横断地下構造物の構築方法および横断地下構造物
【課題】パイプルーフを用いて道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する場合において、その施工延長を延ばす。
【解決手段】道路、線路などの下を横断して地下構造物（横断部トンネル３）を構築する際に、これらの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設してパイプルーフ４を形成するとともに、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設ける。この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１の上方を跨ぐように支持部材（主桁８）を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材９を設ける。そして、パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材９を介して吊り下げて支持しながら、パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削した後、地下構造物を構築する。
【解決手段】道路、線路などの下を横断して地下構造物（横断部トンネル３）を構築する際に、これらの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設してパイプルーフ４を形成するとともに、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設ける。この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１の上方を跨ぐように支持部材（主桁８）を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材９を設ける。そして、パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材９を介して吊り下げて支持しながら、パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削した後、地下構造物を構築する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築するための横断地下構造物の構築方法および横断地下構造物に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、例えば都市部の交差点や踏み切りにおける交通渋滞の緩和対策として、交差点部や踏み切り部の立体交差化が要求されている。そして、これらの施工には、混雑した道路などを供用させながら行う必要があり、安全確実に、かつ二次交通渋滞を発生させない新たな施工法が求められている。
【０００３】
このような背景から、アンダーパスやオーバーパスなど新工法の提案が行なわれている（例えば、非特許文献１参照。）。これらの施工法のうち、オーバーパスは施工法が比較的簡易なため多く施工されてきた。しかし、大きな構造体（ビル３〜４階に匹敵する連続した構造）を地上部に構築するため、騒音、景観など周辺環境に与える影響が大きく、近年では地下を通過するアンダーパスを望む声が大きくなっている。ところが、アンダーパスとして提案されているものは、どれもシールド工法などを応用し大型の函体を構築するもので、費用面、施工の確実性など実現性にかなりの問題を含んでいる。
【０００４】
ところで、現在施工されているアンダーパスは、その施工規模が小さければ（一車線道路や、複線の線路横断程度）、図４に示すように、進入部スロープ２０を開削により施工し、道路や線路の横断部トンネル３０（地下構造物）をパイプルーフ工法により施工している。パイプルーフ工法は、鋼管を地中に連続して押し込みパイプルーフ４０を形成し、掘削と並行して支保工を建て込んで地盤を支持して、地下構造物を構築するものであり（例えば、特許文献１参照。）。近年、その技術が進み、５０ｍ程度までの延長であれば施工可能になってきている。
【特許文献１】特開平８−２７０３７５号公報
【非特許文献１】「わが社が誇る都市再生技術」、建設産業新聞、２００４年１１月２９日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、それ以上施工規模が大きくなると、例えば二車線以上の道路や、輻輳する線路横断などで１００ｍ以上の施工となると、パイプの部材断面を大きくしても、交差部の上載荷重に対しパイプルーフ全体のたわみが大きく自立できなくなるため、パイプルーフ工法を適応できなかった。
【０００６】
本発明の課題は、パイプルーフを用いて道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する場合において、その施工延長を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
以上の課題を解決するため、請求項１に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、前記道路、線路などの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設してパイプルーフ４を形成するとともに、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設け、この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１の上方を跨ぐように支持部材（主桁８）を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材９を設けて、前記パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材９を介して吊り下げて支持しながら、前記パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削した後、このパイプルーフ４下に地下構造物（横断部トンネル３）を構築することを特徴とする。
【０００８】
このように、地盤Ｇに支持される基礎７がパイプルーフ４を挟んで対向する位置で設けられ、支持部材（主桁８）がこれら対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１を跨ぐように架け渡され、吊り部材９が支持部材から下方に向けて設けられる。そして、パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削する際に、パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて吊り部材９を介して吊り下げて支持する。すなわち、パイプルーフ４の軸方向に所定間隔で支点を設け、上載荷重によるパイプルーフ４のたわみを小さくすることにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を保持して自立させることが可能となる。したがって、軸方向に長いパイプルーフ４を形成することができ、施工延長が長い地下構造物を構築することが可能となる。
【０００９】
請求項２に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、請求項１に記載の横断地下構造物の構築方法において、前記対向する基礎７に前記支持部材（主桁８）を上方に反った放物線状に架け渡し、この支持部材に前記吊り部材９をほぼ均等に配置することを特徴とする。
【００１０】
このように、支持部材（主桁８）を上方に反った放物線状に架け渡し、吊り部材９をこの支持部材にほぼ均等に配置し、パイプルーフ４を吊り下げて支持することにより、支持部材に生じる曲げモーメントが低減される。これにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を跨ぐように設けられた支持部材の構造は大きくならず、デザイン的にも景観を損なうことがない。
【００１１】
請求項３に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、請求項１または２に記載の横断地下構造物の構築方法において、前記基礎７、支持部材（主桁８）および吊り部材９を、前記道路または線路の交通に支障が出ない場所に配置することを特徴とする。
【００１２】
このように、道路または線路の交通に支障が出ないように、基礎７、支持部材（主桁８）および吊り部材９を配置することにより、道路または線路を供用しながら横断地下構造物を構築することができる。
【００１３】
請求項４に記載の発明の横断地下構造物は、例えば図１から３に示すように、道路、線路などの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設して形成されるパイプルーフ４と、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持されて設けられる基礎７と、この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇの上方を跨ぐように架け渡される支持部材（主桁８）と、前記パイプルーフ４と前記支持部材とを連結し、前記パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて吊り下げる吊り部材９と、前記パイプルーフ４下に構築される地下構造物（横断部トンネル３）と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する際に、これらの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように支持部材を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材を設ける。そして、パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材を介して吊り下げて支持しながら、パイプルーフ下の地盤を掘削した後、地下構造物を構築する。これにより、上載荷重によるパイプルーフのたわみを小さくすることにより、パイプルーフ上の地盤を保持して自立させることができる。したがって、パイプルーフをその軸方向に長く形成することができ、地下構造物の施工延長を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図１に示すように、本実施の形態は、都市部の道路の交差点における交通渋滞の緩和対策として、交差点部の立体交差化を図るために、道路下を横断するアンダーパスを施工する場合に本発明を適用したものである。
【００１６】
このアンダーパスは、これと交差する交差道路１の下を、横断方向の一方の地上（道路面上）から横断方向の他方の地上まで、湾曲した地下道路を構築して施工される。その施工は、交差道路１の下を横断する横断部トンネル３（地下構造物）と、この横断部トンネル３の各端部に向かって下り勾配の進入部スロープ２とを構築することにより行われる。
【００１７】
横断部トンネル３は、交差道路１の両側から所定の間隔を開けた長さで、断面ボックス形に構築されるものである。この横断部トンネル３の横断長さは、上載荷重に対したわみ量が大きくなり自立できないため、従来のパイプルーフ工法が適応できないものである。また、進入部スロープ２は、所定の勾配を形成するのに必要な長さで、上方が開放した断面Ｕ字形に構築されるものである。
【００１８】
以下、アンダーパスの施工手順とともに、本発明に係る横断部トンネル３（地下構造物）の構築方法を説明する。
【００１９】
まず、横断部トンネル３の両側における各進入部スロープ２の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削する。この掘削は、横断部トンネル３端部の構築予定位置に向かって下り傾斜させて所定の深さまで溝状に行われる。
【００２０】
各進入部の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削した後、図２に示すように、交差道路１の下を横断するようにパイプルーフ４を形成する。このパイプルーフ４の形成は、横断部トンネル３の構築予定位置の上方に、横断部トンネル３の幅に対応する所定幅を有して、その横断面形状が直線形となるように行われる。パイプルーフ４の施工は、例えば、継手を有するパイプ５を水平に地盤Ｇ内に圧入して埋設した後、このパイプ５の継手をガイドとして次のパイプ５を並列に圧入して、この作業を繰り返して行うことができる。
【００２１】
次に、パイプルーフ４を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設ける。この基礎７は、地盤Ｇによって支持され、パイプルーフ４の四隅付近にそれぞれ設けられる。なお、基礎７を支持させる地盤Ｇには、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１は含まれない。
【００２２】
これらの基礎７を設けた後、平面的に細長いほぼＸ字形の主桁８（支持部材）を、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１をその軸方向に跨いで上方に反った放物線状となるように、Ｘ字形の各下端を各基礎７に設置して架け渡す。さらに、この主桁８から下方に向け吊り部材９をほぼ均等に配置して設けておく。吊り部材９は、柱部材、ケーブル、ワイヤー、ロッドなどである。
【００２３】
このように、主桁８を上方に反ったアーチ状（放物線状）に架け渡し、吊り部材９をこの主桁８にほぼ均等に配置し、パイプルーフ４が受ける上載荷重を吊り部材９を介して支持することにより、主桁８に生じる曲げモーメントを低減することができる。そのため、主桁８の構造はさほど大きくならず、シンプルな形状で、周辺環境に優しいデザイン設計が可能となる。
【００２４】
また、主桁８や吊り部材９の配置は、交差道路１を通過する車両などの交通の支障にならない位置とする。このように配置することにより、交差道路１を供用しながら横断部トンネル３を構築することができる。
【００２５】
次に、パイプルーフ４の下方の地盤Ｇ、すなわち横断部トンネル３の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削する。この掘削は、両坑口から内側に向かって、内部に支保工を建て込みながら行われる。
【００２６】
両坑口からの掘削が、吊り部材９による所定の吊り位置まで進んだら、パイプルーフ４の下面にその幅方向の全幅にわたって受け部材６を取り付ける。この受け部材６と主桁８に設けられた吊り部材９の下端とを連結し、この吊り部材９を介してパイプルーフ４を吊り下げて支持する。受け部材６は、Ｈ形鋼、矩形鋼管などである。なお、吊り部材９と受け部材６の連結は、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１及びパイプルーフ４を削孔、穿孔などを行って、これら削孔、穿孔などを通して行われる。
【００２７】
さらに、パイプルーフ４を吊り部材９が配置された２点において吊り支持した後、これら２点間の受け部材６の間の地盤Ｇを掘削する。
【００２８】
そして、掘削が完了した後、図３に示すように、進入部スロープ２を溝状に形成された空間内に断面Ｕ字形のコンクリート構造物として構築し、横断部トンネル３をパイプルーフ４下に形成された空間内に断面ボックス形のコンクリート構造物として構築する。その後、これらコンクリート構造物に内面仕上げを施すとともに、その構造物の底版上面に舗装を施すことにより、アンダーパスの施工が完了する。
【００２９】
本実施の形態によれば、パイプルーフ４の軸方向に所定間隔で吊り部材９による支点を設け、交差道路１の上載荷重によるパイプルーフ４のたわみを小さくすることにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を保持して自立させることができる。よって、パイプルーフ４をその軸方向に長く形成することができ、横断部トンネル３の施工延長を延ばすことができる。また、主桁８を架け渡すときに一時的な地上施工はあるが、それ以外のほとんどの施工を進入部スロープ２の開削箇所の範囲内で行うことができる。
【００３０】
なお、以上の実施の形態においては、道路の交差点におけるアンダーパスに本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、線路の踏み切りなどにおいて適用しても良い。また、道路や線路が盛土上に設置されている際に、その盛土地盤Ｇ内にパイプルーフ４を形成し、盛土地盤Ｇを掘削して横断構造物を構築する場合に適用することもできる。
【００３１】
また、パイプルーフ４の横断面配置を直線形としたが、扇形、門形等の配置としてもよく、パイプルーフ４を構成するパイプ５の断面形状も円形に限らず、矩形、台形などであってもよい。
【００３２】
支持部材としては、桁部材の他に、トラス部材、ラーメン構造、さらには、対向する柱部材にケーブルなどを架け渡した構成も採用することができる。また、支持部材の架け渡し方向として、パイプルーフ４の軸方向だけに限らず、その幅方向、斜め方向などであってもよい。そして、基礎７、支持部材及び吊り部材９を本設として用いてもよく、仮設として用いてもよい。これらを本設として用いる場合には、地下構築物に発生する応力を低減でき、その部材断面を小さくすることができる。その場合には、アンダーパスを通過する車両などの交通の支障にならない位置に基礎７等を配置する。
【００３３】
また、基礎７、支持部材、吊り部材９などの形状、数、配置なども任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明を適用した一実施の形態の交差点におけるアンダーパスの構成を示す斜視図である。
【図２】図１において地盤部分を透視した透視斜視図である。
【図３】図１におけるアンダーパス方向の縦断面図である。
【図４】従来のアンダーパスを説明するための（ａ）縦断面図、（ｂ）横断面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ 交差道路
２ 進入部スロープ
３ 横断部トンネル（地下構造物）
４ パイプルーフ
５ パイプ
６ 受け部材
７ 基礎
８ 主桁（支持部材）
９ 吊り部材
Ｇ 地盤
Ｇ１ パイプルーフ上の地盤
【技術分野】
【０００１】
本発明は、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築するための横断地下構造物の構築方法および横断地下構造物に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、例えば都市部の交差点や踏み切りにおける交通渋滞の緩和対策として、交差点部や踏み切り部の立体交差化が要求されている。そして、これらの施工には、混雑した道路などを供用させながら行う必要があり、安全確実に、かつ二次交通渋滞を発生させない新たな施工法が求められている。
【０００３】
このような背景から、アンダーパスやオーバーパスなど新工法の提案が行なわれている（例えば、非特許文献１参照。）。これらの施工法のうち、オーバーパスは施工法が比較的簡易なため多く施工されてきた。しかし、大きな構造体（ビル３〜４階に匹敵する連続した構造）を地上部に構築するため、騒音、景観など周辺環境に与える影響が大きく、近年では地下を通過するアンダーパスを望む声が大きくなっている。ところが、アンダーパスとして提案されているものは、どれもシールド工法などを応用し大型の函体を構築するもので、費用面、施工の確実性など実現性にかなりの問題を含んでいる。
【０００４】
ところで、現在施工されているアンダーパスは、その施工規模が小さければ（一車線道路や、複線の線路横断程度）、図４に示すように、進入部スロープ２０を開削により施工し、道路や線路の横断部トンネル３０（地下構造物）をパイプルーフ工法により施工している。パイプルーフ工法は、鋼管を地中に連続して押し込みパイプルーフ４０を形成し、掘削と並行して支保工を建て込んで地盤を支持して、地下構造物を構築するものであり（例えば、特許文献１参照。）。近年、その技術が進み、５０ｍ程度までの延長であれば施工可能になってきている。
【特許文献１】特開平８−２７０３７５号公報
【非特許文献１】「わが社が誇る都市再生技術」、建設産業新聞、２００４年１１月２９日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、それ以上施工規模が大きくなると、例えば二車線以上の道路や、輻輳する線路横断などで１００ｍ以上の施工となると、パイプの部材断面を大きくしても、交差部の上載荷重に対しパイプルーフ全体のたわみが大きく自立できなくなるため、パイプルーフ工法を適応できなかった。
【０００６】
本発明の課題は、パイプルーフを用いて道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する場合において、その施工延長を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
以上の課題を解決するため、請求項１に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、前記道路、線路などの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設してパイプルーフ４を形成するとともに、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設け、この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１の上方を跨ぐように支持部材（主桁８）を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材９を設けて、前記パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材９を介して吊り下げて支持しながら、前記パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削した後、このパイプルーフ４下に地下構造物（横断部トンネル３）を構築することを特徴とする。
【０００８】
このように、地盤Ｇに支持される基礎７がパイプルーフ４を挟んで対向する位置で設けられ、支持部材（主桁８）がこれら対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇ１を跨ぐように架け渡され、吊り部材９が支持部材から下方に向けて設けられる。そして、パイプルーフ４下の地盤Ｇを掘削する際に、パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて吊り部材９を介して吊り下げて支持する。すなわち、パイプルーフ４の軸方向に所定間隔で支点を設け、上載荷重によるパイプルーフ４のたわみを小さくすることにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を保持して自立させることが可能となる。したがって、軸方向に長いパイプルーフ４を形成することができ、施工延長が長い地下構造物を構築することが可能となる。
【０００９】
請求項２に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、請求項１に記載の横断地下構造物の構築方法において、前記対向する基礎７に前記支持部材（主桁８）を上方に反った放物線状に架け渡し、この支持部材に前記吊り部材９をほぼ均等に配置することを特徴とする。
【００１０】
このように、支持部材（主桁８）を上方に反った放物線状に架け渡し、吊り部材９をこの支持部材にほぼ均等に配置し、パイプルーフ４を吊り下げて支持することにより、支持部材に生じる曲げモーメントが低減される。これにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を跨ぐように設けられた支持部材の構造は大きくならず、デザイン的にも景観を損なうことがない。
【００１１】
請求項３に記載の発明は、例えば図１から３に示すように、請求項１または２に記載の横断地下構造物の構築方法において、前記基礎７、支持部材（主桁８）および吊り部材９を、前記道路または線路の交通に支障が出ない場所に配置することを特徴とする。
【００１２】
このように、道路または線路の交通に支障が出ないように、基礎７、支持部材（主桁８）および吊り部材９を配置することにより、道路または線路を供用しながら横断地下構造物を構築することができる。
【００１３】
請求項４に記載の発明の横断地下構造物は、例えば図１から３に示すように、道路、線路などの下を横断するように地盤Ｇ内にパイプ５を並列に埋設して形成されるパイプルーフ４と、このパイプルーフ４を挟んで対向する位置に地盤Ｇに支持されて設けられる基礎７と、この対向する基礎７にパイプルーフ４上の地盤Ｇの上方を跨ぐように架け渡される支持部材（主桁８）と、前記パイプルーフ４と前記支持部材とを連結し、前記パイプルーフ４をその軸方向に所定間隔を置いて吊り下げる吊り部材９と、前記パイプルーフ４下に構築される地下構造物（横断部トンネル３）と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する際に、これらの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように支持部材を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材を設ける。そして、パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材を介して吊り下げて支持しながら、パイプルーフ下の地盤を掘削した後、地下構造物を構築する。これにより、上載荷重によるパイプルーフのたわみを小さくすることにより、パイプルーフ上の地盤を保持して自立させることができる。したがって、パイプルーフをその軸方向に長く形成することができ、地下構造物の施工延長を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図１に示すように、本実施の形態は、都市部の道路の交差点における交通渋滞の緩和対策として、交差点部の立体交差化を図るために、道路下を横断するアンダーパスを施工する場合に本発明を適用したものである。
【００１６】
このアンダーパスは、これと交差する交差道路１の下を、横断方向の一方の地上（道路面上）から横断方向の他方の地上まで、湾曲した地下道路を構築して施工される。その施工は、交差道路１の下を横断する横断部トンネル３（地下構造物）と、この横断部トンネル３の各端部に向かって下り勾配の進入部スロープ２とを構築することにより行われる。
【００１７】
横断部トンネル３は、交差道路１の両側から所定の間隔を開けた長さで、断面ボックス形に構築されるものである。この横断部トンネル３の横断長さは、上載荷重に対したわみ量が大きくなり自立できないため、従来のパイプルーフ工法が適応できないものである。また、進入部スロープ２は、所定の勾配を形成するのに必要な長さで、上方が開放した断面Ｕ字形に構築されるものである。
【００１８】
以下、アンダーパスの施工手順とともに、本発明に係る横断部トンネル３（地下構造物）の構築方法を説明する。
【００１９】
まず、横断部トンネル３の両側における各進入部スロープ２の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削する。この掘削は、横断部トンネル３端部の構築予定位置に向かって下り傾斜させて所定の深さまで溝状に行われる。
【００２０】
各進入部の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削した後、図２に示すように、交差道路１の下を横断するようにパイプルーフ４を形成する。このパイプルーフ４の形成は、横断部トンネル３の構築予定位置の上方に、横断部トンネル３の幅に対応する所定幅を有して、その横断面形状が直線形となるように行われる。パイプルーフ４の施工は、例えば、継手を有するパイプ５を水平に地盤Ｇ内に圧入して埋設した後、このパイプ５の継手をガイドとして次のパイプ５を並列に圧入して、この作業を繰り返して行うことができる。
【００２１】
次に、パイプルーフ４を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Ｇに支持される基礎７を設ける。この基礎７は、地盤Ｇによって支持され、パイプルーフ４の四隅付近にそれぞれ設けられる。なお、基礎７を支持させる地盤Ｇには、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１は含まれない。
【００２２】
これらの基礎７を設けた後、平面的に細長いほぼＸ字形の主桁８（支持部材）を、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１をその軸方向に跨いで上方に反った放物線状となるように、Ｘ字形の各下端を各基礎７に設置して架け渡す。さらに、この主桁８から下方に向け吊り部材９をほぼ均等に配置して設けておく。吊り部材９は、柱部材、ケーブル、ワイヤー、ロッドなどである。
【００２３】
このように、主桁８を上方に反ったアーチ状（放物線状）に架け渡し、吊り部材９をこの主桁８にほぼ均等に配置し、パイプルーフ４が受ける上載荷重を吊り部材９を介して支持することにより、主桁８に生じる曲げモーメントを低減することができる。そのため、主桁８の構造はさほど大きくならず、シンプルな形状で、周辺環境に優しいデザイン設計が可能となる。
【００２４】
また、主桁８や吊り部材９の配置は、交差道路１を通過する車両などの交通の支障にならない位置とする。このように配置することにより、交差道路１を供用しながら横断部トンネル３を構築することができる。
【００２５】
次に、パイプルーフ４の下方の地盤Ｇ、すなわち横断部トンネル３の構築予定箇所の地盤Ｇを掘削する。この掘削は、両坑口から内側に向かって、内部に支保工を建て込みながら行われる。
【００２６】
両坑口からの掘削が、吊り部材９による所定の吊り位置まで進んだら、パイプルーフ４の下面にその幅方向の全幅にわたって受け部材６を取り付ける。この受け部材６と主桁８に設けられた吊り部材９の下端とを連結し、この吊り部材９を介してパイプルーフ４を吊り下げて支持する。受け部材６は、Ｈ形鋼、矩形鋼管などである。なお、吊り部材９と受け部材６の連結は、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１及びパイプルーフ４を削孔、穿孔などを行って、これら削孔、穿孔などを通して行われる。
【００２７】
さらに、パイプルーフ４を吊り部材９が配置された２点において吊り支持した後、これら２点間の受け部材６の間の地盤Ｇを掘削する。
【００２８】
そして、掘削が完了した後、図３に示すように、進入部スロープ２を溝状に形成された空間内に断面Ｕ字形のコンクリート構造物として構築し、横断部トンネル３をパイプルーフ４下に形成された空間内に断面ボックス形のコンクリート構造物として構築する。その後、これらコンクリート構造物に内面仕上げを施すとともに、その構造物の底版上面に舗装を施すことにより、アンダーパスの施工が完了する。
【００２９】
本実施の形態によれば、パイプルーフ４の軸方向に所定間隔で吊り部材９による支点を設け、交差道路１の上載荷重によるパイプルーフ４のたわみを小さくすることにより、パイプルーフ４上の地盤Ｇ１を保持して自立させることができる。よって、パイプルーフ４をその軸方向に長く形成することができ、横断部トンネル３の施工延長を延ばすことができる。また、主桁８を架け渡すときに一時的な地上施工はあるが、それ以外のほとんどの施工を進入部スロープ２の開削箇所の範囲内で行うことができる。
【００３０】
なお、以上の実施の形態においては、道路の交差点におけるアンダーパスに本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、線路の踏み切りなどにおいて適用しても良い。また、道路や線路が盛土上に設置されている際に、その盛土地盤Ｇ内にパイプルーフ４を形成し、盛土地盤Ｇを掘削して横断構造物を構築する場合に適用することもできる。
【００３１】
また、パイプルーフ４の横断面配置を直線形としたが、扇形、門形等の配置としてもよく、パイプルーフ４を構成するパイプ５の断面形状も円形に限らず、矩形、台形などであってもよい。
【００３２】
支持部材としては、桁部材の他に、トラス部材、ラーメン構造、さらには、対向する柱部材にケーブルなどを架け渡した構成も採用することができる。また、支持部材の架け渡し方向として、パイプルーフ４の軸方向だけに限らず、その幅方向、斜め方向などであってもよい。そして、基礎７、支持部材及び吊り部材９を本設として用いてもよく、仮設として用いてもよい。これらを本設として用いる場合には、地下構築物に発生する応力を低減でき、その部材断面を小さくすることができる。その場合には、アンダーパスを通過する車両などの交通の支障にならない位置に基礎７等を配置する。
【００３３】
また、基礎７、支持部材、吊り部材９などの形状、数、配置なども任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明を適用した一実施の形態の交差点におけるアンダーパスの構成を示す斜視図である。
【図２】図１において地盤部分を透視した透視斜視図である。
【図３】図１におけるアンダーパス方向の縦断面図である。
【図４】従来のアンダーパスを説明するための（ａ）縦断面図、（ｂ）横断面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ 交差道路
２ 進入部スロープ
３ 横断部トンネル（地下構造物）
４ パイプルーフ
５ パイプ
６ 受け部材
７ 基礎
８ 主桁（支持部材）
９ 吊り部材
Ｇ 地盤
Ｇ１ パイプルーフ上の地盤
【特許請求の範囲】
【請求項１】
道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、
前記道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、
このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように支持部材を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材を設けて、
前記パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材を介して吊り下げて支持しながら、前記パイプルーフ下の地盤を掘削した後、
このパイプルーフ下に地下構造物を構築することを特徴とする横断地下構造物の構築方法。
【請求項２】
前記対向する基礎に前記支持部材を上方に反った放物線状に架け渡し、
この支持部材に前記吊り部材をほぼ均等に配置することを特徴とする請求項１に記載の横断地下構造物の構築方法。
【請求項３】
前記基礎、支持部材および吊り部材を、前記道路または線路の交通に支障が出ない場所に配置することを特徴とする請求項１または２に記載の横断地下構造物の構築方法。
【請求項４】
道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設して形成されるパイプルーフと、
このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持されて設けられる基礎と、
この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように架け渡される支持部材と、
前記パイプルーフと前記支持部材とを連結し、前記パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて吊り下げる吊り部材と、
前記パイプルーフ下に構築される地下構造物と、を備えることを特徴とする横断地下構造物。
【請求項１】
道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、
前記道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、
このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように支持部材を架け渡し、この支持部材から下方に向けて吊り部材を設けて、
前記パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて前記吊り部材を介して吊り下げて支持しながら、前記パイプルーフ下の地盤を掘削した後、
このパイプルーフ下に地下構造物を構築することを特徴とする横断地下構造物の構築方法。
【請求項２】
前記対向する基礎に前記支持部材を上方に反った放物線状に架け渡し、
この支持部材に前記吊り部材をほぼ均等に配置することを特徴とする請求項１に記載の横断地下構造物の構築方法。
【請求項３】
前記基礎、支持部材および吊り部材を、前記道路または線路の交通に支障が出ない場所に配置することを特徴とする請求項１または２に記載の横断地下構造物の構築方法。
【請求項４】
道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設して形成されるパイプルーフと、
このパイプルーフを挟んで対向する位置に地盤に支持されて設けられる基礎と、
この対向する基礎にパイプルーフ上の地盤の上方を跨ぐように架け渡される支持部材と、
前記パイプルーフと前記支持部材とを連結し、前記パイプルーフをその軸方向に所定間隔を置いて吊り下げる吊り部材と、
前記パイプルーフ下に構築される地下構造物と、を備えることを特徴とする横断地下構造物。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００６−２４９７３４（Ｐ２００６−２４９７３４Ａ）
【公開日】平成１８年９月２１日（２００６．９．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−６５８２５（Ｐ２００５−６５８２５）
【出願日】平成１７年３月９日（２００５．３．９）
【出願人】（０００１９５９７１）西松建設株式会社 (329)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年９月２１日（２００６．９．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年３月９日（２００５．３．９）
【出願人】（０００１９５９７１）西松建設株式会社 (329)
【Ｆターム（参考）】
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