標的物質検出装置
【課題】 微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすること。
【解決手段】 標的物質検出装置100を構成するチップ本体10に計量手段(計量ハウジング22)を設けるようにして、検出装置全体をコンパクトに構成する。また、計量手段に、所定量のサンプル液を計量する計量空間(計量流路23)を設け、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量するため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。
【解決手段】 標的物質検出装置100を構成するチップ本体10に計量手段(計量ハウジング22)を設けるようにして、検出装置全体をコンパクトに構成する。また、計量手段に、所定量のサンプル液を計量する計量空間(計量流路23)を設け、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量するため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液中の標的物質を検出する標的物質検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応等を利用して、サンプル液中から目的とする標的物質を検出する技術が従来より開発されてきている。検出対象となる標的物質は、用途に応じて様々なものが考えられ、近年では、環境汚染を引き起こす原因ともなる環境負荷物質、例えば、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどを検出する場合にも応用される。
【0003】
このような標的物質を検出する検出装置として、特許文献1に記載の装置が従来から知られている。この文献に記載の装置は、チップ本体にサンプル液を流す第1流路、マーカーを流す第2流路、反応流路を形成し、第1流路と、第2流路及び反応流路とを立体的に配置したものである。
【特許文献1】特開2003-114229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術も含め、従来の標的物質検出装置においては、効率的な検出を行うために、反応部での反応に見合った量のサンプル液を計量し、計量した分だけを反応部に送出する必要がある。この計量は、従来では、サンプル液を流すシリンジポンプの駆動時間を一定としておき、一定時間経過したらシリンジポンプの駆動を停止して、流した時間分で計量を行っていた。
【0005】
しかしながら、計量するに当たりシリンジポンプの駆動・停止を短時間で制御することは困難であり、特に少量の計量をする上では計量誤差が大きくなるという問題があった。とりわけ、近年の地球規模の環境保護動向から、現場ですぐさま環境負荷物質の検出ができるようなオンサイト型環境負荷物質検出装置が要望されており、斯かる要望を実現するためには、現場で誰もが簡単に環境負荷物質を検出できるように、装置構成をコンパクトにまとめる必要がある。装置構成をコンパクトにまとめるためには、反応部も小さくする必要があり、ひいてはこの小さな反応部に送り込むサンプル液量もわずかなものとなる。ところが、従来のシリンジポンプ駆動時間制御による計量では、このわずかな計量を行うことは困難であり、オンサイト型環境負荷物質検出装置に適用することは難しいものと考えられる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために講じた請求項1の発明は、
標的物質の混入が疑われるサンプル液から標的物質を検出する標的物質検出装置であって、
少なくともサンプル液を含む流体が流通する主通路が形成されたチップ本体と、
該主通路中に形成され、該主通路を流通するサンプル液と反応してその反応の結果から標的物質を定量的に検出する反応検出部と、
前記チップ本体に設けられ、サンプル液が注入されるサンプル液注入通路と、
前記主通路と前記サンプル液注入通路との間の部分に設けられ、所定量のサンプル液を計量する計量空間が形成された計量手段と、
を具備することを特徴とする、標的物質検出装置としたことである。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1において、
前記計量手段は、所定の流路体積を有する計量流路が形成された計量ハウジングを具備し、
該計量ハウジングは、前記計量流路が前記主通路に連通しているときには前記サンプル液注入通路とは遮断され、前記計量流路が前記サンプル液注入通路に連通しているときには前記主通路とは遮断されるように移動可能とされていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2において、
緩衝液が注入される緩衝液注入通路が前記チップ本体に形成され、該緩衝液注入通路は、前記計量流路が前記主通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記主通路に連通されるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3において、
前記緩衝液注入通路には、緩衝液を送出する送液ポンプ手段が接続されており、前記緩衝液注入通路が前記計量流路を介して前記主通路に連通されているときに前記送液ポンプ手段が駆動することによって、前記計量流路で計量されたサンプル液が緩衝液と共に前記主通路に流れることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、
前記チップ本体には、余剰のサンプル液及び緩衝液を貯留する廃液部及び、該廃液部に連通する廃液通路が形成されており、
前記廃液通路は、前記計量流路が前記サンプル注入通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記サンプル注入通路に連通されるように形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5において、
前記廃液部内には、余剰の検体液及び緩衝液を吸収する吸収部材が配設されてなることを特徴としている。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項において、
主通路の途中に設けられ、主通路中を流れる流体中の気泡を除去する気泡除去手段を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記請求項1の発明によれば、標的物質検出装置を構成するチップ本体に計量手段を設けたため、チップ本体とは別に計量手段を設ける必要がなく、検出装置全体をコンパクトに構成することができる。また、本発明の計量手段には、所定量のサンプル液を計量する計量空間が設けられており、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量できるため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。よって、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、計量手段を計量ハウジングで構成し、この計量ハウジング内に所定の流路体積を有する計量流路が形成されている。そして、この計量流路は、主通路とサンプル注入通路と排他的に連通される。従って、まずサンプル注入通路と計量流路とを連通させて、サンプル注入通路から注入されるサンプル液で計量流路を満たし、その後、主通路と計量流路とを連通させて、計量したサンプル液を主通路に導出する。これにより、一定量のサンプル液を確実に主通路に流すことができる。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、緩衝液が注入される緩衝液注入通路がチップ本体に形成されいる。この緩衝液注入通路は、計量流路と主通路が連通しているときに、計量流路を介して主通路に連通されているため、緩衝液注入通路を流れる緩衝液が計量流路中のサンプル液を押出して、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流入させることができる。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、緩衝液注入通路に緩衝液の送液ポンプ手段が接続されているため、この送液ポンプ手段を駆動させることによって、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流入させることができる。また、送液ポンプ手段による定速送液により、主通路に一定の流量でサンプル液を流すことができる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、チップ本体には、余剰のサンプル液や緩衝液を貯留する廃液部と、この廃液部に連通した廃液通路が形成されている。そして、この廃液通路は、計量流路とサンプル注入通路とが連通しているときに、計量流路を介してサンプル注入通路に連通されている。したがって、サンプル注入通路から計量流路にサンプル液を流す際に、目標とする量よりも多くのサンプル液を流してしまったとしても、余剰のサンプル液は廃液通路側に流れ、常に一定のサンプル液を計量流路で計量することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、廃液通路及び廃液部をチップ本体に設けたため、これらをチップ本体とは別に設ける必要がない。従って、標的物質検出装置をよりコンパクトに構成できる。
【0020】
また、請求項6の発明によれば、廃液部内にサンプル液や緩衝液を吸収する吸収部材が配設されているので、廃液部における廃液が安定し、逆流や漏れを防ぐことができる。
【0021】
また、請求項7の発明によれば、主通路の途中に気泡除去手段を設けたので、反応部での反応においてサンプル液中の気泡による反応阻害を防止し、誤検出の抑制に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の標的物質検出装置は、チップ本体を有し、このチップ本体には、主通路が形成されている。この主通路には、少なくともサンプル液を含む流体が流通する。「少なくともサンプル液を含む流体」とは、サンプル液のみからなる流体及び、サンプル液と緩衝液その他の液との混合液を含む意味である。また、ここで、「サンプル液」とは、標的物質が含まれると思われる試料と、抗体あるいは擬似抗原等の、測定(検出)方法に必要な試薬を定量混合した液をいう。
【0023】
また、主通路には反応検出部が形成されている。この反応検出部では、主通路を流通するサンプル液と反応する。例えば、反応検出部に抗体を固着させ、サンプル液に標的物質(抗原)及び反応検出部の抗体と反応する擬似標的物質を混合したものを用い、反応検出部で反応させる。この際、擬似標的物質には予め外部からの刺激などで何らかの信号を出す標識を付加しておく。標識としては、一般的には光励起による蛍光や、発色、ラジオアイソトープなどが用いられる。このような反応形態において、反応検出部の抗体には、標的物質と擬似標的物質とが共に結合するが、それぞれの存在量によってそれぞれの結合量が決定されるため、その量を擬似抗原からの信号によって知ることができる。このようにして標的物質を定量する方法を直接競合法と呼ぶ。
【0024】
また、サンプル液中に標的物質及びこの標的物質と抗原抗体反応を引き起こす抗体を混入させておくと、標的物質と抗体とが抗原抗体反応を起こし、サンプル液中で特異的結合体を形成する。一方、反応検出部には、標的物質と抗原抗体反応を起こす擬似抗原を固着しておく。この状態において、サンプル液を主通路に流すと、上記特異的結合体は反応検出部で捕捉されずにそのまま通過するが、特異的結合体を形成していない抗体は、標的物質との存在量によって決まる割合で反応検出部の擬似抗原とも特異的結合を起こし、反応検出部に捕捉される。捕捉された抗体量は、予め抗体に信号を出す標識を付けておく。すると、その信号から標的物質を定量することができる。即ち、サンプル液中の抗体の結合部位を標的物質と反応検出部の擬似抗原とで取り合う形となるが、それぞれの占有割合は、それぞれの存在量で決まるため、抗体に結合した擬似抗原を定量することで、標的物質を定量することができる。このような方法を、間接競合法と呼ぶ。
【0025】
つまり、本発明において、反応検出部に抗体を固定する場合は、直接競合法により反応させることになり、反応検出部に擬似抗原を固定する場合は、間接競合法により反応させることになる。直接競合法は、サンプル液中の擬似抗原に標識を付加するが、間接競合法は、サンプル中の抗体に標識を付加する。
【0026】
反応検出部で捕捉される標的物質や擬似抗原、或いは抗体の捕捉形態は特に限定されないが、好適には、捕捉されるべき物質と特異的結合を形成する捕捉物質が該反応検出部に固定されているような形態が例示される。特異的結合を形成する例としては、抗原抗体反応等の免疫化学反応による特異的結合、相補的な核酸同士のハイブリダイゼーションによる特異的結合が挙げられる。捕捉物質を取り付ける方法としては、反応検出部の通路部分に直接捕捉物質を固定する方法や、捕捉物質が沈着したメンブレンなどを反応部の通路部分に固定する方法が挙げられる。
【0027】
また、本発明においては、反応検出部における反応の結果から標的物質を定量的に検出するものである。ここで、どのようにして反応の結果から標的物質を定量するかは、特に限定されない。例えば、上述したように擬似抗原か或いは抗体に付加された標識からの信号量で定量することが可能である。標識としては、蛍光標識、化学発光標識、放射性同位体など公知のものを利用できる。また、標識を用いない場合には、SPR(表面プラズモン共鳴)などを用いて定量することもできる。
【0028】
また、チップ本体には、計量手段が設けられている。この計量手段は、所定量のサンプル液を計量するための計量空間が形成されている。計量空間は、一定の容積のサンプル液を貯留可能な空間であり、必ずしも閉じられた空間でなくても良い。一例として、カップ状の凹部空間のように計量空間を形成しても良い。この場合、カップ状の凹部空間にサンプル液が満充填された場合、その容積をもって計量することができる。それ以上の量のサンプル液が凹部空間に供給された場合には、単にオーバーフローするのみであり、計量することができる量は変わらない。また、後述するように、計量空間を、一定の容積を持つ流路空間としても良い。この場合、流路空間にサンプル液が流通したとき、その流路空間の容積をもって計量することができる。それ以上のサンプル液が流路空間に流通した場合には、順次別の流路(例えば廃液通路)に排出しておけばよく、計量することができる量は変わらない。
【0029】
本発明において、サンプル液中の測定試料としては、本発明の目的に沿う限りにおいて、どのような起源由来のものであっても良い。例えば、環境試料・細胞・培養物・組織・体液・尿・血清及び生検試料等から得ることができる。このうち、環境試料としては、工場跡地等から採取した土壌や、河川から採取した水等が例示される。また、採取したものを使用しても良いし、検出し易いように所定の加工を施したものであっても良い。
【0030】
標的物質としては、化学物質・タンパク質等の高分子・DNA断片・微生物またはウィルス及びその断片・ホルモン等、あらゆる物質が対象となりうる。例えば、土壌中に含まれる毒性物質(PCB、ダイオキシンなど)や、油性物質(重油)などの環境汚染の要因となりうる物質、或いは、河川の水に含まれる病原性大腸菌の菌体等が好適に例示される。
【0031】
また、サンプル液中の試料は、反応部にて効果的に反応を生じさせるための適当な調整を行うことができる。例えば、土壌中のPCBを標的物質として検出しようとする場合には、その土壌から適当な方法により溶液成分のみを抽出して用いることもできる。
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本例における標的物質検出装置の全体構成図である。図1からわかるように、本例における標的物質検出装置100は、チップ本体10と、緩衝液用シリンジユニット50と、サンプル液用シリンジ70とを備えて構成されている。チップ本体10は、図1においては平面視で示してあり、矩形平板状に構成されている。チップ本体10の大きさは、おおよそ長さ約50mm、幅約30mm、厚さ約5mm程度に形成される。蛍光検出による場合のチップ本体10の材料は、安価で低自家蛍光のアクリル樹脂等が好適に使用される。
【0034】
図2は、本例における本体チップ10の断面図である。チップ本体10は、上プレート11、本体プレート12及び下プレート13の3枚のプレートが積層された状態で構成されており、本体プレート12の上面に上プレート11が、本体プレート12の下面に下プレート13が、それぞれ接着などの方法により固着されている。
【0035】
図1及び図2に示すように、チップ本体10の本体チップ12には、主通路14が形成されている。この主通路14は、図1を見ると直線的に形成されているが、特にこれに限定される必要はなく、必要に応じて上下または左右に蛇行していても良い。また、この主通路14の途中には、気泡トラップ部15及び反応検出部16が介装されている。なお、説明の便宜上、主通路14のうち、気泡トラップ部15よりも図1において左側の部分を第1主通路14a、気泡トラップ部15よりも図1において右側の部分を第2主通路14bと呼ぶ。
【0036】
第1主通路14aは、図2に示すように本体チップ12の内部に形成されている。また、第2主通路14bは、本体チップ12の図示下面側に溝状に形成されている。そして、第1主通路14aの一端と第2主通路14bの一端との間に形成される気泡トラップ部15は、本体プレート12の上下面を貫通するように円筒形状の孔として形成される。図2からわかるように、第1主通路14aは、気泡トラップ部15のほぼ中央位置の側周面に、一方第2主通路14bは、気泡トラップ部15の下側の側周面にそれぞれ連通している。このような構成であるため、気泡トラップ部15を挟んで第1主通路14aは第2主通路14bよりも高い位置に配置されていることとなる。従って、例えば第1主通路14aから流れてきた流体は、気泡トラップ部15に侵入した後に第2主通路14bに流れるが、このとき流体中に混在する気泡は、気泡トラップ部15で浮力により上昇し、気泡トラップ部15の上方部分に滞留するため、第2主通路14bには流れないようになる。このようにして、気泡トラップ部15で流体中の気泡を主通路から取り除くことができる。
【0037】
第2主通路14bの途中には、反応検出部16が形成されている。反応検出部16は、第2主通路14bを流れる流体中の標的物質または標的物質の存在に関連する物質を捕捉するための捕捉物質が取り付けられている。なお、本例においては、間接競合法による検出の例を説明するため、反応検出部16にて補足される物質は、標的物質ではなく、未反応の抗体である。そして、捕捉物質としては、本例においては擬似的に構成した抗原(擬似抗原)を使用する。この擬似抗原は、通常の抗原と同様に、抗体と反応して特異的結合体を形成するものである。
【0038】
本体チップ12には、第2主通路14bの端部(図1において右端部)において廃液タンク17が形成されている。この廃液タンク17は、第2主通路14bから流れてきた流体などを廃液として貯留しておく部分であり、内部に液体浸透性の部材(高分子吸収材など)を配置しておくと、より廃液貯留能力が向上する。
【0039】
また、図1に示すように、本体プレート12には、緩衝液注入通路18が形成されている。この緩衝液注入通路18は、その一端が本体チップ10から開口した緩衝液用開口部18aを形成しており、この緩衝液用開口部18aに緩衝液用シリンジユニット50が連通している。
【0040】
緩衝液用シリンジユニット50は、緩衝液を送出するためのシリンジ51と、そのシリンジを駆動させるためのシリンジポンプ52とが組み合わされたものであり、自動でシリンジ51を駆動させて、緩衝液を一定速度で送出するものである。したがって、シリンジユニット50を駆動すると、該シリンジユニット50から送出される緩衝液が緩衝液用開口部18aから緩衝液注入通路18に導入される。
【0041】
また、本体プレート12には、サンプル注入通路19が形成されている。このサンプル注入通路19は、その一端が本体チップ10から開口したサンプル用開口部19aを形成しており、このサンプル用開口部19aにサンプル用シリンジ70が連通している。
【0042】
さらに、本体プレート12には、廃液移送通路20が形成されている。この廃液移送通路20の一端は、本体チップ10に形成された廃液タンク17に連通している。
【0043】
図1及び図2からわかるように、本体プレート12には、円筒形状の凹部21が形成されている。この円筒凹部21内には、円筒状の計量ハウジング22が嵌まり込むように取り付けられている。この計量ハウジング22は、手動的または自動的に円筒凹部21内で回転駆動するようにされている。自動的に回転駆動させるためには、例えばステッピングモータ等の回転駆動手段を計量ハウジング22に同軸的に設置しておけば良い。
【0044】
計量ハウジング22の内部には、図に示すように、計量流路23が形成されている。この計量流路23は、図1の平面視で略くの字状になるように、計量ハウジング22の中心から90度のなす角で側周面に開口して延在するよう形成されている。
【0045】
そして、この計量ハウジング22が嵌め込まれている円筒凹部21には、上記した主通路14(第1主通路14a)、緩衝液注入通路18、サンプル液注入通路19、廃液移送通路20の各端部が連通されている。本例においては、これら4つの通路は、円筒凹部21に等ピッチ角度で、すなわち90度間隔で連通している。また、これらの4つの通路が円筒凹部21と連通する部分の高さ位置は、該円筒凹部21に計量ハウジング22が嵌まり込んだ際にこの計量ハウジング22の側周面に開口した計量流路23の開口部分の高さ位置と等しくなるような高さ位置に設定される。このように、各通路と計量流路23との高さ位置を合わせ、なおかつ計量流路23の開口部が90度のなす角で計量ハウジング23の側周面に開口するとともに、各通路が90度間隔で円筒凹部21に連通する構成であるため、計量ハウジング22の回転位置によって各通路のうちの所定の2つの通路が計量流路を介して連通することになる。例えば、計量ハウジング22を図3のような回転位置に設定した場合には、緩衝液注入通路18と主通路14とが連通し、図4のような回転位置に設定した場合には、サンプル注入通路19と主通路14とが連通し、図5のような回転位置に設定した場合には、サンプル注入通路19と廃液移送通路20とが連通し、図6のような回転位置に設定した場合には、緩衝液注入通路18と廃液移送通路20とが連通することとなる。
【0046】
なお、本例においては、各通路が90度間隔、即ち等間隔で円筒凹部22に連通しているものを示してあるが、本発明はこのような配置に限定されることはない。後述するように、計量流路23は、サンプル液を計量する機能に加え、サンプル液注入通路19と廃液移送通路20とを連通させる機能、緩衝液注入通路18と主通路14との連通させる機能を有していれば十分であるから、上記2つの連通が達成される構成であれば、どのような配置であっても良い。例えば、図7に示すように、サンプル注入通路19が円筒凹部21に開口している点を点A、廃液移送通路20が円筒凹部21に開口している点を点B、緩衝液注入通路18が円筒凹部21に開口している点を点C、主通路14が円筒凹部21に開口している点を点D、円筒凹部21の中心を点Oとすると、角AOB=角CODの関係を有する配置であり、且つ、計量流路23が角AOB(=角COD)の角度をもって形成されていれば、上記2つの連通が達成される。よって、角AOB(=角COD)が0度以外の全ての角度において、本例における上記2つの連通が可能である。勿論角AOB(=角COD)を180度として、図8に示すように計量流路23を直線としても可能である。ただし、緩衝液注入通路18を直接廃液移送通路20に連通したい場合や、サンプル注入通路19を直接主通路14に連通したい場合も想定されるため、図1に示すように各通路を等間隔に配置するのが最も好ましい。
【0047】
上記構成の標的物質検出装置100において、以下にその作動につき説明する。
【0048】
本例では、土壌中のPCBを間接競合法により検出する場合について説明する。最初に、PCBの混入が疑われる土壌を試料として採取し、適当な方法で試料から液を抽出する。その後、その液に蛍光標識が結合した抗PCB抗体を所定量混入させてサンプル液とする。この場合において、サンプル液中にPCB(抗原)が存在する場合には、抗PCB抗体と抗原抗体反応を起こし、これらが結合して特異的結合体を形成する。
【0049】
次に、計量ハウジング22を、図9に示すように、即ち計量流路23によって緩衝液注入通路18と主通路14とが連通するように回転させ、その位置で固定する。その後、緩衝液用のシリンジポンプ52を駆動させて、緩衝液用シリンジユニット50より緩衝液を送出する。すると、緩衝液は、緩衝液用シリンジユニット50から緩衝液用開口部18aを通って緩衝液注入通路18に侵入する。さらに緩衝液液は、緩衝液注入通路18から計量ハウジング22の計量流路23内に侵入し、さらに主通路14に侵入する。このようにして緩衝液を主通路14まで流し、図10に示すように一旦主通路14内を緩衝液で満たす。主通路14を越えた余剰の緩衝液は、廃液タンク17に達し、該廃液タンク17にて貯留される。
【0050】
主通路14が緩衝液で満たされた後、緩衝液用シリンジポンプ52の駆動を停止し、緩衝液の供給を停止する。次いで、計量ハウジングを図11に示すように、即ち計量流路23によってサンプル注入通路19と廃液移送通路20とが連通するように回転させ、その位置で固定する。その後、サンプル用シリンジ70を使って上記のように調整したサンプル液を送出する。すると、サンプル液は、サンプル用シリンジ70からサンプル用開口19aを通ってサンプル注入通路19に流れる。さらにサンプル液は計量流路23を流れ、廃液移送通路20に侵入する(図12参照)。
【0051】
サンプル液が少なくとも計量流路23を満たした後に、サンプル用シリンジ70からのサンプルの供給を止める。その後、計量ハウジング22を図13に示すように、即ち計量流路23によって緩衝液注入通路18と主通路14とが連通するように再び回転させ、その位置で固定する。その後、緩衝液用シリンジポンプ52を駆動させて、緩衝液用シリンジユニット50より緩衝液を送出する。すると、緩衝液は、緩衝液用シリンジ51から緩衝液用開口部18aを通って緩衝液用通路18に侵入する。そして、緩衝液はさらに計量流路23に侵入する(図14参照)。この場合において、前記工程で計量流路23がサンプル液で満たされているため、この緩衝液の送出により、計量流路23内のサンプル液が押出され、主通路14に流れる。そして、主通路14中の気泡トラップ部15で一旦気泡抜きを行った後、反応検出部16に緩衝液とともに導入される。
【0052】
なお、前述したように、サンプル液内のPCB(抗原)は、抗PCB抗体と特異的結合体を形成している。一方、反応検出部16には擬似抗原が固着されている。従って、特異的結合体を形成しているPCB(抗原)は、その相手側の抗PCB抗体が擬似抗原と反応することはできず、そのまま反応検出部16を通過する。一方、PCB(抗原)と特異的結合していない残余の抗PCB抗体は、反応検出部16の擬似PCB抗原と特異的結合し、反応検出部16に捕捉される。
【0053】
この場合において、捕捉された抗PCB抗体には、蛍光標識が結合されているため、この蛍光標識を検出することによって、PCB(抗原)の量と相関を持って捕捉された抗PCB抗体の蛍光量が測定でき、この蛍光量からPCBを定量することができる。
【0054】
以上のように、本例によれば、標的物質検出装置100を構成するチップ本体10に計量手段(計量ハウジング22)を設けたため、チップ本体10とは別に計量手段を設ける必要がなく、検出装置全体をコンパクトに構成することができる。また、計量手段には、所定量のサンプル液を計量する計量空間(計量流路23)が設けられており、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量できるため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。よって、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態における、標的物質検出装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態における、チップ本体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、緩衝液注入通路と主通路とが連通する状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、サンプル注入通路と主通路とが連通する状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、サンプル注入通路と廃液移送通路とが連通する状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、緩衝液注入通路と廃液移送通路とが連通する状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態において、各通路と計量流路との角度関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態において、計量流路が直線である場合の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態において、計量流路により緩衝液注入通路が主通路と連通している状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態において、緩衝液が緩衝液注入通路から計量流路を経て主通路へと流通する状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態において、主通路に緩衝液が流通している状態で、計量流路によりサンプル液注入通路が廃液移送通路とを連通する状態を示す図である。
【図12】図11に示す状態において、サンプル液がサンプル注入通路から計量流路を経て廃液移送通路へと流通する状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態において、計量流路にサンプル液が満たされた状態で、計量流路により緩衝液注入通路と主通路とを連通する状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態において、緩衝液を緩衝液注入通路から流すことにより、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流す状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10:チップ本体、 11:上プレート、 12:本体プレート、 13:下プレート、 14:主通路、 15:気泡トラップ部、 16:反応検出部、 17:廃液タンク、 18:緩衝液注入通路、 19:サンプル液注入通路、 20:廃液移送通路、 21円筒凹部、 22:計量ハウジング、 23:計量流路、 50:緩衝液用シリンジユニット、 51:緩衝液用シリンジ、 52:シリンジポンプ、 70:サンプル液用シリンジ、 100:標的物質検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液中の標的物質を検出する標的物質検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応等を利用して、サンプル液中から目的とする標的物質を検出する技術が従来より開発されてきている。検出対象となる標的物質は、用途に応じて様々なものが考えられ、近年では、環境汚染を引き起こす原因ともなる環境負荷物質、例えば、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどを検出する場合にも応用される。
【0003】
このような標的物質を検出する検出装置として、特許文献1に記載の装置が従来から知られている。この文献に記載の装置は、チップ本体にサンプル液を流す第1流路、マーカーを流す第2流路、反応流路を形成し、第1流路と、第2流路及び反応流路とを立体的に配置したものである。
【特許文献1】特開2003-114229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術も含め、従来の標的物質検出装置においては、効率的な検出を行うために、反応部での反応に見合った量のサンプル液を計量し、計量した分だけを反応部に送出する必要がある。この計量は、従来では、サンプル液を流すシリンジポンプの駆動時間を一定としておき、一定時間経過したらシリンジポンプの駆動を停止して、流した時間分で計量を行っていた。
【0005】
しかしながら、計量するに当たりシリンジポンプの駆動・停止を短時間で制御することは困難であり、特に少量の計量をする上では計量誤差が大きくなるという問題があった。とりわけ、近年の地球規模の環境保護動向から、現場ですぐさま環境負荷物質の検出ができるようなオンサイト型環境負荷物質検出装置が要望されており、斯かる要望を実現するためには、現場で誰もが簡単に環境負荷物質を検出できるように、装置構成をコンパクトにまとめる必要がある。装置構成をコンパクトにまとめるためには、反応部も小さくする必要があり、ひいてはこの小さな反応部に送り込むサンプル液量もわずかなものとなる。ところが、従来のシリンジポンプ駆動時間制御による計量では、このわずかな計量を行うことは困難であり、オンサイト型環境負荷物質検出装置に適用することは難しいものと考えられる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために講じた請求項1の発明は、
標的物質の混入が疑われるサンプル液から標的物質を検出する標的物質検出装置であって、
少なくともサンプル液を含む流体が流通する主通路が形成されたチップ本体と、
該主通路中に形成され、該主通路を流通するサンプル液と反応してその反応の結果から標的物質を定量的に検出する反応検出部と、
前記チップ本体に設けられ、サンプル液が注入されるサンプル液注入通路と、
前記主通路と前記サンプル液注入通路との間の部分に設けられ、所定量のサンプル液を計量する計量空間が形成された計量手段と、
を具備することを特徴とする、標的物質検出装置としたことである。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1において、
前記計量手段は、所定の流路体積を有する計量流路が形成された計量ハウジングを具備し、
該計量ハウジングは、前記計量流路が前記主通路に連通しているときには前記サンプル液注入通路とは遮断され、前記計量流路が前記サンプル液注入通路に連通しているときには前記主通路とは遮断されるように移動可能とされていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2において、
緩衝液が注入される緩衝液注入通路が前記チップ本体に形成され、該緩衝液注入通路は、前記計量流路が前記主通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記主通路に連通されるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3において、
前記緩衝液注入通路には、緩衝液を送出する送液ポンプ手段が接続されており、前記緩衝液注入通路が前記計量流路を介して前記主通路に連通されているときに前記送液ポンプ手段が駆動することによって、前記計量流路で計量されたサンプル液が緩衝液と共に前記主通路に流れることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、
前記チップ本体には、余剰のサンプル液及び緩衝液を貯留する廃液部及び、該廃液部に連通する廃液通路が形成されており、
前記廃液通路は、前記計量流路が前記サンプル注入通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記サンプル注入通路に連通されるように形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5において、
前記廃液部内には、余剰の検体液及び緩衝液を吸収する吸収部材が配設されてなることを特徴としている。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項において、
主通路の途中に設けられ、主通路中を流れる流体中の気泡を除去する気泡除去手段を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記請求項1の発明によれば、標的物質検出装置を構成するチップ本体に計量手段を設けたため、チップ本体とは別に計量手段を設ける必要がなく、検出装置全体をコンパクトに構成することができる。また、本発明の計量手段には、所定量のサンプル液を計量する計量空間が設けられており、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量できるため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。よって、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、計量手段を計量ハウジングで構成し、この計量ハウジング内に所定の流路体積を有する計量流路が形成されている。そして、この計量流路は、主通路とサンプル注入通路と排他的に連通される。従って、まずサンプル注入通路と計量流路とを連通させて、サンプル注入通路から注入されるサンプル液で計量流路を満たし、その後、主通路と計量流路とを連通させて、計量したサンプル液を主通路に導出する。これにより、一定量のサンプル液を確実に主通路に流すことができる。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、緩衝液が注入される緩衝液注入通路がチップ本体に形成されいる。この緩衝液注入通路は、計量流路と主通路が連通しているときに、計量流路を介して主通路に連通されているため、緩衝液注入通路を流れる緩衝液が計量流路中のサンプル液を押出して、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流入させることができる。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、緩衝液注入通路に緩衝液の送液ポンプ手段が接続されているため、この送液ポンプ手段を駆動させることによって、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流入させることができる。また、送液ポンプ手段による定速送液により、主通路に一定の流量でサンプル液を流すことができる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、チップ本体には、余剰のサンプル液や緩衝液を貯留する廃液部と、この廃液部に連通した廃液通路が形成されている。そして、この廃液通路は、計量流路とサンプル注入通路とが連通しているときに、計量流路を介してサンプル注入通路に連通されている。したがって、サンプル注入通路から計量流路にサンプル液を流す際に、目標とする量よりも多くのサンプル液を流してしまったとしても、余剰のサンプル液は廃液通路側に流れ、常に一定のサンプル液を計量流路で計量することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、廃液通路及び廃液部をチップ本体に設けたため、これらをチップ本体とは別に設ける必要がない。従って、標的物質検出装置をよりコンパクトに構成できる。
【0020】
また、請求項6の発明によれば、廃液部内にサンプル液や緩衝液を吸収する吸収部材が配設されているので、廃液部における廃液が安定し、逆流や漏れを防ぐことができる。
【0021】
また、請求項7の発明によれば、主通路の途中に気泡除去手段を設けたので、反応部での反応においてサンプル液中の気泡による反応阻害を防止し、誤検出の抑制に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の標的物質検出装置は、チップ本体を有し、このチップ本体には、主通路が形成されている。この主通路には、少なくともサンプル液を含む流体が流通する。「少なくともサンプル液を含む流体」とは、サンプル液のみからなる流体及び、サンプル液と緩衝液その他の液との混合液を含む意味である。また、ここで、「サンプル液」とは、標的物質が含まれると思われる試料と、抗体あるいは擬似抗原等の、測定(検出)方法に必要な試薬を定量混合した液をいう。
【0023】
また、主通路には反応検出部が形成されている。この反応検出部では、主通路を流通するサンプル液と反応する。例えば、反応検出部に抗体を固着させ、サンプル液に標的物質(抗原)及び反応検出部の抗体と反応する擬似標的物質を混合したものを用い、反応検出部で反応させる。この際、擬似標的物質には予め外部からの刺激などで何らかの信号を出す標識を付加しておく。標識としては、一般的には光励起による蛍光や、発色、ラジオアイソトープなどが用いられる。このような反応形態において、反応検出部の抗体には、標的物質と擬似標的物質とが共に結合するが、それぞれの存在量によってそれぞれの結合量が決定されるため、その量を擬似抗原からの信号によって知ることができる。このようにして標的物質を定量する方法を直接競合法と呼ぶ。
【0024】
また、サンプル液中に標的物質及びこの標的物質と抗原抗体反応を引き起こす抗体を混入させておくと、標的物質と抗体とが抗原抗体反応を起こし、サンプル液中で特異的結合体を形成する。一方、反応検出部には、標的物質と抗原抗体反応を起こす擬似抗原を固着しておく。この状態において、サンプル液を主通路に流すと、上記特異的結合体は反応検出部で捕捉されずにそのまま通過するが、特異的結合体を形成していない抗体は、標的物質との存在量によって決まる割合で反応検出部の擬似抗原とも特異的結合を起こし、反応検出部に捕捉される。捕捉された抗体量は、予め抗体に信号を出す標識を付けておく。すると、その信号から標的物質を定量することができる。即ち、サンプル液中の抗体の結合部位を標的物質と反応検出部の擬似抗原とで取り合う形となるが、それぞれの占有割合は、それぞれの存在量で決まるため、抗体に結合した擬似抗原を定量することで、標的物質を定量することができる。このような方法を、間接競合法と呼ぶ。
【0025】
つまり、本発明において、反応検出部に抗体を固定する場合は、直接競合法により反応させることになり、反応検出部に擬似抗原を固定する場合は、間接競合法により反応させることになる。直接競合法は、サンプル液中の擬似抗原に標識を付加するが、間接競合法は、サンプル中の抗体に標識を付加する。
【0026】
反応検出部で捕捉される標的物質や擬似抗原、或いは抗体の捕捉形態は特に限定されないが、好適には、捕捉されるべき物質と特異的結合を形成する捕捉物質が該反応検出部に固定されているような形態が例示される。特異的結合を形成する例としては、抗原抗体反応等の免疫化学反応による特異的結合、相補的な核酸同士のハイブリダイゼーションによる特異的結合が挙げられる。捕捉物質を取り付ける方法としては、反応検出部の通路部分に直接捕捉物質を固定する方法や、捕捉物質が沈着したメンブレンなどを反応部の通路部分に固定する方法が挙げられる。
【0027】
また、本発明においては、反応検出部における反応の結果から標的物質を定量的に検出するものである。ここで、どのようにして反応の結果から標的物質を定量するかは、特に限定されない。例えば、上述したように擬似抗原か或いは抗体に付加された標識からの信号量で定量することが可能である。標識としては、蛍光標識、化学発光標識、放射性同位体など公知のものを利用できる。また、標識を用いない場合には、SPR(表面プラズモン共鳴)などを用いて定量することもできる。
【0028】
また、チップ本体には、計量手段が設けられている。この計量手段は、所定量のサンプル液を計量するための計量空間が形成されている。計量空間は、一定の容積のサンプル液を貯留可能な空間であり、必ずしも閉じられた空間でなくても良い。一例として、カップ状の凹部空間のように計量空間を形成しても良い。この場合、カップ状の凹部空間にサンプル液が満充填された場合、その容積をもって計量することができる。それ以上の量のサンプル液が凹部空間に供給された場合には、単にオーバーフローするのみであり、計量することができる量は変わらない。また、後述するように、計量空間を、一定の容積を持つ流路空間としても良い。この場合、流路空間にサンプル液が流通したとき、その流路空間の容積をもって計量することができる。それ以上のサンプル液が流路空間に流通した場合には、順次別の流路(例えば廃液通路)に排出しておけばよく、計量することができる量は変わらない。
【0029】
本発明において、サンプル液中の測定試料としては、本発明の目的に沿う限りにおいて、どのような起源由来のものであっても良い。例えば、環境試料・細胞・培養物・組織・体液・尿・血清及び生検試料等から得ることができる。このうち、環境試料としては、工場跡地等から採取した土壌や、河川から採取した水等が例示される。また、採取したものを使用しても良いし、検出し易いように所定の加工を施したものであっても良い。
【0030】
標的物質としては、化学物質・タンパク質等の高分子・DNA断片・微生物またはウィルス及びその断片・ホルモン等、あらゆる物質が対象となりうる。例えば、土壌中に含まれる毒性物質(PCB、ダイオキシンなど)や、油性物質(重油)などの環境汚染の要因となりうる物質、或いは、河川の水に含まれる病原性大腸菌の菌体等が好適に例示される。
【0031】
また、サンプル液中の試料は、反応部にて効果的に反応を生じさせるための適当な調整を行うことができる。例えば、土壌中のPCBを標的物質として検出しようとする場合には、その土壌から適当な方法により溶液成分のみを抽出して用いることもできる。
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本例における標的物質検出装置の全体構成図である。図1からわかるように、本例における標的物質検出装置100は、チップ本体10と、緩衝液用シリンジユニット50と、サンプル液用シリンジ70とを備えて構成されている。チップ本体10は、図1においては平面視で示してあり、矩形平板状に構成されている。チップ本体10の大きさは、おおよそ長さ約50mm、幅約30mm、厚さ約5mm程度に形成される。蛍光検出による場合のチップ本体10の材料は、安価で低自家蛍光のアクリル樹脂等が好適に使用される。
【0034】
図2は、本例における本体チップ10の断面図である。チップ本体10は、上プレート11、本体プレート12及び下プレート13の3枚のプレートが積層された状態で構成されており、本体プレート12の上面に上プレート11が、本体プレート12の下面に下プレート13が、それぞれ接着などの方法により固着されている。
【0035】
図1及び図2に示すように、チップ本体10の本体チップ12には、主通路14が形成されている。この主通路14は、図1を見ると直線的に形成されているが、特にこれに限定される必要はなく、必要に応じて上下または左右に蛇行していても良い。また、この主通路14の途中には、気泡トラップ部15及び反応検出部16が介装されている。なお、説明の便宜上、主通路14のうち、気泡トラップ部15よりも図1において左側の部分を第1主通路14a、気泡トラップ部15よりも図1において右側の部分を第2主通路14bと呼ぶ。
【0036】
第1主通路14aは、図2に示すように本体チップ12の内部に形成されている。また、第2主通路14bは、本体チップ12の図示下面側に溝状に形成されている。そして、第1主通路14aの一端と第2主通路14bの一端との間に形成される気泡トラップ部15は、本体プレート12の上下面を貫通するように円筒形状の孔として形成される。図2からわかるように、第1主通路14aは、気泡トラップ部15のほぼ中央位置の側周面に、一方第2主通路14bは、気泡トラップ部15の下側の側周面にそれぞれ連通している。このような構成であるため、気泡トラップ部15を挟んで第1主通路14aは第2主通路14bよりも高い位置に配置されていることとなる。従って、例えば第1主通路14aから流れてきた流体は、気泡トラップ部15に侵入した後に第2主通路14bに流れるが、このとき流体中に混在する気泡は、気泡トラップ部15で浮力により上昇し、気泡トラップ部15の上方部分に滞留するため、第2主通路14bには流れないようになる。このようにして、気泡トラップ部15で流体中の気泡を主通路から取り除くことができる。
【0037】
第2主通路14bの途中には、反応検出部16が形成されている。反応検出部16は、第2主通路14bを流れる流体中の標的物質または標的物質の存在に関連する物質を捕捉するための捕捉物質が取り付けられている。なお、本例においては、間接競合法による検出の例を説明するため、反応検出部16にて補足される物質は、標的物質ではなく、未反応の抗体である。そして、捕捉物質としては、本例においては擬似的に構成した抗原(擬似抗原)を使用する。この擬似抗原は、通常の抗原と同様に、抗体と反応して特異的結合体を形成するものである。
【0038】
本体チップ12には、第2主通路14bの端部(図1において右端部)において廃液タンク17が形成されている。この廃液タンク17は、第2主通路14bから流れてきた流体などを廃液として貯留しておく部分であり、内部に液体浸透性の部材(高分子吸収材など)を配置しておくと、より廃液貯留能力が向上する。
【0039】
また、図1に示すように、本体プレート12には、緩衝液注入通路18が形成されている。この緩衝液注入通路18は、その一端が本体チップ10から開口した緩衝液用開口部18aを形成しており、この緩衝液用開口部18aに緩衝液用シリンジユニット50が連通している。
【0040】
緩衝液用シリンジユニット50は、緩衝液を送出するためのシリンジ51と、そのシリンジを駆動させるためのシリンジポンプ52とが組み合わされたものであり、自動でシリンジ51を駆動させて、緩衝液を一定速度で送出するものである。したがって、シリンジユニット50を駆動すると、該シリンジユニット50から送出される緩衝液が緩衝液用開口部18aから緩衝液注入通路18に導入される。
【0041】
また、本体プレート12には、サンプル注入通路19が形成されている。このサンプル注入通路19は、その一端が本体チップ10から開口したサンプル用開口部19aを形成しており、このサンプル用開口部19aにサンプル用シリンジ70が連通している。
【0042】
さらに、本体プレート12には、廃液移送通路20が形成されている。この廃液移送通路20の一端は、本体チップ10に形成された廃液タンク17に連通している。
【0043】
図1及び図2からわかるように、本体プレート12には、円筒形状の凹部21が形成されている。この円筒凹部21内には、円筒状の計量ハウジング22が嵌まり込むように取り付けられている。この計量ハウジング22は、手動的または自動的に円筒凹部21内で回転駆動するようにされている。自動的に回転駆動させるためには、例えばステッピングモータ等の回転駆動手段を計量ハウジング22に同軸的に設置しておけば良い。
【0044】
計量ハウジング22の内部には、図に示すように、計量流路23が形成されている。この計量流路23は、図1の平面視で略くの字状になるように、計量ハウジング22の中心から90度のなす角で側周面に開口して延在するよう形成されている。
【0045】
そして、この計量ハウジング22が嵌め込まれている円筒凹部21には、上記した主通路14(第1主通路14a)、緩衝液注入通路18、サンプル液注入通路19、廃液移送通路20の各端部が連通されている。本例においては、これら4つの通路は、円筒凹部21に等ピッチ角度で、すなわち90度間隔で連通している。また、これらの4つの通路が円筒凹部21と連通する部分の高さ位置は、該円筒凹部21に計量ハウジング22が嵌まり込んだ際にこの計量ハウジング22の側周面に開口した計量流路23の開口部分の高さ位置と等しくなるような高さ位置に設定される。このように、各通路と計量流路23との高さ位置を合わせ、なおかつ計量流路23の開口部が90度のなす角で計量ハウジング23の側周面に開口するとともに、各通路が90度間隔で円筒凹部21に連通する構成であるため、計量ハウジング22の回転位置によって各通路のうちの所定の2つの通路が計量流路を介して連通することになる。例えば、計量ハウジング22を図3のような回転位置に設定した場合には、緩衝液注入通路18と主通路14とが連通し、図4のような回転位置に設定した場合には、サンプル注入通路19と主通路14とが連通し、図5のような回転位置に設定した場合には、サンプル注入通路19と廃液移送通路20とが連通し、図6のような回転位置に設定した場合には、緩衝液注入通路18と廃液移送通路20とが連通することとなる。
【0046】
なお、本例においては、各通路が90度間隔、即ち等間隔で円筒凹部22に連通しているものを示してあるが、本発明はこのような配置に限定されることはない。後述するように、計量流路23は、サンプル液を計量する機能に加え、サンプル液注入通路19と廃液移送通路20とを連通させる機能、緩衝液注入通路18と主通路14との連通させる機能を有していれば十分であるから、上記2つの連通が達成される構成であれば、どのような配置であっても良い。例えば、図7に示すように、サンプル注入通路19が円筒凹部21に開口している点を点A、廃液移送通路20が円筒凹部21に開口している点を点B、緩衝液注入通路18が円筒凹部21に開口している点を点C、主通路14が円筒凹部21に開口している点を点D、円筒凹部21の中心を点Oとすると、角AOB=角CODの関係を有する配置であり、且つ、計量流路23が角AOB(=角COD)の角度をもって形成されていれば、上記2つの連通が達成される。よって、角AOB(=角COD)が0度以外の全ての角度において、本例における上記2つの連通が可能である。勿論角AOB(=角COD)を180度として、図8に示すように計量流路23を直線としても可能である。ただし、緩衝液注入通路18を直接廃液移送通路20に連通したい場合や、サンプル注入通路19を直接主通路14に連通したい場合も想定されるため、図1に示すように各通路を等間隔に配置するのが最も好ましい。
【0047】
上記構成の標的物質検出装置100において、以下にその作動につき説明する。
【0048】
本例では、土壌中のPCBを間接競合法により検出する場合について説明する。最初に、PCBの混入が疑われる土壌を試料として採取し、適当な方法で試料から液を抽出する。その後、その液に蛍光標識が結合した抗PCB抗体を所定量混入させてサンプル液とする。この場合において、サンプル液中にPCB(抗原)が存在する場合には、抗PCB抗体と抗原抗体反応を起こし、これらが結合して特異的結合体を形成する。
【0049】
次に、計量ハウジング22を、図9に示すように、即ち計量流路23によって緩衝液注入通路18と主通路14とが連通するように回転させ、その位置で固定する。その後、緩衝液用のシリンジポンプ52を駆動させて、緩衝液用シリンジユニット50より緩衝液を送出する。すると、緩衝液は、緩衝液用シリンジユニット50から緩衝液用開口部18aを通って緩衝液注入通路18に侵入する。さらに緩衝液液は、緩衝液注入通路18から計量ハウジング22の計量流路23内に侵入し、さらに主通路14に侵入する。このようにして緩衝液を主通路14まで流し、図10に示すように一旦主通路14内を緩衝液で満たす。主通路14を越えた余剰の緩衝液は、廃液タンク17に達し、該廃液タンク17にて貯留される。
【0050】
主通路14が緩衝液で満たされた後、緩衝液用シリンジポンプ52の駆動を停止し、緩衝液の供給を停止する。次いで、計量ハウジングを図11に示すように、即ち計量流路23によってサンプル注入通路19と廃液移送通路20とが連通するように回転させ、その位置で固定する。その後、サンプル用シリンジ70を使って上記のように調整したサンプル液を送出する。すると、サンプル液は、サンプル用シリンジ70からサンプル用開口19aを通ってサンプル注入通路19に流れる。さらにサンプル液は計量流路23を流れ、廃液移送通路20に侵入する(図12参照)。
【0051】
サンプル液が少なくとも計量流路23を満たした後に、サンプル用シリンジ70からのサンプルの供給を止める。その後、計量ハウジング22を図13に示すように、即ち計量流路23によって緩衝液注入通路18と主通路14とが連通するように再び回転させ、その位置で固定する。その後、緩衝液用シリンジポンプ52を駆動させて、緩衝液用シリンジユニット50より緩衝液を送出する。すると、緩衝液は、緩衝液用シリンジ51から緩衝液用開口部18aを通って緩衝液用通路18に侵入する。そして、緩衝液はさらに計量流路23に侵入する(図14参照)。この場合において、前記工程で計量流路23がサンプル液で満たされているため、この緩衝液の送出により、計量流路23内のサンプル液が押出され、主通路14に流れる。そして、主通路14中の気泡トラップ部15で一旦気泡抜きを行った後、反応検出部16に緩衝液とともに導入される。
【0052】
なお、前述したように、サンプル液内のPCB(抗原)は、抗PCB抗体と特異的結合体を形成している。一方、反応検出部16には擬似抗原が固着されている。従って、特異的結合体を形成しているPCB(抗原)は、その相手側の抗PCB抗体が擬似抗原と反応することはできず、そのまま反応検出部16を通過する。一方、PCB(抗原)と特異的結合していない残余の抗PCB抗体は、反応検出部16の擬似PCB抗原と特異的結合し、反応検出部16に捕捉される。
【0053】
この場合において、捕捉された抗PCB抗体には、蛍光標識が結合されているため、この蛍光標識を検出することによって、PCB(抗原)の量と相関を持って捕捉された抗PCB抗体の蛍光量が測定でき、この蛍光量からPCBを定量することができる。
【0054】
以上のように、本例によれば、標的物質検出装置100を構成するチップ本体10に計量手段(計量ハウジング22)を設けたため、チップ本体10とは別に計量手段を設ける必要がなく、検出装置全体をコンパクトに構成することができる。また、計量手段には、所定量のサンプル液を計量する計量空間(計量流路23)が設けられており、この計量空間に満充填されたサンプル液をもって所定量と計量できるため、計量が簡便になるとともに、微量を計量する場合であっても、計量空間を目的とする量に合わせて設計しておけば的確に計量することができる。よって、微量のサンプル液の計量を精度良く行うことができるとともに、コンパクトな構成としてオンサイト型環境負荷物質検出装置に適用可能な標的物質検出装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態における、標的物質検出装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態における、チップ本体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、緩衝液注入通路と主通路とが連通する状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、サンプル注入通路と主通路とが連通する状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、サンプル注入通路と廃液移送通路とが連通する状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における本体プレートにおいて、緩衝液注入通路と廃液移送通路とが連通する状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態において、各通路と計量流路との角度関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態において、計量流路が直線である場合の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態において、計量流路により緩衝液注入通路が主通路と連通している状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態において、緩衝液が緩衝液注入通路から計量流路を経て主通路へと流通する状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態において、主通路に緩衝液が流通している状態で、計量流路によりサンプル液注入通路が廃液移送通路とを連通する状態を示す図である。
【図12】図11に示す状態において、サンプル液がサンプル注入通路から計量流路を経て廃液移送通路へと流通する状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態において、計量流路にサンプル液が満たされた状態で、計量流路により緩衝液注入通路と主通路とを連通する状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態において、緩衝液を緩衝液注入通路から流すことにより、サンプル液を緩衝液とともに主通路に流す状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10:チップ本体、 11:上プレート、 12:本体プレート、 13:下プレート、 14:主通路、 15:気泡トラップ部、 16:反応検出部、 17:廃液タンク、 18:緩衝液注入通路、 19:サンプル液注入通路、 20:廃液移送通路、 21円筒凹部、 22:計量ハウジング、 23:計量流路、 50:緩衝液用シリンジユニット、 51:緩衝液用シリンジ、 52:シリンジポンプ、 70:サンプル液用シリンジ、 100:標的物質検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質の混入が疑われるサンプル液から標的物質を検出する標的物質検出装置であって、
少なくともサンプル液を含む流体が流通する主通路が形成されたチップ本体と、
該主通路中に形成され、該主通路を流通するサンプル液中と反応してその反応の結果から標的物質を定量的に検出する反応検出部と、
前記チップ本体に設けられ、サンプル液が注入されるサンプル液注入通路と、
前記主通路と前記サンプル液注入通路との間の部分に設けられ、所定量のサンプル液を計量する計量空間が形成された計量手段と、
を具備することを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記計量手段は、所定の流路体積を有する計量流路が形成された計量ハウジングを具備し、
該計量ハウジングは、前記計量流路が前記主通路に連通しているときには前記サンプル液注入通路とは遮断され、前記計量流路が前記サンプル液注入通路に連通しているときには前記主通路とは遮断されるように移動可能とされていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
緩衝液が注入される緩衝液注入通路が前記チップ本体に形成され、該緩衝液注入通路は、前記計量流路が前記主通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記主通路に連通されるように形成されていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記緩衝液注入通路には、緩衝液を送出する送液ポンプ手段が接続されており、前記緩衝液注入通路が前記計量流路を介して前記主通路に連通されているときに前記送液ポンプ手段が駆動することによって、前記計量流路で計量されたサンプル液が緩衝液と共に前記主通路に流れることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項において、
前記チップ本体には、余剰のサンプル液及び緩衝液を貯留する廃液部及び、該廃液部に連通する廃液通路が形成されており、
前記廃液通路は、前記計量流路が前記サンプル注入通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記サンプル注入通路に連通されるように形成されていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記廃液部内には、余剰のサンプル液及び緩衝液を吸収する吸収部材が配設されてなることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
主通路の途中に設けられ、主通路中を流れる流体中の気泡を除去する気泡除去手段を具備することを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項1】
標的物質の混入が疑われるサンプル液から標的物質を検出する標的物質検出装置であって、
少なくともサンプル液を含む流体が流通する主通路が形成されたチップ本体と、
該主通路中に形成され、該主通路を流通するサンプル液中と反応してその反応の結果から標的物質を定量的に検出する反応検出部と、
前記チップ本体に設けられ、サンプル液が注入されるサンプル液注入通路と、
前記主通路と前記サンプル液注入通路との間の部分に設けられ、所定量のサンプル液を計量する計量空間が形成された計量手段と、
を具備することを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記計量手段は、所定の流路体積を有する計量流路が形成された計量ハウジングを具備し、
該計量ハウジングは、前記計量流路が前記主通路に連通しているときには前記サンプル液注入通路とは遮断され、前記計量流路が前記サンプル液注入通路に連通しているときには前記主通路とは遮断されるように移動可能とされていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
緩衝液が注入される緩衝液注入通路が前記チップ本体に形成され、該緩衝液注入通路は、前記計量流路が前記主通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記主通路に連通されるように形成されていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記緩衝液注入通路には、緩衝液を送出する送液ポンプ手段が接続されており、前記緩衝液注入通路が前記計量流路を介して前記主通路に連通されているときに前記送液ポンプ手段が駆動することによって、前記計量流路で計量されたサンプル液が緩衝液と共に前記主通路に流れることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項において、
前記チップ本体には、余剰のサンプル液及び緩衝液を貯留する廃液部及び、該廃液部に連通する廃液通路が形成されており、
前記廃液通路は、前記計量流路が前記サンプル注入通路に連通しているときに、前記計量流路を介して前記サンプル注入通路に連通されるように形成されていることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記廃液部内には、余剰のサンプル液及び緩衝液を吸収する吸収部材が配設されてなることを特徴とする、標的物質検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
主通路の途中に設けられ、主通路中を流れる流体中の気泡を除去する気泡除去手段を具備することを特徴とする、標的物質検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−3268(P2007−3268A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181776(P2005−181776)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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