説明

構造化コポリマーの混合物をベースとする湿潤剤および分散剤

本発明は、ブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーからなる群から選択される2種の構造化線状コポリマーを含有する組成物に関し、これらのコポリマーは、異なる制御重合技術により調製され、これらのコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)は、≧0.25である。本発明はまた、このような混合物の製造ならびに湿潤剤および分散剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の異なる重合技術および異なる分子量分布(多分散性)M/Mの選択により区別され、顔料を処理するための分散剤として、ならびにコーティング材料および成形材料への添加剤として適している2種の線状構造化ポリマーのブレンドに関する。本発明はさらに、湿潤剤および分散剤としてのかかるブレンドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックコポリマーを調製するために適した様々な制御重合方法が開発されている。これらの方法には、例えば、ある種の重合調節剤を使用する場合に、MADIXおよび付加フラグメンテーション連鎖移動とも呼ばれる可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)方法が包含される。RAFTは、例えば、非特許文献1及び2、特許文献1〜4に記載されている。制御重合の他の方法は、ニトロキシル化合物を重合調節剤(NMP)として使用し、例えば、非特許文献3に開示されている。原子移動ラジカル重合(ATRP)も同様に、制御重合を可能にし、例えば、非特許文献4に記載されている。他の制御重合方法の例は、例えば、非特許文献5に開示されているグループ移動重合(GTP);例えば、非特許文献6に記載されているテトラフェニルエタンでの制御ラジカル重合;例えば、非特許文献7に記載されている重合調節剤として1,1−ジフェニルエテンを用いる制御ラジカル重合;例えば、非特許文献8に開示されているイニファーテルン(Inifertern)を用いる制御ラジカル重合;および例えば、非特許文献9から知られている有機コバルト錯体を用いる制御ラジカル重合である。
【0003】
特許文献5〜20などの様々な刊行物が、制御重合方法を使用して得られるブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーの湿潤剤および分散剤としての使用を記載している。
【0004】
以下、該ブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーを、構造化コポリマーと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6291620号明細書
【特許文献2】WO98/01478号パンフレット
【特許文献3】WO98/58974号パンフレット
【特許文献4】WO99/31144号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6849679号明細書
【特許文献6】米国特許第4656226号明細書
【特許文献7】米国特許第4755563号明細書
【特許文献8】米国特許第5085698号明細書
【特許文献9】米国特許第5160372号明細書
【特許文献10】米国特許第5219945号明細書
【特許文献11】米国特許第5221334号明細書
【特許文献12】米国特許第5272201号明細書
【特許文献13】米国特許第5519085号明細書
【特許文献14】米国特許第5859113号明細書
【特許文献15】米国特許第6306994号明細書
【特許文献16】米国特許第6316564号明細書
【特許文献17】米国特許第6413306号明細書
【特許文献18】WO01/44389号パンフレット
【特許文献19】WO03/046029号パンフレット
【特許文献20】欧州特許第1416019号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Polym.Int.2000年、49、993、Aust.J.Chem 2005年、58、379
【非特許文献2】J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2005年、43、5347
【非特許文献3】Chem.Rev.2001年、101、3661
【非特許文献4】Chem.Rev.2001年、101、2921
【非特許文献5】O.W.Webster、「Group Transfer Polymerization」(「Εncyclopedia of Polymer Science and Engineering」、Volume7、H.F.Mark、N.M.Bikales、C.G.OverbergerおよびG.Menges編、Wiley Interscience、New York、1987年、580頁〜
【非特許文献6】Macromol.Symp.1998年、111、63
【非特許文献7】Macromolecular Rapid Communications、2001年、22、700
【非特許文献8】Macromol.Chem.Rapid.Commun.1982年、3、127
【非特許文献9】J.Am.Chem.Soc.1994年、116、7973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような構造化コポリマーの使用にも関わらず、ランダムコポリマーに比較して、より良好な分散剤に対する至急な必要性が、特に、これらの湿潤剤および分散剤を使用して製造される顔料コンセントレートと様々な希釈バインダーとの相容性を改善するための必要性が継続している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、2種の異なる制御重合技術により調製され、異なる分子量分布(M/M)を有することを特徴とする2種の線状構造化コポリマーのブレンドは、顔料コンセントレート、インクまたは液体コーティング材料中の顔料分散液の有効な安定化および対応する粘度低下を、先行技術の湿潤剤および分散剤よりも幅広い様々なバインダー系の相容性と共に兼備していることが判明した。
【0009】
米国特許第6455628号明細書は、顔料の濡れを改善することで水性顔料コンセントレートを製造する際の分散時間を低減する、ブロックコポリマーとランダムコポリマーとの組合せを記載している。しかしながら、これは、これらの顔料コンセントレートと様々な希釈系とのより幅広い相容性を達成していない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のブレンドまたは組成物は、ブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーからなる群から選択される少なくとも2種の構造化線状コポリマーを含むものであり、ここで、これらのコポリマーは、異なる制御重合技術により調製され、これらのコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)は、≧0.25である。
【0011】
これらのブレンドは、そのポリマー構造、分子量およびモノマー組成において異なる2種のコポリマーを含んでもよい。
【0012】
本発明のブレンドの構造化コポリマーは、グラジエントコポリマーおよび線状ブロックコポリマーである。
【0013】
本発明のブレンドのグラジエントコポリマーは、ポリマー鎖に沿って、その始点からその終点へと、一方のエチレン系不飽和モノマーまたは一方のエチレン系不飽和モノマーの混合物の濃度が連続的に低下し、他方のエチレン系不飽和モノマーまたは他方のエチレン系不飽和モノマーの混合物の濃度が増大する線状コポリマーである。この種のグラジエントコポリマーは、例えば、特許文献20および特許文献18に記載されている。本発明ではまた、本発明の組成物の両方の構造化線状コポリマーがグラジエントコポリマーであることも可能である。
【0014】
本発明のポリマーブレンドのブロックコポリマーは、少なくとも2種の異なるエチレン系不飽和モノマー、2種の異なるエチレン系不飽和モノマーの混合物または1種のエチレン系不飽和モノマーと1種のエチレン系不飽和モノマーの混合物を、制御重合を実行する間の異なる時点で加えることにより得られる線状コポリマーであるが、ここで、1種のエチレン系不飽和モノマーまたは1種のエチレン系不飽和モノマーの混合物を反応容器に、反応の開始時に加えておくことが可能である。さらなるエチレン系不飽和モノマーを、もしくはエチレン系不飽和モノマーの混合物を加える場合に、または2回以上の添加でエチレン系不飽和モノマーを加える場合に、反応容器に存在するエチレン系不飽和モノマーは、既に完全に反応していてよいし、またはそうでなければ、まだ部分的に存在していてもよい。この種の調製方法の結果として、このようなブロックコポリマーは、ポリマー鎖に沿って、エチレン系不飽和モノマーの組成に少なくとも1つの鋭い変更点を含有し、これは、個々のブロック間の境界を示している。このようなブロックコポリマー構造は、例えば、本発明で使用することができる、AB−ジブロックコポリマーおよびABA−またはABC−トリブロックコポリマーである。これらブロックコポリマー構造の例は、特許文献5〜19に記載されている。本発明で使用されるブロックコポリマーは、1ブロック当たりの共重合されたエチレン系不飽和モノマーの最小数3のブロックを含有する。1ブロック当たりの共重合されたエチレン系不飽和モノマーの最小数は、好ましくは3、より好ましくは5、特に好ましくは10である。好ましい一実施形態では、本発明の組成物の構造化線状コポリマーは両方とも、ブロックコポリマーであり、好ましくは、AB、ABAおよびABCブロックコポリマーからなる群から選択される。しかしながら、2種のコポリマーのうちの一方がグラジエントコポリマーであり、他方がブロックコポリマーであることも可能である。ブロックコポリマーが単独で、またはグラジエントコポリマーと共に使用される場合、少なくとも1種のブロックコポリマーは、好ましくは、AB構造を有する。
【0015】
少なくとも1種のブロックが少なくとも2種の異なる共重合されたエチレン系不飽和モノマーからなるブロックコポリマーが、特に好ましい。好ましくは、ブロックコポリマー内の全てのブロックがそれぞれ、少なくとも2種の異なる共重合されたエチレン系不飽和モノマーを含有する。特に好ましくは、ブロックはそれぞれ、少なくとも3種、4種または5種の異なる共重合されたモノマーを含有する。
【0016】
本発明のブレンドの個々のポリマーは、好ましくは、1000から20000g/モル、より好ましくは2000から20000g/モル、特に好ましくは2000から15000g/モルの数平均分子量Mを有する。
【0017】
さらに、本発明のコポリマーブレンド中の個々のポリマーは、好ましくは1.05から4.0の範囲の異なる分子量分布M/Mにより区別される。この場合、個々のコポリマー間の分子量分布の差(多分散性)Δ(M/M)は、少なくとも0.25である。
【0018】
本発明のポリマーブレンドの構造化コポリマーは、好ましくは、アミノ含有エチレン系不飽和モノマーの群および/または酸官能性エチレン系不飽和モノマーの群からの極性エチレン系不飽和モノマーならびにまた、塩を形成するアミノ基および/または酸基の反応生成物を含有する。
【0019】
アミノ基を含有するエチレン系不飽和モノマーには、(メタ)アクリレートとの表記がアクリレートだけでなく、メタクリレートも包含するリストで、例えば、次のものが挙げられる:例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;または例えば、4−ビニルピリジンおよびビニルイミダゾールなどの塩基性ビニル複素環。
【0020】
アミノ基を含有するエチレン系不飽和モノマーはまた、ポリマー鎖の合成後のポリマー類似反応により生じさせることができる。例えば、メタクリル酸グリシジルなどのオキシラン含有エチレン系不飽和モノマーを、重合後にアミンと反応させることができる。
【0021】
塩を形成するアミノ含有エチレン系不飽和モノマーの反応生成物は、例えば、米国特許第6111054号明細書に記載されているように、例えば、カルボン酸、スルホン酸またはリン酸およびそのエステルを使用して、ポリマーに結合しているアミノ基を塩類化(Versalzung)することにより得ることができる。
【0022】
さらに、例えば塩化ベンジルで、またはオキシランとカルボン酸との組合せでアミノ基をアルキル化反応で塩類化して、第4級アンモニウム基を形成することができる。第3級アミンを、酸素、過カルボン酸などのペルオキソ化合物を使用して、かつ過酸化水素を使用して、酸化アミンに変換することができ、加えてこれを、例えば塩酸などの酸を使用して塩類化することができる。
【0023】
これらの反応は、重合の後にポリマー類似反応として実施することができ;別法では、塩をもたらすアミノ含有エチレン系不飽和モノマーの反応生成物を、重合で直接使用することができる。
【0024】
重合でモノマーとして直接使用することができる反応生成物の例は、2−トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートクロリド、3−トリメチルアンモニオプロピル(メタ)アクリルアミドクロリドおよび2−ベンジルジメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートクロリドである。
【0025】
酸官能性エチレン系不飽和モノマーの例としては、次のものが挙げられる:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸および4−ビニル安息香酸などのカルボン酸基を含有するエチレン系不飽和モノマー;例えば、4−ビニルベンゼンスルホン酸、2−メチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸および3−(アクリロイルオキシ)−プロパンスルホン酸などのスルホン酸基を含有するエチレン系不飽和モノマー;ならびに例えば、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸およびビニリデンジホスホン酸などのリンを含有する酸性エチレン系不飽和モノマー。
【0026】
酸基を含有するエチレン系不飽和モノマーはまた、ポリマー鎖の合成後のポリマー類似反応によって生じさせることもできる。
【0027】
酸官能性エチレン系不飽和モノマーの塩は、例えば、塩基との反応により得ることができる。適切な塩基の例としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)プロパン−1−オール、トリエチルアミン、ブチルアミンおよびジブチルアミンなどのアミン;例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの元素周期表の第1から3主族の金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩ならびに例えば、イミダゾールなどの複素環式窒素化合物が挙げられる。
【0028】
エチレン系不飽和モノマー中のヒドロキシル基を、例えば、ポリリン酸と反応させて、リン酸エステルを得ることができる。同じことが、エチレン系不飽和モノマー中のオキシラン構造およびオルトリン酸に当てはまる。
【0029】
さらに、カルボン酸官能基を、エステル含有エチレン系不飽和モノマーから形成することができる。この場合、例えば(メタ)アクリル酸アルキルなどのエステルを酸触媒と反応させて、カルボン酸官能基を得ることができるか、または塩基を使用する場合には、加水分解により反応させて、その対応する塩を形成することができる。
【0030】
また、水、一価アルコールまたはポリエーテルなどのヒドロキシ官能性化合物との反応により、例えば無水マレイン酸などの酸無水物から、ポリマー中に酸官能基を生じさせることが可能である。
【0031】
前記の反応は全て、重合後に、ポリマー類似反応として実施することができる。別法では、塩を形成する酸官能性エチレン系不飽和モノマーの反応生成物を、重合で使用することができる。重合でモノマーとして直接使用されるこの種の反応生成物の例は、上記で述べたが、また例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、ナトリウムトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、カリウム(3−スルホプロピル)(メタ)アクリレート、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムおよびジカリウムビス(3−スルホプロピル)−イタコネートであってもよい。
【0032】
構造化コポリマーを合成するために使用することができるさらなるエチレン系不飽和モノマーには、次のものが包含される:例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの1から22個の炭素原子を有する線状、分枝鎖または脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸アルキル;アリール基がそれぞれ非置換であるか、例えば、メタクリル酸4−ニトロフェニルのように4回まで置換されていてよい、メタクリル酸ベンジルまたはアクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;例えば、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、モノメタクリル酸3,4−ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、モノメタクリル酸2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオールなどの2から36個の炭素原子を有する線状、分枝鎖または脂環式ジオールの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシメトキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルオキシメチル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸アリルオキシメチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシブチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメ
チル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルなどの5から80個の炭素原子を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは混合ポリエチレン/プロピレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシが好ましくは、2から8個の炭素原子を有する線状、分枝鎖または脂環式ジオールに由来する220から1200の数平均分子量Mを有するカプロラクトン−および/またはバレロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;例えば、6から20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸ペルフルオロアルキルなどのハロゲン化アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;例えば、メタクリル酸2,3−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチルおよび(メタ)アクリル酸グリシジルなどのオキシラン含有(メタ)アクリル酸エステル;例えば、4−メチルスチレンなどのスチレンおよび置換スチレン;メタクリロトリルおよびアクリロニトリル;例えば、1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−2−イミダゾ−リジノンおよびN−ビニルピロリドンなどの非塩基性ビニル複素環;例えば、酢酸ビニルなどの1から20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル;例えば、N−エチルマレイミドおよびN−オクチルマレイミドなどの1から22個の炭素原子を有する線状、分枝鎖または脂環式アルキル基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミドおよびN−置換マレイミド;(メタ)アクリルアミド;例えば、N−(tert−ブチル)アクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミドなどの1から22個の炭素原子を有する線状、分枝鎖または脂環式アルキル基を有するN−アルキル−およびN,N−ジアルキル置換アクリルアミド;ならびに例えば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルおよびメタクリル酸3−(トリメチルシリル)プロピルなどのシリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル。
【0033】
重合が生じた後に、続いて、上記のエチレン系不飽和モノマーをポリマー中でも、ポリマー類似反応で変化させることができる。例えば、ポリマー中のオキシラン構造を、4−ニトロ安息香酸などの求核試薬を使用して変換することができる。ポリマーに導入されたエチレン系不飽和モノマーのヒドロキシル官能基を、例えばε−カプロラクトンなどのラクトンを使用してポリエステルに変換することができる。ビニルエステルモノマーを含有するポリマーの場合には、これらのエステル官能基から、酸触媒または塩基触媒エステル分解を介して、アルコール官能基を生じさせることができる。
【0034】
本発明のコポリマーを調製するために使用される一官能性開始剤は、一方向のみの生長反応でポリマー鎖を作り始める。個々のリビング制御重合方法で使用される一官能性開始剤は、当業者に知られている。使用することができる開始剤の例として、アゾジイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤、過酸化ベンゾイルおよび過酸化ジクミルなどの過酸化化合物ならびにペルオキソ二硫酸アンモニウム、ナトリウムおよびカリウムなどの過硫酸を挙げることができる。
【0035】
異なる重合技術により、コポリマー中に、共重合されたエチレン系不飽和モノマーの異なる微細構造および/または配列がもたらされるので、重合技術に応じて、同一のエチレン系不飽和モノマーを、同じモル比で使用しても、異なるコポリマーが得られる。例えば、異なる技術を使用して、ブロックコポリマー中のブロックを調製すると、同一のモノマー混合物を使用しても、異なる微細構造を有するブロックが得られる。調製技術の結果としての異なる微細構造化に加えて、得られたコポリマーは、また、分子量および分子量分布が著しく異なりうる。同じことがまた、グラジエントコポリマーにも当てはまる。
【0036】
本発明の組成物で使用するコポリマーを調製するために使用することができる重合技術は、全ての先行技術のリビング制御重合技術であり、ここで、例は、RAFT、MADIX、NMP、ATRP、GTP、テトラフェニルエタンを用いる制御ラジカル重合、1,1−ジフェニルエテンを用いる制御ラジカル重合、イニファーテルン(Iniferte
rn)を用いる制御ラジカル重合および有機コバルト錯体を用いる制御ラジカル重合である。
【0037】
重合調節剤および開始剤の例は、上記の文献に挙げられている。
【0038】
NMPの場合には、さらに、例えば、非特許文献3、「V.Approaches to Alkoxyamines」またはAngewandte Chemie Int.Ed.2004年、43、6186に記載されている開始剤と重合調節剤とのNMP付加物を使用することが可能である。
【0039】
重合は、無溶媒で、バルクで、または有機溶媒および/もしくは水中で実施することができる。溶媒を使用する場合、重合を、溶媒中の溶液の形態でポリマーを伴う慣用の溶液重合として、または例えば、Angewandte Chemie Int.Ed.2004年、43、6186およびMacromolecules 2004年、37、4453に記載されているように、エマルションまたはミニエマルション重合として行うことができる。得られたエマルションポリマーまたはミニエマルションポリマーを、塩類化(Salzbildung)により水溶性にして、均一なポリマー溶液が形成するようにすることができる。しかしながら、塩類化の後に、ポリマーがまだ水に不溶性であることもある。
【0040】
この場合、得られたコポリマーは、末端基としての重合調節剤を介して、自動的に規定されるものではない。重合の後に、例えば、末端基を完全に、または部分的に除去することができる。したがって、例えば、NMPにより調製されたポリマーのニトロキシル末端基の熱除去を、温度を重合温度より上に昇温させることにより実施することが可能である。重合調節剤のこの除去は、また、重合禁止剤、例えば、フェノール誘導体などの他の化合物を加えることにより、またはMacromolecules 2001年、34、3856に記載されている方法により行うことができる。
【0041】
RAFT調節剤は、ポリマーの温度を上昇させることにより熱で除去することができ、過酸化水素、過酸、オゾンまたは他の漂白剤などの酸化剤を加えることによりポリマーから除去することができ、または、アミンなどの求核試薬と反応させて、チオール末端基を形成することができる。
【0042】
さらに、ATRPにより生じたハロゲン末端基を、脱離反応により除去するか、または置換反応により、他の末端基に変換することができる。このような変換の例は、非特許文献4に記載されている。
【0043】
こうして得られたコポリマーは、ポリマー溶液を加熱することにより促進される混合操作で、本発明のポリマーブレンドに変換される。2種のコポリマーを使用する場合、2種のコポリマー相互の重量比は好ましくは、5:95から95:5、より好ましくは10:90から90:10、特に好ましくは20:80から80:20である。
【0044】
本発明の組成物は好ましくは、重合の間に停止反応により形成された1種または複数のランダムコポリマーまたはホモポリマーを10重量%以下、より好ましくは5重量%以下および特に好ましくは1重量%以下含有する。理想的なシナリオでは、本発明の組成物は、ランダムコポリマーおよびホモポリマーを含有しないか、実質的に含有しない。
【0045】
本発明のコポリマーブレンドは、既知の分散剤の先行技術に従って、本発明による分散剤をその先行技術の対応品の代わりに使用することができる。したがって、例えば、これらは、塗料、印刷インク、インクジェットインク、紙用コーティング、皮革着色剤および
テキスタイル着色剤、ペースト、顔料コンセントレート、セラミック、化粧品を調製または加工する際に、特にこれらが顔料および/または充填材などの固体を含有する場合に、使用することができる。これらはまた、例えば、ポリ塩化ビニル、飽和または不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの合成、半合成または天然高分子化合物をベースとするキャスティングおよび/または成形材料の調製または加工に関連して使用することができる。例えば、キャスティング材料、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、印刷回路板、工業用塗料、木材および家具用ワニス、車両仕上剤、船舶用塗料、さび止め塗料、缶コーティングおよびコイルコーティング、装飾用塗料ならびに建築用塗料を調製するためにコポリマーブレンドを使用することが可能であり、ここで、バインダーおよび/または溶媒、顔料ならびに任意選択で充填材、コポリマーブレンドおよび典型的な助剤を混合する。典型的なバインダーの例は、ポリウレタン、硝酸セルロース、アセト酪酸セルロース、アルキド、メラミン、ポリエステル、塩化ゴム、エポキシドおよび(メタ)アクリレートをベースとする樹脂である。水ベースのコーティングの例は、例えば車体のための陰極または陽極電着コーティングである。さらなる例は、漆喰(Putze)、ケイ酸塩塗料、エマルション塗料、水希釈可能なアルキドをベースとする水性塗料、アルキドエマルション、ハイブリッド系、二成分系、ポリウレタン分散液およびアクリレート分散液である。
【0046】
本発明のコポリマーブレンドは、例えば顔料コンセントレートなどの固体のコンセントレートを調製するためにも特に適している。この目的のために、本発明のコポリマーブレンドを、有機溶媒、可塑剤および/または水などの担体媒体に始めに導入し、分散される固体を、撹拌しながら加える。加えて、これらのコンセントレートは、バインダーおよび/または他の助剤を包含することができる。しかしながら、本発明のコポリマーブレンドを用いると、特に、安定でバインダーフリーの顔料コンセントレートを調製することが可能である。
【0047】
また、本発明の化合物を使用して、顔料プレスケーキから、固体の流動性コンセントレートを調製することも可能である。この場合、本発明のコポリマーブレンドを、有機溶媒、可塑剤および/または水を追加的に含有してもよいプレスケーキに混合し、生じた混合物は分散している。異なる様々な方法で調製して、次いで、固体のコンセントレートを、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などの様々な基材に導入することができる。しかしながら、また、顔料を、本発明のコポリマーブレンドに直接、溶媒を用いずに分散させることもでき、したがって、熱可塑性および熱硬化性ポリマー処方物を顔料着色するために特に適している。
【0048】
本発明のコポリマーブレンドは、また、液晶ディスプレイ、液晶スクリーン、色解像デバイス、センサー、プラズマスクリーン、SED(表面伝導電子放出ディスプレイ)をベースとするディスプレイ用の色フィルターの製造に関連して、およびMLCC(多層セラミック材料)用に、有利に使用することができる。MLCC技術は、マイクロチップおよび印刷回路板の製造に関連して使用される。
【0049】
本発明のコポリマーブレンドは、また、例えば、メイクアップ品、パウダー、口紅、ヘアカラー、クリーム、マニキュア液および紫外線防止製品などの化粧品を製造するために使用することができる。これらは、例えば、W/OまたはO/Wエマルション、溶液、ゲル、クリーム、ローションまたはスプレーなどの慣用の形態で存在してよい。本発明のコポリマーブレンドは、これらの製品を製造するために使用される分散液で、有利に使用することができる。これらの分散液は、例えば、水、ひまし油またはシリコーン油などの美容術においてこれらの目的のために典型的である担体媒体ならびに例えば、有機顔料および二酸化チタンまたは酸化鉄などの無機顔料などの固体を含有してよい。
【0050】
本発明は、また、基材上に顔料着色コーティングを製造するためのこの種の分散剤の使用を提供するが、ここでは、顔料着色塗料を、基材に施与し、基材に施与された顔料着色塗料を焼き付けるか、または硬化および/または架橋させる。
【0051】
コポリマーブレンドは、単独で、または慣用の先行技術のバインダーと共に使用することができる。ポリオレフィン中で使用するためには、例えば、低分子量の対応するポリオレフィンを担体材料として、コポリマーブレンドと共に使用することが有利である。
【0052】
コポリマーブレンドの本発明の一つの用途は、また、粉末粒子および/または繊維粒子形態の分散性固体、特に分散性顔料またはプラスチック充填材の調製であり、ここで、粒子はコポリマーブレンドでコーティングされる。有機および無機固体上のコーティング物は、例えば、欧州特許出願公開第0270126号明細書に記載されているような既知の方法で製造される。この場合、溶媒またはエマルション媒体を除去するか、混合物中に残してペーストを形成することができる。これらのペーストは、典型的な市販品であり、さらに、バインダーフラクションならびに、さらに追加の助剤および添加剤を包含することもできる。顔料の場合には特に、例えば本発明のコポリマーブレンドを顔料懸濁液に加えることにより、顔料の合成の間もしくはその後に、または顔料仕上げの間もしくはその後に、顔料表面をコーティングすることが可能である。こうして予備処理された顔料は、未処理の顔料に比較して、混和がより容易になることにより区別され、また、改善された、粘度、凝集および光沢挙動により、ならびにより高い色強度により区別される。
【0053】
適切な顔料の例は、モノ−、ジ−、トリ−およびポリ−アゾ顔料、オキサジン、ジオキサジンおよびチアジン顔料、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、ウルトラマリンおよび他の金属錯体顔料、インジゴイド顔料、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キナクリドンおよびメチン顔料、アントラキノン、ピラントロン、ペリレンおよび他の多環式カルボニル顔料である。有機顔料の他の例は、W.HerbstおよびK.Hungerによるモノグラフ、「Industrial Organic Pigments」、1997年(出版社:Wiley−VCH、ISBN:3−527−28836−8)で見ることができる。無機顔料の例は、カーボンブラックをベースとする顔料、グラファイト、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウムおよびアルミニウムをベースとする混合金属酸化物(例は、ニッケルチタンイエロー、ビスマスバナデートモリブデートイエロー、クロムチタンイエローである)、純鉄、酸化鉄および酸化クロムまたは混合酸化物をベースとする磁気顔料、アルミニウム、亜鉛、銅または黄銅を含む金属顔料ならびに、さらに真珠箔顔料ならびに蛍光および燐光発光顔料である。
【0054】
さらなる例は、ある種のグレードのカーボンブラックまたは金属もしくは半金属の酸化物もしくは水酸化物からなる粒子ならびにまた、混合金属および/または半金属の酸化物および/または水酸化物からなる粒子などの100nm未満の粒径を有するナノスケールの有機または無機固体である。例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタンなどの酸化物および/または酸化物−水酸化物などを使用して、この種の極めて微細な固体を調製することが可能である。これらの酸化物または水酸化物または酸化物−水酸化物粒子を製造する処理は、例えば、イオン交換処理、プラズマ処理、ゾル−ゲル法、沈殿、粉砕(例えば、磨砕により)または火炎加水分解などの非常に幅広い様々な方法のいずれかを介して実施することができる。
【0055】
粉末状または繊維状充填材の例は、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、珪質土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、マイカ、パーライト、長石、天然スレート粉、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カルサイト、ドロマイト、ガラスまたは炭素の粉末状または繊維状粒子からなるものである。顔料または充填材のさらなる例は、例えば、欧州特許出願公開第0270126号明細書で見られる。加えて、例えば、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの難燃剤および例えば、シリカなどの艶消し剤も同様に、顕著に分散および安定化させることができる。
【0056】
顔料親和性を備えた基の選択およびエチレン系不飽和モノマーの選択は、分散される顔料により左右され、また、液体媒体およびバインダーによって左右され、場合によって異なり得る。例えば、分散される材料と相互作用するように、モノマーを選択することができる。例えば、酸基は、塩基性顔料表面用の顔料親和性基としてしばしば使用され、塩基性基は、酸性顔料表面用または有機顔料用の顔料親和性基として使用される。水性顔料着色系のための湿潤剤および分散剤では、湿潤剤および分散剤を、酸性基の塩により、水に溶解性にすることが非常に一般的である。
【0057】
さらに本発明は、本発明のコポリマーブレンドならびに1種または複数の顔料、有機溶媒および/または水、また、適切な場合には、バインダーおよび典型的なコーティング助剤を含むコーティング材料、ペーストおよび成形材料を提供する。本発明はさらに、本発明のコポリマーブレンドでコーティングされた顔料を提供する。
【実施例】
【0058】
ポリマーおよび本発明のポリマーブレンドの調製
ポリマー1(比較例、フリーラジカル重合により調製されたランダムコポリマーA)
反応容器中、不活性ガス雰囲気(窒素)下に、酢酸1−メトキシ−2−プロピル41.29gを135℃に加熱する。次いで、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル7.85g、スチレン9.76g、アクリル酸n−ブチル21.4g、アクリル酸2−エチルヘキシル1.58gおよびペルオキシ安息香酸tert−ブチル0.5gの混合物を4時間にわたって計量導入する。後反応時間(Nachreaktionszeit)は、1時間である。その後、酢酸1−メトキシ−2−プロピル8.78gおよびペルオキシ安息香酸tert−ブチル0.2gの混合物を60分間にわたって計量導入する。後反応時間は、2時間である。
=11450g/モル、
/M=2.21。
イオン基の形成:
ポリマー溶液80gを、安息香酸4.88gおよびtert−ブチルフェニルグリシジルエーテル8.72gと120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を、酢酸1−メトキシ−2−プロピルで、固形分50%に調節する。
【0059】
ポリマー2(NMPにより調製されたジブロックコポリマーA)
反応容器中、不活性ガス雰囲気下に、酢酸1−メトキシ−2−プロピル206g、BlocBuilder9.6g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル16g、アクリル酸n−ブチル58.4g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル56.2gおよびスチレン36.8gを115℃に加熱する。反応時間は、5時間である;90%の変換率(H−NMRにより測定)が達成された。次いで、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル48g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル8.0g、スチレン43g、アクリル酸2−エチルヘキシル12.9g、アクリル酸n−ブチル116.46gおよび2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.4gの混合物を60分間にわたって計量導入する。反応時間は、5時間である;92%の変換率(H NMRによ
り測定)が達成された。酢酸1−メトキシ−2−プロピル71.8gおよび2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.6gを60分間にわたって計量導入する。後反応時間は、120分である。ポリマー溶液を、酢酸1−メトキシ−2−プロピルで、固形分50%に調節する。
=6220g/モル、
/M=3.5。
イオン基の形成:
ポリマー溶液200gを、安息香酸9.9gおよびtert−ブチルフェニルグリシジルエーテル17.7gと120℃で2時間反応させる。リシノール脂肪酸5.8gをポリマー溶液に加え、次いでこれを、酢酸1−メトキシ−2−プロピルで、固形分50%に調節する。
【0060】
ポリマー3(RAFTにより調製されたジブロックコポリマーA)
反応容器中、不活性ガス雰囲気下に、酢酸1−メトキシ−2−プロピル284.8gおよびNMAダイマー20.1gを120℃に加熱する。次いで、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25.3g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル89.0g、スチレン58.3g、メタクリル酸n−ブチル92.5gおよび2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.4gの混合物を180分間にわたって計量導入する。反応時間は30分である。メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル12.6g、スチレン68.1g、メタクリル酸2−エチルヘキシル20.4g、メタクリル酸n−ブチル184.5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル76.0gおよび2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4.75gの混合物を90分間にわたって計量導入する。反応時間は30分である。60分間にわたって、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.39gを加える。反応時間は、120分である。
=4400g/モル、
/M=2.6。
イオン基の形成:
ポリマー溶液150gを、安息香酸12.5gおよびtert−ブチルフェニルグリシジルエーテル22.3gと120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を、酢酸1−メトキシ−2−プロピルで、固形分50%に調節する。
【0061】
ポリマー4(GTPにより調製されたジブロックコポリマーB)
使用される全ての成分を、フラッシュクロマトグラフィーにより塩基性Aloxで精製する。反応装置は、水フリーで、不活性ガス下にある。テトラヒドロフラン115gを1−メトキシ−2−メチル−1−トリメチルシロキシプロペン6gと共に、三つ口フラスコに充填する。アセトニトリル中48%のm−クロロ安息香酸テトラブチルアンモニウム0.6gを加え、その直後に、メタクリル酸メチル28g、メタクリル酸n−ブチル14g、メタクリル酸2−エチルヘキシル14g、メタクリル酸ベンジル7gおよびメタクリル酸エチルトリグリコール7gの混合物を、反応温度が50℃を超えないような速度でゆっくりと滴加する。混合物全体を滴加したら、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル70gを50℃で滴加する。後反応時間は、1時間である。次いで、エタノール6mlを加え、反応は終了する。引き続き、THFを、酢酸1−メトキシ−2−プロピルに置換し、ポリマー溶液を固形分60%に調節する。
=7430g/モル、
/M=1.34。
イオン基の形成:
ポリマー溶液153.15gを、安息香酸24.6gおよびtert−ブチルフェニルグリシジルエーテル44.0gと120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を酢酸1−メトキシ−2−プロピルで、固形分50%に調節する。
【0062】
ポリマー5(ABCトリブロックコポリマー)
反応容器中、不活性ガス雰囲気(窒素)下に、2−メトキシプロパノール17.9g、BlocBuilder4.8g、アクリル酸n−ブチル14.6g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4g、スチレン9.2g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル2gおよびMadquat Bz75 30gを120℃に加熱する。95%の変換率(H−NMRにより測定)が達成されたら、アクリル酸n−ブチル14.6g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4g、スチレン9.2g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル2g、Madquat Bz 75 10.1gおよび2−メトキシプロパノール30gのモノマー混合物を加える。95%の変換率の後に、アクリル酸n−ブチル64.7g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル24g、スチレン21.5g、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル2gおよびMadquat Bz 75 2.8gを加えた。97%の変換率(H−NMRにより測定)の後に、ポリマー溶液を室温に冷却し、2−メトキシプロパノールで、固形分50%に調節する。
=9870g/mol、
/M=1.87。
BlocBuilder:NMP−付加物、製造者:Arkema
MMA−ダイマー:ジメチル2,2−ジメチル−4−メチレンペンタンジオエート(調製に関しては、G.Moad、C.L.Moad、E.Rizzardo、S.H.Thang、Macromolecules 1996年、29、7717〜26参照)。
Madquat Bz 75:2−ベンジルジメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド、水中75%、製造者:Arkema。
【0063】
コポリマーブレンドの組成
ポリマーブレンドM1(M2に対する比較例、ランダムコポリマー1とのブレンド):ポリマー1 50重量%に対してポリマー2 50重量%の比でのポリマー1および2のブレンド。
ポリマーブレンドM2
ポリマー2 50重量%に対してポリマー3 50重量%の比でのポリマー2および3のブレンド。
ポリマーブレンドM3
ポリマー2 50重量%に対してポリマー4 50重量%の比でのポリマー2および4のブレンド。
ポリマーブレンドM4(M3に対する比較例、ランダムコポリマー1とのブレンド):ポリマー1 50重量%に対してポリマー4 50重量%の比でのポリマー1および4のブレンド。
ポリマーブレンドM5
ポリマー4 50重量%に対してポリマー5 50重量%の比でのポリマー4および5のブレンド。
【0064】
性能検査
酸化鉄顔料コンセントレート
酢酸2−メトキシプロピル 26.9
Starsol 3.0
湿潤剤および分散剤 9.6
Bayferrox 130 M 60.0
Aerosil R 972 0.5
100.0
へリオゲンブルー顔料コンセントレート
酢酸2−メトキシプロピル 56.3
Starsol 6.1
湿潤剤および分散剤 13.8
ヘリオゲンブルー7080 23.0
BYK−Synergist 2100 0.8
100.0
分散:40℃および8000rpmで40分、Dispermat CV

Epikoteワニス
Epikote 1001(キシレン中75%) 60.0
キシレン 17.0
2−メトキシプロパノール 12.8
n−ブタノール 10.0
BYK−325 0.2
100.0
硬化剤
Versamid 115/70 71.0
キシレン 12.0
2−メトキシプロパノール 8.0
n−ブタノール 9.0
100.0
【0065】
塗料の希釈および硬化
顔料コンセントレート 2.6
ワニス 18.3
硬化剤 9.1
30.0

Synthalatワニス
Synthalat F 477/55% TB/X中 83.0
Shellsol A 13.5
BorchNox M2 0.4
Octa Soligen 173 2.6
BYK−335 0.2
BYK−066 N 0.3
100.0
塗料の希釈および硬化
顔料コンセントレート 2.6
ワニス 17.4
20.0
【0066】
顔料コンセントレートを、ワニスと共に5分間振盪する。Epikoteワニスの場合には、混合物を、硬化剤を加えた後にもう一度均質化する。施与の後に、練り合わせ検査を行う。塗膜を室温で乾燥させる。
【0067】
Byk Gardnerからのカラーガイド球d/8°スピンを使用して、ΔE値を測定。
【0068】
Starsol ジエステルの混合物、
製造者:Haltermann、
Bayferrox 130 M 酸化鉄顔料、製造者:Lanxess、
Aerosil R 972 疎水性ヒュームドシリカ、
製造者:Degussa、
Epikote 1001 ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応
生成物、製造者:Shell、
BYK−325 変性ポリシロキサン、
製造者:Byk Chemie、
Versamid 115/70 アミン含有ポリアミド、製造者:Cognis
Synthalat F 477 不飽和脂肪酸を伴うアルキド樹脂、
製造者:Synthopol、
Shellsol A 炭化水素、製造者:Shell、
BorchNox M2 ケトキシム、製造者:Borchers、
Octa Soligen 173 脂肪酸のBaおよびCo塩、
製造者:Borchers、
BYK−335 変性ポリシロキサン、
製造者:Byk Chemie、
BYK−066 N 変性ポリシロキサン、
製造者:Byk Chemie、
【0069】
顔料コンセントレートの評価:
【0070】
Bayferrox
【表1】

【0071】
へリオゲンブルー
【表2】

【0072】
24時間後の塗膜の評価
【0073】
Epikote1001中のBayferrox希釈物
【表3】

【0074】
Epikote1001中のヘリオゲンブルー希釈物
【表4】

【0075】
Synthalat F 477中のBayferrox希釈物
【表5】

【0076】
Synthalat F477中のヘリオゲンブルー希釈物
【表6】

【0077】
顔料コンセントレートの評価
【0078】
Bayferrox
【表7】

【0079】
ヘリオゲンブルー
【表8】

【0080】
24時間後の塗膜の評価:
【0081】
Epikote1001中のBayferrox希釈物
【表9】

【0082】
Epikote1001中のヘリオゲンブルー希釈物
【表10】

【0083】
Synthalat F 477中のBayferrox希釈物
【表11】

【0084】
Synthalat F 477中のヘリオゲンブルー希釈物
【表12】

【0085】
希釈物のための評価基準は、次の通り規定された:
【0086】
粘度評価:
1: 高移動性
2: 降伏点を伴う高移動性
3: 高粘稠性
【0087】
凝集評価:
1: 希釈物中に凝縮なし
2: 希釈物中に僅かな凝集
3: 希釈物中に多数の凝集
【0088】
塗料表面の視覚的評価
1: 良好なレベリングを伴う欠陥のない塗料表面
2: 個別の斑点および/または僅かなレベリング欠陥
3: 多くの斑点および/または不良なレベリング、波状の塗料表面が特徴
【0089】
不良な希釈物は、凝集傾向、視覚的評価に関する評価レベル3および/または練り合わせにおいて2を超えるΔEにより特徴づけられる。
【0090】
2種の顔料BayferroxおよびHeliogenblauを伴う希釈物および顔料コンセントレートでは、各ポリマーのためにポリマー1〜5を使用すると、ある場合には、顔料コンセントレートの高い粘度などの有害な特性または斑点もしくは凝集などの希釈物の欠陥品質が少なくとも生じる。
【0091】
ジブロックおよびトリブロックコポリマーの使用では、本発明のポリマーブレンドM2、M3およびM5は、先行技術(個々のポリマーならびにポリマーブレンドM1およびM4)に比較して、選択されたバインダー系の両方で、また顔料の両方で、良好な希釈結果を示す。これらの結果は、本発明のポリマーブレンドのより広い有用性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーからなる群から選択される2種の構造化線状コポリマーを含む組成物であって、これらのコポリマーは、異なる制御重合技術により調製され、これらのコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)が、≧0.25であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
異なる制御重合技術により調製された2種の線状ブロックコポリマーを含み、前記2種のブロックコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)が、≧0.25である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
異なる制御重合技術により調製された2種の線状グラジエントコポリマーを含み、前記2種のグラジエントコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)が、≧0.25である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
異なる制御重合技術により調製された1種の線状ブロックコポリマーおよび1種の線状グラジエントコポリマーを含み、前記2種のコポリマーの多分散性の差Δ(M/M)が、≧0.25である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上の前記ブロックコポリマーが、AB、ABAまたはABCブロックコポリマーである、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
一方のブロックコポリマーが、ABブロックコポリマーであり、他方のブロックコポリマーが、AB、ABAまたはABCブロックコポリマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマーのブロックの少なくとも1種が、少なくとも2種の異なる共重合されたエチレン系不飽和モノマーからなる、請求項1、2および4から6のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項8】
ブロックコポリマー内のブロックが全て、それぞれ少なくとも2種の異なる共重合されたエチレン系不飽和モノマーからなる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記2種の構造化線状コポリマーが、相互に5:95から95:5の重量比で存在する、請求項1から8のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項10】
前記コポリマーの多分散性がそれぞれ、1.05から4の値を有する、請求項1から9のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項11】
前記コポリマーの数平均分子量がそれぞれ、1000から20000g/モルである、請求項1から10のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項12】
前記制御重合技術が、RAFT、NMP、ATRP、GTP、テトラフェニルエタンを用いる制御ラジカル重合、1,1−ジフェニルエテンを用いる制御ラジカル重合、イニファーテルンを用いる制御ラジカル重合および有機コバルト錯体を用いる制御ラジカル重合からなる群から選択される、請求項1から11のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項13】
湿潤剤および分散剤である、請求項1から12のうちの一項または複数項に記載の組成物。
【請求項14】
10重量%以下の1種または複数のランダムコポリマーまたはホモポリマーを含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ランダムコポリマーおよびホモポリマーを実質的に含有しない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記コポリマーを溶液で、適切な場合には加熱しながらブレンドする、請求項1から15のうちの一項または複数項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項17】
湿潤剤および/または分散剤としての、請求項1から15のうちの一項または複数項に記載されているか、請求項16に記載の方法により得られる組成物の使用。
【請求項18】
前記湿潤剤および/または分散剤を、塗料、インク、紙用コーティング、皮革またはテキスタイル用着色剤、ペースト、顔料コンセントレート、セラミック、化粧品、キャスティングまたは成形材料、液晶ディスプレー、液晶スクリーン、色解像デバイス、センサー、プラズマスクリーン、SEDベースのディスプレーのための色フィルターの製造において、およびMLCCのために使用する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記湿潤剤および/または分散剤を、顔料または充填材をコーティングするために使用する、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記顔料または充填材が、100nm未満の粒径を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1から15のうちの一項または複数項に記載されているか、請求項16に記載の方法により得られる組成物を含む塗料、ペースト、キャスティング材料または成形材料。
【請求項22】
請求項1から15のうちの一項または複数項に記載されているか、請求項16に記載の方法により得られる組成物でコーティングされた顔料または充填材。

【公表番号】特表2010−506016(P2010−506016A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531765(P2009−531765)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008781
【国際公開番号】WO2008/043529
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】