説明

構造溶接パターンを有する平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク

【課題】長期にわたる使用又は乱暴な取り扱いが原因となるマスクの形状変形を最小限にする耐圧潰特性を有する、平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクを提供する。
【解決手段】横方向に延びる境界線22と縦軸34とを有するマスク本体12を含む平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク10。第1及び第2の溶接パターン32a、32bは、上方で境界線を横切らないように縦軸34の両側にそれぞれ配置される。第3及び第4の溶接パターン32c、32dは、下方で境界線を越えないように縦軸34の両側にそれぞれ配置される。第1、第2、第3、及び第4の溶接パターン32a〜32dのそれぞれは二次元の閉鎖パターンである。組み合わされた溶接パターンは、濾過構造体全体に大きな圧力低下をもたらす可能性のある追加層又はより重い層の必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクの前面に配置されて、マスク本体に圧潰抵抗構造を提供する助けとなる溶接パターンを有する平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸マスクは一般に、(1)不純物又は汚染物質が着用者の呼吸器系に入るのを防ぐこと、並びに(2)他の人又は他の物が、着用者によって吐き出された病原体及び他の汚染物質にさらされることから守ること、の2つの一般的目的の少なくとも1つのために、人の呼吸経路を覆って着用されるものである。第1の状況では、呼吸マスクは、空気が着用者にとって有害な粒子を含んでいる環境、例えば、自動車車体修理工場において着用される。第2の状況では、呼吸マスクは、他の人又は他の物に対する汚染の危険性がある環境、例えば、手術室又はクリーンルームにおいて着用される。
【0003】
これらの目的のいずれか(又は両方)を満たすためのさまざまな呼吸マスクが設計されてきた。これら呼吸マスクの一部は、マスク本体自体がフィルタ機構として機能するため、「フィルタ式顔面装着」として分類されてきた。取り付け可能なフィルタカートリッジと共にゴム又はエラストマーのマスク本体を使用する呼吸マスク(例えば、米国再発行特許第39,493号(Yuschak et al.)を参照のこと)又はインサート成形されたフィルタ要素(例えば、米国特許第4,790,306号(Braun)を参照のこと)とは異なり、フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、フィルタカートリッジを取り付ける又は交換する必要がないように、濾材がマスク本体のほぼ全体を覆うように設計される。フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、一般に、2種類の構造、即ち、成型呼吸マスク及び平坦折り畳み式呼吸マスクの一方の形式を取る。
【0004】
成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、マスク本体にカップ状の構造を与えるために、熱接着繊維の不織ウェブ又は透かし編目のプラスチックメッシュを通常含んできた。成型呼吸マスクは、使用中及び保管時の双方で同一の形状を維持する傾向がある。成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクを開示している特許の例には、米国特許第7,131,442号(Kronzer et al.)、同第6,923,182号、同第6,041,782号(Angadjivand et al.)、同第4,850,347号(Skov)、同第4,807,619号(Dyrud et al.)、同第4,536,440号(Berg)、及び米国意匠特許第285,374号(Huber et al.)が挙げられる。平坦折り畳み式呼吸マスクは、その名前が暗に示しているように、出荷及び保管のために折り畳まれることができる。平坦折り畳み式呼吸マスクの例は、米国特許第6,568,392号及び同第6,484,722号(Bostock et al.)並びに同第6,394,090号(Chen)に示されている。
【0005】
使用中、フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、それらの意図されるカップ状の構造を維持しなければならない。人の顔に着用されている間にマスクが他の物体に衝突するのと共に、何度も着用されて着用者の呼気からの多量の水分に晒された後、既知のマスクは、圧潰又はシェルに押し込まれた窪みを有し易くなり得る。着用者は、マスクを顔からずらしてマスクの内側から窪みを押すことによって、この窪みを取り除くことができる。使用中にマスクが圧潰するのを妨げるために、マスク本体構造に付加的な層を追加してマスクの構造的完全性を改善してきた。例えば、米国特許第6,923,182号(Angadjivand et al.)は、フィルタ層と第1及び第2の成形層との間の第1及び第2の接着剤層を使用して、耐圧潰性成型フィルタ式フェイスマスクを提供している。平坦折り畳み式呼吸マスクの構造的完全性を保つために、米国特許第6,394,090号(Chen)は、使用中の圧潰を防ぐのを補助するための第1及び第2の境界線をマスク本体に設けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用中のマスク本体の圧潰を防止するのに役立つ、新しい平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク構成体を提供する。本発明の呼吸マスクは、マスク本体とハーネスとを備える。マスク本体は、横方向に延びる境界線と、縦軸と、上方で境界線を横切らないように縦軸の両側にそれぞれ配置された第1及び第2の溶接パターンと、を有する。第3及び第4の溶接パターンは、下方で境界線を越えないように縦軸の両側にそれぞれ配置される。第1、第2、第3、及び第4の溶接パターンのそれぞれは、二次元の閉鎖パターンである。
【0007】
本発明は、長期にわたる使用又は乱暴な乗り扱いが原因となるマスクの形状変形を最小限にする耐圧潰特性を有する、平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクを提供することを目的とする。呼吸マスクはまた、粒子負荷及び/又は水分の蓄積によってその構造的完全性を損なう可能性が低い。フィルタ式顔面装着呼吸マスクは使用中に圧潰する可能性が低いので、その結果、着用者の快適さ及び利便性を改善するという利点を提供する。更に、耐圧潰性を提供するための追加層又はより重い層の必要がなくなる。追加層の使用は、呼吸抵抗及び製品原価の増加をもたらし得る。したがって、本発明は、追加層又はより重い層の付加コストなしに、着用者の快適さを改善させると共にマスク本体の意図される使用中形状を保つという利益を提供する。
【0008】
用語
以下に記載される用語は、定義されるような意味を持つ。
【0009】
「二分する」は、ほぼ等しい2つの部分に分けることを意味する。
【0010】
「含む(又は、含んでいる)」は、特許専門用語において標準であるその定義を意味し、「備える」、「有する」、又は「含有する」とほぼ同義であるオープンエンド型の用語である。「備える」、「含む」、「有する」及び「含有する」、並びにこれらの変形は、一般的にオープンエンド型の用語であるが、本発明は、「本質的に〜からなる」等のより狭義の用語を使用して適切に記載することもでき、これは、本発明の呼吸マスクがその意図される機能を果たす際の性能に対して悪影響を及ぼす物体又は要素のみを除外するという点で、オープンエンド型の用語に準ずる用語である。
【0011】
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過された、ある体積の大気中の周囲空気を意味する。
【0012】
「汚染物質」は、粒子(粉塵、ミスト及びフュームを含む)及び/又は一般には粒子とみなされない場合もあるが(例えば、有機蒸気等)、空気中に浮遊していることがある他の物質を意味する。
【0013】
「横断寸法」は、呼吸マスクを正面から見たときに、呼吸マスクの側方から側方まで横方向に延びる寸法を意味する。
【0014】
「カップ状の構造」は、人の鼻及び口を適切に覆うことが可能な任意の容器型の形状を意味する。
【0015】
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
【0016】
「フィルタ式顔面装着」は、マスク本体自体が、マスク本体を通過する空気を濾過するように設計され、マスク本体にこの目的を達成するための別個の識別可能なフィルタカートリッジ又はインサート成型されたフィルタ要素が取り付けられていない、又は成型されていないことを意味する。
【0017】
「フィルタ」又は「フィルタ層」は、通気性材質の1つ以上の層を意味し、その層は、それを通り抜ける空気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主目的に適している。
【0018】
「濾材」は、それを通過した空気から汚染物質を取り除くために設計された通気性構造体を意味する。
【0019】
「濾過構造体」は、濾材又はフィルタ層を含む構成体を意味する。
【0020】
「第1側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する。
【0021】
「適合」は、マスク本体を着用する、取り外す、又は調整するのうちの1つ又はこれらの組み合わせを意味する。
【0022】
「フランジ」は、人が把持するのに十分な表面積を有する突出部を意味する。
【0023】
「正面方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体周辺部から離れて延びることを意味する。
【0024】
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。
【0025】
「しるし」は、識別マーク、パターン、画像、開口部、又はこれらの組み合わせを意味する。
【0026】
「一体的(integral)」は、同時に一緒に製造されていること、即ち、一部分として一緒に作製され、後に一緒に接合される別個に製造された2つの部分ではないことを意味する。
【0027】
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔との間の空間を意味する。
【0028】
「横方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面から離れて延びることを意味する。
【0029】
「境界線」は、折り目、継ぎ目、溶着線、接着線、ステッチ線、ヒンジ線及び/又はこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0030】
「縦軸」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する線を意味する。
【0031】
「マスク本体」は、人の口及び鼻を覆って適合し、外部気体空間から内部気体空間を分離して画定する助けとなる通気性の構造体(層及び部品を互いに接合させる継ぎ目及び結合部を含む)を意味する。
【0032】
「ノーズクリップ」は、少なくとも着用者の鼻の周りの密封性を高めるために、マスク本体上で使用するように適応した(ノーズフォーム以外の)機械的装置を意味する。
【0033】
「周辺部」は、マスク本体の外側縁部を意味し、人が呼吸マスクを着用したときに、この外側縁部は、一般に着用者の顔に隣接して配置される。
【0034】
「プリーツ」とは、それ自体の上に折り返しできるように設計された、又は折り返されている部分を意味する。
【0035】
「ポリマー」及び「プラスチック」はそれぞれ、1つ以上のポリマーを主に含み、同様に他の成分も含有してよい材料を意味する。
【0036】
「複数」は、2つ以上を意味する。
【0037】
「呼吸マスク」は、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供するための、人が着用する空気濾過装置を意味する。
【0038】
「第2側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する(第2側部は第1側部に対向している)。
【0039】
「密着適合」又は「密着して適合する」とは、本質的に気密な(又は実質的に漏れのない)適合が(マスク本体と着用者の顔面との間に)もたらされることを意味する。
【0040】
「タブ」は、別の構成要素に取り付けるための十分な表面積を呈する部位を意味する。
【0041】
「横断方向に延びている」は、ほぼ横断寸法方向に延びていることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク10の斜視図。
【図2】図1に示される平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク10の正面図。
【図3】折り畳まれた状態にある図1のフィルタ式顔面装着呼吸マスク10の平面図。
【図4】図2の線4−4に沿った溶接パターン32bの溶着線32’の拡大断面図。
【図5】図3の線5−5に沿った呼吸マスクのマスク本体12の断面図。
【図6】図5の線6−6に沿った濾過構造体16の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明を実用化すると、圧潰抵抗性の改善に役立つ溶接パターンがマスク本体に配置された平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクが提供される。
【0044】
図1は、着用者の顔面上で開いた状態にある平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク10の一例を示す。呼吸マスク10は、着用者が呼吸するための清浄な空気を提供するために、本発明に従って使用されてもよい。図示するように、フィルタ式顔面装着呼吸マスク10は、マスク本体12及びハーネス14を含む。マスク本体12は、吸気が着用者の呼吸器系に入る前に通過する必要がある濾過構造体16を有する。濾過構造体16は、着用者が清浄な空気を吸い込むことができるように、周囲環境から汚染物質を取り除く。マスク本体12は、頂部18及び底部20を含む。頂部18及び底部20は、境界線22により隔てられている。この特定の実施形態では、境界線22は、マスク本体の中央部の両端間を横断方向に延びるプリーツである。マスク本体12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む周辺部も含む。ハーネス14は、タブ28aにステープル留めされたストラップ26を有する。ノーズクリップ30は、マスク本体12の頂部18の、マスク本体12の外側表面上又はカバーウェブの下において、マスク本体12に定置されてもよい。
【0045】
図2は、平坦折り畳み式呼吸マスク10が、上方で境界線22を横切らないように配置された第1及び第2の溶接パターン32a、32bを有するところを示している。第1及び第2の溶接パターン32a、32bは、縦軸34の両側に位置付けられる。第3及び第4の溶接パターン32c及び32dは、下方で境界線22を越えないように配置される。溶接パターン32c及び32dはまた、縦軸34の両側に位置付けられる。第1、第2、第3、及び第4の溶接パターン32a、32b、32c、32dのそれぞれは、二次元の閉鎖パターンを画定する溶着線32’を包含する。各溶接パターンは、例えば、丸みのあるコーナーを有し、かつその内側に位置付けられた一対の三角形36及び38を有する、大きな三角形を包含するトラス型形状を呈してもよい。三角形36、38のそれぞれは、三角形36、38のそれぞれの2辺が三角形32a〜32dのそれぞれの部分辺も形成するように、大きな三角形32a〜32d内に入れ子となっている。丸みのあるコーナーの最小半径は、典型的には、約0.5ミリメートル(mm)である。図2に示されるように、溶接パターン32a〜32dは、縦軸34の両側に、又は境界線22及び縦軸34の両側に対称性が存在するようにマスク本体12に設けられる。本図面においては、本発明は三角形内の三角パターンとして示されているが、二次元の閉鎖パターンは、マスク本体に溶着される、矩形、台形、ひし形等である四辺形を含むその他のトラス型形状を呈してもよい。各二次元の閉鎖溶接パターンは、約5〜30平方センチメートル(cm)、より一般的には約10〜16cmの表面積を占めてもよい。
【0046】
図3は、水平に折り畳まれた状態のマスク本体12を示し、この状態は、出荷及び顔から外した状態での保管に特に有益である。マスク本体12は、水平の境界線22に沿って折り畳まれることができる。呼吸マスクは、第1及び第2のタブ28a、28bに取り付けられる1つ以上のストラップ26を含んでもよく、各タブ28a、28b上には、着用者がマスクを着用する、取り外す、及び適合を調整するためにマスク本体を把持してもよい場所の目安を提供するしるし39がつけられてもよい。フランジのそれぞれに設けられてもよいしるし39は、本特許出願と同日に出願された、「Filtering Face Piece Respirator Having Grasping Feature Indicator」(代理人整理番号65657US002)と題された同時係属中の特許出願に更に記載されている。
【0047】
図4は、溶接パターン32b内の溶着線32’の断面図を示す。溶接パターン32a、32c、及び32d内の溶着線は、同様の断面形状を有していてもよい。溶着線32’は、繊維の大部分が無孔の中実タイプの固着状態へと凝固するように、繊維を固めて濾過構造体にする。溶着線32’は、幅約2〜7mm、より一般的には幅約4〜5mmであってもよい。濾過構造体16が2層以上を含む場合、これらの層は、本質的に、溶着線32’の底面39において結合する。
【0048】
図5は、本発明によるマスク本体12のプリーツ状構造の一例を示す。図示のように、マスク本体12は、既に図1〜図3を参照して説明したプリーツ22を含んでいる。マスク本体12の上部又はパネル18はまた、プリーツ40及び42を含んでいる。マスク本体12の下部又はパネル20は、プリーツ44、46、48、及び50を含んでいる。マスク本体12の下部20は、上部18より広い濾材表面積を含んでもよい。マスク本体12はまた、マスク本体の周辺部に沿って固定される周辺ウェブ54を含んでいる。周辺ウェブ54は、周辺部24a、24bでマスク本体の上に折り重ねてもよい。周辺ウェブ54はまた、縁部24a及び24bの周囲で折り畳まれて固定される内側カバーウェブ58の延出部分であってもよい。ノーズクリップ30は、マスク本体の上部18の中央で、濾過構造体16と周辺ウェブ54との間の周辺部24aに隣接して配置されてもよい。ノーズクリップ30は、着用者の鼻の輪郭に適合するように着用者の手作業で適応させることが可能となる柔軟な極軟金属又はプラスチックで作製されてもよい。ノーズクリップはアルミニウムで作製されてもよく、図3のように線状であってもよく、又は、例えば米国特許第5,558,089号及び米国意匠特許第412,573号(Castiglione)に示されているM字型のノーズクリップなど、上部から見たときに他の形状であってもよい。
【0049】
図6は、濾過構造体16が、内側カバーウェブ58、外側カバーウェブ60、及びフィルタ層62のような1つ以上の層を含み得ることを図示している。内側及び外側カバーウェブ58及び60は、フィルタ層62を保護し、フィルタ層62からの繊維が緩んでマスク内側に入り込むのを防ぐために備えられてよい。呼吸マスクの使用中、空気はマスク内側に入り込む前に層60、62、及び58を順次通過する。マスクの内部気体空間内に配置された空気は、その後、着用者により吸引されてよい。着用者が息を吐くと、空気は逆方向に層58、62、及び60を順次通過する。あるいは、吐き出された空気が濾過構造体16を通過せずに、内部気体空間から急速に排除され外部気体空間に入ることを可能にする呼気弁(図示せず)をマスク本体に備えてもよい。典型的には、カバーウェブ58及び60は、濾過構造体の、特に着用者の顔面と接触する側で、心地よい感覚をもたらす不織布材を選択肢として作製されている。本発明の支持構造体に使用可能なさまざまなフィルタ層及びカバーウェブの構成体の詳細を以下に記述する。着用者への適合及び快適性を向上させるために、エラストマーのフェースシール材を、濾過構造体16の周辺部に固定することができる。このようなフェースシール材は、呼吸マスクを着用したときに、内側に向かって放射状に延び、着用者の顔に接触することができる。フェースシール材の例は、米国特許第6,568,392号(Bostock et al.)、同第5,617,849号(Springett et al.)、及び同第4,600,002号(Maryyanek et al.)、並びにカナダ特許第1,296,487号(Yard)に記載されている。濾過構造体はまた、少なくとも1つ以上の層58、60、又は62に対して、典型的には外側カバーウェブ60の外側表面に対して、構造的な網又はメッシュを並置してもよい。そのようなメッシュの使用は、2008年12月18日出願の「Expandable Face Mask with Reinforcing Netting」と題される米国特許出願第12/338,091号に記載されている。
【0050】
本発明に関連して使用されるマスク本体は、さまざまな異なる形状及び構造を呈してもよい。通常、濾過構造体の形状及び構造は、マスク本体の全般的形状に対応する。濾過構造体は、フィルタ層及び2つのカバーウェブを含む多層にて図示されているが、濾過構造体は、フィルタ層又はフィルタ層の組み合わせのみから構成されてもよい。例えば、プレフィルタを上流側に配置して、より微細かつ選択的なフィルタ層を下流側に配置することができる。加えて、活性炭などの収着剤材料を、濾過構造体を構成している繊維及び/又はさまざまな層の間に配置することができる。更に、収着層と共に別の粒子フィルタ層を使用して、粒子と蒸気の両方に対するフィルタリングを提供することができる。濾過構造体は、カップ状の構造を提供する補助となる1つ以上の補強層を含んでもよい。濾過構造体はまた、その構造的完全性に貢献する1つ以上の水平及び/又は垂直の境界線を有する場合もある。しかしながら、本発明による第1及び第2フランジの使用が、そうした補強層及び境界線への不必要な要求を生じさせる場合がある。
【0051】
本発明のマスク本体に使用される濾過構造体は、粒子捕捉タイプ又はガス及び蒸気タイプのフィルタであり得る。濾過構造体はまた、例えば、液体エアロゾル又は液体の飛沫(例えば、血液)がフィルタ層を貫通するのを防ぐために、フィルタ層の一方の側から他方へと液体が移動するのを防止するバリア層であってもよい。用途に応じて、本発明の濾過構造体の構築には、類似の又は異なる濾材の複数の層を使用することができる。本発明の層状マスク本体に有効に使用できるフィルタは、マスク着用者の呼吸労力を最小限に抑えるために、一般に圧力低下が小さい(例えば、面速度毎秒13.8センチメートルで約195〜295パスカル)。フィルタ層は更に、予想される使用条件においてそれらの構造を通常維持するよう、可撓性及び十分な剪断強さを有する。粒子捕捉フィルタの例としては、微細な無機繊維(グラスファイバーなど)又はポリマー合成繊維の1枚又はそれより多くのウェブが含まれる。合成繊維ウェブには、メルトブローン法などのプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーが含まれる。帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕捉用途に特に有用である。別のフィルタ層は、呼吸空気中の有害な又は悪臭のある気体を除去するための吸着剤成分を含んでもよい。吸着剤は、接着剤、結合剤、又は線維構造によりフィルタ層内に拘束される粉末又は顆粒を含んでもよい(米国特許第6,334,671号(Springett et al.)、及び同第3,971,373号(Braun)を参照のこと)。吸着剤層は、繊維性フォーム又は網状発泡体などの基材にコーティングすることにより、薄く密着した層を形成することができる。吸着剤材料としては、活性炭(化学処理済み、又は未処理)、多孔質アルミナ−シリカ触媒基材、及びアルミナ粒子を挙げることができる。さまざまな構造に適合可能な収着性濾過構造体の一例が、米国特許第6,391,429号(Senkus et al.)に記載されている。
【0052】
フィルタ層は、典型的には、所望の濾過効果を達成するように選択される。フィルタ層は、通常、粒子及び/又はその他の汚染物質を、フィルタ層を通過する気体流から高い割合で除去する。繊維性フィルタ層については、通常は、成型作業中に互いに結合してしまわないように、濾過する物質の種類に基づいて選択された繊維が選ばれる。指摘したように、フィルタ層はさまざまな形状及び形態で提供されることができ、一般に約0.2ミリメートル(mm)〜1センチメートル(cm)、より一般的には約0.3mm〜0.5cmの厚さを有し、また略平面状のウェブであっても、又は波形を付けて、拡張された表面積を提供してもよく、これは例えば、米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号(Braun et al.)を参照されたい。フィルタ層はまた、接着剤又は任意の他の手段により一緒に接合された複数のフィルタ層を含んでもよい。基本的に、フィルタ層の形成用として知られている(又は後に開発される)任意の好適な材料を、フィルタ材料として使用することができる。Wente,Van A.の「Superfine Thermoplastic Fibers」(48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.(1956))に教示されているようなメルトブローン繊維ウェブ、特に、持続的帯電(エレクトレット)型のメルトブローン繊維ウェブは、特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubik et al.)を参照のこと)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満(「ブローンマイクロファイバー」をBMFと称する)、一般に約1〜12μmの有効繊維直径を有するマイクロファイバーであってもよい。有効繊維直径は、Davies,C.N.、「The Separation Of Airborne Dust Particles」、Institution Of Mechanical Engineers、ロンドン、会報1B、1952年に従って測定され得る。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含むBMFウェブである。米国再特許第31,285号(van Turnhout)に教示されている帯電小繊維化フィルム繊維も適している場合があり、またロジン−ウール繊維ウェブ、及びグラスファイバー若しくは溶液ブローンのウェブ、又は静電スプレー繊維、特にマイクロフィルム形態のものも適している場合がある。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzman et al.)、同第6,783,574号(Angadjivand et al.)、同第6,743,464号(Insley et al.)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzman et al.)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivand et al.)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより、繊維に付与することができる。電荷はまた、米国特許第4,588,537号(Klasse et al.)に開示されているようなコロナ帯電により、又は、同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電(tribocharging)により、繊維に付与されてもよい。更に、ハイドロ帯電プロセスにより製造されたウェブの濾過性能強化のため、添加剤を繊維に含めることができる(米国特許第5,908,598号(Rousseau et al.)を参照)。特に、フッ素原子をフィルタ層の繊維表面に配置することにより、油性ミスト環境での濾過性能を改善することができる(米国特許第6,398,847B1号、同第6,397,458B1号、同第6,409,806B1号(Jones et al.)を参照)。エレクトレットBMFフィルタ層の典型的な坪量は、1平方メートルあたり約10〜100グラムである。例えば、‘507号特許(Angadjivand et al.)に記載されている技法によって帯電させた場合、またJones et al.の特許に記載されるようにフッ素原子を含む場合、坪量はそれぞれ、約20〜40g/m及び約10〜30g/mとなる。
【0053】
内側カバーウェブは、着用者の顔に接触するために滑らかな表面を提供するのに用いられることができ、また外側カバーウェブは、マスク本体内の遊離繊維を封入するため、又は審美的理由から用いられることができる。カバーウェブは、フィルタ層の外側(又は上流側)に配置されたときにプレフィルタとして機能することができるが、典型的には、濾過構造体に対して何らかの実質的なフィルタ効果を提供するものではない。好適な程度の快適性を得るために、内側カバーウェブは好ましくは比較的低い坪量を有し、比較的細い繊維から形成される。より詳細には、カバーウェブは、坪量約5〜50g/m(典型的には10〜30g/m)を有するように作られてもよく、繊維は、0.389g/km(3.5デニール)未満(典型的には0.222g/km(2デニール)未満)、より典型的には0.111g/km(1デニール)未満、ただし0.0111g/km(0.1))超過であってもよい。カバーウェブに用いられる繊維はしばしば、約5〜24マイクロメートルで、典型的には約7〜18マイクロメートル、より典型的には約8〜12マイクロメートルの平均繊維直径を有する。カバーウェブ材料はある程度の弾性(典型的には破断時に100〜200%であるが、必ずしもそうではなくてよい)を有し、可塑的に変形可能であり得る。
【0054】
カバーウェブに適した材料としては、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特にポリオレフィンBMF材料、例えば、ポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレン混合物、及びポリプロピレンとポリエチレンとの混合物も含む)が挙げられる。カバーウェブ用のBMF材料の好適な製造プロセスは、米国特許第4,013,816号(Sabee et al.)に記載されている。ウェブは、繊維を滑らかな表面、典型的には滑らかな表面のドラム又は回転型コレクタの上に収集して形成してもよい(米国特許第6,492,286号(Berrigan et al.)を参照のこと)。スパンボンド繊維を使用することもできる。
【0055】
典型的なカバーウェブは、ポリプロピレン、又は50重量%以上のポリプロピレンを含むポリプロピレン/ポリオレフィン混合物から作製され得る。これらの材料は、着用者に程度の高い柔らかさ及び快適性を提供し、またフィルタ材料がポリプロピレンBMF材料であるとき、層間に接着剤を必要とすることなく、フィルタ材料に固定された状態に保つことが見出されている。カバーウェブで使用するのに好適なポリオレフィン材料としては、例えば、単一のポリプロピレン、2種のポリプロピレンの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物、ポリプロピレンとポリ(4−メチル−1−ペンテン)の混合物、及び/又はポリプロピレンとポリブチレンの混合物を挙げることができる。カバーウェブ用の繊維の一例としては、ポリプロピレン樹脂から作製されたExxon Corporation製のポリプロピレンBMF「Escorene 3505G」があり、これは坪量が約25g/m、及び繊維デニールが0.2〜3.1の範囲である(約0.8の繊維100本超で測定の平均)。他の好適な繊維は、ポリプロピレン/ポリエチレンBMF(樹脂「Escorene 3505G」85パーセントと、エチレン/α−オレフィンコポリマー「Exact 4023」(これもExxon Corporation製)15パーセントを含む混合物から製造される)であり、これは坪量が約25g/mであり、平均繊維デニールが約0.8である。好適なスパンボンド材料は、Corovin GmbH(Peine,Germany)から商品名「Corosoft Plus 20」、「Corosoft Classic 20」、及び「Corovin PP−S−14」で入手可能であり、カードポリプロピレン/ビスコースは、J.W.Suominen OY(Nakila,Finland)から商品名「370/15」で入手可能である。
【0056】
本発明で使用されるカバーウェブは好ましくは、処理後にウェブ表面からの繊維の突出が非常に少なく、よって滑らかな外側表面を有する。本発明で用いてもよいカバーウェブの例は、例えば、米国特許第6,041,782号(Angadjivand)、同第6,123,077号(Bostock et al.)及び国際公開第96/28216A号(Bostock et al.)に開示されている。
【0057】
ハーネスに使用されるストラップは、さまざまな材料、例えば、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み又は編込みされた織糸/ゴムの組み合わせ、非弾性の編組み構成要素、及びその他から作製され得る。ストラップは、弾性材料、例えば弾性の編組み材料から形成されてもよい。ストラップは、好ましくはその全長の2倍より大きく拡張され、その弛緩状態に戻り得る。ストラップはまた、その弛緩状態の長さの3倍又は4倍まで延びることが可能であり、かつ張力が取り除かれると、なんら損傷を受けずにその元の状態に戻ることができる。したがって、弾性限度は、ストラップの弛緩状態における長さの2倍、3倍、又は4倍以上であるのが好ましい。典型的には、ストラップは、長さ約20〜30cm、幅3〜10mm、厚さ約0.9〜1.5mmである。ストラップは、連続ストラップとして第1タブから第2タブまで延びてもよく、又はストラップは、更なる締結具又はバックルにより互いに接合され得る複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔面から除去する際に、着用者に迅速に分離され得る締結具により一緒に接合された第一及び第二の部品を有してもよい。本発明に関連して使用し得るストラップの例は、米国特許第6,332,465号(Xue et al.)に示されている。ストラップの1つ以上の部分を一緒に接合するのに使用し得る締結機構又留め金機構の例は、例えば以下の米国特許第6,062,221号(Brostrom et al.)、同第5,237,986号(Seppala)、及び欧州特許第1,495,785A1号(Chien)に示されている。
【0058】
図のように、内部気体空間から呼気を排除し易くするために、マスク本体に呼気弁を取り付けてもよい。呼気弁の使用は、マスク内部からの暖かい湿った呼気を急速に除去することにより、着用者の心地よさを改善し得る。例えば、米国特許第7,188,622号、同第7,028,689号、及び同第7,013,895号(Martin et al.)、同第7,428,903号、同第7,311,104号、同第7,117,868号、同第6,854,463号、同第6,843,248号、及び同第5,325,892号(Japuntich et al.)、同第6,883,518号(Mittelstadt et al.)、及び同再特許第37,974号(Bowers)を参照。本質的に、呼気を内部気体空間から外部気体空間へと迅速に運搬するために、好適な圧力低下を提供し、かつマスク本体に適切に固定され得る任意の呼気弁を、本発明に関連して使用してもよい。
【0059】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記に限定されず、添付された請求項及びすべてのその等価物に記述する制限によって規制される。
【0060】
更に本発明は、ここに具体的に開示されていない要素がなくとも適切に実施可能であり得る。
【0061】
上記の全ての特許及び特許出願は、「背景技術」部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。
【実施例】
【0062】
マスク製造の基本手順
呼吸マスクの濾過構造体は、3層の不織布材及び他の呼吸マスク構成要素から形成した。本発明のマスクを、予備成形品製造工程、及びマスク仕上げ工程の2つの作業工程で組み立てた。予備成形品製造の段階には、不織繊維ウェブの積層及び固定工程、プリーツ折り目線形成工程、並びに周辺ウェブ材料及びノーズクリップ取り付け工程が含まれていた。マスク仕上げ工程の作業には、エンボス加工された折り目線に沿ってプリーツを折る工程、マスク側縁部及び補強されたフランジ材料の双方を融着する工程、最終形態に切り出す工程、及びヘッドバンドを取り付ける工程が含まれていた。
【0063】
予備成形品製造の段階
予備成形品製造の段階では、3層の不織布材を向かい合わせの配向で重ね合わせた。本実施例では、層を形成する個々の材料を以下の順序で組み立てた。
1.外側スクリム
2.フィルタ材料
3.内側カバーウェブ
【0064】
外側スクリム(図6の60として示す)は、17グラム/平方メートル(gsm)の、Shandong Kangjie Nonwovens Co.Ltd.(Jinan,China)から入手可能なポリプロピレンスパンボンド不織布であった。内側カバーウェブは外側スクリムと同じ材料であった。予備成形品に使用したフィルタ材料(図6の62として示す)は、エレクトレット帯電したブローンマイクロファイバーポリプロピレンのウェブであり、坪量35gms、硬度8%、及び有効繊維寸法4.75マイクロメートルであった。内側カバーウェブ(図6の58として示す)は、外側スクリムと同じ材料であった。予備成形品は、それぞれの材料の層を所望の順に重ね合わせ、次に20cm×33cmのシートに切り出し、点結合のパターンを用いて互いに超音波溶着して作製した。所望により、予備成形品の本体内に強化溶接パターンが形成された。本発明のマスクの溶接パターンは、横方向に延びる境界線及び縦軸に対して配向された。Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000X型を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.5秒としてラム圧448kPaで操作して超音波溶着を行って、パターンを形成した。超音波ホーンは、所与のパターンのアンビルに対して特定の接触面積で動作した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の2000型超音波溶着装置を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.7秒としてラム圧483キロパスカル(kPa)で操作して行った。超音波ホーンはアンビルに対して平頂角型ペグのフィールドで動作し、この平頂角型ペグは1.6平方ミリメートルの個々のフェース面積を有し、ペグの中心から中心まで約1センチメートルの間隔を置いてグリッドパターンに配列されていた。溶着装置の平坦なフェースのホーンを、このアンビルに対して約6MPaの接触圧で作動させた。不織布の層を固定し、プリーツの位置を画定する折り目線を、固定した不織布の層にエンボス加工した。折り目線のエンボス加工は、USM Corporation,Haverhill,Massachusettsから入手のダイ打抜き機、Hytronic Cutting Machine Model Bを149000N(15トン)の力でルールダイと共に使用して行なった。そのダイは、予備成形品の全長を横断する、縁部にアールが付いた9本のバーを有しており、予備成形品にプレスすると、不織布層に線を作り出した。これらエンボス加工された線は、ウェブを相互に接触点で圧縮したが、材料を融着、又は貫通することはなかった。予備成形品製造作業の最終工程として、51グラム/平方メートル(gsm)のスパンボンドポリプロピレンのスクリムであるBBA Nonwovensの幅4cm、長さ36cmを周辺ウェブのバンドとして、予備成形品の頂部及び底部の縁部に巻き付けて所定の位置に超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000X型を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.5秒としてラム圧448kPaで操作して行った。ホ−ンは接触面積4.1平方センチメートルでアンビルに対して動作し、結果的に8.5MPaの接触圧で予備成形品の材料を結合した。周辺ウェブ材料の結合に使用したアンビルの区域は、個々のフェース面積が1.6平方ミリメートルの平頂角型ペグで構成された。溶着装置の平坦なフェースのホーンをこのアンビルに対して作動させ、周辺ウェブを予備成形品に固定した。この工程を使用して、ノーズクリップを予備成形品の頂部に取り付け、予備成形品と周辺ウェブとの間に封入した。ノーズクリップは、可鍛性で、可塑的に変形可能な、図2に示す形状のアルミニウムの帯で、長さ9cm、幅0.5cm、厚さ1mmであった。
【0065】
マスク仕上げ作業
マスク仕上げ工程の作業では、図5に示すように、折り目線に沿ってプリーツが折られた。マスクの中央の折り目より上に位置するプリーツは、マスクを開くと折り目の外側が下方に向くように折られたが、これは着用時にマスクの折り目にごみ等が溜まることを防ぐ助けとなるために行った。予備成形品に適正なプリーツ処理をして中央の折り目を中心に折り、マスクの側縁部を融着するため、そして補強フランジ(図3の28a及び28b)の結合層を作り出すために、予備成形品を超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000ae型を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び2.0秒としてラム圧483kPaで操作して行った。ホ−ンは接触面積22.4平方センチメートルでアンビルに対して動作し、結果的に1.5MPaの接触圧で予備成形品の材料を結合した。フランジ材料を結合するためのアンビルの接触区域は、平頂角型ペグで構成されており、それらペグは1.6平方ミリメートルの個々のフェース面積を有し、それらの平坦側面から1.27ミリメートルの間隔を置いて配列され、その結果として得られた結合パターンは図1のタブ28aで示される。マスクの側縁部の結合を形成するアンビルのバーは、長さ95.25ミリメートル、幅9.525ミリメートルであり、結果として得られた結合パターンは図1の28aで示される。アンビルの傾斜バー要素がマスクの側縁部を封止し、ピン溶着表面がフランジ材料を融着させて堅固化した。マスク仕上げ作業の最終工程として、この補強フランジを所望の形状に切り出し、ヘッドバンドをタブにステープル留めした。フランジは幅1.0cm、長さ5.0cmで、ヘッドバンドを取り付けるタブ部分に位置決めされる0.5cmのアールが付いたヘッド部を備えていた。ヘッドバンドは、Stanley Bostitch,East Greenwich,Rhode Islandから入手の手持ちホチキスP6C−8型、及び亜鉛めっきのホッチキス針No.STH5019 0.635cm(1/4インチ)を使用してタブのアールが付いたヘッド部に取り付けた。
【0066】
ヘッドフォーム
さまざまな人体計測学の着用者範囲に対して最適に適合しかつ快適度の最も高い平坦折り畳み式呼吸マスクの設計は、模擬呼吸負荷を受けた呼吸マスクの圧潰を測定するように適合されたヘッドフォームを使用して増強され得る。この方法は、呼吸マスクとヘッドフォームとの間の相互作用をシミュレーションした。ヘッドストラップの抵抗力、ヘッドフォームの形状、マスクの位置、呼吸の周期換気量及び回数は、平坦折り畳み式呼吸マスクの耐圧潰性能の判定に影響を及ぼす。
【0067】
この試験方法で使用されたヘッドフォームは、呼吸用開口部と、ヘッドフォームの顔の上に位置決めされた接触負荷パッドとを備えて適合された。ヘッドフォームの人体測定学的特徴寸法は表1に示されており、これらの特徴は、「A HEAD−AND−FACE ANTHROPOMETRICSURVEY OF U.S.RESPIRATOR USERS」(May 2004)と題された国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の研究論文に記載の呼吸マスク性能分析において頭と顔の寸法を特徴付けるために概説されたものである。ヘッドフォームの顔の上に直径13mmの円形排気口を有する模擬呼吸用開口部は、正中矢状面(顎の底部)の下顎の下位点である、人間の類似物の顎(Menton)の位置の上を中心にして、その上方15.9mmに位置付けられた。接触活性化閾値が6.9kPaの接触負荷パッドは、模擬呼吸用開口部の周囲に位置決めされた楕円形アニュラリングの形状であった。パッドは、模擬呼吸用開口部の縁部から放射状に延び、厚さは5mmであった。接触負荷パッドは、楕円主軸がヘッドフォームを横断するように配向され、主軸長は66mm、短軸長は48mmであった。試験中、マスクと接触負荷パッドとの間で接触が生じると、光が点灯してマスクの圧潰を示すようにした。
【0068】
評価用マスクは、1本目は耳の上方でヘッドフォームの後部の概ね耳珠間鼻下弧長をたどり、2本目は耳の下でヘッドフォームの後部を横断する、2本のゴムバンドを使用してヘッドフォームに適合された。4つの取り付け点のそれぞれから延びるマストに加えられた力は、名目上2ニュートン(N)であった。中央の折り目である横方向に延びる境界線と縦軸との間の交点が、呼吸用開口部の中心と位置合わせされるように、マスクをヘッドフォーム上に位置決めした。マスクが評価用に適切に位置決めされた状態で、試験装置の呼吸周期を開始した。
【0069】
表1
【表1】

【0070】
模擬呼吸装置及び耐圧潰性試験
Warwick Technology Limited(Warwick,United Kingdom)のDynamic Breathing Machineを、前述のヘッドフォームと共に使用して、人間の呼吸が呼吸マスクに届けられるように人間の呼吸をシュミレーションした。試験装置は、長さ30cm、内径2.54cmのホースを介して空気が人工呼吸器からヘッドフォームの後部に供給されるように構成された。人工呼吸器は呼吸の正弦波波形をもたらし、リットル/分(L/min)で示された流量は、試験の持続時間にわたって変化した。人工呼吸器は、呼吸頻度20サイクル/分で操作され、1回換気量は1リットル、室内条件は25℃及び相対湿度は50%であった。
【0071】
ヘッドフォームの項で記載された通りにヘッドフォーム上に呼吸マスクを定置し、呼吸装置を流量20L/分で開始して、呼吸マスク評価を行った。次に、ロードセルがトリガされるまで、3分毎に5L/分ずつの増分で流量を徐々に増加させた。ロードセルのトリガは呼吸マスクの圧潰を示し、試験を終了した。呼吸マスクが圧潰した時点の流量を、耐圧潰性の測定値としてL/分で記録した。
【0072】
(実施例1)
General Mask Making Procedureに詳述された手順により、概ね図2及び図3に32a、32b、32c、及び32dとして描かれているような、大きな三角形の等しい長さの辺の反対側のコーナーに位置付けられた2つの入れ子になった二等辺三角形を有する二等辺三角形の形状の強化溶接パターンを用いて、呼吸マスクを構成した。小さな三角形のそれぞれと大きな三角形とは、等しい長さの辺及び残りの辺を共有した。大きな三角形の等しい長さの辺は52mm、入れ子になった三角形の等しい長さの辺は17mmであった。呼吸マスクの面上の、横方向に延びる境界線と縦軸とによって画定された4つの四分円内に、パターンを配置した。横方向に延びる境界線は、マスクの上部から93.5mm下方に位置付けられ、縦軸はマスクの中央線に沿って位置付けられた。四分円1、2、3、及び4はそれぞれ、時計回りの位置、即ち、9:00〜12:00、12:00〜3:00、3:00〜6:00、及び6:00〜9:00によって画定された。大きな三角形の幾何学的重心は各四分円と心合わせされ、横方向に延びる境界線と縦軸の交点から放射状の直線に沿って44mmに置かれた。四分円1及び2の中の大きな三角形の頂点はマスクの上部の方向に向き、底辺は横方向に延びる境界線と平行であった。四分円3及び4の中の大きな三角形の頂点はマスクの底部の方向に向き、底辺は横方向に延びる境界線と平行であった。強化パターンの溶接幅は3mmであり、各四分円に対して651平方mmを占めた。溶接は全層を通じて予備成形品を融合させた。
【0073】
(比較例1)
強化パターンを使用しなかったことを除いては、実施例1に記載の通りにマスクを形成して試験した。結果を表2に示す。
【0074】
(実施例2)
Shandong Kangjie Nonwovens Co.Ltd.(Jinan,China)から入手可能なポリプロピレンスパンボンド不織布製の、34gsmの内側カバーウェブ及び外側スクリムを予備成形品製造の段階で使用したことを除いては、実施例1に記載の通りにマスクを形成して試験した。結果を表2に示す。
【0075】
(比較例2)
34gsmの内側カバーウェブ及び外側スクリムを予備成形品製造の段階で使用したことを除いては、比較例1に記載の通りにマスクを形成して試験した。結果を表2に示す。
模擬呼吸装置及び耐圧潰性試験プロトコルに従ってマスクを試験した。試験結果及び試験パラメータを表2に示す。
【0076】
表2
【表2】

【0077】
試験結果は、溶接強化パターンが形成されたマスクの耐圧潰性は、重い構成体よりも軽量化された構成体により大きな影響を与えたことを示した。溶接パターンを備えない軽量化された構成体のマスクと比較して、トラス型の溶接パターンは、軽量化された構成体に耐圧潰性の改善をもたらした。
【0078】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記に限定されず、添付された請求項及びすべてのその等価物に記述する制限によって規制される。
【0079】
更に本発明は、ここに具体的に開示されていない要素がなくとも適切に実施可能であり得る。
【0080】
上記の全ての特許及び特許出願は、「背景技術」部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクであって、
(a)横方向に延びる境界線と、縦軸と、上方で前記境界線を横切らないように前記縦軸の両側にそれぞれ配置された第1及び第2の溶接パターンと、下方で前記境界線を越えないように前記縦軸の両側にそれぞれ配置された第3及び第4の溶接パターンと、を有し、前記第1、第2、第3、及び第4の溶接パターンのそれぞれが二次元の閉鎖パターンである、マスク本体と、
(b)前記マスク本体に固定されたハーネスと、
を備える、平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク。
【請求項2】
各溶接パターンがトラス型形状を有する、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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