説明

構造材の連結治具

【課題】雌ネジ部をネジに対して容易に位置決めすることができるる連結治具を提供する。
【解決手段】連結治具1,21は、構造材11aの側壁に構造材11bの端部を当接させて垂直に結合する際に、構造材11bに設けられた貫通孔16に挿入される円柱状体2,22であり、雌ネジ部3,23に構造材11aを貫通するネジ18が螺着されることにより両構造材11a,11bを結合する。連結治具1,21は、貫通孔16に挿入されたときに、構造材11bの内壁面19に係止される1対の係止部材5,24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材の連結治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種パネル、パーティション等を形成する際にアルミフレーム等の構造材が用いられている。前記構造材は、例えばアルミニウム等からなる中空角形の長尺体であり、両端に開口端部を備えている。
【0003】
前記構造材同士を互いに垂直に結合する際には、図6に示すように、まず、第1の構造材11aの側壁に第2の構造材11bの端部を当接させ、第2の構造材11bにその軸方向と直交する方向に設けられた貫通孔16に、円柱状体32からなる連結治具31を挿入する。連結治具31として、例えば、円柱状体32の中央部に雌ネジ部33を備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
次に、第1の構造材11aの連結治具31に相対向する位置に、第1の構造材11aの軸方向と直交する方向に貫通するネジ孔17を穿設し、該ネジ孔17にネジ(ボルト)18を挿通する。そして、ネジ18を連結治具31の雌ネジ部33に螺着することにより、第1の構造材11aと第2の構造材11bとを互いに垂直に結合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−303525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の連結治具は、前記貫通孔に挿入した際に手指等で支持しなければならないので、前記雌ネジ部が前記ネジの挿入位置に一致しないことがあり、該雌ネジ部に該ネジを螺着することが難しくなることがあるという不都合がある。
【0007】
前記従来の連結治具は、前記雌ネジ部と平行にさらに別の貫通孔を設け、構造材の端部に嵌合される別部材に該貫通孔に挿入される部材を備えることにより、前記雌ネジ部を前記ネジに対して位置決めすることができる。しかしながら、このようにするときには、前記別部材を必要とし、作業が繁雑になるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、前記雌ネジ部を前記ネジに対して容易に位置決めできる連結治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、中空角形の構造材同士を、第1の構造材の側壁に第2の構造材の端部を当接させて、互いに垂直に結合する際に、第2の構造材にその軸方向と直交する方向に設けられた貫通孔に挿入される円柱状体であり、該円柱状体の中央部に設けられた雌ネジ部に第1の構造材をその軸方向と直交する方向に貫通するネジが螺着されることにより両構造材を結合する連結治具において、該貫通孔に挿入されたときに、第2の構造材の内壁面に係止されることにより該雌ネジ部を該ネジの貫通位置に一致させるように位置決めする1対の係止部材を該円柱状体の両端部に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の構造材の連結治具は、前記円柱状体を第2の構造材に設けられた前記貫通孔に挿入すると、該円柱状体の両端部の前記係止部材が第2の構造体の内壁に係止される。この結果、前記雌ネジ部が、前記貫通孔の長さ方向で、第1の構造体を貫通する前記ネジが螺着される位置に位置決めされる。従って、本発明の構造材の連結治具によれば、前記円柱状体を前記貫通孔に挿入するだけで、容易に前記雌ネジ部の前記位置決めを行うことができる。
【0011】
また、本発明の構造材の連結治具は、軸方向に沿って延在し相対向する内壁面を接続すると共に中央部に円筒状部を備えるリブを備え、前記貫通孔は該リブを縦断して形成されている構造材に適用することができる。この場合、前記円柱状体は、前記貫通孔に挿入されたときに、前記雌ネジ部が前記円筒状部に連通するように位置決めされると共に、前記係止部材が該リブに係止されて回り止めされることが好ましい。
【0012】
このようにすることにより、前記雌ネジ部を、前記貫通孔の長さ方向及び該円柱状体の周方向において、第1の構造体を貫通する前記ネジが螺着される位置に位置決めすることができ、該ネジを、前記円筒状部により前記雌ネジ部に案内することができる。
【0013】
本発明の構造材の連結治具において、前記係止部材は、前記円柱状体の外周面に周方向と平行に配設されたO−リングであることが好ましい。前記O−リングは、前記円柱状体が前記貫通孔に挿入される際には、弾性的に収縮することにより第2の構造材の側壁部を容易に通過することができ、該側壁部を通過した後は弾性的に原状を回復し、第2の構造体の内壁に係止することができる。
【0014】
また、前記構造材が前記リブを備える場合には、前記O−リングが前記側壁部を通過して原状を回復したときに、該リブが該O−リングに食い込むことにより、該O−リングが該リブに係止され、前記円柱状体を回り止めすることができる。従って、この場合、本発明の構造材の連結治具は、前記円柱状体を前記貫通孔に挿入する際に、該円柱状体の周方向における前記雌ネジ部の位置を決めておけば、該貫通孔に挿入後は前記リブが前記O−リングに食い込むことにより、前記位置を保持することができる。
【0015】
また、本発明の構造材の連結治具において、前記係止部材は、前記円柱状体の外周面から外方に突出する球面部を備え、該球面部は該円柱状体の内部に設けられた弾性部材により外方に付勢されることにより該円柱状体の外周面から出没自在に備えられていることが好ましい。
【0016】
前記球面部は、前記円柱状体が前記貫通孔に挿入される際には、前記弾性部材の付勢力に抗して前記円柱状体内に没入することにより第2の構造材の側壁部を容易に通過することができる。また、前記球面部は、前記側壁部を通過した後は、前記弾性部材の付勢力により前記円柱状体の外周面から外方に突出することにより、第2の構造体の内壁に係止することができる。
【0017】
前記1対の係止部材が前記球面部を備えるとき、前記1対の係止部材は、前記円筒状部の周方向に所定の間隔を存して形成されていることが好ましい。ここで、前記構造材が前記リブを備える場合には、前記1対の係止部材の前記円筒状部の周方向における間隔を、前記リブの厚さに相当する間隔とすることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、前記球面部が前記側壁部を通過して前記円柱状体の外周面から外方に突出したときに、該球面部はそれぞれ前記リブの相異なる面に係止されることとなり、該円柱状体を回り止めすることができる。従って、この場合、本発明の構造材の連結治具によれば、前記円柱状体を前記貫通孔に挿入するだけで、前記雌ネジ部を、前記貫通孔の長さ方向及び該円柱状体の周方向において、第1の構造体を貫通する前記ネジが螺着される位置に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の構造材の連結治具の構成例を示す図。
【図2】構造材の一構成例を示す斜視図。
【図3】本発明の構造材の連結治具により構造材同士を垂直に結合する状態を示す説明的断面図。
【図4】図3の要部を拡大して示す説明的断面図。
【図5】図4の変形例を示す説明的断面図。
【図6】従来の連結治具により構造材同士を垂直に結合する状態を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施形態の連結治具1は、中実の円柱状体2と、円柱状体2の中央に形成された雌ネジ部3と、両端部に周方向に沿って形成された環状溝部4と、環状溝部4に嵌合された係止部材としてのO−リング5とを備えている。雌ネジ部3は円柱状体2の直径に沿って、円柱状体2の軸方向と直交する方向に形成された貫通孔である。
【0022】
本実施形態の連結治具1は、図2に示す構造材11同士を互いに垂直に結合する際に用いられる。構造材11は、断面形状が略正方形の中空角形の長尺体であり、両端に開口端部12を備えると共に、相対向する内壁面を接続するリブ13,14を内部に備えている。
【0023】
リブ13,14は構造材11の軸方向に沿って延在しており、リブ13,14が交差する部分には中空の円筒状部15が形成されている。構造材11は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属により形成され、各種パネル、パーティション等の形成に用いられる。
【0024】
連結治具1を用いて構造材11同士を互いに垂直に結合する際には、図3に示すように、第1の構造材11aの側壁に、第2の構造材11bの開口端部12を当接させた状態で、構造材11a,11bが組み付けられる。このとき、構造材11bには、その軸方向と直交する方向に貫通孔16が形成されており、貫通孔16はリブ13を縦断して形成されている。ここで、連結治具1は貫通孔16に挿通され、雌ネジ部3が円筒状部15に連通するように位置決めされる。
【0025】
一方、第1の構造材11aには、第2の構造部材11bの円筒状部15に対向する位置に、第1の構造材11aの軸方向と直交する貫通孔17が穿設されており、貫通孔17にはネジ(ボルト)18が挿通される。第1の構造材11aの貫通孔17に挿通されたネジ18は、第2の構造材11bの円筒状部15により、連結治具1の雌ネジ部3に案内され、雌ネジ部3に螺着される。この結果、構造材11a,11bを互いに垂直に結合することができる。
【0026】
連結治具1は、円柱状体2の両端部に1対のO−リング5を備えているので、貫通孔16に挿入されたときに、図4に示すように、O−リング5が構造材11bの内壁面19に圧接されることにより係止される。この結果、連結治具1は、貫通孔16に挿入するだけで、貫通孔16の軸方向において、雌ネジ部3が円筒状部15に連通するように位置決めすることができる。
【0027】
連結治具1は、貫通孔16に挿入する際には、O−リング5が弾性的に収縮するので、第2の構造材11bの側壁部を容易に通過することができる。O−リング5は、前記側壁部を通過すると、弾性的に原状を回復することにより、第2の構造体11bの内壁面19に圧接される。
【0028】
また、O−リング5が前記側壁部を通過して原状を回復したときには、リブ13がO−リング5に食い込むことにより、円柱状体2を回り止めすることができる。従って、連結治具1は、円柱状体2を貫通孔16に挿入する際に、円柱状体2の周方向において雌ネジ部3が円筒状部15に連通するように位置決めしておけば、貫通孔16に挿入後はリブ13がO−リング5に食い込むことにより、前記位置を保持することができる。
【0029】
円柱状体2を貫通孔16に挿入する際に、円柱状体2の周方向において雌ネジ部3が円筒状部15に連通するように位置決めする手段としては、円柱状体2の両端面と、構造材11bの外壁面とに相対応するマークを形成することができる。前記マークとして、構造材11bが外壁面中央に軸方向に沿って延在する溝部20を備える場合、円柱状体2の両端面に雌ネジ部3の軸に沿って端面を横断する溝部6を設けることができる。
【0030】
この場合、溝部6,20が一直線を形成するように位置合わせすることにより、円柱状体2の周方向において雌ネジ部3が円筒状部15に連通するように位置決めすることができる。
【0031】
本実施形態では、連結治具1について説明しているが、連結治具1に代えて、図1(b)に示す連結治具21を用いることもできる。連結治具21は、図1(b)左側に示すように、中実の円柱状体22と、円柱状体22の中央に形成された雌ネジ部23と、円柱状体22の両端部において円柱状体22の外周面から外方に突出する係止部材としての球状体24とを備えている。雌ネジ部23は円柱状体22の直径に沿って、円柱状体22の軸方向と直交する方向に形成された貫通孔である。
【0032】
図1(c)に示すように、球状体24は、円柱状体22に穿設された穴部25に収容され、穴部25に配設された弾性部材としてのスプリング26により外方に付勢されることにより、円柱状体22の外周面から出没自在に備えられている。尚、円柱状体22の外周面に臨む穴部25の開口部には、球状体24の抜け止めのために、外周から内周側に突出するカシメ部(図示せず)が形成されている。
【0033】
また、1対の球状体24は、図1(b)右側に示すように、円柱状体22の外周面において円柱状体22の周方向にリブ13の厚さに相当する間隔を存して形成されている。このため、1対の穴部25は、雌ネジ部23の軸方向に対して所定の角度で傾斜して形成されている。
【0034】
連結治具21は、雌ネジ部23が円筒状部15に連通するように位置決めされることにより、連結部材1と同様にして、構造材11a,11bを互いに垂直に結合することができる。
【0035】
連結治具21は、円柱状体22の両端部に1対の球状体24を備えているので、貫通孔16に挿入されたときに、図5に示すように、球状体24が構造材11bの内壁面19に係止される。この結果、連結治具21は、貫通孔16に挿入するだけで、貫通孔16の軸方向において、雌ネジ部23が円筒状部15に連通するように位置決めすることができる。
【0036】
連結治具21は、貫通孔16に挿入する際には、球状体24がスプリング26の付勢力に抗して穴部25内に没入するので、第2の構造材11bの側壁部を容易に通過することができる。球状体24は、前記側壁部を通過すると、スプリング26の付勢力により、円柱状体22の外周面から外方に突出することにより、第2の構造体11bの内壁面19に係止される。
【0037】
また、このとき、1対の球状体24は、円柱状体22の外周面において円柱状体22の周方向にリブ13の厚さに相当する間隔を存して形成されているので、リブ13の相異なる面に係止され、リブ13を両側から挟んで円柱状体22を回り止めすることができる。従って、連結治具21によれば、円柱状体22を貫通孔16に挿入するだけで、雌ネジ部23を、貫通孔16の長さ方向及び円柱状体22の周方向において、円筒状部15に連通するように位置決めすることができる。
【0038】
尚、本実施形態では、構造材11がリブ13,14を備えるものとして説明しているが、構造材11はリブ13,14を備えていなくてもよい。また、本実施形態では、構造材11が正方形状の断面形状を備えるものとして説明しているが、構造材11は長方形状の断面形状を備えるものであってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、連結治具21が係止部材としての球状体24を備えるものとして説明しているが、該係止部材は、円柱状体22の外周面から外方に突出する部分が球面部となっていればよく、球状体24には限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1,21…連結治具、 2,22…円柱状体、 3,23…雌ネジ部、 5…O−リング(係止部材)、 11…構造材、 13…リブ、 15…円筒状部、 16…貫通孔、 18…ネジ、 19…内壁面、 24…球状体(係止部材)、 26…スプリング(弾性部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空角形の構造材同士を、第1の構造材の側壁に第2の構造材の端部を当接させて、互いに垂直に結合する際に、第2の構造材にその軸方向と直交する方向に設けられた貫通孔に挿入される円柱状体であり、該円柱状体の中央部に設けられた雌ネジ部に第1の構造材をその軸方向と直交する方向に貫通するネジが螺着されることにより両構造材を結合する連結治具において、
該貫通孔に挿入されたときに、第2の構造材の内壁面に係止されることにより該雌ネジ部を該ネジの貫通位置に一致させるように位置決めする1対の係止部材を該円柱状体の両端部に備えることを特徴とする構造材の連結治具。
【請求項2】
請求項1記載の構造材の連結治具において、前記構造材は、軸方向に沿って延在し相対向する内壁面を接続すると共に中央部に円筒状部を備えるリブを備え、前記貫通孔は該リブを縦断して形成されており、前記円柱状体は該貫通孔に挿入されたときに、前記雌ネジ部が前記円筒状部に連通するように位置決めされると共に、前記係止部材が該リブに係止されて回り止めされることを特徴とする構造材の連結治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の構造材の連結治具において、前記係止部材は、前記円柱状体の外周面に周方向と平行に配設されたO−リングであることを特徴とする構造材の連結治具。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の構造材の連結治具において、前記係止部材は、前記円柱状体の外周面から外方に突出する球面部を備え、該球面部は該円柱状体の内部に設けられた弾性部材により外方に付勢されることにより該円柱状体の外周面から出没自在に備えられていることを特徴とする構造材の連結治具。
【請求項5】
請求項4記載の構造材の連結治具において、前記1対の係止部材は、前記円筒状部の周方向に所定の間隔を存して形成されていることを特徴とする構造材の連結治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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