構造物の構造解析方法
【課題】構造物を構成するある部材が破壊した場合における連鎖的な部材破壊を考慮したうえで、構造物の崩壊現象を解析する構造物の構造解析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】変更モデル作成ステップS8で作成された構造解析用モデルに対して、部材の一つを削除する直前の構造解析用モデルの応力状態を作用させて自由振動解析を行う自由振動解析ステップS9と、自由振動解析ステップS9において新たに破壊された部材があるか否か判定する破壊部材判定ステップS10と、を含み、破壊部材判定ステップS10で新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、変更モデル作成ステップS8と自由振動解析ステップS9、破壊部材判定ステップS10とを繰り返すことを特徴とする。
【解決手段】変更モデル作成ステップS8で作成された構造解析用モデルに対して、部材の一つを削除する直前の構造解析用モデルの応力状態を作用させて自由振動解析を行う自由振動解析ステップS9と、自由振動解析ステップS9において新たに破壊された部材があるか否か判定する破壊部材判定ステップS10と、を含み、破壊部材判定ステップS10で新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、変更モデル作成ステップS8と自由振動解析ステップS9、破壊部材判定ステップS10とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を構成する一部材が破壊した場合における構造物の崩壊現象を解析する構造物の構造解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内外においてトラス橋の崩落事故及び部材破断事故が発生した。これらの事故を契機として、鋼トラス橋の破壊現象の解析が重要視され、橋梁の維持管理分野等に関する研究が進められている。この解析方法の一つとして、橋梁のリダンダンシー解析が知られている。リダンダンシーとは、構造物を構成する部材が破壊した後の構造物全体系の余裕度(終局状態までの余裕度)を意味している。このリダンダンシー解析によって、橋梁のリダンダンシーや、構造物の重要部材が正確に決定できれば、点検期間や点検部材の決定等に役立てることができる。
【0003】
例えば、非特許文献1に開示されたリダンダンシー解析では、線形解析を行って着目部材の破壊時における他の部材断面力を算出し、その断面力を用いて各部材が終局状態であるか否かを判定している。この断面力の解析においては、橋梁の上下弦材及び斜材等を梁要素、RC床版をシェル要素としてモデル化し、所定の荷重を載荷して解析を行っている。載荷する荷重は、死荷重、活荷重に加え、部材破壊による急激な応力開放に伴う衝撃を考慮するため、解析結果に対して衝撃係数(ここでは衝撃係数1.854)を乗じている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】永谷 秀樹、他8名、「我国の鋼トラス橋を対象としたリダンダンシー解析の検討」、土木学会論文集A、Vol.65 No.2 p.410−425、2009年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に係るリダンダンシー解析では以下のような問題がある。
(1)部材破壊時に生じる衝撃力の算出において、根拠が不明確な衝撃係数(衝撃係数1.854)を採用している。部材が破壊しても、実際にはこのような断面力が発生しない可能性がある。つまり、部材破壊後の挙動が弾性範囲内にある場合においては、衝撃力を過大評価する傾向がある。
(2)解析手法が、線形解析であるため、部材が塑性化した場合の挙動については不明確である。つまり、部材に作用する荷重が大きくなり塑性域に達すると、応答値を過小評価している。
【0006】
(3)破壊と判定された一つの部材をもって、橋梁全体の評価や構造上重要部材の決定をしている。一つの部材が破壊すれば、部材力の再分配や部材の破壊が連鎖的に破壊することもあるが、これらについては考慮できていない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、構造物を構成するある部材が破壊した場合における連鎖的な部材破壊を考慮したうえで、構造物の崩壊現象を解析する構造物の構造解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、複数の部材で構成される構造物を、前記各部材の非線形性を考慮可能な要素でモデル化して構造解析用モデルを作成し、この構造解析用モデルを使用して構造物の破壊現象を解析する構造物の構造解析方法であって、構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルを構成する各部材に作用する応力を取得する静的解析ステップと、前記構造解析用モデルの部材の一つを削除した状態の構造解析用モデルを新たに作成する変更モデル作成ステップと、前記変更モデル作成ステップで作成された構造解析用モデルに対して、部材を削除する直前に各部材に作用していた応力を与えて自由振動解析を行う自由振動解析ステップと、前記自由振動解析ステップにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップと、前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定された場合に、前記自由振動解析を行った後の構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルが崩壊したか否かを判定する崩壊判定ステップと、を含み、前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、前記変更モデル作成ステップ、前記自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すことを特徴とする。
【0009】
かかる方法によれば、自由振動解析ステップでは、部材の一つを削除した後の自由振動解析において、部材を削除する直前の構造系において各部材に作用していた応力を与えるため、この破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができる。
また、新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すため、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した動的解析を行うことができる。即ち、本発明によれば、実際の構造物の崩壊過程を考慮できるため、破壊現象を高い精度で解析することができる。
【0010】
また、前記静的解析ステップでは、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重を作用させて静的解析を行い、前記崩壊判定ステップにおいて、前記構造解析用モデルが崩壊しないと判定された場合には、前記変数αを増加させたうえで、前記静的解析ステップに移行し、前記構造用解析モデルが崩壊したと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップを繰り返すことが好ましい。
【0011】
かかる方法によれば、構造用解析モデルが崩壊したと判定されたときの変数αをこの構造物の余裕度とすることで、余裕度を定量的に算出することができる。
【0012】
また、前記静的解析ステップで破壊された部材があった場合に、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することが好ましい。かかる方法によれば、最初に破壊された部材に起因する余裕度を算出することができる。
【0013】
また、前記静的解析ステップにおいて解析を行った後の構造解析用モデルの中から一つの部材を任意に選択して、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することが好ましい。かかる方法によれば、任意に選定された部材に起因する余裕度を算出することができる。
【0014】
また、前記静的解析ステップの前に、常時荷重載荷による静的解析を行って構造解析用モデルの初期状態を作成する常時載荷解析ステップをさらに含み、前記構造物を構成する各部材のうち、前記常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーに基づいて、前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材を選定することが好ましい。
【0015】
かかる方法によれば、選定された部材に起因する余裕度を算出することができる。また、例えば、常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーの大きい部材を最初に削除する部材に選定することで、破壊される可能性の高い部材を効率よく決定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造物を構成するある部材が破壊した場合における連鎖的な部材破壊を考慮したうえで、構造物の崩壊現象を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る構造解析方法に使用する解析用コンピュータを示す機能ブロック図である。
【図2】(a)は、構造物の一例を示す側面図、(b)は、ファイバーモデルを説明するための模式図、(c)は、シェルモデルを説明するための模式図である。
【図3】シェル要素を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の手順を示すフローチャートである。
【図5A】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。
【図5B】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
【図6A】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半の手順を示したフローチャートである。
【図6B】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の後半の手順を示したフローチャートである。
【図7A】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。
【図7B】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
【図8】実施例で用いた対象橋梁を示した側面図及び設計条件表を示す。
【図9】実施例で用いた対象橋梁をモデル化した斜視図である。
【図10】実施例1に係る常時載荷解析における活荷重載荷位置を示した模式図である。
【図11】実施例1に係る常時載荷解析の各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、垂直材、(c)は、下弦材を示す。
【図12】実施例1に係る終局強度解析における部材破壊位置を示した側面図である。
【図13】実施例1に係る終局強度解析における各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、上弦材、(c)は、下弦材を示す。
【図14】実施例1に係る終局強度解析において、破壊された部材のひずみ履歴を示したグラフあって、(a)は、上弦材、(b)は、下弦材を示す。
【図15】実施例1に係る終局強度解析において、崩壊直前の床版の応力コンター図である。
【図16】実施例1に係るリダンダンシー解析において、重要部材候補を示した図である。
【図17】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は斜材を削除した後の各斜材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図18】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、垂直材を削除した後の各垂直材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図19】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、下弦材を削除した後の下弦材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図20】実施例1に係るリダンダンシー解析において、重要部材候補と個別余裕度をまとめた表である。
【図21】実施例2に係る二部材解析を説明するための図であって、(a)は、橋梁の側面図、(b)(c)は、解析方法を示す。
【図22】実施例2に係る二部材解析の理論解と解析解の比較をしたグラフである。
【図23】実施例3に係る簡易トラス解析を説明するための図であって(a)は、橋梁の側面図、(b)は、簡易トラスを示した模式図、(c)は、簡易トラスを構成する部材の断面形状等をまとめた表である。
【図24】実施例3に係る事前解析における軸力図であって、(a)は、斜材破壊前の構造、(b)は、斜材が存在しない構造、(c)は、斜材が存在した部分の両端に衝撃荷重を作用させた構造を示す。
【図25】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析における軸力履歴を示したグラフであって(a)は、上弦材、(b)は垂直材、(c)は、斜材を示す。
【図26】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の軸力が最大時の変形状態を示した模式図であって、(a)は、本解析、(b)は従来法を示す。
【図27】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の三箇所の軸力履歴を示したグラフである。
【図28】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の細分割解析における軸力履歴を示したグラフである。
【図29】実施例3の3500kN荷重に係る解析結果を示したグラフであって、(a)は、垂直材の軸力履歴、(b)は、垂直材の応力−ひずみ関係を示す。
【図30】実施例3において、従来法及び本解析において、各部材に作用する損傷状態をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る構造物の構造解析方法は、複数の部材で構成される橋梁を対象とするものであり、材料の非線形性を考慮可能な要素で橋梁をモデル化して構造解析(数値解析)用のモデルを作成し、ある部材が破壊した際の連鎖的な破壊を考慮しつつ破壊現象を解析するものである。本実施形態では、構造物の余裕度を算出し、算出した余裕度に基づいて構造物を構成する部材の中の重要部材を決定する場合を例示する。
【0019】
本実施形態では、鋼製トラスと鉄筋コンクリート床版(RC床版)とを具備する鋼構造の橋梁を例示するが、構造物の種類や使用材料等を限定する趣旨ではない。
【0020】
本実施形態に係る構造解析は、図1に示す解析用コンピュータCを利用して実行する。解析用コンピュータCは、記憶手段1と、演算処理手段2と、入力手段3と、表示手段4と、これらを互いに接続するバス線5とを少なくとも備えて構成されている。
【0021】
記憶手段1は、各種プログラムやデータを記憶するものであり、主記憶装置(例えば、DRAMなど)と、補助記憶装置(例えば、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリ)、磁気ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)を含んで構成されている。記憶手段1には、構造解析用モデルを作成する際に起動されるエディタプログラム11と、基本モデルを格納する基本モデルファイル12と、常時載荷解析を行う際に起動される常時載荷解析プログラム13と、静的解析を行う際に起動される静的解析プログラム14と、変更モデルを格納する変更モデルファイル15と、自由振動解析を行う際に起動される自由振動解析プログラム16と、橋梁が崩壊したか判定を行う際に起動される崩壊判定プログラム17と、各解析の結果などを格納する結果ファイル18などが記憶される。
【0022】
演算処理手段2は、演算処理を行うMPU(マイクロプロセッサ)などを含んで構成されている。演算処理手段2は、記憶手段1からエディタプログラム11を読み出して実行すると、構造解析用モデル作成手段31として機能し、常時載荷解析プログラム13を読み出して実行すると、常時載荷解析手段32として機能し、静的解析プログラム14を読み出して実行すると、静的解析手段33として機能し、自由振動解析プログラム16を読み出して実行すると自由振動解析手段34として機能し、崩壊判定プログラム17を読み出して実行すると崩壊判定手段35として機能する。
【0023】
構造解析用モデル作成手段31は、解析対象となる橋梁の解析モデルを作成する際に使用される。作成されたモデルに関するデータは、基本モデルファイル12、変更モデルファイル15にそれぞれ格納される。基本モデルファイル12に格納されるモデル(基本モデル)は、破壊された部材の無い状態の橋梁をモデル化したものである。変更モデルファイル15に格納されるモデル(変更モデル)は、一又は複数の部材が破壊された状態の橋梁をモデル化したものである。
【0024】
常時載荷解析手段32は、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して常時荷重載荷による静的解析を行い、得られた解析結果(例えば、モデルに作用させた載荷荷重と各要素に発生した応力、変位量との関係等)を結果ファイル18に書き込む。
【0025】
静的解析手段33は、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して所定の荷重を作用させて静的解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0026】
自由振動解析手段34は、変更モデルファイル15の中から変更モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して自由振動解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0027】
崩壊判定手段35は、変更モデルファイル15の中から現時点での変更モデル(最も新しい変更モデル)に関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して静的解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0028】
入力手段3は、モデルの作成や前記した各解析に必要なデータ(例えば、部材の諸元、載荷荷重、荷重増分量、境界条件など)を演算処理手段2に入力するためのものであり、キーボードやマウス等から構成されている。入力手段3を利用して解析用コンピュータCに入力されたデータは、記憶手段1に一旦記憶された後、演算処理手段2に出力される。
【0029】
表示手段4は、入力手段3によるデータ入力を補助するための入力フォーム、記憶手段1に記憶された各種ファイル(基本モデルファイル12、変更モデルファイル15)の内容、演算結果を表す図表などを表示するものであり、ディスプレイ装置からなる。
【0030】
ここで、本実施形態において使用する構造解析用モデルを説明する。
本実施形態においては図2の(a)及び(b)に示すように、鋼製トラスを構成する上弦材61を、長手方向に(部材軸方向)に連設された複数のファイバー要素7,7,・・・の集合体(以下、ファイバーモデルという場合がある)とし、塑性化が表現できるようにモデル化する。なお、図示は省略するが、鋼製トラスを構成する下弦材62、斜材63及び鉛直材64もファイバーモデルにてモデル化する。
【0031】
一方、図2の(c)に示すように、RC床版65は、シェル要素8,8,・・・の集合体(以下、シェルモデルという場合がある)とし、塑性化が表現できるようにモデル化する。
【0032】
ファイバー要素7は、「平面保持の仮定」及び「平面不変の仮定」に基づいて形成された梁要素(一次元要素)の一種であり、材料の非線形成性を考慮することができる。ファイバー要素7の適所に設けられた積分点には、「応力−ひずみ関係」と「分担面積」とが与えられる。
【0033】
シェル要素8は、「変形の間、板厚が変化しない」、「中立面に垂直な応力はゼロとし、面内は平面応力状態である」、「時刻0で中立面に垂直であった法線は、字間とともに変化し直線を保つが、必ずしも中立面に垂直である必要はない(即ち、面外せん断変形を許す)」との仮定に基づいて形成された板要素(二次元要素)の一種であり、材料の非線形性を考慮することができる。シェル要素8の適所に設けられた積分点には「応力−ひずみ関係」と「分担面積」とが与えられる。図3に示すように、シェル要素8は、本実施形態では積層構造となっており、コンクリート層8aと、鉄筋層8bを備えている。シェル要素8には、コンクリート及び鉄筋の材料構成則を適用して、床版のひび割れや塑性化を考慮した床版モデルになっている。
【0034】
次に、本実施形態に係る構造物の解析方法の具体手な手順について説明する。
本実施形態に係る構造物の構造解析方法では、「基本余裕度」及び「個別余裕度」の2種類の余裕度の算出を行った後、基本余裕度及び個別余裕度に基づいて重要部材を決定する。「基本余裕度」とは、橋梁を構成する部材のうち最初に破壊させる部材を静的解析の結果に基づいて選定した場合に算出される余裕度をいう。「個別余裕度」とは、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊させる部材を任意に選定した場合に算出される余裕度をいう。
まずは、基本余裕度の算出方法について説明する。
【0035】
<基本余裕度の算出方法>
本実施形態に係る基本余裕度の算出方法では、図4に示すように、準備ステップと、静的解析ステップと、変更モデル作成ステップと、自由振動解析ステップと、破壊部材判定ステップと、崩壊判定ステップと、を含むものである。なお、基本余裕度の算出方法のうち、準備ステップを除いた行程を「終局強度解析」ということがある。
【0036】
準備ステップでは、基本モデルを作成するとともに橋梁の初期状態を取得する。準備ステップでは、まず、橋梁を構成する部材に、部材の破壊及び断面欠損が無いと仮定して、構造解析用のモデル(以下、基本モデルともいう)を作成する(ステップS1)。基本モデルを作成する際には、図1に示すエディタプログラム11を起動する。エディタプログラム11を起動すると、解析用コンピュータCが構造解析用モデル作成手段31として機能し、表示手段4にエディタ画面等が表示されるようになる。オペレータの操作により、入力手段3を介して橋梁に関するデータ(部材の形状、座標、要素の種類、要素の分割数、要素に割り当てる応力−ひずみ関数など)を解析用コンピュータCに入力すると、構造解析用モデル作成手段31によって弾塑性有限解析に適した形式のデータが作成される。作成した基本モデルに関するデータは、基本モデルファイル12に格納される。
【0037】
基本モデルが作成されたならば、基本モデルに対して所定の荷重を載置させて常時載荷解析(ステップS2)を行い、橋梁の初期状態を取得する(ステップS3)。常時載荷解析では、橋梁のRC床版65を評価するために、RC床版の打設を考慮した解析を行って各部材に作用する応力、ひずみ等を取得する。
【0038】
常時載荷解析を行う際には、図1に示す常時載荷解析プログラム13を起動し、解析用コンピュータCを常時載荷解析手段32として機能させる。常時載荷解析プログラムの起動後、オペレータの操作により基本モデルファイル12を指定すると、常時載荷解析手段32によって、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータが読み出され、基本モデルに対して常時荷重載荷による静的解析が行われる。具体的には、常時載荷解析では、床版荷重算出ステップ、第一常時載荷ステップ、第二常時載荷ステップを行う。
【0039】
床版荷重算出ステップでは、常時載荷解析手段32は、基本モデルに対して死荷重(D)を作用させ、RC床版65と上弦材61との接合部(スラブアンカー等)に発生する荷重値を床版重量として結果ファイル18に書き込む。
【0040】
第一荷重ステップでは、常時載荷解析手段32は、結果ファイル18に書き込まれた床版重量を読み出してこの床版重量及びトラスを構成する各部材の死荷重を、RC床版65が無い状態(RC床版65の剛性、弾性係数をゼロにした状態)の基本モデルに載荷させる。
【0041】
第二荷重ステップでは、常時載荷解析手段32は、前記した第一荷重ステップで基本モデルが鉛直方向に変位したため、座標を元の状態に戻してその変位をゼロにし、この状態から基本モデルに床版剛度を入力した後、橋梁の中央径間に活荷重(L)を載荷させる。
【0042】
常時載荷解析手段32は、前記した常時載荷解析によって得られた各部材(上弦材61、下弦材62、斜材63、鉛直材64及びRC床版65)に作用する応力、ひずみ等のデータをこの橋梁の初期状態として結果ファイル18に書き込む(ステップS3)。
【0043】
初期状態が取得されたならば、静的解析ステップを実行する。静的解析ステップでは、基本モデルに対して、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重α(D+L)を基本モデルの上部に鉛直方向に作用させて静的解析(ステップS4)を行う。
【0044】
静的解析を行う際には、図1に示す静的解析プログラム14を起動し、解析用コンピュータCを静的解析手段33として機能させる。静的解析プログラム14の起動後、オペレータの操作により基本モデルファイル12を指定すると、静的解析手段33によって基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータが読み出される。さらに、オペレータの操作により、結果ファイル18を指定すると、静的解析手段33によって橋梁の初期状態に関するデータが読み出される。静的解析手段33は、基本モデル及び初期状態のデータに基づいて弾塑性有限変位解析を行って橋梁の各部材に作用する応力や変位等を取得する。
【0045】
ここで、図5Aは、本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。図5Bは、本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
図5Aに示す基本モデルGは、図2の(a)に示す橋梁の一部を取り出して模式的に示しており、上弦材61a,61b、下弦材62a,62b、斜材63a,63b、垂直材64a,64b,64c及びRC床版65から構成されている。静的解析ステップから破壊部材判定ステップまでは図5A、図5Bも参照して説明する。
【0046】
静的解析(ステップS4)は、具体的には、図5Aの(a)に示すように、基本モデルGに対して、基準荷重(死荷重(D)+活荷重(L))に変数αを乗じた割増荷重α(D+L)を作用させる。変数αの初期値は、α=1に設定する。静的解析手段33は、静的解析を実行して基本モデルGの各部材に作用する応力(最大応力)を応力状態F1(σ11,σ21,σ31,σ41,σ51,σ61,σ71,σ81,σ91,σ101)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0047】
静的解析(ステップS4)を行ったならば、静的解析手段33は、橋梁全体が崩壊したか否かを判定する(ステップS5)。静的解析手段33は、基本モデルが不安定構造となったときに「橋梁全体が崩壊した」と判定し、そのときの変数αを結果ファイル18に書き込む。
【0048】
判定ステップにおいて「橋梁全体が崩壊した」(ステップS5でYes)と判定した場合、静的解析手段33は、そのときの変数αの値(ここでは初期値α=1)をこの橋梁の「基本余裕度」と決定し(ステップS13)、解析を終了する。
【0049】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定した場合(ステップS5でNo)、静的解析手段33は、基本モデルにおいて破壊された部材があるか否かを判定する(ステップS6)。本実施形態では、各部材の最大ひずみ値が、予め設定された値(部材破壊ひずみ値)を超えたときに「破壊された部材が有る」と仮定している。部材破壊ひずみ値は、適宜設定すればよいが、部材にある程度の塑性化を許容することなどを考慮して本実施形態では、降伏ひずみεyの3倍(=3εy)に設定した。
【0050】
判定ステップにおいて、「破壊された部材が無い」と静的解析手段33が判定した場合(ステップS6でNo)、変数αを変更し(ステップS7)、静的解析(ステップS4)に移行する。そして、「橋梁全体が崩壊した」と判定される(ステップS5)か、又は、「破壊された部材が有る」と判定される(ステップS6)まで、静的解析(ステップS4)と判定ステップ(ステップS5、ステップS6)とを繰り返す。変数αの変更幅は適宜設定すればよいが、本実施形態では、例えば0.1ずつ増えるように設定している。
【0051】
静的解析手段33は、漸増する変数αと、そのときの変数αに対応する基本モデルの各部材の応力状態及び変位等とを関連付けて結果ファイル18に書き込む。静的解析(ステップS4)から変数αの変更(ステップS7)までを繰り返す行程は、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0052】
判定ステップにおいて、「破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS6でYes)、静的解析手段33は、破壊された部材を結果ファイル18に書き込むとともに表示手段4に表示させる。
【0053】
本実施形態では、例えば図5Aの(b)に示すように、変数α3(=1.2)のときに、斜材63aが破壊されたと判定されたものとする。この破壊された部材を以下「破壊部材」ともいう。結果ファイル18には、変数α3と関連付けて、斜材63aが破壊される直前の基本モデルGの各部材に作用していた応力状態F3(σ13,σ23,σ33,σ43,σ53,σ63,σ73,σ83,σ93,σ103)及び変位等が格納されている。
【0054】
変更モデル作成ステップでは、オペレータは、基本モデルから前記した静的解析ステップで破壊された破壊部材を削除して、新たなモデルを作成する(ステップS8)。具体的には、図5Aの(c)に示すように、本実施形態では、斜材63aが破壊されたと判定されているため、基本モデルGから斜材63aを削除した変更モデルG1を作成する。
【0055】
新たなモデルを作成する際には、基本モデルを利用するとよい。この場合には、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、破壊したと判定された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。作成された新たなモデルに関するデータは、変更モデルとして変更モデルファイル15に格納される。
【0056】
変更モデルの作成は、入力手段を介してオペレータの指示より行ってもよいが、解析用コンピュータCに作成させてもよい。この場合、構造解析用モデル作成手段31は、基本モデルファイル12から基本モデルに関するデータを読み出す処理、破壊したと判定された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去する処理、作成された変更モデルを変更モデルファイル15に書き込む処理などを実行する。
【0057】
自由振動解析ステップでは、破壊部材が負担していた応力をステップ荷重とした自由振動解析を行う(ステップS9)。自由振動解析を行う際には、図1に示す自由振動解析プログラム16を起動し、解析用コンピュータCを自由振動解析手段34として機能させればよい。自由振動解析手段34は、変更モデルファイル15から変更モデルに関するデータを読み出し、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、この変更モデルに対して破壊部材が破壊される直前の基本モデルに作用していた応力状態及び変異量(格納されているものうち最も新しいもの)を与えて自由振動解析を行う。自由振動解析手段34は、変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位等を取得し、このときの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0058】
具体体には、自由振動解析手段34は、図5Aの(d)に示すように、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルG1に対して割増荷重α3(D+L)を作用させるとともに、破壊部材を削除する直前の基本モデルGに作用していた応力状態F3(σ13,σ23,σ33,σ43,σ53,σ63,σ73,σ83,σ93,σ103)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0059】
そして、図5Bの(a)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルG1の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態F4(σ14,σ24,σ34,σ44,σ54,σ64,σ74,σ84,σ94,σ104)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルG1と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0060】
変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップを実行する(ステップS10)。部材が破壊されたか否かの判定は、前記した判定ステップ(ステップS6)と同様であるため説明を省略する。
【0061】
破壊部材判定ステップにおいて、「新たに破壊された部材がある」があると判定された場合(ステップS10でYes)、変更モデルの作成(ステップS8)と自由振動解析(ステップS9)とを破壊部材判定ステップ(ステップS10)で「新たに破壊された部材が無い」と判定されるまで繰り返す。
【0062】
判定ステップで「新たに破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS10でYes)、変更モデルから新たに破壊された部材を削除し、新たに変更モデルを作成する。新たに変更モデルを作成する際には、変更モデルファイル15に格納されている変更モデルを利用するとよい。この場合には、変更モデルファイル15の中から変更モデルに関するデータを読み出し、新たに破壊された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。新たに作成された変更モデルに関するデータは、変更モデルファイル15に格納される。
【0063】
具体的には、例えば図5Bの(a)及び(b)に示すように、自由振動解析を行って変更モデルG1の斜材63bが破壊されたものとする。ループ後の変更モデル作成ステップでは、斜材63bを削除した変更モデルG2を作成する。
【0064】
ループ後の自由振動解析ステップでは、新たに作成された変更モデルに対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、新たに破壊された破壊部材を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS9)。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析後の変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位をこの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0065】
具体的には、ループ後の自由振動解析ステップでは、図5Bの(c)に示すように、変更モデルG2に対して、割増荷重α3(D+L)を作用させるとともに、先の自由振動解析で得られた応力状態F4(σ14,σ24,σ34,σ44,σ54,σ64,σ74,σ84,σ94,σ104)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0066】
そして、図5Bの(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルG2の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態F5(σ15,σ25,σ35,σ45,σ55,σ65,σ75,σ85,σ95,σ105)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルG2と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0067】
このように、変更モデルの作成(ステップS8)と自由振動解析(ステップS9)とを繰り返す場合には、破壊したと判定された破壊部材を随時削除した変更モデルを作成しつつ、新たに作成された変更モデルに対して破壊直前の変更モデルに作用していた応力状態を与える。これにより、破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができるとともに、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した解析を行うことができる。
なお、変更モデル作成(ステップS8)から破壊部材判定(ステップS10)までを繰り返す行程は、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0068】
崩壊判定ステップでは、現時点での変更モデルに対して静的解析を行い(ステップS11)、橋梁全体が崩壊した否か判定する(ステップS12)。解析を行う際には、図1の崩壊判定プログラム17を起動し、解析用コンピュータCを崩壊判定手段35として機能させる。崩壊判定手段35は、変更モデルファイル15の中から破壊部材判定ステップ(ステップS10)で「新たに破壊された部材が無い」と判定されたときの変更モデル、つまり、変更モデルファイル15のうち最も新しい変更モデルを読み出すとともに、結果ファイル18からその変更モデルに係る応力状態及び変位等に関するデータを読み出し、荷重を作用させずに塑性有限変位解析を実行する。
【0069】
静的解析(ステップS11)を行ったならば、崩壊判定手段35は、橋梁全体が崩壊したか否か判定する(ステップS12)。崩壊判定手段35は、現時点の変更モデルが不安定構造となったときに「橋梁全体が崩壊した」と判定する。
【0070】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS12でNo)崩壊判定手段35は、変数αを変更し(ステップS7)、静的解析(ステップS4)に移行する。ループ後の静的解析(ステップS4)では、現状の変更モデルのまま変数αの値を増加させて基本モデルに対して割増荷重α(D+L)を作用させて静的解析以降の行程を行う。
【0071】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS12でYes)、現時点での変数α(図5A,Bの例では変数α3(=1.2))を「基本余裕度」と決定し(ステップS13)終了する。
【0072】
以上説明した基本余裕度の算出方法では、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊させる部材を静的解析ステップの結果に基づいて選定し、この破壊された部材に起因する連鎖的な破壊現象を考慮しつつ定量的に基本余裕度を算出することができる。
【0073】
<個別余裕度の算出方法>
次に、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法について説明する。個別余裕度の算出方法では、図6A及び図6Bに示すように、準備ステップと、静的解析ステップと、変更モデル作成ステップと、自由振動解析ステップと、破壊部材判定ステップと、崩壊判定ステップと、を含むものである。なお、個別余裕度の算出方法のうち準備ステップを除いた行程を「リダンダンシー解析」ということがある。
【0074】
個別余裕度の算出方法では、変更モデル作成ステップで最初に破壊(削除)する部材を任意に選定する点で前記した基本余裕度の算出方法と異なる。個別余裕度の算出方法のその他の行程は、基本余裕度の算出方法と略共通するため、共通する部分は簡単に説明する。
【0075】
図6Aに示すように、準備ステップでは、基本モデルの作成(ステップS21)、常時載荷解析(ステップS22)を行って橋梁の初期状態を取得する(ステップS23)。橋梁の初期状態は、結果ファイル18に格納される。
【0076】
準備ステップで初期状態が取得されたならば、静的解析ステップ(ステップS24)を実行する。静的解析ステップでは、基本モデル及び初期状態のデータに基づいて弾塑性有限変位解析を行って橋梁の各部材に作用する応力状態や変位等を取得し、得られたデータを結果ファイル18に書き込む。
【0077】
ここで、図7Aは、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。図7Bは、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
図7Aに示す基本モデルJは、図2の(a)に示す橋梁の一部を取り出して模式的に示しており、上弦材61a,61b、下弦材62a,62b、斜材63a,63b、垂直材64a,64b,64c及びRC床版65から構成されている。静的解析ステップから破壊部材判定ステップまでは図7A、図7Bも参照して説明する。
【0078】
静的解析(ステップS24)は、具体的には、図7Aの(a)に示すように、基本モデルJに対して、基準荷重(死荷重(D)+活荷重(L))に変数αを乗じた割増荷重α(D+L)を作用させる。変数αの初期値は、α=1に設定する。静的解析手段33は、静的解析を実行して基本モデルJの各部材に作用する応力(最大応力)を応力状態H1(γ11,γ21,γ31,γ41,γ51,γ61,γ71,γ81,γ91,γ101))として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0079】
変更モデル作成ステップでは、橋梁を構成する一部材を「重要部材候補」として任意に選定し、基本モデルからその部材を削除した新たなモデル(変更モデル)を作成する(ステップS25)。変更モデルを作成する際には、基本モデルを利用するとよい。作成された変更モデルに関するデータは、変更モデルファイル15に格納される。
【0080】
変更モデル作成ステップにおける部材の削除は、本実施形態では、オペレータが行う。オペレータは、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、重要部材候補を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。
【0081】
具体的には、変更モデル作成ステップは、図7Aの(a)及び(b)に示すように、ここでは、垂直材64bを「重要部材候補」に選定し、垂直材64bを削除した変更モデルJ1を作成する。
【0082】
重要部材候補の選定方法は特に制限されないが、例えば、常時載荷解析(ステップS22)の解析結果を利用してもよい。常時載荷解析(ステップS22)によって、橋梁を構成する各部材に作用する荷重、ひずみ等のデータが結果ファイル18に書き込まれるため、例えばひずみエネルギーの値が大きい部材を重要部材候補に選定してもよい。
【0083】
自由振動解析ステップでは、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルに対して割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、重要部材候補を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS26)。つまり、自由振動解析では、重要部材候補が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行う。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析を行った後の変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位等を、その時の変数αと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0084】
具体的には、自由振動解析ステップでは、図7Aの(c)及び(d)に示すように、変更モデルJ1に対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、重要部材候補を削除する直前の基本モデルJに作用していた応力状態H1(γ11,γ21,γ31,γ41,γ51,γ61,γ71,γ81,γ91,γ101)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0085】
そして、図7A(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルJ1の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態H2(γ12,γ22,γ32,γ42,γ52,γ62,γ72,γ82,γ92,γ102)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0086】
変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する(ステップS27)。部材が破壊されたか否かの判定は、基本余裕度の算出方法の部材破壊判定ステップと共通する。
【0087】
部材破壊判定ステップにおいて、「新たに破壊された部材が無い」と判定された場合(ステップS27でNo)、崩壊判定ステップを実行する。崩壊判定ステップは、基本余裕度の算出方法の崩壊判定ステップと共通する。崩壊判定ステップでは、現時点での変更モデル及びこの変更モデルの応力状態や変位等に関するデータを読み出して、荷重を作用させずに静的解析を行い(ステップS28)、橋梁全体が崩壊したか否かを判定する(ステップS29)。
【0088】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS29でYes)、その時点での変数α(ここでは変数α=1)を「個別余裕度」と決定し(ステップS30)終了する。
【0089】
一方、判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS29でNo)、変数αを変更し(ステップS31a)、変更モデル作成ステップで削除した部材を復元させて基本モデル(基本モデルJ)に戻した上で、初期状態を読み込む(ステップS31b)。そして、基本モデル及び初期状態のデータを用いて再度静的解析を行う(ステップS24)。本実施形態では、変数αを0.1増加させて再度静的解析を行う。
【0090】
つまり、ループ後の静的解析(ステップS24)では、モデルを基本モデル(破壊部材の無い状態)に戻し、変数αを増加させて基本モデルに対してα(D+L)の荷重を作用させて静的解析を行う。そして、破壊部材判定ステップで「新たに破壊された部材が有る」と判定されるか(ステップS27でYes)、崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊した」と判定されるまで(ステップS29でYes)、静的解析(ステップS24)から初期状態への復元(ステップS31b)までを繰り返す。この繰り返す行程については、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0091】
破壊部材判定ステップにおいて、「破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS27でYes)、自由振動解析手段34は、破壊された部材を結果ファイル18に書き込むとともに表示手段4に表示させる。そして、図6Bに示すように、変更モデル作成ステップを実行する(ステップS32)。
【0092】
本実施形態では、例えば図7Bに示すように、変数αが変数α4(=1.3)になった場合に、斜材63bが破壊されたものとする。この破壊された部材を以下「破壊部材」ともいう。結果ファイル18には、変数α4と関連付けて、斜材63bが破壊される直前の変更モデルJ1の各部材に作用していた応力状態H4(γ14,γ24,γ34,γ44,γ54,γ64,γ74,γ84,γ94,γ104)及び変位等が格納されている。
【0093】
変更モデル作成ステップでは、基本モデルから破壊部材を削除して、新たな変更モデルを作成する(ステップS32)。具体的には、図7B(a)及び(b)に示すように、本実施形態では斜材63bが破壊されたと判定されたため、変更モデルJ1から斜材63bを削除した変更モデルJ2を作成する。
【0094】
自由振動解析ステップでは、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルに対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、破壊部材を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS33)。つまり、自由振動解析手段34は、破壊部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行う。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析後の変更モデルに作用する応力状態及び変位等を取得し、このときの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0095】
具体的には、自由振動解析ステップでは、図7Bの(c)に示すように、変更モデルJ2に対して、割増荷重α4(D+L)を作用させるとともに、先の自由振動解析で得られた応力状態H4及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0096】
そして、図7Bの(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルJ2の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態H5(γ15,γ25,γ35,γ45,γ55,γ65,γ75,γ85,γ95,γ105)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルJ2と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0097】
新たに作成された変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、この変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップを実行する(ステップS34)。破壊部材判定ステップ(ステップS34)は、基本余裕度の算出方法の破壊部材判定ステップ(ステップS10)と共通する。
【0098】
また、破壊部材判定ステップ(ステップS34)において、「新たに破壊された部材がある」と判定された場合のループの行程は、基本余裕度の算出方法の変更モデル作成ステップ(ステップS8)から破壊部材判定ステップ(ステップS10)までを繰り返す行程と共通する。これにより、破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができるとともに、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した解析を行うことができる。
【0099】
破壊部材判定ステップにおいて「新たに破壊された部材が無い」と判定された場合(ステップS34でNo)、崩壊判定ステップを実行する。崩壊判定ステップは、基本余裕度の算出方法の崩壊判定ステップ(ステップS11、ステップS12)と共通する。
【0100】
崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS36でNo)、変数αを変更し(ステップS31a(図6A参照))、変更モデル作成ステップで削除した部材を復元させて基本モデル(基本モデルJ)に戻した上で、初期状態を読み込む(ステップS31b)。そして、基本モデル及び初期状態のデータを用いて再度静的解析を行う(ステップS24)。つまり、ループ後の静的解析ステップ(ステップS24)では、モデルを基本モデル(破壊部材の無いモデル)に戻し、現時点での変数αの値を増加させて基本モデルに対してα(D+L)の荷重を作用させて静的解析を行う。
【0101】
崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS36でYes)、その時点での変数α(図7A,Bの例では変数α4(=1.3))を「個別余裕度」と決定し(ステップS37)解析を終了する。
【0102】
以上説明した個別余裕度の算出方法では、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊(削除)させる部材を任意に選定し、この部材の破壊に起因する連鎖的な破壊現象を考慮しつつ定量的に個別余裕度を算出することができる。
【0103】
<重要部材の算出方法>
次に、重要部材の算出方法について説明する。前記した個別余裕度の算出方法において、最初に破壊させる部材(最初に削除する部材)を重要部材候補として複数個選定し、それぞれの部材に起因する複数の余裕度を算出する。そして、算出された各個別余裕度を、基本余裕度で除した値のうち、基本余裕度に対する減少率が最も小さい部材を重要部材(Fracture Critical Member)と決定する。
【0104】
以上説明したように本実施形態に係る構造物の構造解析方法によれば、自由振動解析ステップでは、部材の一つを削除した後の自由振動解析において、部材を削除する直前の構造系の応力状態を構造解析用モデルに与えるため、この破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができる。
【0105】
また、新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、破壊された部材を削除して新しいモデルを作成する変更モデル作成ステップと、この新しいモデルに基づく自由振動解析ステップとを繰り返すため、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した動的解析を行うことができる。したがって、実際の構造物の崩壊を考慮しているため、より精度の高い崩壊現象を解析することができる。
【0106】
また、本実施形態に係る構造物の構造解析方法によれば、基本余裕度と個別余裕度を定量的に算出することができる。また、基本余裕度と個別余裕度に基づいて重要部材を決定することができる。
【実施例1】
【0107】
次に、本発明の構造物の構造解析方法の実施例について説明する。実施例1では、実際に構築された橋梁を対象として、前記した基本余裕度の算出方法、個別余裕度の算出方法を使用して基本余裕度及び個別余裕度を算出し、これらの結果から重要部材を決定する。
【0108】
対象橋梁は、図8に示すように、上路式鋼トラス橋であり、昭和56年に建設されたものである。この橋梁は、上部構造のほとんどの重量を占めるRC床版の重心位置がトラス桁より上方へ離れている橋梁形式である。設計条件等は、図8の表に記載された通りである。
【0109】
<基本モデルの作成>
対象橋梁に対して基本モデルを作成すると(図4のステップS1)図9のようになる。部材破壊の損傷を考慮するため、各部材に対して塑性化が表現できるファイバーモデルでモデル化する。部材の要素分割については、一つの部材を8分割程度とした。部材間の接合は、剛接合に設定した。
【0110】
RC床版については、積層タイプのシェル要素(図2の(c)参照)でモデル化した。鉄筋層については、実際の鉄筋断面と等断面になるように板厚を決定し、鉄筋の評価をしている。各層に対して、コンクリート及び鉄筋の材料構成則を適用して、床版のひび割れや塑性化を考慮した床版モデルになっている。
【0111】
上弦材と床版を接合するスラブアンカーについては、非線形のバネで定義した。本発明では、自由振動解析(動的解析)を行うため、各部材間の節点に質量を定義した。また、自由振動解析の減衰定数については、対象橋梁を実際に計測してその計測結果をもとにハーフパワー法により算出した。
【0112】
<RC床版の材料構成則>
対象橋梁の耐力を評価する上で、床版の耐力を精度よく算出する必要がある。そのためには、コンクリートにひび割れや降伏を考慮しなければならない。特に、ひび割れを考慮しないとRC床版の耐力を高く評価してしまう。そこで、本実施例ではコンクリートの引張強度を3MPaにするため、コンクリートの材料構成則として、拡張Drucker pragerを採用した。
【0113】
拡張Drucker pragerの降伏関数は、式(1)のようになる。なお、式(1)でl0=0の場合が通常のDrucker pragerの降伏関数である。
【0114】
【数1】
【0115】
ここで、qは相当応力、lは応力の第一不変量である。α,l0,kは、式(2)、式(3)、式(4)よりそれぞれ計算される。
【0116】
【数2】
【0117】
【数3】
【0118】
【数4】
【0119】
コンクリートの物性値として、引張強度σtを3MPa,降伏応力σcを21MPa、摩擦角βを30度とした。なお、RC床版の鉄筋の材料構成則については、ひずみ硬化E/100のバイリニアモデルとした。
【0120】
<常時載荷解析>
解析モデルの初期状態を作成するために、RC床版の打設を考慮した常時載荷解析による静的解析を前記したステップにしたがって行った(図4のステップS2)。活荷重(L)については、固定荷重として荷重させた。載荷位置は、図10に示すように、中央径間とし、P1荷重については、中央より左側に載荷させた。
【0121】
図11は、実施例1に係る常時載荷解析の各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、垂直材、(c)は、下弦材を示す。図11の(a)乃至(c)に示すように、各部材とも降伏ひずみに対して、約半分のひずみ値になっている。比較的余裕があるのは、床版剛性の影響であると考えられる。
なお、確認のため、床版剛度が無い解析モデルに対して常時載荷解析を行ったところ、斜材の引張り部材においてひずみ値が約1.7倍になった。また、常時載荷解析において、最初から床版剛度を考慮した解析では、床版剛度を過大に評価することになり、各部材とも応答値が三割小さくなることを確認した。
【0122】
<終局強度解析:基本余裕度の算出>
図4のフローにしたがって、終局強度解析(静的解析ステップ、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップ)を行った。図12は、実施例1に係る終局強度解析における部材破壊位置を示した側面図である。図13は、実施例1に係る終局強度解析における各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、上弦材、(c)は、下弦材を示す。
【0123】
図12に示すように、静的解析ステップを行ったところ、最初に斜材101が部材破壊ひずみ値に達して破壊した(図4のステップS6)。この時の変数αの値は、α=2.6であった。
【0124】
その後、変更モデル作成ステップ(図4のステップS8)、自由振動解析ステップ(ステップS9)の繰り返しによって、図12に示すように、上弦材102、下弦材103の順番で連鎖的に破壊した。その後、新たに破壊される部材が無くなり、崩壊判定ステップ(図4のステップS12)において、橋梁が不安定構造になって橋梁全体が崩壊したと判定され、解析が終了した。この解析の結果、対象橋梁の基本余裕度は、「2.6」と算出された。
なお、破壊された部材は、いずれも荷重がより大きく作用する中央より左側(図10参照)の部材である。
【0125】
ここで、図13の(a)に示すように、斜材101の破壊については、橋脚K1及び橋脚K2付近の斜材のひずみが大きく、わずかに橋脚K1側の斜材101が先に部材破壊ひずみ値に達したことがわかる。2番目に破壊した上弦材102及び3番目に破壊した下弦材103に鑑みると、最初に破壊した斜材101付近に損傷が集中していき、橋梁全体が崩壊するといえる。
【0126】
なお、常時載荷解析において、最初から床版剛度を考慮して同様の終局強度解析を行ったところ、上弦材が破壊せずに他の部材が破壊した。つまり、破壊形態が変わったことを確認している。
【0127】
図14は、実施例1に係る終局強度解析において、破壊された部材のひずみ履歴を示したグラフあって、(a)は、上弦材、(b)は、下弦材を示す。
図14の(a)に示すように、斜材101が破壊した後、0.031秒後に上弦材102のひずみが破壊ひずみ値である3εyに達し、破壊したことがわかる。また、図14の(b)に示すように、斜材101が破壊した後、0.038秒後に下弦材103のひずみが破壊ひずみ値である3εyに達し、破壊したことがわかる。対象橋梁は、斜材101が破壊されてから0.038秒後に橋梁全体が不安定になり崩壊したことになる。
【0128】
図15は、実施例1に係る終局強度解析において、崩壊直後の床版の応力コンター図である。図15のうち、黒色の部分は引張応力、灰色の部分は圧縮応力、白色の部分は小さい応力がそれぞれ発生していることを示している。橋梁の中央部分のRC床版は、圧縮状態にあり、橋脚K1、橋脚K2付近のRC床版の大部分が引張強度3MPaに達しているのがわかる。また、左側の破壊部材が集中したRC床版付近だけが引張応力状態になっているのがわかる。なお、RC床版のうち、コンクリートが引張強度に達している部分の鉄筋が降伏していなかったことが確認された。また、スラブアンカーについては大部分が塑性化し、部分的に破断(許容変位超過)していることが確認された。
【0129】
<リダンダンシー解析:個別余裕度の算出>
次に、図6A及び図6Bのフローにしたがって、リダンダンシー解析(静的解析ステップ、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ、崩壊判定ステップ)を行った。変更モデル作成ステップ(図6AのステップS25)において、最初に削除する部材(重要部材候補)は、オペレータが任意に選定すればよいが、本実施例では常時載荷解析の結果を利用した。つまり、図11に基づいて、斜材、垂直材、下弦材の中からひずみが大きくかつ降伏点の高い部材を重要部材候補として一つずつ選定した。重要部材候補は、すべて橋梁の左側に係る部材である。重要部材候補として選定した斜材111、垂直材112及び下弦材113の位置を図16に示す。
【0130】
<斜材111の個別余裕度>
図17は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は斜材を削除した後の各斜材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、斜材111(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図17の(b)に示すように、新たに左側の下弦材114が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.8であった。
【0131】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材114を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を斜材111に選定した場合の個別余裕度は、「1.8」と決定された。
【0132】
図17の(b)を参照して破壊情況を考察すると、斜材111(左側)付近の下弦材114(左側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0133】
<垂直材112の個別余裕度>
図18は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、垂直材を削除した後の各垂直材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、垂直材112(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図18の(b)に示すように、新たに左側の下弦材114が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.4であった。
【0134】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材114を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を垂直材112に選定した場合の個別余裕度は、「1.4」と決定された。
【0135】
図18の(b)を参照して破壊情況を考察すると、垂直材112(左側)付近の下弦材114(左側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0136】
<下弦材113の個別余裕度>
図19は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、下弦材を削除した後の下弦材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、下弦材113(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図19の(b)に示すように、新たに右側の下弦材115(右側)が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.7であった。
【0137】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材115を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を下弦材113(左側)にした場合の個別余裕度は、「1.7」と決定された。
【0138】
図19の(b)を参照して破壊情況を考察すると、下弦材113(左側)付近の下弦材115(右側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0139】
図20は、リダンダンシー解析結果を整理した表である。表内の「α減少率」とは、各部材における個別余裕度を終局強度解析によって得られた基本余裕度α=2.6で除した値である。図20から、個別余裕度の減少率が最も小さい垂直材112が重要部材(FCM)と決定された。
【実施例2】
【0140】
実施例2では、二つの部材での解析(以下、二部材解析ともいう)を行って、本発明に係る構造物の構造解析方法の検証を行った。二部材解析では、二部材解析によって得られた解析解と、一つの部材に750kNの荷重を作用させるステップ応答解析の理論解とを比較検証する。
【0141】
<解析条件>
図21の(a)及び(b)に示すように、対象橋梁の部材(ここでは斜材)を2本取り出して、取り出した部材201、部材202を重ねた状態で片側端部を拘束し、自由端部に対して引張荷重1500kNを部材軸方向に作用させる。
【0142】
次に、図21の(c)に示すように、部材201を破断(削除)させ、残りの部材202の応答特性を観察する。解析モデルとしては、一部材一要素とし、質量を自由端部の接点に集約させる。なお、減衰は0.1%と仮定した。
【0143】
<解析方法>
解析方法は、まず、部材を2本重ねた状態で引張荷重1500kNを作用させる静的解析を行い、その応力状態を保存する。この行程は、例えば、図4で示す静的解析ステップ(ステップS4)に相当する。
【0144】
次に、部材201を削除した構造にする。この行程は、例えば、図4で示す変更モデル作成ステップ(ステップS8)に相当する。
【0145】
次に、保存しておいた応力状態を読み込み、減衰0.1%を考慮した動的解析を行う。この行程は、例えば、図4で示す自由振動解析ステップ(ステップS9)に相当する。動的解析を開始する時点では、部材201が負担していた応力が、部材202に作用していることになる。
【0146】
本解析における動的解析においては、地震応答解析で用いられるニューマークのβ法を採用した。時間積分間隔Δtについては、地震応答解析で用いられるΔt(例えば0.01)より小さくし、式(5)のCourant条件を十分に満足するように0.0001とした。
【0147】
【数5】
【0148】
ここで、lminは、最小節点間距離、cは、応力波の速度(=(E/p)1/2、E:弾性係数、p:密度)である。
なお、本解析において使用した解析ソフトは、SeanFEM(株式会社耐震解析研究所製)を使用しており、解析の種類は弾塑性有限変位解析である。
【0149】
<比較検証>
図22に示すように、一つの部材に初期状態からの750kN(一つの部材の負担分)のステップ応答解析を行って得られた理論解と、二部材解析で得られた解析解とを比較すると、略同等の結果となる。つまり、本発明に係る構造物の構造解析方法によれば、一の部材が破壊した場合の衝撃力が評価できているといえる。
【実施例3】
【0150】
実施例3では、対象橋梁の一部を抜き取った簡易トラス構造を用いて、部材破壊後の挙動を解析し、本発明に係る構造物の構造解析方法の検証を行う。なお、本実施例のように簡易トラス構造を用いた解析を「簡易トラス解析」ともいう。
【0151】
<解析条件>
図23の(a)及び(b)に示すように、対象橋梁の橋脚K1上の一部を抜き出して、簡易トラス構造120を作成する。簡易トラス構造120は、上弦材121,122、下弦材123,124、垂直材125,126,127及び斜材128,129で構成されている。垂直材125,127は、下弦材123,124が水平となるように実際よりも長く形成した。簡易トラス構造120の各部材の条件は、図22の(c)に示したとおりである。
【0152】
簡易トラス構造120は、ファイバーモデルでモデル化する。ここでは、一部材を8分割し、部材同士の接合条件は剛接合とした。要素分割の影響をみるため、細かい要素分割の場合(以下、「細分割モデル」という)も解析を実施した。質量については、部材結合部だけでなく全節点に定義している。また、簡易トラス構造120が塑性化することを考慮しているため、材料構成則を弾性係数が2×10MPa、降伏応力を235MPa,355MPa、ひずみ硬化をE/100のバイリニアモデルの移動硬化則とした。
【0153】
このような条件下で、簡易トラス構造120の左上端部に水平荷重1500kNと3500kNの二種類の荷重を作用させた状態から斜材128が破壊(削除)した直後の挙動を具体的に考察した。動的解析の方法については、実施例2と同じであり、時間積分間隔Δtを0.0001とし、Courant条件を満足するようにした。細分割モデルでは時間積分間隔Δtを0.00001とした。
【0154】
<事前解析>
本解析による応答解析を行う前に、簡易トラス構造120に対して事前解析を行う。図24は、実施例3に係る事前解析における軸力図であって、(a)は、斜材破壊前、(b)は、斜材が存在しない構造、(c)は、斜材が存在した部分の両端に衝撃荷重を作用させた構造を示す。事前解析では、健全な状態の構造(図24の(a))と、斜材128が最初から存在しない構造(図24の(b))の二種類の構造で水平荷重1500kNを作用させたときの各部材に作用する軸力を取得する。
【0155】
図24の(a)及び(b)に示すように、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’では、簡易トラス構造120と比較して、斜材129の軸力が大きくなり、垂直材126が荷重を負担するようになったことがわかる。
【0156】
なお、図24の(c)では、破壊された部材が負担していた軸力に対して衝撃係数1.854を乗じて得た衝撃荷重を、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’の斜材128の両端部の位置に作用させて静的解析を行った。前記した非特許文献1において行われたリダンダンシー評価のための解析(以下、「従来法」とする)は、図24の(a)と(c)の結果を重ね合わせたものとなる。
【0157】
<1500kN荷重の解析結果>
(全体的な考察について)
図25は、実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析における軸力履歴を示したグラフであって(a)は、上弦材、(b)は垂直材、(c)は、斜材を示す。図25に示すように、大きな軸力が発生する上弦材121、垂直材126及び斜材129を対象として、斜材128を破壊させた後の挙動を考察した。
【0158】
各グラフの応答値のうち、符号の末尾に「a」を付した応答値は本解析による解析結果を示し、「b」を付した応答値は斜材128が最初から無い状態の各部材の軸力(図24の(b)に対応)を示し、「c」を付した応答値は従来法による解析結果を示す。
【0159】
本発明による解析結果は、応答値121a,126a,129aに示すように、斜材128が最初から無い状態を示した応答値121b,126b,129bを中心に振動していることがわかる。本解析では、全ての部材が弾性応答であった。
【0160】
図25の(a)に示すように、上弦材121については、斜材129にくらべて軸力が半分程度であり、振幅も小さいことがわかる。また、斜材128が最初から無い状態を示した応答値121bと、従来法を示した応答値121cとが重なっているため、従来法では衝撃による挙動が表現できていないことがわかる。つまり、従来法では、斜材128が破壊した後の振動による影響を考慮できていないのに対し、本解析では、その影響を考慮できている。
【0161】
図25の(b)に示すように、垂直材126の応答値126aの最大値は、従来法の応答値126cの値よりも小さい。つまり、従来法が過大評価する傾向にあることがわかる。
【0162】
一方、図25の(c)に示すように、斜材129の応答値129aの最大値は、従来法の応答値129cの値と略同等である。
【0163】
ここで、従来法と本解析との差についてさらに考察する。図26は、実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の軸力が最大時の変形状態を示した模式図であって、(a)は、本解析、(b)は従来法を示す。図26のうち太字の部分が変形後の状態を表している。
【0164】
図26の(a),(b)を比較すると、本解析の斜材129はS字型に変形している。これに対し、従来法の斜材129’’では変形状態が異なる。従来法では、斜材129’’自体が振動していることがわかる。
【0165】
(各部材の縦振動について)
斜材128が破壊した後の各部材に発生する振動の傾向を比較すると、破断させる斜材128とほぼ垂直な方向に配設されている斜材129は、図25の(c)に示すように、高周波の振動成分はあまり含まれていないことがわかる。
一方、図25の(a),(b)に示すように、上弦材121、垂直材126では、高周波の振動成分が多く含まれていることがわかる。また、これらの高周波の振動は、時間が経過すれば小さくなることがわかる。これらより、斜材128の破壊により各部材に発生する軸力の高周波成分は、各部材内の縦振動によるものであり、発生最大軸力に対して影響は小さいといえる。即ち、各部材内に発生する軸力(断面力)は、各部材のたわみ振動によるものと考えられる。
【0166】
(各部材内の軸力の伝達について)
ひとつの部材内の振動(軸力)の伝達を明らかにするため、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’の垂直材126(図24の(b)参照)に着目した。図27は、実施例3の1500kN荷重において、垂直材の三箇所の軸力履歴を示したグラフである。
図27に示すように、垂直材126の中央部分、両端ともに概ね同様の振動をしていることがわかる。さらに、部材内の縦振動の影響が部材内位置により差があることもわかる。また、図27に示すように、軸力の応答履歴の立ち上がり時期(0〜0.002秒)において、一つの部材内で位相差が現れているのがわかる。なお、この位相差の大きさは、理論計算と一致することを確認した。
【0167】
(部材要素分割の影響)
これまでの結果は、簡易トラス構造120を構成する各部材において、一つの部材を8分割に分割したもの(以下、「通常分割」という)である。この分割は、対象橋梁の全体のモデル化を意識したものである。その分割の影響を調べるため、一つの部材を100要素に分割した場合(以下、「細分割」という)の解析も実施した。図28は、実施例3の1500kN荷重において、垂直材の細分割解析における軸力履歴を示したグラフである。図中、通常分割は応答値126aで表されており、細分割は応答値126dで表されている。
【0168】
図28に示すように、応答値の1サイクルくらいまでは、通常分割(応答値126a)、細分割(応答値124d)ともに一致しているが、時間経過とともに差が現れることがわかる。本発明に係る構造解析方法では、軸力の履歴において最大値が現れる最初の1サイクルが重要であるため、通常分割であれば実際の崩壊を考慮できると考えられる。
【0169】
<3500kN荷重の解析結果>
前記した1500kN荷重と同様に、簡易トラス構造120(図23の(b)参照)に対して水平荷重を3500kNとした状態から、斜材128を破壊(削除)させて動的解析を行った。なお、3500kNの水平荷重は、図24の(b)に示す簡易トラス構造120’に作用させても全ての部材が塑性化しない程度の荷重である。
【0170】
図29は、実施例3の3500kN荷重に係る解析結果を示したグラフであって、(a)は、垂直材の軸力履歴、(b)は、垂直材の応力−ひずみ関係を示す。図中、応答値126a’は本解析の結果を示し、応答値126b’は斜材が最初から無い状態(図24の(b)に対応)の解析結果を示し、応答値126c’は従来法の結果を示す。
【0171】
図29の(a)に示すように、本解析の応答値126a’は、1500kN荷重の場合と異なり、最初から斜材が存在しない簡易トラス構造の応答値126b’を中心に発生軸力が振動せず、最大軸力を過ぎた後は低下した状態となることがわかる。
【0172】
また、図29の(b)に示すように、応答値126d’が降伏点を過ぎており、垂直材126が大きく塑性化しているのがわかる。つまり、斜材128の破壊の衝撃により、部材が塑性化し振動特性が変化したといえる。ここでは、垂直材126以外の結果の掲載を省略するが、垂直材126以外のほとんどの部材が大きく塑性化したことを確認している。
【0173】
図30は、実施例3において、従来法及び本解析において、各部材に作用する損傷状態をまとめた表である。図30の数値は、3500kN荷重の解析結果を降伏ひずみεyで正規化したものである。図30に示すように、本解析においては上弦材以外の部材が大きく塑性化しているのに対し、従来法では、斜材129のみが1.22εy程度の塑性化になっている。このようになったのは、従来法では線形解析となり、部材が塑性化したことによる力の分配が正確に行えず、過小評価したためと考えられる。
【0174】
以上説明した実施例3によれば、本解析(本発明)によれば、部材破壊後の挙動を精度よく再現できているのに対し、従来法では、部材破壊後の挙動が弾性範囲内のレベルにおいては過大評価する傾向があると考えられる。また、従来法では、応答値が大きくなり、塑性域でのレベルになると、過小評価する傾向があると考えられる。
【符号の説明】
【0175】
1 記憶手段
2 演算処理手段
3 入力手段
4 表示手段
5 バス
11 エディタプログラム
12 基本モデルファイル
13 常時載荷解析プログラム
14 静的解析プログラム
15 変更モデルファイル
16 自由振動解析プログラム
17 崩壊判定プログラム
18 結果ファイル
31 構造解析用モデル作成手段
32 常時載荷解析手段
33 静的解析手段
34 自動振動解析手段
35 崩壊判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を構成する一部材が破壊した場合における構造物の崩壊現象を解析する構造物の構造解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内外においてトラス橋の崩落事故及び部材破断事故が発生した。これらの事故を契機として、鋼トラス橋の破壊現象の解析が重要視され、橋梁の維持管理分野等に関する研究が進められている。この解析方法の一つとして、橋梁のリダンダンシー解析が知られている。リダンダンシーとは、構造物を構成する部材が破壊した後の構造物全体系の余裕度(終局状態までの余裕度)を意味している。このリダンダンシー解析によって、橋梁のリダンダンシーや、構造物の重要部材が正確に決定できれば、点検期間や点検部材の決定等に役立てることができる。
【0003】
例えば、非特許文献1に開示されたリダンダンシー解析では、線形解析を行って着目部材の破壊時における他の部材断面力を算出し、その断面力を用いて各部材が終局状態であるか否かを判定している。この断面力の解析においては、橋梁の上下弦材及び斜材等を梁要素、RC床版をシェル要素としてモデル化し、所定の荷重を載荷して解析を行っている。載荷する荷重は、死荷重、活荷重に加え、部材破壊による急激な応力開放に伴う衝撃を考慮するため、解析結果に対して衝撃係数(ここでは衝撃係数1.854)を乗じている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】永谷 秀樹、他8名、「我国の鋼トラス橋を対象としたリダンダンシー解析の検討」、土木学会論文集A、Vol.65 No.2 p.410−425、2009年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に係るリダンダンシー解析では以下のような問題がある。
(1)部材破壊時に生じる衝撃力の算出において、根拠が不明確な衝撃係数(衝撃係数1.854)を採用している。部材が破壊しても、実際にはこのような断面力が発生しない可能性がある。つまり、部材破壊後の挙動が弾性範囲内にある場合においては、衝撃力を過大評価する傾向がある。
(2)解析手法が、線形解析であるため、部材が塑性化した場合の挙動については不明確である。つまり、部材に作用する荷重が大きくなり塑性域に達すると、応答値を過小評価している。
【0006】
(3)破壊と判定された一つの部材をもって、橋梁全体の評価や構造上重要部材の決定をしている。一つの部材が破壊すれば、部材力の再分配や部材の破壊が連鎖的に破壊することもあるが、これらについては考慮できていない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、構造物を構成するある部材が破壊した場合における連鎖的な部材破壊を考慮したうえで、構造物の崩壊現象を解析する構造物の構造解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、複数の部材で構成される構造物を、前記各部材の非線形性を考慮可能な要素でモデル化して構造解析用モデルを作成し、この構造解析用モデルを使用して構造物の破壊現象を解析する構造物の構造解析方法であって、構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルを構成する各部材に作用する応力を取得する静的解析ステップと、前記構造解析用モデルの部材の一つを削除した状態の構造解析用モデルを新たに作成する変更モデル作成ステップと、前記変更モデル作成ステップで作成された構造解析用モデルに対して、部材を削除する直前に各部材に作用していた応力を与えて自由振動解析を行う自由振動解析ステップと、前記自由振動解析ステップにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップと、前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定された場合に、前記自由振動解析を行った後の構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルが崩壊したか否かを判定する崩壊判定ステップと、を含み、前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、前記変更モデル作成ステップ、前記自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すことを特徴とする。
【0009】
かかる方法によれば、自由振動解析ステップでは、部材の一つを削除した後の自由振動解析において、部材を削除する直前の構造系において各部材に作用していた応力を与えるため、この破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができる。
また、新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すため、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した動的解析を行うことができる。即ち、本発明によれば、実際の構造物の崩壊過程を考慮できるため、破壊現象を高い精度で解析することができる。
【0010】
また、前記静的解析ステップでは、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重を作用させて静的解析を行い、前記崩壊判定ステップにおいて、前記構造解析用モデルが崩壊しないと判定された場合には、前記変数αを増加させたうえで、前記静的解析ステップに移行し、前記構造用解析モデルが崩壊したと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップを繰り返すことが好ましい。
【0011】
かかる方法によれば、構造用解析モデルが崩壊したと判定されたときの変数αをこの構造物の余裕度とすることで、余裕度を定量的に算出することができる。
【0012】
また、前記静的解析ステップで破壊された部材があった場合に、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することが好ましい。かかる方法によれば、最初に破壊された部材に起因する余裕度を算出することができる。
【0013】
また、前記静的解析ステップにおいて解析を行った後の構造解析用モデルの中から一つの部材を任意に選択して、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することが好ましい。かかる方法によれば、任意に選定された部材に起因する余裕度を算出することができる。
【0014】
また、前記静的解析ステップの前に、常時荷重載荷による静的解析を行って構造解析用モデルの初期状態を作成する常時載荷解析ステップをさらに含み、前記構造物を構成する各部材のうち、前記常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーに基づいて、前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材を選定することが好ましい。
【0015】
かかる方法によれば、選定された部材に起因する余裕度を算出することができる。また、例えば、常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーの大きい部材を最初に削除する部材に選定することで、破壊される可能性の高い部材を効率よく決定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造物を構成するある部材が破壊した場合における連鎖的な部材破壊を考慮したうえで、構造物の崩壊現象を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る構造解析方法に使用する解析用コンピュータを示す機能ブロック図である。
【図2】(a)は、構造物の一例を示す側面図、(b)は、ファイバーモデルを説明するための模式図、(c)は、シェルモデルを説明するための模式図である。
【図3】シェル要素を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の手順を示すフローチャートである。
【図5A】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。
【図5B】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
【図6A】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半の手順を示したフローチャートである。
【図6B】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の後半の手順を示したフローチャートである。
【図7A】本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。
【図7B】本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
【図8】実施例で用いた対象橋梁を示した側面図及び設計条件表を示す。
【図9】実施例で用いた対象橋梁をモデル化した斜視図である。
【図10】実施例1に係る常時載荷解析における活荷重載荷位置を示した模式図である。
【図11】実施例1に係る常時載荷解析の各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、垂直材、(c)は、下弦材を示す。
【図12】実施例1に係る終局強度解析における部材破壊位置を示した側面図である。
【図13】実施例1に係る終局強度解析における各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、上弦材、(c)は、下弦材を示す。
【図14】実施例1に係る終局強度解析において、破壊された部材のひずみ履歴を示したグラフあって、(a)は、上弦材、(b)は、下弦材を示す。
【図15】実施例1に係る終局強度解析において、崩壊直前の床版の応力コンター図である。
【図16】実施例1に係るリダンダンシー解析において、重要部材候補を示した図である。
【図17】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は斜材を削除した後の各斜材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図18】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、垂直材を削除した後の各垂直材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図19】実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、下弦材を削除した後の下弦材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
【図20】実施例1に係るリダンダンシー解析において、重要部材候補と個別余裕度をまとめた表である。
【図21】実施例2に係る二部材解析を説明するための図であって、(a)は、橋梁の側面図、(b)(c)は、解析方法を示す。
【図22】実施例2に係る二部材解析の理論解と解析解の比較をしたグラフである。
【図23】実施例3に係る簡易トラス解析を説明するための図であって(a)は、橋梁の側面図、(b)は、簡易トラスを示した模式図、(c)は、簡易トラスを構成する部材の断面形状等をまとめた表である。
【図24】実施例3に係る事前解析における軸力図であって、(a)は、斜材破壊前の構造、(b)は、斜材が存在しない構造、(c)は、斜材が存在した部分の両端に衝撃荷重を作用させた構造を示す。
【図25】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析における軸力履歴を示したグラフであって(a)は、上弦材、(b)は垂直材、(c)は、斜材を示す。
【図26】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の軸力が最大時の変形状態を示した模式図であって、(a)は、本解析、(b)は従来法を示す。
【図27】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の三箇所の軸力履歴を示したグラフである。
【図28】実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の細分割解析における軸力履歴を示したグラフである。
【図29】実施例3の3500kN荷重に係る解析結果を示したグラフであって、(a)は、垂直材の軸力履歴、(b)は、垂直材の応力−ひずみ関係を示す。
【図30】実施例3において、従来法及び本解析において、各部材に作用する損傷状態をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る構造物の構造解析方法は、複数の部材で構成される橋梁を対象とするものであり、材料の非線形性を考慮可能な要素で橋梁をモデル化して構造解析(数値解析)用のモデルを作成し、ある部材が破壊した際の連鎖的な破壊を考慮しつつ破壊現象を解析するものである。本実施形態では、構造物の余裕度を算出し、算出した余裕度に基づいて構造物を構成する部材の中の重要部材を決定する場合を例示する。
【0019】
本実施形態では、鋼製トラスと鉄筋コンクリート床版(RC床版)とを具備する鋼構造の橋梁を例示するが、構造物の種類や使用材料等を限定する趣旨ではない。
【0020】
本実施形態に係る構造解析は、図1に示す解析用コンピュータCを利用して実行する。解析用コンピュータCは、記憶手段1と、演算処理手段2と、入力手段3と、表示手段4と、これらを互いに接続するバス線5とを少なくとも備えて構成されている。
【0021】
記憶手段1は、各種プログラムやデータを記憶するものであり、主記憶装置(例えば、DRAMなど)と、補助記憶装置(例えば、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリ)、磁気ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)を含んで構成されている。記憶手段1には、構造解析用モデルを作成する際に起動されるエディタプログラム11と、基本モデルを格納する基本モデルファイル12と、常時載荷解析を行う際に起動される常時載荷解析プログラム13と、静的解析を行う際に起動される静的解析プログラム14と、変更モデルを格納する変更モデルファイル15と、自由振動解析を行う際に起動される自由振動解析プログラム16と、橋梁が崩壊したか判定を行う際に起動される崩壊判定プログラム17と、各解析の結果などを格納する結果ファイル18などが記憶される。
【0022】
演算処理手段2は、演算処理を行うMPU(マイクロプロセッサ)などを含んで構成されている。演算処理手段2は、記憶手段1からエディタプログラム11を読み出して実行すると、構造解析用モデル作成手段31として機能し、常時載荷解析プログラム13を読み出して実行すると、常時載荷解析手段32として機能し、静的解析プログラム14を読み出して実行すると、静的解析手段33として機能し、自由振動解析プログラム16を読み出して実行すると自由振動解析手段34として機能し、崩壊判定プログラム17を読み出して実行すると崩壊判定手段35として機能する。
【0023】
構造解析用モデル作成手段31は、解析対象となる橋梁の解析モデルを作成する際に使用される。作成されたモデルに関するデータは、基本モデルファイル12、変更モデルファイル15にそれぞれ格納される。基本モデルファイル12に格納されるモデル(基本モデル)は、破壊された部材の無い状態の橋梁をモデル化したものである。変更モデルファイル15に格納されるモデル(変更モデル)は、一又は複数の部材が破壊された状態の橋梁をモデル化したものである。
【0024】
常時載荷解析手段32は、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して常時荷重載荷による静的解析を行い、得られた解析結果(例えば、モデルに作用させた載荷荷重と各要素に発生した応力、変位量との関係等)を結果ファイル18に書き込む。
【0025】
静的解析手段33は、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して所定の荷重を作用させて静的解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0026】
自由振動解析手段34は、変更モデルファイル15の中から変更モデルに関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して自由振動解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0027】
崩壊判定手段35は、変更モデルファイル15の中から現時点での変更モデル(最も新しい変更モデル)に関するデータを読み出し、読み出したモデルを使用して静的解析を行い、得られた解析結果を結果ファイル18に書き込む。
【0028】
入力手段3は、モデルの作成や前記した各解析に必要なデータ(例えば、部材の諸元、載荷荷重、荷重増分量、境界条件など)を演算処理手段2に入力するためのものであり、キーボードやマウス等から構成されている。入力手段3を利用して解析用コンピュータCに入力されたデータは、記憶手段1に一旦記憶された後、演算処理手段2に出力される。
【0029】
表示手段4は、入力手段3によるデータ入力を補助するための入力フォーム、記憶手段1に記憶された各種ファイル(基本モデルファイル12、変更モデルファイル15)の内容、演算結果を表す図表などを表示するものであり、ディスプレイ装置からなる。
【0030】
ここで、本実施形態において使用する構造解析用モデルを説明する。
本実施形態においては図2の(a)及び(b)に示すように、鋼製トラスを構成する上弦材61を、長手方向に(部材軸方向)に連設された複数のファイバー要素7,7,・・・の集合体(以下、ファイバーモデルという場合がある)とし、塑性化が表現できるようにモデル化する。なお、図示は省略するが、鋼製トラスを構成する下弦材62、斜材63及び鉛直材64もファイバーモデルにてモデル化する。
【0031】
一方、図2の(c)に示すように、RC床版65は、シェル要素8,8,・・・の集合体(以下、シェルモデルという場合がある)とし、塑性化が表現できるようにモデル化する。
【0032】
ファイバー要素7は、「平面保持の仮定」及び「平面不変の仮定」に基づいて形成された梁要素(一次元要素)の一種であり、材料の非線形成性を考慮することができる。ファイバー要素7の適所に設けられた積分点には、「応力−ひずみ関係」と「分担面積」とが与えられる。
【0033】
シェル要素8は、「変形の間、板厚が変化しない」、「中立面に垂直な応力はゼロとし、面内は平面応力状態である」、「時刻0で中立面に垂直であった法線は、字間とともに変化し直線を保つが、必ずしも中立面に垂直である必要はない(即ち、面外せん断変形を許す)」との仮定に基づいて形成された板要素(二次元要素)の一種であり、材料の非線形性を考慮することができる。シェル要素8の適所に設けられた積分点には「応力−ひずみ関係」と「分担面積」とが与えられる。図3に示すように、シェル要素8は、本実施形態では積層構造となっており、コンクリート層8aと、鉄筋層8bを備えている。シェル要素8には、コンクリート及び鉄筋の材料構成則を適用して、床版のひび割れや塑性化を考慮した床版モデルになっている。
【0034】
次に、本実施形態に係る構造物の解析方法の具体手な手順について説明する。
本実施形態に係る構造物の構造解析方法では、「基本余裕度」及び「個別余裕度」の2種類の余裕度の算出を行った後、基本余裕度及び個別余裕度に基づいて重要部材を決定する。「基本余裕度」とは、橋梁を構成する部材のうち最初に破壊させる部材を静的解析の結果に基づいて選定した場合に算出される余裕度をいう。「個別余裕度」とは、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊させる部材を任意に選定した場合に算出される余裕度をいう。
まずは、基本余裕度の算出方法について説明する。
【0035】
<基本余裕度の算出方法>
本実施形態に係る基本余裕度の算出方法では、図4に示すように、準備ステップと、静的解析ステップと、変更モデル作成ステップと、自由振動解析ステップと、破壊部材判定ステップと、崩壊判定ステップと、を含むものである。なお、基本余裕度の算出方法のうち、準備ステップを除いた行程を「終局強度解析」ということがある。
【0036】
準備ステップでは、基本モデルを作成するとともに橋梁の初期状態を取得する。準備ステップでは、まず、橋梁を構成する部材に、部材の破壊及び断面欠損が無いと仮定して、構造解析用のモデル(以下、基本モデルともいう)を作成する(ステップS1)。基本モデルを作成する際には、図1に示すエディタプログラム11を起動する。エディタプログラム11を起動すると、解析用コンピュータCが構造解析用モデル作成手段31として機能し、表示手段4にエディタ画面等が表示されるようになる。オペレータの操作により、入力手段3を介して橋梁に関するデータ(部材の形状、座標、要素の種類、要素の分割数、要素に割り当てる応力−ひずみ関数など)を解析用コンピュータCに入力すると、構造解析用モデル作成手段31によって弾塑性有限解析に適した形式のデータが作成される。作成した基本モデルに関するデータは、基本モデルファイル12に格納される。
【0037】
基本モデルが作成されたならば、基本モデルに対して所定の荷重を載置させて常時載荷解析(ステップS2)を行い、橋梁の初期状態を取得する(ステップS3)。常時載荷解析では、橋梁のRC床版65を評価するために、RC床版の打設を考慮した解析を行って各部材に作用する応力、ひずみ等を取得する。
【0038】
常時載荷解析を行う際には、図1に示す常時載荷解析プログラム13を起動し、解析用コンピュータCを常時載荷解析手段32として機能させる。常時載荷解析プログラムの起動後、オペレータの操作により基本モデルファイル12を指定すると、常時載荷解析手段32によって、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータが読み出され、基本モデルに対して常時荷重載荷による静的解析が行われる。具体的には、常時載荷解析では、床版荷重算出ステップ、第一常時載荷ステップ、第二常時載荷ステップを行う。
【0039】
床版荷重算出ステップでは、常時載荷解析手段32は、基本モデルに対して死荷重(D)を作用させ、RC床版65と上弦材61との接合部(スラブアンカー等)に発生する荷重値を床版重量として結果ファイル18に書き込む。
【0040】
第一荷重ステップでは、常時載荷解析手段32は、結果ファイル18に書き込まれた床版重量を読み出してこの床版重量及びトラスを構成する各部材の死荷重を、RC床版65が無い状態(RC床版65の剛性、弾性係数をゼロにした状態)の基本モデルに載荷させる。
【0041】
第二荷重ステップでは、常時載荷解析手段32は、前記した第一荷重ステップで基本モデルが鉛直方向に変位したため、座標を元の状態に戻してその変位をゼロにし、この状態から基本モデルに床版剛度を入力した後、橋梁の中央径間に活荷重(L)を載荷させる。
【0042】
常時載荷解析手段32は、前記した常時載荷解析によって得られた各部材(上弦材61、下弦材62、斜材63、鉛直材64及びRC床版65)に作用する応力、ひずみ等のデータをこの橋梁の初期状態として結果ファイル18に書き込む(ステップS3)。
【0043】
初期状態が取得されたならば、静的解析ステップを実行する。静的解析ステップでは、基本モデルに対して、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重α(D+L)を基本モデルの上部に鉛直方向に作用させて静的解析(ステップS4)を行う。
【0044】
静的解析を行う際には、図1に示す静的解析プログラム14を起動し、解析用コンピュータCを静的解析手段33として機能させる。静的解析プログラム14の起動後、オペレータの操作により基本モデルファイル12を指定すると、静的解析手段33によって基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータが読み出される。さらに、オペレータの操作により、結果ファイル18を指定すると、静的解析手段33によって橋梁の初期状態に関するデータが読み出される。静的解析手段33は、基本モデル及び初期状態のデータに基づいて弾塑性有限変位解析を行って橋梁の各部材に作用する応力や変位等を取得する。
【0045】
ここで、図5Aは、本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。図5Bは、本実施形態に係る基本余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
図5Aに示す基本モデルGは、図2の(a)に示す橋梁の一部を取り出して模式的に示しており、上弦材61a,61b、下弦材62a,62b、斜材63a,63b、垂直材64a,64b,64c及びRC床版65から構成されている。静的解析ステップから破壊部材判定ステップまでは図5A、図5Bも参照して説明する。
【0046】
静的解析(ステップS4)は、具体的には、図5Aの(a)に示すように、基本モデルGに対して、基準荷重(死荷重(D)+活荷重(L))に変数αを乗じた割増荷重α(D+L)を作用させる。変数αの初期値は、α=1に設定する。静的解析手段33は、静的解析を実行して基本モデルGの各部材に作用する応力(最大応力)を応力状態F1(σ11,σ21,σ31,σ41,σ51,σ61,σ71,σ81,σ91,σ101)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0047】
静的解析(ステップS4)を行ったならば、静的解析手段33は、橋梁全体が崩壊したか否かを判定する(ステップS5)。静的解析手段33は、基本モデルが不安定構造となったときに「橋梁全体が崩壊した」と判定し、そのときの変数αを結果ファイル18に書き込む。
【0048】
判定ステップにおいて「橋梁全体が崩壊した」(ステップS5でYes)と判定した場合、静的解析手段33は、そのときの変数αの値(ここでは初期値α=1)をこの橋梁の「基本余裕度」と決定し(ステップS13)、解析を終了する。
【0049】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定した場合(ステップS5でNo)、静的解析手段33は、基本モデルにおいて破壊された部材があるか否かを判定する(ステップS6)。本実施形態では、各部材の最大ひずみ値が、予め設定された値(部材破壊ひずみ値)を超えたときに「破壊された部材が有る」と仮定している。部材破壊ひずみ値は、適宜設定すればよいが、部材にある程度の塑性化を許容することなどを考慮して本実施形態では、降伏ひずみεyの3倍(=3εy)に設定した。
【0050】
判定ステップにおいて、「破壊された部材が無い」と静的解析手段33が判定した場合(ステップS6でNo)、変数αを変更し(ステップS7)、静的解析(ステップS4)に移行する。そして、「橋梁全体が崩壊した」と判定される(ステップS5)か、又は、「破壊された部材が有る」と判定される(ステップS6)まで、静的解析(ステップS4)と判定ステップ(ステップS5、ステップS6)とを繰り返す。変数αの変更幅は適宜設定すればよいが、本実施形態では、例えば0.1ずつ増えるように設定している。
【0051】
静的解析手段33は、漸増する変数αと、そのときの変数αに対応する基本モデルの各部材の応力状態及び変位等とを関連付けて結果ファイル18に書き込む。静的解析(ステップS4)から変数αの変更(ステップS7)までを繰り返す行程は、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0052】
判定ステップにおいて、「破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS6でYes)、静的解析手段33は、破壊された部材を結果ファイル18に書き込むとともに表示手段4に表示させる。
【0053】
本実施形態では、例えば図5Aの(b)に示すように、変数α3(=1.2)のときに、斜材63aが破壊されたと判定されたものとする。この破壊された部材を以下「破壊部材」ともいう。結果ファイル18には、変数α3と関連付けて、斜材63aが破壊される直前の基本モデルGの各部材に作用していた応力状態F3(σ13,σ23,σ33,σ43,σ53,σ63,σ73,σ83,σ93,σ103)及び変位等が格納されている。
【0054】
変更モデル作成ステップでは、オペレータは、基本モデルから前記した静的解析ステップで破壊された破壊部材を削除して、新たなモデルを作成する(ステップS8)。具体的には、図5Aの(c)に示すように、本実施形態では、斜材63aが破壊されたと判定されているため、基本モデルGから斜材63aを削除した変更モデルG1を作成する。
【0055】
新たなモデルを作成する際には、基本モデルを利用するとよい。この場合には、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、破壊したと判定された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。作成された新たなモデルに関するデータは、変更モデルとして変更モデルファイル15に格納される。
【0056】
変更モデルの作成は、入力手段を介してオペレータの指示より行ってもよいが、解析用コンピュータCに作成させてもよい。この場合、構造解析用モデル作成手段31は、基本モデルファイル12から基本モデルに関するデータを読み出す処理、破壊したと判定された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去する処理、作成された変更モデルを変更モデルファイル15に書き込む処理などを実行する。
【0057】
自由振動解析ステップでは、破壊部材が負担していた応力をステップ荷重とした自由振動解析を行う(ステップS9)。自由振動解析を行う際には、図1に示す自由振動解析プログラム16を起動し、解析用コンピュータCを自由振動解析手段34として機能させればよい。自由振動解析手段34は、変更モデルファイル15から変更モデルに関するデータを読み出し、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、この変更モデルに対して破壊部材が破壊される直前の基本モデルに作用していた応力状態及び変異量(格納されているものうち最も新しいもの)を与えて自由振動解析を行う。自由振動解析手段34は、変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位等を取得し、このときの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0058】
具体体には、自由振動解析手段34は、図5Aの(d)に示すように、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルG1に対して割増荷重α3(D+L)を作用させるとともに、破壊部材を削除する直前の基本モデルGに作用していた応力状態F3(σ13,σ23,σ33,σ43,σ53,σ63,σ73,σ83,σ93,σ103)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0059】
そして、図5Bの(a)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルG1の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態F4(σ14,σ24,σ34,σ44,σ54,σ64,σ74,σ84,σ94,σ104)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルG1と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0060】
変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップを実行する(ステップS10)。部材が破壊されたか否かの判定は、前記した判定ステップ(ステップS6)と同様であるため説明を省略する。
【0061】
破壊部材判定ステップにおいて、「新たに破壊された部材がある」があると判定された場合(ステップS10でYes)、変更モデルの作成(ステップS8)と自由振動解析(ステップS9)とを破壊部材判定ステップ(ステップS10)で「新たに破壊された部材が無い」と判定されるまで繰り返す。
【0062】
判定ステップで「新たに破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS10でYes)、変更モデルから新たに破壊された部材を削除し、新たに変更モデルを作成する。新たに変更モデルを作成する際には、変更モデルファイル15に格納されている変更モデルを利用するとよい。この場合には、変更モデルファイル15の中から変更モデルに関するデータを読み出し、新たに破壊された部材を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。新たに作成された変更モデルに関するデータは、変更モデルファイル15に格納される。
【0063】
具体的には、例えば図5Bの(a)及び(b)に示すように、自由振動解析を行って変更モデルG1の斜材63bが破壊されたものとする。ループ後の変更モデル作成ステップでは、斜材63bを削除した変更モデルG2を作成する。
【0064】
ループ後の自由振動解析ステップでは、新たに作成された変更モデルに対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、新たに破壊された破壊部材を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS9)。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析後の変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位をこの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0065】
具体的には、ループ後の自由振動解析ステップでは、図5Bの(c)に示すように、変更モデルG2に対して、割増荷重α3(D+L)を作用させるとともに、先の自由振動解析で得られた応力状態F4(σ14,σ24,σ34,σ44,σ54,σ64,σ74,σ84,σ94,σ104)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0066】
そして、図5Bの(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルG2の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態F5(σ15,σ25,σ35,σ45,σ55,σ65,σ75,σ85,σ95,σ105)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルG2と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0067】
このように、変更モデルの作成(ステップS8)と自由振動解析(ステップS9)とを繰り返す場合には、破壊したと判定された破壊部材を随時削除した変更モデルを作成しつつ、新たに作成された変更モデルに対して破壊直前の変更モデルに作用していた応力状態を与える。これにより、破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができるとともに、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した解析を行うことができる。
なお、変更モデル作成(ステップS8)から破壊部材判定(ステップS10)までを繰り返す行程は、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0068】
崩壊判定ステップでは、現時点での変更モデルに対して静的解析を行い(ステップS11)、橋梁全体が崩壊した否か判定する(ステップS12)。解析を行う際には、図1の崩壊判定プログラム17を起動し、解析用コンピュータCを崩壊判定手段35として機能させる。崩壊判定手段35は、変更モデルファイル15の中から破壊部材判定ステップ(ステップS10)で「新たに破壊された部材が無い」と判定されたときの変更モデル、つまり、変更モデルファイル15のうち最も新しい変更モデルを読み出すとともに、結果ファイル18からその変更モデルに係る応力状態及び変位等に関するデータを読み出し、荷重を作用させずに塑性有限変位解析を実行する。
【0069】
静的解析(ステップS11)を行ったならば、崩壊判定手段35は、橋梁全体が崩壊したか否か判定する(ステップS12)。崩壊判定手段35は、現時点の変更モデルが不安定構造となったときに「橋梁全体が崩壊した」と判定する。
【0070】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS12でNo)崩壊判定手段35は、変数αを変更し(ステップS7)、静的解析(ステップS4)に移行する。ループ後の静的解析(ステップS4)では、現状の変更モデルのまま変数αの値を増加させて基本モデルに対して割増荷重α(D+L)を作用させて静的解析以降の行程を行う。
【0071】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS12でYes)、現時点での変数α(図5A,Bの例では変数α3(=1.2))を「基本余裕度」と決定し(ステップS13)終了する。
【0072】
以上説明した基本余裕度の算出方法では、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊させる部材を静的解析ステップの結果に基づいて選定し、この破壊された部材に起因する連鎖的な破壊現象を考慮しつつ定量的に基本余裕度を算出することができる。
【0073】
<個別余裕度の算出方法>
次に、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法について説明する。個別余裕度の算出方法では、図6A及び図6Bに示すように、準備ステップと、静的解析ステップと、変更モデル作成ステップと、自由振動解析ステップと、破壊部材判定ステップと、崩壊判定ステップと、を含むものである。なお、個別余裕度の算出方法のうち準備ステップを除いた行程を「リダンダンシー解析」ということがある。
【0074】
個別余裕度の算出方法では、変更モデル作成ステップで最初に破壊(削除)する部材を任意に選定する点で前記した基本余裕度の算出方法と異なる。個別余裕度の算出方法のその他の行程は、基本余裕度の算出方法と略共通するため、共通する部分は簡単に説明する。
【0075】
図6Aに示すように、準備ステップでは、基本モデルの作成(ステップS21)、常時載荷解析(ステップS22)を行って橋梁の初期状態を取得する(ステップS23)。橋梁の初期状態は、結果ファイル18に格納される。
【0076】
準備ステップで初期状態が取得されたならば、静的解析ステップ(ステップS24)を実行する。静的解析ステップでは、基本モデル及び初期状態のデータに基づいて弾塑性有限変位解析を行って橋梁の各部材に作用する応力状態や変位等を取得し、得られたデータを結果ファイル18に書き込む。
【0077】
ここで、図7Aは、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の前半を段階的に示した模式概念図である。図7Bは、本実施形態に係る個別余裕度の算出方法の後半を段階的に示した模式概念図である。
図7Aに示す基本モデルJは、図2の(a)に示す橋梁の一部を取り出して模式的に示しており、上弦材61a,61b、下弦材62a,62b、斜材63a,63b、垂直材64a,64b,64c及びRC床版65から構成されている。静的解析ステップから破壊部材判定ステップまでは図7A、図7Bも参照して説明する。
【0078】
静的解析(ステップS24)は、具体的には、図7Aの(a)に示すように、基本モデルJに対して、基準荷重(死荷重(D)+活荷重(L))に変数αを乗じた割増荷重α(D+L)を作用させる。変数αの初期値は、α=1に設定する。静的解析手段33は、静的解析を実行して基本モデルJの各部材に作用する応力(最大応力)を応力状態H1(γ11,γ21,γ31,γ41,γ51,γ61,γ71,γ81,γ91,γ101))として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0079】
変更モデル作成ステップでは、橋梁を構成する一部材を「重要部材候補」として任意に選定し、基本モデルからその部材を削除した新たなモデル(変更モデル)を作成する(ステップS25)。変更モデルを作成する際には、基本モデルを利用するとよい。作成された変更モデルに関するデータは、変更モデルファイル15に格納される。
【0080】
変更モデル作成ステップにおける部材の削除は、本実施形態では、オペレータが行う。オペレータは、基本モデルファイル12の中から基本モデルに関するデータを読み出し、重要部材候補を表現しているファイバー要素7を全て消去すればよい。
【0081】
具体的には、変更モデル作成ステップは、図7Aの(a)及び(b)に示すように、ここでは、垂直材64bを「重要部材候補」に選定し、垂直材64bを削除した変更モデルJ1を作成する。
【0082】
重要部材候補の選定方法は特に制限されないが、例えば、常時載荷解析(ステップS22)の解析結果を利用してもよい。常時載荷解析(ステップS22)によって、橋梁を構成する各部材に作用する荷重、ひずみ等のデータが結果ファイル18に書き込まれるため、例えばひずみエネルギーの値が大きい部材を重要部材候補に選定してもよい。
【0083】
自由振動解析ステップでは、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルに対して割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、重要部材候補を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS26)。つまり、自由振動解析では、重要部材候補が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行う。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析を行った後の変更モデルの各部材に作用する応力状態及び変位等を、その時の変数αと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0084】
具体的には、自由振動解析ステップでは、図7Aの(c)及び(d)に示すように、変更モデルJ1に対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、重要部材候補を削除する直前の基本モデルJに作用していた応力状態H1(γ11,γ21,γ31,γ41,γ51,γ61,γ71,γ81,γ91,γ101)及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0085】
そして、図7A(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルJ1の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態H2(γ12,γ22,γ32,γ42,γ52,γ62,γ72,γ82,γ92,γ102)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変数αの値と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0086】
変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する(ステップS27)。部材が破壊されたか否かの判定は、基本余裕度の算出方法の部材破壊判定ステップと共通する。
【0087】
部材破壊判定ステップにおいて、「新たに破壊された部材が無い」と判定された場合(ステップS27でNo)、崩壊判定ステップを実行する。崩壊判定ステップは、基本余裕度の算出方法の崩壊判定ステップと共通する。崩壊判定ステップでは、現時点での変更モデル及びこの変更モデルの応力状態や変位等に関するデータを読み出して、荷重を作用させずに静的解析を行い(ステップS28)、橋梁全体が崩壊したか否かを判定する(ステップS29)。
【0088】
判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS29でYes)、その時点での変数α(ここでは変数α=1)を「個別余裕度」と決定し(ステップS30)終了する。
【0089】
一方、判定ステップにおいて、「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS29でNo)、変数αを変更し(ステップS31a)、変更モデル作成ステップで削除した部材を復元させて基本モデル(基本モデルJ)に戻した上で、初期状態を読み込む(ステップS31b)。そして、基本モデル及び初期状態のデータを用いて再度静的解析を行う(ステップS24)。本実施形態では、変数αを0.1増加させて再度静的解析を行う。
【0090】
つまり、ループ後の静的解析(ステップS24)では、モデルを基本モデル(破壊部材の無い状態)に戻し、変数αを増加させて基本モデルに対してα(D+L)の荷重を作用させて静的解析を行う。そして、破壊部材判定ステップで「新たに破壊された部材が有る」と判定されるか(ステップS27でYes)、崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊した」と判定されるまで(ステップS29でYes)、静的解析(ステップS24)から初期状態への復元(ステップS31b)までを繰り返す。この繰り返す行程については、解析用コンピュータCをそのように構成すればよい。
【0091】
破壊部材判定ステップにおいて、「破壊された部材が有る」と判定された場合(ステップS27でYes)、自由振動解析手段34は、破壊された部材を結果ファイル18に書き込むとともに表示手段4に表示させる。そして、図6Bに示すように、変更モデル作成ステップを実行する(ステップS32)。
【0092】
本実施形態では、例えば図7Bに示すように、変数αが変数α4(=1.3)になった場合に、斜材63bが破壊されたものとする。この破壊された部材を以下「破壊部材」ともいう。結果ファイル18には、変数α4と関連付けて、斜材63bが破壊される直前の変更モデルJ1の各部材に作用していた応力状態H4(γ14,γ24,γ34,γ44,γ54,γ64,γ74,γ84,γ94,γ104)及び変位等が格納されている。
【0093】
変更モデル作成ステップでは、基本モデルから破壊部材を削除して、新たな変更モデルを作成する(ステップS32)。具体的には、図7B(a)及び(b)に示すように、本実施形態では斜材63bが破壊されたと判定されたため、変更モデルJ1から斜材63bを削除した変更モデルJ2を作成する。
【0094】
自由振動解析ステップでは、変更モデル作成ステップで作成された変更モデルに対して、割増荷重α(D+L)を作用させるとともに、破壊部材を削除する直前の応力状態及び変位等を与えて自由振動解析を行う(ステップS33)。つまり、自由振動解析手段34は、破壊部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行う。そして、自由振動解析手段34は、自由振動解析後の変更モデルに作用する応力状態及び変位等を取得し、このときの変更モデルと関連付けて結果ファイル18に書き込む。
【0095】
具体的には、自由振動解析ステップでは、図7Bの(c)に示すように、変更モデルJ2に対して、割増荷重α4(D+L)を作用させるとともに、先の自由振動解析で得られた応力状態H4及び変位等を与えて自由振動解析を行う。
【0096】
そして、図7Bの(d)に示すように、自由振動解析手段34は、振動が収束するまでの間に変更モデルJ2の各部材に作用した応力(最大応力)を応力状態H5(γ15,γ25,γ35,γ45,γ55,γ65,γ75,γ85,γ95,γ105)として取得するとともに各部材の変位等を取得し、これらのデータを変更モデルJ2と関連付けて結果ファイル18に格納する。
【0097】
新たに作成された変更モデルに対して自由振動解析を実行したならば、自由振動解析手段34は、この変更モデルにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップを実行する(ステップS34)。破壊部材判定ステップ(ステップS34)は、基本余裕度の算出方法の破壊部材判定ステップ(ステップS10)と共通する。
【0098】
また、破壊部材判定ステップ(ステップS34)において、「新たに破壊された部材がある」と判定された場合のループの行程は、基本余裕度の算出方法の変更モデル作成ステップ(ステップS8)から破壊部材判定ステップ(ステップS10)までを繰り返す行程と共通する。これにより、破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができるとともに、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した解析を行うことができる。
【0099】
破壊部材判定ステップにおいて「新たに破壊された部材が無い」と判定された場合(ステップS34でNo)、崩壊判定ステップを実行する。崩壊判定ステップは、基本余裕度の算出方法の崩壊判定ステップ(ステップS11、ステップS12)と共通する。
【0100】
崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊しない」と判定された場合(ステップS36でNo)、変数αを変更し(ステップS31a(図6A参照))、変更モデル作成ステップで削除した部材を復元させて基本モデル(基本モデルJ)に戻した上で、初期状態を読み込む(ステップS31b)。そして、基本モデル及び初期状態のデータを用いて再度静的解析を行う(ステップS24)。つまり、ループ後の静的解析ステップ(ステップS24)では、モデルを基本モデル(破壊部材の無いモデル)に戻し、現時点での変数αの値を増加させて基本モデルに対してα(D+L)の荷重を作用させて静的解析を行う。
【0101】
崩壊判定ステップで「橋梁全体が崩壊した」と判定された場合(ステップS36でYes)、その時点での変数α(図7A,Bの例では変数α4(=1.3))を「個別余裕度」と決定し(ステップS37)解析を終了する。
【0102】
以上説明した個別余裕度の算出方法では、橋梁を構成する部材のうち、最初に破壊(削除)させる部材を任意に選定し、この部材の破壊に起因する連鎖的な破壊現象を考慮しつつ定量的に個別余裕度を算出することができる。
【0103】
<重要部材の算出方法>
次に、重要部材の算出方法について説明する。前記した個別余裕度の算出方法において、最初に破壊させる部材(最初に削除する部材)を重要部材候補として複数個選定し、それぞれの部材に起因する複数の余裕度を算出する。そして、算出された各個別余裕度を、基本余裕度で除した値のうち、基本余裕度に対する減少率が最も小さい部材を重要部材(Fracture Critical Member)と決定する。
【0104】
以上説明したように本実施形態に係る構造物の構造解析方法によれば、自由振動解析ステップでは、部材の一つを削除した後の自由振動解析において、部材を削除する直前の構造系の応力状態を構造解析用モデルに与えるため、この破壊された部材が負担していた応力をステップ荷重とした動的応答解析を行うことができる。
【0105】
また、新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、破壊された部材を削除して新しいモデルを作成する変更モデル作成ステップと、この新しいモデルに基づく自由振動解析ステップとを繰り返すため、部材の連鎖的な破壊に応じて変化する構造系を考慮した動的解析を行うことができる。したがって、実際の構造物の崩壊を考慮しているため、より精度の高い崩壊現象を解析することができる。
【0106】
また、本実施形態に係る構造物の構造解析方法によれば、基本余裕度と個別余裕度を定量的に算出することができる。また、基本余裕度と個別余裕度に基づいて重要部材を決定することができる。
【実施例1】
【0107】
次に、本発明の構造物の構造解析方法の実施例について説明する。実施例1では、実際に構築された橋梁を対象として、前記した基本余裕度の算出方法、個別余裕度の算出方法を使用して基本余裕度及び個別余裕度を算出し、これらの結果から重要部材を決定する。
【0108】
対象橋梁は、図8に示すように、上路式鋼トラス橋であり、昭和56年に建設されたものである。この橋梁は、上部構造のほとんどの重量を占めるRC床版の重心位置がトラス桁より上方へ離れている橋梁形式である。設計条件等は、図8の表に記載された通りである。
【0109】
<基本モデルの作成>
対象橋梁に対して基本モデルを作成すると(図4のステップS1)図9のようになる。部材破壊の損傷を考慮するため、各部材に対して塑性化が表現できるファイバーモデルでモデル化する。部材の要素分割については、一つの部材を8分割程度とした。部材間の接合は、剛接合に設定した。
【0110】
RC床版については、積層タイプのシェル要素(図2の(c)参照)でモデル化した。鉄筋層については、実際の鉄筋断面と等断面になるように板厚を決定し、鉄筋の評価をしている。各層に対して、コンクリート及び鉄筋の材料構成則を適用して、床版のひび割れや塑性化を考慮した床版モデルになっている。
【0111】
上弦材と床版を接合するスラブアンカーについては、非線形のバネで定義した。本発明では、自由振動解析(動的解析)を行うため、各部材間の節点に質量を定義した。また、自由振動解析の減衰定数については、対象橋梁を実際に計測してその計測結果をもとにハーフパワー法により算出した。
【0112】
<RC床版の材料構成則>
対象橋梁の耐力を評価する上で、床版の耐力を精度よく算出する必要がある。そのためには、コンクリートにひび割れや降伏を考慮しなければならない。特に、ひび割れを考慮しないとRC床版の耐力を高く評価してしまう。そこで、本実施例ではコンクリートの引張強度を3MPaにするため、コンクリートの材料構成則として、拡張Drucker pragerを採用した。
【0113】
拡張Drucker pragerの降伏関数は、式(1)のようになる。なお、式(1)でl0=0の場合が通常のDrucker pragerの降伏関数である。
【0114】
【数1】
【0115】
ここで、qは相当応力、lは応力の第一不変量である。α,l0,kは、式(2)、式(3)、式(4)よりそれぞれ計算される。
【0116】
【数2】
【0117】
【数3】
【0118】
【数4】
【0119】
コンクリートの物性値として、引張強度σtを3MPa,降伏応力σcを21MPa、摩擦角βを30度とした。なお、RC床版の鉄筋の材料構成則については、ひずみ硬化E/100のバイリニアモデルとした。
【0120】
<常時載荷解析>
解析モデルの初期状態を作成するために、RC床版の打設を考慮した常時載荷解析による静的解析を前記したステップにしたがって行った(図4のステップS2)。活荷重(L)については、固定荷重として荷重させた。載荷位置は、図10に示すように、中央径間とし、P1荷重については、中央より左側に載荷させた。
【0121】
図11は、実施例1に係る常時載荷解析の各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、垂直材、(c)は、下弦材を示す。図11の(a)乃至(c)に示すように、各部材とも降伏ひずみに対して、約半分のひずみ値になっている。比較的余裕があるのは、床版剛性の影響であると考えられる。
なお、確認のため、床版剛度が無い解析モデルに対して常時載荷解析を行ったところ、斜材の引張り部材においてひずみ値が約1.7倍になった。また、常時載荷解析において、最初から床版剛度を考慮した解析では、床版剛度を過大に評価することになり、各部材とも応答値が三割小さくなることを確認した。
【0122】
<終局強度解析:基本余裕度の算出>
図4のフローにしたがって、終局強度解析(静的解析ステップ、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップ)を行った。図12は、実施例1に係る終局強度解析における部材破壊位置を示した側面図である。図13は、実施例1に係る終局強度解析における各部材の最大ひずみ分布を示したグラフであって、(a)は、斜材、(b)は、上弦材、(c)は、下弦材を示す。
【0123】
図12に示すように、静的解析ステップを行ったところ、最初に斜材101が部材破壊ひずみ値に達して破壊した(図4のステップS6)。この時の変数αの値は、α=2.6であった。
【0124】
その後、変更モデル作成ステップ(図4のステップS8)、自由振動解析ステップ(ステップS9)の繰り返しによって、図12に示すように、上弦材102、下弦材103の順番で連鎖的に破壊した。その後、新たに破壊される部材が無くなり、崩壊判定ステップ(図4のステップS12)において、橋梁が不安定構造になって橋梁全体が崩壊したと判定され、解析が終了した。この解析の結果、対象橋梁の基本余裕度は、「2.6」と算出された。
なお、破壊された部材は、いずれも荷重がより大きく作用する中央より左側(図10参照)の部材である。
【0125】
ここで、図13の(a)に示すように、斜材101の破壊については、橋脚K1及び橋脚K2付近の斜材のひずみが大きく、わずかに橋脚K1側の斜材101が先に部材破壊ひずみ値に達したことがわかる。2番目に破壊した上弦材102及び3番目に破壊した下弦材103に鑑みると、最初に破壊した斜材101付近に損傷が集中していき、橋梁全体が崩壊するといえる。
【0126】
なお、常時載荷解析において、最初から床版剛度を考慮して同様の終局強度解析を行ったところ、上弦材が破壊せずに他の部材が破壊した。つまり、破壊形態が変わったことを確認している。
【0127】
図14は、実施例1に係る終局強度解析において、破壊された部材のひずみ履歴を示したグラフあって、(a)は、上弦材、(b)は、下弦材を示す。
図14の(a)に示すように、斜材101が破壊した後、0.031秒後に上弦材102のひずみが破壊ひずみ値である3εyに達し、破壊したことがわかる。また、図14の(b)に示すように、斜材101が破壊した後、0.038秒後に下弦材103のひずみが破壊ひずみ値である3εyに達し、破壊したことがわかる。対象橋梁は、斜材101が破壊されてから0.038秒後に橋梁全体が不安定になり崩壊したことになる。
【0128】
図15は、実施例1に係る終局強度解析において、崩壊直後の床版の応力コンター図である。図15のうち、黒色の部分は引張応力、灰色の部分は圧縮応力、白色の部分は小さい応力がそれぞれ発生していることを示している。橋梁の中央部分のRC床版は、圧縮状態にあり、橋脚K1、橋脚K2付近のRC床版の大部分が引張強度3MPaに達しているのがわかる。また、左側の破壊部材が集中したRC床版付近だけが引張応力状態になっているのがわかる。なお、RC床版のうち、コンクリートが引張強度に達している部分の鉄筋が降伏していなかったことが確認された。また、スラブアンカーについては大部分が塑性化し、部分的に破断(許容変位超過)していることが確認された。
【0129】
<リダンダンシー解析:個別余裕度の算出>
次に、図6A及び図6Bのフローにしたがって、リダンダンシー解析(静的解析ステップ、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ、崩壊判定ステップ)を行った。変更モデル作成ステップ(図6AのステップS25)において、最初に削除する部材(重要部材候補)は、オペレータが任意に選定すればよいが、本実施例では常時載荷解析の結果を利用した。つまり、図11に基づいて、斜材、垂直材、下弦材の中からひずみが大きくかつ降伏点の高い部材を重要部材候補として一つずつ選定した。重要部材候補は、すべて橋梁の左側に係る部材である。重要部材候補として選定した斜材111、垂直材112及び下弦材113の位置を図16に示す。
【0130】
<斜材111の個別余裕度>
図17は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は斜材を削除した後の各斜材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、斜材111(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図17の(b)に示すように、新たに左側の下弦材114が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.8であった。
【0131】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材114を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を斜材111に選定した場合の個別余裕度は、「1.8」と決定された。
【0132】
図17の(b)を参照して破壊情況を考察すると、斜材111(左側)付近の下弦材114(左側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0133】
<垂直材112の個別余裕度>
図18は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、垂直材を削除した後の各垂直材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、垂直材112(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図18の(b)に示すように、新たに左側の下弦材114が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.4であった。
【0134】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材114を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を垂直材112に選定した場合の個別余裕度は、「1.4」と決定された。
【0135】
図18の(b)を参照して破壊情況を考察すると、垂直材112(左側)付近の下弦材114(左側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0136】
<下弦材113の個別余裕度>
図19は、実施例1に係るリダンダンシー解析の解析結果であって、(a)は、下弦材を削除した後の下弦材の最大ひずみ分布を示し、(b)は、部材の破壊位置を示す。
図6Aに示す変更モデル作成ステップ(ステップS25)で、下弦材113(左側)を削除して変更モデルを作成した後、変数αの変更(ステップS31a)を行ってステップS24からステップS31bを繰り返したところ、図19の(b)に示すように、新たに右側の下弦材115(右側)が破壊した。その時の変数αの値は、α=1.7であった。
【0137】
その後、図6Bに示す変更モデル作成ステップ(ステップS32)で下弦材115を削除して、自動振動解析ステップ(ステップS33)を行ったが、新たに破壊された部材が無いと判定され(ステップS34)、さらに、崩壊判定ステップで橋梁全体が崩壊したと判定され(ステップS36)解析が終了した。
この結果、対象橋梁において重要部材候補を下弦材113(左側)にした場合の個別余裕度は、「1.7」と決定された。
【0138】
図19の(b)を参照して破壊情況を考察すると、下弦材113(左側)付近の下弦材115(右側)だけが損傷し、それ以上に破壊部材が拡大せず、橋梁全体が崩壊したことが確認できた。
【0139】
図20は、リダンダンシー解析結果を整理した表である。表内の「α減少率」とは、各部材における個別余裕度を終局強度解析によって得られた基本余裕度α=2.6で除した値である。図20から、個別余裕度の減少率が最も小さい垂直材112が重要部材(FCM)と決定された。
【実施例2】
【0140】
実施例2では、二つの部材での解析(以下、二部材解析ともいう)を行って、本発明に係る構造物の構造解析方法の検証を行った。二部材解析では、二部材解析によって得られた解析解と、一つの部材に750kNの荷重を作用させるステップ応答解析の理論解とを比較検証する。
【0141】
<解析条件>
図21の(a)及び(b)に示すように、対象橋梁の部材(ここでは斜材)を2本取り出して、取り出した部材201、部材202を重ねた状態で片側端部を拘束し、自由端部に対して引張荷重1500kNを部材軸方向に作用させる。
【0142】
次に、図21の(c)に示すように、部材201を破断(削除)させ、残りの部材202の応答特性を観察する。解析モデルとしては、一部材一要素とし、質量を自由端部の接点に集約させる。なお、減衰は0.1%と仮定した。
【0143】
<解析方法>
解析方法は、まず、部材を2本重ねた状態で引張荷重1500kNを作用させる静的解析を行い、その応力状態を保存する。この行程は、例えば、図4で示す静的解析ステップ(ステップS4)に相当する。
【0144】
次に、部材201を削除した構造にする。この行程は、例えば、図4で示す変更モデル作成ステップ(ステップS8)に相当する。
【0145】
次に、保存しておいた応力状態を読み込み、減衰0.1%を考慮した動的解析を行う。この行程は、例えば、図4で示す自由振動解析ステップ(ステップS9)に相当する。動的解析を開始する時点では、部材201が負担していた応力が、部材202に作用していることになる。
【0146】
本解析における動的解析においては、地震応答解析で用いられるニューマークのβ法を採用した。時間積分間隔Δtについては、地震応答解析で用いられるΔt(例えば0.01)より小さくし、式(5)のCourant条件を十分に満足するように0.0001とした。
【0147】
【数5】
【0148】
ここで、lminは、最小節点間距離、cは、応力波の速度(=(E/p)1/2、E:弾性係数、p:密度)である。
なお、本解析において使用した解析ソフトは、SeanFEM(株式会社耐震解析研究所製)を使用しており、解析の種類は弾塑性有限変位解析である。
【0149】
<比較検証>
図22に示すように、一つの部材に初期状態からの750kN(一つの部材の負担分)のステップ応答解析を行って得られた理論解と、二部材解析で得られた解析解とを比較すると、略同等の結果となる。つまり、本発明に係る構造物の構造解析方法によれば、一の部材が破壊した場合の衝撃力が評価できているといえる。
【実施例3】
【0150】
実施例3では、対象橋梁の一部を抜き取った簡易トラス構造を用いて、部材破壊後の挙動を解析し、本発明に係る構造物の構造解析方法の検証を行う。なお、本実施例のように簡易トラス構造を用いた解析を「簡易トラス解析」ともいう。
【0151】
<解析条件>
図23の(a)及び(b)に示すように、対象橋梁の橋脚K1上の一部を抜き出して、簡易トラス構造120を作成する。簡易トラス構造120は、上弦材121,122、下弦材123,124、垂直材125,126,127及び斜材128,129で構成されている。垂直材125,127は、下弦材123,124が水平となるように実際よりも長く形成した。簡易トラス構造120の各部材の条件は、図22の(c)に示したとおりである。
【0152】
簡易トラス構造120は、ファイバーモデルでモデル化する。ここでは、一部材を8分割し、部材同士の接合条件は剛接合とした。要素分割の影響をみるため、細かい要素分割の場合(以下、「細分割モデル」という)も解析を実施した。質量については、部材結合部だけでなく全節点に定義している。また、簡易トラス構造120が塑性化することを考慮しているため、材料構成則を弾性係数が2×10MPa、降伏応力を235MPa,355MPa、ひずみ硬化をE/100のバイリニアモデルの移動硬化則とした。
【0153】
このような条件下で、簡易トラス構造120の左上端部に水平荷重1500kNと3500kNの二種類の荷重を作用させた状態から斜材128が破壊(削除)した直後の挙動を具体的に考察した。動的解析の方法については、実施例2と同じであり、時間積分間隔Δtを0.0001とし、Courant条件を満足するようにした。細分割モデルでは時間積分間隔Δtを0.00001とした。
【0154】
<事前解析>
本解析による応答解析を行う前に、簡易トラス構造120に対して事前解析を行う。図24は、実施例3に係る事前解析における軸力図であって、(a)は、斜材破壊前、(b)は、斜材が存在しない構造、(c)は、斜材が存在した部分の両端に衝撃荷重を作用させた構造を示す。事前解析では、健全な状態の構造(図24の(a))と、斜材128が最初から存在しない構造(図24の(b))の二種類の構造で水平荷重1500kNを作用させたときの各部材に作用する軸力を取得する。
【0155】
図24の(a)及び(b)に示すように、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’では、簡易トラス構造120と比較して、斜材129の軸力が大きくなり、垂直材126が荷重を負担するようになったことがわかる。
【0156】
なお、図24の(c)では、破壊された部材が負担していた軸力に対して衝撃係数1.854を乗じて得た衝撃荷重を、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’の斜材128の両端部の位置に作用させて静的解析を行った。前記した非特許文献1において行われたリダンダンシー評価のための解析(以下、「従来法」とする)は、図24の(a)と(c)の結果を重ね合わせたものとなる。
【0157】
<1500kN荷重の解析結果>
(全体的な考察について)
図25は、実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析における軸力履歴を示したグラフであって(a)は、上弦材、(b)は垂直材、(c)は、斜材を示す。図25に示すように、大きな軸力が発生する上弦材121、垂直材126及び斜材129を対象として、斜材128を破壊させた後の挙動を考察した。
【0158】
各グラフの応答値のうち、符号の末尾に「a」を付した応答値は本解析による解析結果を示し、「b」を付した応答値は斜材128が最初から無い状態の各部材の軸力(図24の(b)に対応)を示し、「c」を付した応答値は従来法による解析結果を示す。
【0159】
本発明による解析結果は、応答値121a,126a,129aに示すように、斜材128が最初から無い状態を示した応答値121b,126b,129bを中心に振動していることがわかる。本解析では、全ての部材が弾性応答であった。
【0160】
図25の(a)に示すように、上弦材121については、斜材129にくらべて軸力が半分程度であり、振幅も小さいことがわかる。また、斜材128が最初から無い状態を示した応答値121bと、従来法を示した応答値121cとが重なっているため、従来法では衝撃による挙動が表現できていないことがわかる。つまり、従来法では、斜材128が破壊した後の振動による影響を考慮できていないのに対し、本解析では、その影響を考慮できている。
【0161】
図25の(b)に示すように、垂直材126の応答値126aの最大値は、従来法の応答値126cの値よりも小さい。つまり、従来法が過大評価する傾向にあることがわかる。
【0162】
一方、図25の(c)に示すように、斜材129の応答値129aの最大値は、従来法の応答値129cの値と略同等である。
【0163】
ここで、従来法と本解析との差についてさらに考察する。図26は、実施例3の1500kN荷重に係る簡易トラス解析において、垂直材の軸力が最大時の変形状態を示した模式図であって、(a)は、本解析、(b)は従来法を示す。図26のうち太字の部分が変形後の状態を表している。
【0164】
図26の(a),(b)を比較すると、本解析の斜材129はS字型に変形している。これに対し、従来法の斜材129’’では変形状態が異なる。従来法では、斜材129’’自体が振動していることがわかる。
【0165】
(各部材の縦振動について)
斜材128が破壊した後の各部材に発生する振動の傾向を比較すると、破断させる斜材128とほぼ垂直な方向に配設されている斜材129は、図25の(c)に示すように、高周波の振動成分はあまり含まれていないことがわかる。
一方、図25の(a),(b)に示すように、上弦材121、垂直材126では、高周波の振動成分が多く含まれていることがわかる。また、これらの高周波の振動は、時間が経過すれば小さくなることがわかる。これらより、斜材128の破壊により各部材に発生する軸力の高周波成分は、各部材内の縦振動によるものであり、発生最大軸力に対して影響は小さいといえる。即ち、各部材内に発生する軸力(断面力)は、各部材のたわみ振動によるものと考えられる。
【0166】
(各部材内の軸力の伝達について)
ひとつの部材内の振動(軸力)の伝達を明らかにするため、斜材128が存在しない簡易トラス構造120’の垂直材126(図24の(b)参照)に着目した。図27は、実施例3の1500kN荷重において、垂直材の三箇所の軸力履歴を示したグラフである。
図27に示すように、垂直材126の中央部分、両端ともに概ね同様の振動をしていることがわかる。さらに、部材内の縦振動の影響が部材内位置により差があることもわかる。また、図27に示すように、軸力の応答履歴の立ち上がり時期(0〜0.002秒)において、一つの部材内で位相差が現れているのがわかる。なお、この位相差の大きさは、理論計算と一致することを確認した。
【0167】
(部材要素分割の影響)
これまでの結果は、簡易トラス構造120を構成する各部材において、一つの部材を8分割に分割したもの(以下、「通常分割」という)である。この分割は、対象橋梁の全体のモデル化を意識したものである。その分割の影響を調べるため、一つの部材を100要素に分割した場合(以下、「細分割」という)の解析も実施した。図28は、実施例3の1500kN荷重において、垂直材の細分割解析における軸力履歴を示したグラフである。図中、通常分割は応答値126aで表されており、細分割は応答値126dで表されている。
【0168】
図28に示すように、応答値の1サイクルくらいまでは、通常分割(応答値126a)、細分割(応答値124d)ともに一致しているが、時間経過とともに差が現れることがわかる。本発明に係る構造解析方法では、軸力の履歴において最大値が現れる最初の1サイクルが重要であるため、通常分割であれば実際の崩壊を考慮できると考えられる。
【0169】
<3500kN荷重の解析結果>
前記した1500kN荷重と同様に、簡易トラス構造120(図23の(b)参照)に対して水平荷重を3500kNとした状態から、斜材128を破壊(削除)させて動的解析を行った。なお、3500kNの水平荷重は、図24の(b)に示す簡易トラス構造120’に作用させても全ての部材が塑性化しない程度の荷重である。
【0170】
図29は、実施例3の3500kN荷重に係る解析結果を示したグラフであって、(a)は、垂直材の軸力履歴、(b)は、垂直材の応力−ひずみ関係を示す。図中、応答値126a’は本解析の結果を示し、応答値126b’は斜材が最初から無い状態(図24の(b)に対応)の解析結果を示し、応答値126c’は従来法の結果を示す。
【0171】
図29の(a)に示すように、本解析の応答値126a’は、1500kN荷重の場合と異なり、最初から斜材が存在しない簡易トラス構造の応答値126b’を中心に発生軸力が振動せず、最大軸力を過ぎた後は低下した状態となることがわかる。
【0172】
また、図29の(b)に示すように、応答値126d’が降伏点を過ぎており、垂直材126が大きく塑性化しているのがわかる。つまり、斜材128の破壊の衝撃により、部材が塑性化し振動特性が変化したといえる。ここでは、垂直材126以外の結果の掲載を省略するが、垂直材126以外のほとんどの部材が大きく塑性化したことを確認している。
【0173】
図30は、実施例3において、従来法及び本解析において、各部材に作用する損傷状態をまとめた表である。図30の数値は、3500kN荷重の解析結果を降伏ひずみεyで正規化したものである。図30に示すように、本解析においては上弦材以外の部材が大きく塑性化しているのに対し、従来法では、斜材129のみが1.22εy程度の塑性化になっている。このようになったのは、従来法では線形解析となり、部材が塑性化したことによる力の分配が正確に行えず、過小評価したためと考えられる。
【0174】
以上説明した実施例3によれば、本解析(本発明)によれば、部材破壊後の挙動を精度よく再現できているのに対し、従来法では、部材破壊後の挙動が弾性範囲内のレベルにおいては過大評価する傾向があると考えられる。また、従来法では、応答値が大きくなり、塑性域でのレベルになると、過小評価する傾向があると考えられる。
【符号の説明】
【0175】
1 記憶手段
2 演算処理手段
3 入力手段
4 表示手段
5 バス
11 エディタプログラム
12 基本モデルファイル
13 常時載荷解析プログラム
14 静的解析プログラム
15 変更モデルファイル
16 自由振動解析プログラム
17 崩壊判定プログラム
18 結果ファイル
31 構造解析用モデル作成手段
32 常時載荷解析手段
33 静的解析手段
34 自動振動解析手段
35 崩壊判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材で構成される構造物を、前記各部材の非線形性を考慮可能な要素でモデル化して構造解析用モデルを作成し、この構造解析用モデルを使用して構造物の破壊現象を解析する構造物の構造解析方法であって、
構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルを構成する各部材に作用する応力を取得する静的解析ステップと、
前記構造解析用モデルの部材の一つを削除した状態の構造解析用モデルを新たに作成する変更モデル作成ステップと、
前記変更モデル作成ステップで作成された構造解析用モデルに対して、部材を削除する直前に各部材に作用していた応力を与えて自由振動解析を行う自由振動解析ステップと、
前記自由振動解析ステップにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップと、
前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定された場合に、前記自由振動解析を行った後の構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルが崩壊したか否かを判定する崩壊判定ステップと、を含み、
前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、前記変更モデル作成ステップ、前記自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すことを特徴とする構造物の構造解析方法。
【請求項2】
前記静的解析ステップでは、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重を作用させて静的解析を行い、
前記崩壊判定ステップにおいて、前記構造解析用モデルが崩壊しないと判定された場合には、前記変数αを増加させたうえで、前記静的解析ステップに移行し、前記構造用解析モデルが崩壊したと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項3】
前記静的解析ステップで破壊された部材があった場合に、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項4】
前記静的解析ステップにおいて解析を行った後の構造解析用モデルの中から一つの部材を任意に選択して、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項5】
前記静的解析ステップの前に、常時荷重載荷による静的解析を行って構造解析用モデルの初期状態を作成する常時載荷解析ステップをさらに含み、
前記構造物を構成する各部材のうち、前記常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーに基づいて、前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材を選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項1】
複数の部材で構成される構造物を、前記各部材の非線形性を考慮可能な要素でモデル化して構造解析用モデルを作成し、この構造解析用モデルを使用して構造物の破壊現象を解析する構造物の構造解析方法であって、
構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルを構成する各部材に作用する応力を取得する静的解析ステップと、
前記構造解析用モデルの部材の一つを削除した状態の構造解析用モデルを新たに作成する変更モデル作成ステップと、
前記変更モデル作成ステップで作成された構造解析用モデルに対して、部材を削除する直前に各部材に作用していた応力を与えて自由振動解析を行う自由振動解析ステップと、
前記自由振動解析ステップにおいて新たに破壊された部材があるか否かを判定する破壊部材判定ステップと、
前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定された場合に、前記自由振動解析を行った後の構造解析用モデルに対して静的解析を行って、この構造解析用モデルが崩壊したか否かを判定する崩壊判定ステップと、を含み、
前記破壊部材判定ステップで新たに破壊された部材が無いと判定されるまで、前記変更モデル作成ステップ、前記自由振動解析ステップ及び前記破壊部材判定ステップを繰り返すことを特徴とする構造物の構造解析方法。
【請求項2】
前記静的解析ステップでは、基準荷重に変数αを乗じて得た割増荷重を作用させて静的解析を行い、
前記崩壊判定ステップにおいて、前記構造解析用モデルが崩壊しないと判定された場合には、前記変数αを増加させたうえで、前記静的解析ステップに移行し、前記構造用解析モデルが崩壊したと判定されるまで、変更モデル作成ステップ、自由振動解析ステップ、破壊部材判定ステップ及び崩壊判定ステップを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項3】
前記静的解析ステップで破壊された部材があった場合に、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項4】
前記静的解析ステップにおいて解析を行った後の構造解析用モデルの中から一つの部材を任意に選択して、この部材を前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材に選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【請求項5】
前記静的解析ステップの前に、常時荷重載荷による静的解析を行って構造解析用モデルの初期状態を作成する常時載荷解析ステップをさらに含み、
前記構造物を構成する各部材のうち、前記常時載荷解析ステップで得られたひずみエネルギーに基づいて、前記変更モデル作成ステップにおいて最初に削除させる部材を選定することを特徴とする請求項2に記載の構造物の構造解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−111735(P2011−111735A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266748(P2009−266748)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(509277637)株式会社耐震解析研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(509277637)株式会社耐震解析研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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