説明

模型エンジンの電動スタータ装置

【課題】 第2のギアと第1のギアとの噛合部分の噛み合いが悪くなって、モータによるエンジン始動時にモータの回転力が第1のギアから第2のギアへの伝達が行われなくなりエンジン始動が行えなくなるといった問題が生じた。
【解決手段】 基台21に回転自在に軸支され回転することで模型エンジン1を始動するスタータシャフト24と、前記基台に取付けられたモータ22の回転力を減速して回転させるギア内に嵌合されたワンウェイベアリング25とから構成し、該ワンウェイベアリング内に前記スタータシャフトを軸支することで前記モータの回転力で前記模型エンジンを回転するようにした模型エンジンの電動スタータ装置において、前記ワンウェイベアリングの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支した模型エンジンの電動スタータ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを駆動源とする、特に、模型自動車のエンジンを始動するのに電動モータの駆動力を利用して始動するのに適した模型エンジンの電動スタータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンを搭載した、例えば、模型自動車に搭載したエンジンを始動する方法としては、エンジンのクランクシャフトを紐を引っ張ることにより回転させる手動式(リコイルスタート方式と呼ばれている)と、モータの回転力を利用して回転させる電動式の2種類がある。前記手動式によってエンジンを回転させる方法にあっては、紐を引っ張るための持ち手が車体の外側に露出しているために体裁が悪く、また、経年変化によって紐が切れてしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、近年はモータを駆動源とする電動式のスタータが多く使用されるようになってきた。その一例として、出願人会社が発売しているエンジンにモータを一体的に取付けたGS15Rエンジンがある。以下、このエンジンの詳細を図2,3と共に説明する。
【0004】
1は図示しないピストンに一端が軸支されたコンロッド11と、該コンロッド11における他端が軸受け11aを介して円板部12aに取付けられているピン12bに軸支されているクランクシャフト12を含む公知の模型エンジンである。なお、13はピストンの上下動によって回転する出力軸である。
【0005】
2は電動スタータ装置にして、基台21に電動モータ22が固定され、該モータ22の出力軸22aは基台21の裏面側に突出され、該出力軸22aにギア22bが取付けられている。前記基台21の前記モータ22が取付けられた面とは反対側の面には固定軸21aが突出され、該固定軸21aには前記ギア22bと噛合される内歯ギア(図示せず)と後述する第2のギア26と噛合される小ギア23aを有する第1のギア23が回転自在に軸支されている。なお、21bは後述するカバー27を基台21にネジ止めするためのネジ孔を有する突起である。
【0006】
前記基台21には軸受け孔21cが形成されており、この軸受け孔21cには薄い金属のパイプからなるスリーブ21dが嵌合固定されており、このスリーブ21dに2つの軸受け21eが嵌合固定されている。そして、この軸受け21eには鍔24aを有するスタータシャフト24の軸部が回転自在に軸支されている。おな、前記鍔24aには180度の間隔で前記エンジン1側の前記ピン12bが選択係合される溝24bが形成されている。
【0007】
前記スタータシャフト24の前記基台21より突出する部分にはワンウェイベアリング25を介して第2のギア26が回転自在に軸支されている。なお、ワンウェイベアリング25は外周が六角形に形成された回り止め部27aと円筒部27bとからなるワンウェイベアリング支持体27内に圧入されている。また、このワンウェイベアリング支持体27が挿入される第2のギア26の受け孔26aも六角形に形成されているので、第2のギア26が一方向に回転した時にはワンウェイベアリング25を介してスタータシャフト24が回転されるが、第2のギア26が他方向に回転した時にはワンウェイベアリング25によってスタータシャフト24は回転されない構造となっている。
【0008】
前記した如く基台21に取付けられた第1のギア21と第2のギア26からなる歯車群は、カバー28を基台21に取付けることで覆われ、電動スタータ装置2は完成する。そして、完成した電動スタータ装置2をエンジン1の開口部にOリング29を介してネジ止めして固定する。この時、スタータシャフト24の鍔24aに形成した溝25bにクランクシャフト12のピン12aが係合されるように組み付けて取付けは完了する。
【0009】
このように構成したスタータ装置2におけるモータ22に通電すると、ギア22bが回転されるので、第1のギア23を介して第2のギア26が回転する。該第2のギア26が回転されるとワンウェイベアリング25を介してスタータシャフト24が回転され、該スタータシャフト24における鍔24aの溝24bに係合されているピン12aを介してクランクシャフト12が回転されてエンジン1を始動する。
【0010】
そして、エンジン1が始動されクランクシャフト12に回転力が発生してスタータシャフト24に回転力が作用するが、このスタータシャフト24の回転力はワンウェイベアリング25で吸収されて第2のギア26に伝達されることはなく、従って、エンジン1の回転はスムーズに行われる。
【非特許文献1】2006年京商株式会社発行「CATALOG & HANDBOOK」の187頁「ENGINE MODELS」における「GS15Rエンジン」電動ユニット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記した従来のスタータ装置2にあっては、第2のギア26が取付けられているスタータシャフト24は2つの軸受け24cで軸支され、また、第2のギア26はスタータシャフト24に対してワンウェイベアリング25のみで軸支されているため、モータ22によって第2のギア26に回転力が加わった場合、および、エンジンが始動した後の走行時(特に、凹凸の激しい走行路)の振動によって、スタータシャフト24とワンウェイクラッチ25との間にガタが発生し、その結果、ワンウェイベアリング25の内部構造が損傷して前記ガタが大きくなる。これにより、第2のギア26と第1のギア23との噛合部分の噛み合いが悪くなって、モータ22によるエンジン始動時にモータの回転力が第1のギア23から第2のギア26への伝達が行われなくなりエンジン始動が行えなくなるといった問題が生じた。
【0012】
図4の表における改良前のテスト結果からも明らかなように、前記した従来例の3個のスタータ装置をモータによって連続して回転させエンジンカーにて実際に連続走行をした結果、第2のギア26と第1のギア23との噛合が滑ってモータの回転力をスタータシャフト24に伝達不能となるまでのテスト走行時間が1.5時間〜4時間と短い時間で使用不能となり、短時間でスタータ装置としての機能をなさなくなった。
【0013】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、第2のギアを基台に対してワンウェイベアリングや軸受けを介して軸受け状態とすることで、スタータシャフトとワンウェイベアリングや軸受けとの間でのガタを防止するようにしたので、長時間のエンジン駆動を行って走行しても良好なるエンジン始動が行える模型エンジンの電動スタータ装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の模型エンジンの電動スタータ装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、基台に回転自在に軸支され回転することで模型エンジンを始動するスタータシャフトと、前記基台に取付けられたモータの回転力を減速して回転させるギア内に嵌合されたワンウェイベアリングとから構成し、該ワンウェイベアリング内に前記スタータシャフトを軸支することで前記モータの回転力で前記模型エンジンを回転するようにした模型エンジンの電動スタータ装置において、前記ワンウェイベアリングの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項2の手段は、基台に回転自在に軸支され回転することで模型エンジンを始動するスタータシャフトと、前記基台に取付けられたモータの回転力を減速して回転させるギア内に嵌合されたワンウェイベアリングと軸受けとから構成し、該ワンウェイベアリングと軸受け内に前記スタータシャフトを軸支することで前記モータの回転力で前記模型エンジンを回転するようにした模型エンジンの電動スタータ装置において、前記軸受けの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は前記したように、ワンウェイベアリングの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにし、あるいは、軸受けの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を基台で軸支することで、ギアが前記基台に対して振動しないようにしたので、スタータシャフトとワンウェイベアリングや軸受けとの間でのガタが発生せず長時間のエンジン走行しても良好なるエンジン始動が行えるといった効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ワンウェイベアリングあるいは軸受けの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにした。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明に係る模型エンジンの電動スタータ装置の一実施例を図1と共に説明する。なお、図1において前記した従来例と同一符号は同一部材を示し、説明は省略する。
【0019】
本発明にあっては、前記した従来例における第2のギア26に挿入されるワンウェイベアリング支持体27内に軸受け25aと共にワンウェイベアリング25が圧入され、該ワンウェイベアリング25の一端が第2のギア26の端面より突出した突出部25aが形成されている。そして、このワンウェイベアリング25の突出部25aを基台21のスリーブ21d内に挿入することが可能となっている。
【0020】
このように、ワンウェイベアリング25の突出部25aを基台21のスリーブ21d内に挿入することで、ワンウェイベアリング25は基台21に対して片持ち支持状態となり、スタータシャフト24はこの片持ち状態のワンウェイベアリング25内で回転することになる。従って、スタータシャフト24とワンウェイベアリング25との間の振動が小さくなってガタの発生が抑えられ、その結果、長時間の走行によっても前記ガタの発生による第2のギア26と第1のギア23との噛合部分の噛み合いに不都合が発生することがなく、エンジン始動の動作も良好に行えるものである。
【0021】
図4の表における改良後のテスト結果を見るに、前記した改良例の3個のスタータ装置を搭載したエンジンカーは長時間テスト走行した後であっても、エンジンの始動が良好に行える時間が全て10時間を越えるものであり、長時間のテスト走行でもスタータ装置としての機能を果たすことが明らかとなった。
【0022】
なお、前記した実施例では、第2のギア26の端面からワンウェイベアリング25の端部を突出させ、該突出した部分をスリーブ21d内に挿入したもので示したが、スリーブ21dに挿入する部分はワンウェイベアリング25に限定されるものではなく、軸受け25aを突出させ、この突出部分をスリーブ21d内に挿入したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る模型エンジンの電動スタータ装置の要部を示す断面図である。
【図2】従来における模型エンジンの電動スタータ装置の分解斜視図である。
【図3】同上の要部を示す断面図である。
【図4】従来品と本発明品の耐久試験を行った結果を示す表である。
【符号の説明】
【0024】
1 模型エンジン
2 電動スタータ装置
21 基台
24 スタータシャフト
25 ワンウェイベアリング
25a 軸受け
26 ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に回転自在に軸支され回転することで模型エンジンを始動するスタータシャフトと、前記基台に取付けられたモータの回転力を減速して回転させるギア内に嵌合されたワンウェイベアリングとから構成し、該ワンウェイベアリング内に前記スタータシャフトを軸支することで前記モータの回転力で前記模型エンジンを回転するようにした模型エンジンの電動スタータ装置において、前記ワンウェイベアリングの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにしたことを特徴とする模型エンジンの電動スタータ装置。
【請求項2】
基台に回転自在に軸支され回転することで模型エンジンを始動するスタータシャフトと、前記基台に取付けられたモータの回転力を減速して回転させるギア内に嵌合されたワンウェイベアリングと軸受けとから構成し、該ワンウェイベアリングと軸受け内に前記スタータシャフトを軸支することで前記モータの回転力で前記模型エンジンを回転するようにした模型エンジンの電動スタータ装置において、前記軸受けの一端を前記ギアから突出させ、該突出した部分を前記基台で軸支することで、前記ギアが前記基台に対して振動しないようにしたことを特徴とする模型エンジンの電動スタータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−309156(P2007−309156A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137318(P2006−137318)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(390024822)京商株式会社 (15)