説明

業務用車輌における防犯装置

【課題】防犯壁を設置した業務用車輌において、助手席等の開放空間側に向けてエアバッグを瞬時に膨張させ、強盗犯人による犯罪行為を未然に防止する。
【解決手段】耐刃防護生地より成るエアバッグ3と、前記エアバッグ3内部にガスを噴出して該エアバッグ3を膨張させるインフレーターとにより防犯装置本体5が形成され、且つ該防犯装置本体5は、防犯壁6を設置した業務用車輌内において、運転手の背面の防犯壁の支柱の上方部に設置されると共に、該防犯装置本体5を起動してエアバッグ3を膨張させる起動スイッチ10が運転席7近傍に設置され、前記起動スイッチ10が押圧されてエアバッグ3が膨張したとき、運転席7と開放空間8間の隙間をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーやバス等の業務用車輌の防犯用として、運転席の後方位置に、背面側からの犯罪行為から運転手を保護するため、アクリル板等の防犯壁を設置しているタイプのタクシーやバス等の業務用車輌において、非常時の防犯装置として、運転席側から助手席側、あるいは乗降口側等の開放空間に向けてエアバッグを瞬時に膨張させて、強盗犯人による犯罪行為の障害となるようにして、強盗犯人による犯罪行為を未然に防止できるようにしたタクシーやバス等の業務用車輌における防犯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、タクシーやバス等の業務用車輌の防犯用として、運転席の後方位置に、アクリル板等の防犯壁を設置している。また、実用には供されていないが、タクシーにおいて、エアバッグを用いて強盗犯人による犯罪行為を阻止する防犯装置が下記の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−252158号公報
【特許文献2】実用新案登録第3149728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、アクリル板等の防犯壁は、運転手の後方位置に設置されて、背面側からの犯罪行為に対する防犯効果は認められるが、運転手の横方向、すなわち、運転手がドアまたは側壁と防犯壁で防護されていない側である、タクシーの助手席側、またはバスの乗降口側の開放空間側からの犯罪行為には無防備で、防犯効果は認められないという課題があった。
【0005】
前記特許文献1に記載されたものは、前記防犯壁のないタイプのタクシーに使用することを目的とするものであって、エアバッグ収納部をタクシーの後部座席前方部に配設し、エアバッグを膨張させて運転席側と後部座席側との空間を遮断して犯罪行為を防止できるようにしたものであるが、前記エアバッグは運転席側と後部座席側との空間を遮断する必要があるため、かなりの容量のエアバッグが必要となり、ガスが充填されて膨張し終るまでに時間がかかり、そのため強盗犯の犯罪行為を防止できないという課題があった。
【0006】
前記特許文献2に記載されたものは、タクシーの運転手に対する強盗の犯罪行為を阻止するエアバッグを用いた防犯装置に関するものであり、助手席側のダッシュボードにも防犯装置が設置されているが、該防犯装置は、助手席の正面側に設置されているので、運転手と助手席側に膨張したエアバッグとの間には大きな隙間が生じてしまうため、該隙間を通しての後部座席からの犯罪行為を阻止することができないという課題があった。
【0007】
また、特許文献2記載の防犯装置は、ダッシュボードに取付け基板を用いて取付けてあるため、ダッシュボードへの取り付けに手間がかかると共に、ダッシュボードのポケットが使用できず不便であるという課題があった。
【0008】
更に、業務用車輌であるバスについては、先行特許文献にも記載されておらず、更に、エアバッグを用いた防犯装置は全く実用に供されていないので、バスの運転手としては、極めて不安であるという課題があった。
【0009】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、運転席の後方位置に防犯壁を設置したタクシーやバス等の業務用車輌において、運転手が強盗等の犯罪行為に遭遇したときに、起動スイッチを押圧することにより、該運転手の肩口付近から助手席や乗降口等の開放空間側へ向けて、エアバッグが運転席に接するようにして膨張して、運転席と強盗犯人との間に隙間をなくすことにより、前記膨張したエアバッグが防御壁の役目を果して、犯罪行為を阻止することができるようにした業務用車輌における防犯装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、開閉可能な蓋板を備えた収納部と、該収納部の内部に折り畳まれて膨張展開可能な遮断用の耐刃防護生地より成るエアバッグと、前記エアバッグ内部にガスを噴出して該エアバッグを膨張させるインフレーターとにより防犯装置本体が形成され、且つ該防犯装置本体は、業務用車輌の運転手の背面の防犯壁の支柱の上方部に、前記蓋板部分を開放空間側方向へ向けて設置すると共に、該防犯装置本体を起動して前記インフレーターによってエアバッグを膨張させる起動スイッチが運転席近傍に設置され、前記起動スイッチが押圧されてエアバッグが膨張したとき、運転席と前記開放空間との間の隙間をなくすという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
上記構成より成る本発明によれば、運転手が強盗等の犯罪行為に遭遇したときに、起動スイッチを押圧することにより、運転席に接するようにして、助手席や乗降口等の開放空間側へ向けてエアバッグが膨張して、運転席と後部座席の強盗犯人との間に隙間をなくして、前記膨張したエアバッグが防犯壁の役目を果すことにより、犯罪行為を阻止することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る業務用車輌における防犯装置をタクシーに取り付けた状態を示す概略平面図である。
【図2】同概略縦断面図である。
【図3】本発明業務用車輌における防犯装置本体の横断面図である。
【図4】本発明業務用車輌における防犯装置においてエアバッグが膨張した状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る業務用車輌における防犯装置をバスに取り付けた状態を示す概略平面図である。
【実施例1】
【0013】
本発明業務用車輌における防犯装置をタクシーに取り付けた例を、実施例1として図面に基づいて詳細に説明する。本発明防犯装置は、開閉可能な蓋板1を備えた収納部2と、該収納部2の内部に折り畳まれて膨張展開可能な遮蔽用のエアバッグ3と、ガスを袋状のエアバッグ3内部に噴出して前記エアバッグ3を膨張させるインフレーター4とにより形成された防犯装置本体5を使用する。
【0014】
前記防犯装置本体5は、運転手Dの背面に防犯壁6を設置したタクシーTの車内において、助手席側である開放空間8側の防犯壁6を構成する支柱9の上方部、好ましくは運転手Dの肩口の高さ位置に、蓋板1部分を開放空間8側方向へ向けて設置されると共に、該防犯装置本体5を起動して前記インフレーター4によってエアバッグ3を膨張させる起動スイッチ10が、後部座席11からは見えない運転席7近傍に設置され、且つ該起動スイッチ10はリード線(図示せず)を介して前記防犯装置本体5に接続されている。
【0015】
なお、前記エアバッグ3は、膨張時に強盗犯人の刃物等により切断されて防犯の目的を達することがないよう、刃物でも切断されにくい、「耐刃防護生地」を使用する。この「耐刃防護生地」は、特に限定する必要はないが、好ましくは、例えば耐刃性と耐衝撃性を有する超高強力ポリエチレン繊維を、京都の西陣織の製織技術を用いて製造された、商標名「京都西陣yoroi」を使用することが推奨される。これにより、刃物やその他金具等によるエアバッグ3の破断が防止できる。
【0016】
本発明実施例1に係る業務用車輌における防犯装置は、タクシー乗客の不審な動きを感じた運転手Dが起動スイッチ10を押圧して、エアバッグ3が膨張して車内において、運転席7と開放空間8である助手席との隙間をなくすことにより、運転手Dが防犯壁6と膨張したエアバッグ3とで後部座席11の強盗犯人から遮断されて、該強盗犯人からの暴力行為から身を守ることができるよう構成されている。
【0017】
前記エアバッグ3は、図3に示すように、常態では収納部2内にガスの噴出により膨張可能なように折り畳まれて収納されており、運転手Dによる起動スイッチ10のONにより、蓋板1が開放されると同時に、前記エアバッグ3は瞬時に前記収納部2から開放空間8である助手席側へ膨張拡大しながら飛び出して、前記防犯壁6と膨張拡大したエアバッグ3で運転手Dを、後部座席11の強盗犯人から遮断する。
【0018】
前記膨張状態におけるエアバッグ3は、一端部が運転席7に接すると共に、他端部が開放空間8である助手席の中間付近にまで延伸されることが推奨される。これにより、強盗犯人が、膨張したエアバッグ3を動かそうとしても、該エアバッグ3は、一端部が運転席7に接すると共に、他端部が開放空間8である助手席側へ延伸されているので、動かすことができず、運転手Dの安全が確保される。
【0019】
なお、本発明防犯装置には、膨張したエアバッグ3のガスを排気して抜き去る排気バルブ12を備えている。例えば、前記操作によりエアバッグ3を膨張させてしまっても、前記排気バルブ12を開放してガスを抜き去り、該エアバッグ3を収縮させることができる。そして、前記排気バルブ12の取付位置は、特に限定する必要はないが、好ましくは、インフレーター4とエアバッグ3との間のガス注入管に設置することが推奨される。
【0020】
更に、本発明防犯装置においては、一旦膨張して拡大したエアバッグ3は、ガスが抜け去ることなく、その膨張したままの形状を維持し続けない限り、防犯の目的を達することができない。一般に、自動車に使用されているエアバッグは、一旦膨張した後、ガスが抜けて収縮できるよう形成されているが、本発明においては、強盗犯人よりの犯罪行為を避けるため、運転手Dがドアから脱出したり、あるいは警察等への緊急通報をしたりする時間、前記エアバッグ3の膨張状態を維持し続ける必要がある。そのため、前記インフレーター4がエアバッグ3を膨張させた後も、例えば5分程度の一定時間、ガスを噴出し続けるように形成する必要がある。
【実施例2】
【0021】
本発明業務用車輌における防犯装置をバスに取り付けた例を、実施例2として図5に基づいて詳細に説明する。実施例2における防犯装置本体5は、図5に示すように、バスBの車内において、開放空間8である乗降口側の防犯壁6を構成する支柱9の上方側、好ましくは運転手Dの肩口の高さ位置に、蓋板1部分を開放空間8である乗降口方向へ向けて設置されると共に、該防犯装置本体5を起動して前記インフレーター4によってエアバッグ3を膨張させる起動スイッチ10が、運転席7近傍に設置され、且つ該起動スイッチ10はリード線(図示せず)を介して前記防犯装置本体5に接続されている。
【0022】
本発明実施例2に係る業務用車輌における防犯装置は、バス乗客の不審な動きを感じた運転手Dが起動スイッチ10を押圧して、エアバッグ3を膨張させて、バス車内において運転席7と開放空間8である乗降口との隙間をなくすことにより、運転手Dが防犯壁6と膨張したエアバッグ3とで、バス車内の強盗犯人から遮断されて、該強盗犯人からの暴力行為から身を守ることができるよう構成されている。そして、その他の作用、および効果は前記実施例1と同一であるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0023】
1 蓋板
2 収納部
3 エアバッグ
4 インフレーター
5 防犯装置本体
6 防犯壁
7 運転席
8 開放空間
9 支柱
10 起動スイッチ
11 後部座席
12 排気バルブ
D 運転手
T タクシー
B バス







【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な蓋板を備えた収納部と、該収納部の内部に折り畳まれて膨張展開可能な遮断用の耐刃防護生地より成るエアバッグと、前記エアバッグ内部にガスを噴出して該エアバッグを膨張させるインフレーターとにより防犯装置本体が形成され、且つ該防犯装置本体は、業務用車輌の運転手の背面の防犯壁の開放空間側の支柱の上方部に、前記蓋板部分を開放空間側方向へ向けて設置すると共に、該防犯装置本体を起動して前記インフレーターによってエアバッグを膨張させる起動スイッチが運転席近傍に設置され、前記起動スイッチが押圧されてエアバッグが膨張したとき、運転席と前記開放空間との間の隙間をなくすようにしたことを特徴とする業務用車輌における防犯装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46043(P2012−46043A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189144(P2010−189144)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(593044919)カインズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】