説明

標的検出を伴う放射線治療法

患者の放射線治療のために3次元計画作成画像を使用して、患者に放射線治療を施す方法である。計画作成画像が放射線治療標的を含む。この方法は、3次元計画作成画像を使用して、放射線治療標的の少なくとも1つの2次元放射線写真画像を捕捉するために所望の画像捕捉条件を決定するステップと、少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像にて、放射線治療標的の位置を検出するステップと、少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像で検出された放射線治療標的の位置に応答して、放射線治療を施すことを決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね放射線治療システムに関し、特に標的検出に基づいて治療用放射線を施すシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、治療用放射線の適切な標的設定を保証するためにデジタル放射線写真で標的組織の位置を検出する適応性放射線治療(ART)の方法を提供する。
【0003】
放射線治療の多くの改良点は、正常な組織への被爆を最小限に抑えながら治療用放射線を(癌性腫瘍などの)標的に施すという目的を有する。これらの改良点によって、周囲の正常な組織が受け取る線量を制限しなければならないという制約がある状態で、より多くの線量の放射線を腫瘍に与えることができる。
【0004】
放射線治療の計画作成は、患者に2つ以上の外部マーカを取り付けながら、患者の3次元画像を獲得することから開始する。撮像モダリティにより、医師は腫瘍の境界を正確に識別することができる。コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、陽電子射出断層撮影(PET)、および超音波を、この目的に使用することができる。
【0005】
画像に現れたままの腫瘍の容積を、通常は肉眼的腫瘍容積(GTV)と呼ぶ。GTVは、腫瘍の顕微鏡的な拡張を考慮に入れるために拡張される。このように拡張した容積を、通常は臨床腫瘍容積(CTV)と呼ぶ。CTVは、治療段階の潜在的な設定エラーのせいで、さらに拡張することができる。頭蓋外腫瘍の場合は、器官の動きのせいで、外部マーカに対する腫瘍位置の不確実さもある。例えば、肺腫瘍は、患者が呼吸するにつれて移動する。設定エラーおよび器官の動作による不確実さを補償するためのCTVの拡張を、計画治療容積(PTV)と呼ぶことが多い。
【0006】
放射線治療の設定中に、患者は、PTVがシステムのアイソセンタに位置するように配置される。患者を正確に配置するために、システムは外部マーカの位置を検出する。これらの外部マーカに対するPTVの位置が分かっているので、システムは患者を適切な位置へと移動させることができる。
【0007】
強度変調放射線治療(IMRT)では、治療用ビームがアイソセンタの周囲に弧を描いて動き、したがってPTVは、治療の期間中に放射線を受け、その間に他の組織はその時間の一部にわたって照射される。ビームが移動するにつれ、その形状は、治療用放射線ビームの観点からPTVの形状と一致するために、マルチリーフコリメータ(MLC)によって周期的に調節される。正常な組織をさらに免除するために、幾つもの細分した治療にわたって、十分な線量を与える。細分された治療は通常、数日から数週間の期間にわたって与えられた20から40の部分的線量を備える。
【0008】
PTVは、治療用放射線の全線量を受け取ることが必要なアイソセンタに対する標的の位置に不確実さがあるので、CTVより大きい。不確実さの1つの原因は、計画作成段階での撮像時と治療段階での設定時との間で、外部マーカに対して腫瘍が移動し得ることである。さらに、線量が通常、細分した治療で与えられるので、標的の位置が外部マーカ、内部器官、およびアイソセンタに対して治療毎に異なる状態で変化することがある。
【0009】
システムのアイソセンタに対する標的位置の不確実さを軽減するために、幾つもの方法が開発されている。例えば、呼吸による器官の動作が不確実さの原因である場合は、弛緩呼気作用などの特定の呼吸状態にて、計画作成の画像を捕捉し、治療を実行することによって、これを軽減することができる。
【0010】
放射線治療システムには、治療前に立体X線画像を取得するために、2つのデジタル放射線写真ユニットを装備することがある。これらの画像は、計画作成段階で捕捉したCT画像からのデジタル再構築放射線写真(DRR)と比較される。放射線写真とDDR中の骨または植え込んだ金属マーカの記録を使用して、PTVがアイソセンタにあるように患者の位置を調節する。
【0011】
電子ポータル撮像を使用して、標的の位置を確認することができる。電子ポータル撮像では、治療用ビームが患者を通過した後に、これを撮像する。この画像は、放射線治療中に、または治療前に、低い強度に設定した治療用ビーム源で取得することができる。この方法の欠点は、治療用放射線が通常は、光子エネルギーが1MVより高く、その結果、軟質組織のコントラストが低いことである。また、ポータル撮像は、ある瞬間に2次元で標的の位置を突き止めることしかできない1つの放射線源に制限される。この限界は、E.C.フォードその他が「Cone-Beam CT with Megavoltage beams and an amorphous silicon electronic portal imaging device:Potential for Verification of Radiotherapy of Lung Cancer」(Med. Phys., Vol.29, No.12, pp.2913-2424 (2002))で説明しているように、幾つかの角度でポータル画像を収集し、容積再構築を実行することによって、克服することができる。しかし、この方法の欠点は、標的の位置を検証する結果、患者への放射線量が多大になることである。また、現在の技術では、標的位置を検証するために必要な時間が長すぎて、その位置を検証するためにかかる時間内で、標的が移動していないことを保証することができない。
【0012】
米国特許出願公開第2004/0158146号(メイト)は、植え込まれ、外部放射線源によって励起可能なマーカを有する誘導放射線治療システムを指向する。植え込まれたマーカが撮像され、したがって標的に対するその位置が分かる。放射線治療のために患者を設定する間に、体外のセンサアレイによって内部マーカの位置を突き止める。センサアレイによって求めた内部マーカの位置に基づいて、標的がアイソセンタにあるように患者を配置する。
【0013】
米国特許第6,501,981号(シュワイルカルト)は、呼吸動作が存在する状態で内部ターゲットを追跡する方法を指向する。内部マーカが標的付近に配置される。治療前に、患者が呼吸するにつれて、内部および外部マーカの位置を撮像する。この画像データに基づいて、内部マーカと外部マーカの位置の相関を計算する。患者を治療する場合には、外部マーカの位置を連続的に監視することにより、標的の位置を予測する。その実際の位置を獲得するために、内部マーカを周期的に撮像する。
【0014】
シンイチその他は「Detection of Lung Tumor Movement in Real-Time Tumor-Tracking Radiotherapy」(Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., Vol.51, No.2, pp.304-310 (2001))で、2.0ミリメートルの金の内部マーカを3次元でリアルタイムで追跡するシステムについて説明している。4組の診断用透視装置を使用して、マーカを撮像した。治療中に、標的は、マーカが基準位置から許容された範囲内の転位で検出された場合のみ照射された。
【0015】
放射線治療の現在の方法の短所は、アイソセンタに対する標的位置の不確実さを補償するために、周囲の空間を含むように臨床腫瘍容積(CTV)が拡張されることである。その結果、正常な組織が、損傷を与える線量の放射線を受けてしまう。
【0016】
標的位置の不確実さを低下させる植え込まれた内部マーカを使用する方法が開発されている。残念ながら、マーカの植え込みは追加の手術を必要とし、腫瘍位置がアクセス不可能である場合、または存在する腫瘍が多すぎる場合は選択肢となり得ない。また、内部マーカの位置が、標的の位置と完璧に相関しないことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の特徴は、標的の位置を正確に求めることができるシステムを提供することである。本発明の別の特徴は、標的位置を突き止めるために内部マーカを使用しないシステムを提供することである。本発明の別の特徴は、標的の位置を迅速に、かつ正常な組織に多くの追加放射線を与えずに求めることができるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、治療用ビームで照射する前に、標的の位置を即座に求める手段を提供する。
【0019】
特に、計画作成段階で、3次元医療用撮像モダリティを使用して、患者の画像を捕捉する。医者は、この画像で標的の境界を描く。
【0020】
1つまたは複数の最適なデジタル再構築放射線写真(DRR)を、計画作成画像から生成する。DRRは、標的組織の検出可能性が促進された場合に、最適になる。概して、標的組織と他の解剖学的構造との重なりを最小限に抑えなければならない。また、DRRの標的の境界は明瞭でなければならない。
【0021】
放射線治療システムには、1つまたは複数の調節可能なデジタル放射線写真ユニットを装備する。各デジタル放射線写真ユニットは、最適なDRRの透視図から放射線写真を生成するように配置構成される。
【0022】
治療用ビームを適用する直前に、1つまたは複数のデジタル放射線写真を捕捉する。画像処理ユニットが、計画作成画像の標的の特徴に基づいて、放射線写真における標的の位置を識別する。
【0023】
画像処理ユニットの出力は、様々な方法で使用される。標的がアイソセンタにない場合、システムは、治療用ビームでの照射から再構成する。あるいは、放射線治療が開始する前に、標的がアイソセンタにあるように、患者またはビームを再配置する。
【0024】
本発明の1つの態様によると、患者の放射線治療のために3次元の計画作成画像を使用して患者に放射線治療を施す方法が提供され、計画作成画像は放射線治療標的を含む。該方法は、3次元計画作成画像を使用して放射線治療の少なくとも1つの2次元放射線写真画像を捕捉するために、所望の画像捕捉条件を決定するステップと、少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像で、放射線治療標的の位置を検出するステップと、少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像で検出した放射線治療標的の位置に応答して、放射線治療を施すことを決定するステップとを含む。
【0025】
本発明の別の態様によると、患者の放射線治療のために3次元計画作成画像を使用して患者に放射線治療を施す方法が提供され、計画作成画像は放射線治療標的を含む。該方法は、計画作成画像を使用して、1つまたは複数の所望のデジタル再構築放射線写真を決定するステップと、デジタル放射線写真ユニットを使用して、1つまたは複数の所望のデジタル再構築放射線写真それぞれに対応する少なくとも1つの2次元放射線写真画像を捕捉するステップと、少なくとも1つの捕捉したデジタル2次元放射線写真画像それぞれで放射線治療標的の位置を検出するステップと、捕捉した少なくとも1つの2次元放射線写真画像で検出された放射線治療標的の位置に応答して、放射線治療を施すことを決定するステップとを含む。
【0026】
本発明の以上およびその他の目的、特徴、および利点は、以下から、特に添付図面に図示されたような本発明の実施形態の説明から明白になる。図面の要素は、相互に対して必ずしも同じ縮尺ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下は、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明であり、図面を参照するが、ここで同じ参照番号は幾つかの図それぞれで構造の同じ要素を識別する。
【0028】
図1は、自動標的位置検出を伴う例示的な放射線治療システムを示す。図1を参照すると、患者130が、治療台132などの支持部材上に配置されている。患者には2つ以上の外部マーカ138が取り付けられている。外部マーカの位置はカメラ139で監視される。
【0029】
治療用放射線源136は、治療を通じてアイソセンタ134に向けられる。
【0030】
放射線写真ユニットは診断用X線源135およびデジタルX線撮像装置133を含み、標的131の領域を撮像する。放射線治療システムは、標的の位置を3次元で特定できるようにする複数の放射線写真ユニットを有することが好ましい。
【0031】
診断用X線源135およびデジタルX線撮像装置133は、その位置および方向を正確に求める手段を有する。これは、例えばカメラ139によって、または位置および方向を測定する任意の他の手段によって検出されるマーカを使用するなどして、達成することができる。診断用X線源とデジタルX線撮像装置との相対的な位置および方向を使用して、放射線写真で標的および他の解剖学的構造の倍率および歪みを求める。さらに、治療用放射線源136およびアイソセンタ134の座標系に対する診断用X線源135およびデジタルX線撮像装置133の位置および方向も、正確に測定される。本発明の実施形態では、カメラ139が、診断用X線源135およびデジタルX線撮像装置133のマーカの位置を検出し、治療用放射線源136およびアイソセンタ134の座標系に対するその位置および方向を自動的に求める。
【0032】
図1の標的検出および制御ユニット137は、様々な機能を提供する。これは、標的の検出を促進する画像を捕捉するよう放射線写真ユニットを配置構成する。これによって、放射線写真ユニットは治療直前および場合によっては治療中に画像を捕捉する。これは、アイソセンタが画定されている放射線写真の座標系に対する、捕捉した放射線写真の標的の位置を求める。これはさらに、幾つかの方法で使用可能な情報を放射線治療制御ユニット140に提供する。情報を使用して、放射線治療を開始すべきか否かを決定することができる。情報を使用して、放射線治療を継続すべきか、停止すべきか決定することができる。これを使用して、標的がアイソセンタにあるように、患者または治療用放射線源を再配置することができる。
【0033】
本発明の実施形態では、放射線治療中に、治療用放射線源136を連続的または周期的に撮像する。標的の位置をこれらの画像で検出し、これがアイソセンタに留まっているか検証する。標的が所定の位置から移動している場合は、放射線治療を終了する。
【0034】
本発明による標的検出を伴う放射線治療方法が、図2で図解されている。このプロセスは、患者の計画作成画像を捕捉するステップ210から開始する。このために使用可能な医療用撮像モダリティは、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、陽電子射出断層撮影(PET)、PET−CT、および超音波などを含む。ステップ211では、オペレータが、場合によっては画像分割ソフトウェアの助けにより、標的の境界を描く。
【0035】
ステップ212の目的は、ステップ214で獲得されるデジタル放射線写真のために最善の捕捉条件を決定することである。ステップ212では、デジタル再構築放射線写真(DRR)を計画作成画像から計算する。オペレータまたはコンピュータソフトウェアが、標的検出を容易にする1つまたは複数のDRRを決定する。通常、標的検出は、正常な解剖学的構造と標的との重なりが最小限に抑えられ標的の境界が明瞭である場合に、容易である。
【0036】
ステップ213では、ステップ212で決定された通りのDRRと一致する画像を捕捉するように、1つまたは複数の放射線写真ユニットを配置構成する。
【0037】
ステップ214は、患者を放射線治療ビームに曝露する直前に実行される。画像は、図1に図示されたような放射線写真ユニットそれぞれで、診断用X線源135およびデジタルX線検出器133によって捕捉される。
【0038】
図2のステップ215では、放射線写真ユニットを使用して捕捉された放射線写真で、標的を検出する。2つ以上の放射線写真で標的を検出すると、3次元で標的を局所化することができる。
【0039】
ステップ216では、ステップ215の結果に基づいて治療用放射線を施すことを修正する。修正の選択肢は、線量の投与、線量投与の抑制、患者の再配置、治療用放射線ビームの再配向、および治療用放射線ビームの修正を含むが、それらに限定されない。修正が再配置、再配向または修正を含む場合は、再配置、再配向または修正の後に線量を投与することができる。
【0040】
診断用X線源(図1に示す要素135)は通常、入力電力の電圧レベルを上昇させる変圧器、および電圧を単極に変換する整流器を含む。X線源は、その中で陰極から放射された電子が陽極標的に向かって加速するX線管を含む。電子が標的に衝突すると、X線光子が生成される。患者に到達するX線エネルギーの分布は、陽極と陰極との電圧差、および放射線源と患者の間に配置されたフィルタのX線減衰特性を含む幾つかの要素によって決定される。
【0041】
本発明の1つの実施形態では、米国特許第6,683,934号(ジャオ)で開示されたような二重エネルギーX線画像捕捉を使用する。例えば、低エネルギーおよび高エネルギーのX線画像を、高速で連続して捕捉することができる。例えば、低エネルギーX線は50kVPから70kVP、高エネルギーX線は110kVPから140kVPの範囲でよい。この方法の特徴は、高エネルギーで捕捉された画像は、主に骨などの硬組織を示すことである。低エネルギー画像は硬組織と軟組織の両方である。知られているサブトラクション処理法(このような方法の1つが米国特許第6,683,934号に記載されている)を使用して、軟組織に重なった硬組織が除去された画像を獲得することができる。これは、軟組織標的の検出を促進することができる。
【0042】
数種類のX線撮像装置(図1の要素133)を使用して、標的および周囲の容積の画像を捕捉することができる。例えば、X線光子をこれよりエネルギーが低い光子に変換するシンチレータとの組合せで、CCDカメラを使用することができる。
【0043】
X線検出器は、間接的または直接的なフラットパネルタイプであることが好ましい。間接フラットパネル検出器は、シンチレータ/光ダイオード/薄膜トランジスタ(TFT)構造で構成される。例示的なシンチレータの材料は、ヨウ化セシウムおよび酸硫化ガドリニウムである。米国特許第4,996,413号(マクダニエル)は、本発明とともに使用するのに適した例示的な間接X線検出器を開示している。光ダイオードは結晶質または非晶質シリコンでよい。直接X線検出器では、X線光子が、最初に低エネルギー光子に変換されずに、光電子を生成する。直接検出器は、薄膜トランジスタアレイと組み合わせたX線光伝導体を含む。光生成電荷を収集するために、蓄電コンデンサも含まれる。米国特許第5,313,066号(リー)は、本発明で使用可能な直接X線画像捕捉要素を提供する。
【0044】
標的検出を容易にするX線画像の捕捉には、幾何学的なかすみを最小限に抑える必要がある。幾何学的かすみは、オブジェクトから検出器までの距離が短くなるにつれて減少する。放射線治療中に、患者は通常、治療台(図1の要素132)上に横たわる。これによって、患者の体内の標的近くにX線撮像装置を配置することが困難になることがある。
【0045】
したがって、本発明は、米国特許出願公開第2003/0031296号(ホヘイセル)に対応する米国特許出願第10/206,730号で開示されている装置のような可撓性X線撮像装置を使用することが好ましい。可撓性X線撮像装置は、診療台に内蔵するか、患者の近くに配置することができ、検出器への損傷の可能性が低下する。
【0046】
前述したように、二重エネルギーX線画像捕捉は、標的検出を容易にする。本発明の1つの実施形態では、二重エネルギー捕捉は、X線フィルタによって分離された2層以上のX線撮像要素を使用することによって遂行される。例えば、上部のX線撮像要素は全範囲のX線エネルギーに曝露される。この要素の下には、低エネルギーX線光子を除去するフィルタがある。次に、高エネルギーX線光子にのみ曝露されるX線撮像要素がある。この検出器は、硬組織画像を生成し、第1検出器からの画像とともにこれを使用して、軟組織標的の検出を容易にする異なる画像を生成することができる。
【0047】
DDR(デジタル再構築放射線写真)画像を計算する方法が知られている。例えば、CT画像からDDR(デジタル再構築放射線写真)画像を計算する方法が、G.W.シュエルース、N.ノヴィンス、およびE.チェイニによって「Computation of digitally reconstructed radiographs for use in radiotherapy treatment design」(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 18, 651-658 (1990))にて提供されている。この方法では、仮想ポイント源が選択される。この源から投影面内のポイントまで光線を追跡する。投影面内のポイントにおける密度が、源からそのポイントまで延びる光線の横切るCT画像のCTボクセル数に基づいて計算される。1つの方法では、横切られたボクセルのCT数を、線減衰係数に変換し、次に合計する。
【0048】
DRR画像は、F.F.イエンその他が「MR image-guided portal verification for brain treatment field」(Int. J. Radiation Oncol. Biol. Phys. 40, 704-711 (1998))に記載した方法を使用して、MRI画像からも計算することができる。
【0049】
図2のステップ212では、ステップ211からの標的容積の境界線を使用して、標的検出を容易にする1つまたは複数のDRRを生成する。これは、標的と他の解剖学的構造との重なりを最小限に抑え、標的容積と周囲領域の投影のコントラストを最大限にするように、仮想源と投影面位置の両方を選択することによって達成することができる。「標的光線」とは、伝播の一部で標的容積を通過する光線と定義される。標的光線が、標的容積の外側にある時に減衰が低い領域を通過する場合、重なりが最小になる。あるいは、標的容積の外側での標的光線の減衰が一様である場合、重なりを効果的に最小限に抑えることができる。一様な減衰は、標的検出を妨害しないように補償することができる。小さい角度で標的容積の境界と交差する標的光線は、投影面で標的容積の境界を画定する。これらの境界光線の経路減衰が隣接する非標的光線と異なる場合に、コントラストが向上する。
【0050】
標的検出を容易にするために1つまたは複数のDRR画像を生成できる別の方法は、標的容積の形態学的特性を可能な限り正確に考慮するように、仮想源と投影面位置の両方を選択することを含む。例えば図4に図示されているように、長軸が短軸よりはるかに長い長円体によって、標的容積400を密接に近似することができる場合、投影面が長軸に平行である(または仮想光軸が長軸に垂直である)DRRは、投影面が長軸に直角である(またはその仮想光軸が長軸に平行である)DRRよりも、標的容積を正確に局所化することができる。
【0051】
これは、図4で示したような放射線写真ユニット各々で捕捉した通りの標的容積400の投影図を考察することによって例示することができる。診断用X線源401およびデジタルX線検出器403を含む第1放射線写真ユニットは、光軸が、標的容積400を近似する長円体の長軸に平行であるように配向される。診断用X線源402およびデジタルX線検出器404を含む第2放射線写真ユニットは、光軸が、標的容積400を近似する長円体の長軸に直角であるように配向される。
【0052】
その結果の放射線写真405(第1放射線写真ユニットによって捕捉される)および406(第2放射線写真ユニットによって捕捉される)は、標的容積400の異なる投影図を示す。第1放射線写真405は、第2放射線写真406への標的容積400の投影図より非常に小さい区域を含んだ標的容積400の投影図を示す。
【0053】
標的容積の局所化エラーは、放射線写真ユニットの光軸に直角の方向沿いより、光軸の方向沿いの方が大きくなることがあり、したがって放射線写真405に基づく標的容積400の局所化はエラーを生じ、これは、標的容積400の全体的サイズに対して、放射線写真406を局所化のベースにすることによって誘発される局所化エラーより大きくなる。
【0054】
より複雑な状況(例えば標的容積が凸状ではない場合)では、検出される標的に凹所を最適に配置するために、仮想源および検出器平面を選択することができ、これは最小PTVの構築をさらに容易にする。3次元オブジェクトのモデリングの分野では、1つまたは複数の2次元投影図から標的容積を再構築すると、投影図で見られるこれらの凹所のみを含む再構築容積または「視覚的外殻」が生成されることが周知である(例えば、「The Visual Hull Concept for Silhouette-Based Image Understanding」(IEEE Trans. Pattern Analysis and Machine Intelligence, Volume 16, Number 2, pp.150-162, February 1994)参照)。したがって、標的容積の凹所を示す標的容積の投影図を含むDRRによって、任意の視野からのDRRよりもPTVを正確に局所化することができる。
【0055】
標的と他の解剖学的構造との重なりを最小限にし、標的容積と周囲領域の投影図とのコントラストを最大にする1つまたは複数のDRRを選択しても、必ずしも標的容積の凹所の最適視野が提供されず、逆に、標的容積の凹所を最善に示す1つまたは複数のDRRを選択しても、標的と他の解剖学的構造との重なりを最小限にせず、標的容積と周囲領域の投影図とのコントラストを最大にもしないことが、当業者には明白である。したがって、これらの目的の全部(または大部分)が適切であるとされた状況では、1つまたは複数のDRRを生成して、目的を合同で最適にすることができる。これは、複数のDRR、個々の目的各々を最適化するように設計された1つまたは複数を含むか、より良い「グローバルな」最適条件に叶うために、各目的を多少折り合わせる1つまたは複数のDRRを含むことができる。
【0056】
本発明は、標的検出を容易にする所望の放射線写真捕捉条件を求めるために、1つまたは複数のDRRの計算を使用する。本発明の実施形態では、「Fast calculation of digitally reconstructed radiographs using light fields」(Medical Imaging 2003; Image Processing, Proceedings of SPIE Vol.5032 (2003), pp.684-695)に記載されているように、明視野を使用してDRRの計算速度を上げる。
【0057】
図2のステップ215では、ステップ212で計算したDRRの標的の特徴に基づいて、ステップ214から捕捉した放射線写真で標的を検出する。図3は、検出プロセスを詳細に図解する。図3を参照すると、デジタル放射線写真300の生ピクセルコード値は、散乱したX線からの追加的な寄与がある状態で、源から検出器までのX線減衰合計のログに比例する。さらに、往々にして検出量子効率で表される検出器の特性が、デジタル放射線写真の解像度および信号対雑音比を決定する。補正および変換処理ステップ301の目的は、システムのアーチファクトを補正し、雑音を低下させ、その後の処理ステップによって必要とされる標準的形態で画像を配置することである。画像補正は、不均一なX線照明、検出器応答の空間的変動、および患者を通る経路長の補償を含む。画像コード値は、検索テーブルを適用することによって変換することができる。1つの目的は、目標値に合わせて画像の平均コード値および標準偏差を調節することである。また、画像を分解して、様々な解像度のサブバンドにすることができる。サブバンドを調節し、再結合する。
【0058】
図3のステップ303は、標的が強調された画像を生成する。代替的であるが同等のアプローチは、標的は変化していないが、標的以外の内容が減少した画像を生成することである。画像を強調する1つの方法は、標的の特徴を有するテンプレートとの正規化した相互相関を適用することである。好ましい実施形態では、画像でグレースケール・モフォロジー演算を実行する。例えば、標的の特徴を有するテンプレートを伴ったグレースケール・モフォロジーの開口は、標的を実質的に変化させないままであるが、他の画像の内容を減少させる。
【0059】
図3のステップ304では、背景または「標的以外」の強調画像の生成は、ステップ303と原則的に類似しているが、その目的は、正常な解剖学的構造などの標的以外の内容を強調するか、他の内容に対して標的を減少させることである。例えば、画像の主な標的以外の内容が肋骨などの骨である場合は、肋骨様の特徴を有するグレースケール・モフォロジー・テンプレートを使用することができる。
【0060】
本発明では、標的および背景の画像内容のテンプレートは、図2のステップ212のDRR画像にある標的および背景の特徴に基づく。
【0061】
ステップ305では、標的強調画像は、そこから背景強調画像が引かれている。この異なる画像では、標的が高いコード値で特徴付けられ、背景は低いコード値を有する。これは、その後のステップで標的の識別を促進する。
【0062】
図3のステップ312の目的は、画像内の標的の正確な位置および範囲を求めることである。ステップ305の結果、画像内に標的領域が存在する場合、それは他の大部分の画像内容より高いコード値を有する。標的以外の領域も高いコード値を有する可能性もある。ステップ312では、潜在的に標的に属する領域を識別するために、画像領域分割アルゴリズム(例えば分水界領域分割)を画像に適用することができる。
【0063】
図3のステップ306では、ステップ312で識別された全ての候補標的領域から特徴を抽出する。抽出された特徴は、サイズ、形状、勾配の大きさおよび方向、コード値の統計、およびテクスチャを含むが、それらに限定されない。
【0064】
分類ステップ310は、様々な入力に基づいて、候補標的領域が実際に標的であるか否かを決定する。このステップへの1つの入力は、ステップ306で各候補標的領域について抽出された特徴である。標的検出は、異なる視点から捕捉した幾つかの放射線画像で同時に実行することができる。ステップ308は、他の画像からの中間または最終の標的検出結果が分類ステップ310に入力されることを示す。この情報は、分類計算で事前確率を推定するために使用することができる。クラシファイア(classifier)がよく知られている。ステップ310で使用可能なクラシファイアは、サポートベクターマシン、ガウシアン最尤度(Gaussian maximum likelihood(GML))、学習ベクトル量子化器(LVQ)、k最近傍、およびニューラルネットワークを含むが、それらに限定されない。
【0065】
分類ステップ310への別の入力は、クラシファイアデータ309である。クラシファイアデータは、標的特徴のデータ307を入力として使用する訓練プロセスで生成される。例えば、クラシファイアデータは、図2のステップ212で計算されたDRRに現れた通りの標的領域から抽出された特徴で構成することができる。
【0066】
図3のステップ310の出力は、標的が検出され、画像内でその正確な位置および境界を提供するか否かに関する決定311である。2つ以上の画像における標的の位置を使用して、3次元空間における標的容積の位置を求める。しかし、本発明の1つの実施形態では、単一画像における標的の位置および倍率を使用して、3次元空間における標的容積の位置を求めることができる。
【0067】
本発明の1つの実施形態では、治療用放射線を適用すべき標的を検出するのではなく、治療用放射線への曝露を差し控えねばならない重要な解剖学的構造を検出する。この実施形態では、治療用ビームで曝露すべき容積内に、重要な解剖学的構造が検出されると、システムは治療用ビームでの照射を控える。
【0068】
本出願で引用した全ての文書、特許、雑誌記事および他の資料は、本願に引用して援用される。
【0069】
本発明を、特に現在好ましい実施形態に関して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲内で変更および変形を実行できることが理解される。したがって、ここで開示した実施形態は、全ての面で例示的であり、限定的ではないものとする。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲で示され、その等価物の意味および範囲内にある全ての変更は、それに含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】標的位置検出を伴う放射線治療装置の説明図である。
【図2】本発明に係る標的位置検出を伴う放射線治療方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る標的位置特定方法を示すフローチャートである。
【図4】標的位置検出を伴う放射線治療装置の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の放射線治療のために3次元計画作成画像を使用して、前記患者に放射線治療を施す方法であって、前記計画作成画像が放射線治療標的を含み、前記方法は、
前記3次元計画作成画像を使用して、前記放射線治療標的の少なくとも1つの2次元放射線写真画像を捕捉するために所望の画像捕捉条件を決定するステップと、
前記少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像にて、前記放射線治療標的の位置を検出するステップと、
前記少なくとも1つの捕捉した2次元放射線写真画像で検出された前記放射線治療標的の位置に応答して、前記放射線治療を施すことを決定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記施すことが、前記放射線治療を実施すること、前記放射線治療の実施を控えること、前記患者を再配置すること、治療用放射線ビームを再配向すること、治療用放射線ビームを修正することのうち1つまたは複数によって達成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記画像捕捉条件が、デジタル再構築放射線写真を使用して決定されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的と患者の解剖学的構造との重なりを最小限にするように決定されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的とその周囲領域とのコントラストが最大限になるように決定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的の境界が明瞭であるように決定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的と重なる前記患者の解剖学的構造の部分が実質的に均一に減衰するように決定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的の最大寸法が投影されるように決定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記所望の画像捕捉条件が、前記放射線治療標的の凹所が獲得されるように決定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像を、二重エネルギーを使用して取得することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、明視野を使用して、前記所望の画像捕捉条件を計算することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、放射線治療装置が前記放射線治療を施し、デジタル放射線写真ユニットの位置および方向が、前記放射線治療装置の座標系で自動的に決定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像の前記放射線治療標的を強調するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像で背景の解剖学的構造を強調するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
強調した標的画像を生成するために、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像の前記放射線治療標的を強調するステップと、
強調した背景解剖学的構造画像を生成するために、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像の背景の解剖学的構造を強調するステップと、
強調した標的画像と強調した背景解剖学的構造画像を使用して、差の画像を生成するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、捕捉された別の2次元放射線写真画像における前記放射線治療標的の検出に基づいて、前記捕捉した2次元放射線写真画像の1つで前記放射線治療標的の位置を検出することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、2つ以上の2次元放射線写真画像を使用して、3次元空間で前記放射線治療標的の位置を検出することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、1つの2次元放射線写真画像における放射線治療標的の位置、および放射線治療標的の倍率を使用して、3次元空間で前記放射線治療標的の位置を検出することを特徴とする方法。
【請求項19】
患者の放射線治療のために3次元計画作成画像を使用して、前記患者に放射線治療を施す方法であって、前記計画作成画像が放射線治療標的を含み、前記方法は、
前記計画作成画像を使用して、1つまたは複数の所望のデジタル再構築放射線写真を決定するステップと、
デジタル放射線写真ユニットを使用して、1つまたは複数の所望のデジタル再構築放射線写真各々に対応する少なくとも1つの2次元放射線写真画像を捕捉するステップと、
前記少なくとも1つの捕捉したデジタル2次元放射線写真画像各々で、前記放射線治療標的の位置を検出するステップと、
前記捕捉した少なくとも1つの2次元放射線写真画像で検出された前記放射線治療標的の位置に応答して、前記放射線治療を施すことを決定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、1つまたは複数の所望のデジタル再構築放射線写真のうち少なくとも1つの前記放射線治療標的の特徴に基づいて、前記少なくとも1つの2次元放射線写真画像にて前記放射線治療標的の位置を検出することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−528102(P2008−528102A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552133(P2007−552133)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045770
【国際公開番号】WO2006/078386
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】