説明

業務用ユニット式浴槽における保温性向上に関する発明

【課題】 業務用浴槽において、手間をかけずに設置でき、かつ保温効果及び省エネ効果の高い木風呂又は石風呂を提供する。
【解決手段】 家庭用浴槽に用いられるようなユニット式とし、ベースの素材に断熱効果の高いFRPを用いるとともに、二重構造にして空気層を作ることで、断熱効果を高める。断熱効果を高めることで浴槽水の温度が下がりにくくなるため、浴槽水の沸かし直しにかかるエネルギーを節約することができる。表面に貼り付ける板材を石製にすることで石風呂に、木板をベースに貼ることで木風呂に見せることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用浴槽の保温性向上と、それに伴う省エネ効果の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用浴槽の工事においては、予め成型済みのユニット式浴槽を設置する方法が普及しているが、業務用浴槽の工事では、浴槽が大きい為にユニット式浴槽は少なく、鉄筋コンクリートで形を造り、配管・金物・防水などの工事を施し漏水試験を行った後に、石板、木板又はタイルを貼り付けるという工程で進められるのが一般的である。この方法では、漏水試験を行うまで水漏れが起こるかどうかの確認ができず、浴槽自体の漏水試験後、浴槽の仕上工事、設備工事、浴室の工事を経て最終漏水試験を行うため現場工事が長期化する。
【0003】
ベースとして形状を作り、表面材を貼り付ける方法でユニット式浴槽を製造する場合、ベースにステンレスを用いると、放熱量が多く冷めやすいため、浴槽水の沸かし直しに必要なエネルギーも大きくなる。他の材質としては、業務用では木製のものがほとんどで、選択の幅が狭かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、業務用浴槽の設置において施工が容易なユニット式浴槽を、保温性を持たせた上で、形状・材質などの選択の幅を豊かに提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のユニット式浴槽では、段落番号0003に示した、ベースに表面材を貼ることで製造する方法を取る。この浴槽ベースを変えることで、多角形や円形などの浴槽の形状や寸法を決定する。独自の形状も型製作を行えば対応可能であるため、施設の広さや意匠に合わせることができる。浴槽ベースには、金属と比較して保温性が高く、温泉水や海水に対しても耐蝕性の高いFRPを用いる。FRPは型があれば同等の寸法・形状のものを製造でき、品質管理や生産のしやすさの面でも有利である。また、FRPは軽量であるため、金属をベースにしたりベースを使わずに製造したりするよりも、浴槽そのものを軽量化することができる。FRPの浴槽ベースは二重構造とし間に空気層を設けることで、浴槽の縁部に厚みを持たせるとともに、保温効果を高めることができる。
【0006】
浴槽ベースの表面には、仕上げ材として石板、木板又はタイルを貼り付ける。この仕上げ材には、水に強く腐蝕しにくい種類を使用するか、表面に加工を施す。仕上げ材にピンホールなどがある素材を使用しても、ベースを使用するため漏水を防ぐことができる。石板、木板又はタイルの種類を増やすことで選択の幅をひろげることができるが、浴槽内部、浴槽縁部、浴槽外部側面部に異なる素材を使うことで、施設独自の浴槽を作ることができる。また、浴槽に浴槽水の入口及び出口を設け、金具を取り付けておくことで、現場での工事を減らすことができる。
【0007】
浴槽は製品として製作するため、出荷前に外観検査や漏水試験も含めた出荷検査を行う。現場では設置後、浴室工事、設備工事を行い最終漏水試験を実施するという工程で、浴槽コンクリートの乾燥待ちや浴槽自体の漏水試験の時間が不要となる。メーカーで製作している間に現場の土工事などを行えるので、工期を短縮することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用すると、工期を短縮でき、FRPと空気層により保温能力が高く省エネ効果が望める業務用の大型ユニット式浴槽を、寸法、形状、表面材の材質を幅広く選択できる。省エネ効果は、熱損失量を比較算定することで求められる。熱損失の算定条件は、表1のとおりである。また、熱伝導率とベースの板厚は表2のとおりである。
【0009】
【表1】

【0010】
【表2】

【0011】
表1及び表2の条件で計算すると、FRP製浴槽とステンレス製浴槽の熱損失は、表3のように算出される。
【0012】
【表3】

【0013】
そこで、FRP浴槽とステンレス製浴槽の熱損失の差即ち省エネ効果率ηを算出すると、数1のようになる。
【0014】
【数1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面とともに説明する。図1は、本発明を実施した浴槽の平面図である。図1の符号1で示される浴槽本体は円形であるが、四角形又は多角形としたり、より複雑な形状にしたりすることもできる。また、図2は、図1の浴槽を設置したときの断面図A−A’である。
【実施例1】
【0016】
浴槽には、予め符号2の濾過吸込口、符号3の濾過吐出口、符号4の排水口を加工しておく。これらは、浴槽底面に開口部を設け、目皿と口部本体からなる、所謂金物と呼ばれる部材を取り付ける。給湯口は、湯口とも呼ばれる符号5の給湯口を別途用意する。給湯口は上水の系統であるので、衛生上、濾過循環水が流入しないように施工する。
【0017】
符号2の濾過吸込口から出た浴槽水は、配管を通り循環濾過装置を経て濾過された後、符号3の濾過吐出口から浴槽内へ戻る。符号4の排水口は、浴槽の清掃などの時に浴槽水を排水するために設ける。家庭用の浴槽では栓をするが、業務用浴槽ではいたずら防止のため、配管上にバルブを設けて排水する。
【0018】
浴槽の構造は、符号6のFRP製浴槽ベースの上に、符号7の表面仕上げ材及び符号8の框と呼ばれる縁部を、符号9の接着剤を用いて貼り付ける。符号7の表面仕上げ材及び符号8の框には、石板、木板又はタイルを用いる。また、符号9の接着剤には、エポキシ系のものが適している。
【0019】
浴槽外部底面や、浴槽内に段差を設けてある部分には、符号10の補強用パイプを配置し、FRPで包んで一体とする。補強用パイプは、強度が必要であることからステンレスなどの金属が適している。FRPで包むことで、錆びや腐蝕などへの耐性を上げることができる。
【0020】
設置現場では、排水口配管、濾過吸込口、濾過吐出口及び符号11のコンクリート躯体を施工しておく。
【0021】
浴槽の設置工事は、本発明の浴槽を、段落番号0020のように施工した現場へ設置し、配管の接続やシール工事等を行い、最終漏水試験を行うことで完了する。現場でコンクリートを用いて浴槽を造作するよりも工期を短くでき、浴槽そのものの漏水試験を省ける。
【0022】
符号11のコンクリート躯体と本発明の間に、符号12の空気層ができる。この空気層が断熱効果を高める。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、浴槽のみならず、同じ方法で寸法や形状を変えることでプールを造ることもできる。また、補強を施した上で表面仕上げ材を使用せず、FRPそのものの浴槽若しくはプールとすることもできる。
【0024】
本発明を実施した浴槽は保温効果が高いため、浴槽や温水プールに使用するとエネルギーの節約につながり、環境への影響を抑えることができる。また、工期が短い現場での施工にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明を実施した浴槽の平面図である。
【図2】図2は、図1の浴槽を設置したときの断面図A−A’である。
【符号の説明】
【0026】
1 浴槽本体
2 濾過吸込口
3 濾過吐出口
4 排水口
5 給湯口
6 FRP製浴槽ベース
7 表面仕上げ材
8 框
9 接着剤
10 補強用パイプ
11 コンクリート躯体
12 空気層
13 アングル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型のベースに吸込口及び吐出口を加工し表面材を貼り付けることで製造される浴槽であって、ベースの素材にFRPを使用し、かつベースを二重構造に成型することで空気層を作り、断熱効果をもつ浴槽
【請求項2】
表面材に石製の板を使用する、請求項1の浴槽
【請求項3】
表面材に木製の板を使用する、請求項1の浴槽
【請求項4】
表面材にタイルを使用する、請求項1の浴槽
【請求項5】
箱型のベースに吸込口及び吐出口を加工し表面材を貼り付けることで製造されるプールであって、ベースの素材にFRPを使用し、かつベースを二重構造に成型することで空気層を作り、断熱効果をもつプール
【請求項6】
表面材に石製の板を使用する、請求項4のプール
【請求項7】
表面材に木製の板を使用する、請求項4のプール
【請求項8】
表面材にタイルを使用する、請求項4のプール
【請求項9】
箱型のベースに吸込口及び吐出口を加工することで製造される浴槽であって、ベースの素材にFRPを使用し、かつベースを二重構造に成型することで空気層を作り、断熱効果をもつ浴槽
【請求項10】
箱型のベースに吸込口及び吐出口を加工することで製造されるプールであって、ベースの素材にFRPを使用し、かつベースを二重構造に成型することで空気層を作り、断熱効果をもつプール

【図1】
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【図2】
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