説明

構造要素及びその製造方法

【課題】 ガス・アシスト成形を用いずに、従来のオーバーモールドの欠点を克服する。
【解決手段】 ハンドルである細長い構造要素14は、第1の細長い要素26と、この第1の細長い要素に接続された第2の細長い要素52とを具える。第1及び第2の細長い要素によりチャンバ64を形成する。このチャンバは、細長い要素の少なくとも一方の端部における開放部分を除き、閉じられている。第1及び第2の細長い要素の中間部分を弾性層72で包囲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、プラスチック成形に関し、特に、弾性体によりオーバーモールドした空洞成形の構造要素及びその製造方法、並びにその構成要素を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の運搬用ハンドルは、軽量で、比較的堅く、把持して気持ちよいことが通常は望ましい。典型的なハンドルは、細長いグリップを有し、このグリップは、構造上の補強をするために空洞の筒となっている。また、このハンドルは、ユーザが気持ちよく使用できるように弾性被覆でオーバーモールドしている。かかる空洞のハンドルのコアは、ガス・アシスト成形により形成できる(特許文献1)。このガス・アシスト成形では、プラスチック成形処理にガスを導入し、空洞チャンバを形成する。ガス・アシスト成形は、有効ではあるが、従来の射出成形に比較して相対的に高価であるという欠点がある。さらに、この処理は、多くの製造業者にとって余りにも精巧であり、これらの部品供給源が限定されてしまう。
【0003】
空洞部品を形成するためのガス・アシスト成形の代替は、ハンドルの部品を2個のピースから形成し、これらピースを組み立てて空洞部品を作っている。これは、いくつかのアプリケーションでは実行可能である。しかし、多数の部品による構造は、弾性層によりオーバーモールド(特許文献2)を必要とする部品に通常は好ましくない。オーバーモールド処理は、成形したハンドルを大きな型(モールド)の中に配置し、ハンドル及び型の間の隙間に弾性体を射出して、適切な弾性層を設ける。オーバーモールド処理で必要とする圧力は、構造的に充分でないと、コア部品を砕いてしまうかもしれない。また、複数のコンポーネント間のギャップにより、弾性体の空洞チェンバに流入するという望ましくない現象を許してしまう。さらに、コアが弾性体の流入に対して適切にシール(密閉)されていないと、非常に小さなギャップ又はつなぎ目により、オーバーモールド処理期間中に、与圧されたガスが部品の内側に捕捉される。また、部品を成形の圧力から開放する際に、ガスが膨張しようとするので、この与圧ガスにより、オーバーモールドされた素材に泡が立たり、層剥離が生じる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−25397号公報
【特許文献2】特表2004−531865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ガス・アシスト成形を用いずに、また、上述のオーバーモールドの欠点のない構造要素及びその製造方法並びにその構成要素を用いた電子機器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の細長い構造要素(14)は、第1端部及び第2端部を両端に有する第1の細長い要素(26)と;この第1の細長い要素に接続された第2の細長い要素(52)とを具え;第1及び第2の細長い要素により、第1の細長い要素の第1端部から第2端部にわたるチャンバ(64)を形成し;このチャンバは、第1端部及び第2端部の少なくとも一方での開放(50の部分)を除き閉じられており;第1及び第2の細長い要素の中間部分を包囲する弾性層(72)を更に具えている。なお、括弧内の参照符号は、実施例との対応関係を示すのみであり、本発明を実施例のみに限定するものではない。
また、本発明の電子機器(10)は、機器ハウジング(12)と;このハウジングに接続されたハンドル(14)とを具え;このハンドルは、細長いグリップ部分(16)を有し;このグリップ部分が第1の細長い要素(26)及び第2の細長い要素(52)を有し、これら第1及び第2の細長い要素の各々が両端に第1端部及び第2端部を有し、第1及び第2の細長い要素が互いに接続して細長いチャンバ(64)を形成し;グリップ部分の少なくとも中間部分を包囲する弾性層(72)を更に具え;グリップ部分がチャンバに通ずる孔隙間(50の部分)を形成することを特徴する。
さらに、本発明は、弾性体(72)で被覆された構造要素(14)を製造する方法であって;第1及び第2の細長い要素(26、52)を用意するステップと;これら第1及び第2の細長い要素を接続して、シールされた中間部分及び孔隙間を有する細長いチャンバ(64)を形成するステップと;中間部分のまわりを弾性体の被覆により成形するステップとを具え;孔隙間は、中間部分から離れた端部でチャンバにつながることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明は、ガス・アシスト成形を用いずに、上述のオーバーモールドの欠点を克服できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述のように、本発明の電子機器ハウジングのハンドルは、細長いグリップ部分を含んでいる。このグリップ部分は、2個の細長い要素を含んでおり、これら要素の各々が対向する端部を有する。これら要素は、互いに接続されて、細長いチャンバを形成する。弾性層がグリップ部分の中間部分を包囲する。グリップ部分は、チャンバと通ずる孔隙間(vent aperture)を有する。この孔隙間は、一端又は両端にて弾性層を越えてもよい。これら細長い要素の一方は、他方の細長い要素を受けるために先細になった端面を有するチャネルを形成してもよいので、弾性形成(モールド)の圧力は、これら部品を互いに締め付けて動かないように作用して、弾性体の流入に対するシールを形成する。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明の好適実施例によるハンドルを有する電子機器の斜視図である。電子機器10は、電子部品及び電子回路を囲んだハウジング12を有する。ハンドル(構造要素)14は、ハウジング12にピボット的に(旋回可能に)接続される。ハンドル14は、細長い真っ直ぐなグリップ部分16を有し、1対の脚20がグリップ部分16の夫々の端部から直角に延びている。これら脚20の自由端は、ハウジング12に取り外し可能且つピボット的に接続されて、グリップ部分16に平行な軸22の周りでハンドル14を旋回できる。よって、ハンドル14は、電子機器をしまっておくときや使用するときに、ハウジング12に対して平坦に配置することができるし、運搬するときに、ハウジング12から垂直の位置に旋回することもできる。図1において、ハンドル14の目立つ主面24は、ハンドル14が水平のしまっておく位置のときに上を向き、ハンドル14が垂直の運搬位置のときに前方に向く。
【0010】
図2は、図1のハンドル14のコア・コンポーネントの斜視図である。ハンドル・コア(第1の細長い要素)26は、ハンドルの主要な構造コンポーネントである。このコア26は、ポリカーボネート/ABC樹脂の混合物の如く非常に堅い熱可塑性樹脂で構成されており、脚20の全体と、グリップの構造部分を含む。図では、コア26の裏側を示す。このコア26は、通常、空洞であり、裏側(図では、上側方向)に窪んで、軽量で、適切な厚さである。コア26のグリップ部分は、チャネル部分30により構成される。このチャネル部分30の断面は、略U字形であり、基部パネル即ちフロア32と、直立した側壁34とがグリップの長さ方向に延びる。3個1組の空洞の筒状ボス36は、基部パネルから側壁の上側縁の下のレベルに向かって突き出ている。X字形補強ウェブ40は、側壁の間をつないでおり、フロア32に接続されて、堅く、捻れ剛性があり、弾性体のオーバーモールドを行う間カバーを支持する。側壁の上側縁(使用の際には、ハンドルの裏側に実際に対向する)は、内側のチャネルに向かって下がるステップ42を有する。ステップ42の面(図4に詳細に示す)は、側壁34の上側縁の下のレベルであり、ボス36の上側面とそろう。補強ウェブ40の上側縁は、ステップ42のレベルの下であり、チャネルの長さ方向に沿ってガスが流れるようにする。なお、本明細書で説明するレベルは、図面における方向である。
【0011】
チャネル部分30の端部は、周囲フランジ44で終わる。このフランジ44は、側壁34及びフロア32を囲むが、開放された上側チャネルは囲まない。端部パネル46は、フランジ44を更に越えたチャネルの各端部を囲む。各端部パネル46の内側面は、平である。しかし、中央の細長い窪み(開放部、孔隙間)50は、内側面の上側縁からチャネルの底に向かって充分な距離だけ延びて、後述する孔隙間を与える。別の実施例では、窪みを単一の端部のみに設けてもよいが、好適実施例では、対称性と確実な保護のために2個の窪み50を設けている。
【0012】
図3は、図1のハンドルのカバー・コンポーネントの斜視図である。蓋、即ち、カバー要素(第2の細長い要素)52は、ハンドル・コア26と同じ材料の細長いパネルである。3個1組のピン54は、パネルの第1面55から間隔を持って突き出ており、ピンの寸法は、コア26のボス36の窪みときつくかみ合うようになっている。リッジ(隆起部)56をパネルの第1面55に配置し、この第1面の上を限られた距離だけ延びて、ピン54を囲む長方形のリングを形成する。なお、このリッジ56は、パネルの各縁からわずかに離れている。一体となった端部要素60が各端部に接続される。各端部要素60の幅は、パネルの幅よりもわずかに小さい。この端部要素60は、パネルの第1面55と同一面にあり、コア26のフランジ44がグリップ面から突出するのと同じ量だけ、反対側の平坦な第2面62から突出している。
【0013】
図4は、図2の線4−4に沿った拡大断面図であり、コア26に組み立てられた蓋(カバー要素)52を示す。蓋52の第1面55は、ステップ42上かその近傍の位置となり、第2面62は、コア26の外側と同一面となる。ピン54は、ボス36内に確実に収まり、きつい圧入、接着剤及び/又は超音波圧接により固定できる。蓋52のリッジ56は、コア26の内壁、補強ウェブ40、ボス36から離れており、コア26及び蓋52に包囲されたチャンバ64の長さ方向に沿ってガスの流れを自由にする。蓋52のパネルの主要な細長い側部縁66、66’は、互いに平行ではないが、先細になってくさびとなる。このくさびがステップ42の面の上のコア側壁の最上部分70の間にある同様な先細の空間に挿入される。図示の実施例において、図の右側の縁66’が先細となって、側壁の間で確実なシールを行う。
【0014】
弾性被覆層(弾性層)72は、チャネル部分30及び蓋52の長さ方向にわたるほとんどを覆う。この被覆は、図示のように、ハンドル14の中間部分をぴったりと且つ一様に包囲する。ここでは、その外形は、コア26が置かれ弾性体が注入されるモールドにより決まる。本発明の好適実施例によるハンドルの斜視図である図5に示すように、完成したハンドルは、一方のフランジ44から他方のフランジ44に延びる。ここでは、蓋52の端部要素60がフランジの一部を形成し、弾性体の軸方向の伸びを制限する。本質的には、オーバーモールド処理用の成形は、各フランジ部分の周囲に形成されたシールがあり、これらフランジの間に弾性体を保持する。
【0015】
組み立てたコア26及び蓋52を弾性体でオーバーモールドする間、コア及び成形壁の間の空間(弾性体で埋めるための空間)に捕らえられた空気は、入れた弾性体により追い出される。成形にて設けられたガス抜き孔(vent)を介していくらかの空気を抜くことができる。しかし、いくらかの空気は、射出の圧力によりコアのチャンバ64に押し込まれるかもしれない。上述のぴったりとフィットさせた効果やくさびの効果によっても、いくらかの空気がチャンバに入り込むかもしれない。これにより、チャンバが周囲の圧力よりも高い状態になる。しかし、窪み50の孔隙間により、注入された空気が、注入期間中又は必要に応じてその後に実時間でチャンバから逃げることができるので、オーバーモールドに泡が立たないし層間剥離も生じない。
【0016】
本発明の好適実施例において、各ガス抜き孔の断面領域は、0.0008平方インチ(0.00516128平方センチメートル)であり、ハンドル・グリップ部分の長さが4.5インチ(11.43センチメートル)であり、内部容積が0.4立方インチ(6.5548256立方センチメートル)である。ガス抜き孔領域は、包囲されたチャンバの容積に比較して小さいが、これは、蓋の継ぎ目に比較してガスの自由な逃げ道となるので適切である。なお、蓋の継ぎ目は、0.0005インチ(0.00127センチメートル)よりも大きくなくてよく、弾性材料がチャンバの内側に入り込まないことを確実にする。よって、ガスは、継ぎ目を介してよりもガス抜き孔を介して逃がすことが好ましい。この継ぎ目により、オーバーモールド弾性体に泡が捕られる。
【0017】
上述は、本発明の好適実施例について説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変形変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施例によるハンドルを有する電子機器の斜視図である。
【図2】図1のハンドルのコア・コンポーネントの斜視図である。
【図3】図1のハンドルのカバー・コンポーネントの斜視図である。
【図4】図2の線4−4に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の好適実施例によるハンドルの斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 電子機器
12 ハウジング
14 ハンドル(構造要素)
16 グリップ部分
20 脚
22 軸
24 主面
26 ハンドル・コア(第1の細長い要素)
30 チャネル部分
32 フロア
34 側壁
36 ボス
40 補強ウェブ
42 ステップ
44 フランジ
46 端部パネル
50 窪み(開放部、孔隙間)
52 蓋(第2の細長い要素)
54 ピン
55 第1面
56 リッジ
60 端部要素
62 第2面
64 チャンバ
66、66’ 縁
70 最上部分
72 弾性被覆層(弾性層)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部及び第2端部を両端に有する第1の細長い要素と、
該第1の細長い要素に接続された第2の細長い要素とを具え、
上記第1及び第2の細長い要素により、上記第1の細長い要素の上記第1端部から上記第2端部にわたるチャンバを形成し、
該チャンバは、上記第1端部及び上記第2端部の少なくとも一方での開放を除き閉じられており、
上記第1及び第2の細長い要素の中間部分を包囲する弾性層を更に具えた細長い構造要素。
【請求項2】
機器ハウジングと、
該ハウジングに接続されたハンドルとを具え、
該ハンドルは、細長いグリップ部分を有し、
該グリップ部分が第1の細長い要素及び第2の細長い要素を有し、該第1及び第2の細長い要素の各々が両端に第1端部及び第2端部を有し、上記第1及び第2の細長い要素が互いに接続して細長いチャンバを形成し、
上記グリップ部分の少なくとも中間部分を包囲する弾性層を更に具え、
上記グリップ部分が上記チャンバに通ずる孔隙間を形成することを特徴する電子機器。
【請求項3】
弾性体で被覆された構造要素を製造する方法であって、
第1及び第2の細長い要素を用意するステップと、
該第1及び第2の細長い要素を接続して、シールされた中間部分及び孔隙間を有する細長いチャンバを形成するステップと、
上記中間部分のまわりを弾性体の被覆により成形するステップとを具え、
上記孔隙間は、上記中間部分から離れた端部で上記チャンバにつながることを特徴とする構造要素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−193217(P2006−193217A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366574(P2005−366574)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
【Fターム(参考)】