説明

楽音情報処理装置

【課題】 楽音発生手段が使用する記憶メモリのみならず、効果付加手段が使用する記憶メモリも、中央演算装置(CPU)と共用して使用するようにすることを課題とする。
【解決手段】 楽音の内容を表す楽音データ及び楽音を生成放音するための処理プログラムを記憶する第1の記憶手段(217)と、楽音に効果を付加するために楽音の内容を表すデータを一時的に記憶するための第1のテンポラリ領域及び楽音を生成放音するための処理に必要な第2のテンポラリ領域を含む第2の記憶手段(218)と、第1の記憶手段から楽音データを読み出すための楽音発生手段(213)と、第2の記憶手段の第1のテンポラリ領域にアクセスするための効果付加手段(214)と、第1の記憶手段から処理プログラムを読み出し、第2の記憶手段の第2のテンポラリ領域にアクセスするための中央演算装置(212)とを有する楽音情報処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音情報処理装置に関し、特に楽音を生成するための情報を処理する楽音情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、楽音の内容を表すデータを記憶するデータ記憶手段と、楽音を生成放音するための処理プログラムを記憶するプログラム記憶手段とを一体に設け、両記憶手段の読み出しを切り換える楽音情報記憶装置が開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、通常は動作制御用のデータを利用する制御部をメモリにアクセス可能にしておき、楽音形成用のデータを必要とするとき、音源部より利用要求信号を発生するようにし、この利用要求信号が与えられたとき、楽音形成用のデータの読み出しに必要な時間だけ音源部をメモリにアクセス可能にする電子楽器が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献3には、少なくとも制御プログラムの一部と波形データとを記憶した第1の記憶手段と、該第1の記憶手段から読み出された制御プログラムに従って動作する処理手段と、該第1の記憶手段から読み出された波形データに基づいて楽音信号を発生する楽音信号発生手段とを有し、該処理手段及び該楽音信号発生手段は前記第1の記憶手段に交互にアクセスする電子楽器の制御装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3には、効果付加用の遅延メモリに関しては特に対応していない。
【0006】
【特許文献1】特開平2−126296号公報
【特許文献2】特開平5−188952号公報
【特許文献3】特開平8−221066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、楽音発生手段が使用する記憶メモリのみならず、効果付加手段が使用する記憶メモリも、中央演算装置(CPU)と共用して使用するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の楽音情報処理装置は、楽音の内容を表す楽音データ及び楽音を生成放音するための処理プログラムを記憶する第1の記憶手段と、楽音に効果を付加するために楽音の内容を表すデータを一時的に記憶するための第1のテンポラリ領域及び楽音を生成放音するための処理に必要な第2のテンポラリ領域を含む第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段から前記楽音データを読み出して楽音を生成するための楽音発生手段と、前記第2の記憶手段の第1のテンポラリ領域にアクセスして前記楽音発生手段により生成された楽音に効果を付加するための効果付加手段と、前記第1の記憶手段から前記処理プログラムを読み出し、前記第2の記憶手段の第2のテンポラリ領域にアクセスし、前記楽音発生手段及び前記効果付加手段を制御するための中央演算装置とを有し、前記第1の記憶手段は前記中央演算装置及び前記楽音発生手段により共用され、前記第2の記憶手段は前記中央演算装置及び前記効果付加手段により共用される。
【発明の効果】
【0009】
第1の記憶手段には、楽音発生手段のための楽音データと中央演算装置のための処理プログラムとを一体化して記憶させる。第2の記憶手段には、効果付加手段のための第1のテンポラリ領域と中央演算装置のための第2のテンポラリ領域とを一体化して記憶させる。これにより、第1及び第2の記憶手段をコンパクトにすることができ、回路構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図2(A)は、一般的な電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステム100の構成例を示すブロック図である。キーボード部(演奏するための複数の鍵(タッチ検出用の構造となっている)を有する鍵盤)、操作パネル部(音色選択及び設定するためのスイッチ、ボリュームと選択及び設定状態を表示するLCD(液晶表示器)あるいはLED(発光ダイオード)よりなる表示装置を有する)及びDAC(D/A変換器)106以降のアナログ信号処理部(アナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(ノイズ除去)、増幅処理を施す処理部)、アンプ(アナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカで発生させるために増幅をするパワーアンプ)、スピーカ(アナログ楽音信号を可聴信号として放音するスピーカで1ないし複数個よりなる)等は省略してある。
【0011】
まず、CPU101について説明する。CPU101は、本電子楽器の制御をつかさどる中央演算装置で、ROM102に格納されているプログラムに応じて、キーボード部(省略)の鍵、操作パネル部(省略)の音色設定スイッチ等を走査し、キーボード部の鍵の押鍵・離鍵に伴う鍵(キー)情報(キーオン/オフ、鍵番号、タッチ情報等)の楽音発生部104への割当て処理、操作パネル部の音色設定スイッチ、ボリュームに応じて楽音発生部104より所望の楽音信号を発生させるように制御する。
【0012】
次に、ROM102について説明する。ROM102は、CPU101のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータを格納する読出し専用のメモリである。
【0013】
次に、RAM103について説明する。RAM103は、プログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、一部あるいは全部はバッテリーバックアップされて、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを電源がオフになっても格納保持しておくことができる。
【0014】
次に、LSI107について説明する。LSI107は、楽音発生部104の機能を格納している半導体集積回路である。
【0015】
次に、楽音発生部104について説明する。楽音発生部104は、操作パネル部で選択及び設定された音色で、キーボード部で演奏された鍵に応じた楽音信号を発生する楽音発生器などを含む。
【0016】
次に、ROM(波形メモリ)105について説明する。ROM105は、楽音波形データが、音色及び音域(音高)に対応して記憶されており、音色選択及び鍵情報に応じて所望の楽音周波数に従って楽音発生部104からの読み出し信号で読み出される。
【0017】
次に、DAC106について説明する。DAC106は、上記楽音発生部104で生成されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。
【0018】
図2(B)は、図2(A)で示した電子楽器において、CPUと楽音発生部を1つのLSIに格納する機能的な構成を簡略的に記載したシステム110の構成例を示すブロック図である。本構成も同様に、キーボード部(演奏するための複数の鍵(タッチ検出用の構造となっている)を有する鍵盤)、操作パネル部(音色選択及び設定するためのスイッチ、ボリュームと選択及び設定状態を表示するLCDあるいはLEDよりなる表示装置を有する)及びDAC117以降のアナログ信号処理部(アナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(ノイズ除去)、増幅処理を施す処理部)、アンプ(アナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカで発生させるために増幅をするパワーアンプ)、スピーカ(アナログ楽音信号を可聴信号として放音するスピーカで1ないし複数個よりなる)等は省略してある。
【0019】
まず、LSI111について説明する。LSI111は、CPU112と楽音発生部113、及び外部に設けられたROM115とRAM116をCPU112と楽音発生部113が共用するために設けられた選択部114よりなる半導体集積回路である。
【0020】
次に、CPU112について説明する。CPU112は、本電子楽器の制御をつかさどる中央演算装置で、ROM115に格納されているプログラムに応じて、キーボード部(省略)の鍵、操作パネル部(省略)の音色設定スイッチ等を走査し、キーボード部の鍵の押鍵・離鍵に伴う鍵(キー)情報(キーオン/オフ、鍵番号、タッチ情報等)の楽音発生部113への割当て処理、操作パネル部の音色設定スイッチ、ボリュームに応じて楽音発生部113より所望の楽音信号を発生させるように制御する。
【0021】
次に、楽音発生部113について説明する。楽音発生部113は、操作パネル部で選択及び設定された音色で、キーボード部で演奏された鍵に応じた楽音信号を発生する楽音発生器などを含む。
【0022】
次に、選択部114について説明する。選択部114は、外部に設けられたROM115とRAM116をCPU112と楽音発生部113が共用するためそれぞれから及びそれぞれへのアドレス及びデータバスを選択する。
【0023】
次に、ROM115について説明する。ROM115は、CPU112のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータ、及び音色選択及び鍵情報に応じて所望の楽音周波数に従って楽音発生部113からの読み出し信号で読み出される音色及び音域(音高)に対応した楽音波形データが記憶されている。
【0024】
次に、RAM116について説明する。RAM116は、プログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、一部あるいは全部はバッテリーバックアップされて、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを電源がオフになっても格納保持しておくことができる。RAM116は、必要に応じて書換え可能な楽音波形データを格納してもいい。
【0025】
次に、DAC117について説明する。DAC117は、上記楽音発生部113で生成されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。
【0026】
図1(A)は、他の電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステム200の構成例を示すブロック図である。キーボード部(演奏するための複数の鍵(タッチ検出用の構造となっている)を有する鍵盤)、操作パネル部(音色選択及び設定するためのスイッチ、ボリュームと選択及び設定状態を表示するLCDあるいはLEDよりなる表示装置を有する)及びDAC209以降のアナログ信号処理部(アナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(ノイズ除去)、増幅処理を施す処理部)、アンプ(アナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカで発生させるために増幅をするパワーアンプ)、スピーカ(アナログ楽音信号を可聴信号として放音するスピーカで1ないし複数個よりなる)等は省略してある。
【0027】
まず、CPU201について説明する。CPU201は、本電子楽器の制御をつかさどる中央演算装置で、ROM202に格納されているプログラムに応じて、キーボード部(省略)の鍵、操作パネル部(省略)の音色設定スイッチ等を走査し、キーボード部の鍵の押鍵・離鍵に伴う鍵(キー)情報(キーオン/オフ、鍵番号、タッチ情報等)の楽音発生部205への割当て処理、操作パネル部の音色設定スイッチ、ボリュームに応じて楽音発生部205より所望の楽音信号を発生させるように制御するとともに、楽音発生部205より発生された楽音に効果付加部206で所望の効果を付加するように制御する。
【0028】
次に、ROM202について説明する。ROM202は、CPU201のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータを格納する読出し専用のメモリである。
【0029】
次に、RAM203について説明する。RAM203は、プログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、一部あるいは全部はバッテリーバックアップされて、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを電源がオフになっても格納保持しておくことができる。
【0030】
次に、LSI204について説明する。LSI204は、楽音発生部205と効果付加部206の機能を格納している半導体集積回路である。
【0031】
次に、楽音発生部205について説明する。楽音発生部205は、操作パネル部で選択及び設定された音色で、キーボード部で演奏された鍵に応じた楽音信号を発生する楽音発生器などを含む。
【0032】
次に、効果付加部206について説明する。効果付加部206は、楽音発生部205で発生された楽音に、操作パネル部で選択及び設定された音色に応じた効果(リバーブ、コーラス等々)あるいは操作パネル部で選択された効果を付加する部分である。
【0033】
次に、ROM(波形メモリ)207について説明する。ROM207は、楽音波形データが、音色及び音域(音高)に対応して記憶されており、音色選択及び鍵情報に応じて所望の楽音周波数に従って楽音発生部205からの読み出し信号で読み出される。
【0034】
次に、RAM208について説明する。RAM208は、効果付加部206が使用するメモリで、楽音を遅延させたサンプルポイントを得るために楽音発生部205より発生された楽音を蓄えておく記憶装置である。
【0035】
次に、DAC209について説明する。DAC209は、上記効果付加部206で効果付加されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。
【0036】
図1(B)は、本発明の第1の実施形態による電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステム210の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態では、CPU212、楽音発生部213及び効果付加部214を1つのLSI211に格納する。また、本構成も同様に、キーボード部(演奏するための複数の鍵(タッチ検出用の構造となっている)を有する鍵盤)、操作パネル部(音色選択及び設定するためのスイッチ、ボリュームと選択及び設定状態を表示するLCDあるいはLEDよりなる表示装置を有する)及びDAC220以降のアナログ信号処理部(アナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(ノイズ除去)、増幅処理を施す処理部)、アンプ(アナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカで発生させるために増幅をするパワーアンプ)、スピーカ(アナログ楽音信号を可聴信号として放音するスピーカで1ないし複数個よりなる)等は省略してある。
【0037】
まず、LSI211について説明する。LSI211は、CPU212、楽音発生部213及び効果付加部214、更に外部に設けられたROM217とRAM219をCPU212と楽音発生部213が共用するために設けられた選択部215、及び外部に設けられたRAM218をCPU212と効果付加部214が共用するために設けられた選択部216よりなる半導体集積回路である。CPU212、楽音発生部213、効果付加部214、選択部215及び216は、1つのLSIで構成される。
【0038】
次に、CPU212について説明する。CPU212は、本電子楽器の制御をつかさどる中央演算装置で、ROM217に格納されているプログラムに応じて、キーボード部(省略)の鍵、操作パネル部(省略)の音色設定スイッチ等を走査し、キーボード部の鍵の押鍵・離鍵に伴う鍵(キー)情報(キーオン/オフ、鍵番号、タッチ情報等)の楽音発生部213への割当て処理、操作パネル部の音色設定スイッチ、ボリュームに応じて楽音発生部213より所望の楽音信号を発生させるように制御するとともに、楽音発生部213より発生された楽音に効果付加部214で所望の効果を付加するように制御する。
【0039】
次に、楽音発生部213について説明する。楽音発生部213は、操作パネル部で選択及び設定された音色で、キーボード部で演奏された鍵に応じた楽音信号を発生する楽音発生器などを含む。
【0040】
次に、効果付加部214について説明する。効果付加部214は、楽音発生部213で発生された楽音に、操作パネル部で選択及び設定された音色に応じた効果(リバーブ、コーラス等々)あるいは操作パネル部で直接選択された効果を付加する部分である。
【0041】
次に、選択部215について説明する。選択部215は、外部に設けられたROM217とRAM219をCPU212と楽音発生部213が共用するためそれぞれから及びそれぞれへのアドレス及びデータバスを選択する。
【0042】
次に、選択部216について説明する。選択部216は、外部に設けられたRAM218をCPU212と効果付加部214が共用するためそれぞれから及びそれぞれへのアドレス及びデータバスを選択する。
【0043】
次に、ROM217について説明する。ROM217は、CPU212のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータ、及び音色選択及び鍵情報に応じて所望の楽音周波数に従って楽音発生部213からの読み出し信号で読み出される音色及び音域(音高)に対応した楽音波形データが記憶されている。
【0044】
次に、RAM218について説明する。RAM218は、効果付加部214が楽音を遅延させたサンプルポイントを得るために楽音発生部213より発生された楽音を蓄えておくとともに、CPU212のプログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを格納保持しておくことができる。
【0045】
次に、RAM219について説明する。RAM219は、必要に応じて追加可能で、ここも、CPU212のプログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、一部あるいは全部はバッテリーバックアップされて、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを電源がオフになっても格納保持しておくことができる。RAM219は、必要に応じて書換え可能な楽音波形データを格納してもいい。
【0046】
次に、DAC220について説明する。DAC220は、上記効果付加部214で効果付加されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。
【0047】
図3は、CPU212の基本的な動作例を示すタイミングチャートである。動作としては、リード動作、ウェイト時のリード動作、ライト動作及びウェイト時のライト動作の4状態を例示して、アドレスバスCAB、出力イネーブル信号COEX、ライト信号CWRX及び処理が問に合わない周辺に対して処理時間を拡張するために必要なウェイト信号端子WITへの入力信号の状態を記す。これらの信号は、図4に示されている。
【0048】
まず、リード動作を説明する。ウェイト信号端子WITの入力信号がハイレベルであるときには、CPU212は、待機する必要はなく、出力イネーブル信号COEXをローレベルにするとともに、アドレスバスCABにアドレスを出力する。このアドレスに応じて、ROM217、RAM219又はRAM218からデータを読み出すことができる。
【0049】
次に、ウェイト時のリード動作を説明する。CPU212が出力イネーブル信号COEXをローレベルにするとともに、アドレスバスCABにアドレスを出力しても、ウェイト信号端子WITの入力信号がローレベルであるときは、リード動作を待機する。その後、ウェイト信号端子WITの入力信号がハイレベルに変化する(周辺がリード可能状態になる)と、CPU212は、ローレベルになっている出力イネーブル信号COEX、及びアドレスバスCABのアドレスでリード動作を行い、その後出力イネーブル信号COEXがハイレベルになってリード動作を完了し、上記と同様にデータを読み出すことができる。
【0050】
次に、ライト動作を説明する。ウェイト信号端子WITの入力信号がハイレベルであるときには、CPU212は、待機する必要はなく、ライト信号CWRXをローレベルにするとともに、アドレスバスCABにアドレスを出力する。このアドレスに応じて、ROM217、RAM219又はRAM218にデータを書き込むことができる。
【0051】
次に、ウェイト時のライト動作を説明する。CPU212がライト信号CWRXをローレベルにするとともに、アドレスバスCABにアドレスを出力しても、ウェイト信号端子WITの入力信号がローレベルであるときは、ライト動作を待機する。その後、ウェイト信号端子WITの入力信号がハイレベルに変化する(周辺がライト可能状態になる)と、CPU212は、ローレベルになっているライト信号CWRX、及びアドレスバスCABのアドレスでライト動作を行い、その後ライト信号CWRXがハイレベルになってライト動作を完了し、上記と同様にデータを書き込むことができる。
【0052】
図4は、図1(B)に記載のブロックを詳細に記載したシステム300の構成例を示す回路図である。本構成も、上記と同様に、キーボード部(演奏するための複数の鍵(タッチ検出用の構造となっている)を有する鍵盤)、操作パネル部(音色選択及び設定するためのスイッチ、ボリュームと選択及び設定状態を表示するLCDあるいはLEDよりなる表示装置を有する)及びDAC326以降のアナログ信号処理部(アナログ楽音信号に対して簡単なフィルタ処理(ノイズ除去)、増幅処理を施す処理部)、アンプ(アナログ処理されたアナログ楽音信号をスピーカで発生させるために増幅をするパワーアンプ)、スピーカ(アナログ楽音信号を可聴信号として放音するスピーカで1ないし複数個よりなる)等は省略してある。
【0053】
まず、LSI330について説明する。LSI330は、CPU301、楽音発生部302及び効果付加部303、更に外部に設けられたROM308とRAM313(必要に応じて付加)をCPU301と楽音発生部302が共用するために設けられた選択器306、及び外部に設けられたRAM309をCPU301と効果付加部303が共用するために設けられた選択器307、その他にタイミング発生器304、及び必要に応じて内部ROM310、内部RAM312等々よりなる半導体集積回路である。
【0054】
次に、CPU301について説明する。CPU301は、本電子楽器の制御をつかさどる中央演算装置でROM308(必要によっては内部ROM310)に格納されているプログラムに応じて、キーボード部(省略)の鍵、操作パネル部(省略)の音色設定スイッチ等を走査し、キーボード部の鍵の押鍵・離鍵に伴う鍵(キー)情報(キーオン/オフ、鍵番号、タッチ情報等)の楽音発生部302への割当て処理、操作パネル部の音色設定スイッチ、ボリュームに応じて楽音発生部302より所望の楽音信号を発生させるように制御するとともに、楽音発生部302より発生された楽音に効果付加部303で所望の効果を付加するように制御する。CPU301は、電源投入時のリセット信号RSTXでリセットされる。クロックCPUCLKを受けて、アドレスバスCAB、データバスCDB、ライト信号CWRX、出力イネーブル信号COEXを出力する。一方、処理が間に合わない周辺に対して処理時間を拡張するために必要なウェイト信号端子WITも有する。
【0055】
次に、楽音発生部302について説明する。楽音発生部302は、操作パネル部で選択及び設定された音色で、キーボード部で演奏された鍵に応じた楽音信号を発生する楽音発生器などを含む。そのために、楽音発生部302は、クロックTGCLKを受けるとともに、操作パネル部で選択及び設定された音色でキーボード部で演奏された鍵に対応してCPU301が制御信号(CAB,CDB,CWRX,COEX)と楽音発生部302を選択するセレクト信号CSX0によって楽音生成に必要な制御パラメータ(例えば、波形読出しパラメータ、フィルタ制御パラメータ、振幅制御パラメータ、出力制御パラメータ等々)を供給すると、楽音波形データを記憶している波形データメモリ(ROM308あるいはRAM313)から楽音波形データを読み出すための読出しアドレスTABを出力する。波形データメモリから読出されたデータWDBはバッファ316を経て楽音発生部302に供給される。そして、楽音発生部302は、供給された楽音波形データに、フィルタによる音色制御、エンベロープによる振幅制御をほどこした後、後段の効果付加部303に供給する。
【0056】
また、後述するが、楽音発生部302は、外部メモリ(ROM308とRAM313)をCPU301と共用するために、CPU301が使用可能かどうかを知らせる各チャンネルタイミングでの状態を表す状態信号TCONも出力している。状態信号TCONは、ローレベル(“L”)のとき楽音発生部302が楽音波形データの読出しに使いたいとき、ハイレベル(“H”)のとき当該チャンネルで発音中でなくCPU301サイドが使用してもいいとき、の状態を示す。楽音発生部302は、電源投入時に発生されるリセット信号RSTXを受けてリセットされる。
【0057】
次に、効果付加部303について説明する。効果付加部303は、楽音発生部302で発生された楽音に、操作パネル部で選択及び設定された音色に応じた効果(リバーブ、コーラス等々)あるいは操作パネル部で直接選択された効果を付加する部分である。そのために、効果付加部303は、クロックEFFCLKを受けるとともに、操作パネル部で選択及び設定された音色に応じた効果(リバーブ、コーラス等々)あるいは操作パネル部で直接選択された効果に対応してCPU301が制御信号(CAB,CDB,CWRX,COEX)と効果付加部303を選択するセレクト信号CSX1によって効果付加に必要な制御パラメータ(演算処理手順を示すインストラクション、処理過程で使用する係数データ等々)を供給すると、遅延させた楽音波形データを得るために楽音波形データを波形データメモリ(RAM309)に書き込むため、及び過去に発生して波形データメモリ(RAM309)に記憶している波形データメモリを読み出すためのアドレスEAB、ライト信号EWRX、出力イネーブル信号EOEX等を出力する。RAM309からのデータはバッファ318aを経て効果付加部303に出力され、RAM309へのデータはバッファ318bを経て効果付加部303から供給される。また、効果付加部303は、楽音発生部302から供給された楽音波形データ及びRAM309から供給される遅延された楽音波形データをベースに演算処理をほどこすことによって、楽音発生部302から供給された楽音波形データに効果付加をほどこした後、後段のDAC326に供給する。
【0058】
また、後述するが、効果付加部303は、外部メモリ(RAM309)をCPU301と共用するために、CPU301が使用可能かどうかを知らせる各インストラクションタイミングでの状態を表す状態信号ECONも出力している。状態信号ECONは、“L”のとき効果付加部303が楽音波形データの読み書きに使いたいとき、“H”のとき当該インストラクションでアクセスを必要としないでCPU301サイドが使用してもいいとき、の状態を示す。効果付加部303は、電源投入時に発生されるリセット信号RSTXを受けてリセットされる。
【0059】
次に、タイミング発生器304について説明する。タイミング発生器304は、供給されるマスタークロックMCKを受けて、少なくともCPU301用のクロックCPUCLK、楽音発生部302用のクロックTGCLK及び効果付加部303用のクロックEFFCLK等を発生する。
【0060】
次に、デコーダ305について説明する。デコーダ305は、CPU301からのアドレスCABの一部をデコードして周辺回路であるROM、RAM、楽音発生部302、効果付加部303を選択するためのアクティブ“L”の選択信号を作り出す。それぞれの選択信号は、次のようになっている。選択信号CSX0は楽音発生部302、選択信号CSX1は効果付加部303、選択信号CSX2は外部ROM308とRAM313、選択信号CSX3は外部RAM309、選択信号CSX4は内部ROM310、選択信号CSX5は内部RAM312をそれぞれ選択するための信号である。
【0061】
次に、選択器306について説明する。選択器306は、外部に設けられたROM308とRAM313をCPU301と楽音発生部302が共用するためそれぞれから及びそれぞれへのアドレス及びデータバスを選択する。S端子に供給される選択信号が“L”のときはA入力側が選択され、S端子に供給される選択信号が“H”のときはB入力側が選択され、出力される。図5に、その真理値表を示す。S端子に供給される選択信号は、上述したCPU301が使用可能かどうかを知らせる各チャンネルタイミングでの状態を表す状態信号TCONである。
【0062】
次に、選択器307について説明する。選択器307は、外部に設けられたRAM309をCPU301と効果付加部303が共用するためそれぞれから及びそれぞれへのアドレス及びデータバスを選択する。S端子に供給される選択信号が“L”のときはA入力側が選択され、S端子に供給される選択信号が“H”のときはB入力側が選択され、出力される。図6に、その真理値表を示す。S端子に供給される選択信号は、上述したCPU301が使用可能かどうかを知らせる各インストラクションタイミングでの状態を表す状態信号ECONである。
【0063】
次に、ROM308について説明する。ROM308は、CPU301のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータ、及び音色選択及び鍵情報に応じて所望の楽音周波数に従って楽音発生部302からの読み出し信号で読み出される音色及び音域(音高)に対応した楽音波形データが記憶されている。
【0064】
次に、RAM309について説明する。RAM309は、効果付加部303が楽音を遅延させたサンプルポイントを得るために楽音発生部302より発生された楽音を蓄えておくとともに、CPU301のプログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを格納保持しておくことができる。
【0065】
次に、内部ROM310について説明する。内部ROM310は、CPU301のためのプログラムと楽音発生に必要なパラメータデータを記憶しているメモリで、CPU301にウェイト動作をかけることなくアクセスできる。内部ROM310は、必要に応じてLSI330に組み入れてもいい。組み入れた場合は、このメモリ310にはシステムを構築する上で、仕様的に変更のない基本プログラムを格納するようにすればいい。
【0066】
次に、内部RAM312について説明する。内部RAM312は、必要に応じて追加可能で、ここも、CPU301のプログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリとして利用する。内部RAM312は、CPU301にウェイト動作をかけることなくアクセスできる。
【0067】
次に、RAM313について説明する。RAM313は、必要に応じて追加可能で、ここも、CPU301のプログラム処理での処理段階のデータを一時記憶しておいたり、エディット可能なパラメータデータを記憶しておく読み書き可能なメモリで、一部あるいは全部はバッテリーバックアップされて、操作パネル部の音色設定に応じた必要なデータを電源がオフになっても格納保持しておくことができる。
【0068】
次に、デコーダ314について説明する。デコーダ314は、選択器306の選択信号を示すWCSXとアドレスバスWABの一部より、ROM308またはRAM313を選択する選択信号を出力する。
【0069】
次に、バッファ315a及び315bについて説明する。バッファ315a及び315bは、外部のメモリ(ROM308とRAM313)とCPU301がデータを遣り取りするための3ステートをとるバッファで、OR(論理和)ゲート319a及び319bからのコントロール信号が“L”のときアクティブとなって、入力側の信号を出力側に出力する。バッファ315aはCPU301がリード動作するときにデータを通し、バッファ315bはCPU301がライト動作するときにデータを通す。
【0070】
次に、バッファ316について説明する。バッファ316は、外部のメモリ(ROM308とRAM313)から楽音発生部302にデータを供給するための3ステートをとるバッファで、状態信号TCONが“L”のときアクティブとなって、入力側の信号を出力側に出力する。
【0071】
次に、バッファ317a及び317bについて説明する。バッファ317a及び317bは、外部のメモリ(RAM309)とCPU301がデータを遣り取りするための3ステートをとるバッファで、ORゲート320a及び320bからのコントロール信号が“L”のときアクティブとなって、入力側の信号を出力側に出力する。バッファ317aはCPU301がリード動作するときにデータを通し、バッファ317bはCPU301がライト動作するときにデータを通す。
【0072】
次に、バッファ318a及び318bについて説明する。バッファ318a及び318bは、外部のメモリ(RAM309)と効果付加部303がデータを遣り取りするための3ステートをとるバッファで、ORゲート320c及び320dからのコントロール信号が“L”のときアクティブとなって、入力側の信号を出力側に出力する。バッファ318aは効果付加部303がリード動作するときにデータを通し、バッファ318bは効果付加部303がライト動作するときにデータを通す。
【0073】
次に、ORゲート319a及び319bについて説明する。ORゲート319a及び319bは、バッファ315a及び315bの入力側の信号を出力側に通過させるかどうかのコントロール信号(アクティブ“L”)を発生するものである。ORゲート319aは、信号TCONのNOT(論理否定)バッファ(インバータ)321による反転信号が“L”、すなわち、TCON=“H”で当該チャンネルで発音中でなくCPU301サイドが使用してもいいとき、CSX2=“L”(外部メモリROM308、RAM313が指定)で、COEX=“L”(CPU301がリード動作)のときアクティブ“L”を出力する。ORゲート319bは、信号TCONのNOTバッファ321による反転信号がL、すなわち、TCON=“H”で当該チャンネルで発音中でなくCPU301サイドが使用してもいいとき、CSX2=“L”(外部メモリROM308、RAM313が指定)で、CWRX=“L”(CPU301がライト動作)のときアクティブ“L”を出力する。
【0074】
次に、ORゲート320a、320b、320c及び320dについて説明する。ORゲート320a、320b、320c及び320dは、バッファ317a,317bとバッファ318a,318bの入力側の信号を出力側に通過させるかどうかのコントロール信号(アクティブ“L”)を発生するものである。ORゲート320aは、信号ECONのNOTバッファ322による反転信号が“L”、すなわち、ECON=“H”で当該インストラクションでアクセスを必要としないでCPU301サイドが使用してもいいとき、CSX3=“L”(外部メモリRAM309が指定)で、COEX=L(CPU301がリード動作)のときアクティブ“L”を出力する。ORゲート320bは、信号ECONのNOTバッファ322による反転信号が“L”、すなわち、ECON=“H”で当該インストラクションでアクセスを必要としないでCPU301サイドが使用してもいいとき、CSX3=“L”(外部メモリRAM309が指定)で、CWRX=“L”(CPU301がライト動作)のときアクティブ“L”を出力する。ORゲート320cは、信号ECONが“L”、すなわち、効果付加部303が当該インストラクションでアクセスするとき、EOEX=“L”(効果付加部303がリード動作)のときアクティブ“L”を出力する。ORゲート320dは、信号ECONが“L”、すなわち、効果付加部303が当該インストラクションでアクセスするとき、EWRX=“L”(効果付加部303がライト動作)のときアクティブ“L”を出力する。
【0075】
次に、インバータ321及び322について説明する。インバータ321は、信号TCONを反転するNOTバッファである。インバータ322は、信号ECONを反転するNOTバッファである。
【0076】
次に、AND(論理積)ゲート323について説明する。ANDゲート323は、ORゲート324及び325からの信号のうち少なくともどちらか一方が“L”のとき、“L”を出力して、CPU301の端子WITにアクティブ“L”のウェイト信号として供給する。
【0077】
次に、ORゲート324について説明する。ORゲート324は、CSX2=“L”(外部メモリROM308、RAM313が指定)のとき、TCON=“L”なら楽音発生部302が当該チャンネルで発音中で、CPU301サイドが使用できないので、次のタイミングで使用するようにCPU301にウェイトをかける信号を出力する。
【0078】
次に、ORゲート325について説明する。ORゲート325は、CSX3=“L”(外部メモリRAM309が指定)のとき、ECON=“L”なら効果付加部303が当該インストラクションでアクセスを必要とするので、CPU301サイドが使用できないので、次のタイミングで使用するようにCPU301にウェイトをかける信号を出力する。
【0079】
次に、DAC326について説明する。DAC326は、上記効果付加部303で効果付加されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するデジタル−アナログ変換器である。
【0080】
図7(A)は、CPU301と楽音発生部302との関係を表すタイミングチャートである。信号TCONは、“L”のとき楽音発生部302がROM308を使用中であることを示し、“H”のとき楽音発生部302がROM308を使用していないことを示す。選択信号CSX2は、ウェイト信号端子WITの信号を考慮せず、CPU301がROM308にアクセスするために選択しようとするアクティブ“L”の信号である。CPU301のアドレスCABは、アドレスの切り換えタイミングを示す。選択信号CSX2’は、ウェイト信号端子WITの信号を考慮し、CPU301がROM308にアクセスするために選択するアクティブ“L”の信号である。
【0081】
CPU301は、選択信号CSX2が“L”のときに、信号TCONが“H”であれば、楽音発生部302がROM308を使用していないので、直ちにROM308にアクセスすることができる。すなわち、選択信号CSX2’は、選択信号CSX2と同じになる。
【0082】
CPU301は、選択信号CSX2が“L”のときに、信号TCONが“L”であれば、楽音発生部302がROM308を使用しているので、ROM308へのアクセスを待たされ、その後に信号TCONが“H”になった後のサイクルでアクセスすることができる。すなわち、選択信号CSX2’の“L”期間は、選択信号CSX2のものより長くなる。
【0083】
第nのサイクル等の1個のサイクルは、それぞれ第1〜第3の3個の区間を有する。第1及び第2の区間は、CPU301がROM308にアクセスするための区間である。第3の区間は、楽音発生部302がROM308にアクセスするための区間であり、楽音発生部302がアクセスしていないときにはCPU301がROM308にアクセスすることができる。
【0084】
図7(B)は、CPU301と効果付加部303との関係を表すタイミングチャートである。信号ECONは、“L”のとき効果付加部303がRAM309を使用中であることを示し、“H”のとき効果付加部302がRAM309を使用していないことを示す。選択信号CSX3は、ウェイト信号端子WITの信号を考慮せず、CPU301がRAM309にアクセスするために選択しようとするアクティブ“L”の信号である。CPU301のアドレスCABは、アドレスの切り換えタイミングを示す。選択信号CSX3’は、ウェイト信号端子WITの信号を考慮し、CPU301がRAM309にアクセスするために選択するアクティブ“L”の信号である。
【0085】
CPU301は、選択信号CSX3が“L”のときに、信号ECONが“L”であれば、効果付加部303がRAM309を使用しているので、RAM309へのアクセスを待たされ、その後に信号ECONが“H”になった後のサイクルでアクセスすることができる。すなわち、選択信号CSX3’の“L”期間は、選択信号CSX3のものより長くなる。
【0086】
CPU301は、選択信号CSX3が“L”のときに、信号ECONが“H”であれば、効果付加部303がRAM309を使用していないので、直ちにRAM309にアクセスすることができる。すなわち、図示しないが、選択信号CSX3’は、選択信号CSX3と同じになる。
【0087】
第iのサイクル等の1個のサイクルは、それぞれ第1〜第3の3個の区間を有する。第1及び第2の区間は、CPU301がRAM309にアクセスするための区間である。第3の区間は、効果付加部303がRAM309にアクセスするための区間であり、効果付加部303がアクセスしていないときにはCPU301がRAM309にアクセスすることができる。
【0088】
図7(C)は、図7(A)のCPU301と楽音発生部302との関係、及び図7(B)のCPU301と効果付加部303との関係の両方が絡んだときの関係を表すタイミングチャートである。ウェイト信号端子WITの信号は、信号TCON及びCSX2が“L”のときに“L”になり、信号ECON及び信号CSX3が“L”のときにも“L”になる。
【0089】
CPU301は、選択信号CSX2が“L”のときに、ウェイト信号端子WITの信号が“L”(信号TCONが“L”)であれば、ROM308へのアクセスを待たされ、その後にウェイト信号端子WITの信号が“H”になった後のサイクルでアクセスすることができる。
【0090】
CPU301は、選択信号CSX3が“L”のときに、ウェイト信号端子WITの信号が“L”(信号ECONが“L”)であれば、RAM309へのアクセスを待たされ、その後にウェイト信号端子WITの信号が“H”になった後のサイクルでアクセスすることができる。
【0091】
CPU301は、選択信号CSX2又はCSX3が“L”のときに、ウェイト信号端子WITの信号が“H”(信号TCON又はECONが“H”)であれば、ROM308又はRAM309へ直ちにアクセスすることができる。
【0092】
上記の図7(A)〜(C)の説明では、RAM313がない場合を例に説明したが、RAM313がある場合には、CPU301はRAM313にはROM308と同様にアクセスが可能である。
【0093】
なお、信号TCONや信号ECONをノンアクティブな状態にして、よりCPU301が利用できる状態にするためには、例えば、楽音発生部302で発音中のチャンネルをトランケート処理して非発音チャンネルの状態にすることをCPU301が制御してもいい。
【0094】
以上のように、本実施形態によれば、ROM(第1の記憶手段)308には、楽音の内容を表す楽音データ及び楽音を生成放音するための処理プログラムが記憶され、RAM(第2の記憶手段)309には、楽音に効果を付加するために楽音の内容を表すデータを一時的に記憶するための第1のテンポラリ領域及び楽音を生成放音するための処理に必要な第2のテンポラリ領域が含まれる。楽音発生部302は、ROM308から楽音データを読み出して楽音を生成する。効果付加部303は、RAM309の第1のテンポラリ領域にアクセスして楽音発生部302により生成された楽音に効果を付加する。CPU301は、ROM308から処理プログラムを読み出し、RAM309の第2のテンポラリ領域にアクセスし、楽音発生部302及び効果付加部303を制御する。ROM308はCPU301及び楽音発生部302により共用され、RAM309はCPU301及び効果付加部303により共用される。
【0095】
選択器306は、CPU301及び楽音発生部302のROM308へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する。選択器307は、CPU301及び効果付加部303のRAM309へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する。
【0096】
具体的には、選択器306は、CPU301及び楽音発生部302のROM308へのアクセスが競合する場合には楽音発生部302のアクセスを優先的に許可する。選択器307は、CPU301及び効果付加部303のRAM309へのアクセスが競合する場合には効果付加部303のアクセスを優先的に許可する。
【0097】
楽音発生部302は、ROM308にアクセスしているときにはアクティブ“L”の第1のアクセス信号TCONを出力する。効果付加部303は、RAM309にアクセスしているときにはアクティブ“L”の第2のアクセス信号ECONを出力する。CPU301は、第1のアクセス信号TCON及び第2のアクセス信号ECONに応じて、ROM308及びRAM309にアクセス可能である。
【0098】
ROM308へのアクセスサイクルは、CPU301がアクセス可能な中央演算区間と、楽音発生部302がアクセス可能な楽音発生区間とを有する。RAM309へのアクセスサイクルは、CPU301がアクセス可能な中央演算区間と、効果付加部303がアクセス可能な効果付加区間とを有する。
【0099】
楽音発生区間ではCPU301もROM308にアクセス可能であり、CPU301及び楽音発生部302のROM308へのアクセスが競合する場合には楽音発生部302のアクセスを優先的に許可する。効果付加区間ではCPU301もRAM309にアクセス可能であり、CPU301及び効果付加部303のRAM309へのアクセスが競合する場合には効果付加部303のアクセスを優先的に許可する。
【0100】
以上のように、ROM308には、楽音発生部302のための楽音データとCPU301のための処理プログラムとを一体化して記憶させる。RAM309には、効果付加部303のための第1のテンポラリ領域とCPU301のための第2のテンポラリ領域とを一体化して記憶させる。これにより、ROM308及びRAM309をコンパクトにすることができ、回路構成を簡単にすることができる。
【0101】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態による電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステム600の構成例を示すブロック図である。本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同じである。以下、両者が異なる点を説明する。LSI601は、CPU602、楽音発生部603、効果付加部604及び選択部605を構成する1つの半導体集積回路である。本実施形態では、CPU602、楽音発生部603及び効果付加部604は、選択部605を介して、ROM606及びRAM607を共用するものである。
【0102】
CPU602、楽音発生部603、効果付加部604及びDAC608は、図1(B)のCPU212、楽音発生部213、効果付加部214及びDAC220の説明と同じである。ROM606は、図1(B)のROM217に対応し、CPU212が読み出し可能なプログラムとパラメータデータ、及び楽音発生部603が読み出し可能な楽音波形データを記憶している。RAM607は、図1(B)のRAM218に対応し、効果付加部604が楽音を遅延させるためにアクセス可能な楽音蓄積領域、及びCPU602がアクセス可能なデータを一時記憶するための領域等を有する。選択部605は、CPU602、楽音発生部603及び効果付加部604のアクセスが競合した場合には、そのうちのいずれか1つにのみ、ROM606又はRAM607へのアクセスを許可する。
【0103】
図9は、CPU602と楽音発生部603と効果付加部604との関係を表すタイミングチャートである。第n(i)のサイクル等の1個のサイクルは、それぞれ第1〜第3の3個の区間を有する。第1の区間は、CPU602がROM606又はRAM607にアクセスするための区間である。第2の区間は、楽音発生部603がROM606にアクセスするための区間であり、楽音発生部603がアクセスしていないときにはCPU602がROM606又はRAM607にアクセスすることができる。第3の区間は、効果付加部604がRAM607にアクセスするための区間であり、効果付加部604がアクセスしていないときにはCPU602がROM606又はRAM607にアクセスすることができる。
【0104】
信号TCONは、第2の区間において、“L”のとき楽音発生部603がROM606を使用中であることを示し、“H”のとき楽音発生部603がROM606を使用していないことを示す。信号ECONは、第3の区間において、“L”のとき効果付加部604がRAM607を使用中であることを示し、“H”のとき効果付加部604がRAM607を使用していないことを示す。
【0105】
選択信号CSX23は、CPU602がROM606又はRAM607にアクセスするためにROM606又はRAM607を選択するための信号である。第n−2(i−2)のサイクルの第2の区間において、CPU602が選択信号CSX23を“L”にすると、その時点では信号TCONが“L”であり、楽音発生部603がROM606にアクセス中であるので、CPU602はROM606又はRAM607へのアクセスを待機させられる。その次の第3の区間では、信号ECONが“L”であり、効果付加部604がRAM607にアクセス中であるので、CPU602はROM606又はRAM607へのアクセスを待機させられる。その次の第n−1(i−1)のサイクルの第1の区間では、信号TCON及びECONが共に“H”であるので、CPU602はROM606又はRAM607にアクセスすることができる。
【0106】
以上のように、本実施形態によれば、選択部605は、CPU602、楽音発生部603及び効果付加部604のROM606又はRAM607へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する。
【0107】
具体的には、選択部605は、CPU602及び楽音発生部603のROM606へのアクセスが競合する場合には楽音発生部603のアクセスを優先的に許可し、CPU602及び効果付加部604のRAM607へのアクセスが競合する場合には効果付加部604のアクセスを優先的に許可する。
【0108】
ROM606及びRAM607へのアクセスサイクルは、CPU602がROM606又はRAM607にアクセス可能な中央演算区間と、楽音発生部603がROM606にアクセス可能な楽音発生区間と、効果付加部604がRAM607にアクセス可能な効果付加区間とを有する。
【0109】
楽音発生区間ではCPU602もROM606にアクセス可能であり、CPU602及び楽音発生部603のROM606へのアクセスが競合する場合には楽音発生部603のアクセスを優先的に許可する。効果付加区間ではCPU602もRAM607にアクセス可能であり、CPU602及び効果付加部604のRAM607へのアクセスが競合する場合には効果付加部604のアクセスを優先的に許可する。
【0110】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1(A)は電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステムの構成例を示すブロック図であり、図1(B)は本発明の第1の実施形態による電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図2(A)は一般的な電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステムの構成例を示すブロック図であり、図2(B)はCPUと楽音発生部を1つのLSIに格納する機能的な構成を簡略的に記載したシステムの構成例を示すブロック図である。
【図3】CPUの基本的な動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】図1(B)に記載のブロックを詳細に記載したシステムの構成例を示す回路図である。
【図5】選択器306の真理値表を示す図である。
【図6】選択器307の真理値表を示す図である。
【図7】図7(A)はCPUと楽音発生部との関係を表すタイミングチャートであり、図7(B)はCPUと効果付加部との関係を表すタイミングチャートであり、図7(C)は図7(A)のCPUと楽音発生部との関係及び図7(B)のCPUと効果付加部との関係の両方が絡んだときの関係を表すタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態による電子楽器の機能的な構成を簡略的に記載したシステムの構成例を示すブロック図である。
【図9】CPUと楽音発生部と効果付加部との関係を表すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0112】
200 システム
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 LSI
205 楽音発生部
206 効果付加部
207 ROM
208 RAM
209 DAC
210 システム
211 LSI
212 CPU
213 楽音発生部
214 効果付加部
215 選択部
216 選択部
217 ROM
218 RAM
219 RAM
220 DAC


【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽音の内容を表す楽音データ及び楽音を生成放音するための処理プログラムを記憶する第1の記憶手段と、
楽音に効果を付加するために楽音の内容を表すデータを一時的に記憶するための第1のテンポラリ領域及び楽音を生成放音するための処理に必要な第2のテンポラリ領域を含む第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段から前記楽音データを読み出して楽音を生成するための楽音発生手段と、
前記第2の記憶手段の第1のテンポラリ領域にアクセスして前記楽音発生手段により生成された楽音に効果を付加するための効果付加手段と、
前記第1の記憶手段から前記処理プログラムを読み出し、前記第2の記憶手段の第2のテンポラリ領域にアクセスし、前記楽音発生手段及び前記効果付加手段を制御するための中央演算装置とを有し、
前記第1の記憶手段は前記中央演算装置及び前記楽音発生手段により共用され、前記第2の記憶手段は前記中央演算装置及び前記効果付加手段により共用される楽音情報処理装置。
【請求項2】
さらに、前記中央演算装置及び前記楽音発生手段の前記第1の記憶手段へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する第1の選択手段と、
前記中央演算装置及び前記効果付加手段の前記第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する第2の選択手段と
を有する請求項1記載の楽音情報処理装置。
【請求項3】
さらに、前記中央演算装置、前記楽音発生手段及び前記効果付加手段の前記第1又は第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合にはいずれか一つのアクセスを選択的に許可する選択手段を有する請求項1記載の楽音情報処理装置。
【請求項4】
前記楽音発生手段は、前記第1の記憶手段にアクセスしているときには第1のアクセス信号を出力し、
前記効果付加手段は、前記第2の記憶手段にアクセスしているときには第2のアクセス信号を出力し、
前記中央演算装置は、前記第1及び第2のアクセス信号に応じて、前記第1及び第2の記憶手段にアクセス可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の楽音情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の選択手段は、前記中央演算装置及び前記楽音発生手段の前記第1の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記楽音発生手段のアクセスを優先的に許可し、
前記第2の選択手段は、前記中央演算装置及び前記効果付加手段の前記第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記効果付加手段のアクセスを優先的に許可する請求項2記載の楽音情報処理装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記中央演算装置及び前記楽音発生手段の前記第1の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記楽音発生手段のアクセスを優先的に許可し、前記中央演算装置及び前記効果付加手段の前記第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記効果付加手段のアクセスを優先的に許可する請求項3記載の楽音情報処理装置。
【請求項7】
前記第1の記憶手段へのアクセスサイクルは、前記中央演算装置がアクセス可能な中央演算区間と、前記楽音発生手段がアクセス可能な楽音発生区間とを有し、
前記第2の記憶手段へのアクセスサイクルは、前記中央演算装置がアクセス可能な中央演算区間と、前記効果付加手段がアクセス可能な効果付加区間とを有する請求項2又は5記載の楽音情報処理装置。
【請求項8】
前記楽音発生区間では前記中央演算装置も前記第1の記憶手段にアクセス可能であり、前記中央演算装置及び前記楽音発生手段の前記第1の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記楽音発生手段のアクセスを優先的に許可し、
前記効果付加区間では前記中央演算装置も前記第2の記憶手段にアクセス可能であり、前記中央演算装置及び前記効果付加手段の前記第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記効果付加手段のアクセスを優先的に許可する請求項7記載の楽音情報処理装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の記憶手段へのアクセスサイクルは、前記中央演算装置が前記第1又は第2の記憶手段にアクセス可能な中央演算区間と、前記楽音発生手段が前記第1の記憶手段にアクセス可能な楽音発生区間と、前記効果付加手段が前記第2の記憶手段にアクセス可能な効果付加区間とを有する請求項3又は6記載の楽音情報処理装置。
【請求項10】
前記楽音発生区間では前記中央演算装置も前記第1の記憶手段にアクセス可能であり、前記中央演算装置及び前記楽音発生手段の前記第1の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記楽音発生手段のアクセスを優先的に許可し、
前記効果付加区間では前記中央演算装置も前記第2の記憶手段にアクセス可能であり、前記中央演算装置及び前記効果付加手段の前記第2の記憶手段へのアクセスが競合する場合には前記効果付加手段のアクセスを優先的に許可する請求項9記載の楽音情報処理装置。
【請求項11】
前記中央演算装置、前記楽音発生手段及び前記効果付加手段は1つの半導体集積回路で構成される請求項1〜10のいずれか1項に記載の楽音情報処理装置。
【請求項12】
前記中央演算装置、前記楽音発生手段、前記効果付加手段、前記第1及び第2の選択手段は1つの半導体集積回路で構成される請求項2、5、7及び8のうちのいずれか1項に記載の楽音情報処理装置。
【請求項13】
前記中央演算装置、前記楽音発生手段、前記効果付加手段及び前記選択手段は1つの半導体集積回路で構成される請求項3、6、9及び10のうちのいずれか1項に記載の楽音情報処理装置。
【請求項14】
前記第1の記憶手段はROMであり、前記第2の記憶手段はRAMである請求項1〜13のいずれか1項に記載の楽音情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−47864(P2006−47864A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231368(P2004−231368)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】