説明

横引き戸装置における下レール

【課題】横引き戸装置における下レールを、戸体がガイドされるガイド姿勢とガイド溝が覆蓋する覆蓋姿勢とに変姿可能なものとし、操作性よく変姿できるように構成する。
【解決手段】下レール11を、外レール12のガイド溝12aに表、裏側レール体13、14がで構成される内レールとにより構成し、裏側レール体14が表裏方向に変位することにより、内レールが表、裏側覆蓋片13a、14a同士の間にドア体4のガイド体9をガイドするガイド姿勢と、覆蓋片同士13a、14aの隙間をなくしガイド溝12aを覆蓋する覆蓋姿勢とに変姿する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の出入り口部に設けられる横引き戸装置であって、特に戸体を開放したままの状態が維持されるような用途で設けられる横引き戸装置における下レールの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、横引き戸装置のなかには、戸体を上吊り式とし、戸体の下端から下方に突出するガイド体の下端部に振れ止め体を設け、該振れ止め体を床面に設けられる下レールのガイド溝に左右方向移動自在に嵌入させ、戸体の下端部が振れ止めされた状態で開閉作動するようにしたものがある。この場合に、下レールのガイド溝は、振れ止め体が嵌入可能な溝幅にする必要があるが、ガイド溝は、戸体が開放した状態では躯体開口部(出入り口部)に露出するため、上方に向けて開口するガイド溝に埃やゴミが溜ったり、通行者が躓いたりするという問題があり、これを防止するため、下レールのガイド溝幅をできるだけ狭くすることが要求される。そこで、例えば、振れ止め体の外径が大きいものを用いる場合では、下レールを床部に固定される外レールと該外レールに設けられる内レールとにより構成し、外レールに形成されるガイド溝の溝奥側は振れ止め体が嵌入できる溝幅とするが、ガイド溝の溝開口側の溝幅を内レールにより狭めるようにしたものが提唱されている。
一方、折畳み戸装置のような横引き戸装置を例えば店舗の躯体開口部に設ける場合のように、戸体を折り畳み状に開放して広く確保された躯体開口部を開放したまま使用することがあり、このような使用状態では、レール溝の溝幅が狭く形成されていても、埃、細かいゴミ、小石等が溜まりやすいうえ、ハイヒールの細いヒール部が落ち込んだりすることが考えられ改善が求められている。
【0003】
この改善策として、戸体の開放で外部に露出する下レールのガイド溝を別途用意した覆体により覆蓋すること(特許文献1)や、下レールを、凹部が形成された外レールと、ガイド溝が蟻溝状に形成された内レールとにより構成し、ガイド溝が上方を向く状態で内レールを外レールの凹部に内嵌させることにより戸体を移動自在に案内し、戸体の開放時に躯体開口部に露出する部位の内レールを、上下反転して外レールに内嵌させることにより、内レールのガイド溝の溝底片が外レールの凹部を塞ぐようにしたもの(特許文献2)が提唱されている。
【特許文献1】特開2000−73663号公報
【特許文献2】特許第3362058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1のものは、蓋体を別途用いる構成であるため、戸体を閉鎖する状態では蓋体を保管する場所が必要となるという問題があり、特許文献2のものは、蓋体を別途設ける必要はなくなるものの、戸体を開放した後、外レールから内レールを抜き出し、上下反転してから再度外レールに内レールを嵌め込むという一連の操作が必要となり、操作が面倒であるという問題がある。さらに、特許文献2のものでは、ガイド溝が蟻溝形状となって溝奥側よりも溝開口側の溝幅の方が小さくなっているので、ガイド溝内に埃やゴミが入り込んで溜まったような場合では、これを掃除する作業が困難になるという別な問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、戸体を左右方向に移動させることで建築物の躯体開口部を開放する横引き戸装置において、戸体の下端部にガイド体を設ける一方、ガイド体をガイドする下レールを床部に固定される外レールと、該外レールに設けられる内レールとにより構成するにあたり、外レールを、上方が開口するガイド溝と、ガイド溝の溝開口端部から戸体の表裏方向に延出する表裏一対の表、裏側延出片とにより構成する一方、内レールを、表側延出片に載置され、ガイド溝を表方向から覆う表側覆蓋片とガイド溝の表側溝側片に沿って延出する表側起立片とにより形成される表側レール体と、裏側延出片に載置され、ガイド溝を裏方向から覆う裏側覆蓋片とガイド溝の裏側溝側片に沿って延出する裏側起立片とにより形成される裏側レール体とにより構成し、戸体の開放で躯体開口部に露出する表、裏側レール体のうち、少なくとも一方のレール体をガイド溝内における表裏方向の変位が可能となるよう構成し、内レールが、表、裏側覆蓋片同士の間に戸体のガイド体をガイドする隙間を形成するガイド姿勢と、覆蓋片同士の隙間をなくしガイド溝を覆蓋する覆蓋姿勢とに変姿するように構成した横引き戸装置における下レールである。
請求項2の発明は、外レールと各表、裏側レール体との間には、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに姿勢保持する第一保持手段が設けられている請求項1に記載の横引き戸装置における下レールである。
請求項3の発明は、表、裏側レール体は、一方のレール体のみが変位する構成とし、他方のレール体は、底片がガイド溝の他方の溝側片から一方の溝側片に至るように形成されている請求項1または2に記載の横引き戸装置における下レールである。
請求項4の発明は、表裏方向に変位する一方のレール体に、他方のレール体に形成される底片に積層する底片を形成し、これら底片同士の間には、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに姿勢保持する第二保持手段が設けられている請求項3に記載の横引き戸装置における下レールである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、下レールを構成する内レールを簡単な操作でガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿させることができ、操作性のよい下レールとすることができる。
請求項2の発明とすることにより、内レール(表、裏側レール体)のガイド姿勢と覆蓋姿勢との各姿勢保持が確実になる。
請求項3の発明とすることにより、一方のレール体を変位するだけて内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿させることができ、しかも、ガイド溝に溜った埃やゴミの掃除を容易に行える。
請求項4の発明とすることにより、内レールのガイド姿勢と覆蓋姿勢とを一層確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1は建築物の躯体開口部に建て付けられた横引き戸装置の一種である折畳み式ドア装置であって、該折畳み式ドア装置1は、開口部四周に設けられたドア枠2に、複数枚(本実施の形態では六枚)のパネル体3を連結して構成されたドア体(戸体)4を吊持することにより構成されている。
【0008】
前記パネル体3は、本実施の形態では無色透明のガラス板材3aと、該ガラス板材3aの四周に一体的に固着されるアルミ型材で形成される上下框材3bおよび左右の框材3cとにより構成されている。そして、これら各パネル体3は、隣接するパネル体3同士の左右の框材3cを、間に中間框材5を組込むことにより互いに揺動自在に連結されている。このとき、中間框材5は、隣接するパネル体3同士の揺動連結部における揺動方向を、開口部を閉鎖するドア体4を基準としてドア体4の表裏何れか一方に規制して連結する構成となっており、図1において、左側から一枚目と二枚目、三枚目と四枚目、五枚目と六枚目の各パネル体3をそれぞれ連結する中間框材5は、揺動連結部を裏側(屋内側)に向けて突出させるように規制し、二枚目と三枚目、四枚目と五枚目の各パネル体をそれぞれ連結する中間框材5は、揺動連結部を表面側(屋外側)に向けて突出させるように規制する構成となっている。これによって、複数のパネル体3により構成されるドア体4は、各パネル体3をジグザグ状に折畳んだ姿勢にすることができるように構成されている。
【0009】
さらに、ドア体4は、戸先側に位置するパネル体3に戸先側縦框6が揺動自在に連結されるとともに、戸尻側に位置するパネル体3に戸尻側縦框7が揺動自在に連結され、戸先側縦框6には、把手6aや施錠具6bが設けられている。
そして、戸先側縦框6、二枚目と三枚目、四枚目と五枚目の各パネル体3を連結する中間框材5の上端部にはローラ部8aを備えた走行ローラ8が上方に向けて突出配設され、これら走行ローラ8が設けられる戸先側縦框6、中間框材5の下端部には、それぞれガイド体9が下方に向けて突出配設されている。尚、ガイド体9は、下方に向けて突出するガイド片9aと、該ガイド片9aの突出端部に設けられ、ガイド片9aの外径よりも長い径を有した振れ止めローラ9bとにより構成されている。
【0010】
一方、ドア枠2は、それぞれアルミ型材で構成された一対の左右枠体2a、2b、および、上レール10、下レール11とを枠組することで四角形状に形成されている。前記上レール10は、表裏方向に対向する一対の側片10aを備えて断面コ字形に形成されており、側片10aの内側面にそれぞれ表裏一対の走行部10bが形成されている。また、下レール11は、後述するように、凹溝状のガイド溝12aが形成された外レール12と、該外レール12に着脱自在に設けられる内レールとしての表裏一対の表、裏側レール体13、14とを備えて構成されている。
そして、ドア体4は、戸先側縦框6、一つおきの中間框材5に設けられた走行ローラ8のローラ部8aを上枠体10の表裏一対のレール部10aに移動自在に吊持するとともに、ガイド体9の振れ止めローラ9bをガイド溝12aに嵌入させ、戸尻側縦框7を戸尻側に位置する右枠体2bに、出没自在、かつ、抜止め状に嵌入させることでドア枠2に組込まれるように構成されている。
【0011】
このようにドア枠2に組込まれたドア体4は、戸先側縦框6の把手6aを把持して左右方向に移動させることにより、各パネル体3を連結する中間框材5の一つおきに設けられた走行ローラ8のローラ部9aがレール部10bを走行するとともに、前記中間框材5の下方に設けたガイド体9の振れ止めローラ9bがガイド溝12aによるガイドを受ける状態で左右方向に移動するように構成されている。これによって、ドア体4は、図1に示すように、中間框材5に対してパネル体3が左右隣接状に位置し、各パネル面が左右方向に並列してドア枠2内に形成される開口部を閉鎖する閉鎖姿勢と、各パネル体3が中間框材5による揺動規制に基づいてジグザグ状に折畳まれ、ドア枠2の左方(戸尻側)において各パネル面が近接対向して並列し、ドア枠2内(躯体開口部)を大きく開放する開放姿勢との間を変姿するように設定されている。
【0012】
さて、前記下レール11は、前述したように、外レール12を備えて構成されている。前記外レール12は、アルミ型材により形成される長尺体であって、上方が開口し、左右方向(開口幅方向)に連通する凹溝状のガイド溝12aを形成するべく、表裏一対の表、裏側溝側片12b、12cと、溝底片12dとを備えて構成されている。さらに、外レール12は、溝開口の端縁部であって、表、裏側溝側片12b、12cの上端縁からそれぞれ表、裏方向に延出する表、裏側延出片12e、12fが一体に形成されている。
さらに、外レール12は、各表、裏側延出片12e、12fの延出端縁部から上下方向に突出する表、裏側固定片部12g、12hが一体に形成されている。そして、外レール12は、これら表、裏側固定片部12g、12hの上端部を残して床部Fに埋設することにより、表、裏側延出片12e、12fの上面と床面とが略面一状態になる状態で床部Fに固定されている。また、前記表、裏側延出片12e、12fの表、裏側部位には、それぞれ下方に凹設された表、裏側係止凹部12i、12jがそれぞれ形成されている。
【0013】
一方、内レールを構成する表裏一対の表、裏側レール体13、14は、それぞれアルミ型材により形成される長尺体で構成されている。
前記表側レール体13は、外レール12の表側延出片12eに載置され、ガイド溝12aを表方向から覆う表側覆蓋片13aと、該表側覆蓋片13aの表裏方向中間部から下方に延出し、外レール12の表側溝側片12bに沿う表側起立片13bとによるT字形状部を備えて構成されている。そして、表側レール体13は、表側覆蓋片13aと表側起立片13bとで構成される表側のコーナー部を外レール12の表側溝側片12bと表側延出片12eとのコーナー部に沿わせ、表側覆蓋片13aの表側部位が表側延出片12eに載置する組込み状態とすることにより、表側覆蓋片13aの裏側部位がガイド溝12aの表裏方向中央部よりも表側部位を覆うように構成されている。
ここで、表側レール体13は、本実施の形態では、裏側レール体14に先行してガイド溝12aに組込まれるように構成されており、表側起立片13bには、ガイド溝12aの表側溝側片12bから裏側溝側片12cに達するように延出し、溝底片12dに近接対向状に配される表側底片13cが形成され、さらに、該表側底片13cの延出端部には裏側溝側片12cに近接対向状に配される補助起立片13dが一体形成されている。これによって、表側レール体13は、外レール12に組込んだ状態において、表側起立片13b、表側底片13c、補助起立片13dがそれぞれガイド溝12aの表側溝側片12b、溝底片12d、裏側溝側片12cに近接対向していて、ガイド溝12a内における表裏方向の変位が規制された安定状態となるように構成されている。
さらに、表側レール体13の表側覆蓋片13aの下面には下方に向けて表側係止突起13eが突出形成される一方、外レール12の表側延出片12eの上面には表側係止凹部12iが形成されており、表側レール体13を外レール12に組込んだとき、表側係止突起13eが表側係止凹部12iに嵌入して、表側覆蓋片13aの表裏方向の変位を規制するように構成されており、該構成が本発明の第一保持手段に相当する。これによって、表側レール体13は、外レール12に組込まれた状態で表裏方向に位置ズレしたりガタついたりするのが確実に防止されて、前記組込み状態が保持されるように構成されている。
【0014】
これに対し、裏側レール体14は、外レール12の裏側延出片12fに載置され、ガイド溝12aを裏方向から覆う裏側覆蓋片14aと、該裏側覆蓋片14aの表裏方向中間部から下方に延出し、外レール12の裏側溝側片12cに沿う裏側起立片14bとによるT字形状部を備えて構成されている。そして、裏側レール体14は、予め表側レール体13が組込まれたガイド溝12aに組込まれるように構成されており、ガイド溝裏側覆蓋片14aと裏側起立片14bとの裏側のコーナー部を外レール12の裏側溝側片12cと裏側延出片12fとのコーナー部に沿わせ、裏側覆蓋片14aの裏側部位が裏側延出片12fに載置する組込み状態とすることにより、裏側覆蓋片14aの表側部位がガイド溝12aの表裏方向中央部よりも裏側部位を覆うように構成されている。尚、本実施の形態の表、裏側レール体13、14の表、裏側起立片13b、14bは、それぞれ外レール12の表、裏側溝側片12b、12cに僅かな間隙を存して配設することで、表、裏側溝側片12b、12cに沿うようにしているが、これらが当接する状態で配設する構成としてもよい。
そして、表、裏側レール体13、14がそれぞれ前記組込み状態に位置する状態では、表、裏側覆蓋片13a、14aがガイド溝12aの溝開口側を表裏方向から覆い、表、裏側覆蓋片13a、14aとの対向間に隙間(溝幅)H1を形成するように設定されており、該状態では、隙間H1をドア体4の下端から突出するガイド片9aが移動自在に貫通して、ドア体4の開閉作動が自在となるように構成されており、この状態が内レール(表、裏側レール体13、14)のガイド姿勢に設定されている。
さらに、裏側レール体14は、前記裏側起立片14bの下端縁部から表側底片13cに沿って表方向に延出する裏側底片14cが形成され、これによって、裏側レール体14を外レール12に安定した状態で組込むことができように構成されている。そして、前記内レールのガイド姿勢において、外レール12のガイド溝12aは、互いに対向する表、裏側起立片13b、14bと表、裏側底片13c、14cとにより囲まれて実質上のガイド溝Gが形成されている。前記実質上のガイド溝Gは蟻溝形状となっており、溝奥側の溝幅Hは、溝開口側の表、裏側覆蓋片13a、14aの対向間に形成される隙間H1よりも幅広で(H>H1)、前記振れ止めローラ9bを内装可能な寸法に設定されている。
【0015】
また、前記裏側レール体14の裏側底片14cは、内レールのガイド姿勢において、裏側底片14cと表側起立片13bとの対向間に、表、裏側覆蓋片13a、14aとの対向間に形成される隙間H1と同じかそれよりも僅かに長い隙間H2(H1≦H2)が形成される長さ寸法となるように設定されている。さらに、前記裏側底片14cの長さ寸法は、裏側覆蓋片14aの表側端面よりも表側に延出するように設定されており、これによって、例えば通行者が躓いて裏側覆蓋片14aのガイド溝G対向部位に負荷が作用したような場合であっても、裏側レール体14がガタつくようなことがなく、裏側レール体14を安定状態に保持できるように構成されている。
そして、裏側レール体14の裏側覆蓋片14aの下面には下方に向けて第一裏側係止突起14dが突出形成される一方、外レール12の裏側延出片12fの上面には裏側係止凹部12jが形成されており、裏側レール体14をガイド姿勢となるようにガイド溝12aに組込んだとき、第一裏側係止突起14dが裏側係止凹部12jに嵌入して、裏側覆蓋片14aの表裏方向の変位を規制するように構成されており、該構成が本発明の第一保持手段に相当する。これによって、内レールのガイド姿勢において、表、裏側レール体13、14がそれぞれ第一保持手段により姿勢保持された状態となり、表裏方向の位置ズレやガタつきがないように構成されている。
ここで、第一裏側係止突起14dと、外レール12の裏側溝側片12cに対する裏側係止凹部12jとの形成位置は、内レールのガイド姿勢では第一裏側係止突起14dが裏側係止凹部12jに嵌入するが、後述するように、裏側レール体14を表側レール体13側に変位して、内レールが表、裏側覆蓋片13a、14a同士の隙間H1を閉鎖する覆蓋姿勢に変姿したときには、第一裏側係止突起14dが裏側溝側片12cに近接対向する状態、もしくは、突当たる状態でガイド溝12a内に位置する位置関係となるように設定されている。
【0016】
さらに、裏側底片14cには、下方に突出する第二、第三裏側係止突起14e、14fが形成されており、裏側覆蓋片14aを裏側延出片12fに載置した状態において、これら第二、第三裏側係止突起14e、14fの下端面は表側底片13cに当接するように構成されている。一方、表側レール体13の表側底片13cには、溝幅方向に並列して第一、第二表側係止突起13f、13gが形成されている。そして、裏側レール体14をガイド姿勢となるようガイド溝12aに組込んだ状態では、第二裏側係止突起14eは、第一表側係止突起13fに裏方向から係止(当接)して、裏側底片14cが表方向に向けて位置ズレするのを規制するように構成されており、該構成が本発明の第二保持手段に相当する。これによって、ガイド姿勢の裏側レール体14は、第一裏側係止突起14dが外レール12の裏側係止凹部12jに係止することによる第一保持手段と、第二裏側係止突起14eが表側レール体13の第一表側係止突起13fに係止することによる第二保持手段とにより、裏側レール体14の上下二箇所において姿勢保持がなされるように構成されている。このように構成することにより、表、裏側レール体13、14により構成される内レールは、第一、第二保持手段によりガイド姿勢に保持されて、内レールに何らかの負荷が作用したとしても、ガイド姿勢がズレたり、ガタついたりすることがないように構成されている。
尚、13h、14gは、それぞれ表、裏側覆蓋片13a、14aの上面に固定され、外レール12の表、裏側固定片12g、12hの上端面と面一状となるように配設された、例えばステンレス製の化粧板である。
【0017】
このように、ガイド姿勢の内レールにおいて、裏側レール体14は、裏側底片14cと表側起立片13bとの対向間に、表、裏側覆蓋片13a、14aとの対向間の隙間H1と同様かそれ以上の長さに設定された隙間H2が形成されているとともに、第一裏側係止突起14dが裏側係止凹部12jに嵌入する状態となっている。この状態から、裏側レール体14は、ガイド溝12a内において隙間H1に相当する表方向への変位が可能であり、このように裏側レール体14を変位させることにより、内レールは、表、裏側覆蓋片13a、14aとが当接して対向間の隙間H1がなくなりガイド溝12aの溝開口が覆われる覆蓋姿勢となるように構成されている。
そして、覆蓋姿勢における裏側レール体14は、図6の最下端部の図面で示すように、裏側覆蓋片14aの裏側端部が裏側延出片12fに載置され、第一保持手段を構成する第一裏側係止突起14dがガイド溝12aの裏側溝側片12cに近接対向する、もしくは、突当たる係止状態となり、さらに、裏側底片14cの第二保持手段を構成する第二裏側係止突起14eが表側起立片13bに裏方向から突当てられる係止状態となり、第二保持手段を構成する第三裏側係止突起14fが第二表側係止突起13gに表方向から突当てられる係止状態となるように構成されている。これによって、覆蓋姿勢の裏側レール体14は第一、第二保持手段による姿勢保持が上下においてなされ、さらに、表側レール体13についても第一保持手段による姿勢保持が依然なされていることから、表、裏側レール体13、14で構成される内レールは覆蓋姿勢においても姿勢保持がなされ、該覆蓋姿勢で内レールに何らかの負荷が作用しても、位置ズレしたり、ガタつくようなことが位置保持するように構成されている。
【0018】
ここで、表、裏側レール体13、14は、それぞれ適宜長尺方向長さに分割されたものを複数用意し、床部Fに固定される外レール12に着脱自在に組込むように構成されるが、分割数は、開口幅に対応して適宜設定することができる。そして、本実施の形態では、図5に示すように、戸尻側の部位であって、ドア体4を開放姿勢にしたときに各パネル体3が折畳まれる部位の戸先側、また、開口部に露出する部位の中間部においてそれぞれ分割し、長尺方向三分割するように構成されている。このため、ドア体4を開放姿勢とした状態で下レール11のガイド溝12aを覆うべく内レールを覆蓋姿勢とする場合では、戸先側の二分割された表、裏側レール体13、14のうち、裏側レール体14を表裏方向に変位させて覆蓋姿勢とするように構成されている。この場合、図6の左側に示す手順のように、裏側レール体14を、裏側第一係止突起14dと裏側係止凹部12jとの係止(第一保持手段)、裏側第二係止突起14eと第一表側係止突起13f(第二保持手段)との係止を解除する程度に持ち上げて、前記表、裏側覆蓋片13a、14aの対向間に形成される隙間H1をなくすように表方向に変位させ、その後、裏側レール体14をガイド溝12内に落とし込むことでガイド姿勢から覆蓋姿勢とすることができる。また、覆蓋姿勢の裏側レール体14は、前記操作と逆の操作をすることにより容易にガイド姿勢に戻すことができる。
このようにすることにより、ドア体4を開放姿勢のまま使用する場合に、裏側レール体14のみをガイド溝12a内において表方向に移動させることで、ガイド溝12aが覆蓋された覆蓋姿勢にすることができ、また、ドア体4を閉鎖する場合では、裏側レール体14のみをガイド溝12a内において裏方向に移動させることでドア体4をガイドするガイド姿勢にすることができ、操作性の向上が図れるように構成されている。
【0019】
また、このものにおいて、広い溝幅Hに形成された実質上のガイド溝Gは、表、裏レール体13、14の表、裏側起立片13b、14b、表裏側底片13c、14cにより構成されており、埃やゴミは実質上のガイド溝Gを構成する表、裏側レール体13、14により受け止められる。これによって、埃やゴミを掃除する(排出する)場合では、図6の右側の手順に示すように、外レール12から裏側レール体14、表側レール体13の順に取外すことにより、表、裏側レール体13、14で構成される実質上のガイド溝Gを容易に掃除することができる。これによって、下レール11は、内レールがガイド姿勢でガイド溝12a(ガイド溝G)が開口しドア体4をガイドしたり、内レールが覆蓋姿勢でガイド溝12aを覆蓋したりする操作が容易で、しかも、ガイド溝12a(G)内の掃除が容易に行うことができ、使い勝手の優れた下レール11とすることができるように構成されている。
【0020】
叙述の如く構成された本形態において、ドア体4は、複数のパネル体3の左右端縁部を連結してジグザグ状に折畳まれる状態で開口部を開放する構成となっている。このものにおいて、下レール11は、外レール12と内レールとしての表裏一対の表、裏側レール体13、14とにより構成され、ドア体4の開放姿勢において、躯体開口部に露出する内レールをドア体4のガイド体9aをガイドするガイド姿勢からガイド溝12a(G)を覆蓋する覆蓋姿勢に変姿させることができ、ドア体4を開放姿勢のまま使用しても、ガイド溝12aに埃やゴミが溜ったり、ガイド溝12aに通行者が躓くような不具合をなくすことができる。しかも、この場合に、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢に変姿させる場合では、内レールを構成する裏側レール体14を表側レール体13に近付けたり離したりする表裏方向の変位をさせるだけの簡単な操作をすればよく、従来のように、内レールを上下反転させるような面倒な操作をする必要がなく、操作性のよい下レール11とすることができる。
【0021】
このように、本発明が実施されたものにあっては、下レール11のガイド溝12aを簡単に覆蓋したりドア体4をガイドする状態にしたりすることができるものであるが、このものでは、内レールを構成する表側レール体13は、ガイド姿勢と覆蓋姿勢とで変位することはなく、外レール12との間に設けた第一保持手段(表側係止凹部12iと表側係止突起13eとの係止)により外レール12への組込み姿勢が保持される。また、裏側レール体14のガイド姿勢は、外レール12との間に設けた第一保持手段(第一裏側係止突起14dと裏側係止凹部12jとの係止)により姿勢保持され、覆蓋姿勢においても外レール12との間に設けた第一保持手段(第一裏側係止突起14dと裏側溝側片12cとの係止)により姿勢保持される。この結果、内レールは、ガイド姿勢、覆蓋姿勢の何れの姿勢においてもており姿勢保持がなされて、表、裏側レール体13、14が位置ズレしたりガタつくようなことを防止できる。
【0022】
さらに、このものにおいて、表、裏側レール体13、14には表、裏側底片13b、14bがそれぞれ形成されているので、表、裏側レール体13、14を一層安定した状態で外レール12に組込むことができる。
また、このものでは、内レールとしての表、裏側レール体13、14のうち、裏側レール体14のみを変位させることで内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿することができて、操作性に優れる。
しかも、この場合に、外レール12のガイド溝12aは表、裏側起立片13b、14bと表、裏側底片13c、14cとにより覆われて、実質上のガイド溝Gが表、裏側レール体13、14により構成されるので、表、裏側レール体13、14を外レール12から取出すことでガイド溝Gに溜った埃やゴミを排出する等の掃除を簡単に行うことができる。
【0023】
そのうえ、裏側レール体14は、表、裏側底片13c、14cの間に設けられる第二保持手段により、ガイド姿勢と覆蓋姿勢との何れの姿勢においても姿勢保持されるので、裏側レール体14の各姿勢における姿勢保持が一層確実になる。
【0024】
尚、本発明は、前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、下レールを図8に示す第二の実施の形態に示すのように構成することができる。
前記第二の実施の形態の下レール15は、外レール16と内レールとしての表裏一対の表、裏側レール体17、18を備えて構成されている。前記外レール16は、ガイド溝16aを形成する表、裏側溝側片16b、16cと溝底片16d、さらに、表裏方向に延出する表、裏側延出片16e、16fを備えて構成されていることは、前記第一の実施の形態と同様である。そして、表、裏側延出片16e、16fには、それぞれ表裏方向に隣接する一対の係止凹部19a、19bが形成された支持受け体19が、中心線Mを基準として左右対称状にそれぞれ設けられている。
一方、表、裏レール体17、18は中心線Mを基準として左右対称状に形成されており、外レール16の表、裏側延出片16e、16fに設けた支持受け体19にそれぞれ載置され、ガイド溝16aを表裏方向から覆う表、裏側覆蓋片17a、18aと、該表、裏側覆蓋片17a、18aの表裏方向中間部から下方に延出する表、裏側起立片17b、18bとにより構成されるT字形状部を備えて構成されている。さらに、各表、裏起立片17b、18bには表、裏側底片17c、18cが形成され、また、表、裏側覆蓋片17a、18aの表裏方向外端部にはそれぞれ下方に突出する表、裏側係止突起17d、18dが形成されている。ここで、表、裏側底片17c、18cの長さは、表、裏側起立片17b、18bからガイド溝16a内側に延出する表、裏側覆蓋片17a、18aの長さと同じ長さに設定されている。
【0025】
そして、表、裏側レール体17、18は、図8(A)に示すように、表、裏側覆蓋片17a、18aのそれぞれ表、裏側端部を外レール16の表、裏側延出片16e、16fにそれぞれ設けられている支持受け体19上に載置し、各表、裏側係止突起17d、18dを、各支持受け体19のそれぞれ表、裏側(表裏方向外側)に位置する係止凹部19aに係止させる状態で外レール16に組込むことにより、表、裏覆蓋片17a、18a同士の対向間、表、裏側底片17c、18cとの対向間にそれぞれ隙間Lが形成され、内レールがドア体をガイドするガイド姿勢となるように構成されている。このとき、表、裏側レール体17、18は、表、裏側係止突起17d、18dと係止凹部19aとの係止による第一保持手段によりガイド姿勢に姿勢保持されている。
これに対し、表、裏側レール体17、18は、それぞれガイド溝16a内に裏方向、表方向に変位させることにより、図8(B)に示すように、各表、裏側係止突起17d、18dが、各支持受け体19のそれぞれ裏、表側(表裏方向内側)に位置する係止凹部19bに係止する状態となり、この状態では、表、裏覆蓋片17a、18a同士の間、表、裏側底片17c、18cとの対向間の隙間がなくなり、内レールがガイド溝16aを覆う覆蓋姿勢となるように構成されている。このとき、表、裏側レール体17、18は、表、裏側係止突起17d、18dと係止凹部19bとの係止による第一保持手段により覆蓋姿勢に姿勢保持されている。
このように構成することにより、下レール15は、表、裏側レール体17、18の両者を変位させることにより、ガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿することができ、この場合でも、表、裏側レール体17、18をガイド溝16a内において表裏方向に変位させれば姿勢を変えることができ、操作性がよく、しかも、各姿勢を第一保持手段により保持できる。
【0026】
さらに、下レールは、図9に示す第三の実施の形態のようにすることも可能である。前記第三の実施の形態の下レール20は、外レール21と、表、裏側レール体22、23からなる内レールとにより構成されており、外レール21のガイド溝21aを構成する底片21bに係止片21cが設けられていること、表、裏側レール体22、23に表、裏側底片がないこと以外は、前記第一の実施の形態の外レール、表、裏側レール体の基本構成と同様の構成となっている。
そして、表側レール体22は外レール21との間に設けられた係止突起22aと係止凹部21dとの係止による第一保持手段により姿勢保持され、裏側レール体23は、図9(A)に示すガイド姿勢では、係止突起23aと係止凹部21eとの係止による第一保持手段により姿勢保持され、図9(B)に示す覆蓋姿勢になった状態では、係止突起23aが外レール21のガイド溝21aの裏側溝側片21fに突当て状に係止する第一保持手段と、起立片23bの下端部がガイド溝21aの係止片21cに係止される第二保持手段とにより姿勢保持されている。
このように構成することにより、下レール20は、表、裏側レール体22、23のうち、裏側レール体23を変位させることにより、ガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿することができ、この場合でも、裏側レール体23をガイド溝21a内において表裏方向に変位させれば姿勢を変えることができ、操作性がよく、しかも、各姿勢を第一保持手段により保持できる。
さらに、前記第二、第三の実施の形態のように構成した場合、内レールとしての表、裏側レール体17と18、22と23がそれぞれ左右対称状に形成されていることから同形状に形成したものを用いることができるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0027】
また、前記各実施の形態の内レールにより形成されるガイド溝は蟻溝形状となっているが、振れ止め体が小径である場合では内レールにより形成される実質上のガイド溝を蟻溝形状とする必要はなく、この場合では、内レールとしての表、裏側レールを、ガイド溝を表裏方向から覆う表、裏側覆蓋片と外レールの表、裏側溝側片に沿う表、裏側起立片とでL字形状に形成し、外レールの表、裏側溝側片と内レールの表、裏側起立片との間に所定間隙が形成されること以外を前記実施の形態と同様に構成することにより、少なくとも一方の内レールを表裏方向に変位させることで、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに変姿させるという前記実施例と同様の効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(A)、(B)はそれぞれ折り畳み式ドア装置の正面図、斜視図である。
【図2】ドア体の開放姿勢における折畳み式ドア装置の斜視図である。
【図3】折畳み式ドア装置の縦断面図である。
【図4】折畳み式ドア装置の横断面図である。
【図5】図5(A)、(B)はそれぞれドア体の開放姿勢における一部を切欠いた折畳み式ドア装置の平面図、下レールの縦断面図である。
【図6】下レールの作用を説明する縦断面図である。
【図7】下レールの作用を説明する斜視図である。
【図8】図8(A)、(B)はそれぞれ第二の実施の形態における下レールのガイド姿勢における縦断面図、覆蓋姿勢に置ける縦断面図である。
【図9】図9(A)、(B)はそれぞれ第三の実施の形態における下レールのガイド姿勢における縦断面図、覆蓋姿勢に置ける縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 折り畳み式ドア装置
2 ドア枠
3 パネル体
4 ドア体
10 上レール
11 下レール
12 外レール
12a ガイド溝
12e 表側延出片
12i 表側係止凹部
13 表側レール体
13a 表側覆蓋片
13c 表側底片
13e 表側係止突起
14 裏側レール体
14a 裏側覆蓋片
14d 第一裏側係止突起
14e 第二裏側係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体を左右方向に移動させることで建築物の躯体開口部を開放する横引き戸装置において、戸体の下端部にガイド体を設ける一方、ガイド体をガイドする下レールを床部に固定される外レールと、該外レールに設けられる内レールとにより構成するにあたり、外レールを、上方が開口するガイド溝と、ガイド溝の溝開口端部から戸体の表裏方向に延出する表裏一対の表、裏側延出片とにより構成する一方、内レールを、表側延出片に載置され、ガイド溝を表方向から覆う表側覆蓋片とガイド溝の表側溝側片に沿って延出する表側起立片とにより形成される表側レール体と、裏側延出片に載置され、ガイド溝を裏方向から覆う裏側覆蓋片とガイド溝の裏側溝側片に沿って延出する裏側起立片とにより形成される裏側レール体とにより構成し、戸体の開放で躯体開口部に露出する表、裏側レール体のうち、少なくとも一方のレール体をガイド溝内における表裏方向の変位が可能となるよう構成し、内レールが、表、裏側覆蓋片同士の間に戸体のガイド体をガイドする隙間を形成するガイド姿勢と、覆蓋片同士の隙間をなくしガイド溝を覆蓋する覆蓋姿勢とに変姿するように構成した横引き戸装置における下レール。
【請求項2】
外レールと各表、裏側レール体との間には、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに姿勢保持する第一保持手段が設けられている請求項1に記載の横引き戸装置における下レール。
【請求項3】
表、裏側レール体は、一方のレール体のみが変位する構成とし、他方のレール体は、底片がガイド溝の他方の溝側片から一方の溝側片に至るように形成されている請求項1または2に記載の横引き戸装置における下レール。
【請求項4】
表裏方向に変位する一方のレール体に、他方のレール体に形成される底片に積層する底片を形成し、これら底片同士の間には、内レールをガイド姿勢と覆蓋姿勢とに姿勢保持する第二保持手段が設けられている請求項3に記載の横引き戸装置における下レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−90632(P2010−90632A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262549(P2008−262549)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(391008582)昭和フロント株式会社 (12)
【Fターム(参考)】