説明

構造要素及び構造要素を製造するための方法

本発明は、要素領域にわたって拡がるコア構成要素と、コア構成要素の対向する境界面上に形成されかつ要素領域にわたって拡がる第1及び第2の被覆層と、要素領域にわたって分配され、かつ、第1及び第2の被覆層をコア構成要素を介して互いに接続する複数の支持具と、要素領域に対して略平行に拡がる固定ラインに沿って被覆層間に拡がる固定帯とを備える航空機又は宇宙機のための構造要素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機又は宇宙機のための構造要素、及びこの種の構造要素を製造するための方法に関する。本発明は、さらに、この種の構造要素を備える航空機及び宇宙機に関する。
【背景技術】
【0002】
いかなる構造要素にも適用可能であるが、本発明及びその元となる問題は、商業用航空機の胴体シェルを参照して、より詳細に説明されるであろう。
【0003】
欧州特許第1134069号は、発泡コアを備えるサンドイッチ要素を使用する二重シェル構造における航空機のための構造要素の製造を開示する。この種の構造要素は、特に、繊維強化プラスチック材料を使用して製造される場合に、アルミニウムのような従来の材料から製造される構造要素と比較して、重量の点で大きな有利性を示す。しかしながら、より大きな構造、例えば航空機又は宇宙機を形成するためのアセンブリについての二重シェル構造におけるこの種の構造要素の製造及び取り扱いは、極めて時間とコストがかかってしまう。さらに、組み立て中に受ける損傷は、補修にとても費用がかかってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は、二重シェル構造要素における、信頼性のある経済的な応用を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する構造要素によって、又は、請求項13の特徴を有する製造方法によって達成される。
【0006】
本発明が基礎とする概念は、平面の方式で要素領域にわたって拡がり、かつ、その間で包囲されるコアを介して接続される2つの表面板を備える構造要素を補強することにあり、すなわち、補強帯が表面板の間に備えられ、この帯は、表面板の間の補強経路に沿って延び、この経路は、要素領域に対して略平行に拡がる。補強帯は、コアと同様に、表面板間の内部で延びることから、ストリンガやフォーマのような従来の補強要素を使用するアセンブリと比較して大きなコスト効果を示すサンドイッチの製造に使用される方法によって形成され得る。補強帯は、表面板の内側に延びることから、さらに、表面板間での損傷から保護される。
【0007】
望ましい発展によれば、コア構成要素は、発泡材料を備える。これは、発泡材料内のストラット(支柱)が一時的に支持する補助材料として構成され、表面板に接続されるので、コスト効果のある構造要素の製造を可能にし、発泡材料は、その軽さにより、コスト削減方式で、コア構成要素の内側に単に残存し得る。あるいは、発泡体は、さらなる低重量を達成するために取り除かれ得る。
【0008】
望ましい発展によれば、各ストラットは樹脂含浸繊維束を備える。ストラットが、例えば簡単な縫い合わせ法を使用して発泡材料内に形成され、そして、結果として生じる孔を通じて樹脂が含浸されることから、これは、構造要素が経済的に製造されるということを可能にする。
【0009】
望ましい発展によれば、補強帯は、コア構成要素内において、ストラットの増加した密度の領域によって形成される。これは、補強帯が、ストラットの挿入のために既に使用された方法及び装置を使用して製造され得ることから、極めて低い製造コストを可能にする。さらに、ストラットは、幾何学的な制限がほとんどなく、補強帯に挿入され得る。
【0010】
別の望ましい発展によれば、補強帯は、補強経路にわたってコア構成要素内に拡がるインサートによって構成される。このようにして、高レベルの安定性が達成され得る。さらに、インサートに沿って互いに隣接する表面板の安定な相互接続が可能になる。この構造が特に安定しており、かつ、低い自重を有していることから、インサートは、好ましくは、インサートを囲む管状の繊維紐を備える。
【0011】
望ましい発展によれば、少なくとも1つのストラットがコア構成要素及びインサートコアを貫通する。このようにして、インサートは、特に堅く接続される。ストラットは、好ましくは、要素領域に対して対角線状に延び、それ故、外側から容易に挿入できる。
【0012】
望ましい発展によれば、要素領域は、少なくとも一方向に間隔をおいて湾曲部を備え、補強帯は、湾曲の方向に対して螺旋状で対角線状に拡がる。構成要素は、それ故、湾曲の軸に沿うねじり振動に対して有利に補強され得る。
【0013】
望ましい発展によれば、互いに傾斜して交差して延びる第1及び第2の補強帯が提供される。構成要素は、それ故、異なる方向における荷重の場合における変形に対して有利に補強され得る。
【0014】
望ましい発展によれば、補強帯は、対応する方向において第1及び第3の部分内で実質的に延び、第1の部分と第3の部分との間に配置される部分内で、環状に接続される2つの分岐部内に分割体を備える。このようにして、補強帯は、構造要素内において、平面カットアウト、例えばウィンドウカットアウトの回りに、実質的な安定性の損失なしで案内され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、一実施形態による構造要素の例示の断面図を示す。
【図2】図2は、一実施形態による構造要素を備える航空機の胴体バレル部の側面図を示す。
【図3】図3は、一実施形態によるライニングを備える構造要素の概略的な断面図を示す。
【図4】図4は、図3に示す構造要素のための一実施形態による製造方法の表現を示す。
【図5】図5は、さらなる実施形態による、インサートを備える構造要素の概略的な断面図を示す。
【図6】図6は、一実施形態による、ウィンドウ開口を備える構造要素の概略的な断面図を示す。
【図7】図7は、一実施形態による、ドア開口を備える構造要素の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下のように、本発明は、図面の添付図を参照し、実施形態に基づいて、より詳細に説明される。
【0017】
図面において、同様の参照符号は、他に指定のない限り、同様又は機能的に同一な要素を示す。
【0018】
図1は、第1のフェイシング401と第2のフェイシング402とが構成されるコア構成要素の略平行な側で、発泡材料から製造され、平面方式でサンドウィッチ要素の要素領域にわたって拡がるコア構成要素408を備える構造要素102の断面図を示す。要素領域は、フェイシング401,402に対して平行に拡がり、図1の投影面に対して鉛直である。第1のフェイシング401と第2のフェイシング402の間には、繊維束から製造されるストラット403がコア構成要素408を通じて拡がり、ストラットの端部406は、フェイシング401,402に支持されている。フェイシング401,402及びストラット403は、共通のポリマーマトリックスで満たされている。
【0019】
ストラット403は、略一定な最小の面密度で、構造要素102の全体の要素領域にわたって分配される。加えて、ストラット403の面密度は補強帯106の長尺の範囲に沿って、最小面密度を越えて増加し、補強帯106は、表面板の間で略平行に拡がり、経路104は要素領域に対して略平行に拡がる。構造要素102は、それ故、補強帯106の領域内で増加した剛性を有する。
【0020】
図2は、航空機の胴体バレル部206の側面図を示す。胴体バレル形状は、長手方向において分けられ、胴体バレルの上側の半分は、図1に示される二重シェル構造を有する構造要素102によって構成される。この構造要素102は、外側の耐性を保証すべく、例えば、内部モールド面を有するモールドを使用してワンピースで製造される。胴体バレルの下側の半分202は、例えば、金属又は他の材料を使用して同様な方法で製造され得る。
【0021】
構造要素102内では、ストラット403の増加した面密度によって形成される補強帯106,106’,106’’,106’’’は、航空機の長手方向203及び、航空機の長手方向に傾斜して拡がる方向において、そして、略円筒状に湾曲し、胴体バレル部206のまわりで螺旋状に対角線状に曲がる構造要素102の湾曲方向204に対して拡がる。この場合、対角線状に拡がる補強帯106,106’は、約90°の角度αで交差する。
【0022】
胴体バレル部206内において、ウィンドウ開口208の列が構成され、開口は、環状の補強部材200によって囲まれる。環状の補強部材200は、補強帯106,106’,106’’,106’’’の途中に含められ、すなわち、例えば、補強帯106の第1の部分211が、ウィンドウ開口208のまわりの環状の補強部材200に隣接するまで、対角線状の補強経路104の方向において延びる。ウィンドウ開口の範囲内の第2の部分212内では、環状の補強部材200が、ここで、2つの環状に接続される分岐部に分けられる補強帯の機能を担う。環状の補強部材200の反対側では、これらの分岐部が接触し、補強帯は、補強経路104の方向において、第3の部分213内へと続く。
【0023】
表示される補強構造は、単なる例であり、局所的な荷重(荷重の導入、カットアウト)に十分に適合化される。発泡における幾何学的変化(厚さの変化、湾曲、傾斜)は、補強構造にさらに含められ得る。
【0024】
図3は、投影面に対して垂直な図3の中心内で拡がるジョイントラインに沿って、発泡コア408と表面板401,402とを備える第1の半分の要素311と、発泡コア408’と、表面板401,402とを備える第2の半分の要素312とから組み立てられる更なる構造要素102の概略的な断面図を示す。ジョイントラインに沿って、インサート302,300が、表面板401,401’と402,402’との間に挿入され、インサートは、発泡材料で製造されるインサートコア302と、管状の繊維紐で製造される被覆材料300とを備える。被覆材料300は、例えば、表面板401,401’,402,402’及びストラット403とともに、樹脂が含浸される。インサートは、被覆材料によって補強帯106として機能する。
【0025】
図4は、図3の構造要素のための可能な製造方法を示し、それぞれのコア408,408’の部分は、2つの半分の要素311,312から取り除かれ、インサート300,302は、その代わりに挿入される。インサートの組み込みは、さらに、表面板401,401’,402,402’及びインサート300,302の被覆部材300を貫通する追加のストラット500,502の挿入を介してさらに補強され得る。
【0026】
図6は、ウィンドウ600のための開口を備える構造要素102の概略的な断面図を示し、図2を参照して説明される3つの部分211,212,213からなる補強帯が、ウィンドウ開口を覆って拡がる。環状インサート200は、例えば、同じ方法で、図3におけるインサート300,302として構成される。図7は、ドア704のための開口を備える構造要素102の概略的な断面図を示す。追加の補強部材として、サポート700及びさらなるフェイシング702が航空機胴体の内面に固定される。
【0027】
本発明は、ここで望ましい実施形態に基づいて説明されたが、それに制限されず、多くの異なる方法で変更可能である。
【0028】
例えば、さらに、エアロフォイル又はテイルユニットのような航空機の構造要素が、説明された方式で構成され得る。
【符号の説明】
【0029】
102 構造要素
104 補強経路
106 補強帯
200 リング構造
202 下側シェル
203 航空機の長手方向
204 湾曲の方向
206 胴体バレル部
211 帯部分
212 帯部分
213 帯部分
300 管紐
302 挿入コア
311 要素の半分
312 要素の半分
401 フェイシング
402 フェイシング
403 ストラット
406 アンカ
408 コア構成要素
500 追加ストラット
502 追加ストラット
600 ウィンドウ
500 垂直ストラット
502 対角ストラット
700 サポート
702 更なるフェイシング
704 ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要素領域にわたって拡がるコア構成要素(408)と、
コア構成要素(408)の対向する境界面に、要素領域にわたって拡がって構成される第1(401)及び第2(402)の表面板と、
要素領域にわたって分配される複数のストラット(403)であって、第1(401)及び第2(402)の表面板を、コア構成要素(408)を介して互いに接続するストラットと、
表面板の間の補強経路(104)に沿って延びる補強帯(106)であって、前記経路が要素領域に対して略平行である補強帯と、
を備える航空機又は宇宙機のための構造要素(102)。
【請求項2】
コア構成要素(408)が発泡材料を備えることを特徴とする請求項1に記載の構造要素(102)。
【請求項3】
各ストラット(403)は、樹脂が含浸される繊維束を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造要素(102)。
【請求項4】
補強帯(106)は、コア構成要素(408)内で、密度が増加したストラット(403)の領域によって構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の構造要素(102)。
【請求項5】
補強帯(106)は、コア構成要素(408)内のインサート(300,302)によって形成され、インサートは、補強経路(104)にわたって拡がることを特徴とする請求項1に記載の構造要素(102)。
【請求項6】
インサート(300,302)は、インサートコア(302)を囲む管状繊維紐(300)を備えることを特徴とする請求項5に記載の構造要素(102)。
【請求項7】
少なくとも1つのストラット(500,502)、特に対角線状に拡がるストラットが、少なくとも1つの表面板(401,402)及びインサート(300,302)を貫通することを特徴とする請求項5又は6に記載の構造要素(102)。
【請求項8】
要素領域は、少なくとも1つの湾曲方向(204)における湾曲部を備え、補強帯(106)は、湾曲方向(204)において、螺旋状で対角線状に拡がることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の構造要素(102)。
【請求項9】
角度(α)で互いに交差して拡がる第1(106)及び第2(106’)の補強帯によって特徴づけられる請求項1から8のいずれか1項に記載の構造要素(102)。
【請求項10】
補強帯(106)は、実質的に補強経路(104)の方向において、第1(211)及び第3(213)の部分内で延び、第1(211)と第3(213)の部分との間に設けられる第2の部分(212)内に、2つの環状に接続される分岐部内への分割体(200)を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の構造要素(102)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の構造要素を備える航空機又は宇宙機のための胴体シェル(206)。
【請求項12】
請求項11に記載の胴体シェル(206)又は請求項1から10のいずれか1項に記載の構造要素(102)を備える航空機又は宇宙機。
【請求項13】
以下のステップ、
要素領域にわたって拡がり、発泡材料を備えるコア構成要素(408)の準備と、
コア構成要素(408)の2つの対向する境界面上への第1(401)及び第2(402)の表面板の配置であって、表面板が要素領域にわたって拡がる、表面板の配置と、
要素領域にわたって分配される複数のストラット(403)の形成であって、ストラットが、第1(401)及び第2(402)の表面板を、コア構成要素(408)を介して互いに接続する、複数のストラットの形成と、
表面板(401,402)の間で、補強経路(104)に沿って拡がる補強帯(106)の挿入であって、補強経路が要素領域に対して略平行である、補強帯の挿入と、
を備える航空機又は宇宙機のための構造要素(102)を製造するための方法。
【請求項14】
補強帯(106)の挿入は、増加した面密度におけるストラットの形成によることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
発泡材料の少なくとも部分的な除去のステップによって特徴づけられる請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−528028(P2012−528028A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511273(P2012−511273)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056860
【国際公開番号】WO2010/136362
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany