説明

極板保護用粘着テープ

【課題】バリ等が接触しても破れることがなく、高温下においても極板等から剥離せず短絡防止効果を維持することができる極板保護用粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明の極板保護用粘着テープは、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する極板保護用粘着テープであって、突き刺し耐性が300gf・mm以上であり、且つ、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に、1.0%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板保護用粘着テープ、具体的には、リチウムイオン電池等の電池内部に貼り合わせて、短絡を防止する目的で使用する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯電話やノートパソコン等のモバイル機器の電源として不可欠である。また、リチウムイオン電池は高容量・軽量であるため、電気自動車用バッテリーとしても大いに期待され、今後更に高容量化することが求められている。
【0003】
リチウムイオン電池の高容量化に伴い、特に巻回型電池において巻回電極板の巻回数がより多くなる傾向があり、より薄いセパレータを使用することが主流となっている。しかし、製造工程において、電池内部に混入した非常に小さな異物、又は極板に存在するバリ等によりセパレータに穴が開き、正の電極板と負の電極板とが短絡(ショート)して発熱し、発火事故等の原因となることが問題となっている。
【0004】
内部短絡を防止する方法としては、バリが存在する電極端部や電極端子に粘着テープを貼り合わせることにより、薄いセパレータがバリに接触して穴が開くことを防止する方法が挙げられる(特許文献1)。
【0005】
近年、リチウムイオン電池により高い安全性が求められていることに伴い、バリ等による突き刺しにも破れることがなく、充電、放電を繰り返しても短絡防止効果を維持することができる極板保護用粘着テープが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−247489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、バリ等が接触しても破れることがなく、高温下においても短絡防止効果を維持することができる極板保護用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の突き刺し耐性を有し、且つ、260℃、1時間加熱しても、熱収縮率が1%以下である粘着テープを極板保護用途に使用すると、バリ等による突き刺しからセパレータを保護することができ、短絡(ショート)による発熱、発火事故等を防止することができること、及び、高温下においても収縮して被着体から剥がれることがないため、充電、放電を繰り返しても、短絡防止効果を維持することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する極板保護用粘着テープであって、下記方法により算出される突き刺し耐性が300gf・mm以上であり、且つ、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に、1.0%以下であることを特徴とする極板保護用粘着テープを提供する。
突き刺し耐性算出方法
23±2℃条件下で、直径11.28mmの円形に穴を開けた固定板に粘着テープを固定して、先端の曲率半径が0.5mmφの針を速度2mm/sで突き刺し、針が粘着テープを貫通する時の最大荷重(gf)、及び粘着テープの最大伸び(mm)を測定し、下記式(1)により求める。
突き刺し耐性=最大荷重(gf)×粘着テープの最大伸び(mm)×1/2 (1)
【0010】
前記極板保護用粘着テープは短絡防止用として、電極端子及び/又は極板端部、セパレータにおける極板端部が接触する部分に貼付して使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る極板保護用粘着テープは、異物や極板等に存在するバリが接触しても破れることなく追従して伸びるため、電池内部において極板やセパレータに貼付することにより、異物や極板等に存在するバリがセパレータを貫通して電極間の短絡を引き起こすことを防止することができ、電池に高い安全性、信頼性を付与することができる。更に、本発明に係る極板保護用粘着テープは260℃、1時間加熱による熱収縮率が1%以下であるため、高温下においても収縮して被着体から剥がれることがない。そのため、電池の充電、放電を繰り返すことにより電池内部が高温環境となっても、極板やセパレータから剥がれず短絡防止効果を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る極板保護用粘着テープの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る極板保護用粘着テープの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る極板保護用粘着テープの他の一例を示す概略断面図である。
【図4】粘着テープの突き刺し試験方法を示す概略斜視図(4-1)、及び突き刺し試験における粘着テープの伸びの測定方法を示す概略断面図(4-2)である。
【図5】粘着テープへの荷重(gf)と、荷重による粘着テープの伸び(mm)、及び粘着テープの突き刺し耐性の関係を示すグラフである。
【図6】リチウムイオン電池における、本発明にかかる極板保護用粘着テープの使用例を示した概略図であり、図(6-1)は使用前の図、図(6-2)は極板等へ本発明にかかる極板保護用粘着テープを貼着した図、図(6-3)は、極板を巻回して本発明にかかる極板保護用粘着テープを使用して巻き止めした図である。
【図7】アルミ電解コンデンサにおける、本発明にかかる極板保護用粘着テープの使用例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る極板保護用粘着テープは、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する極板保護用粘着テープであって、下記方法により算出される突き刺し耐性が300gf・mm以上であり、且つ、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に、1.0%以下であることを特徴とする。
突き刺し耐性算出方法
23±2℃条件下で、直径11.28mmの円形に穴を開けた固定板に粘着テープを固定して、先端の曲率半径が0.5mmφの針を速度2mm/sで突き刺し、針が粘着テープを貫通する時の最大荷重(gf)、及び粘着テープの最大伸び(mm)を測定し、下記式(1)により求める。
突き刺し耐性=最大荷重(gf)×粘着テープの最大伸び(mm)×1/2 (1)
【0015】
[粘着剤層]
本発明における粘着剤層を構成する粘着剤としては、不飽和度を示すJIS K 0070:1992に準じた方法で測定したヨウ素価が10以下(好ましくは、5以下)及び/又はNMR法による不飽和度が0.5[10-2モル/g]以下(好ましくは、0.1[10-2モル/g]以下)であることが好ましい。前記ヨウ素価が10を超え、且つ、NMR法による不飽和度が0.5[10-2モル/g]を超える化合物は、電池内部で電解液[例えば、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1:1)等]中に溶出して電解質(各種塩類)と反応し、他の成分との結合若しくは電解質の自己分解を促進することにより、電解液を劣化させる傾向があるからである。なお、本発明における粘着剤層を構成する粘着剤とは下記ベースポリマー等を含む不揮発性成分を意味し、具体的には、下記ベースポリマー等を含有するコーティング剤を基材等に塗布し、揮発性成分が揮発した後の成分である。
【0016】
ここで、NMR法による不飽和度とは、プロトンNMR測定において得られたオレフィン由来のプロトンのピーク面積から、不飽和度が既知のサンプルのピーク面積を標準として算出したものである。
【0017】
本発明における粘着剤層を構成するベースポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマーなどの公知のポリマーを用いることができる。
【0018】
上記ゴム系ポリマーとしては、天然ゴムや各種の合成ゴムが挙げられる。前記合成ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体等を挙げることができる。
【0019】
本発明においては、なかでも、電解液へ溶出しにくく、且つ、電解液に溶出しても電解液中の電解質との反応性が低く、電解液の劣化を防止することができる点で、ポリイソプレンゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、ブチルゴム等を使用することが好ましい。
【0020】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、主モノマー、コモノマー、及び官能基含有モノマー等からなるポリマー等を挙げることができる。
【0021】
主モノマーとしては、粘着性を付与するモノマーを挙げることができ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等である。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
【0022】
上記の中でも、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n−ブチル(BA)である。
【0023】
上記主モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは70〜100重量%である。
【0024】
コモノマーとしては、接着性や凝集性を付与するモノマーを挙げることができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基含有化合物等である。
【0025】
上記コモノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、20重量%未満であることが好ましく、より好ましくは10重量%未満である。
【0026】
官能基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマーも含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのN−置換アミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー等を挙げることができる。上記官能基含有モノマーの中でも、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、より好ましくは、アクリル酸(AA)である。上記官能基含有モノマーは、接着性を改良する作用を有する。
【0027】
上記の官能基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、20重量%未満が好ましく、より好ましくは5重量%未満である。
【0028】
上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0029】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記アクリル系ポリマーの重合に際しては、重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤としては、特に限定されず公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができ、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0031】
また、上記アクリル系ポリマーは架橋剤を添加して架橋してもよい。前記架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等の各種架橋剤を挙げることができ、これらはアクリル系ポリマーに含有する官能基により適宜選択して使用することができる。架橋剤の使用量としては、例えば、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部程度、好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0032】
上記シリコーン系ポリマーとしては、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムやシリコーンレジン、または、これをシロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤などの架橋剤を添加して架橋・重合したもの等を挙げることができる。
【0033】
本発明における粘着剤層を構成するベースポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、例えば、20万〜300万程度が好ましく、なかでも、電解液に溶出しにくく、電解液の劣化を抑制することができる点で、100万〜300万程度が好ましい。ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲を下回ると凝集力が劣り、電池内部に使用する場合等、高い圧力がかかる環境下では粘着剤層が変形して基材から糊がはみ出し易く、電解液へ溶出し易くなり、電解液の劣化の原因となる傾向がある。一方、ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲を上回ると、粘着剤層が硬くなり過ぎて粘着力が不十分となり、極板等への貼着が困難となる傾向がある。ベースポリマーの重量平均分子量は、架橋剤の使用量、重合の際の温度や時間、モノマー濃度等を調整することによりコントロールすることができる。
【0034】
また、本発明における粘着剤層を構成するベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、マイナス20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)がマイナス20℃を上回ると、使用温度によっては粘着剤層が硬くなり、粘着力が不十分となり、極板等への貼着が困難となる場合がある。
【0035】
本発明における粘着剤層には、上記ベースポリマー以外に他の成分を含有していてもよく、例えば、紫外線吸収剤、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、酸化防止剤、顔料、染料、シランカップリング剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂及びその誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等を挙げることができる。
【0037】
軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメット酸エステル等を挙げることができる。
【0038】
本発明における粘着剤層の形成方法としては、公知慣用の方法を採用することができ、例えば、必要に応じて溶媒(例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等)を使用して上記ベースポリマーと必要に応じて使用される添加剤を希釈してコーティング液を調製し、これを基材上又は適当なセパレータ(剥離紙など)上に塗布し、その後乾燥する方法などを挙げることができる。
【0039】
本発明における粘着剤層の厚さとしては、例えば、2〜20μm(特に4〜15μm)の範囲内であることが好ましい。厚さが2μmを下回ると、極板やセパレータ等に貼り合わせるのに必要な接着力を得ることが困難となり、異物や極板等に存在するバリがセパレータを貫通して電極間の短絡を引き起こすことを防止することが困難となる傾向がある。一方、厚さが20μmを超えると、粘着テープの変形や、基材から糊のはみ出しが起き易くなり、電解質の劣化を引き起こしやすくなる傾向がある。
【0040】
[基材]
基材としては、特に限定されず、各種基材を用いることが可能であり、例えば、布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;各種の紙などの紙系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;各種樹脂によるフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体等の適宜な薄葉体を用いることができる。上記プラスチック系基材の材質又は素材としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
【0041】
基材は単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。また、基材の表面には、必要に応じて、粘着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよい。
【0042】
基材の厚さとしては、特に限定されないが、例えば8〜100μm程度、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは12〜25μmである。基材の厚さが上記範囲を下回ると、粘着テープの強度が低くなりすぎ、実用性を損なう恐れがある。一方、基材の厚さが上記範囲を上回ると、電池内に占める体積が大きくなり過ぎ、電池の高容量化が困難となる傾向がある。また、粘着テープを曲げた際の反発力が大きくなり過ぎ、巻回型電池内部に使用することが困難となる傾向がある。
【0043】
また、本発明における基材としては、上記方法により算出される突き刺し耐性が300gf・mm以上(例えば300〜1700gf・mm程度、好ましくは300〜1600gf・mm、特に好ましくは、500〜1500gf・mm)であることが好ましい。前記突き刺し耐性が上記範囲を下回ると、極板に存在するバリや混入異物からセパレータを保護する作用を粘着テープに付与することが困難となる。本発明における突き刺し耐性は、上記方法により算出され、粘着テープが破断するまでにかかる総荷重(図5における斜線部分の面積)にほぼ相当する。
【0044】
更に、本発明における基材は、電解液に溶解しにくく、電解液を劣化しにくいものが好ましい。
【0045】
本発明における基材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド等から成るプラスチック系基材を使用することが好ましい。
【0046】
更にまた、本発明における基材は、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に、1.0%以下(好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下)であることが好ましく、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド等から成るプラスチック系基材であって、製膜工程に延伸工程を含まない基材を使用することが好ましい。収縮率が上記範囲を上回ると、電池の充電、放電を繰り返すことにより電池内部が高温環境となった際に、極板やセパレータに貼着した粘着テープが浮いたり剥がれたりして、短絡防止効果を維持することが困難となる傾向がある。
【0047】
本発明における基材としては、商品名「カプトン50H」、「カプトン100H」、「カプトン200H」(以上、東レ・デュポン(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0048】
[極板保護用粘着テープ]
本発明に係る極板保護用粘着テープは、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープである。前記粘着剤層は複数設けられていてもよく、例えば、基材の一方にのみ粘着剤層を有している片面粘着テープであってもよく、基材の両面に粘着剤層を有している両面粘着テープであってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、基材と粘着剤層との密着性を高める為の中間層など)を有していてもよい。
【0049】
図1は、本発明に係る極板保護用粘着テープ4の一例を示す概略断面図であり、基材1の片面に粘着剤層2が設けられている。
【0050】
図2は、本発明に係る極板保護用粘着テープ4の他の一例を示す概略断面図であり、基材1の両面に粘着剤層2A、2Bが設けられている。この粘着テープを電極或いは極板に貼り合わせると、前記電極或いは極板に接するセパレータ部分も同時に固定することが可能となり、高温下での粘着テープの膨張或いは収縮による摩擦を低減することができ、効率よく短絡防止効果を発揮することができる。
【0051】
図3は、本発明に係る極板保護用粘着テープ4の更に他の一例を示す概略断面図であり、基材1の片面に中間層3を介して粘着剤層2が設けられている。
【0052】
本発明に係る極板保護用粘着テープの形成方法としては、公知慣用の方法を採用することができ、例えば、上記ベースポリマー等を含むコーティング液を調製し、これを直接基材上に塗布して基材/粘着剤層積層体を形成する方法や、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記コーティング液を塗布して粘着剤層を形成し、これを基材上に転写(移着)することにより基材/粘着剤層積層体を形成する方法などが挙げられる。転写による場合は、基材との界面にボイド(空隙)が残る場合がある。この場合、オートクレーブ処理等により加温加圧処理を施し、ボイドを拡散させて消滅させることができる。
【0053】
また、本発明に係る極板保護用粘着テープには、粘着剤層表面の保護、ブロッキング防止の観点などから、粘着剤層表面にセパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレータは本発明に係る極板保護用粘着テープを被着体に貼着する際に剥がされるものであり、必ずしも設けなくてもよい。用いられるセパレータとしては、特に限定されず、公知慣用の剥離紙などを使用できる。例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン系等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
【0054】
本発明に係る極板保護用粘着テープが両面粘着テープである場合、上記セパレータは、本発明に係る極板保護用粘着テープの両方の粘着剤層表面に設けられてもよいし、片方の粘着面に背面剥離層を有するセパレータを設け、シートを巻回することによって、反対側の粘着剤層表面にセパレータの背面剥離層が接するようにしてもよい。
【0055】
上記方法により得られる本発明に係る極板保護用粘着テープは、上記測定方法による突き刺し耐性が300gf・mm以上(例えば300〜1700gf・mm程度、好ましくは300〜1600gf・mm、特に好ましくは、500〜1500gf・mm)である。このため、極板やセパレータ等に貼着することにより、極板に存在するバリや混入異物によりセパレータに穴が開くことを防止することができ、正の電極板と負の電極板との短絡(ショート)を防止することができる。
【0056】
また、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に1.0%以下(好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下)であるため、電池の充電、放電を繰り返すことにより電池内部が高温環境となった際にも、極板やセパレータに貼着した粘着テープが浮いたり剥がれたりすることがなく、短絡防止効果を維持することができる。
【0057】
リチウムイオン電池は、正極芯体に正極活物質が塗布された正極板と、負極芯体に負極活物質が塗布された負極板とがセパレータを介して相対向させ、これらを渦巻状に巻回して得られた巻回型電極群、正極板、負極板から引き出された電極端子、及び電解液が外装缶に封入された構造を有する。また、アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔/セパレータ/陰極アルミ箔を巻回してなる素子本体、陽極箔、陰極箔から引き出された電極端子、及び電解液が外装缶に封入された構造を有する。本発明に係る極板保護用粘着テープは、リチウムイオン電池又はアルミ電解コンデンサ製造過程において、異物やバリ等によるセパレータの貫通を防止する目的、及び電池ケース内への電極の詰め込み適性を改善する目的(例えば、巻回型電池の巻末部を巻き止めする目的、活物質の剥がれを防止する目的)で使用される。貼着場所としては前記目的を達成することができる場所であれば特に限定されることなく、例えば、リチウムイオン電池、アルミ電解コンデンサ等の内部(例えば、電極端子、極板端部、セパレータにおける極板端部が接触する部分、活物質の端部、巻末部等)に貼り合わせて使用される(図6、7参照)。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0059】
実施例1
ポリイソプレンゴム(商品名「クレイトン IR−307」、クレイトンポリマージャパン(株)製、重量平均分子量:2.76×106)100重量部をトルエンで希釈してコーティング液(1)を得た。
得られたコーティング液(1)を、厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布、乾燥して、粘着テープ(1)を得た。
【0060】
実施例2
厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)に代えて、厚さ25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン100H」、東レ・デュポン(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(2)を得た。
【0061】
実施例3
厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)に代えて、厚さ50μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン200H」、東レ・デュポン(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(3)を得た。
【0062】
比較例1
厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)に代えて、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラー」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(4)を得た。
【0063】
比較例2
厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)に代えて、厚さ16μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(商品名「トレリナ」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(5)を得た。
【0064】
比較例3
厚さ13μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン50H」、東レ・デュポン(株)製)に代えて、厚さ25μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(商品名「トレリナ」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして粘着テープ(6)を得た。
【0065】
実施例及び比較例で得られた粘着テープの加熱収縮率及び突き刺し耐性を以下の方法で測定した。
【0066】
[加熱収縮率]
実施例及び比較例で得られた粘着テープを50mm×50mmのサイズに切断して試験体を得た。
得られた試験体を260℃に調整した熱風オーブン中で1時間保持した。その後、熱風オーブンから粘着テープを取り出して、TD(巾)方向、MD(長さ)方向の寸法を測定し[LTD(mm)、LMD(mm)]、粘着テープの加熱収縮率(%)を下記式により算出した。
加熱収縮率(TD方向)(%)=(50−LTD)/50×100
加熱収縮率(MD方向)(%)=(50−LMD)/50×100
【0067】
[突き刺し耐性]
圧縮試験機(商品名「KES−G5」、カトーテック(株)製、直径11.28mmの円形穴)を使用し、下記条件下で実施例及び比較例で得られた粘着テープの突き刺し試験を行い、突き刺し強度[破壊点における最大荷重(gf)]、及び粘着テープの最大伸び(mm)を観測し(図4参照)、下記式により突き刺し耐性(gf・mm)を算出した。
突き刺し耐性=最大荷重(gf)×粘着テープの最大伸び(mm)×1/2
測定条件
温度:23±2℃
突き刺し針:先端の曲率半径0.5mmの針
突き刺し速度:2mm/s
【0068】
上記評価結果を下記表にまとめて示す。
尚、実施例3で得られた粘着テープ(3)と比較例1で得られた粘着テープ(4)は上記突き刺し試験で非貫通であった為、最大荷重(gf)を測定上限値である1000gfとして突き刺し耐性を算出した。
【表1】

【符号の説明】
【0069】
1 基材
2、2A、2B 粘着剤層
3 中間層
4 極板保護用粘着テープ
5A、5B 固定板
6 突き刺し針
7 電極端子
8 正極板
9 負極板
10 セパレータ
11 活物質
12 電極箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する極板保護用粘着テープであって、下記方法により算出される突き刺し耐性が300gf・mm以上であり、且つ、260℃、1時間加熱した際の収縮率が、TD(巾)方向収縮率、MD(長さ)方向収縮率共に、1.0%以下であることを特徴とする極板保護用粘着テープ。
突き刺し耐性算出方法
23±2℃条件下で、直径11.28mmの円形に穴を開けた固定板に粘着テープを固定して、先端の曲率半径が0.5mmφの針を速度2mm/sで突き刺し、針が粘着テープを貫通する時の最大荷重(gf)、及び粘着テープの最大伸び(mm)を測定し、下記式(1)により求める。
突き刺し耐性=最大荷重(gf)×粘着テープの最大伸び(mm)×1/2 (1)
【請求項2】
短絡防止用として電極端子及び/又は極板端部に貼付して使用する請求項1に記載の極板保護用粘着テープ。
【請求項3】
短絡防止用としてセパレータにおける極板端部が接触する部分に貼付して使用する請求項1に記載の極板保護用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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