相俟って説明する。この系80は長手方向軸線81を有している。この長手方向軸線81は、以下の方向概念および空間的な概念に対する基準として役立つ。付加語「軸方向」、「半径方向」および「周方向」は、軸線81、(この軸線81に対して垂直である)半径82もしくは周83に対して平行な方向付けに関する。付加語「軸方向」、「半径方向」および「周方向」は、相応の平面に対して平行な方向付けにも関する。それぞれ異なる平面の位置を明瞭にするために、対象物84,85,86が役立つ。対象物84の面87は軸方向の平面を形成している。すなわち、軸線81が面に沿って1つの線を形成している。対象物85の面88は半径方向の平面を形成している。すなわち、半径82が面に沿って1つの線を形成している。対象物86の面89は周面を形成している。すなわち、周83が面に沿って1つの線を形成している。別の例は、軸方向の運動または位置が軸線81に対して平行に延びており、半径方向の運動または位置が半径82に対して平行に延びており、周方向運動または周における位置が周83に対して平行に延びていることを示している。回動は軸線81を中心として行われる。
【0053】
付加語「軸方向」、「半径方向」および「周方向」は、軸線81、半径82もしくは周83に対して平行な方向付けに関する。付加語「軸方向」、「半径方向」および「周方向」は、相応の平面に対して平行な方向付けにも関する。
【0054】
図7Bは、本出願に使用される空間的な概念を成す図7Aの円筒座標系80における対象物90の斜視図である。この円筒状の対象物90は、円筒座標系における円筒状の対象物の代表であり、決して本発明の限定として解されるべきものではない。対象物90は、軸方向の面91と、半径方向の面92と、周面93とを有している。面91は軸方向の平面の一部であり、面92は半径方向の平面の一部であり、面93は周面の一部である。
【0055】
図8には、本発明によるワンウェイクラッチ100の正面図が示してある。
【0056】
図9には、図8に示した切断線9−9に沿った、図8に示したワンウェイクラッチ100の横断面図が示してある。以下の説明は図8および図9に相俟って見ることができる。ワンウェイクラッチ100は、内側のレース102と、外側のレース104と、少なくとも1つの楔エレメント106とを有している。幾つかの観点(図示せず)によれば、楔エレメント106は単独のエレメントである。幾つかの観点によれば、楔エレメント106は多数の楔エレメントを成している。レース102はその周でワンウェイクラッチ100の軸線108を取り囲んで配置されていて、周面110を有している。レース104も同じくその周で軸線を取り囲んで配置されている。レース104の少なくとも一部は半径方向でレース102に整合されている。レース104は周面112を有している。この周面112は面110に半径方向で向かい合って位置している。すなわち、面110,112の少なくとも一部が半径方向で互いに整合されている。レースの相応の長手方向軸線は互いに軸線108と共線的である。
【0057】
楔エレメントまたは楔106は、レースから分離されて半径方向で両レースの間で中間室113内に配置されている。すなわち、エレメントはレースと別個に形成されている。楔の回動はレースの回動に依存しない。このことは、楔が常にレースに相対回動不能に結合されておらず、このレースの回動に対する自由度を有していると解されたい。以下の説明は、外側のレース(レース104)がトルク伝達エレメントに結合されていることから出発するものの、念のために明らかにしておくと、論議は、レースの、以下に説明する各配置形式に対して当てはまる。以下の説明によれば、楔とレースとは、たとえばロックモードの間、互いに相対回動不能に結合されている。これに対して、空転モードの間には、外側のレースが回動させられるのに対して、楔は定置のままである。さらに、ロックモードと空転モードとの間の移行の間には、楔が、レース102に設けられた半径方向の突出部114に沿って上下に運動させられる。
【0058】
レース102,104の一方は、自動車ユニット(図示せず)に設けられたトルク伝達エレメント(図示せず)に相対回動不能に結合されているように配置されている。図8では、レース104が、トルク伝達エレメントに結合されているように配置されている。この場合、ほかに述べなければ、この配置形式を以下の論議に対して前提とする。ほかに述べなければ、レース104に対して前述した配置形式または特性が、トルク伝達エレメントに結合されたレース(レース102またはレース104)に当てはまることから出発する。レース104は、レース102に依存することなく、このレース102に対して一方の回動方向、たとえば方向115に回動させられるように配置されている。すなわち、レース104が空転モードに位置していて、方向115で相対的な回動を実施する。この方向115は反時計回り方向で図示されているにもかかわらず、念のために明らかにしておくと、本発明によるワンウェイクラッチの空転運動は、規定された回動方向に限定されていない。幾つかの観点によれば、レース102がハブを成していて、相対回動不能に取り付けられている。ワンウェイクラッチ100は、たとえばトルクコンバータのステータクラッチを成していて、位置固定されたステータシャフト(図示せず)に結合されている。
【0059】
面110,112の一方の周は、軸線108から半径方向の均一な間隔を置いて位置している。幾つかの観点によれば、他方のレースの面、たとえば面112が、軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置している。したがって、面112は、半径116を備えた円筒体を形成している。さらに、他方のレースの周面、たとえば面110は、半径方向の少なくとも1つの突出部114を有している。すなわち、軸線108からのワンウェイクラッチの半径方向の間隔120が変化していて、突出部で最大になっている。言い換えるならば、この突出部が面110に、相応の傾斜面を形成している。幾つかの観点(図示せず)によれば、上記配置形式が逆転されている。すなわち、突出部が外側のレースの周面に形成されており、内側のレースの周面が半径方向で均一である。
【0060】
楔エレメント106は、回動方向115と逆方向の回動方向122へのレース104の回動時に面110、特に突出部114と面112とに連結され、これによって、以下に説明するように、レースが互いに相対回動不能に結合されるように配置されている。図面に示した配置形式では、空転方向が方向115に延びており、ロック方向が方向122に延びている。しかし、念のために明らかにしておくと、ワンウェイクラッチはこの配置形式に限定されておらず、幾つかの観点によれば、たとえば空転方向とロック方向とが、図面に示した方向に対して入れ換えられている。
【0061】
楔の周方向寸法124は楔の軸方向の寸法126よりも大きい。このことから、レース相互の相対回動不能な結合の間、レース102,104に接触した楔106の面132;134の周方向寸法128,130が、レース102,104に接触した面132,134の軸方向の寸法126よりも大きいという利点が得られる。言い換えるならば、レースに接触した楔の周方向寸法が、レースに接触した楔の軸方向の寸法よりも大きい。楔106の構成では、レースに接触する周の長さがより大きくなるので、エレメント106の軸方向の寸法が減少させられるのに対して、エレメント106は同一の負荷を吸収することができる。これによって、ワンウェイクラッチ100の軸方向の寸法が有利に減少させられる。さらに、レースと楔との構成によって、ロックモードの間に楔によってレースに発生させられる負荷の最大の部分が周方向応力で現れる。
【0062】
図8には、ワンウェイクラッチ100が、コンバータステータ(図示せず)の形のトルク伝達エレメントに結合することができるように示してある。しかし、念のために明らかにしておくと、本発明によるワンウェイクラッチはコンバータステータの使用に限定されておらず、本発明によるワンウェイクラッチは、自動車ユニットに設けられた別のトルク伝達エレメントと共に使用されてもよい。この配置形式では、レース102がハブに設けられている。このハブは、技術的に知られている任意の手段、たとえばリングギヤ136を使用して、トルク吸収エレメント(図示せず)に相対回動不能に結合されている。
【0063】
レース104は、技術的に知られている任意の手段を使用して、トルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されている。幾つかの観点によれば、レース104をトルク伝達エレメント、たとえばステータ羽根アッセンブリに結合するために、固定エレメント(図示せず)と開口138とが使用される。
【0064】
念のために明らかにしておくと、ワンウェイクラッチ100は、相対回動不能に取り付けられたレース102と、回動可能なレース104とに限定されていない。幾つかの観点によれば、両レースが回動可能であり、トルクを吸収するレース(このレースに対して、内側のレースまたは外側のレースが考慮される)と、それぞれ他方のレースとの間の回動が、互いに相対的な回動を成している。ロックモードの作動時には、たとえばトルク伝達エレメントに結合されたレースがロック方向に他方のレースよりも迅速に回動させられる。幾つかの観点によれば、レース102がトルク伝達エレメントに結合されていて、レース104が固く取り付けられている。
【0065】
以下に、ワンウェイクラッチ100の機能形式を詳しく説明する。一般的に、空転モードとロックモードとの間の移行時のエレメント106の位置は比較的僅かしか変化させられない。図8は、両モードの図示および説明のために役立つ。言い換えるならば、空転モードとロックモードとの間では、エレメント106が少ししか運動させられない。したがって、両モードの間の移行時の遊びが有利に減少させられる。
【0066】
ワンウェイクラッチ100は、少なくとも1つの弾性変形可能なセグメントまたは少なくとも1つの弾性的なエレメント140を有している。より正確に言うならば、相応のセグメントが各楔とレースの一方とに結合されているかまたは連結されている。エレメント140は楔をロック方向、たとえば方向115に押圧する。図8では、セグメントが、レース102に連結された端部142と、楔に連結された端部144とを有している。セグメント140は、このセグメント140にプリロードがかけられている、つまり、予備荷重が加えられているようにレース102を押圧する。セグメントのプリロードによって、楔が空転モードの間にどうにかレース104に接触したままとなる。したがって、このレース104がその方向をロックモードへの移行のために逆転すると、力がレースから即座に楔に伝達され、これによって、この楔を移動させることができ、遊びを減少させることができる。エレメント140に対して、技術的に知られている任意の弾性的なエレメント、たとえば圧縮ばね、引張りばねまたは成形された金属薄板が使用されてよい。
【0067】
一般的に、面110,112と面132,134とは、空転方向でレース104の自由な回動が可能となり、ロック方向で内側のレースと外側のレースとのロックが可能となるように成形されている。一般的に、互いに向かい合って位置しかつ接触する面は相補的に成形されている。たとえば、楔106の面132は、面112に半径方向で向かい合って位置する楔周面を形成している。一般的に、この楔周面は、レースの、均一な半径を有する周面に半径方向で向かい合って位置している。楔周面は、面112の鏡像を成すように成形されている。したがって、楔周面が、相対回動不能な結合の間に面112に緊密に接触している。緊密に接触しているとは、両面の間に、主として、完全な接触が存在すると解されたい。
【0068】
傾斜面114は、基点148から頂点150にまで半径方向で上昇している。したがって、中間室113が半径方向で基点と頂点との間で減少させられる。幾つかの観点によれば、楔106は、中間室に適合されているように成形されている。たとえば、半径方向の幅152は半径方向の幅154よりも大きい。すなわち、楔が方向115で周に沿ってより狭幅になる。
【0069】
ロックモードでは、面110,112と面134,132とが、相応の面と楔との構成に基づき締め合わされている。言い換えるならば、互いに向かい合って位置する相応の面が押し合わされているかまたは摩擦によって互いに結合されている。ロックモードから空転モードへの移行のためには、レース104が方向122に回動し始める。面112と楔との間の摩擦によって、楔が方向122に滑動する。傾斜面114は方向122で頂点150から半径方向内向きに下降しているので、中間室113が半径方向で方向122で拡大され、楔が運動によって中間室113の、楔の幅よりも大きな半径方向の幅の領域に移動させられ、これによって、楔とレースとの間の圧着力が減少する。言い換えるならば、内側のレースに対して相対的な外側のレースの回動によって、楔が面110,112に対してずれ滑ることが可能となる。たとえば、楔106が傾斜面を介して滑動し、セグメント106とレースとの間に半径方向の中間室が形成される。したがって、レース104がレース102に対して回動することができる。エレメント140は楔を方向115に押圧し、これによって、さらに、空転モードで楔と面112との間にある程度の接触が存在し続ける。
【0070】
空転モードからロックモードへの移行のためには、レース104がその回動方向を逆転し、方向115に回動する。楔は空転モードでどうにかレースに摩擦接触したままであり、これによって、面112と楔とが、方向115へのレース104の回動の間に摩擦によって互いに連結されており、楔が同一の方向に「引っ張られる」。したがって、レース102に対するレース104の相対運動によって、楔106が面110を介して滑動する。すなわち、楔106が相応の傾斜面114を介して、減少させられた半径方向の幅を備えた中間室113の相応の部分に滑動し、楔とレースとを互いに相対回動不能に結合する。
【0071】
周方向応力と、ロックモードで作用する別の力とを均一に分配するためには、楔が一般的に対称的、たとえば軸線108に対して対称的に配置されている。しかし、念のために明らかにしておくと、楔は非対称的に配置されてもよい。幾つかの観点によれば、ワンウェイクラッチ100の構成要素は打抜き加工によって形成される。たとえば、レースと楔とを打抜き加工によって形成することができる。幾つかの観点(図示せず)によれば、多数の楔106が互いに結合されている。たとえば、楔は一体の材料から打抜き加工されている。幾つかの観点(図示せず)によれば、ワンウェイクラッチ100には、単独の楔と、互いに結合された楔との組合せが使用される。
【0072】
ワンウェイクラッチ100は2つの楔106を備えて図示されているものの、念のために明らかにしておくと、ワンウェイクラッチ100は、規定された個数の楔に限定されていない。たとえば、ワンウェイクラッチ100がただ1つの楔または2つよりも多くの楔を有していてよい。使用される楔の個数は、ワンウェイクラッチを使用する自動車の所望のトルク容量と、製作に関連した考慮とに相応して、たとえば規定された製造プロセスに対するクラッチエレメントの最適な厚さの選択に相応して規定されてよい。幾つかの観点によれば、クラッチエレメントは、たとえば打抜き加工によって形成される。このクラッチエレメントの厚さは、使用される打抜き加工設備に適合させることができる。より正確に言うならば、ワンウェイクラッチがコンバータステータに使用される場合、トルクコンバータが位置する車両に設けられた原動機の出力が増加させられる場合には、ワンウェイクラッチに使用されるクラッチエレメントの個数を増加させることができ、原動機の出力が減少させられる場合には、クラッチエレメントの個数を減少させることができる。
【0073】
したがって、当業者が、本発明の精神および構成範囲に含まれている本発明の変更および変化を提案することができるにもかかわらず、本発明の課題が有効に解決されることを認めることができる。さらに、上述した説明が、本発明の図解のためにしか役立たず、限定として解されるべきものではないことが明らかである。したがって、本発明の精神および構成範囲から逸脱することなしに、本発明の別の構成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】原動機付き車両のパワートレーンおけるトルクコンバータの関係および機能の説明を容易にする、原動機付き車両におけるパワーフローの一般的なブロック線図である。
【図2】原動機付き車両の原動機への組付け位置での公知先行技術によるトルクコンバータの横断面図である。
【図3】図2に示したトルクコンバータを、図2に示した3−3線に沿って左側から見た図である。
【図4】図3に示した切断線4−4に沿った、図2および図3に示したトルクコンバータの横断面図である。
【図5】観察者が、図2に示したトルクコンバータを左側から見た場合のトルクコンバータの第1の分解図である。
【図6】観察者が、図2に示したトルクコンバータを右側から見た場合のトルクコンバータの第2の分解図である。
【図7A】本出願で使用される空間的な概念を説明するための円筒座標系の斜視図である。
【図7B】本出願で使用される空間的な概念を説明するための図7Aの円筒座標系における対象物の斜視図である。
【図8】本発明によるワンウェイクラッチの平面図である。
【図9】図8に示した切断線9−9に沿った、図8に示したワンウェイクラッチの横断面図である。
【符号の説明】
【0075】
7 原動機、 8 変速機、 9 ディファレンシャル/アクスルアッセンブリ、 10 トルクコンバータ、 11 カバー、 12 カバープレート、 13 フランジ、 14 ダイヤフラムばね、 15 ばね、 16 カバープレート、 17 クラッチピストン金属薄板、 18 Oリング、 19 タービンハブ、 22 タービンハウジング、 31 スラスト軸受け、 37 ポンプ、 38 タービン、 39 ステータ、 41 コンバータ連行ディスク、 42 クランクシャフト、 43 入力軸、 44 出口開口、 45 ステータシャフト、 46 ワンウェイクラッチ、 47 変速機ハウジング、 48 ステータ羽根、 49 トルクコンバータクラッチ、 51 リング、 52 突起、 80 円筒座標系、 81 長手方向軸線、 82 半径、 83 周、 84 対象物、 85 対象物、 86 対象物、 87 面、 88 面、 89 面、 90 対象物、 91 面、 92 面、 93 周面、 100 ワンウェイクラッチ、 102 レース、 104 レース、 106 楔エレメント、 108 軸線、 110 面、 112 面、 113 中間室、 114 突出部、 115 方向、 116 半径、 120 間隔、 122 方向、 124 周方向寸法、 126 寸法、 128 周方向寸法、 130 周方向寸法、 132 面、 134 面、 136 リングギヤ、 138 開口、 140 エレメント、 142 端部、 144 端部、 148 基点、 150 頂点、 152 幅、 154 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンウェイクラッチにおいて、当該ワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、
第1のレースを有しており、該第1のレースが、その周で当該ワンウェイクラッチの軸線を取り囲んで配置されていて、第1の周面を有しており;
第2のレースを有しており、該第2のレースが、その周で軸線を取り囲んで配置されていて、第2の周面を有しており、該第2の周面が、第1の周面に半径方向で向かい合って位置しており;
第1のレースおよび第2のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向で第1のレースと第2のレースとの間に配置されており、第1のレースが、自動車ユニットに設けられたトルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されていて、第2のレースに依存することなく第1の回動方向に回動させられるように配置されており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面のそれぞれ他方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2のレースに対する、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への第1のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とに連結されるように配置されており、これによって、第1のレースと第2のレースとが、互いに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合のために、少なくとも1つの楔エレメントの周の、第2のレースに接触する部分の寸法が、該部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されている:
ことを特徴とする、ワンウェイクラッチ。
【請求項2】
当該ワンウェイクラッチが、さらに、少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、両レースの一方、つまり、第1のレースまたは第2のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっている、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
少なくとも1つの楔エレメントが、第1のレースおよび第2のレースに依存することなく回動するようになっている、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に半径方向で向かい合って位置していて、両周面の一方の鏡像を成すように成形されている、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
楔の周面が、相対回動不能な結合の間、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に緊密に接触している、請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
内側のレースと外側のレースとの相対回動不能な結合時に、少なくとも1つの楔エレメントによって発生させられる負荷の大部分が、周方向応力にある、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項7】
少なくとも1つの楔エレメントが、対称的に軸線を取り囲んで配置された多数の楔エレメントを有している、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項8】
少なくとも1つの楔エレメントが、互いに結合された多数の楔エレメントを有している、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項9】
第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、互いに共線的である、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項10】
第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、当該ワンウェイクラッチの軸線に対して共線的である、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項11】
第1のレースが、相対回動不能に取り付けられている、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項12】
第2のレースが、相対回動不能に取り付けられている、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項13】
第1のレースが回動可能である、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項14】
第2のレースが回動可能である、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項15】
当該ワンウェイクラッチが、トルクコンバータに設けられたステータに用いられるワンウェイクラッチである、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項16】
ワンウェイクラッチにおいて、当該ワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、
第1のレースを有しており、該第1のレースが、その周で当該ワンウェイクラッチの軸線を取り囲んで配置されていて、第1の周面を有しており;
第2のレースを有しており、該第2のレースが、その周で軸線を取り囲んで配置されていて、第2の周面を有しており、該第2の周面が、第1の周面に半径方向で向かい合って位置しており;
第1のレースおよび第2のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向で第1のレースと第2のレースとの間に配置されていて、第1のレースの回動と第2のレースの回動とに依存しないようになっており;
少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、両レースの一方、つまり、内側のレースまたは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっており、第1のレースが、自動車ユニットに設けられたトルク伝達エレメントに相対回動不能に結合されていて、第1の回動方向に第2のレースに依存することなく回動させられるように配置されており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2のレースに対する、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への第1のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面とを互いに連結するように配置されており、これによって、第1のレースと第2のレースとが、互いに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、第2のレースに接触する少なくとも1つの楔エレメントの周の部分の寸法が、該部分の軸方向の寸法よりも大きく設定されており、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方に向かい合って位置していて、相対回動不能な結合の間、両周面の一方に緊密に接触している:
ことを特徴とする、ワンウェイクラッチ。
【請求項17】
ステータワンウェイクラッチにおいて、当該ステータワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、
ハブを有しており、該ハブが、ステータシャフトに結合されているように配置されていて、外側の周面を有しており;
外側のレースを有しており、該外側のレースが、周でハブを取り囲んで配置されていて、内側の周面を有しており、該内側の周面が、外側の周面に半径方向で向かい合って位置しており、外側のレースが、第1の回動方向にハブに対して回動するようになっており;
多数の楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、ハブおよび外側のレースと別個にかつ半径方向でハブと外側のレースとの間に配置されており、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方が、半径方向の多数の突出部を有しており、多数の楔エレメントが、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向への外側のレースの回動時に、多数の突出部と、両周面の一方とに連結されるように配置されており、これによって、ハブが、外側のレースに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの周方向寸法が、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの軸方向の寸法よりも大きく設定されている:
ことを特徴とする、ステータワンウェイクラッチ。
【請求項18】
当該ワンウェイクラッチが、さらに、少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、ハブもしくは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを第2の回動方向に押圧するようになっている、請求項17記載のワンウェイクラッチ。
【請求項19】
少なくとも1つの楔エレメントが、ハブの回動と外側のレースの回動とに依存しないようになっている、請求項17記載のワンウェイクラッチ。
【請求項20】
少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方、つまり、内側の周面または外側の周面に向かい合って位置しており、楔の周面が、相対回動不能な結合の間、両周面の一方に相応に接触している、請求項17記載のワンウェイクラッチ。
【請求項21】
少なくとも1つの楔エレメントが、対称的に軸線を取り囲んで配置された多数の楔エレメントを有している、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項22】
第1のレースと第2のレースとの相応の長手方向軸線が、当該ワンウェイクラッチの軸線に対して共線的である、請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項23】
ステータワンウェイクラッチにおいて、当該ステータワンウェイクラッチが、以下の構成部材:すなわち、
ハブを有しており、該ハブが、ステータシャフトに相対回動不能に結合されているように配置されていて、内側の周面を有しており;
外側のレースを有しており、該外側のレースが、周でハブを取り囲んで配置されていて、内側の周面を有しており、該内側の周面が、外側の周面に半径方向で向かい合って位置しており、外側のレースが、ハブに対して第1の回動方向に回動するようになっており;
ハブおよび外側のレースと別個の少なくとも1つの楔エレメントを有しており、該楔エレメントが、半径方向でハブと外側のレースとの間に配置されていて、ハブの回動と外側のレースの回動とに依存しないようになっており;
少なくとも1つの弾性的なエレメントを有しており、該エレメントが、ハブもしくは外側のレースと、少なくとも1つの楔エレメントとに結合されていて、該少なくとも1つの楔エレメントを、第1の回動方向と逆方向の第2の回動方向に押圧するようになっており、両周面の一方の周、つまり、内側の周面の周または外側の周面の周が、当該ワンウェイクラッチの軸線から半径方向の均一な間隔を置いて位置しており、両周面の他方の周が、半径方向の少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの楔エレメントが、第2の回動方向への外側のレースの回動時に、少なくとも1つの突出部と、両周面の一方とに連結されるように配置されており、これによって、ハブが、外側のレースに相対回動不能に結合されるようになっており、相対回動不能な結合の間、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの周方向の寸法が、ハブと外側のレースとに接触する多数の楔エレメントの軸方向の寸法よりも大きく設定されており、少なくとも1つの楔エレメントが、楔の周面を有しており、該周面が、両周面の一方に半径方向で向かい合って位置していて、両周面の一方の鏡像を成すように配置されている:
ことを特徴とする、ステータワンウェイクラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−157450(P2008−157450A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325402(P2007−325402)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany