構造物表面に貼付される合成樹脂シート
【課題】 コンクリート製排水溝などの構造物表面に貼付される合成樹脂シートの提供。
【解決手段】 構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シート1であって、上記合成樹脂シート1の貼付面1a側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材2を包み込んで、該合成樹脂シート1で包み込まれた各アンカー材2を上記構造物の表層部に食い込ませることにより、真空成形法や圧空成形法の下で、合成樹脂シート1の貼付面1a側に多数のアンカー材2を包み込めるので、この状態のまま、構造物の表層部に食い込ませれば、合成樹脂シート1を構造物の表面に剥離することなく強固に貼付でき、流水圧などによる該表面の磨り減り現象を有効に防止できる。
【解決手段】 構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シート1であって、上記合成樹脂シート1の貼付面1a側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材2を包み込んで、該合成樹脂シート1で包み込まれた各アンカー材2を上記構造物の表層部に食い込ませることにより、真空成形法や圧空成形法の下で、合成樹脂シート1の貼付面1a側に多数のアンカー材2を包み込めるので、この状態のまま、構造物の表層部に食い込ませれば、合成樹脂シート1を構造物の表面に剥離することなく強固に貼付でき、流水圧などによる該表面の磨り減り現象を有効に防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、断面U字状を呈して地中に埋設されるコンクリート製排水溝や同配線溝などの構造物の表面を保護するために、該構造物の表面に貼付される合成樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記排水溝はコンクリート製のU字溝から成り、これを相互に突き合わせながら道路下に多数埋設して連続する排水路を形成しているが、この排水路内に大量の雨水が流れると、該排水路を画成するコンクリート面に流水による磨り減り現象が生じる。
【0003】
下記の特許文献1には、上記U字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に滑性な表面を有する合成樹脂シートを連続して貼付する構造が開示されている。
【0004】
そして、上記滑性な表面を有する合成樹脂シートは、その貼付面に多数の有底孔を形成すると同時に該各有底孔内に突起を密着させながら包み込み、該各突起を上記コンクリート製のU字溝の表層部に食い込ませて、両者の結合を得、U字溝内での防鼠効果を図ったり、バクテリアの繁殖を抑制し、バクテリアが排水中の硫化水素と反応してコンクリートを劣化させることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2914906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のコンクリート製排水溝の下では、そのU字溝の表層部に食い込む突起が、形状的には単なる同径の円筒状を呈しているので、U字溝の排水路内で強い流水圧などを受けると、合成樹脂シート自体が上記各コンクリート面から剥がれ易い問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、U字溝の左右内側コンクリート面や内底コンクリート面からの剥離を防止して、各コンクリート面の流水による磨り減り現象を有効に防止できる合成樹脂シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート製排水溝などの構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シートであって、合成樹脂シートの貼付面側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材を包み込んで、該合成樹脂シートで包み込まれた各アンカー材を上記構造物の表層部に食い込ませて貼付されることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、上記アンカー材には逆テーパー形状のものを使用し、且つ、アンカー材はその長さ方向にボルトなどを螺合できるねじ孔を有する。
【0010】
又、真空成形又は圧空成形で使用される合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、真空成形法や圧空成形法の下で、合成樹脂シートの貼付面側に多数のアンカー材を包み込めるので、この状態のまま、各アンカー材をコンクリート製排水溝などの構造物の表層部に食い込ませれば、これにより、合成樹脂シートを構造物の表面に剥離することなく強固に貼付でき、該表面の磨り減り現象を有効に防止できる。上記真空成形法や圧空成形法で使用される成形枠には通常要求される金型が不要となるので、コストも安価となる。
【0012】
特に、この場合、アンカー材に逆テーパー形状のものを積極的に使用すれば、より一層のアンカー効果を発揮して、合成樹脂シートの構造物の表面からの剥離を確実に防止できる。
【0013】
又、アンカー材がその長さ方向にねじ孔を有するものであれば、ボルトなどを自在に螺合できるので、後付け施工製品(例えば、流水の堰き止め板や小動物の這い上がり構造など)を簡単に後付けでき、使用範囲が拡大できる。
【0014】
合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設ければ、合成樹脂シートに対してアンカー材を位置決めして包み込むことが可能となるので、ねじ孔を有するアンカー材にあっては、ボルトなどとの螺合作業が精度をもって行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成樹脂シートにアンカー材としての玉砂利を包み込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図2】合成樹脂シートにアンカー材としての逆テーパー形状のナットを包み込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】(A)は真空成形に使用される成形枠の内底面に玉砂利を散布した状態を示す説明図、(B)は同成形枠に合成樹脂シートを被せた状態を示す説明図、(C)は成形枠から空気を抜いて同合成樹脂シートを玉砂利に密着させた状態を示す説明図である。
【図4】コンクリート製排水溝の成形用型枠を示す斜視図である。
【図5】同成形用型枠に玉砂利を包み込んだ合成樹脂シートを被せた状態を示す斜視図である。
【図6】同合成樹脂シートの上に補強用の鉄筋群をセットした状態を示す斜視図である。
【図7】完成されたコンクリート製排水溝の内側コンクリート面に合成樹脂シートが貼付された状態を示す斜視図である。
【図8】包み込まれた玉砂利が排水溝の表層部に食い込んでいる状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】排水溝の内側コンクリート面に小動物の脱出用スロープを設置した状態を示す説明図である。
【図10】真空成形又は圧空成形に使用される成形枠の内底面にアンカー材としてのナットの位置決め凹部を形成した状態を示す断面図である。
【図11】ナットの包み込みにより各ナット間に括れが生じている状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図11に基づき詳述する。
【0017】
本発明に係る合成樹脂シート1は、図1・図2に示すように、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂でシート状に成形されたものであるが、真空成形法又は圧空成形法を用いて、このシート1の貼付面1a側に多数のアンカー材2を規則的又は不規則的に包み込んで、該シート1で包み込まれた各アンカー材2をコンクリート製排水溝の表層部に食い込ませることにより、上記排水溝を構成するU字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に連続して貼付されて、当該各コンクリート面を磨り減り現象などから有効に保護するものである。
【0018】
ここで、上記アンカー材2としては、入手し易い玉砂利やプラスチックの塊や鉄球やナットやねじ等の小物を使用するが、アンカー材2として上記排水溝の表層部に食い込む関係で、いずれのものも、逆テーパー形状又はこれに近似した表層部から抜け外れ難い形状のものが好ましい。
【0019】
そして、これらのアンカー材2を上記合成樹脂シート1で包み込む場合に、真空成形法で成形する時は、図3のAに示すように、上面が開放された単なる箱状を呈する成形枠3の内底面にアンカー材2としての多数の玉砂利2aを規則的又は不規則的に散布して、図3のB・Cに示すように、上記合成樹脂シート1を玉砂利2a上に被せ、熱を加えて合成樹脂シート1を玉砂利2aに押し当て、上記成形枠3の穴4から空気を抜いて真空状態にして玉砂利2aに密着させることにより、図1に示すような、貼付面1a側に多数の玉砂利2a(アンカー材2)を包み込んだ合成樹脂シート1が得られる。又、図中、3aは成形枠3の蓋である。尚、図2はアンカー材2として逆テーパー形状のナット2bを包み込んだものである。
【0020】
次に、この合成樹脂シート1で包み込まれた各アンカー材2をコンクリート製排水溝を構成するU字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に食い込ませる場合には、型枠5を使用して両者を一体的に成形する。
【0021】
この型枠5は、図4に示すように、U字溝にU字形状を付与する中央部型6と、該中央部型6の両端部に直立状態をもって固定される一対の端部型7と、中央部型6の両側部に開閉可能に連結される一対の側部型8とから成り、該各側部型8を閉じて上面の開放口から内部にモルタルやレジンコンクリートなどのコンクリート成形材料を充填して乾燥させ、後は、一対の側部型8を開けば、排水溝を構成するコンクリート製のU字溝が成形できる構成となっている。
【0022】
これを詳しく説明すると、図5に示すように、一対の側部型8の開いた状態を得て、上記合成樹脂シート1を中央部型6の上からに逆さまに被せて、その状態のまま、図6に示すように、その上から補強用の鉄筋9群をセットした後、一対の側部型8を回動して閉じた状態を得て、その上面の開放口から内部に上記コンクリート成形材料を充填して乾燥させると、図7に示すように、その左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に合成樹脂シート1が連続して貼付されたU字状のコンクリート製排水溝10が得られる。尚、アンカー材2を包み込むことで、コンクリート成形材料の打設時や取扱時にアンカー材2が潰れることがない。
【0023】
しかも、斯かるコンクリート製排水溝10は、図8に示すように、上記多数のアンカー材2がそのアンカー効果を利用して各コンクリート面の表層部に強固に食い込んでいるので、強い流水圧などで、該合成樹脂シート1が容易に剥離することがなくなり、流水による各コンクリート面の磨り減り現象が有効に防止できる。
【0024】
尚、この場合、アンカー材2に玉砂利2aを使用しても、その自然の凹凸形状(アンカー形状)からの効果を得て、コンクリートの表層面に合成樹脂シート1を貼付することができるが、特に、図2に示すように、アンカー材2に長さ方向のねじ孔を有する逆テーパー形状のナット2bを使用すれば、合成樹脂シート1の剥離がより確実に防止できるので、その効果は甚大である。
【0025】
又、アンカー材2に逆テーパー形状のナット2bを使用した場合には、該アンカー材2にボルト(図示せず)を螺合させることが可能となるので、斯かるボルト螺合構造を利用して、図9に示すように、U字溝からカメなどの小動物を脱出させるスロープ11を設置すれば、排水溝10に誤って落下して脱出するすべのない小動物を助けることも可能となる。
【0026】
このような螺合構造において、合成樹脂シート1に対する上記ナット2bの包み込み位置を規制する必要がある場合には、例えば、図10に示すように、成形枠3の内底面に位置決め用の凹部12を所定の間隔をおいて形成して、該凹部12内に逆テーパー形状のナット2b下端を嵌合すれば、ナット2bの包み込み位置が規制できる。又、ボルトとの螺合結合を行なわない場合には、具体的には図示しないが、逆テーパー形状のアンカー材2に対して貫通する又は貫通しない差込孔を形成して、該差込孔に棒材などを圧入し、この棒材を利用して後付け施工製品などを後付けすることも可能となる。
【0027】
又、これは、玉砂利2aでも言えることであるが、特に、逆テーパー形状のナット2bなどを包み込むと、図11に示すように、各ナット2b間に括れ1bができて、コンクリート面から極めて抜けずらくなる。
【符号の説明】
【0028】
1 合成樹脂シート
1a 貼付面
1b 括れ
2 アンカー材
2a 玉砂利
2b 逆テーパー形状のナット
3 成形枠
3a 成形枠の蓋
4 穴
5 型枠
6 中央部型
7 端部型
8 側部型
9 鉄筋
10 U字状の排水溝
11 スロープ
12 凹部(位置決め部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、断面U字状を呈して地中に埋設されるコンクリート製排水溝や同配線溝などの構造物の表面を保護するために、該構造物の表面に貼付される合成樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記排水溝はコンクリート製のU字溝から成り、これを相互に突き合わせながら道路下に多数埋設して連続する排水路を形成しているが、この排水路内に大量の雨水が流れると、該排水路を画成するコンクリート面に流水による磨り減り現象が生じる。
【0003】
下記の特許文献1には、上記U字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に滑性な表面を有する合成樹脂シートを連続して貼付する構造が開示されている。
【0004】
そして、上記滑性な表面を有する合成樹脂シートは、その貼付面に多数の有底孔を形成すると同時に該各有底孔内に突起を密着させながら包み込み、該各突起を上記コンクリート製のU字溝の表層部に食い込ませて、両者の結合を得、U字溝内での防鼠効果を図ったり、バクテリアの繁殖を抑制し、バクテリアが排水中の硫化水素と反応してコンクリートを劣化させることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2914906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のコンクリート製排水溝の下では、そのU字溝の表層部に食い込む突起が、形状的には単なる同径の円筒状を呈しているので、U字溝の排水路内で強い流水圧などを受けると、合成樹脂シート自体が上記各コンクリート面から剥がれ易い問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、U字溝の左右内側コンクリート面や内底コンクリート面からの剥離を防止して、各コンクリート面の流水による磨り減り現象を有効に防止できる合成樹脂シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート製排水溝などの構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シートであって、合成樹脂シートの貼付面側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材を包み込んで、該合成樹脂シートで包み込まれた各アンカー材を上記構造物の表層部に食い込ませて貼付されることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、上記アンカー材には逆テーパー形状のものを使用し、且つ、アンカー材はその長さ方向にボルトなどを螺合できるねじ孔を有する。
【0010】
又、真空成形又は圧空成形で使用される合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、真空成形法や圧空成形法の下で、合成樹脂シートの貼付面側に多数のアンカー材を包み込めるので、この状態のまま、各アンカー材をコンクリート製排水溝などの構造物の表層部に食い込ませれば、これにより、合成樹脂シートを構造物の表面に剥離することなく強固に貼付でき、該表面の磨り減り現象を有効に防止できる。上記真空成形法や圧空成形法で使用される成形枠には通常要求される金型が不要となるので、コストも安価となる。
【0012】
特に、この場合、アンカー材に逆テーパー形状のものを積極的に使用すれば、より一層のアンカー効果を発揮して、合成樹脂シートの構造物の表面からの剥離を確実に防止できる。
【0013】
又、アンカー材がその長さ方向にねじ孔を有するものであれば、ボルトなどを自在に螺合できるので、後付け施工製品(例えば、流水の堰き止め板や小動物の這い上がり構造など)を簡単に後付けでき、使用範囲が拡大できる。
【0014】
合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設ければ、合成樹脂シートに対してアンカー材を位置決めして包み込むことが可能となるので、ねじ孔を有するアンカー材にあっては、ボルトなどとの螺合作業が精度をもって行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成樹脂シートにアンカー材としての玉砂利を包み込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図2】合成樹脂シートにアンカー材としての逆テーパー形状のナットを包み込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】(A)は真空成形に使用される成形枠の内底面に玉砂利を散布した状態を示す説明図、(B)は同成形枠に合成樹脂シートを被せた状態を示す説明図、(C)は成形枠から空気を抜いて同合成樹脂シートを玉砂利に密着させた状態を示す説明図である。
【図4】コンクリート製排水溝の成形用型枠を示す斜視図である。
【図5】同成形用型枠に玉砂利を包み込んだ合成樹脂シートを被せた状態を示す斜視図である。
【図6】同合成樹脂シートの上に補強用の鉄筋群をセットした状態を示す斜視図である。
【図7】完成されたコンクリート製排水溝の内側コンクリート面に合成樹脂シートが貼付された状態を示す斜視図である。
【図8】包み込まれた玉砂利が排水溝の表層部に食い込んでいる状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】排水溝の内側コンクリート面に小動物の脱出用スロープを設置した状態を示す説明図である。
【図10】真空成形又は圧空成形に使用される成形枠の内底面にアンカー材としてのナットの位置決め凹部を形成した状態を示す断面図である。
【図11】ナットの包み込みにより各ナット間に括れが生じている状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図11に基づき詳述する。
【0017】
本発明に係る合成樹脂シート1は、図1・図2に示すように、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂でシート状に成形されたものであるが、真空成形法又は圧空成形法を用いて、このシート1の貼付面1a側に多数のアンカー材2を規則的又は不規則的に包み込んで、該シート1で包み込まれた各アンカー材2をコンクリート製排水溝の表層部に食い込ませることにより、上記排水溝を構成するU字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に連続して貼付されて、当該各コンクリート面を磨り減り現象などから有効に保護するものである。
【0018】
ここで、上記アンカー材2としては、入手し易い玉砂利やプラスチックの塊や鉄球やナットやねじ等の小物を使用するが、アンカー材2として上記排水溝の表層部に食い込む関係で、いずれのものも、逆テーパー形状又はこれに近似した表層部から抜け外れ難い形状のものが好ましい。
【0019】
そして、これらのアンカー材2を上記合成樹脂シート1で包み込む場合に、真空成形法で成形する時は、図3のAに示すように、上面が開放された単なる箱状を呈する成形枠3の内底面にアンカー材2としての多数の玉砂利2aを規則的又は不規則的に散布して、図3のB・Cに示すように、上記合成樹脂シート1を玉砂利2a上に被せ、熱を加えて合成樹脂シート1を玉砂利2aに押し当て、上記成形枠3の穴4から空気を抜いて真空状態にして玉砂利2aに密着させることにより、図1に示すような、貼付面1a側に多数の玉砂利2a(アンカー材2)を包み込んだ合成樹脂シート1が得られる。又、図中、3aは成形枠3の蓋である。尚、図2はアンカー材2として逆テーパー形状のナット2bを包み込んだものである。
【0020】
次に、この合成樹脂シート1で包み込まれた各アンカー材2をコンクリート製排水溝を構成するU字溝の左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に食い込ませる場合には、型枠5を使用して両者を一体的に成形する。
【0021】
この型枠5は、図4に示すように、U字溝にU字形状を付与する中央部型6と、該中央部型6の両端部に直立状態をもって固定される一対の端部型7と、中央部型6の両側部に開閉可能に連結される一対の側部型8とから成り、該各側部型8を閉じて上面の開放口から内部にモルタルやレジンコンクリートなどのコンクリート成形材料を充填して乾燥させ、後は、一対の側部型8を開けば、排水溝を構成するコンクリート製のU字溝が成形できる構成となっている。
【0022】
これを詳しく説明すると、図5に示すように、一対の側部型8の開いた状態を得て、上記合成樹脂シート1を中央部型6の上からに逆さまに被せて、その状態のまま、図6に示すように、その上から補強用の鉄筋9群をセットした後、一対の側部型8を回動して閉じた状態を得て、その上面の開放口から内部に上記コンクリート成形材料を充填して乾燥させると、図7に示すように、その左右内側コンクリート面と内底コンクリート面に合成樹脂シート1が連続して貼付されたU字状のコンクリート製排水溝10が得られる。尚、アンカー材2を包み込むことで、コンクリート成形材料の打設時や取扱時にアンカー材2が潰れることがない。
【0023】
しかも、斯かるコンクリート製排水溝10は、図8に示すように、上記多数のアンカー材2がそのアンカー効果を利用して各コンクリート面の表層部に強固に食い込んでいるので、強い流水圧などで、該合成樹脂シート1が容易に剥離することがなくなり、流水による各コンクリート面の磨り減り現象が有効に防止できる。
【0024】
尚、この場合、アンカー材2に玉砂利2aを使用しても、その自然の凹凸形状(アンカー形状)からの効果を得て、コンクリートの表層面に合成樹脂シート1を貼付することができるが、特に、図2に示すように、アンカー材2に長さ方向のねじ孔を有する逆テーパー形状のナット2bを使用すれば、合成樹脂シート1の剥離がより確実に防止できるので、その効果は甚大である。
【0025】
又、アンカー材2に逆テーパー形状のナット2bを使用した場合には、該アンカー材2にボルト(図示せず)を螺合させることが可能となるので、斯かるボルト螺合構造を利用して、図9に示すように、U字溝からカメなどの小動物を脱出させるスロープ11を設置すれば、排水溝10に誤って落下して脱出するすべのない小動物を助けることも可能となる。
【0026】
このような螺合構造において、合成樹脂シート1に対する上記ナット2bの包み込み位置を規制する必要がある場合には、例えば、図10に示すように、成形枠3の内底面に位置決め用の凹部12を所定の間隔をおいて形成して、該凹部12内に逆テーパー形状のナット2b下端を嵌合すれば、ナット2bの包み込み位置が規制できる。又、ボルトとの螺合結合を行なわない場合には、具体的には図示しないが、逆テーパー形状のアンカー材2に対して貫通する又は貫通しない差込孔を形成して、該差込孔に棒材などを圧入し、この棒材を利用して後付け施工製品などを後付けすることも可能となる。
【0027】
又、これは、玉砂利2aでも言えることであるが、特に、逆テーパー形状のナット2bなどを包み込むと、図11に示すように、各ナット2b間に括れ1bができて、コンクリート面から極めて抜けずらくなる。
【符号の説明】
【0028】
1 合成樹脂シート
1a 貼付面
1b 括れ
2 アンカー材
2a 玉砂利
2b 逆テーパー形状のナット
3 成形枠
3a 成形枠の蓋
4 穴
5 型枠
6 中央部型
7 端部型
8 側部型
9 鉄筋
10 U字状の排水溝
11 スロープ
12 凹部(位置決め部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シートであって、上記合成樹脂シートの貼付面側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材を包み込んで、該合成樹脂シートで包み込まれた各アンカー材を上記構造物の表層部に食い込ませることを特徴とする構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項2】
上記アンカー材には逆テーパー形状のものを使用することを特徴とする請求項1記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項3】
上記アンカー材はその長さ方向にねじ孔を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項4】
真空成形又は圧空成形で使用される合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項1】
構造物の表面を保護するために該構造物表面に貼付される合成樹脂シートであって、上記合成樹脂シートの貼付面側に真空成形又は圧空成形により多数のアンカー材を包み込んで、該合成樹脂シートで包み込まれた各アンカー材を上記構造物の表層部に食い込ませることを特徴とする構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項2】
上記アンカー材には逆テーパー形状のものを使用することを特徴とする請求項1記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項3】
上記アンカー材はその長さ方向にねじ孔を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【請求項4】
真空成形又は圧空成形で使用される合成樹脂シートの成形枠にアンカー材の位置決め部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の構造物表面に貼付される合成樹脂シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−91952(P2013−91952A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233897(P2011−233897)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(591281459)マックストン株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(591281459)マックストン株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
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