説明

様々な癌を診断、監視、段階づけ、造影及び治療する新規な方法

【課題】様々なタイプの癌を早期診断するためのより高感度で特異的である抗体および新しい診断法の提供。
【解決手段】癌特異遺伝子(Cancer Specific Genes; CSG)の検出を介して、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌及び/又は子宮癌のような婦人科系の癌、及び肺癌を限定せずに包含する選択された癌を検出、診断、監視、段階づけ、予知、in vivo 造影及び治療する。9種のCSGが同定され、それらは、特定のポリヌクレオチド配列を含んでなる遺伝子により発現されるネーティブタンパク質を特に意味する。別CGSのフラグメントも検出され得る。CSGの局在化を患者において検出又は造影するために使用し得る、CSGに対する抗体、又はそのような抗体のフラグメントを提供する。そのような抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得るか、又は分子生物学の技術によって製造し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、様々な癌、特に卵巣癌、子宮癌、子宮内膜癌及び乳癌を含む婦人科系の癌と肺癌を検出、診断、監視、段階づけ、予知、造影及び治療するための新規に開発されたアッセイに一部関する。
【0002】
背景技術
アメリカ癌学会は、今年のアメリカ人の癌死亡者数を56万以上と推定している。癌はアメリカでは第二位の死因であり、わずかに心臓病が多いだけである。1999年だけで癌と診断される新患症例数は100万以上と推定されている。
【0003】
女性では、婦人科系の癌が悪性腫瘍の1/4以上を占める。
婦人科系の癌のなかでは乳癌が最も一般的である。婦人癌ネットワークによると、米国の女性のうち8人に1人は乳癌にかかるリスクがあり、28人に1人が乳癌で死亡するリスクがある。乳癌と診断される女性の約77%は50歳以上であるが、乳癌は40歳〜55歳の女性の死因として第1位である。
【0004】
卵巣癌はもう1つのごく一般的な婦人科系の癌である。ほぼ70人に1人が生涯の間に卵巣癌に罹患する。1995年での卵巣癌による推定死亡者数は14,500であった。女性の生殖系のどの癌よりも死亡者数が高い。卵巣癌はそれと気づく症状を起こさないことが多い。しかしながら、40歳以上の女性で警告シグナルになりそうなのは、体液の蓄積による腹部の拡張、漠とした消化器系の障害(不快感、ガス、又は膨満)であるが、異常な膣出血は稀である。定期的な骨盤の精密検査が大切だが、Pap試験では卵巣癌を検出しない。40歳以上の婦人には毎年骨盤検査を受けることが推奨されている。
【0005】
また女性で一般的であるのは、子宮内膜癌又は子宮内層の癌である。婦人癌センターによると、子宮内膜癌は女性の悪性腫瘍全体の約13%を占める。米国では毎年約34,000例が子宮内膜癌と診断されている。
【0006】
子宮肉腫は他の婦人科系の癌に比較するとすっと稀な別のタイプの子宮悪性疾患である。子宮肉腫では、悪性の細胞が子宮の筋肉又は他の支持組織において増殖しはじめる。子宮肉腫は、子宮内膜癌(癌細胞が子宮の内層で増殖しはじめる疾患)とは異なる。この子宮癌は通常閉経後にはじまる。骨盤に高用量のX線(外部光線放射線療法)で治療を受けた女性は子宮肉腫を発症するリスクが高い。上記X線は子宮からの出血を止めるために婦人に照射されることがある。
【0007】
肺癌は米国の男女で2番目に多いタイプの癌であり、いずれの性でも一番多い癌の死因である。肺癌は肺に起源を持つ原発性の腫瘍、又は大腸又は乳房のような別の器官から広がった続発性の腫瘍から生じる。原発性の肺癌は3つの主要タイプへ分類される;小胞性肺癌、非小胞性肺癌、及び中皮種である。小胞性肺癌が「燕麦細胞」肺癌とも呼ばれるのは、この癌細胞が特徴的な燕麦形だからである。非小胞性肺癌には3つのタイプがある。これらは同様に振舞い、治療に対しては小胞性肺癌とは異なる応答を示すので、一緒にまとめられる。この3つのタイプとは、扁平上皮癌、腺癌及び大細胞癌である。扁平上皮癌は肺癌の最も一般的なタイプである。これは気道の裏打ちとなる細胞から発症する。一方、腺癌では粘液を産生する特定タイプの細胞(phlegm)から発症する。大細胞肺癌がそのように名づけられているのは、顕微鏡下でこの細胞を観察するときに大きくて円く見えるためである。中皮腫は胸膜と呼ばれる肺の覆いに罹患する稀なタイプの癌である。中皮腫はアスベストへの曝露によりしばしば起こされる。
【0008】
上記タイプの癌のそれぞれを検出、診断、監視、段階づけ及び予知するのに使用される方法は患者のアウトカムにとってきわめて大切である。いずれの症例でも、癌の発症を早期に診断された患者は、転移した癌と診断された患者の生存率に比較してずっと高い5年生存率を一般に有する。様々なタイプの癌を早期診断するためのより高感度で特異的である新しい診断法が明らかに求められている。
【0009】
本発明では、癌特異遺伝子(Cancer Specific Genes; CSG)の検出を介して、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌及び/又は子宮癌のような婦人科系の癌、及び肺癌を限定せずに包含する選択された癌を検出、診断、監視、段階づけ、予知、in vivo 造影及び治療するための方法が提供される。9種のCSGが同定され、それらは、SEQID NO:1、2、3、4、5、6、7、8又は9のいずれかのポリヌクレオチド配列を含んでなる遺伝子により発現されるネーティブタンパク質を特に意味する。他のやり方では、本明細書で使用されるように、9種のCSGにより意味されるものは、SEQID NO:1〜9のポリヌクレオチド配列のいずれかを含んでなる遺伝子によりコードされるネーティブなmRNAを意味するか、又はそれはSEQID NO:1〜9のポリヌクレオチド配列のいずれかを含んでなる遺伝子そのものを意味する。SEQID NO:10、11、12、13又は14に示されるようなCGSのフラグメントも検出され得る。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、効果及び側面は、以下の説明から当業者に明らかになるだろう。しかしながら、以下の説明と特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すものであって、例示のためだけに示される。この開示される発明の精神及び範囲のなかで様々な変更及び改良をすることは、以下の説明を読むこと、及び本開示の他の部分を読むことから、当業者にはすぐに明らかであろう。
【0011】
発明の要約
上記及び他の目的のために、細胞、組織又は体液のCSGのレベルを、正常なヒト対照の好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較したときの変化について分析することによって、選択された癌の存在を診断する方法を提供することが本発明の目的であり、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの変化が選択された癌に関連づけられる。本発明の目的では、「選択された癌」は、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌及び/又は子宮癌のような婦人科系の癌、及び肺癌を含むことを意味する。
【0012】
さらに提供されるのは、転移した選択された癌を有する疑いのあるヒト患者を同定すること;そのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを、正常なヒト対照の好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することによって、転移したことが知られていない選択された癌を有する患者において転移癌を診断する方法であり、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの増加が転移した癌に関連づけられる。
【0013】
本発明によりまた提供されるのは、上記のような癌を有するヒト患者を同定すること;そのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを正常なヒト対照サンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することによって、選択された癌をヒト患者において段階づける方法であり、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの増加が進行している癌に関連づけられ、CSGレベルの減少が退縮しているか又は寛解状態にある癌に関連づけられる。
【0014】
さらに提供されるのは、選択された癌を患者において転移の発症について監視する方法である。この方法は、転移したことが知られていない選択された癌を有するヒト患者を同定すること;そのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて定期的に分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを正常なヒト対照サンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することを含み、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの増加が転移した癌に関連づけられる。
【0015】
さらに提供されるのは、CSGのレベルに注目することによって、そのような癌を有するヒトにおいて、選択された癌の段階変化を監視する方法である。この方法は、選択された癌を有するヒト患者を同定すること、そのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて定期的に分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを正常なヒト対照サンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することを含み、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの増加が進行している癌に関連づけられ、CSGレベルの減少が退縮しているか又は寛解状態にある癌に関連づけられる。
【0016】
さらに提供されるのは、選択された癌を検出又は診断する目的でCSGの局在化を患者において検出又は造影するために使用し得る、CSGに対する抗体、又はそのような抗体のフラグメントである。そのような抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得るか、又は分子生物学の技術によって製造し得る。本文及び本明細書を通して使用されるように、「抗体」という用語は、SELEXとして言及され、当業者によく知られている in vitro 進化のプロトコールから派生するようなアプタマー及び単鎖オリゴヌクレオチドも包含することを意味する。抗体は多様な検出ラベルで標識され得るが、それには、限定しないが、放射性同位体及び常磁性金属が含まれる。これらの抗体又はそのフラグメントはまた、CSGの発現により特徴づけられる疾患の処置における治療薬としても使用し得る。治療応用では、抗体は、放射性同位体、酵素、毒素、薬物又はプロドラッグのような細胞毒性薬へ誘導化するか又は誘導化せずに使用し得る。
【0017】
本発明の他の目的、特徴、効果及び側面は、以下の説明から当業者に明らかになるだろう。しかしながら、以下の説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すものであって、例示のためだけに示される。この開示される発明の精神及び範囲のなかで様々な変更及び改良をすることは、以下の説明を読むこと、及び本開示の他の部分を読むことから、当業者にはすぐに明らかであろう。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、CSGのレベルを正常なヒト対照のCSGレベルと比較することによって、選択された癌を検出、診断、監視、段階づけ及び予知するための、定量的かつ定性的な診断アッセイ及び方法に関する。本明細書で使用されるように、CSGのレベルとは、SEQID NO:1〜9のいずれかのポリヌクレオチド配列を含んでなる遺伝子により発現されるネーティブなタンパク質のレベルのことである。他のやり方では、本明細書で使用されるように、CSGのレベルとは、SEQID NO:1〜9のポリヌクレオチド配列のいずれかを含んでなる遺伝子によりコードされるネーティブなmRNAのレベルであるか、又はSEQID NO:1〜9のポリヌクレオチド配列のいずれかを含んでなる遺伝子のレベルのことである。SEQID NO:10、11、12、13及び14に示されるようなCGSのフラグメントも検出され得る。そのようなレベルは、好ましくは細胞、組織及び/又は体液の少なくとも1つで測定され、正常及び異常なレベルの定量も含まれる。このように、例えば、正常な対照の体液、細胞又は組織のサンプルに比較してCSGタンパク質の過剰発現を診断する、本発明による診断アッセイは、選択された癌の存在を診断するために使用され得る。「選択された癌」とは、本明細書で使用されるように、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌又は子宮癌のような婦人科系の癌、または肺癌を意味する。
【0019】
9種のCSGは、本発明の方法において、単独でか、又はそのすべて一緒にか又は任意の組合せで測定され得る。しかしながら、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌及び子宮癌を含む婦人科系の癌に関する方法では、SEQID NO:1又はそのフラグメントを含んでなるCSGのレベルを定量することが好ましい。このCSGの検出し得る代表的なフラグメントは、SEQID NO:10、11、12及び13に示される。肺癌と、卵巣癌、子宮内膜癌及び子宮癌を含む婦人科系の癌に関する方法では、SEQID NO:2又は9を含んでなるCSGのレベルを定量することが好ましい。SEQID NO:14に示されるようなこのCSGのフラグメントも検出され得る。卵巣癌に関する方法では、SEQID NO:3を含んでなるCSGのレベルを定量することも好ましい。
【0020】
本発明のすべての方法は、CSGだけでなく他の癌マーカーのレベルを測定することも所望により包含し得る。本発明に有用なCSG以外の癌マーカーは、試験される癌により異なり、当業者に知られている。
【0021】
診断アッセイ
本発明は、細胞、組織又は体液のCSGのレベルを、正常なヒト対照由来の好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGのレベルと比較したときの変化について分析することによって選択された癌の存在を診断する方法を提供し、ここでは正常なヒト対照に対する患者のCSGレベルの変化が選択された癌の存在に関連づけられる。
【0022】
本発明を限定しないが、一般に、定量的な診断アッセイでは、試験される患者が癌を有することを示す陽性の結果とは、CSGのような癌マーカーの細胞、組織又は体液レベルが、正常なヒト対照の好ましくは同一の細胞、組織又は体液のレベルより少なくとも2倍高く、最も好ましくは少なくとも5倍高いことである。
【0023】
本発明はまた、まだ転移していない選択された癌を有する患者において、選択された癌の転移を転移の発症について診断する方法を提供する。本発明の方法では、転移した可能性がある(が転移したことは知られていない)選択された癌を有することが疑われるヒト癌患者が同定される。このことは当業者に知られた様々な手段により達成される。例えば、卵巣癌の場合、患者は一般に外科的段階づけとCA125レベルの監視に従って卵巣癌と診断される。従来の検出法も利用可能であり、患者のCSGレベルの定量により診断し得る他の選択された癌について知られている。
【0024】
本発明では、細胞、組織又は体液のCSGレベルの存在を決定することは、転移していない選択された癌と転移した選択された癌とを区別するために特に有用である。現存の技術では転移した癌と転移していない癌とを区別することが難しく、適切な治療の選択はそのような知識にしばしば左右される。
【0025】
本発明では、そのような細胞、組織又は体液で測定される癌マーカーはCSGであり、そのレベルが正常なヒト対照の好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較される。つまり、観察される癌マーカーが血清のCSGであれば、このレベルが好ましくは正常ヒト患者の血清のCSGレベルと比較される。正常なヒト対照に対する患者のCSGの増加が転移した癌に関連づけられる。
【0026】
本発明を限定しないが、一般に、定量的な診断アッセイでは、試験されるか又は監視される患者の癌が転移したことを示す陽性の結果とは、CSGのような癌マーカーの細胞、組織又は体液レベルが、正常患者の好ましくは同一の細胞、組織又は体液のレベルより少なくとも2倍高く、最も好ましくは少なくとも5倍高いことである。
【0027】
本明細書で使用される正常なヒト対照には、癌を有さないヒト患者、及び/又はその患者由来の非癌性サンプルが含まれ;転移について診断又は監視する方法では、正常なヒト対照には、転移してない選択された癌を有すると信頼し得る方法により判定されるヒト患者由来のサンプルも含まれる。
【0028】
段階づけ(ステージング)
本発明はまた選択された癌をヒト患者において段階づける方法を提供する。
【0029】
この方法は、選択された癌を有するヒト患者を同定すること、及びそのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて分析することを含む。次いで、この方法ではそのような細胞、組織又は体液のCSGレベルが正常なヒト対照のサンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較され、ここでは正常なヒト対照に対するヒト患者のCSGレベルの増加が進行している癌に関連づけられ、CSGレベルの減少が退縮しているか又は寛解状態にある癌に関連づけられる。
【0030】
監視(モニタリング)
さらに提供されるのは、選択された癌をヒトにおいて転移の発症について監視する方法である。この方法は、転移したことが知られていない選択された癌を有するヒト患者を同定すること;そのようなヒト患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて定期的に分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを正常なヒト対照サンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することを含み、ここでは正常なヒト対照に対するヒト患者のCSGレベルの増加が転移した癌に関連づけられる。
【0031】
本発明によりさらに提供されるのは、上記のような癌を有するヒトにおいて、選択された癌の段階変化を監視する方法である。この方法は、選択された癌を有するヒト患者を同定すること;そのような患者由来の細胞、組織又は体液のサンプルをCSGについて定期的に分析すること;そのような細胞、組織又は体液のCSGレベルを正常なヒト対照サンプルの好ましくは同一型の細胞、組織又は体液のCSGレベルと比較することを含み、ここでは正常なヒト対照に対するヒト患者のCSGレベルの増加が段階において進行している癌に関連づけられ、CSGレベルの減少が段階において退行しているか又は寛解状態にある癌に関連づけられる。
【0032】
そのような患者を転移の発症について監視することは定期的であり、好ましくは四半期ベースでなされる。しかしながら、当該の癌、特定の患者、及び癌の段階によっては頻度を増減してよい。
【0033】
アッセイ技術
患者に由来するサンプルにおいて、本発明のCSGのような遺伝子発現のレベルを定量するために使用し得るアッセイ技術は、当業者によく知られている。そのようなアッセイ方法には、ラジオイムノアッセイ、逆転写酵素PCR(RT−PCR)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、in situ ハイブリダイゼーションアッセイ、競合的結合アッセイ、ウェスタンブロット分析、ELISAアッセイ及びプロテオミック・アプローチが含まれる。上記のなかで、生物学的流体における遺伝子の発現タンパク質を診断するためにしばしば好ましいのはELISAである。
【0034】
ELISAアッセイは、先ず、市販品から容易に入手し得ない場合は、CSGに対する特異抗体、好ましくはモノクローナル抗体を製造することを含む。さらに、一般に、CSGと特異的に結合するレポーター抗体が製造される。このレポーター抗体には、放射活性、蛍光、又は酵素の試薬のような検出可能な試薬、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素又はアルカリホスファターゼが付けられる。
【0035】
ELISAを実行するには、CSGに特異的な抗体を、この抗体に結合する固形支持体、例えばポリスチレンディッシュ上でインキュベートする。さらにウシ血清アルブミンのような非特異的なタンパク質とインキュベートすることによって、ディッシュ上のフリーなタンパク質結合部位がカバーされる。次に、分析すべきサンプルをこのディッシュの中でインキュベートすると、その間に、ポリスチレンディッシュに付いた特異抗体にCSGが結合する。未結合のサンプルを緩衝液で洗い落とす。CSG特異的に向けられて西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したレポーター抗体をディッシュに入れると、CSGに結合したモノクローナル抗体にこのレポーター抗体が結合する。付着しなかったレポーター抗体を洗い流す。比色基質を含むペルオキシダーゼ活性用の試薬をディッシュに加える。CSG抗体に連結した固定化ペルオキシダーゼにより発色した反応生成物が産生される。ある一定時間における発色量は、サンプルに存在するCSGタンパク質の量に比例している。一般に、標準曲線を参照にして定量的な結果を得る。
【0036】
競合アッセイを利用することも可能であり、ここでは固形支持体及び標識されたCSGに付いたCSGの特異抗体と宿主由来のサンプルを固形支持体に通過させ、固形支持体に付いた検出ラベルの量をサンプル中のCSG量に相関させる。
【0037】
核酸法は、CSGのmRNAを選択された癌のマーカーとして検出するために使用し得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び、リガーゼ連鎖反応(LCR)及び核酸配列ベースの増幅(NASABA)のような他の核酸法が、様々な選択された悪性疾患の診断及び監視用に悪性腫瘍細胞を検出するために使用し得る。例えば、逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、数千もの他のmRNA種の複雑な混合物において特定のmRNA集団の存在を検出するために使用し得る強力な技術である。RT−PCRでは、先ず酵素の逆転写酵素を使用してmRNA種が相補DNA(cDNA)へ逆転写される;次いでこのcDNAを標準的なPCR反応において増幅する。このようにRT−PCRは増幅によりある単一のmRNA種の存在を示し得る。従って、このmRNAがそれを産生する細胞にごく特異的であれば、RT−PCRを使用して特定タイプの細胞の存在を同定し得る。
【0038】
固形支持体上にアレイ配列された(即ち、グリッディング)クローン又はオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションを使用して、当該遺伝子の発現を検出すること、及びその発現レベルを定量することが可能になる。このアプローチでは、CSG遺伝子をコードするcDNAが基質に固定されている。この基質は好適なタイプのものであり得るが、限定せずに、ガラス、ニトロセルロース、ナイロン又はプラスチックを包含する。CSG遺伝子をコードするDNAの少なくとも一部分を基質に付け、次いで分析物とインキュベートするが、これは関心対象の組織から単離された、RNA又はそのRNAの相補DNA(cDNA)コピーであり得る。基質に結合したDNAと分析物とのハイブリダイゼーションは、様々な手段により検出及び定量され得るが、それには限定せずに、分析物又はハイブリッド検出用に設計された二次分子を放射活性標識すること又は蛍光標識することが含まれる。遺伝子発現レベルの定量は、分析物由来のシグナル強度を既知の標準から決定された強度と比較してなされる。標準は、標的遺伝子のin vitro 転写、収率の定量、及びその材料を使用して標準曲線を作成することによって得られる。
【0039】
プロテオミック・アプローチでは、二次元(2D)電気泳動が当技術分野でよく知られた技術である。血清のようなサンプルから各タンパク質を単離することは、通常ポリアクリルアミドゲル上で、様々な特性によりタンパク質を連続的に分離することによってなされる。先ず、タンパク質は電流を使用してサイズにより分離される。電流はすべてのタンパク質に均等に作用するので、より小さいタンパク質はより大きいタンパク質よりゲル上を遠く移動する。第二の次元では最初に対して垂直な電流を適用し、サイズではなく、各タンパク質の担う特定の電荷に基づいてタンパク質が分離される。異なる配列を有する2つのタンパク質がサイズと電荷の両方で一致することはないので、2D分離の結果、四角いゲル上に各タンパク質が特有のスポットを占める。化学品又は抗体のプローブでスポットを分析するか、又は後続のタンパク質のミクロ配列決定により、サンプル内のある特定タンパク質の相対量やタンパク質の同一性を明らかにし得る。
【0040】
上記の試験は、多種多様な患者の細胞、体液及び/又は組織生検及び剖検材料に由来するような組織抽出物(ホモジェネート又は可溶化された組織)から派生したサンプルに対して実施し得る。本発明に有用な体液には、血液、尿、唾液、又は他の身体分泌物又はそれらの誘導物が含まれる。血液は、白血球、血漿、血清、又は血液の誘導物を包含し得る。
【0041】
In vivo の抗体使用 CSGに対する抗体は、肺癌、又は卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌又は子宮癌のような婦人科系の癌を含む選択された癌に罹患していることが疑われる患者に in vivo でも使用し得る。特に、CSGに対する抗体は、選択された癌を有する疑いのある患者へ、診断及び/又は治療の目的で注射され得る。in vivo 診断に抗体を使用することは当技術分野でよく知られている。例えば、インジウム−111で標識した抗体−キレート剤は、癌胎児性抗原を発現する腫瘍の放射免疫シンチグラフィー造影での使用が記述されている(Sumerdon et al., Nucl. Med. Biol. 1990, 17: 247-254)。特に、このような抗体−キレート剤は、再発性の結腸直腸癌を有する疑いのある患者の腫瘍を検出するのに使用されてきた(Griffin et al., J. Clin. Onc. 1991, 9: 631-640)。磁気共鳴映像に使用される標識としての常磁性イオンが付いた抗体についても記述されてきた(Lauffer, R. B., Magnetic Resonance in Medicine, 1991, 22: 339-342)。CSGに対して向けられた抗体も同様のやり方で使用し得る。CSGに対する標識抗体は、患者の病態を診断又は段階づける目的で、選択された癌を有する疑いのある患者へ注射され得る。使用される標識は、用いられる造影の様式に応じて選択される。例えば、インジウム−111、テクネチウム−99m又はヨウ素−131のような放射活性標識は、二次元スキャン又はシングルフォトンエミッションコンピュータ断層撮影法(SPECT)に使用し得る。フッ素−19のような陽電子放射標識は、陽電子放射断層撮影法に使用し得る。ガドリニウム(III)又はマンガン(II)のような常磁性イオンは、磁気共鳴映像(MRI)に使用し得る。標識の定位により癌の広がりを決定することが可能になる。臓器又は組織内にある標識の量により当該臓器又は組織における癌の有無を判定することも可能になる。
【0042】
選択された癌と診断された患者にとっては、CSGに対する抗体を注射することが治療上の利益をもたらし得る。抗体はその治療効果を単独で発揮するかもしれない。他のやり方では、抗体は、その治療効果を増強させるために薬物、毒素又は放射性核種のような細胞毒性薬に結合(コンジュゲート)される。モノクローナル抗体医薬については、例えば Garnett and Baldwin, Cancer Research 1986, 46: 2407-2412 により、当技術分野で記述されてきた。モノクローナル抗体に毒素を結合して様々な癌種の治療に使用することも Pastan et al., Cell 1986, 47: 641-648 に記述されている。イットリウム−90で標識したモノクローナル抗体については、正常組織に対する毒性を制限しながら腫瘍へ最大用量をデリバリーすることが記述されている(Goodwin and Meares, Cancer Supplement 1997, 80: 2675-2680)。限定しないが、銅−67、ヨウ素−131及びレニウム−186を含む、他の細胞毒性の放射性核種もCSGに対する抗体の標識に使用し得る。
【0043】
上記in vivoの方法に使用し得る抗体には、ポリクローナル及びモノクローナル抗体と分子生物学の技術により製造される抗体がいずれも含まれる。抗体フラグメント、及びSELEXとして言及され、当業者によく知られている in vitro 進化のプロトコールから派生するようなアプタマー及び単鎖オリゴヌクレオチドも使用し得る。
【0044】
本発明は以下の実施例によりさらに詳しく説明される。以下の実施例は特定の態様に関連して本発明を具体的に説明するためにのみ提供される。これら典型的な実施例は、本発明のある側面を説明するが、限定的なことを示したり、開示された発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1.
diaDexus LLC,サンタクララ、CAにより開発されたデータマイニング用のCancerLeads AutomaticSearch Package(CLASP)を使用して、IncytePharmaceuticals,パロアルト、CAより入手可能なLIFESEQデータベースのデータを体系的に分析することにより、CSGの同定を実施した。
【0046】
CLASPは以下の工程を実施する:標的臓器における対応ESTの(他の全臓器と比較した)アバンダンスレベルに基づいて、高度に発現されている臓器特異的な遺伝子を選択すること;高度に発現されている臓器特異的遺伝子のそれぞれについて、正常、腫瘍組織、罹患組織及び腫瘍又は疾患に関連した組織ライブラリーにおける発現レベルを分析すること。成分ESTを示している候補遺伝子は、腫瘍ライブラリーにおいて専ら又はより頻繁に選択した。CLASPにより、高度に発現されている臓器及び癌特異遺伝子を同定することが可能になる。次いで詳細評価の最終マニュアルを実施して、CSG選択を完了する。
【0047】
【表1】

【0048】
以下の実施例は、詳しく説明される場合を除くと、当業者によく知られていて常法となっている標準技術を使用して実施した。以下の実施例にある定常的な分子生物学の技術は、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd. Ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y. (1989) のような標準実験マニュアルに記載の通りに実施し得る。
【0049】
実施例2:遺伝子発現の比較定量 蛍光Taqmanプローブを用いるリアルタイム定量PCRは、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性を利用する定量的な検出系である。この方法では、5’のレポーター色素と下流の3’消光色素で標識された内部蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(Taqman)が使用される。PCRの間に、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性によりレポーターが放出され、次いでModel7700 SequenceDetection System(PEApplied Biosystems,フォスターシティ、CA,アメリカ)のレーザー検出器によりその蛍光を検出し得る。
【0050】
増幅した内因性対照物を使用して、反応物に加えられるサンプルRNAの量を標準化し、逆転写酵素(RT)の効率を正規化する。この内因性対照物として使用されるのは、シクロフィリン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)又は18SリボソームRNA(rRNA)のいずれかである。試験される全サンプル間の相対量を算出するために、1つのサンプルの標的RNAレベルを比較結果の基準値(キャリブレータ)として使用した。「キャリブレータ」に対する相対量は、標準曲線を使用するか又は比較法(UserBulletin #2:ABIPRISM 7700Sequence DetectionSystem)により得ることができる。
【0051】
正常組織及び癌組織の各例につき、標的遺伝子の組織分布及びレベルを評価した。正常組織、癌組織、及び癌とその対応する対等の(matched)隣接組織から全RNAを抽出した。次いで、逆転写酵素を用いて第一のcDNA鎖を調製し、各標的遺伝子に特異的なプライマ−及びTaqmanプローブを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応を実施した。この結果は、ABIPRISM 7700Sequence Detectorを使用して分析される。以下の無名数は、キャリブレータ組織に比較した、特定組織における標的遺伝子の相対発現レベルである。
【0052】
Ovr110;クローン ID16656542;遺伝子ID234617(SEQ IDNO:1、10、11、12又は13)の測定 表2に示す無名数は、12種の異なる正常組織におけるOvr110(SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:10、11、12又は13に示されるそのフラグメント)の相対発現レベルである。数値はすべて正常な胃(キャリブレータ)に比較されている。これらのRNAサンプルは、様々な個体由来の特定組織のサンプルをプールして産生した市販品のプールである。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の相対発現レベルは、分析したほとんどの正常組織においてOvr110が比較可能なレベルで検出されることを示す。高レベルのOvr110mRNAを発現している組織は、相対発現レベルが21.41の膵臓、子宮内膜(8.82)、精巣(8.72)及び腎臓(7.19)だけである。
【0055】
表2の無名数は、様々な個体由来の特定臓器サンプルのプールを分析して得たものである。それらは、単一個体の組織サンプルから得たRNAに由来する表3の無名数には比較し得ない。
【0056】
表3に示される無名数は、73対の対等サンプルにおけるOvr110の相対発現レベルである。いずれの数値も正常な胃(キャリブレータ)に比較されている。対等の対は、特定組織の癌サンプル由来のmRNAと同一の個体に由来する同一組織の正常隣接サンプルのmRNAにより形成される。さらに、15種の対等でない癌サンプル(卵巣と乳腺由来)と14種の対等でない正常サンプル(卵巣と乳腺由来)も試験した。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
表2及び表3は16種の異なる組織型で合わせて全187個のサンプルを表す。対等サンプルの分析では、より高いレベルの発現が乳腺、子宮、子宮内膜及び卵巣で認められ、婦人科系の組織に対する高い組織特異性を示した。分析した上記以外の全サンプルで高い発現レベルのOvr110を示したのは数サンプル(Kid109XD、LngSQ56及びPan82XP)だけであった。
【0060】
さらに、同一個体由来の癌サンプルと同系遺伝子の正常隣接組織においてmRNAの発現レベルを比較した。この比較により癌の段階についての特異性が示される(例えば、正常隣接組織に比較して癌サンプルでより高いレベルのmRNAが発現している)。表3は、16個の乳腺癌組織のうち15個(乳腺サンプルMamS516、MamS621、MamS854、Mam59X、MamS079、MamS967、MamB011X、MamS123、MamS699、MamS997、Mam162X、MamA06X、Mam699F、Mam12X及びMam42DN)でそれぞれの正常隣接組織に比較してOvr110が過剰発現していることを示す。試験した乳腺の対等サンプルの94%で癌組織における過剰発現があった。
【0061】
子宮では、4個の対等サンプルのうち3個(子宮サンプルUtr23XU、Utr85XU、及びUtr141XO)でOvr110が過剰発現している。分析した子宮の対等サンプルの75%で癌組織における過剰発現があった。
【0062】
子宮内膜では、10個の対等サンプルのうち6個(子宮内膜サンプルEnd8963、End65RA、End8911、End3AX、End10479、及びEnd12XA)でOvr110が過剰発現している。分析した子宮の対等サンプルの60%で癌組織における過剰発現があった。
【0063】
卵巣では、1個の対等サンプルのうち1個でOvr110が過剰発現を示す。対等でない卵巣サンプルについては、12個のうち8個の癌サンプルが正常の非対等卵巣サンプルのメジアン(2.52)より高いOvr110の発現値を示す。対等でない卵巣サンプルの67%で癌組織における過剰発現があった。
【0064】
以上から、試験した対等サンプルのほとんどにおける組織特異性レベル、並びにmRNAの過剰発現は、Ovr110(SEQID NO:1、10、11、12又は13を含む)が婦人科系の癌、特に乳腺又は乳房、子宮、卵巣及び子宮内膜の癌を検出するための診断マーカーになることを示している。
【0065】
Ovr114;クローン ID1649377;遺伝子ID481154(SEQ IDNO:3)の測定 表4に示す数字は、12種の正常組織におけるOvr114の、膵臓(キャリブレータ)に比較した相対発現レベルである。これらのRNAサンプルは市販品から得て、様々な個体由来の特定組織のサンプルをプールして産生した。
【0066】
【表5】

【0067】
表4の相対発現レベルは、分析した正常組織のすべてのプールにおいてOvr114のmRNA発現が検出されることを示す。
表4に示す組織は様々な個体からプールされたサンプルである。表5に示す組織は各個体から得たものであり、プールされたものではない。従って、表4に示されるmRNAの発現レベルについての数値は、表5に示される数値と直接は比較し得ない。
【0068】
表5に示される数字は、46対の対等サンプル及び27個の非対等組織サンプルにおける、膵臓(キャリブレータ)に比較したOvr114の相対発現レベルである。各対等の対には、同一の個体に由来する、特定組織の癌サンプルとその同一組織の正常隣接組織サンプルが含まれる。同一個体から正常隣接サンプルを得ることができない癌(例えば、卵巣)では、異なる正常個体由来のサンプルを分析した。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
表4及び表5は17種のヒト組織型で合わせて全129個のサンプルを表す。16種の異なる組織を表す表5の117サンプルのなかで、高レベルの発癌が見られるのは卵巣癌のサンプルだけである。Ovr114の発現のメジアンは、卵巣癌で14.03(範囲:0.5〜106.08)であり、正常卵巣で4.34(範囲:0〜22.09)である。換言すると、癌サンプルにおけるOvr114の発現レベルのメジアンは、正常卵巣サンプルのそれに比較して3.5倍増加している。12個の卵巣癌のうち5個(42%)が正常卵巣に比較して増加した発現を示した(95%の特異性)。他の婦人科系の癌におけるOvr114の発現のメジアンは4.99であり、15個のサンプルのうち2個が卵巣癌のそれに比較し得る発現レベルを示した。残りの癌サンプルにおけるOvr114の発現レベルのメジアンは1.24であり、卵巣癌サンプルで示される数値の1/11未満である。卵巣癌サンプルに匹敵する発現レベルを示した個体はない(肝臓2;LivVNM00175/175を除く)。
【0072】
個々の卵巣癌サンプルの42%で発現が3.5倍増加していること、及び他の非婦人系の癌で比較可能な発現がないことは、Ovr114が卵巣癌細胞を検出する診断マーカーになることを示している。Ovr114マーカーは他の婦人癌の検出にも有用であり得ると考えられる。
【0073】
Ovr115;クローン ID1283171;遺伝子ID332459(SEQ IDNO:2又は14)の測定 表6に示す数字は、それぞれのキャリブレータに比較したOvr115の相対発現レベルである。数字は、精巣(キャリブレータ)に比較した12種の正常組織における相対発現レベルである。これらのRNAサンプルは市販品から得て、様々な個体由来の特定組織のサンプルをプールして産生した。
【0074】
【表8】

【0075】
表6の相対発現レベルは、分析した12種の正常組織のすべてにおいてOvr115のmRNA発現が検出されることを示す。
表6に示す組織は様々な個体からプールされたサンプルである。表7に示す組織は各個体から得たものであり、プールされたものではない。従って、表6に示されるmRNAの発現レベルについての数値は、表7に示される数値と直接は比較し得ない。
【0076】
表7に示される数字は、46対の対等サンプル及び27個の非対等組織サンプルにおける、精巣(キャリブレータ)に比較したOvr115の相対発現レベルである。各対等の対には、同一の個体に由来する、特定組織の癌サンプルとその同一組織の正常隣接組織サンプルが含まれる。同一個体から正常隣接サンプルを得ることができない癌(例えば、卵巣)では、異なる正常個体由来のサンプルを分析した。
【0077】
【表9】

【0078】
【表10】

【0079】
表6及び表7は17種のヒト組織型で合わせて全129個のサンプルを表す。同一個体由来の卵巣癌サンプル及び正常隣接組織、又は他の個体由来の正常隣接組織におけるmRNA発現のレベルの比較を表7に示す。Ovr115は、全21の正常又は正常隣接卵巣サンプルに示される最高レベルに比較して、12個の癌組織のうち9個(75%)でより高いレベルで発現されていた。悪性度が境界域にある4個の卵巣腫瘍のうち4個すべて(100%)でOvr115の発現が上昇していた。正常卵巣における発現のメジアンが0であるのに対し、卵巣癌(悪性度が境界上にあるものも含む)における発現のメジアンは212.30であった。それら自身の正常隣接組織サンプルと比較すると、Ovr115の発現レベルは、肺癌でも3個のうち3個(100%)、子宮癌では4個のうち3個(75%)、子宮内膜癌では4個のうち2個(50%)で上昇していた。
【0080】
卵巣癌及び他の選択された癌のサンプルにおいてOvr115の発現レベルが相対的に高いことは、Ovr115が卵巣癌、肺癌、子宮癌及び子宮内膜癌を検出する診断マーカーになることを示している。
【0081】
Ovr115の同族体も公知のデータベースに同定されている;g2597613−gi|2507612|gb|U75329.1|HSU75329ヒトセリンプロテアーゼのmRNA、完全CDS。この同族体は本明細書ではSEQID NO:9として示されている。SEQID NO:9又はそれによりコードされるタンパク質(SEQID NO:15)も卵巣癌、肺癌、子宮癌及び子宮内膜癌をヒト患者において検出するための診断マーカーとして有用であり得ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1により表される天然蛋白質を結合する抗体又は抗体の断片。
【請求項2】
断片がSEQ ID NO:12を含む請求項1記載の抗体又は抗体の断片。
【請求項3】
断片がSEQ ID NO:13を含む請求項1記載の抗体又は抗体の断片。
【請求項4】
抗体がモノクローナル抗体である請求項1記載の抗体又は抗体の断片。
【請求項5】
患者において癌を造影するための医薬の製造における請求項1記載の抗体の使用。
【請求項6】
抗体が常磁性イオン又は放射性同位体により標識されている、請求項5記載の使用。
【請求項7】
癌が卵巣癌、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、肺癌または膵臓癌である、請求項5記載の使用。
【請求項8】
患者において癌を治療するための医薬の製造における抗体の使用。
【請求項9】
抗体が細胞毒性薬に結合している、請求項8記載の使用。
【請求項10】
癌が卵巣癌、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、肺癌または膵臓癌である、請求項8記載の使用。

【公開番号】特開2007−126463(P2007−126463A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316768(P2006−316768)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【分割の表示】特願2000−567741(P2000−567741)の分割
【原出願日】平成11年9月1日(1999.9.1)
【出願人】(500391855)ダイアデクスアス・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】