説明

標的抗原

本発明は、標的抗原を産生、及び利用するための試薬と方法を提供するものである。好ましい実施形態では、抗原は、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子の抗原提示経路に抗原を導くようなアミノ酸配列に融合している。本明細書で提供された試薬と方法を用いれば、免疫プロトコールが改善され、結果として宿主の免疫活性が高められるといってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年12月31日に受理された米国仮特許出願第60/533,728号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、免疫プロトコールを改良するための試薬と方法に関するものである。例えば、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子の抗原提示経路に免疫原性アミノ酸配列を導くようなアミノ酸配列に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ペプチドを主成分とするワクチンは、多くの利点をもつが(安全で大量生産が容易)、これらは限られた免疫原性しか持たない。これは、外在性ペプチドがクラスI MHC分子の抗原提示経路に効果的にアクセスできないことに部分的には帰因する。従って、MHC分子へのペプチドの運搬を増強し得る戦略は、ペプチドを主成分とするワクチンの効力を高める可能性が期待できる。戦略の一つは、免疫原性配列を“プロテイントランスダクションドメイン(protein transduction domain)”(PTD)につなげることであり、プロテイントランスダクションドメイン(PTD)は、細胞膜を通過してタンパク質およびペプチドの転位をもたらすものであることが示されている。典型的なPTDとしては、HIV-Tat、細胞透過ペプチド(cell penetrating peptides)(CPP)、トロイ運搬体(Trojan carriers)、アンテナペディア(Antennapedia)ホメオドメイン、及びヒトのperiod-1タンパク質が在る。
【0004】
一つのやり方としては、HIV-1 tat(すなわち49〜57塩基対)から由来した陽イオン性の短いペプチドに抗原ペプチドをつなげて、融合物を作り上げる。樹状細胞のような抗原提示細胞(“APC”)が接触すると、ova-tat融合物に作用し、結果として抗原特異的CD8陽性T細胞を刺激することが知られている(非特許文献1;非特許文献2)。これは、ヒトの黒色腫抗原TRP2においても示されている(非特許文献3)。tatペプチドと完全長タンパク質の融合物では、これとは異なる証拠が示されている(非特許文献4)。
【0005】
もう一つのやり方としては、CTLのエピトープと融合したAntennapediaホメオドメイン(AntpHD)がCD8陽性T細胞の応答を増強することが示されている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。AntpHDは、50アミノ酸以下の抗原配列に有用であることが分かっている。
【0006】
他の研究では、ヒトのperiod-1タンパク質由来のトランスダクション配列(hPER1, SRRHHCRSKAKRSRHH配列)が、効率よく細胞膜を通過することが示されている。従って、これは、抗原運搬体の候補として期待できる。下記に詳細を示したように、実際hPER1は、抗原の提示、及びT細胞の応答を増強するように作用する。
【非特許文献1】キム(Kim)ら、J Immunol 1997 Aug 15; 159 (4): 1666-1668
【非特許文献2】シバガキ(Shibagaki)ら、J Immunol 2002 Mar 1; 168 (5): 2393-2401
【非特許文献3】ワング(Wang)ら、J Clin Invest 2002 Jun; 109(11) : 1463-1470
【非特許文献4】ライファート(Leifert)ら、Gene Ther 2002 Nov; 9 (21): 1422-1428
【非特許文献5】シェイク(Chikh)ら、J Immunol 2001 Dec 1; 167 (11): 6462-6470
【非特許文献6】ピエテルス(Pietersz)ら、Vaccine 2001 Jan 8; 19(11-12)
【非特許文献7】シュッツレデルメイヤー(Schutze-Redelmeier)ら、J Immunol 1996 Jul 15; 157 (2):650-655
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、標的抗原の生産と利用のための試薬と方法を提供するものである。好ましい実施形態では、抗原提示のために抗原をMHC分子に導くようなアミノ酸配列と、抗原を融合させる。本明細書で提供される試薬と方法を用いることにより、免疫プロトコールが強化され、結果として宿主の免疫活性が高められるといってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、MHC分子の抗原提示経路にペプチドを優先的に導くようなアミノ酸配列(ここでは“ターゲティング配列(targeting sequence)”と呼ぶ)を用いて、MHC分子の抗原提示経路に抗原を導く方法を提供するものである。ペプチドを主成分とした免疫プロトコール、例えば、樹状細胞、核酸ワクチン、あるいはベクターに基づいた(ウィルス、細菌)ワクチン接種での抗原の発現に、このターゲティング戦略を利用することができる。本発明の記述において、ターゲティングアミノ酸配列につながれた免疫原性アミノ酸配列を、“標的抗原(targeted antigen)”と呼ぶ。“標的抗原”という用語には、それの断片、変異体、あるいは派生物も含まれる。
【0009】
ターゲティング配列は、例えば、当業者に既知であるいかなるトランスダクション配列をも含み得る。中でもよく用いられているものとしては、Antennapedia、TAT、VP22、あるいはhPERタンパク質由来の配列(すなわちターゲティング配列)である。特によく用いるターゲティング配列は、例えば以下のものを含む。
【0010】

一つの実施形態では、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が認識するエピトープをhPERのトランスダクション配列につなげ、標的抗原(またはhPER-CTL融合物)を作る。宿主への標的抗原の投与により、抗原に対する免疫応答は、単なる抗原を使用した場合より、むしろ強くなる傾向がある(すなわち細胞傷害性T細胞の応答性の増強)。
【0011】
適切な抗原には、例えば腫瘍抗原(TA)のペプチド配列も含まれ得る。“腫瘍抗原(TA)”という用語には、癌化した細胞によって産生される癌関連抗原(TAAs)と癌特異抗原(TSAs)の両方が含まれる。癌関連抗原(TAA)は、正常細胞で観察されるよりもはるかに高いレベルで癌細胞の表面に発現している抗原、または正常細胞では胎児期だけに発現される抗原である。癌特異抗原(TSA)は、癌細胞に特異的な抗原で、正常細胞に発現は見られない。さらに、腫瘍抗原(TA)は、癌関連抗原(TAA)または癌特異抗原(TSA)、これら由来の抗原性または免疫原性の断片と抗原性及び/または免疫原性を保持した修飾物をも含む。腫瘍抗原(TA)は、それらの発現パターン、機能、または遺伝子の由来に従い、典型的には5つのカテゴリーに分類される。すなわち、癌精巣(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY-ESO-1);メラノサイト分化抗原(すなわちMelanA/MART-1、チロシナーゼ、gp100);変異抗原(すなわち、MUM-1、p53、CDK-4);過剰発現した‘自己’抗原(すなわち、HER-2/neu、p53);そしてウィルス性抗原(すなわち、HPV、EBV)、である。適切な腫瘍抗原(TAs)としては、例えばgp100(コックス(Cox)ら、Science, 264: 716-719 (1994))、MART-1 /Melan A(カワカミ(Kawakami)ら、J. Exp. Med., 180: 347-352 (1994))、gp75(TRP-1)(ワング(Wang)ら、J. Exp. Med., 186: 1131-1140 (1996))、チロシナーゼ(ウォルヘル(Wolfel)ら、Eur. J. Immunol., 24: 759-764 (1994))、NY-ESO-1(WO 98/14464; WO 99/18206)、メラノーマ・プロテオグリカン(ヘルストーム(Hellstrom)ら、J. Immunol., 130: 1467-1472 (1983))、MAGEファミリー抗原(すなわちMAGE-1,2,3,4,6及び12;ファンデルブルッゲン(Van der Bruggen)ら、Science, 254: 1643-1647 (1991);米国特許第6,235,525号)、BAGEファミリー抗原(ボエル(Boel)ら、Immunity, 2: 167-175 (1995))、GAGEファミリー抗原(すなわちGAGE-1,2;ファンデンエインド(Van den Eynde)ら、J. Exp. Med., 182: 689-698 (1995);米国特許第6,013,765号)、RAGEファミリー抗原(すなわちRAGE-1;ゴーグラー(Gaugler)ら、Immunogenetics, 44: 323-330 (1996);米国特許第5,939,526号)、N-アセチルグルコサミン転移酵素-V(ギユー(Guilloux)ら、J. Exp. Med., 183: 1173-1183 (1996))、p15(ロビンズ(Robbins)ら、J. Immunol., 154: 5944-5950 (1995))、b-カテニン(ロビンズ(Robbins)ら、J. Exp. Med., 183: 1185-1192 (1996))、MUM-1(クーリー(Coulie)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 7976-7980 (1995))、サイクリン依存性キナーゼ-4(CDK4)(ウォルヘル(Wolfel)ら、Science, 269: 1281-1284 (1995))、p21-ras(フォッサム(Fossum)ら、Int. J. Cancer, 56: 40-45 (1994))、BCR-abl(ボッキア(Bocchia)ら、Blood, 85: 2680-2684 (1995))、p53(ティボルド(Theobald)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 11993-11997 (1995))、p185HER2/neu(erb-B1;フィスク(Fisk)ら、J. Exp. Med., 181: 2109-2117 (1995))、上皮増殖因子受容体(EGFR)(ハリス(Harris)ら、Breast Cancer Res. Treat, 29: 1-2 (1994))、癌胚抗原(CEA)(クウォン(Kwong)ら、J. Natl. Cancer Inst., 85: 982-990 (1995);米国特許第5,756,103号; 5,274,087号;5,571,710号; 6,071,716号; 5,698, 530号 ; 6,045, 802号; EP 263933; EP 346710; 及び EP 784483);腫瘍性変異ムチン(すなわちMUC-1 遺伝子産物;ジェロム(Jerome )ら、J. Immunol., 151: 1654-1662 (1993));EBVのEBNA遺伝子産物(すなわちEBNA-1;リッキンソン(Rickinson)ら、Cancer Surveys, 13: 53-80 (1992));ヒト乳頭腫ウィルスのE7、E6タンパク質(レッシング(Ressing)ら、J. Immunol, 154: 5934-5943 (1995));前立腺特異抗原(PSA;シュエ(Xue)ら、The Prostate, 30: 73-78 (1997))、前立腺特異膜抗原(PSMA;イスラエル(Israeli)ら、Cancer Res., 54:1807-1811 (1994));免疫グロブリンのイディオタイプまたはT細胞抗原受容体のイディオタイプといったイディオタイプのエピトープまたは抗原(チェン(Chen)ら、J. Immunol., 153: 4775-4787 (1994));KSA (米国特許第5,348, 887号)、キネシン2(ディーゼ(Dietz)ら、Biochem Biophys Res Commun 2000 Sep 7; 275 (3): 731-8)、HIP55、TGFB-1細胞死抑制因子(トーミー(Toomey)ら、Br J Biomed Sci 2001 ; 58 (3): 177-83)、腫瘍タンパク質D52(ブライン(Bryne), J. A.ら、Genomics, 35:523-532(1996))、H1FT、NY-BR-1(WO 01/47959)、NY-BR-62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、及びNY-BR-96(スキャンラン(Scanlan), M.、ヒト腫瘍抗原の同定のための、血清学及び生物情報学的アプローチ, Cancer Vaccines 2000中, Cancer Research Institute, ニューヨーク州ニューヨーク市)が在り、さらに、野生型、修飾型、変異型の腫瘍抗原(TAs)、及びこれらの免疫原性断片と派生物が含まれる。これら腫瘍抗原(TAs)のいずれも、単独で利用されるか、または混合免疫プロトコールにおいて一つ以上の標的抗原と組み合わせて利用され得る。
【0012】
腫瘍抗原由来の抗原として適切なペプチド配列の多くは、本発明で実際に利用する上で適切である。腫瘍抗原(TA)由来の好ましいペプチド配列で、TAT、AntP、hPER1-1またはhPER1-2といった標的配列に結合され得る配列を以下に示す:

さらに適切な抗原を付加するとすれば、細菌、ウィルス、寄生虫等の感染性の微生物から由来したものがある。例えば、百日咳毒といった百日咳抗原、線維状赤血球凝集素、パータクチン、凝集原、またはこれら由来のペプチドは、例えばhPER1-1またはhPER1-2といったターゲティング配列と融合させて、ワクチンとして利用され得る。同様に、Corynebacterium(すなわちジフテリア)、Clostridium (すなわち破傷風菌)、 Neisseria (すなわち髄膜炎)、連鎖球菌、ヘモフィルス、ポリオウィルス、 インフルエンザウィルス、肝炎ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)のような病気を引き起こす微生物由来の抗原もまた、当業者に知られているように、利用され得る。
【0013】
一つの実施形態においては、ターゲティング配列と免疫原性配列との間にリンカー配列を挿入して、ターゲティング配列を免疫原性配列につなげてもよい。適切なリンカーとは、例えば、免疫原性ペプチド配列の由来となった全長ペプチドの内、そのペプチド配列のアミノ末端側に続くアミノ酸配列である。例えば、gp100ペプチドの配列KTWGQYWQVのアミノ末端側には、全長gp100ポリペプチドの内のFVYVW配列が続く。従って、FVYVW配列は、gp100ペプチドをターゲティング配列につなぐリンカーの役割を果たし得る。他にも適切なリンカーは、当業者に知られているように、MHC分子と相互作用するペプチドをデザインする標準的手法を用いて考案される。
【0014】
本発明におけるペプチド配列の派生物もまた、ある実施形態において使用できる。派生物の一つのタイプは、1アミノ酸が他のアミノ酸に置換されたペプチド配列である。置換されるアミノ酸は、本来のアミノ酸に対して保存的なもの、非保存的なもの、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。あるポリペプチドの配列に対して保存的アミノ酸の修飾(及び、それに相当する塩基配列の修飾)は、本来のポリペプチドと同等の機能的、化学的性質を保持するポリペプチドをもたらすことができる。例えば、“保存的アミノ酸置換”とは、本来のアミノ酸が位置している場所におけるアミノ酸残基の大きさ、極性、電荷、疎水性、及び親水性に影響をほとんど、あるいは全く与えずに、本来のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することが含まれ、特に、免疫原性が弱まるということはない。置換に適切な保存的アミノ酸を、表Iに示した。
【表1】

【0015】
当業者なら、一般的な技術を用いて、免疫原性標的の適切な変異型を決定することができるであろう。分子の生物学的活性(すなわちMHC分子に対する結合力、免疫原性)を喪失することなく変異を導入するのに適した領域を同定するために、当業者は、このような活性に重要であるとは考えられていない領域に目を向け得る。例えば、同種、または他種由来で同等の生物活性を持つ免疫原性標的が知られている場合、当業者は、ポリペプチドのアミノ酸配列を、そのような類似したポリペプチドのアミノ酸配列と比較することがあり得る。このような解析を行うことにより、両者で保存された分子の領域とアミノ酸残基を同定することができる。そのような類似の免疫原性標的と比べて保存されていない分子の領域に変異を導入しても、生物学的活性やポリペプチドの構造に、不都合な影響がもたらされる可能性は極めて低い。当業者は、比較的保存された領域内でさえ、本来のアミノ酸残基と化学的に類似した性質を持つアミノ酸残基ならば、活性を維持したまま置換することが可能であるということも知っている。従って、生物学的活性または構造に重要な領域でも、免疫原性標的の生物学的活性の喪失や構造に対する不都合な影響をこうむることなく、保存的アミノ酸残基との置換が可能である。
【0016】
ある実施形態では、以下でより詳細に議論されているように、ペプチド配列をコードしている核酸分子を発現ベクターに挿入することがあってもよい。そのような実施形態では、ペプチド配列は、アミノ酸配列に相当するヌクレオチドにコードされている。種々のアミノ酸をコードするヌクレオチドの特定の組み合わせは、当業者に使用される様々な参考文献に記述されているように(すなわちリューイン(Lewin), B. 、GenesV, オックスフォード大学出版, 1994)、よく知られた公知技術であり、以下の表IIに示す:
【表2】

【0017】
本発明中の種々のペプチドをコードする典型的なDNA配列を以下に示す:

【0018】
ターゲティング配列を表わす第1のアミノ酸配列と抗原(T細胞エピトープ)を表わす第2のアミノ酸配列とを含む、典型的な免疫原性標的のアミノ酸、及びDNA配列を以下に示す:

【0019】
免疫応答を増強するため、標的抗原を、アジュバント及び/またサイトカインと組み合わせて投与してもよい。典型的なアジュバントを以下の表IIIに示す:
【表3】

【0020】
本発明を実施する上で、一つまたは複数のサイトカインもまた、適切な共刺激因子であり得る。これは、ポリペプチドあるいは核酸にコードされたものとして本発明の組成物中に含まれる(パーミアニ(Parmiani)ら、Immunol Lett 2000 Sep15 ; 74(1) : 41-44; バゾフスキー(Berzofsky)ら、Nature Immunol. 1: 209-219)。適切なサイトカインとは、例えば、インターロイキン-2 (IL-2) (ローゼンベルグ(Rosenberg)ら、Nature Med. 4: 321-327 (1998))、 IL-4、IL-7、及び IL-12 (パドル(Pardoll)による総説、 1992; ハリス(Harries)ら、J. Gene Med. 2000 Jul-Aug; 2 (4): 243-249 ; ラオ(Rao)ら、J. Immunol. 156: 3357-3365 (1996))、 IL-15 (シン(Xin)ら、Vaccine, 17: 858-866,1999)、 IL-16(クルークシャンク(Cruikshank)らJ. Leuk Biol. 67 (6): 757-766,2000)、 IL-18 (J. Cancer Res. Clin. Oncol. 2001.127 (12): 718-726)、GM-CSF (CSF (ディシス(Disis)ら、Blood, 88: 202-210 (1996))、腫瘍壊死因子-a (TNF- a)、またはインターフェロン-g (INF-g)が、在る。他のサイトカインもまた、当業者に知られているように、本発明を実施するために適切であり得る。
【0021】
ケモカインもまた、免疫応答の誘導、もしくは増強を補助するために使用され得る。例えば、CXCL10 (IP-10)とCCL7 (MCP-3)を含む融合タンパク質を腫瘍自己抗原と融合させると、抗腫瘍免疫を誘導することが示されている(ビラジン(Biragyn)ら、Nature Biotech. 1999,17 : 253-258)。ケモカイン CCL3 (MIP-la)とCCL5 (RANTES) (ボワイエ(Boyer)ら、Vaccine,1999, 17 (Supp. 2): S53-S64)もまた、本発明を実施する上で有用であり得る。他にも適切なケモカインが当業者に知られている。
【0022】
ある実施形態では、標的抗原は、核酸分子としてそれ単独で、もしくはウィルスベクターのような運搬体に組み込まれた状態で、用いられることも可能である。そのような場合、標的抗原を、細胞表面タンパク質、サイトカイン、またはケモカインといった共刺激因子の一つ、あるいは複数と、本発明の組成物中で混合するのが、有益かもしれない。共刺激因子は、例えば、ポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸として、組成物中に含まれ得る。適切な共刺激分子には、例えば、CD28 結合ポリペプチドB7.1 (CD80; シュワルツ(Schwartz)、1992; チェン(Chen)ら、 1992; エリス(Ellis)ら、J. Immunol., 156 (8): 2700-2709)、及び B7.2 (CD86; エリス(Ellis)ら、J. Immunol., 156 (8): 2700-2709)のようなCD28ファミリー内の因子と結合するポリペプチド (すなわち CD28, ICOS; ハットロフ(Hutloff)ら、Nature 1999,397 : 263-265; ピーチ(Peach)ら、JExp Med 1994,180 : 2049-2058); ICAMファミリー内の因子(すなわち ICAM-1、-2 または-3) を含む、インテグリンファミリー内の因子に結合するポリペプチド(すなわち LFA-1(CDlla/CD18) ; セドウィック(Sedwick)ら、JImmunol 1999, 162: 1367-1375; ウルフィング(Wulfing)ら、Science 1998, 282: 2266-2269;ラブ(Lub)ら、Immunol Today 1995,16 : 479-483);CD58 (LFA-3 ; CD2リガンド; デイヴィス(Davis)ら、Immunol Today 1996,17 : 177-187)またはSLAMリガンド(サヨ(Sayos)ら、Nature 1998, 395:462-469) のような、CD2 ファミリーの因子に結合するポリペプチド(すなわち CD2, 情報伝達リンパ球活性化分子(CDw150または"SLAM" ; アヴェルサ(Aversa)ら、JImmunol 1997, 158: 4036-4044);熱安定性抗原と結合するポリペプチド (HSA またはCD24 ;シュウ(Zhou)ら、Eur J Immunol 1997, 27: 2524-2528) ; TNF 受容体 (TNFR) ファミリー内の因子(すなわち4-1BB (CD137; ヴィナイ(Vinay)ら、Semin Immunol 1998, 10: 481-489) )やOX40 (CD134;ヴァインベルグ(Weinberg)ら、Semin Immunol 1998, 10: 471- 480; ヒギンズ(Higgins)ら、JImmunol 1999, 162: 486-493)やCD27 ((Lens)ら、Semin-Immunol. 1998, 10: 491-499)と結合するポリペプチド。例えば以下のようなものを含む。すなわち、4-1BBL (4-1BB リガンド; ヴィナイ(Vinay)ら、SeminImmunol 1998, 10: 481-48; デベネデット(DeBenedette)ら、J Immunol 1997, 158: 551-559)、TNFR 関連因子-1 (TRAF-1;4-1BB リガンド; サウリー(Saoulli)ら、JExp Med 1998, 187: 1849-1862;アーチ(Arch)ら、Mol Cell Biol 1998, 18: 558-565)、 TRAF-2(4-1BB 及び OX40 リガンド; サウリー(Saoulli)ら、J Exp Med 1998,187 : 1849-1862;オシマ(Oshima)ら、IntImmunol 1998, 10: 517-526;カワマタ(Kawamata)ら、JBiol Chem 1998,273 : 5808-5814)、TRAF-3 (4-1BB及びOX40 リガンド;アーチ(Arch)ら、Mol Cell Biol 1998, 18: 558-565;チャン(Jang)ら、Biochem Biophys Res Commun 1998,242 :613-620;カワマタS(KawamataS)ら、J Biol Chem 1998,273 : 5808-5814)、OX40L(OX40 リガンド;グラマグリア(Gramaglia)ら、J Immunol 1998, 161:6510-6517)、 TRAF-5(OX40 リガンド; アーチ(Arch)ら、Mol Cell Biol 1998,18 : 558-565;カワマタ(Kawamata)ら、JBiol Chem 1998,273 : 5808-5814)、及び CD70 (CD27 リガンド;クーデルク(Couderc)ら、Cancer GeneTher., 5 (3): 163-175)。CD154 (CD40リガンドまたは"CD40L" ; (グルネイサン(Gurunathan)ら、J. Immunol., 1998,161 : 4563-4571; シン(Sine)ら、Hum. GeneTher., 2001,12 : 1091-1102)もまた、適切だといってもよい。共刺激分子よりもむしろ、CpGモチーフのような刺激モチーフ自体を、腫瘍抗原(TAs)をコードする核酸に、組み込んでもよい(グルネイサン(Gurunathan)ら、Ann. Rev. Immunol. 2000,18 : 927-974)。本明細中に記載されている試薬と方法論を用いることによって、他の刺激モチーフや共刺激分子もまた、癌の治療及び/また予防に有用であり得る。
【0023】
これら共刺激因子はいずれも、単独、もしくは他の薬品と組み合わせた状態で使用できるといってもよい。例えば、CD80、ICAM-1 及び LFA-3 ("TRICOM")の組み合わせは、抗癌免疫応答を強化し得ることが示されている(ホッジ(Hodge)ら、Cancer Res. 59: 5800-5807 (1999))。他の効果的な組み合わせとしては、例えば、IL-12+GM-CSF (アレーズ(Ahlers)ら、J. Immunol., 158: 3947-3958(1997);イワサキ(Iwasaki)ら、J. Immunol. 158: 4591-4601 (1997))、 IL-12 + GM-CSF +TNF-a (アレーズ(Ahlers)ら、Int. Immunol. 13: 897-908 (2001))、CD80 + IL-12 (フロイント(Fruend)ら、Int. J. Cancer, 85: 508-517(2000);ラオ(Rao)ら、前述)、及び CD86 + GM-CSF + IL- 12 (イワサキ(Iwasaki)、前述)が在る。当業者は、本発明を実施する上で有用な組み合わせをさらに見つけることもあり得る。
【0024】
免疫制御の抑制的または否定的側面のメカニズムを阻害すると、結果として免疫応答を増幅することになることもまた、当業者に知られている。例えば、以下のものによる処理、すなわち 抗CTLA-4 (シュリカント(Shrikant)ら、Immunity, 1996,14 : 145-155;サットミュラー(Sutmuller)ら、J. Exp.Med., 2001,194 :823-832)、抗CD25(サットミュラー(Sutmuller)、前述)、抗CD4 (マツイ(Matsui)ら、J. Immunol., 1999,163 : 184-193)、IL13Ra2-Fc融合タンパク質 (テラベ(Terabe)ら、Nature Immunol., 2000,1 : 515-520)、及びこれらの組み合わせ (すなわち 抗CTLA-4 と抗CD25、サットミュラー(Sutmuller)、前述)による処理は、抗腫瘍免疫応答を高めることが示されている。加えて、当業者は、そのようなメカニズムを調整するために使用され得る付加的な試薬や方法を見いだすこともあり得る。これら試薬や方法は、当業者に知られている他のものと同様、本発明を実施する上で利用することができる。
【0025】
発現ベクターもまた、本発明を実施する際に使用されるものとして、適切であろう。発現ベクターは、典型的には、ポリペプチドをコードする異種生物由来の核酸配列(“コード配列”)に適切に連結されたフランキング配列を含む。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、ターゲティング配列を表す前半のアミノ酸配列と抗原(すなわちT細胞エピトープ)を表す第2のアミノ酸配列から成る。フランキング配列は、むしろコード配列の複製、転写及び/また翻訳に影響を持つことが可能であり、コード配列に適切に連結されている。“適切に連結”されるとは、核酸配列が通常の機能を実行できる状態で挿入されていることを示す。例えば、プロモーターがコード配列の転写を制御可能である時、プロモーターはコード配列に適切に連結されている、と言える。フランキング配列は、コード配列が正確に機能している限り、それに隣接している必要はない。従って、例えば、転写されるが翻訳されない配列が、プロモーター配列とコード配列の間にはさまれて存在しながらも、プロモーター配列はコード配列に適切に連結されていると考えることができる。フランキング配列は、同種生物由来(すなわち宿主細胞と同じ種及び/または系統から)、異種生物由来(すなわち宿主細胞以外の種または系統から)、ハイブリッド(すなわち2つ以上の種及び系統由来のフランキング配列を組み合わせたもの)、または合成物である。宿主ゲノム中のポリペプチドをコードする塩基配列の発現を、通常は制御するような機能を持つフランキング配列もまた、利用され得る。
【0026】
ある実施形態では、フランキング配列が、標的細胞中における遺伝子の高い発現もたらす転写制御領域であることが望ましい。転写制御領域は、例えば、プロモーター、またはエンハンサー、サイレンサー、リプレッサー配列、またはこれらの組み合わせを含む。転写制御領域は、構成的、または組織・細胞種に特異的(すなわち、ある種の組織または細胞で、他に比べて高いレベルの転写が、この領域によって引き起こされる)のいずれか一方であるといってよい。転写制御領域の由来は、全ての原核生物または真核生物、全ての脊椎動物または無脊椎動物、あるいは全ての植物であり、宿主細胞の機構中で、機能し、活性化されるフランキング配列を提供する。多岐にわたる種類の転写制御領域は、本発明を実施する上で利用され得る。
【0027】
適切な転写制御領域には、中でも、CMVプロモーター(すなわちCMV極初期プロモーター);真核生物由来のプロモーター(すなわちエストロゲン誘導卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、ブドウ糖/コルチコイド誘導チロシンアミノ転移酵素遺伝子、及びチミジンキナーゼ遺伝子); そして 主要初期・後期アデノウィルス遺伝子プロモーター;SV40初期プロモーター領域(ベルノワスト(Bernoist)とシャンボン(Chambon)、1981, Nature 290: 304-310); ラウス腫瘍ウィルス(RSV)の3'末端反復配列(LTR)中に含まれたプロモーター (ヤマモト(Yamamoto)ら、1980, Cell 22: 787-797);ヘルペスウィルス・チミジンキナーゼ(HSV-TK)プロモーター(ワグナー(Wagner)ら、Proc. Natl.Acad. Sci. U. S. A. 78: 1444-1445);メタロチオニン遺伝子の制御配列(ブリンスター(Brinster)ら、1982, Nature 296: 39-42);ベータラクタマーゼプロモーターのような原核生物の発現ベクター(ヴィラカマロフ(Villa-Kamaroffet)ら、1978,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A., 75: 3727-3731); またはtacプロモーター(デボアー(DeBoer)ら、1983, Proc. Natl. Acad. Sci.U. S.A., 80: 21-25)が、在る。組織及び/また細胞型に特異的な転写制御領域には、例えば、膵臓腺房細胞で活性化するエラスターゼI遺伝子の制御領域(スウィフト(Swift)ら、1984, Cell 38: 639-646;オーニッツ(Ornitz)ら、1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant.Biol. 50: 399-409 (1986); マクドナルド(MacDonald)、1987, Hepatology 7: 425-515);膵臓のベータ細胞で活性化するインシュリン遺伝子の制御領域(ハナハン(Hanahan)、1985, Nature 315: 115-122); リンパ球様細胞で活性化するイムノグロブリン遺伝子の制御領域 (グロッシェドル(Grosschedl)ら、1984,Cell 38 : 647-658; アダムス(Adames)ら、1985, Nature 318:533-538; アレキサンダー(Alexander)ら、1987, Mol. Cell.Biol., 7: 1436-1444);精巣、胸部、リンパ球、及びマスト細胞で活性化するマウス乳癌腫瘍ウィルスの制御領域(レダー(Leder)ら、1986,Cell 45 : 485-495); 肝臓で活性化するアルブミン遺伝子の制御領域(ピンカート(Pinkert)ら、1987, Genes and Devel. 1: 268-276); 肝臓で活性化するアルファ胎児タンパク質遺伝子の制御領域(クラムロフ(Krumlauf)ら、1985, Mol. Cell.Biol., 5 : 1639-1648; ハマー(Hammer)ら、1987, Science 235 : 53-58); 肝臓で活性化するアルファ-1抗トリプシン遺伝子の制御領域(ケルシー(Kelsey)ら、1987, Genesand Devel. 1: 161-171);骨髄細胞で活性化するベータグロブリン遺伝子の制御領域(モグラム(Mogram)ら、1985, Nature 315: 338-340;コリアス(Kollias)ら、1986,Cell 46 : 89-94);脳の乏神経膠細胞で活性化するミエリン塩基性タンパク質遺伝子の制御領域(リードヘッド(Readhead)ら、1987,Cell 48 : 703-712);骨格筋で活性化するミオシン軽鎖-2遺伝子の制御領域(サニ(Sani)、1985, Nature 314:283-286) ; 及び、視床下部で活性化する生殖刺激放出ホルモン遺伝子の制御領域(メイソン(Mason)ら、1986, Science 234: 1372-1378), そして黒色腫細胞で活性化するチロシナーゼプロモーター (ハート(Hart), I.、Semin Oncol 1996 Feb; 23(1) : 154-158; サイダーズ(Siders)ら、Cancer GeneTher 1998 Sep-Oct ;5 (5): 281-291)。他にも適切なプロモーターが当業者に知られている。
【0028】
標的抗原をコードする核酸分子は、ウィルスまたは非ウィルスベクターの一部として扱われ得る。一つの実施形態では、標的抗原をコードする核酸、及び/また関連分子(すなわち共刺激分子、サイトカイン、またはケモカイン)を患者体内に運搬するために、DNAベクターを利用することがあり得る。そのためには、そのようなメカニズムの効率を上げることを目的として、様々な戦略が用いられ得る。例えば、自己複製するウィルスのレプリコンの使用(カリー(Caley)ら、1999. Vaccine, 17: 3124-2135;ドゥベンスキー(Dubensky)ら、2000. Mol. Med. 6:723-732;ライトナー(Leitner)ら、2000. Cancer Res. 60 : 51-55)、コドンの最適化(リュー(Liu)ら、2000. Mol. Ther., 1: 497-500;ドゥベンスキー(Dubensky)、前述;ホアン(Huang)ら、2001. J. Virol. 75: 4947-4951)、イン・ビボ(in vivo)におけるエレクトロポレーション(ヴィデラ(Widera)ら、2000. J. Immunol. 164: 4635-4640)、共刺激分子、サイトカイン、及び/またケモカインをコードする核酸の取り込み(シャン(Xiang)ら、1995. Immunity, 2: 129-135; キム(Kim)ら、1998. Eur. J. Immunol., 28: 1089-1103; イワサキ(Iwasaki)ら、1997. J. Immunol. 158: 4591-4601; シアリンク(Sheerlinck)ら、2001. Vaccine, 19: 2647-2656)、CpGのような刺激モチーフの組み込み(グルネイサン(Gurunathan)、前述;ライトナー(Leiter)、前述)、エンドサイトーシスまたはユビキチンのプロセシング経路に導く配列の使用(トムソン(Thomson)ら、1998.J.Virol. 72: 2246-2252;ウ゛ェルダーズ(Velders)ら、2001.J. Immunol. 166: 5366-5373)、プライム・ブースト(prime-boost)法 (グルネイサン(Gurunathan)、前述; サリバン(Sullivan)ら、2000. Nature, 408: 605-609; ハンケ(Hanke)ら、1998. Vaccine, 16: 439-445; アマラ(Amara)ら、2001. Science, 292: 69-74)、プロテオソーム感受性切断部位の使用、及びサルモネラ菌のような粘膜の運搬体の使用(ダージ(Darji)ら、1997. Cell, 91: 765-775; ウー(Woo)ら、2001. Vaccine, 19: 2945-2954)、である。他の方法も当業者に知られており、その内の幾つかは以下に記載する。
【0029】
核酸を宿主に導入するために頻繁に用いられている様々なウィルスベクターには、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス(AAV)、ヘルペスウィルス、及びポックスウィルス等が在る。当業者には、そのような多くのウィルスベクターが利用可能であることが知られている。本発明におけるベクターは、当業者に広く利用されている標準的な組み換え技術を用いて構築されたものであり得る。そのような技術は、以下のような平凡な分子生物学の参考書の中に見い出し得る。すなわち、分子クローニング:研究室マニュアル(サンブロック(Sambrook)ら、1989, Cold Spring Harbor Laboratory出版)、遺伝子発現技術(酵素学の手法、185巻D. ゴーデル(Goeddel)による編集、1991)、及びPCRプロトコール:方法と実用のためのガイド(イニス(Innis)ら、1990. アカデミック出版, カリフォルニア州サン・ディエゴ)。
【0030】
好ましいレトロウィルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウィルスから由来したもの、及びレンチウィルス由来のものである。適切なレトロウィルスベクターの例としては、モロニーマウス白血病ウィルス(MoMuLV)、ハーヴィマウス肉腫ウィルス(HaMuSV)、マウス乳癌腫瘍ウィルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIV、及びラウス肉腫ウィルスが在る。多くのレトロウィルスベクターは、複数の外在性核酸配列を組み入れることができる。組み換えレトロウィルスが不完全体なので、これらは感染ベクターの粒子を産生するための補助を必要とする。この補助は、例えばレトロウィルスの構造遺伝子コードするヘルパー細胞系統によって供給されることが可能である。中でも適切なヘルパー細胞系統は、Y2、PA317、及びPA12である。このような細胞系統を用いて生産されたベクターウィルスは、次にNIH3T3細胞等の組織細胞系統に感染するために使用され、キメラのレトロウィルスのウィルス粒子を大量に生産する。レトロウィルスベクターは、伝統的な方法(すなわち注射)または標的細胞集団の近接部位への“生産細胞系統”の移植により投与される(カルバー(Culver), K. ら、1994, Hum. Gene Ther., 5 (3): 343-379;カルバー(Culver), K. ら、ColdSpringHarb. Symp. Quant. Biol., 59: 685-690; (Oldfield), E., 1993, Hum. Gene Ther., 4 (1) : 39-69)。生産細胞系統は、標的細胞の近接部位でウィルスベクターを生産し、ウィルス粒子を放出するように設計されている。放出されたウィルス粒子の一部は、標的細胞と接触し、この細胞に感染することにより、本発明の核酸を標的細胞に導入する。標的細胞の感染に続いて、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0031】
アデノウィルスのベクターは、以下の場面で特に有用であることが証明されている、すなわち、真核細胞への遺伝子の転移(ローゼンフェルド(Rosenfeld), M. ら、1991, Science, 252 (5004): 431-434;クリスタル(Crystal), R. ら、1994, Nat. Genet., 8 (1.) :42-51)、真核生物の遺伝子発現の研究(レブレロ(Levrero), M.ら、1991, Gene, 101 (2): 195-202)、ワクチンの開発(グラハム(Graham), F.とプレベック(Prevec), L.、1992, Biotechnology, 20: 363-390)、動物のモデル系(ストラトフォード-ペリコーデット(Stratford- Perricaudet), L. ら、1992, Bone Marrow Transplant., 9 (Suppl. 1) : 151-152;リッチ(Rich), D. ら、1993, Hum. Gene Ther., 4 (4): 461-476)。組み換えAdをイン・ビボ(in vivo)で異なる組織に投与するための実験的経路には、中でも、気管内点滴注入(ローゼンフェルド(Rosenfeld), M.ら、1992, Cell, 68(1) : 143-155)、筋肉注射(コンタン(Quantin), B.ら、1992,Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A., 89 (7):2581-2584)、末梢静脈注射(ヘルツ(Herz), J. とゲラルド(Gerard), R. 1993,Proc.Natl. Acad. Sci. U. S. A., 90 (7): 2812-2816)、及び脳への定位接種(ル・ガル・ラ・サル(Le Gal La Salle), G.ら、1993, Science, 259 (5097): 988-990)等が在る。
【0032】
アデノ随伴ウィルス(AAV)は、高いレベルの感染能、広範囲に渡る宿主生物、及び宿主細胞のゲノムに組み込まれる上での特異性を示す(ハーモナット(Hermonat),P.ら、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 81 (20): 6466-6470)。そして、単純ヘルペスウィルス、タイプ-1(HSV-1)は、もう一つの魅力的なベクターシステムであり、自身の神経親和的な特性のために特に神経系での使用が期待される(ゲラー(Geller), A.ら、1991, TrendsNeurosci., 14 (10): 428-432;グロリオーゾ(Glorioso)ら、1995, Mol. Biotechnol., 4(1) : 87-99;グロリオーゾ(Glorioso)ら、1995, Annu. Rev. Microbiol., 49: 675-710)。
【0033】
ポックスウィルスは、もう一つの有用な発現ベクターである(スミス(Smith)ら、1983, Gene, 25(1) :21-28; モス(Moss)ら、1992, Biotechnology, 20: 345-362;モス(Moss)ら、1992,Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:25-38;モス(Moss)ら、1991. Science, 252: 1662-1667)。有用であることが示されているポックスウィルスとしては、ワクシニア、NYVAC、アビポックス(avipox)、鶏痘、カナリポックス(canarypox)、ALVAC、及びALVAC(2)ウィルス等が在る。
【0034】
NYVAC(vP866)は、ワクシニアウィルスのコペンハーゲンワクチン株の、既知のまたは潜在的な病原因子をコードするゲノムの必須でない6つの領域を欠失させることにより、作られた(例として、米国特許第5,364, 773号と5,494, 807号を参照)。欠失領域はまた、外在性遺伝子を挿入する受け入れ領域として設計された。欠失領域は以下の通りである。すなわち、チミジンキナーゼ遺伝子(TK; J2R) vP410;出血領域(u;B13R+B14R) vP553;A型封入体領域 (ATI; A26L) vP618;赤血球凝集素遺伝子 (HA; A56R) vP723;宿主域遺伝子領域(C7L-K1L) vP804;及びリボヌクレオチド還元酵素のラージサブユニット(I4L) vP866である。NYVACは、遺伝学的に設計されたワクシニアウィルス株であり、これは毒性及び宿主域に関連する遺伝子産物をコードする18個のオープンリーディングフレームを特異的に欠失することにより作成した。NYVACは、腫瘍抗原(TAs)の発現に有用であることが示されている(例として、米国特許第6,265, 189号を参照)。NYVAC (vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lreverse、pMPC6H6K3E3、及びpC3H6FHVBもまた、ブタペスト条約の記載の下、American Type Culture Collection (ATCC)に寄託されている。受託番号は、各々、VR-2559、VR- 2558、VR-2557、VR-2556、ATCC-97913、ATCC-97912、及びATCC-97914である。
【0035】
ALVACを元にした組み換えウィルス(すなわちALVAC-1とALVAC-2)もまた、本発明に実際に利用する上で適切である(例として、米国特許第5,756, 103号を参照)。ALVAC(2)は、自身のゲノムが、ワクシニアプロモーターの制御下にあるワクシニアE3L及びK3 L遺伝子を持つことを除けば、ALVAC(1)と同一のものである(米国特許第6,130, 066号; ビーティ(Beattie)ら、1995a,1995b, 1991; チャン(Chang)ら、1992; デーヴィス(Davies)ら、1993)。ALVAC(1)とALVAC(2)は共に、腫瘍抗原(TAs)のような外在性DNA配列の発現に便利であることが示されている(タルターリア(Tartaglia)ら、 1993 a, b;米国特許第5,833, 975号)。ALVACは、ブタペスト条約の記載の下、American Type Culture Collection(ATCC:20110-2209バージニア州、マナッサス、ブルヴァール大学10801、USA)に寄託されている。ATCCにおける受託番号はVR-2547である。
【0036】
もう一つの有用なポックスウィルスベクターは、TROVACである。TROVACとは、生後1日のトリを予防接種するよう認可を受けた鶏痘ウィルス、FP-1ワクチン株から単離されたプラーククローンであるファウルポックスを、減毒化したものを言う。TROVACは、同じく、ブタペスト条約の記載の下ATCCに寄託されており、受託番号は2553である。
【0037】
“非ウィルス”性のプラスミドベクターもまた、ある実施形態によっては適切であり得る。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫、及び/また哺乳類の宿主細胞と親和性を持つ。そのようなベクターは、例えば、PCR-II、pCR3、及びpcDNA3.1 (インビトロジェン(Invitrogen)社、カリフォルニア州サン・ディエゴ)、pBSII(ストラタジーン(Stratagene)社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、pET15 (ノバゲン(Novagen)社、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX(ファルマシアバイオテク(Pharmacia Biotech)社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、pEGFP-N2 (クローンテック(Clontech)社、カリフォルニア州パロアルト)、pETL (BlueBacII、インビトロジェン(Invitrogen)社), pDSR-アルファ(PCT発行番号 WO 90/14363)、及びpFastBacDual (ギブコ-(Gibco)-BRL社、ニューヨーク州グランドアイランド)、ブルースクリプト(Bluescript)(登録商標)プラスミドの派生物(COLElを元にした多コピー数ファージミド、ストラタジーン・クローニング・システム(Stratagene Cloning Systems)社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、タック(Taq)によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の増幅産物をクローニングするために設計されたPCRクローニング用のプラスミド(例えば、TOPO(商標) TA クローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標) プラスミド派生物、インビトロジェン(Invitrogen)社、カリフォルニア州カールズバッド)が在る。細菌のベクターもまた、この発明で使用されてもよい。これらのベクターには、例えば、赤痢菌のシガエラ、サルモネラ菌、ビブリオ属のコレラ菌、乳酸桿菌、結核菌(BCG)、及び連鎖球菌(例として、WO 88/6626; WO90/0594 ; WO 91/13157;WO 92/1796 ; 及びWO 92/21376を参照)が在る。他にも多くの非ウィルス性プラスミド発現ベクターとシステムが当業者に知られており、この発明で使用され得る。
【0038】
他の導入技術もまた、本発明を実施する上で十分であり得る。例えば、DNA-リガンド複合体、アデノウィルス-リガンド-DNA複合体、DNAの直接的な注射、カルシウムフォスファターゼ沈澱法、遺伝子銃テクニック、エレクトロポレーション、及びコロイド分散システムである。コロイド分散システムには、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム等の脂質を主成分としたシステムが含まれる。この発明における好ましいコロイドのシステムは、リポソームであり、これはイン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)における運搬体として有用な人工膜の小胞である。RNA、DNA、及び形態的・機能的に完全なウィルス粒子は、親水性の内側に包まれ、生物学的活性を保持したまま細胞へ運送されることが可能である(フラリー(Fraley), R.ら、1981, Trends Biochem. Sci., 6: 77)。リポソームの組成は、通常リン脂質、特に高温相転移リン脂質の合成物であり、通常コレステロール等のステロイドを含んでいる。他のリン脂質もしくは他の脂質もまた、使用され得る。リポソームの物理的性質は、pH、イオン強度、及び二価のカチオンの存在に依存する。リポソームの生産に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンのようなホスファチジル合成物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドが在る。特に有用なのは、ジアシルホスファチジルグリセロールであり、これは脂質部が、一般に14〜18個、特に16〜18個の炭素原子を持つ飽和脂肪酸である。リン脂質の実例としては、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリンがある。
【0039】
本発明の標的抗原の宿主に対する投与は、当業者に知られている様々な技術のどれを用いても、達成され得る。標的抗原を含む組成物は、調剤の慣習的な方法に従って加工され、人及び他の哺乳動物を含めた患者に投与するための医薬品が生産される(すなわち“医薬組成物”)。医薬組成物は、例えば、しかるべき量のDNA、ウィルスベクター粒子、ポリペプチドまたはペプチドを含む単位用量形態として作られるのが望ましい。人または他の哺乳動物に適切な一日の投与量は、患者の状態や他の要素により変化するかもしれないが、これもまた慣例となった方法を用いて投与量を決定できる。
【0040】
医薬組成物は、薬剤として慣習的に許容される担体、アジュバント、媒体を含む単位用量形態を、経口、非経口、吸入スプレー、座薬として、または局所的に投与されてもよい。本明細書で使用されている“薬剤として許容される担体”または“生理的に許容される担体”という用語は、薬剤成分としての核酸、ポリペプチド、またはペプチドの運搬を実現または増強するために用いられる一つあるいは複数の処方剤を指す。医薬組成物とは、治療的効果量の核酸またはポリペプチドを含む組成物である。“効果量”および“治療的効果量”という用語は、それぞれ、効果的な免疫応答を誘導、または増強するために使用される核酸、またはポリペプチドの量のことを指す。本発明の組成物は、宿主における抗腫瘍免疫応答の誘導または増強を引き起こし、それによる腫瘍の増殖の防御、及び/また体内の腫瘍の除去をもたらすことが望ましい。
【0041】
経口投与のためには、医薬組成物は、カプセル、錠剤、懸濁液、または液体といったものを含む数種の形体いずれでもよい。液体は、塩水、ブドウ糖、または水を含む適切な担体との組成物として、注射により投与され得る。本明細書で使用した非経口という用語は、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、胸骨内投与、注入点滴、または腹膜注射による投与という意味を含む。薬剤を直腸に投与するための坐薬は、薬剤をココアバターやポリエチレングリコールといった適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより、調整することができる。ポリエチレングリコールは通常の温度では固形だが、直腸の温度で液状化する。
【0042】
宿主を免疫するため、もしくは本発明の組成物によって疾患または病気の治療を行うための投与計画は、病気の種類、年齢、体重、性別、患者の健康状態とその程度、投与の経路、及び使用される特定の組成物といった様々な要素に依存している。従って、投与計画は様々だが、標準的方法を用いれば慣例的に決めることができる。
【0043】
本発明の組成物は、単独の活性薬剤として投与してもよいが、一方で、一つまたは複数の他の組成物もしくは薬剤と組み合わせて使用することも可能である。組み合わせて投与する場合は、各成分を、同時もしくは別の時に投与される別々の組成物として処方してもよく、あるいは、それら成分を単一組成物として混合してもよい。
【0044】
本発明の組成物を含むキットもまた提供される。キットには、適切な担体、希釈剤、または賦形剤が別々に含まれる。抗癌剤、抗腫瘍剤、または抗腫瘍性試薬、及び/または、抗腫瘍性試薬、抗腫瘍剤、抗癌剤の重複または継続した投与がもたらす悪影響を減ずるまたは緩和するような物質を、キットに付加することもまた可能である。さらに、薬剤の成分を混合または組み合わせ及び/または投与するための使用説明書も、キットに含めてよい。
【0045】
例示として記載された以下の実施例から、本発明と本発明がもたらす多くの利益がよりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0046】
実施例1
免疫原性標的ペプチドの調製
ペプチドは全て、標準的技術を用いて、バイオ・シンセシス(Bio-Synthesis)株式会社(テキサス州ルイスヴィル)によって合成された。
【0047】
エピトープ融合システムが実行可能であることを示すために、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエピトープを様々なトランスダクション配列と融合させた。以下のトランスサイトーシスペプチドが、エピトープと融合させるものとして選択された:

エピトープのあるものは、リンカー配列を介してトランスサイトーシス配列に結合された。リンカーは、エピトープのアミノ末端側に本来接している配列から選択するか、または免疫学的に既知のパラメーターを元にして選択された。選択されたリンカー配列を以下に示す:

以下に示すように、幾つかのエピトープが選ばれた:

次に、幾つかの免疫原性標的は、以下に示したように、上記のトランスサイトーシスペプチド、リンカー配列、及びエピトープペプチドと結合することにより合成された。
【0048】

次に、これらのペプチドは、以下に示したように、免疫学的アッセイにより調べられた。
【0049】
実施例2
免疫学的試験
A. hPER1-CTLエピトープ融合物は、イン・ビトロ(in vitro)で細胞と培養された時、CTLの標的構造を形成することができる
hPER1-CTLエピトープ融合物がCTLの標的構造を形成できるのかを確かめるために、51Crで標識されたRMA細胞を、10-11g/mlのNPペプチド(ASNENMETM)またはhPER1-NPペプチド(RRHHRRSKAKRSRASNENMETM)で刺激するか、あるいは刺激せずに(ペプチドなし)、37℃で1時間培養した。次に、細胞を洗い、インフルエンザウィルスで免疫したC57BL/6マウスの脾臓から得たT細胞を用いて、標準的な4時間のクロム遊離アッセイを行い、CTLが認識しているのかどうかを調べた。図1Aは、RMA標的細胞が10pg/mlのhPER1-NPペプチドと培養された時、CTLによって溶解されやすくなることを示している。
【0050】
さらに、51Crで標識されたP815-A2/Kb細胞を、10-6g/mlの280-9Vペプチド(YLEPGPVTV) またはhPER1-280-9Vペプチド(RRHHRRSKAKRSRYLEPGPVTV)で刺激するか、あるいは刺激せずに(ペプチドなし)、37℃で1時間培養した。次に、細胞を洗い、不完全フロイントアジュバントを加えた280-9Vペプチドで免疫したHLA-A2/Kbトランスジェニック・マウスの脾臓から得たT細胞を用いて、標準的な4時間のクロム遊離アッセイを行い、CTLが認識しているのかどうかを調べた。アッセイ中、示された所では、5ug/mlのブレフェルジンA (BFA)を、新しいクラスIMHC分子の表面発現を阻害するために加えた。図1Bは、10-6g/mlのhPER1-280-9Vペプチドで、P815-A2/Kb標的細胞が感作されることを示している。hPER1-280-9Vペプチドで刺激された標的細胞を、新たに合成されたMHC分子の細胞内輸送を阻害するブレフェルジンAで処理すると、CTLの溶解レベルは低下した。
【0051】
これらの実験から、hPER1を介した細胞内運送は、マウスT細胞の感作性を高めることが示された。同様に、ヒトのCTLにおけるこの効果を確認するために、実験を行った。
【0052】
B. hPER1-CTLエピトープ融合物は、ヒトのT細胞培養システムにおいて、免疫原性を持つ
IL-2 (50 U/ml)、IL-7 (10 ng/ml)、LPS (10 ug/ml)、CD40-リガンド発現3T3細胞、及びペプチド(10pg/mlの280-9VまたはhPERl-280-9V)の存在下で、HLA-A2陽性患者由来の末梢血単核細胞(PBMCs)を培養した。11、22、及び32日目に、IL-2 (50 U/ml)とIL-7 (10 ng/ml)とペプチド(100mg/mlの280-9VまたはhPERl-280-9V)で3時間刺激されてCD40-リガンドが活性化されたPBMCs自身の存在下で、細胞を再刺激した。42日目に、280-9VペプチドまたはコントロールのA2-結合ペプチドで刺激したC1R-A2標的細胞を用いて、標準的なクロム遊離アッセイを行い、培養細胞のCTL活性を調べた。図2は、280-9V特異的なヒトのCTLは、イン・ビトロ(in vitro)でhPERl-280-9Vによる刺激を繰り返すことにより誘導されることができることを示している。
【0053】
C. hPER1-CTLエピトープ融合物は、アジュバントの非存在下でも、イン・ビボ(in vivo)で免疫原性を持つ
図3は、I-Abが制限されたTヘルパーエピトープ(100mg)の存在下で、100pgの154、hPERl-154、280-9V、またはhPERl-280-9Vを、HLA-A2/Kbトランスジェニック・マウス(1グループにつき4個体)に皮下投与で免疫した結果を示している。マウスは、14日目と28日目に、同様の手法で追加刺激された。42日目に、脾臓細胞(1グループにつきマウス2個体)を、イン・ビトロ(in vitro)で6日間、各々相当する野生型ペプチドで再刺激した。次に、脾臓細胞に対して、ELISPOT法によるIFN-gの分泌アッセイ(図3A)、あるいはペプチド刺激を受けたC1R-A2細胞を用いたCTL活性のアッセイのいずれかを行った(図3B)。57日目に、各グループの残りのマウスに同様のアッセイを行った。各グループの平均的な応答を示す。
【0054】
図3Aは、アジュバントを加えずにhPERl-154(とT-ヘルパーペプチド)で、HLA-A2/Kbトランスジェニック・マウスを免疫することにより、154特異的なIFN-gの応答を誘導することができることを示している。元の野生型ペプチドを用いて同様に免疫しても、応答は誘導できない。図3Bに示されているように、ペプチド特異的なCTLの応答は、hPERl-154またはhPERl-280-9Vで免疫することにより誘導できる。一方、元の野生型ペプチドを用いた免疫では、CTLの応答は誘導されなかった。
【0055】
成熟した樹状細胞(DCs)は、優れた抗原提示細胞であり、マウスに静脈注射するとCTLの強い応答をもたらすことが示されている。従って、我々は、樹状細胞(DC)を主成分としたワクチンに関して、CTLの応答を誘起することを目的としたトランスサイトーシスペプチドの能力を調べた。マウスの骨髄由来の樹状細胞を、イン・ビトロ(in vitro)で成熟させ、SIINFEKLのみ、リンカーを介したTatもしくはhPER1との融合物、またはリンカーを介さないTatもしくはhPER1との融合物のいずれかで刺激した。これを、C57BL/6マウスの尾部静脈に、静脈注射した。免疫から1週間後に、ワクチン接種した動物の脾臓細胞をイン・ビトロ(in vitro)で再刺激し、CTL活性を調べた。図4で示したように、SIINFEKLで刺激したDCsは全て、強いCTL応答を誘起することができた。一方、無関係なペプチド(TRP2)で刺激したDCsは、免疫原性を示さなかった。hPERl-OVAで刺激されたDCsは、本来のSIINFEKLまたはhPERl-LEQLE-SIINFEKLのいずれのペプチドで刺激されたDCsよりも、強い応答を誘起した。同様に、リンカーなしのTAT-SIINFEKLペプチドより、リンカーのあるTAT-LEQLE-SIINFEKLペプチドの方が免疫原性は低い。これは、以下に記載のイン・ビトロ(in vitro)における測定値と一致する。
【0056】
さらに、HLA-A2/Kbトランスジェニック・マウス(シャーマン系統)を、gp100-154ペプチドのみ、リンカーFVYVWを介したhPER1またはAntpHDとの融合物、あるいはリンカーFVYVWを介さないhPER1またはAntpHDとの融合物を用いて皮下投与で免疫した後、HLA-A2/Kbトランスジェニック・マウス(シャーマン系統)のCTL応答を評価した。21日目と42日目にマウスを追加刺激した。63日目にワクチン接種した動物由来の脾臓細胞を採取し、イン・ビトロ(in vitro)で再刺激してから5日後にCTLの活性を調べた。図5に示されているように、154ペプチドのみでは、たとえ不完全フロイントアジュバントを加えても、強いCTL応答を誘導することはできない。AntpHD-154またはhPERl-154ペプチドでは弱い応答が観察され、これはリンカー配列FVYVWがあれば、さらに強まる。しかし、最も強い活性は、エピトープを、hPERl及びリンカー配列FVYVWに融合したときに観察された。
【0057】
図6と13に記載されている実験を実施する際には、(以後特に指定がなければ)50nmolのペプチドに、マウス体内ではヘルパーCD4ペプチドとして機能するB型肝炎のエピトープ50nmolを加えて、マウスを特定の経路で免疫した。最初の免疫から3週間後、同様の投与計画で追加刺激を行い、さらに3週間後に採取した脾臓を、単一の懸濁液中でホモジェナイズした。全ての脾臓細胞を、0.5 ug/mlのエピトープペプチドを含む培地にまき、37℃で5日間培養した。フィコール(Ficoll)法で生きている細胞を精製した5日後に、CTLの活性をアッセイした。使用されたコントロールは、対応するKbまたはA2結合ペプチドである。結果は、これらの標的抗原が、皮内、皮下、または鼻腔内に投与されるときに免疫応答を誘導することを示している(図6)。
【0058】
図7で表された結果は以下のことを示している。すなわち、i)TatとhPer1は共に、ペプチドのみの場合よりも高いCTLの活性を誘導することができる。ii)少なくともOVAペプチドSIINFEKLに関する限りでは、Tatトランスダクション配列と比べるとhPERlトランスダクション配列の方が優れている。図7に示されているように、hPERl-DEVWEL-SIINFEKLペプチドの投与は、Tat-DEVWEL-SIINFEKLペプチドの投与に比べると、調べた全てのE: T比でより強いレベルの細胞傷害活性を誘導する。
【0059】
図8で示されているように、ヘルパーCD4B型肝炎ペプチドの添加が、免疫原性標的を用いて免疫を誘起する際に、重要であるケースもある。へルパーペプチド存在下でhPERl-FVYVW-154ペプチドをマウスに接種すると、かなり強いT細胞の細胞傷害活性が誘導される。へルパーペプチド非存在下での接種は、非常に低いレベルの細胞傷害活性しか誘導しない。興味深いことに、図9で示されているように、免疫原性標的の投与量を増加すれば、へルパーペプチドの存在に依存した誘導活性を上回る影響力を持つ。
【0060】
図10では、アジュバントを加えずに投与された標的抗原は、アジュバントを加えて投与された融合していないペプチドと同程度の効果があることを示している。免疫原性標的hPERl-FVYVW-SIINFEKLとhPERl- DEVWEL-SIINFEKLは、アジュバントを加えずに皮下に投与された。OVA ペプチド(SIINFEKL)は、不完全フロイントアジュバントを加えて投与された。図に示されているように、免疫原性標的と不完全フロイントアジュバントを加えたOVAペプチド両者の細胞傷害活性レベルは同等である。さらに、リンカー配列が加わると、CTL活性を誘起する強さと能力が劇的に増加する。リンカー配列FVYWVが最良であるのに対し、リンカー配列DEVWELとそれにSGQLは低いレベルの細胞傷害活性しか誘導しない。これらの観察は、リンカーの性質が、イン・ビボ(in vivo)におけるCTL活性の誘導に、重要な要素であることを示している。
【0061】
D. hPER1-エピトープ融合物は、ペプチドの抗原提示および免疫応答を長期持続させる
CTLエピトープをhPERlトランスダクションドメインと連結する効果についてさらに解析することを目的として、ペプチドと細胞を培養した後の抗原提示の速度論を調べるため、イン・ビトロ(in vitro)アッセイを行った。図11では、C57BL/6マウス由来の脾臓細胞を、OVA配列と融合した様々なペプチドと共に、37℃で1時間培養した。細胞を洗って、浮遊している余剰ペプチドを除き、37℃で0、4、8、24、あるいは30時間、培地中で培養した。SIINFEKL特異的T細胞のIFN-g生産を刺激する能力を、ELISPOT法により調べた。結果として、OVAペプチドのみによる細胞の刺激では、IFN-g生産の刺激能は24時間で失われるのに対して、hPERl-SGQL-SIINFEKLまたはTAT-DEVWEL-SIINFEKLで細胞を刺激すると30時間経っても、刺激能は減少しないことが示された。リンカー配列なしにOVAをhPERlまたはTATに連結したものもまた、あつらえて設計されたリンカー配列を含むペプチドより低い活性ではあるものの、OVAペプチドのみの場合より高い抗原提示能を示す。OVAのフランキング配列(LEQLE)をリンカー配列として持つhPER1及びTATとの融合物は、OVAペプチドのみの場合と比べて特に改善されない。
【0062】
図12は、NPペプチドを含む融合物を用いた同様の解析を図示している。ここでは、NPペプチドのみだと、24時間培養後に活性が失われる。しかしながら、hPERl-NPまたはhPERl-RGVQI-NPペプチドで刺激した細胞は、アッセイの最長限度である5日を過ぎてもT細胞を刺激する能力を維持している。全体的にみると、これらのデータは、hPER1が、抗原提示の継続時間を延長することが可能であり、適切に設計されたリンカーを用いればさらに最適化され得ることを示している。
【0063】
イン・ビボ(in vivo)による実験では、標的遺伝子が長期免疫記憶を誘導できることが、さらに確かめられた。図13に示されているように、154ペプチドのみの免疫では、免疫後3週間、または3ヶ月に渡って保持される細胞傷害活性は誘導されない。一方、hPERl-FVYVW-154が誘導する細胞傷害活性は、免疫後少なくとも3ヶ月に渡り保持されるのが認められた。この結果から、免疫記憶応答は、標的抗原の投与に伴うものであり、非融合ペプチドによるものではないことが示された。
【0064】
表4は、マウスで行われた免疫原性実験を要約したものである。本明細書で示された結果から、免疫原性標的が、特異的及び強い免疫応答を誘起するのに有用であることが分かる。
【表4】

【0065】


【0066】

【0067】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】イン・ビトロ(in vitro)における、hPER融合物によるペプチド特異的な溶解に対する標的細胞の感受性。
【図2】hPER融合ペプチドを用いたヒトT細胞応答のイン・ビトロ(in vitro)誘導。
【図3】アジュバントを加えないhPER融合ペプチドを用いたT細胞応答のイン・ビトロ(in vitro)誘導。
【図4】ペプチドで刺激された樹状細胞(DCs)を静脈(i.v.)注射したC57BL/6マウスにおけるCTLの応答。表記のペプチドで刺激を受けた骨髄由来の樹状細胞(DCs)、5×105を静脈注射で、マウスに接種し免疫した。ワクチン接種した動物の脾臓細胞を免疫から1週間後に採取し、さらに5日間SIINFEKLペプチドで再刺激した。SIINFEKLペプチドで刺激した標的細胞を用いて、CTLの活性を、標準的なクロム遊離アッセイにより調べた。
【図5】ペプチドを皮下(s.c.)注射したHLA-A2/Kbトランスジェニック・マウスにおけるCTLの応答。表記のペプチド50ugの皮下注射でマウスを免疫し、最初の注射から21日後と42日後に追加刺激した。免疫した動物の脾臓細胞は免疫後63日目に採取し、gp100-154ペプチドで5日間再刺激した。gp100-154ペプチドで刺激した標的細胞を用いて、CTLの活性を、標準的なクロム遊離アッセイにより調べた。
【図6】A2/Kbトランスジェニック・マウスにおけるhPER1-FVYVW-154がもたらすCTLの応答は、様々な免疫経路を介して誘起される。各々のグループで、マウス4個体の平均値を示す。
【図7】SIINFEKLエピトープに融合したhPER1またはTatペプチドを用いたT細胞応答のイン・ビトロ(in vitro)誘導。DEVWELをリンカー配列として、TatまたはhPER1のいずれかと融合したSIINFEKLペプチドをマウスに皮下投与し、免疫した。この図では、各々のグループにつきマウス4個体の平均値を示してある。ポジティブ・コントロールである不完全フロイントアジュバントを加えたSIINFEKLペプチドと比べると、hPER1-DEVWEL-SIINFEKLペプチドが、最も優れたCTLの応答を誘導した。
【図8】ヘルパーCD4B型肝炎ペプチドの存在は、CD8ペプチドに対するCTLの応答を誘起するために必要不可欠である。A2/Kbマウスの鼻腔内にhPER1-FVYVW-154ペプチドを、ヘルパーペプチド存在下または非存在下で、50pmolから1nmolまで量を変えて投与した。ヘルパーペプチドの非存在下では、10nmolのhPER1-FVYVW-154ペプチドでも、効果的な細胞傷害活性は誘導されない。
【図9】ヘルパーペプチドの非存在下でも、多量のペプチドによる免疫は、マウスのT細胞応答を誘導することができる。ヘルパーペプチド存在下または非存在下で、C57BL/6マウスの鼻腔内にhPER1-SGQL-SIINFEKLペプチドを、量を変えて投与し免疫した。
【図10】様々な配列をリンカーとしてSIINFEKLをつなげたhPER1ペプチドを、アジュバントを加えずに免疫に用いたときの免疫のイン・ビボ(in vivo)誘導。各々のグループにつきマウス4個体の平均値を示してある。FVYVWリンカーが、最も効果的に細胞傷害活性を誘起し、これは、不完全フロイントアジュバント(IFA)を加えてSIINFEKLペプチドを免疫した時の活性の強さに相当する。
【図11】OVA(SIINFEKL)ペプチドの抗原提示のイン・ビトロ(in vitro)解析。C57BL/6マウス由来の脾臓細胞を、表記のペプチド10ug/mlで、37℃1時間刺激し洗った後、0、4、8、24、30時間培養した。トランスダクションペプチドにより刺激された細胞の表面に他の因子が結合しないようにするために、bGALペプチドであらかじめブロッキングした。次に、この細胞で、SIINFEKL特異的T細胞のIFN-g分泌を誘導する活性を、ELISPOT法で調べた。300/ウェル以上のスポット値は計測できなかった。*=調べなかったサンプル。
【図12】NPペプチドの抗原提示のイン・ビトロ(in vitro)解析。C57BL/6マウス由来の脾臓細胞を、表記のペプチド10ug/mlで、37℃1時間刺激し洗った後、0、24、72、120時間培養した。次に、この細胞で、NP特異的T細胞のIFN-g分泌を誘導する活性を、ELISPOT法で調べた。
【図13】hPER1-FVYVW-gp100-154ペプチドを用いた免疫後の長期免疫の誘導。gp100-154ペプチドのみ、もしくはhPER1-FVYVWを融合したgp100-154ペプチドで、A2/Kbマウスの鼻腔内を免疫し、3週間または3ヶ月経た後のCTLの応答。各グループにつきマウス4個体の平均値を示す。4個体全て、もしくは4個体中3個体で、短期(3週間)及び長期(3ヶ月)のT細胞応答が、hPER1-FVYVW-154ペプチドを用いた免疫後に、観察された。154ペプチドのみを用いた免疫では、効果的なCTLの応答は誘起されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性Tリンパ球のエピトープを含む第2のアミノ酸配列に連結されたhPER1のトランスダクション配列-RRHHRRSKAKRSR-を含む第1のアミノ酸配列から実質的に成るポリペプチド。
【請求項2】
前記第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間にリンカー配列が挿入されていることを特徴とする請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記リンカー配列が、前記第2のアミノ酸配列と共に自然に生じるものであることを特徴とする請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記リンカー配列が、前記第2のアミノ酸配列と共に自然に生じるものではないことを特徴とする請求項2記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記第2のアミノ酸配列が、腫瘍抗原、感染病原体の抗原または自己免疫抗原に由来するものであることを特徴とする請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載のポリペプチドを、薬剤として許容される担体中に含む組成物。
【請求項7】
請求項6記載の組成物を宿主に投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項8】
請求項1から5いずれか1項記載のポリペプチドあるいは請求項6記載の組成物を樹状細胞と混ぜてペプチド負荷樹状細胞を作り、さらに該ペプチド負荷樹状細胞を宿主に投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項9】
hPER1のトランスダクション配列-RRHHRRSKAKRSR-をコードする第2のDNA配列に連結された細胞傷害性Tリンパ球のエピトープをコードする第1のDNA配列を含む、単離組み換えDNA分子。
【請求項10】
リンカーのアミノ酸配列をコードするDNA配列が、前記第1のDNA配列と第2のDNA配列との間に挿入されていることを特徴とする請求項9記載のDNA分子。
【請求項11】
前記リンカーのアミノ酸配列が、前記第2のDNA配列によりコードされるアミノ酸配列と共に自然に生じるものであることを特徴とする請求項10記載のDNA分子。
【請求項12】
前記リンカーのアミノ酸配列が、前記第2のDNA配列によりコードされるアミノ酸配列と共に自然に生じるものではないことを特徴とする請求項10記載のDNA分子。
【請求項13】
前記第1のDNA配列によりコードされるアミノ酸配列が、腫瘍抗原、感染病原体の抗原または自己免疫抗原に由来するものであることを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載のDNA分子。
【請求項14】
請求項9から13いずれか1項記載の組み換えDNA分子を含む組成物。
【請求項15】
請求項1から5いずれか1項記載のポリペプチド、請求項9から13いずれか1項記載の組み換えDNA、または請求項6または14記載の組成物を、皮下、皮内または鼻腔内経路で投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項16】
前記細胞傷害性Tリンパ球のエピトープが、腫瘍抗原、感染病原体の抗原または自己免疫抗原に由来するものであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1から5いずれか1項記載のポリペプチド、請求項9から13いずれか1項記載の組み換えDNA、または請求項6または14記載の組成物から実質的に成る標的抗原を、皮下、皮内または鼻腔内経路で投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項18】
細胞傷害性Tリンパ球のエピトープを含む第2のアミノ酸配列に連結されたhPERのトランスダクション配列を含むポリペプチドから実質的に成る標的抗原を、皮下、皮内または鼻腔内経路で投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項19】
hPERのトランスダクション配列をコードする第2のDNA配列に連結された細胞傷害性Tリンパ球のエピトープをコードする第1のDNA配列を含む組み換えDNA分子から実質的に成る標的抗原を、皮下、皮内または鼻腔内経路で投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項20】
請求項18記載のポリペプチド、または請求項19記載の組み換えDNA分子を含む組成物を、皮下、皮内、もしくは鼻腔内経路で投与することを含む、宿主を免疫する方法。
【請求項21】
前記細胞傷害性Tリンパ球のエピトープが、腫瘍抗原、感染病原体または自己免疫抗原に由来するものであることを特徴とする請求項17から20いずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−536911(P2007−536911A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547589(P2006−547589)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/044023
【国際公開番号】WO2005/066203
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506121342)サノフィ パストゥール インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR, INC.
【Fターム(参考)】