構造体の製造方法及び構造体
【課題】用途に応じた力学特性を容易に制御できる構造体を提供する。
【解決手段】構造体10は、複数のボクセルに区画される。複数のボクセルには、複数の凝固部2及び複数の焼結部3が配置される。凝固部2は、無機粉末粒子が溶解されて凝固することにより形成される。焼結部3は、無機粉末粒子が焼結することにより形成される。構造体10において、用途に応じて複数のボクセル内の凝固部2及び焼結部3の配置が決定される。そのため、用途に応じて構造体10の力学特性を容易に制御できる。
【解決手段】構造体10は、複数のボクセルに区画される。複数のボクセルには、複数の凝固部2及び複数の焼結部3が配置される。凝固部2は、無機粉末粒子が溶解されて凝固することにより形成される。焼結部3は、無機粉末粒子が焼結することにより形成される。構造体10において、用途に応じて複数のボクセル内の凝固部2及び焼結部3の配置が決定される。そのため、用途に応じて構造体10の力学特性を容易に制御できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法及び構造体に関し、さらに詳しくは、人工関節や骨プレートに代表される医用インプラントや、自動車、航空機及び船舶に代表される移動体、又は、産業機械等に利用可能な構造体の製造方法及びその構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工関節又は骨プレートに代表される医用インプラントは、チタン合金に代表される金属からなる。医用インプラントには、骨と類似の力学特性が要求される。具体的には、インプラントには、骨と近似する低いヤング率や、優れた衝撃吸収性等の力学特性が求められる。
【0003】
特開2005−329179号公報(特許文献1)及び特開平6−90971号公報(特許文献2)は、金属インプラントを開示する。
【0004】
特許文献1に開示された金属インプラントは、中実(Solid)の金属材からなる。そのため、特許文献1の金属インプラントのヤング率は生体骨よりも大幅に大きい。一方、特許文献2に開示された金属インプラントは、内部に中空を有する。したがって、中実の金属インプラントと比較してヤング率は低い。しかしながら、中空を有する金属インプラントであっても衝撃吸収性は生体骨よりも低い。
【0005】
国際公開第2010/067146号公報(特許文献3)は、低いヤング率と優れた衝撃吸収性とを有する衝撃吸収構造体を提案する。特許文献3に開示された衝撃吸収構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成され、凝固部と結合される焼結部とを備える。焼結部は、内部に隙間を有するため、中実材と比較して密度が低い。そのため、特許文献3の衝撃吸収構造体は、中実材と比較して軽量であり、そのヤング率も低い。さらに、焼結部及び凝固部の組み合わせにより、優れた衝撃吸収性も得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−329179号公報
【特許文献2】特開平6−90971号公報
【特許文献3】国際公開第2010/067146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された衝撃吸収構造体を医用インプラントとして使用する場合、従来の金属インプラントと比較して、低いヤング率及び優れた衝撃吸収性を実現する。しかしながら、生体骨は、ミクロな内部構造からマクロな外形状に至るまで、複雑な階層的異方構造を有し、力学異方性を有する。したがって、医用インプラントでは、生体骨に近い力学異方性を実現できる方が好ましく、代替する生体骨に応じて、医用インプラントの異方性等の力学特性の制御が容易であることが好ましい。
【0008】
さらに、異方性に代表される力学特性の制御は、医用インプラントに限られない。自動車等の移動体や、産業機械等においても、その用途に応じて、構造体の力学特性を容易に制御できる方が好ましい。
【0009】
本発明の目的は、用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる構造体の製造方法及びその構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態による構造体の製造方法は、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する加工工程と、加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、加工工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、中間構造体を加熱して粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える。
【0011】
本実施の形態による構造体は、上記製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0012】
本実施の形態による構造体の製造方法は、構造体の用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施の形態による構造体の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1中の構造体内の所定の部位の微小構造体の斜視図である。
【図3】図3は、微小構造体10を説明するための模式図である。
【図4】図4は、図2の微小構造体のうち、凝固部の配置を説明するための模式図である。
【図5】図5は、図2中の焼結部の断面図である。
【図6】図6は、図2と異なる部位の微小構造体の斜視図である。
【図7】図7は、図6の微小構造体のうち、凝固部の配置を説明するための模式図である。
【図8】図8は、図2及び図6に示す微小構造体の応力−歪み曲線を示す図である。
【図9】図9は、図2及び図6に示す微小構造体の見掛けのヤング率を示す図である。
【図10】図10は、図1に示す構造体を製造するための積層造形装置の構成図である。
【図11】図11は、図1に示す構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図12】図12は、図11中の設計工程の詳細を示すフロー図である。
【図13】図13は、図11中の造形工程における動作を説明するための模式図である。
【図14】図14は、図13と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図15】図15は、図13及び図14と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図16】図16は、図13〜図15と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図17】図17は、図13〜図16と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図18】図18は、造形工程の途中での中間構造体の断面図である。
【図19】図19は、図13〜図17と異なる、造形工程の他の動作を説明するための図である。
【図20】図20は、第2の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図21】図21は、第2の実施の形態による構造体の模式図である。
【図22】図22は、図21に示す構造体内の第1焼結部と第2焼結部におけるネックサイズ比を説明するための模式図である。
【図23】図23は、第3の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図24】図24は、第4の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態による構造体1の一例を示す斜視図である。図1の構造体1は、医用インプラントであり、より具体的には、股関節の大腿骨部に代替される医用インプラントである。構造体1は、医用インプラント以外の他の用途にも利用可能である。以降の説明では、構造体1の一例として、構造体1を医用インプラントに適用する場合について説明する。
【0016】
大腿骨では、部位によって骨密度が異なる。具体的には、大腿骨は、外面を覆う皮質骨と、内部に形成される海綿骨とを備える。高い応力が掛かる部位では、海綿骨は多くなり、低い応力しか掛からない部位では、海綿骨は少ない。したがって、大腿骨は、力学的異方性を有する。
【0017】
構造体1は、大腿骨の代替として使用される。そのため、構造体1も大腿骨と同様の力学特性を有する方が好ましい。したがって、構造体1内の構造は、部位によって異なる方が好ましい。たとえば、構造体1内の部位10及び部位20は、次に示す構造を有する。
【0018】
図2は、部位10の微小構造体の斜視図である。図2を参照して、部位10の微小構造体(以下、単に微小構造体10という)は、複数の凝固部2と、複数の焼結部3とを備える。
【0019】
凝固部2は、複数の無機粉末粒子が溶解し、溶解後に凝固することにより形成される。無機粉末粒子は、無機物からなる粉末粒子である。無機粉末粒子はたとえば、金属や金属間化合物、セラミックス等である。金属は、純金属や合金である。好ましくは、無機粉末粒子は金属である。
【0020】
図3は、微小構造体10を説明するための模式図である。図3を参照して、微小構造体10は、複数の立体的な領域(以下、ボクセルという)BCに区画される。図3では、微小構造体10は、直交座標系(x軸、y軸、z軸)において、5×5×5=125個のボクセルBCに区画されている。
【0021】
各ボクセルBCには、凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。図4は、図2に示す微小構造体10のうち、凝固部2のみを示した図である。図4を参照して、微小構造体10では、各面(xy面、yz面、zx面)の対角線上に配列されたボクセルBCと、微小構造体10の中心に位置するボクセルBCに、凝固部2がそれぞれ配置されている。そして、微小構造体10のうち、凝固部2が配置されていないボクセルBCには、焼結部3が配置される。したがって、微小構造体10は、直交座標系の各軸(x軸、y軸、z軸)に対して等方性を有する構造体である。
【0022】
焼結部3は、複数の無機粉末粒子が焼結されて形成される。焼結部3は、凝固部2と同じ組成の無機粉末粒子から製造される。要するに、焼結部3は凝固部2と実質的に同じ組成を有する。
【0023】
図5は、焼結部3の断面図である。図5を参照して、焼結部3は、複数の無機粉末粒子31と、複数のネック32とを含む。複数のネック32は、複数の無機粉末粒子31の間に形成される。焼結処理において、隣り合う無機粉末粒子31の一部が焼結により結合し、ネック32が形成される。このようなネック32の形成工程はネッキングと呼ばれる。
【0024】
ネック32はさらに、無機粉末粒子と凝固部2との間にも形成される。ネック32により、焼結部3は凝固部2に結合される。ネック32は、原子拡散により形成される。
【0025】
図5では、焼結部3はネック32により凝固部2と結合する。しかしながら、焼結部3は他の方法により凝固部2と結合してもよい。たとえば、焼結部3及び/又は凝固部2の一部が溶解することにより、焼結部3が凝固部2と結合されてもよい。
【0026】
図5に示すとおり、焼結部3内には複数の隙間(空隙)33が形成される。複数の隙間33は、複数の無機粉末粒子31の間に形成される。
【0027】
図6は、図1中の部位20の微小構造体の斜視図である。図6を参照して、部位20の微小構造体(以下、単に微小構造体20という)は、微小構造体10と異なる構造を有する。より具体的には、微小構造体20も、微小構造体10と同様に、複数の凝固部2と複数の焼結部3とを含む。しかしながら、微小構造体20では、凝固部2及び焼結部3の配置が微小構造体10と異なる。
【0028】
具体的には、微小構造体20も、微小構造体10と同様に、図3に示す複数のボクセルBCに区画される。そして、各ボクセルBC内に凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。図7は、図6に示す微小構造体20の構成のうち、凝固部2のみを示した図である。図7を参照して、微小構造体20では、複数の凝固部2がy軸方向及びz軸方向に直列に配列される。具体的には、z軸方向に凝固部2が直列に配列されて形成された凝固柱21が6本配置される。さらに、一対の凝固柱21の間に、y軸方向に凝固部2が直列に配列されて形成される凝固梁22が3本配置される。凝固柱21及び凝固梁22において、互いに隣接する凝固部2同士(たとえば、図7中の凝固部2A及び2B)は、溶解により結合されている。
【0029】
図7では、凝固部2は、x方向には直列に配置されない。微小構造体20のうち、凝固部2が配置されていないボクセルBCには、焼結部3が配置される。したがって、微小構造体20は、直交座標系の各軸(x軸、y軸、z軸)において異方性を有する構造体である。なお、微小構造体10及び微小構造体20は、図2及び図6の構造を収容する筐体を備えてもよい。筐体は無機粉末粒子が溶解して凝固することにより形成される。
【0030】
図8は、微小構造体10と、微小構造体20とにおける、x軸方向、y軸方向、z軸方向における応力−歪み曲線を示す図である。図9は、微小構造体10及び微小構造体20のx軸方向、y軸方向及びz軸方向における見掛けのヤング率(GPa)を示す図である。
【0031】
図8及び図9では、微小構造体10及び20は筐体を備え、その形状はいずれも11×11×11mmであり、筐体の各壁の厚さは0.5mmであった。構造体内の各ボクセルBCは2mm×2mm×2mmであった。各構造体の凝固部2及び焼結部3はともに、JIST−7401−2:2002に規定されるチタン 6−アルミニウム 4−バナジウム合金からなる無機粉末粒子から形成された。
【0032】
後述する製造方法により、微小構造体10と、微小構造体20とを複数製造した。製造された各構造体に対して、インストロン型圧縮試験機を用いて、常温(25℃)の大気中において圧縮試験を実施し、図8に示す応力−歪み曲線を得た。圧縮試験では、圧縮方向を、x軸方向、y軸方向、z軸方向とした。図9に示す見掛けのヤング率(GPa)は、応力−歪み曲線の弾性ひずみ範囲から、その直線領域を最小二乗法で計算して算出した。
【0033】
図8及び図9を参照して、微小構造体10では、x軸方向、y軸方向及びz軸方向からの圧縮試験のいずれにおいても、曲線10xyzに示す応力−歪み曲線が得られ、見掛けのヤング率10xyzは、x軸方向、y軸方向、z軸方向いずれも同じであった。つまり、部位10構造体の力学特性(本例では応力−歪み曲線及びヤング率)は、等方性を示した。
【0034】
一方、微小構造体20では、z軸方向の応力−ひずみ曲線20zの降伏応力が最も高く、y軸方向の応力−歪み曲線20yの降伏応力が次に高く、x軸方向の応力−歪み曲線20xの降伏応力が最も低かった。換言すれば、微小構造体20では、6本の凝固柱21を有するz軸方向の降伏応力が最も高く、3本の凝固梁22を有するy軸方向の降伏応力が次に高く、凝固柱21及び凝固梁22のいずれも有しないx軸方向の降伏応力が最も低かった。見掛けのヤング率についても、同じ傾向であった。つまり、図9を参照して、z軸方向の見掛けのヤング率20zが最も大きく、y軸方向の見掛けのヤング率20yは次に大きくx軸方向の見掛けのヤング率20xが最も小さかった。したがって、微小構造体20の力学特性は、異方性を示した。
【0035】
このように、構造体1は、内部に、力学特性の異なる複数の微小構造体(たとえば、微小構造体10及び20)を備える。要するに、構造体1の形状は、図3に示すような複数のボクセルBCに区画され、構造体1内の各ボクセルBCには、凝固部2又は焼結部3が配置される。
【0036】
凝固部2及び焼結部3の配置は、構造体1の各部位(又は各ボクセルBC)に要求される力学特性(応力−歪み曲線、ヤング率、降伏応力、衝撃吸収性等)に応じて決定される方が好ましい。この場合、構造体1の力学特性を、その用途に適した力学特性に近づけることができる。構造体1が生体骨の代替として医用インプラントである場合、構造体1の力学特性を、生体骨の力学特性に近づけることができる。このような構造体1は、次の製造方法により製造することができる。
【0037】
[構造体の製造方法]
構造体1は、ラピッドプロトタイピング法、より具体的には積層造形法をベースとした次の製造方法により製造される。下記の製造方法では、構造体1の用途に応じて、構造体1の力学特性を容易に制御できる。
【0038】
[積層造形装置の構成]
図10は、構造体1を製造するための積層造形装置の構成図である。図10を参照して、積層造形装置50は、照射装置51と、調整装置52と、造形室53と、制御装置60とを備える。積層造形装置50は、構造体1の中間品である中間構造体100を製造する。
【0039】
照射装置51は、積層造形装置50の上部に配置される。照射装置51は、下方に向かって電子ビーム510を照射する。調整装置52は、照射装置51の下方に配置される。調整装置52は、制御装置60の指示に応じて、電子ビーム510を偏向する。これにより、電子ビーム510は所定の領域を照射できる。調整装置52はさらに、電子ビーム510の焦点や非点収差を補正する。これにより、電子ビーム510のフルエンス(単位面積当たりに与えるエネルギ量)が調整される。
【0040】
調整装置52は、非点収差コイル521と、焦点コイル522と、偏向コイル523とを備える。非点収差コイル521は、電子ビーム510の非点収差を補正する。焦点コイル522は、電子ビーム510の焦点を補正する。偏向コイル523は、電子ビーム510を偏向する。つまり、偏向コイル523は、電子ビーム510の照射方向を変更する。
【0041】
造形室53は、調整装置52の下方に配置される。造形室53内では、凝固部2が形成される。造形室53は、図示しない真空ポンプと接続されている。凝固部2が製造されるとき、造形室53内は真空に引かれる。
【0042】
造形室53は、一対の粉末供給装置54と、レーキ55と、造形テーブル56と、粉末収納室57と、ベースプレート58とを備える。
【0043】
粉末収納室57は、造形室53の下部中央に配置される。粉末収納室57は、上端に開口を有する筐体状であり、側壁571を有する。造形テーブル56は、粉末収納室57に収納され、上下方向に昇降可能に支持される。造形テーブル56は、図示しないモータにより昇降する。造形テーブル56上には、ベースプレート58が配置される。凝固部2は、ベースプレート58上に形成される。ベースプレート58により、造形テーブル56上に中間構造体100が結合するのを防止できる。
【0044】
一対の粉末供給装置54は、粉末収納室57よりも上に配置され、かつ、積層造形装置50の上方から見たとき、粉末収納室57を挟んで配置される。粉末供給装置54は凝固部2及び焼結部3の原料となる複数の無機粉末粒子31を収納し、制御装置60の指示に応じて複数の無機粉末粒子31を排出する。
【0045】
レーキ55は、粉末収納室57の上端近傍に配置される。レーキ55は、図示しないモータにより水平方向に移動し、一対の粉末供給装置54間を往復する。レーキ55は、水平方向に移動することにより、粉末供給装置54から排出された無機粉末粒子31を粉末収納室57に供給する。粉末収納室57に堆積された複数の無機粉末粒子31により、造形テーブル56上に粉末層35が形成される。レーキ55は、水平方向に移動することにより、粉末層35の表面を平坦に整える。
【0046】
制御装置60は、図示しない中央演算処置装置(CPU)と、メモリと、ハードディスクドライブ(以下、HDDという)とを備える。HDDには、構造体設計アプリケーションと、CAM(Computer Aided Manufacturing)アプリケーションとが格納される。制御装置60は、構造体設計アプリケーションを利用して、構造体1の3次元形状データ及び凝固部2及び焼結部3の配置データを作成する。以降、3次元形状データ及び配置データを合わせて、「設計データ」という。
【0047】
制御装置60はさらに、CAMアプリケーションを利用して、設計データに基づいて、加工条件データを作成する。積層造形法では、電子ビーム510により形成される層状の加工部が順次積層され、中間構造体100が形成される。加工条件データは、各加工部の製造条件を含む。つまり、加工条件データは、加工部ごとに作成される。
【0048】
制御装置60は、各加工条件データに基づいて電子ビーム510を制御して加工部を形成し、加工部を順次積層して中間構造体100を形成する。
【0049】
[製造プロセスの詳細]
図11は、構造体1の製造方法の詳細を示すフロー図である。図11を参照して、初めに、構造体1を設計する(設計工程:S100)。設計工程では、構造体1の形状と、凝固部2及び焼結部3の配置とを設計し、設計データを作成する。次に、設計データに基づいて、積層造形法により中間構造体100を形成する(S200:造形工程)。中間構造体100は、構造体1のうちの焼結部3が形成されていない状態の構造体である。次に、焼結処理により焼結部3が形成され、構造体1を完成する(S300:焼結工程)。以下、製造プロセスの詳細を説明する。
【0050】
[設計工程(S100)]
図12は、図11中の設計工程(S100)の詳細を示すフロー図である。図12を参照して、制御装置60は初めに、構造体設計アプリケーションを利用して、設計工程を実施する(S100)。構造体設計アプリケーションは、制御装置60内の図示しないメモリにロードされ、CPUで実行される。
【0051】
制御装置60は、構造体1の形状を特定する(S101)。たとえば、構造体1が、図1に示す大腿骨代用の医用インプラントである場合、図1の形状を特定する。以下、ステップS1で特定された形状を、「構造体形状」という。
【0052】
次に、制御装置60は、構造体形状を、図3に示すような複数のボクセルBCに区画する(S102)。制御装置60はたとえば、構造体形状を直交座標系に配置して、各軸(x軸、y軸、z軸)に基づいて、3次元的に構造体形状を区画して複数のボクセルBCを設定する。このとき、各ボクセルBCには同じ力学特性が設定される。たとえば、各ボクセルBCのヤング率は一定とする。
【0053】
次に、設定された複数のボクセルBCにおいて、凝固部2と焼結部3の配置を決定する(S103〜S108)。制御装置60はまず、構造体1への荷重条件を設定する(S103)。たとえば、構造体1が図1に示す大腿骨の医用インプラントである場合、生活において大腿骨に掛かる荷重の条件を設定する。通常、大腿骨に掛かる荷重は、立脚時に掛かる荷重と、股関節外転時に掛かる荷重と、股関節内転時に掛かる荷重とが存在する。荷重条件では、これらの複数の荷重が繰り返し掛かることを想定して設定される。たとえば、上述の荷重が所定の順序で所定の回数(繰り返し回数)掛かると仮定し、この条件を荷重条件と設定する。医用インプラントの場合、荷重条件は、医用インプラントを利用する患者の生活スタイルに応じて設定してもよい。
【0054】
荷重条件を設定した後、上記荷重条件における1回目の荷重負荷において、構造体1内の各ボクセルBCに掛かる応力を数値解析により算出する(S104)。数値解析はたとえば、有限要素法(FEM)を利用する。
【0055】
数値解析により各ボクセルBCに掛かる応力を解析した後、掛かる応力に基づいて、ボクセルBCの力学特性を調整する(S108)。本例では、ボクセルBCの力学特性として、ヤング率を調整する。具体的には、制御装置60は、複数の下限応力値と上限応力値とを設定し、図示しないメモリに格納している。ステップS104で得られた応力が上限応力値を超えたとき、制御装置60は、対応するボクセルBCのヤング率を所定の割合引き上げる(S108)。一方、ステップS104で得られた応力が下限応力値未満であったとき、制御装置60は、対応するボクセルBCのヤング率を所定の割合引き下げる(S108)。得られた応力が上限応力値及び下限応力値のいずれも超えない場合、対応するボクセルBCのヤング率を変更しない。
【0056】
力学特性(本例ではヤング率)の調整を行った後(S108)、ステップS104に戻り、制御装置60は2回目の荷重負荷を実施し、数値解析により各ボクセルBCに掛かる応力を再び求める(S104)。
【0057】
以上の計算をステップS103で設定された繰り返し回数分実施する。繰り返し回数分実施した後(S105でYES)、構造体1の力学特性(ヤング率)の分布が決定される。決定されたヤング率の分布は、構造体1全体に一様ではない。局所的にヤング率の高い部位が存在する。さらに、構造体1内の複数の部位のうち、等方的な力学特性が要求される部位も存在すれば、異方的な力学特性が要求される部位も存在する。そこで、制御装置60は、決定されたヤング率の分布に基づいて、複数のボクセルBCにおける凝固部2と焼結部3の配置を決定する(S106)。たとえば、高いヤング率が要求される部位では、凝固部2の配置を多くし、焼結部3の配置を少なくする。また、力学的異方性が要求される場合、図6に示すように、凝固部2を非対称に配置する。力学的等方性が要求される場合、図2に示すように、凝固部2を対称に配置する。
【0058】
以上の方法により凝固部2及び焼結部3の配置を決定した後、制御装置60は、構造体1の3次元形状と、凝固部2及び焼結部3の配置に関する配置データとを含む、設定データを作成する(S107)。
【0059】
以上の設定工程(S100)では、構造体1の形状を複数の領域(ボクセル)BCに区画し、各ボクセルBCに掛かる応力に応じて、各ボクセルBCの力学特性を決定する。これにより、構造体1内の力学特性の分布(本例ではヤング率の分布)が決定される。そして、力学特性の分布に基づいて、凝固部2及び焼結部3の配置を決定する。このような方法によれば、構造体1の力学特性を、構造体1の用途に適した力学特性に容易に制御できる。
【0060】
再び図11を参照して、制御装置60は、設計工程(S100)で得られた設計データを利用して、造形工程(S200)を実施し、中間構造体100を製造する。具体的には、制御装置60は、CAMアプリケーションを用いて、設計データに基づいて加工条件データを作成する(S2)。CAMアプリケーションは、制御装置60内のメモリにロードされ、CPUで実行される。
【0061】
上述のとおり、中間構造体100は、複数の加工部U1〜Unmaxが順次積層されて形成される。加工条件データは、加工部U1〜Unmaxごとに作成される。
【0062】
初めに、構造体1を予め設定された積層数nmax(個)でスライスした場合を想定する。このとき、スライスされた構造体1の1層分(1スライス分)に相当する加工部Unの加工条件データは、次の方法で作成される。ここで、第1層は最下層であり、第nmax層は最上層である。
【0063】
制御装置60はまず、設計データに基づいて、第n層における加工部Unの断面形状データを作成する。続いて、制御装置60は、断面形状データに基づいて、加工条件データを作成する。加工条件データは、領域条件とフルエンス条件とを含む。制御装置60は、断面形状データに基づいて、電子ビームを照射する領域(ボクセルBC)を決定し、領域条件として定義する。
【0064】
続いて、凝固部2を形成するために必要なフルエンスに応じて、電子ビーム510の電流値、走査速度、走査間隔値、電子ビームフォーカス値を決定し、フルエンス条件として定義する。フルエンスに関する情報は、無機粉末粒子の組成に対応して、制御装置60内のHDDに予め格納されている。以上の工程により、各層における加工条件データが作成される。作成された複数の加工条件データは、制御装置60内のメモリに格納される。
【0065】
続いて、真空ポンプを用いて、造形室53が真空に引かれる(S3)。造形室53内が真空になった後、造形テーブル56上に配置されたベースプレート58を予熱する(S4)。
【0066】
続いて、制御装置60は、カウンタnを「1」に設定し(S5)、第1層(最下層)の加工部U1の作製を開始する(S6〜S8)。
【0067】
制御装置60はまず、粉末層35を形成する(S6)。制御装置60は、一対の粉末供給装置54に対して、複数の無機粉末粒子31を排出するよう指示する。一対の粉末供給装置54は、制御装置60からの指示に応じて、複数の無機粉末粒子31を排出する。このとき、レーキ55が水平方向に移動して、排出された無機粉末粒子31を粉末収納室57に供給する。図13に示すとおり、無機粉末粒子31はベースプレート58及び造形テーブル56上に堆積し、粉末層35が形成される。粉末供給装置54内の無機粉末粒子31には、バインダ樹脂粒子は含まれない。そのため、粉末層35は実質的に複数の無機粉末粒子31からなる。レーキ55はさらに、粉末層35の表面上を水平に移動して、粉末層35を平坦に整える。その結果、図13に示すように、粉末層35の表面は平坦になる。
【0068】
次に、制御装置60は、積層造形法における周知の方法で、粉末層35を予熱する(S7)。照射装置51は、低フルエンスを有する電子ビーム510を粉末層35の表面に照射する。このとき、粉末層35は、焼結を生じない程度の温度に上昇する。
【0069】
次に、電子ビーム510により第1層の加工部U1を形成する(S8:加工工程)。制御装置60は、ステップS2で作成された複数の加工条件データのうち、第1層の加工条件データをメモリから読み出す。読み出された加工条件データに基づいて、制御装置60は電子ビーム510を制御する。制御装置60は、加工条件データ内の領域条件に基づいて調整装置52を制御して、粉末層35の所定の領域、具体的には、凝固部2が配置されるボクセルBCに、電子ビーム510を照射する。制御装置60はさらに、加工条件データ内のフルエンス条件に基づいて照射装置51及び調整装置52を制御して、電子ビーム510のフルエンスを調整する。その結果、電子ビーム510が照射された領域(ボクセルBC)内の無機粉末粒子31が溶解して凝固し、図14に示すように第1層の加工部U1がベースプレート58上に形成される。加工部U1は、凝固部2と、凝固部2に囲まれ無機粉末粒子からなる粉末部とからなる。
【0070】
なお、粉末層35のうち、加工部U1以外の領域に配置された無機粉末粒子31は、溶解しておらず、焼結していない。
【0071】
第1層の加工部U1が形成された後、制御装置60は、カウンタがnmaxか否かを判断する(S9)。ここでは、カウンタn=1であるため(S9でNO)、制御装置60はカウンタnをインクリメントしてn+1=2とする(S10)。要するに、制御装置60は、第2層の加工部U2の作製を準備する。
【0072】
制御装置60は、造形テーブル56を積層ピッチΔhだけ降下する(S11)。その結果、図15に示すように、粉末層35の表面が、図13及び図14と比較して、Δhだけ低下する。
【0073】
ステップS11が完了した後、ステップS6に戻る。このとき、制御装置60は、加工部U1が形成された粉末層35上に、新たな粉末層35を形成する(S6:積層工程)。具体的には、制御装置60の指示に応じて、一対の粉末供給装置54は、再び無機粉末粒子を排出する。このとき、図16に示すように、レーキ55が水平に移動する。その結果、無機粉末粒子が粉末収納室57に供給され、厚さΔhを有する新たな粉末層35が形成される。新たな粉末層35の表面は、レーキ55により平坦に整えられる。
【0074】
続いて、制御装置60は、粉末層35を予熱し(S7)、第2層の加工部U2を形成する(S8:加工工程)。このとき、制御装置60は、第n層(ここではn=2)の加工条件データに基づいて、電子ビーム510を粉末層35に照射する。その結果、図17を参照して、電子ビーム510が照射された領域内の無機粉末粒子が溶解して凝固して凝固部2が形成され、凝固部2と、粉末部とを備える加工部U2が形成される。このとき、図17に示すとおり、加工部U2は加工部U1上に積層される。
【0075】
続いて、ステップS9に進み、n=nmaxとなるまで、つまり、最上層の加工部Unmaxが形成されるまで、制御装置60は、ステップS6〜ステップS11までの動作を繰り返す。要するに、制御装置60は、凝固部2が完成するまで、加工工程(S8)と積層工程(S6)とを繰り返す。
【0076】
図18は、第k層(kは自然数、1<k<nmax)の加工部Ukが形成された後の、製造途中の中間構造体100の鉛直方向の断面図の一例である。図18を参照して、製造途中の中間構造体100は、加工部U1〜Ukが積層されて形成される。加工部U1〜Ukは、複数の凝固部2と、無機粉末粒子31からなる複数の粉末部とを含む。粉末部は、焼結部3の原料となる。
【0077】
ステップS6〜ステップS11を繰り返した結果、カウンタn=nmaxであるとき、つまり、最上層nmaxの加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、図19に示すように、中間構造体100が完成する。中間構造体100は、複数の加工部U1〜Unmaxが積層して形成され、複数の凝固部2と複数の粉末部とを含む。
【0078】
粉末部を構成する複数の無機粉末粒子31は、未溶解であり、焼結されてもいない。つまり、粉末供給装置54から排出される無機粉末粒子31と実質的に同じ粒子形状を保っている。完成された中間構造体100は、粉末層35から取り出され(S12)、造形工程(S200)が完了する。
【0079】
[焼結工程(S300)]
続いて、焼結工程(S300)を実行し、焼結部3を形成する(S300)。中間構造体100を焼結炉に装入する。そして、中間構造体100内の粉末部(無機粉末粒子31)の融点未満の焼結温度にて、中間構造体100を加熱する。中間構造体100は、焼結部3が配置される領域に、粉末部を有する。そのため、焼結温度で加熱されることにより、粉末部内の無機粉末粒子は焼結されてネッキングし、複数のネック32が形成される。以上の工程により、設計工程S100で決定された配置場所に、複数の焼結部3が形成され、構造体1が完成する。なお、焼結工程中において、焼結部3は、凝固部2に結合する。
【0080】
ネック32の数及び成長は、加熱時間及び/又は加熱温度に応じて調整できる。加熱時間が長ければ、ネック32は多数発生し、各ネック32は太る。そのため、加熱時間が長いほど、焼結部3内のネック32は太る。
【0081】
以上、本実施の形態による構造体1の製造方法では、構造体1の形状を複数の領域(ボクセルBC)に区画し、各ボクセルBCに掛かる応力に応じて、各ボクセルBCの力学特性を決定する。これにより、構造体1内に力学特性の分布が決定される。そして、力学特性の分布に基づいて、凝固部2及び焼結部3の配置を決定する。このような方法によれば、構造体1を、構造体の用途に適した力学特性に容易に制御できる。
【0082】
[第2の実施の形態]
構造体1は、図11中の焼結処理(S300)を実施することなく、積層造形装置50で製造することもできる。つまり、本実施の形態による製造方法は、積層造形装置50内で凝固部2と焼結部3とを製造する。
【0083】
具体的には、積層造形装置50は、加工部U1〜Unmaxを製造するとき、各加工部Unにおいて、凝固部2とともに焼結部3を製造する。焼結部3は凝固部2と同じ粉末層35で形成される。つまり、積層造形装置50は、新たな粉末層35が形成されたとき、新たな粉末層35に、凝固部2及び焼結部3を含む加工部Unを形成する。複数の加工部U1〜Unmaxが積層されると、構造体1が完成する。以下、本実施の形態による製造方法を詳述する。
【0084】
図20を参照して、初めに、制御装置60は、構造体1の設計データを作成する(S100)。設計工程S100は、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
次に、制御装置60は、設計データに基づいて、複数の加工部U1〜Unmaxの加工条件データを作成する(S2)。このとき、制御装置60は、加工部Unにおける凝固部2の加工条件を決定し(S201)、かつ、焼結部3の加工条件を決定する(S202)。具体的には、制御装置60は、設計データに基づいて、第n層における加工部Unの断面形状データを作成する。続いて、制御装置60は、断面形状データに基づいて、加工条件データを作成する。凝固部2の加工条件の作成方法は、第1の実施の形態と同じである。焼結部3の加工条件の作成方法は、凝固部2の加工条件の作成方法と同様であるが、焼結部3を形成するときの電子ビーム510のフルエンスは、凝固部2を形成するときの電子ビーム510のフルエンスよりも小さくする。無機粉末粒子31を溶解させずに焼結させるためである。ステップS2で作製された加工部Unの加工条件データは、制御装置60内のメモリに格納される。
【0086】
続いて、制御装置60は、ステップS3〜ステップS5の動作を実行し、さらに、粉末層35を形成する(ステップS6:積層工程)。そして、制御装置60は、第1層の加工部U1を形成する(S7、S8及びS801:加工工程)。
【0087】
制御装置60はまず、粉末層35を予熱する(S7)。続いて、制御装置60は、凝固部2の加工条件データをメモリから読み出し、凝固部2を形成する(S8:凝固工程)。続いて、制御装置60は、焼結部3の加工条件データをメモリから読み出し、焼結部3を形成する(S801:焼結工程)。
【0088】
焼結部3は次のとおりに製造される。制御装置60は、加工条件データに基づいて、電子ビーム510を制御する。制御装置60は、加工条件データ内の領域条件に基づいて調整装置52を制御して、粉末層35の所定の領域に電子ビーム510を照射する。このとき、制御装置60は、加工条件データ内のフルエンス条件に基づいて、ステップS8で照射される電子ビームよりも低いフルエンスを有する電子ビームを照射する。電子ビーム510が照射された領域内の複数の無機粉末粒子は、融点未満の温度に上昇し、焼結される。その結果、焼結部3が形成される。焼結時、焼結部3は、隣接する凝固部2に結合される。
【0089】
以上の造形工程により、粉末層35に加工部U1が形成される。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、凝固工程S8及び焼結工程S801)とを繰り返す。第nmax層の加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、構造体1が完成する。完成された構造体1は、粉末層35から取り出される(S12)。
【0090】
なお、図20では凝固工程S8を先に実行し、その後、焼結工程S801を実行しているが、焼結工程S801を先に実行し、凝固工程S8を後に実行してもよい。以上の製造方法によっても、構造体1を製造できる。
【0091】
[第3の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態では、構造体1は、複数の凝固部2と、複数の焼結部3とを備える。ここで、複数の焼結部3は、互いにネック32の太さが異なる複数の焼結部を含んでもよい。
【0092】
図21は、本実施の形態における構造体500を説明するための模式図である。図21を参照して、構造体500は、複数のボクセルBCに区画される。各ボクセルBCには、凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。
【0093】
図21では、構造体500の形状を立方体とし、構造体500を5×5×5のボクセルBCに区画する。しかしながら、構造体500の形状及びボクセルBCの個数は、図21に限定されない。構造体500は、図1に示す形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0094】
複数の焼結部3は、ネック32の太さが異なる複数の焼結部301及び302を含む。図22を参照して、焼結部301のネック32の外径d1の無機粉末粒子31の外径Dに対する比(=d1/D:以下、ネックサイズ比という)は、焼結部302のネックサイズ比(d2/D)よりも小さい。
【0095】
ここで、各焼結部301及び302のネックサイズ比は、次の方法で測定される。各焼結部内の略中央部において、SEM画像を生成する。SEM画像内の所定の領域内における、各ネック32の外径d1を測定する。測定された外径d1の平均を求める。求めた外径d1の平均の無機粉末粒子31に対する比を、ネックサイズ比という。
【0096】
本実施の形態では、上述のとおり、焼結部301のネックサイズ比は、焼結部302のネックサイズ比よりも小さい。したがって、焼結部301の強度(たとえば降伏応力)は、焼結部302の強度よりも小さい。要するに、ネックサイズ比は、強度と相関する。
【0097】
本実施の形態による構造体500は、要するに、強度の異なる複数の焼結部301及び302を有する。そのため、構造体1と比較して、力学特性の制御が容易になる。換言すれば、構造体500は、構造体1と比較して、さらに精度の高い力学特性を得やすい。
【0098】
構造体500は、次の方法で製造される。
【0099】
図23は、構造体500の製造方法の一例を示すフロー図である。図23を参照して、初めに、制御装置60は、構造体500の設計データを作成する(S100)。このとき、構造体500の形状と、構造体500内の凝固部2、焼結部301、焼結部302の配置が決定される。
【0100】
次に、制御装置60は、設計データに基づいて、各加工部Unの加工条件データを作成する(S2)各加工部Unは、凝固部2、焼結部301及び302を含む。凝固部2の加工条件の設定方法(S201)は、第2の実施の形態と同じである。
【0101】
焼結部3(焼結部301及び302)の加工条件の設定方法(S202)は、次のとおり実施する。焼結部302の加工条件の設定方法は、第2の実施の形態と同様である。一方、焼結部301の加工条件は設定されない。より具体的には、焼結部302を形成するための電子ビーム510のフルエンスは設定されるが、焼結部301を形成するための電子ビーム510のフルエンスは設定されない。したがって、焼結部302が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されるが、焼結部301が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されない。
【0102】
続いて、制御装置60は、ステップS3〜ステップS5の動作を実行し、さらに、粉末層35を形成する(ステップS6:積層工程)。そして、制御装置60は、第1層の加工部U1を形成する(S7、S8及びS810:加工工程)。
【0103】
ステップS8において、制御装置60は、電子ビーム510を照射して凝固部2を形成する。制御装置60はさらに、ステップS810において、凝固部2を形成するときの電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビーム510を、焼結部302が配置されるボクセルBCに照射する。このとき、焼結部302の中間品である準焼結部が形成される。なお、制御装置60は、焼結部301が配置されるボクセルBCには、電子ビーム510を照射しない。
【0104】
以上の造形工程により、粉末層35に加工部U1が形成される。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、S8及びS810)とを繰り返す。第nmax層の加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、中間構造体が形成される。中間構造体は、凝固部2と、焼結部302の中間品である準焼結部と、焼結部301が配置されるボクセルBCに配置され、無機粉末粒子31からなる粉末部とを含む。
【0105】
中間構造体を粉末層35から取り出す(S12)。そして、中間構造体を焼結炉に装入し、所定の焼結温度で、中間構造体を加熱する(S300)。このとき、中間構造体内では、焼結部301が配置されるボクセルBCの粉末部内で無機粉末粒子31が焼結して、焼結部301を形成する。さらに、準焼結部において、ネックの成長が進み、焼結部301よりもネックが太い焼結部302が形成される。以上の工程により、構造体500が製造される。
【0106】
本実施の形態による製造方法では、造形工程(S200)で焼結部302の中間品である準焼結部を形成し、焼結工程(S300)で焼結部301及び焼結部302を形成する。このとき、焼結部302は、造形工程(S200)と焼結工程(S300)とで熱を受けるため、焼結部301よりも多くの熱量を受ける。そのため、ネックの太さが異なる焼結部301及び302を構造体500内に形成することができる。
【0107】
後述するとおり、焼結部301及び302は、焼結工程(S300)を省略しても製造することができる。しかしながら、本実施の形態により構造体500を製造した場合、隣接する上下の層(たとえば、加工部Unと加工部Un+1)における焼結部同士の結合が、より強固になる。層間の結合は、焼結工程(S300)により強固になるためである。
【0108】
[第4の実施の形態]
構造体500は、上述の焼結工程を省略して製造することもできる。この場合、上述の造形工程において、電子ビームの強度を調整して、焼結部301及び302を製造する。
【0109】
図24は、本実施の形態による構造体500の製造方法のフロー図である。図24を参照して、ステップS2で、制御装置60は、凝固部2の加工条件データと、焼結部301の加工条件データと、焼結部302の加工条件データとを作成する。このとき、焼結部301を形成するときの電子ビームのフルエンスを、焼結部302を形成するときの電子ビームのフルエンスよりも小さく設定する。要するに、本実施の形態では、フルエンスの異なる3種類の電子ビームを設定する。
【0110】
設定された電子ビームのフルエンスに基づいて、造形工程(S200)中のステップS8〜S811において、凝固部2と、焼結部302と、焼結部301とを形成する。具体的には、ステップS8において、最も高いフルエンスの電子ビームで凝固部2を形成する。次に、ステップS801において、凝固部2を形成する電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビームで焼結部302を形成する。さらに、ステップS802において、焼結部302を形成する電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビームで焼結部301を形成する。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、S8及びS801、S810、S811)とを繰り返す。以上の工程により構造体500が製造される。本実施の形態では、構造体500を製造するとき、焼結工程(S300)を省略できる。
【0111】
[第5の実施の形態]
構造体1及び構造体500ではさらに、ボクセルBCに、未溶解及び未焼結の無機粉末粒子からなる粉末部が収納されていてもよい。要するに、本実施の形態による構造体は、凝固部2と、焼結部3と、無機粉末粒子が収納された粉末部とを備えてもよい。無機粉末粒子の粉末部のヤング率は、焼結部3よりも低い。そのため、凝固部2と、焼結部3と、粉末部とを組み合わせることにより、構造体内の力学特性をさらに精度高く調整することができ、構造体の用途に応じて、最適な力学特性が得やすくなる。複数の焼結部3が、強度(ネックの太さ)の異なる複数の焼結部301及び302を含む場合はさらに、構造体内の力学特性をより精度高く調整することができる。
【0112】
このような粉末部を備える構造体は、第2及び第4の実施の形態の製造方法に準じて製造することができる。本実施の形態による構造体の製造方法を、図24を参照して説明する。
【0113】
ステップS100において、制御装置60は、複数のボクセルBCにおける凝固部2、焼結部301、焼結部302及び粉末部の配置を決定する。次に、ステップS2において、制御装置60は、凝固部2、焼結部301、302の加工条件データを作成する。このとき、粉末部が配置されるボクセルBCには、加工条件が設定されない。したがって、加工工程(S7、S8、S810及びS811)において、粉末部が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されない。
【0114】
したがって、ステップS2で設定された加工条件にしたがって、ステップS6〜ステップS11、S810及びS811の工程を繰り返せば、凝固部2と、焼結部3(焼結部301及び302)と、粉末部とを含む構造体が製造される。
【0115】
[構造体の用途]
本実施の形態による構造体は、種々の力学特性が要求される様々な用途に利用可能である。構造体はたとえば、上述のとおり、医用インプラントに利用可能である。本実施の形態によれば、生体骨の力学特性に近似した力学特性を有する構造体を製造できる。
【0116】
構造体はさらに、自動車や航空機、船舶、鉄道等の移動体及び産業機械等にも利用できる。本実施の形態によれば、移動体及び産業機械の種類及び適用部位に応じて、構造体の力学特性(強度、応力−歪み特性、剛性、衝撃吸収性等)を調整できる。
【0117】
なお、上述の実施の形態では、設計工程S100は制御装置60により実施される。しかしながら、設計工程S100は、制御装置60以外の他の装置で実施してもよい。たとえば、積層造形装置50とは異なるコンピュータにより、設計工程を実施してもよい。
【0118】
[まとめ]
以上のとおり、本実施の形態における構造体の製造方法では、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する加工工程と、加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、加工工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、中間構造体を加熱して粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える。
【0119】
この場合、構造体の用途に応じて、区画された複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定して構造体を製造できる。したがって、構造体の用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる。
【0120】
好ましくは、加工工程ではさらに、粉末層のうち焼結部が配置される複数の領域のうちのいくつかに対して、第1ビームよりもフルエンスが低い第2ビームを照射し、無機粉末粒子を焼結して準焼結部を形成し、形成工程では、凝固部と、準焼結部と、粉末部とを含む中間構造体を形成し、焼結工程では、中間構造体を加熱して、凝固部と、粉末部の無機粉末粒子が加熱により焼結されて形成される第1焼結部と、準焼結部が加熱によりさらに焼結されて形成される第2焼結部とを備える構造体を形成する。
【0121】
この場合、強度の異なる複数種類の焼結部を形成できる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0122】
本実施の形態による構造体の製造方法は、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する配置決定工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に凝固用ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する凝固工程と、粉末層のうち焼結部が配置される領域に凝固用ビームよりもフルエンスの低い焼結用ビームを照射して無機粉末粒子を焼結し、焼結部を形成する焼結工程と、凝固工程及び焼結工程後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、凝固工程、焼結工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部とを含む構造体を形成する形成工程とを備える。
【0123】
この場合、焼結炉での焼結工程を実施することなく、ビームの強度を変えることにより、凝固部と焼結部とを含む構造体を製造できる。
【0124】
好ましくは、焼結部は、第1焼結部と、第1焼結部よりも低い強度を有する第2焼結部とを含み、焼結用ビームは、第1ビームと、第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームとを含み、上記焼結工程は、粉末層のうち第1焼結部が配置される領域に第1ビームを照射して第1焼結部を形成する工程と、粉末層のうち第2焼結部が配置される領域に第2ビームを照射して第2焼結部を形成する工程とを備える。
【0125】
この場合、焼結炉での焼結工程を実施することなく、強度の異なる複数種類の焼結部を形成できる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0126】
好ましくは、構造体はさらに、無機粉末粒子からなる粉末部を備え、配置決定工程では、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部、焼結部及び粉末部の配置を決定し、形成工程では、凝固工程、焼結工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部と、粉末部とを含む構造体を形成する。
【0127】
この場合、凝固部、焼結部及び粉末部といった、力学特性の異なる構成を、構造体内に区画された複数の領域に配置することができる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0128】
本実施の形態による構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の第1焼結部と、無機粉末粒子が焼結されて形成され、前記第1焼結部よりも低い強度を有する複数の第2焼結部とを備える。
【0129】
この場合、構造体は、凝固部、第1焼結部、第2焼結部といった力学特性の異なる構成を備える。そのため、所望の力学特性を得やすくなる。
【0130】
好ましくは、第1焼結部は、積層造形法においてビームを無機粉末粒子に照射して形成される準焼結部を、所定の焼結温度で加熱して形成され、第2焼結部は、無機粉末粒子を前記焼結温度で加熱して形成される。
【0131】
この場合、凝固部、第1及び第2焼結部を容易に製造できる。
【0132】
好ましくは、第1焼結部は、積層造形法において第1ビームを無機粉末粒子に照射して形成され、第2焼結部は、積層造形法において、第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームを無機粉末粒子に照射して形成される。
【0133】
この場合、焼結工程を省略できる。
【0134】
本実施の形態による構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部と、無機粉末粒子からなる複数の粉末部とを備える。
【0135】
この場合、構造体は、凝固部、焼結部、粉末部といった力学特性の異なる構成を備える。そのため、所望の力学特性を得やすくなる。
【0136】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明による構造体は、種々の力学特性が要求される種々の分野に利用可能である。特に、自動車や航空機、船舶、鉄道等の移動体や産業機械、医用インプラントに利用可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,500 構造体
2 凝固部
3,301,302 焼結部
10,20 微小構造体
31 無機粉末粒子
32 ネック
35 粉末層
50 積層造形装置
60 制御装置
100 中間構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法及び構造体に関し、さらに詳しくは、人工関節や骨プレートに代表される医用インプラントや、自動車、航空機及び船舶に代表される移動体、又は、産業機械等に利用可能な構造体の製造方法及びその構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工関節又は骨プレートに代表される医用インプラントは、チタン合金に代表される金属からなる。医用インプラントには、骨と類似の力学特性が要求される。具体的には、インプラントには、骨と近似する低いヤング率や、優れた衝撃吸収性等の力学特性が求められる。
【0003】
特開2005−329179号公報(特許文献1)及び特開平6−90971号公報(特許文献2)は、金属インプラントを開示する。
【0004】
特許文献1に開示された金属インプラントは、中実(Solid)の金属材からなる。そのため、特許文献1の金属インプラントのヤング率は生体骨よりも大幅に大きい。一方、特許文献2に開示された金属インプラントは、内部に中空を有する。したがって、中実の金属インプラントと比較してヤング率は低い。しかしながら、中空を有する金属インプラントであっても衝撃吸収性は生体骨よりも低い。
【0005】
国際公開第2010/067146号公報(特許文献3)は、低いヤング率と優れた衝撃吸収性とを有する衝撃吸収構造体を提案する。特許文献3に開示された衝撃吸収構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成され、凝固部と結合される焼結部とを備える。焼結部は、内部に隙間を有するため、中実材と比較して密度が低い。そのため、特許文献3の衝撃吸収構造体は、中実材と比較して軽量であり、そのヤング率も低い。さらに、焼結部及び凝固部の組み合わせにより、優れた衝撃吸収性も得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−329179号公報
【特許文献2】特開平6−90971号公報
【特許文献3】国際公開第2010/067146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された衝撃吸収構造体を医用インプラントとして使用する場合、従来の金属インプラントと比較して、低いヤング率及び優れた衝撃吸収性を実現する。しかしながら、生体骨は、ミクロな内部構造からマクロな外形状に至るまで、複雑な階層的異方構造を有し、力学異方性を有する。したがって、医用インプラントでは、生体骨に近い力学異方性を実現できる方が好ましく、代替する生体骨に応じて、医用インプラントの異方性等の力学特性の制御が容易であることが好ましい。
【0008】
さらに、異方性に代表される力学特性の制御は、医用インプラントに限られない。自動車等の移動体や、産業機械等においても、その用途に応じて、構造体の力学特性を容易に制御できる方が好ましい。
【0009】
本発明の目的は、用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる構造体の製造方法及びその構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態による構造体の製造方法は、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する加工工程と、加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、加工工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、中間構造体を加熱して粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える。
【0011】
本実施の形態による構造体は、上記製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0012】
本実施の形態による構造体の製造方法は、構造体の用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施の形態による構造体の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1中の構造体内の所定の部位の微小構造体の斜視図である。
【図3】図3は、微小構造体10を説明するための模式図である。
【図4】図4は、図2の微小構造体のうち、凝固部の配置を説明するための模式図である。
【図5】図5は、図2中の焼結部の断面図である。
【図6】図6は、図2と異なる部位の微小構造体の斜視図である。
【図7】図7は、図6の微小構造体のうち、凝固部の配置を説明するための模式図である。
【図8】図8は、図2及び図6に示す微小構造体の応力−歪み曲線を示す図である。
【図9】図9は、図2及び図6に示す微小構造体の見掛けのヤング率を示す図である。
【図10】図10は、図1に示す構造体を製造するための積層造形装置の構成図である。
【図11】図11は、図1に示す構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図12】図12は、図11中の設計工程の詳細を示すフロー図である。
【図13】図13は、図11中の造形工程における動作を説明するための模式図である。
【図14】図14は、図13と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図15】図15は、図13及び図14と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図16】図16は、図13〜図15と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図17】図17は、図13〜図16と異なる、造形工程の他の動作を説明するための模式図である。
【図18】図18は、造形工程の途中での中間構造体の断面図である。
【図19】図19は、図13〜図17と異なる、造形工程の他の動作を説明するための図である。
【図20】図20は、第2の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図21】図21は、第2の実施の形態による構造体の模式図である。
【図22】図22は、図21に示す構造体内の第1焼結部と第2焼結部におけるネックサイズ比を説明するための模式図である。
【図23】図23は、第3の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【図24】図24は、第4の実施の形態による構造体の製造方法の詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態による構造体1の一例を示す斜視図である。図1の構造体1は、医用インプラントであり、より具体的には、股関節の大腿骨部に代替される医用インプラントである。構造体1は、医用インプラント以外の他の用途にも利用可能である。以降の説明では、構造体1の一例として、構造体1を医用インプラントに適用する場合について説明する。
【0016】
大腿骨では、部位によって骨密度が異なる。具体的には、大腿骨は、外面を覆う皮質骨と、内部に形成される海綿骨とを備える。高い応力が掛かる部位では、海綿骨は多くなり、低い応力しか掛からない部位では、海綿骨は少ない。したがって、大腿骨は、力学的異方性を有する。
【0017】
構造体1は、大腿骨の代替として使用される。そのため、構造体1も大腿骨と同様の力学特性を有する方が好ましい。したがって、構造体1内の構造は、部位によって異なる方が好ましい。たとえば、構造体1内の部位10及び部位20は、次に示す構造を有する。
【0018】
図2は、部位10の微小構造体の斜視図である。図2を参照して、部位10の微小構造体(以下、単に微小構造体10という)は、複数の凝固部2と、複数の焼結部3とを備える。
【0019】
凝固部2は、複数の無機粉末粒子が溶解し、溶解後に凝固することにより形成される。無機粉末粒子は、無機物からなる粉末粒子である。無機粉末粒子はたとえば、金属や金属間化合物、セラミックス等である。金属は、純金属や合金である。好ましくは、無機粉末粒子は金属である。
【0020】
図3は、微小構造体10を説明するための模式図である。図3を参照して、微小構造体10は、複数の立体的な領域(以下、ボクセルという)BCに区画される。図3では、微小構造体10は、直交座標系(x軸、y軸、z軸)において、5×5×5=125個のボクセルBCに区画されている。
【0021】
各ボクセルBCには、凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。図4は、図2に示す微小構造体10のうち、凝固部2のみを示した図である。図4を参照して、微小構造体10では、各面(xy面、yz面、zx面)の対角線上に配列されたボクセルBCと、微小構造体10の中心に位置するボクセルBCに、凝固部2がそれぞれ配置されている。そして、微小構造体10のうち、凝固部2が配置されていないボクセルBCには、焼結部3が配置される。したがって、微小構造体10は、直交座標系の各軸(x軸、y軸、z軸)に対して等方性を有する構造体である。
【0022】
焼結部3は、複数の無機粉末粒子が焼結されて形成される。焼結部3は、凝固部2と同じ組成の無機粉末粒子から製造される。要するに、焼結部3は凝固部2と実質的に同じ組成を有する。
【0023】
図5は、焼結部3の断面図である。図5を参照して、焼結部3は、複数の無機粉末粒子31と、複数のネック32とを含む。複数のネック32は、複数の無機粉末粒子31の間に形成される。焼結処理において、隣り合う無機粉末粒子31の一部が焼結により結合し、ネック32が形成される。このようなネック32の形成工程はネッキングと呼ばれる。
【0024】
ネック32はさらに、無機粉末粒子と凝固部2との間にも形成される。ネック32により、焼結部3は凝固部2に結合される。ネック32は、原子拡散により形成される。
【0025】
図5では、焼結部3はネック32により凝固部2と結合する。しかしながら、焼結部3は他の方法により凝固部2と結合してもよい。たとえば、焼結部3及び/又は凝固部2の一部が溶解することにより、焼結部3が凝固部2と結合されてもよい。
【0026】
図5に示すとおり、焼結部3内には複数の隙間(空隙)33が形成される。複数の隙間33は、複数の無機粉末粒子31の間に形成される。
【0027】
図6は、図1中の部位20の微小構造体の斜視図である。図6を参照して、部位20の微小構造体(以下、単に微小構造体20という)は、微小構造体10と異なる構造を有する。より具体的には、微小構造体20も、微小構造体10と同様に、複数の凝固部2と複数の焼結部3とを含む。しかしながら、微小構造体20では、凝固部2及び焼結部3の配置が微小構造体10と異なる。
【0028】
具体的には、微小構造体20も、微小構造体10と同様に、図3に示す複数のボクセルBCに区画される。そして、各ボクセルBC内に凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。図7は、図6に示す微小構造体20の構成のうち、凝固部2のみを示した図である。図7を参照して、微小構造体20では、複数の凝固部2がy軸方向及びz軸方向に直列に配列される。具体的には、z軸方向に凝固部2が直列に配列されて形成された凝固柱21が6本配置される。さらに、一対の凝固柱21の間に、y軸方向に凝固部2が直列に配列されて形成される凝固梁22が3本配置される。凝固柱21及び凝固梁22において、互いに隣接する凝固部2同士(たとえば、図7中の凝固部2A及び2B)は、溶解により結合されている。
【0029】
図7では、凝固部2は、x方向には直列に配置されない。微小構造体20のうち、凝固部2が配置されていないボクセルBCには、焼結部3が配置される。したがって、微小構造体20は、直交座標系の各軸(x軸、y軸、z軸)において異方性を有する構造体である。なお、微小構造体10及び微小構造体20は、図2及び図6の構造を収容する筐体を備えてもよい。筐体は無機粉末粒子が溶解して凝固することにより形成される。
【0030】
図8は、微小構造体10と、微小構造体20とにおける、x軸方向、y軸方向、z軸方向における応力−歪み曲線を示す図である。図9は、微小構造体10及び微小構造体20のx軸方向、y軸方向及びz軸方向における見掛けのヤング率(GPa)を示す図である。
【0031】
図8及び図9では、微小構造体10及び20は筐体を備え、その形状はいずれも11×11×11mmであり、筐体の各壁の厚さは0.5mmであった。構造体内の各ボクセルBCは2mm×2mm×2mmであった。各構造体の凝固部2及び焼結部3はともに、JIST−7401−2:2002に規定されるチタン 6−アルミニウム 4−バナジウム合金からなる無機粉末粒子から形成された。
【0032】
後述する製造方法により、微小構造体10と、微小構造体20とを複数製造した。製造された各構造体に対して、インストロン型圧縮試験機を用いて、常温(25℃)の大気中において圧縮試験を実施し、図8に示す応力−歪み曲線を得た。圧縮試験では、圧縮方向を、x軸方向、y軸方向、z軸方向とした。図9に示す見掛けのヤング率(GPa)は、応力−歪み曲線の弾性ひずみ範囲から、その直線領域を最小二乗法で計算して算出した。
【0033】
図8及び図9を参照して、微小構造体10では、x軸方向、y軸方向及びz軸方向からの圧縮試験のいずれにおいても、曲線10xyzに示す応力−歪み曲線が得られ、見掛けのヤング率10xyzは、x軸方向、y軸方向、z軸方向いずれも同じであった。つまり、部位10構造体の力学特性(本例では応力−歪み曲線及びヤング率)は、等方性を示した。
【0034】
一方、微小構造体20では、z軸方向の応力−ひずみ曲線20zの降伏応力が最も高く、y軸方向の応力−歪み曲線20yの降伏応力が次に高く、x軸方向の応力−歪み曲線20xの降伏応力が最も低かった。換言すれば、微小構造体20では、6本の凝固柱21を有するz軸方向の降伏応力が最も高く、3本の凝固梁22を有するy軸方向の降伏応力が次に高く、凝固柱21及び凝固梁22のいずれも有しないx軸方向の降伏応力が最も低かった。見掛けのヤング率についても、同じ傾向であった。つまり、図9を参照して、z軸方向の見掛けのヤング率20zが最も大きく、y軸方向の見掛けのヤング率20yは次に大きくx軸方向の見掛けのヤング率20xが最も小さかった。したがって、微小構造体20の力学特性は、異方性を示した。
【0035】
このように、構造体1は、内部に、力学特性の異なる複数の微小構造体(たとえば、微小構造体10及び20)を備える。要するに、構造体1の形状は、図3に示すような複数のボクセルBCに区画され、構造体1内の各ボクセルBCには、凝固部2又は焼結部3が配置される。
【0036】
凝固部2及び焼結部3の配置は、構造体1の各部位(又は各ボクセルBC)に要求される力学特性(応力−歪み曲線、ヤング率、降伏応力、衝撃吸収性等)に応じて決定される方が好ましい。この場合、構造体1の力学特性を、その用途に適した力学特性に近づけることができる。構造体1が生体骨の代替として医用インプラントである場合、構造体1の力学特性を、生体骨の力学特性に近づけることができる。このような構造体1は、次の製造方法により製造することができる。
【0037】
[構造体の製造方法]
構造体1は、ラピッドプロトタイピング法、より具体的には積層造形法をベースとした次の製造方法により製造される。下記の製造方法では、構造体1の用途に応じて、構造体1の力学特性を容易に制御できる。
【0038】
[積層造形装置の構成]
図10は、構造体1を製造するための積層造形装置の構成図である。図10を参照して、積層造形装置50は、照射装置51と、調整装置52と、造形室53と、制御装置60とを備える。積層造形装置50は、構造体1の中間品である中間構造体100を製造する。
【0039】
照射装置51は、積層造形装置50の上部に配置される。照射装置51は、下方に向かって電子ビーム510を照射する。調整装置52は、照射装置51の下方に配置される。調整装置52は、制御装置60の指示に応じて、電子ビーム510を偏向する。これにより、電子ビーム510は所定の領域を照射できる。調整装置52はさらに、電子ビーム510の焦点や非点収差を補正する。これにより、電子ビーム510のフルエンス(単位面積当たりに与えるエネルギ量)が調整される。
【0040】
調整装置52は、非点収差コイル521と、焦点コイル522と、偏向コイル523とを備える。非点収差コイル521は、電子ビーム510の非点収差を補正する。焦点コイル522は、電子ビーム510の焦点を補正する。偏向コイル523は、電子ビーム510を偏向する。つまり、偏向コイル523は、電子ビーム510の照射方向を変更する。
【0041】
造形室53は、調整装置52の下方に配置される。造形室53内では、凝固部2が形成される。造形室53は、図示しない真空ポンプと接続されている。凝固部2が製造されるとき、造形室53内は真空に引かれる。
【0042】
造形室53は、一対の粉末供給装置54と、レーキ55と、造形テーブル56と、粉末収納室57と、ベースプレート58とを備える。
【0043】
粉末収納室57は、造形室53の下部中央に配置される。粉末収納室57は、上端に開口を有する筐体状であり、側壁571を有する。造形テーブル56は、粉末収納室57に収納され、上下方向に昇降可能に支持される。造形テーブル56は、図示しないモータにより昇降する。造形テーブル56上には、ベースプレート58が配置される。凝固部2は、ベースプレート58上に形成される。ベースプレート58により、造形テーブル56上に中間構造体100が結合するのを防止できる。
【0044】
一対の粉末供給装置54は、粉末収納室57よりも上に配置され、かつ、積層造形装置50の上方から見たとき、粉末収納室57を挟んで配置される。粉末供給装置54は凝固部2及び焼結部3の原料となる複数の無機粉末粒子31を収納し、制御装置60の指示に応じて複数の無機粉末粒子31を排出する。
【0045】
レーキ55は、粉末収納室57の上端近傍に配置される。レーキ55は、図示しないモータにより水平方向に移動し、一対の粉末供給装置54間を往復する。レーキ55は、水平方向に移動することにより、粉末供給装置54から排出された無機粉末粒子31を粉末収納室57に供給する。粉末収納室57に堆積された複数の無機粉末粒子31により、造形テーブル56上に粉末層35が形成される。レーキ55は、水平方向に移動することにより、粉末層35の表面を平坦に整える。
【0046】
制御装置60は、図示しない中央演算処置装置(CPU)と、メモリと、ハードディスクドライブ(以下、HDDという)とを備える。HDDには、構造体設計アプリケーションと、CAM(Computer Aided Manufacturing)アプリケーションとが格納される。制御装置60は、構造体設計アプリケーションを利用して、構造体1の3次元形状データ及び凝固部2及び焼結部3の配置データを作成する。以降、3次元形状データ及び配置データを合わせて、「設計データ」という。
【0047】
制御装置60はさらに、CAMアプリケーションを利用して、設計データに基づいて、加工条件データを作成する。積層造形法では、電子ビーム510により形成される層状の加工部が順次積層され、中間構造体100が形成される。加工条件データは、各加工部の製造条件を含む。つまり、加工条件データは、加工部ごとに作成される。
【0048】
制御装置60は、各加工条件データに基づいて電子ビーム510を制御して加工部を形成し、加工部を順次積層して中間構造体100を形成する。
【0049】
[製造プロセスの詳細]
図11は、構造体1の製造方法の詳細を示すフロー図である。図11を参照して、初めに、構造体1を設計する(設計工程:S100)。設計工程では、構造体1の形状と、凝固部2及び焼結部3の配置とを設計し、設計データを作成する。次に、設計データに基づいて、積層造形法により中間構造体100を形成する(S200:造形工程)。中間構造体100は、構造体1のうちの焼結部3が形成されていない状態の構造体である。次に、焼結処理により焼結部3が形成され、構造体1を完成する(S300:焼結工程)。以下、製造プロセスの詳細を説明する。
【0050】
[設計工程(S100)]
図12は、図11中の設計工程(S100)の詳細を示すフロー図である。図12を参照して、制御装置60は初めに、構造体設計アプリケーションを利用して、設計工程を実施する(S100)。構造体設計アプリケーションは、制御装置60内の図示しないメモリにロードされ、CPUで実行される。
【0051】
制御装置60は、構造体1の形状を特定する(S101)。たとえば、構造体1が、図1に示す大腿骨代用の医用インプラントである場合、図1の形状を特定する。以下、ステップS1で特定された形状を、「構造体形状」という。
【0052】
次に、制御装置60は、構造体形状を、図3に示すような複数のボクセルBCに区画する(S102)。制御装置60はたとえば、構造体形状を直交座標系に配置して、各軸(x軸、y軸、z軸)に基づいて、3次元的に構造体形状を区画して複数のボクセルBCを設定する。このとき、各ボクセルBCには同じ力学特性が設定される。たとえば、各ボクセルBCのヤング率は一定とする。
【0053】
次に、設定された複数のボクセルBCにおいて、凝固部2と焼結部3の配置を決定する(S103〜S108)。制御装置60はまず、構造体1への荷重条件を設定する(S103)。たとえば、構造体1が図1に示す大腿骨の医用インプラントである場合、生活において大腿骨に掛かる荷重の条件を設定する。通常、大腿骨に掛かる荷重は、立脚時に掛かる荷重と、股関節外転時に掛かる荷重と、股関節内転時に掛かる荷重とが存在する。荷重条件では、これらの複数の荷重が繰り返し掛かることを想定して設定される。たとえば、上述の荷重が所定の順序で所定の回数(繰り返し回数)掛かると仮定し、この条件を荷重条件と設定する。医用インプラントの場合、荷重条件は、医用インプラントを利用する患者の生活スタイルに応じて設定してもよい。
【0054】
荷重条件を設定した後、上記荷重条件における1回目の荷重負荷において、構造体1内の各ボクセルBCに掛かる応力を数値解析により算出する(S104)。数値解析はたとえば、有限要素法(FEM)を利用する。
【0055】
数値解析により各ボクセルBCに掛かる応力を解析した後、掛かる応力に基づいて、ボクセルBCの力学特性を調整する(S108)。本例では、ボクセルBCの力学特性として、ヤング率を調整する。具体的には、制御装置60は、複数の下限応力値と上限応力値とを設定し、図示しないメモリに格納している。ステップS104で得られた応力が上限応力値を超えたとき、制御装置60は、対応するボクセルBCのヤング率を所定の割合引き上げる(S108)。一方、ステップS104で得られた応力が下限応力値未満であったとき、制御装置60は、対応するボクセルBCのヤング率を所定の割合引き下げる(S108)。得られた応力が上限応力値及び下限応力値のいずれも超えない場合、対応するボクセルBCのヤング率を変更しない。
【0056】
力学特性(本例ではヤング率)の調整を行った後(S108)、ステップS104に戻り、制御装置60は2回目の荷重負荷を実施し、数値解析により各ボクセルBCに掛かる応力を再び求める(S104)。
【0057】
以上の計算をステップS103で設定された繰り返し回数分実施する。繰り返し回数分実施した後(S105でYES)、構造体1の力学特性(ヤング率)の分布が決定される。決定されたヤング率の分布は、構造体1全体に一様ではない。局所的にヤング率の高い部位が存在する。さらに、構造体1内の複数の部位のうち、等方的な力学特性が要求される部位も存在すれば、異方的な力学特性が要求される部位も存在する。そこで、制御装置60は、決定されたヤング率の分布に基づいて、複数のボクセルBCにおける凝固部2と焼結部3の配置を決定する(S106)。たとえば、高いヤング率が要求される部位では、凝固部2の配置を多くし、焼結部3の配置を少なくする。また、力学的異方性が要求される場合、図6に示すように、凝固部2を非対称に配置する。力学的等方性が要求される場合、図2に示すように、凝固部2を対称に配置する。
【0058】
以上の方法により凝固部2及び焼結部3の配置を決定した後、制御装置60は、構造体1の3次元形状と、凝固部2及び焼結部3の配置に関する配置データとを含む、設定データを作成する(S107)。
【0059】
以上の設定工程(S100)では、構造体1の形状を複数の領域(ボクセル)BCに区画し、各ボクセルBCに掛かる応力に応じて、各ボクセルBCの力学特性を決定する。これにより、構造体1内の力学特性の分布(本例ではヤング率の分布)が決定される。そして、力学特性の分布に基づいて、凝固部2及び焼結部3の配置を決定する。このような方法によれば、構造体1の力学特性を、構造体1の用途に適した力学特性に容易に制御できる。
【0060】
再び図11を参照して、制御装置60は、設計工程(S100)で得られた設計データを利用して、造形工程(S200)を実施し、中間構造体100を製造する。具体的には、制御装置60は、CAMアプリケーションを用いて、設計データに基づいて加工条件データを作成する(S2)。CAMアプリケーションは、制御装置60内のメモリにロードされ、CPUで実行される。
【0061】
上述のとおり、中間構造体100は、複数の加工部U1〜Unmaxが順次積層されて形成される。加工条件データは、加工部U1〜Unmaxごとに作成される。
【0062】
初めに、構造体1を予め設定された積層数nmax(個)でスライスした場合を想定する。このとき、スライスされた構造体1の1層分(1スライス分)に相当する加工部Unの加工条件データは、次の方法で作成される。ここで、第1層は最下層であり、第nmax層は最上層である。
【0063】
制御装置60はまず、設計データに基づいて、第n層における加工部Unの断面形状データを作成する。続いて、制御装置60は、断面形状データに基づいて、加工条件データを作成する。加工条件データは、領域条件とフルエンス条件とを含む。制御装置60は、断面形状データに基づいて、電子ビームを照射する領域(ボクセルBC)を決定し、領域条件として定義する。
【0064】
続いて、凝固部2を形成するために必要なフルエンスに応じて、電子ビーム510の電流値、走査速度、走査間隔値、電子ビームフォーカス値を決定し、フルエンス条件として定義する。フルエンスに関する情報は、無機粉末粒子の組成に対応して、制御装置60内のHDDに予め格納されている。以上の工程により、各層における加工条件データが作成される。作成された複数の加工条件データは、制御装置60内のメモリに格納される。
【0065】
続いて、真空ポンプを用いて、造形室53が真空に引かれる(S3)。造形室53内が真空になった後、造形テーブル56上に配置されたベースプレート58を予熱する(S4)。
【0066】
続いて、制御装置60は、カウンタnを「1」に設定し(S5)、第1層(最下層)の加工部U1の作製を開始する(S6〜S8)。
【0067】
制御装置60はまず、粉末層35を形成する(S6)。制御装置60は、一対の粉末供給装置54に対して、複数の無機粉末粒子31を排出するよう指示する。一対の粉末供給装置54は、制御装置60からの指示に応じて、複数の無機粉末粒子31を排出する。このとき、レーキ55が水平方向に移動して、排出された無機粉末粒子31を粉末収納室57に供給する。図13に示すとおり、無機粉末粒子31はベースプレート58及び造形テーブル56上に堆積し、粉末層35が形成される。粉末供給装置54内の無機粉末粒子31には、バインダ樹脂粒子は含まれない。そのため、粉末層35は実質的に複数の無機粉末粒子31からなる。レーキ55はさらに、粉末層35の表面上を水平に移動して、粉末層35を平坦に整える。その結果、図13に示すように、粉末層35の表面は平坦になる。
【0068】
次に、制御装置60は、積層造形法における周知の方法で、粉末層35を予熱する(S7)。照射装置51は、低フルエンスを有する電子ビーム510を粉末層35の表面に照射する。このとき、粉末層35は、焼結を生じない程度の温度に上昇する。
【0069】
次に、電子ビーム510により第1層の加工部U1を形成する(S8:加工工程)。制御装置60は、ステップS2で作成された複数の加工条件データのうち、第1層の加工条件データをメモリから読み出す。読み出された加工条件データに基づいて、制御装置60は電子ビーム510を制御する。制御装置60は、加工条件データ内の領域条件に基づいて調整装置52を制御して、粉末層35の所定の領域、具体的には、凝固部2が配置されるボクセルBCに、電子ビーム510を照射する。制御装置60はさらに、加工条件データ内のフルエンス条件に基づいて照射装置51及び調整装置52を制御して、電子ビーム510のフルエンスを調整する。その結果、電子ビーム510が照射された領域(ボクセルBC)内の無機粉末粒子31が溶解して凝固し、図14に示すように第1層の加工部U1がベースプレート58上に形成される。加工部U1は、凝固部2と、凝固部2に囲まれ無機粉末粒子からなる粉末部とからなる。
【0070】
なお、粉末層35のうち、加工部U1以外の領域に配置された無機粉末粒子31は、溶解しておらず、焼結していない。
【0071】
第1層の加工部U1が形成された後、制御装置60は、カウンタがnmaxか否かを判断する(S9)。ここでは、カウンタn=1であるため(S9でNO)、制御装置60はカウンタnをインクリメントしてn+1=2とする(S10)。要するに、制御装置60は、第2層の加工部U2の作製を準備する。
【0072】
制御装置60は、造形テーブル56を積層ピッチΔhだけ降下する(S11)。その結果、図15に示すように、粉末層35の表面が、図13及び図14と比較して、Δhだけ低下する。
【0073】
ステップS11が完了した後、ステップS6に戻る。このとき、制御装置60は、加工部U1が形成された粉末層35上に、新たな粉末層35を形成する(S6:積層工程)。具体的には、制御装置60の指示に応じて、一対の粉末供給装置54は、再び無機粉末粒子を排出する。このとき、図16に示すように、レーキ55が水平に移動する。その結果、無機粉末粒子が粉末収納室57に供給され、厚さΔhを有する新たな粉末層35が形成される。新たな粉末層35の表面は、レーキ55により平坦に整えられる。
【0074】
続いて、制御装置60は、粉末層35を予熱し(S7)、第2層の加工部U2を形成する(S8:加工工程)。このとき、制御装置60は、第n層(ここではn=2)の加工条件データに基づいて、電子ビーム510を粉末層35に照射する。その結果、図17を参照して、電子ビーム510が照射された領域内の無機粉末粒子が溶解して凝固して凝固部2が形成され、凝固部2と、粉末部とを備える加工部U2が形成される。このとき、図17に示すとおり、加工部U2は加工部U1上に積層される。
【0075】
続いて、ステップS9に進み、n=nmaxとなるまで、つまり、最上層の加工部Unmaxが形成されるまで、制御装置60は、ステップS6〜ステップS11までの動作を繰り返す。要するに、制御装置60は、凝固部2が完成するまで、加工工程(S8)と積層工程(S6)とを繰り返す。
【0076】
図18は、第k層(kは自然数、1<k<nmax)の加工部Ukが形成された後の、製造途中の中間構造体100の鉛直方向の断面図の一例である。図18を参照して、製造途中の中間構造体100は、加工部U1〜Ukが積層されて形成される。加工部U1〜Ukは、複数の凝固部2と、無機粉末粒子31からなる複数の粉末部とを含む。粉末部は、焼結部3の原料となる。
【0077】
ステップS6〜ステップS11を繰り返した結果、カウンタn=nmaxであるとき、つまり、最上層nmaxの加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、図19に示すように、中間構造体100が完成する。中間構造体100は、複数の加工部U1〜Unmaxが積層して形成され、複数の凝固部2と複数の粉末部とを含む。
【0078】
粉末部を構成する複数の無機粉末粒子31は、未溶解であり、焼結されてもいない。つまり、粉末供給装置54から排出される無機粉末粒子31と実質的に同じ粒子形状を保っている。完成された中間構造体100は、粉末層35から取り出され(S12)、造形工程(S200)が完了する。
【0079】
[焼結工程(S300)]
続いて、焼結工程(S300)を実行し、焼結部3を形成する(S300)。中間構造体100を焼結炉に装入する。そして、中間構造体100内の粉末部(無機粉末粒子31)の融点未満の焼結温度にて、中間構造体100を加熱する。中間構造体100は、焼結部3が配置される領域に、粉末部を有する。そのため、焼結温度で加熱されることにより、粉末部内の無機粉末粒子は焼結されてネッキングし、複数のネック32が形成される。以上の工程により、設計工程S100で決定された配置場所に、複数の焼結部3が形成され、構造体1が完成する。なお、焼結工程中において、焼結部3は、凝固部2に結合する。
【0080】
ネック32の数及び成長は、加熱時間及び/又は加熱温度に応じて調整できる。加熱時間が長ければ、ネック32は多数発生し、各ネック32は太る。そのため、加熱時間が長いほど、焼結部3内のネック32は太る。
【0081】
以上、本実施の形態による構造体1の製造方法では、構造体1の形状を複数の領域(ボクセルBC)に区画し、各ボクセルBCに掛かる応力に応じて、各ボクセルBCの力学特性を決定する。これにより、構造体1内に力学特性の分布が決定される。そして、力学特性の分布に基づいて、凝固部2及び焼結部3の配置を決定する。このような方法によれば、構造体1を、構造体の用途に適した力学特性に容易に制御できる。
【0082】
[第2の実施の形態]
構造体1は、図11中の焼結処理(S300)を実施することなく、積層造形装置50で製造することもできる。つまり、本実施の形態による製造方法は、積層造形装置50内で凝固部2と焼結部3とを製造する。
【0083】
具体的には、積層造形装置50は、加工部U1〜Unmaxを製造するとき、各加工部Unにおいて、凝固部2とともに焼結部3を製造する。焼結部3は凝固部2と同じ粉末層35で形成される。つまり、積層造形装置50は、新たな粉末層35が形成されたとき、新たな粉末層35に、凝固部2及び焼結部3を含む加工部Unを形成する。複数の加工部U1〜Unmaxが積層されると、構造体1が完成する。以下、本実施の形態による製造方法を詳述する。
【0084】
図20を参照して、初めに、制御装置60は、構造体1の設計データを作成する(S100)。設計工程S100は、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
次に、制御装置60は、設計データに基づいて、複数の加工部U1〜Unmaxの加工条件データを作成する(S2)。このとき、制御装置60は、加工部Unにおける凝固部2の加工条件を決定し(S201)、かつ、焼結部3の加工条件を決定する(S202)。具体的には、制御装置60は、設計データに基づいて、第n層における加工部Unの断面形状データを作成する。続いて、制御装置60は、断面形状データに基づいて、加工条件データを作成する。凝固部2の加工条件の作成方法は、第1の実施の形態と同じである。焼結部3の加工条件の作成方法は、凝固部2の加工条件の作成方法と同様であるが、焼結部3を形成するときの電子ビーム510のフルエンスは、凝固部2を形成するときの電子ビーム510のフルエンスよりも小さくする。無機粉末粒子31を溶解させずに焼結させるためである。ステップS2で作製された加工部Unの加工条件データは、制御装置60内のメモリに格納される。
【0086】
続いて、制御装置60は、ステップS3〜ステップS5の動作を実行し、さらに、粉末層35を形成する(ステップS6:積層工程)。そして、制御装置60は、第1層の加工部U1を形成する(S7、S8及びS801:加工工程)。
【0087】
制御装置60はまず、粉末層35を予熱する(S7)。続いて、制御装置60は、凝固部2の加工条件データをメモリから読み出し、凝固部2を形成する(S8:凝固工程)。続いて、制御装置60は、焼結部3の加工条件データをメモリから読み出し、焼結部3を形成する(S801:焼結工程)。
【0088】
焼結部3は次のとおりに製造される。制御装置60は、加工条件データに基づいて、電子ビーム510を制御する。制御装置60は、加工条件データ内の領域条件に基づいて調整装置52を制御して、粉末層35の所定の領域に電子ビーム510を照射する。このとき、制御装置60は、加工条件データ内のフルエンス条件に基づいて、ステップS8で照射される電子ビームよりも低いフルエンスを有する電子ビームを照射する。電子ビーム510が照射された領域内の複数の無機粉末粒子は、融点未満の温度に上昇し、焼結される。その結果、焼結部3が形成される。焼結時、焼結部3は、隣接する凝固部2に結合される。
【0089】
以上の造形工程により、粉末層35に加工部U1が形成される。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、凝固工程S8及び焼結工程S801)とを繰り返す。第nmax層の加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、構造体1が完成する。完成された構造体1は、粉末層35から取り出される(S12)。
【0090】
なお、図20では凝固工程S8を先に実行し、その後、焼結工程S801を実行しているが、焼結工程S801を先に実行し、凝固工程S8を後に実行してもよい。以上の製造方法によっても、構造体1を製造できる。
【0091】
[第3の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態では、構造体1は、複数の凝固部2と、複数の焼結部3とを備える。ここで、複数の焼結部3は、互いにネック32の太さが異なる複数の焼結部を含んでもよい。
【0092】
図21は、本実施の形態における構造体500を説明するための模式図である。図21を参照して、構造体500は、複数のボクセルBCに区画される。各ボクセルBCには、凝固部2及び焼結部3のいずれかが配置される。
【0093】
図21では、構造体500の形状を立方体とし、構造体500を5×5×5のボクセルBCに区画する。しかしながら、構造体500の形状及びボクセルBCの個数は、図21に限定されない。構造体500は、図1に示す形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0094】
複数の焼結部3は、ネック32の太さが異なる複数の焼結部301及び302を含む。図22を参照して、焼結部301のネック32の外径d1の無機粉末粒子31の外径Dに対する比(=d1/D:以下、ネックサイズ比という)は、焼結部302のネックサイズ比(d2/D)よりも小さい。
【0095】
ここで、各焼結部301及び302のネックサイズ比は、次の方法で測定される。各焼結部内の略中央部において、SEM画像を生成する。SEM画像内の所定の領域内における、各ネック32の外径d1を測定する。測定された外径d1の平均を求める。求めた外径d1の平均の無機粉末粒子31に対する比を、ネックサイズ比という。
【0096】
本実施の形態では、上述のとおり、焼結部301のネックサイズ比は、焼結部302のネックサイズ比よりも小さい。したがって、焼結部301の強度(たとえば降伏応力)は、焼結部302の強度よりも小さい。要するに、ネックサイズ比は、強度と相関する。
【0097】
本実施の形態による構造体500は、要するに、強度の異なる複数の焼結部301及び302を有する。そのため、構造体1と比較して、力学特性の制御が容易になる。換言すれば、構造体500は、構造体1と比較して、さらに精度の高い力学特性を得やすい。
【0098】
構造体500は、次の方法で製造される。
【0099】
図23は、構造体500の製造方法の一例を示すフロー図である。図23を参照して、初めに、制御装置60は、構造体500の設計データを作成する(S100)。このとき、構造体500の形状と、構造体500内の凝固部2、焼結部301、焼結部302の配置が決定される。
【0100】
次に、制御装置60は、設計データに基づいて、各加工部Unの加工条件データを作成する(S2)各加工部Unは、凝固部2、焼結部301及び302を含む。凝固部2の加工条件の設定方法(S201)は、第2の実施の形態と同じである。
【0101】
焼結部3(焼結部301及び302)の加工条件の設定方法(S202)は、次のとおり実施する。焼結部302の加工条件の設定方法は、第2の実施の形態と同様である。一方、焼結部301の加工条件は設定されない。より具体的には、焼結部302を形成するための電子ビーム510のフルエンスは設定されるが、焼結部301を形成するための電子ビーム510のフルエンスは設定されない。したがって、焼結部302が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されるが、焼結部301が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されない。
【0102】
続いて、制御装置60は、ステップS3〜ステップS5の動作を実行し、さらに、粉末層35を形成する(ステップS6:積層工程)。そして、制御装置60は、第1層の加工部U1を形成する(S7、S8及びS810:加工工程)。
【0103】
ステップS8において、制御装置60は、電子ビーム510を照射して凝固部2を形成する。制御装置60はさらに、ステップS810において、凝固部2を形成するときの電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビーム510を、焼結部302が配置されるボクセルBCに照射する。このとき、焼結部302の中間品である準焼結部が形成される。なお、制御装置60は、焼結部301が配置されるボクセルBCには、電子ビーム510を照射しない。
【0104】
以上の造形工程により、粉末層35に加工部U1が形成される。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、S8及びS810)とを繰り返す。第nmax層の加工部Unmaxが形成されたとき(S9でYES)、中間構造体が形成される。中間構造体は、凝固部2と、焼結部302の中間品である準焼結部と、焼結部301が配置されるボクセルBCに配置され、無機粉末粒子31からなる粉末部とを含む。
【0105】
中間構造体を粉末層35から取り出す(S12)。そして、中間構造体を焼結炉に装入し、所定の焼結温度で、中間構造体を加熱する(S300)。このとき、中間構造体内では、焼結部301が配置されるボクセルBCの粉末部内で無機粉末粒子31が焼結して、焼結部301を形成する。さらに、準焼結部において、ネックの成長が進み、焼結部301よりもネックが太い焼結部302が形成される。以上の工程により、構造体500が製造される。
【0106】
本実施の形態による製造方法では、造形工程(S200)で焼結部302の中間品である準焼結部を形成し、焼結工程(S300)で焼結部301及び焼結部302を形成する。このとき、焼結部302は、造形工程(S200)と焼結工程(S300)とで熱を受けるため、焼結部301よりも多くの熱量を受ける。そのため、ネックの太さが異なる焼結部301及び302を構造体500内に形成することができる。
【0107】
後述するとおり、焼結部301及び302は、焼結工程(S300)を省略しても製造することができる。しかしながら、本実施の形態により構造体500を製造した場合、隣接する上下の層(たとえば、加工部Unと加工部Un+1)における焼結部同士の結合が、より強固になる。層間の結合は、焼結工程(S300)により強固になるためである。
【0108】
[第4の実施の形態]
構造体500は、上述の焼結工程を省略して製造することもできる。この場合、上述の造形工程において、電子ビームの強度を調整して、焼結部301及び302を製造する。
【0109】
図24は、本実施の形態による構造体500の製造方法のフロー図である。図24を参照して、ステップS2で、制御装置60は、凝固部2の加工条件データと、焼結部301の加工条件データと、焼結部302の加工条件データとを作成する。このとき、焼結部301を形成するときの電子ビームのフルエンスを、焼結部302を形成するときの電子ビームのフルエンスよりも小さく設定する。要するに、本実施の形態では、フルエンスの異なる3種類の電子ビームを設定する。
【0110】
設定された電子ビームのフルエンスに基づいて、造形工程(S200)中のステップS8〜S811において、凝固部2と、焼結部302と、焼結部301とを形成する。具体的には、ステップS8において、最も高いフルエンスの電子ビームで凝固部2を形成する。次に、ステップS801において、凝固部2を形成する電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビームで焼結部302を形成する。さらに、ステップS802において、焼結部302を形成する電子ビームよりも低いフルエンスの電子ビームで焼結部301を形成する。以降、制御装置60は、第nmax層の加工部Unmaxが形成されるまで(S9)、積層工程(S6)と加工工程(S7、S8及びS801、S810、S811)とを繰り返す。以上の工程により構造体500が製造される。本実施の形態では、構造体500を製造するとき、焼結工程(S300)を省略できる。
【0111】
[第5の実施の形態]
構造体1及び構造体500ではさらに、ボクセルBCに、未溶解及び未焼結の無機粉末粒子からなる粉末部が収納されていてもよい。要するに、本実施の形態による構造体は、凝固部2と、焼結部3と、無機粉末粒子が収納された粉末部とを備えてもよい。無機粉末粒子の粉末部のヤング率は、焼結部3よりも低い。そのため、凝固部2と、焼結部3と、粉末部とを組み合わせることにより、構造体内の力学特性をさらに精度高く調整することができ、構造体の用途に応じて、最適な力学特性が得やすくなる。複数の焼結部3が、強度(ネックの太さ)の異なる複数の焼結部301及び302を含む場合はさらに、構造体内の力学特性をより精度高く調整することができる。
【0112】
このような粉末部を備える構造体は、第2及び第4の実施の形態の製造方法に準じて製造することができる。本実施の形態による構造体の製造方法を、図24を参照して説明する。
【0113】
ステップS100において、制御装置60は、複数のボクセルBCにおける凝固部2、焼結部301、焼結部302及び粉末部の配置を決定する。次に、ステップS2において、制御装置60は、凝固部2、焼結部301、302の加工条件データを作成する。このとき、粉末部が配置されるボクセルBCには、加工条件が設定されない。したがって、加工工程(S7、S8、S810及びS811)において、粉末部が配置されるボクセルBCには、電子ビームが照射されない。
【0114】
したがって、ステップS2で設定された加工条件にしたがって、ステップS6〜ステップS11、S810及びS811の工程を繰り返せば、凝固部2と、焼結部3(焼結部301及び302)と、粉末部とを含む構造体が製造される。
【0115】
[構造体の用途]
本実施の形態による構造体は、種々の力学特性が要求される様々な用途に利用可能である。構造体はたとえば、上述のとおり、医用インプラントに利用可能である。本実施の形態によれば、生体骨の力学特性に近似した力学特性を有する構造体を製造できる。
【0116】
構造体はさらに、自動車や航空機、船舶、鉄道等の移動体及び産業機械等にも利用できる。本実施の形態によれば、移動体及び産業機械の種類及び適用部位に応じて、構造体の力学特性(強度、応力−歪み特性、剛性、衝撃吸収性等)を調整できる。
【0117】
なお、上述の実施の形態では、設計工程S100は制御装置60により実施される。しかしながら、設計工程S100は、制御装置60以外の他の装置で実施してもよい。たとえば、積層造形装置50とは異なるコンピュータにより、設計工程を実施してもよい。
【0118】
[まとめ]
以上のとおり、本実施の形態における構造体の製造方法では、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する加工工程と、加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、加工工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、中間構造体を加熱して粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える。
【0119】
この場合、構造体の用途に応じて、区画された複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定して構造体を製造できる。したがって、構造体の用途に応じて構造体の力学特性を容易に制御できる。
【0120】
好ましくは、加工工程ではさらに、粉末層のうち焼結部が配置される複数の領域のうちのいくつかに対して、第1ビームよりもフルエンスが低い第2ビームを照射し、無機粉末粒子を焼結して準焼結部を形成し、形成工程では、凝固部と、準焼結部と、粉末部とを含む中間構造体を形成し、焼結工程では、中間構造体を加熱して、凝固部と、粉末部の無機粉末粒子が加熱により焼結されて形成される第1焼結部と、準焼結部が加熱によりさらに焼結されて形成される第2焼結部とを備える構造体を形成する。
【0121】
この場合、強度の異なる複数種類の焼結部を形成できる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0122】
本実施の形態による構造体の製造方法は、無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、構造体の形状を特定する工程と、特定された形状を複数の領域に区画する工程と、構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、荷重条件において各領域の力学特性を求める工程と、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部及び焼結部の配置を決定する配置決定工程と、無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、粉末層のうち凝固部が配置される領域に凝固用ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、凝固部を形成する凝固工程と、粉末層のうち焼結部が配置される領域に凝固用ビームよりもフルエンスの低い焼結用ビームを照射して無機粉末粒子を焼結し、焼結部を形成する焼結工程と、凝固工程及び焼結工程後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、凝固工程、焼結工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部とを含む構造体を形成する形成工程とを備える。
【0123】
この場合、焼結炉での焼結工程を実施することなく、ビームの強度を変えることにより、凝固部と焼結部とを含む構造体を製造できる。
【0124】
好ましくは、焼結部は、第1焼結部と、第1焼結部よりも低い強度を有する第2焼結部とを含み、焼結用ビームは、第1ビームと、第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームとを含み、上記焼結工程は、粉末層のうち第1焼結部が配置される領域に第1ビームを照射して第1焼結部を形成する工程と、粉末層のうち第2焼結部が配置される領域に第2ビームを照射して第2焼結部を形成する工程とを備える。
【0125】
この場合、焼結炉での焼結工程を実施することなく、強度の異なる複数種類の焼結部を形成できる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0126】
好ましくは、構造体はさらに、無機粉末粒子からなる粉末部を備え、配置決定工程では、領域の力学特性に基づいて、複数の領域における凝固部、焼結部及び粉末部の配置を決定し、形成工程では、凝固工程、焼結工程及び積層工程を繰り返して、凝固部と、焼結部と、粉末部とを含む構造体を形成する。
【0127】
この場合、凝固部、焼結部及び粉末部といった、力学特性の異なる構成を、構造体内に区画された複数の領域に配置することができる。そのため、構造体の力学特性をより精度高く制御できる。
【0128】
本実施の形態による構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の第1焼結部と、無機粉末粒子が焼結されて形成され、前記第1焼結部よりも低い強度を有する複数の第2焼結部とを備える。
【0129】
この場合、構造体は、凝固部、第1焼結部、第2焼結部といった力学特性の異なる構成を備える。そのため、所望の力学特性を得やすくなる。
【0130】
好ましくは、第1焼結部は、積層造形法においてビームを無機粉末粒子に照射して形成される準焼結部を、所定の焼結温度で加熱して形成され、第2焼結部は、無機粉末粒子を前記焼結温度で加熱して形成される。
【0131】
この場合、凝固部、第1及び第2焼結部を容易に製造できる。
【0132】
好ましくは、第1焼結部は、積層造形法において第1ビームを無機粉末粒子に照射して形成され、第2焼結部は、積層造形法において、第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームを無機粉末粒子に照射して形成される。
【0133】
この場合、焼結工程を省略できる。
【0134】
本実施の形態による構造体は、無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部と、無機粉末粒子からなる複数の粉末部とを備える。
【0135】
この場合、構造体は、凝固部、焼結部、粉末部といった力学特性の異なる構成を備える。そのため、所望の力学特性を得やすくなる。
【0136】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明による構造体は、種々の力学特性が要求される種々の分野に利用可能である。特に、自動車や航空機、船舶、鉄道等の移動体や産業機械、医用インプラントに利用可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,500 構造体
2 凝固部
3,301,302 焼結部
10,20 微小構造体
31 無機粉末粒子
32 ネック
35 粉末層
50 積層造形装置
60 制御装置
100 中間構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、前記無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、
前記構造体の形状を特定する工程と、
特定された前記形状を複数の領域に区画する工程と、
前記構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、
前記荷重条件において前記各領域の力学特性を求める工程と、
前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部及び前記焼結部の配置を決定する工程と、
前記無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、前記凝固部を形成する加工工程と、
前記加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、
前記加工工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、
前記中間構造体を加熱して前記粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体の製造方法であって、
前記加工工程ではさらに、前記粉末層のうち前記焼結部が配置される複数の領域のうちのいくつかに対して、前記第1ビームよりもフルエンスが低い第2ビームを照射し、無機粉末粒子を焼結して準焼結部を形成し、
前記形成工程では、前記凝固部と、前記準焼結部と、前記粉末部とを含む中間構造体を形成し、
前記焼結工程では、前記中間構造体を加熱して、凝固部と、前記粉末部の無機粉末粒子が加熱により焼結されて形成される第1焼結部と、準焼結部が加熱によりさらに焼結されて形成される第2焼結部とを備える構造体を形成する、構造体の形成方法。
【請求項3】
無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、前記無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、
前記構造体の形状を特定する工程と、
特定された前記形状を複数の領域に区画する工程と、
前記構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、
前記荷重条件において前記各領域の力学特性を求める工程と、
前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部及び前記焼結部の配置を決定する配置決定工程と、
無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記凝固部が配置される領域に凝固用ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、前記凝固部を形成する凝固工程と、
前記粉末層のうち前記焼結部が配置される領域に前記凝固用ビームよりもフルエンスの低い焼結用ビームを照射して無機粉末粒子を焼結し、前記焼結部を形成する焼結工程と、
前記凝固工程及び焼結工程後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、
前記凝固工程、前記焼結工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部とを含む構造体を形成する形成工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の構造体の製造方法であって、
前記焼結部は、
第1焼結部と、
前記第1焼結部よりも低い強度を有する第2焼結部とを含み、
前記焼結用ビームは、
第1ビームと、
前記第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームとを含み、
前記焼結工程は、
前記粉末層のうち前記第1焼結部が配置される領域に前記第1ビームを照射して前記第1焼結部を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記第2焼結部が配置される領域に前記第2ビームを照射して前記第2焼結部を形成する工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の構造体の製造方法であって、
前記構造体はさらに、無機粉末粒子からなる粉末部を備え、
前記配置決定工程では、前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部、前記焼結部及び前記粉末部の配置を決定し、
前記形成工程では、前記凝固工程、前記焼結工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部と、前記粉末部とを含む構造体を形成する、構造体の製造方法。
【請求項6】
無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の第1焼結部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成され、前記第1焼結部よりも低い強度を有する複数の第2焼結部とを備える、構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の構造体であって、
前記第1焼結部は、積層造形法においてビームを無機粉末粒子に照射して形成される準焼結部を、所定の焼結温度で加熱して形成され、
前記第2焼結部は、無機粉末粒子を前記焼結温度で加熱して形成される、構造体。
【請求項8】
請求項6に記載の構造体であって、
前記第1焼結部は、積層造形法において第1ビームを無機粉末粒子に照射して形成され、
前記第2焼結部は、積層造形法において、前記第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームを無機粉末粒子に照射して形成される、構造体。
【請求項9】
無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部と、
無機粉末粒子からなる複数の粉末部とを備える、構造体。
【請求項1】
無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、前記無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、
前記構造体の形状を特定する工程と、
特定された前記形状を複数の領域に区画する工程と、
前記構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、
前記荷重条件において前記各領域の力学特性を求める工程と、
前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部及び前記焼結部の配置を決定する工程と、
前記無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記凝固部が配置される領域に第1ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、前記凝固部を形成する加工工程と、
前記加工後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、
前記加工工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部に対応する領域に配置される無機粉末粒子からなる粉末部とを含む中間構造体を形成する形成工程と、
前記中間構造体を加熱して前記粉末部の無機粉末粒子を焼結して焼結部を形成する焼結工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体の製造方法であって、
前記加工工程ではさらに、前記粉末層のうち前記焼結部が配置される複数の領域のうちのいくつかに対して、前記第1ビームよりもフルエンスが低い第2ビームを照射し、無機粉末粒子を焼結して準焼結部を形成し、
前記形成工程では、前記凝固部と、前記準焼結部と、前記粉末部とを含む中間構造体を形成し、
前記焼結工程では、前記中間構造体を加熱して、凝固部と、前記粉末部の無機粉末粒子が加熱により焼結されて形成される第1焼結部と、準焼結部が加熱によりさらに焼結されて形成される第2焼結部とを備える構造体を形成する、構造体の形成方法。
【請求項3】
無機粉体粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、前記無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部とを含む構造体の製造方法であって、
前記構造体の形状を特定する工程と、
特定された前記形状を複数の領域に区画する工程と、
前記構造体に掛かる荷重条件を設定する工程と、
前記荷重条件において前記各領域の力学特性を求める工程と、
前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部及び前記焼結部の配置を決定する配置決定工程と、
無機粉末粒子からなる粉末層を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記凝固部が配置される領域に凝固用ビームを照射して無機粉末粒子を溶解し、前記凝固部を形成する凝固工程と、
前記粉末層のうち前記焼結部が配置される領域に前記凝固用ビームよりもフルエンスの低い焼結用ビームを照射して無機粉末粒子を焼結し、前記焼結部を形成する焼結工程と、
前記凝固工程及び焼結工程後の粉末層上に新たな粉末層を形成する積層工程と、
前記凝固工程、前記焼結工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部とを含む構造体を形成する形成工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の構造体の製造方法であって、
前記焼結部は、
第1焼結部と、
前記第1焼結部よりも低い強度を有する第2焼結部とを含み、
前記焼結用ビームは、
第1ビームと、
前記第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームとを含み、
前記焼結工程は、
前記粉末層のうち前記第1焼結部が配置される領域に前記第1ビームを照射して前記第1焼結部を形成する工程と、
前記粉末層のうち前記第2焼結部が配置される領域に前記第2ビームを照射して前記第2焼結部を形成する工程とを備える、構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の構造体の製造方法であって、
前記構造体はさらに、無機粉末粒子からなる粉末部を備え、
前記配置決定工程では、前記領域の力学特性に基づいて、前記複数の領域における前記凝固部、前記焼結部及び前記粉末部の配置を決定し、
前記形成工程では、前記凝固工程、前記焼結工程及び前記積層工程を繰り返して、前記凝固部と、前記焼結部と、前記粉末部とを含む構造体を形成する、構造体の製造方法。
【請求項6】
無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の第1焼結部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成され、前記第1焼結部よりも低い強度を有する複数の第2焼結部とを備える、構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の構造体であって、
前記第1焼結部は、積層造形法においてビームを無機粉末粒子に照射して形成される準焼結部を、所定の焼結温度で加熱して形成され、
前記第2焼結部は、無機粉末粒子を前記焼結温度で加熱して形成される、構造体。
【請求項8】
請求項6に記載の構造体であって、
前記第1焼結部は、積層造形法において第1ビームを無機粉末粒子に照射して形成され、
前記第2焼結部は、積層造形法において、前記第1ビームよりもフルエンスの低い第2ビームを無機粉末粒子に照射して形成される、構造体。
【請求項9】
無機粉末粒子が溶解されて形成される複数の凝固部と、
無機粉末粒子が焼結されて形成される複数の焼結部と、
無機粉末粒子からなる複数の粉末部とを備える、構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−94390(P2013−94390A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239427(P2011−239427)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(508282465)ナカシマメディカル株式会社 (22)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(508282465)ナカシマメディカル株式会社 (22)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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