説明

横断地下構造物の構築方法および横断地下構造物

【課題】パイプルーフを用いて道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する場合において、その施工延長を延ばす。
【解決手段】道路、線路などの下を横断して地下構造物(横断部トンネル3)を構築する際に、これらの下を横断するように地盤G内にパイプ5を並列に埋設してパイプルーフ4を形成するとともに、このパイプルーフ4を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Gに支持される基礎7を設ける。そしてパイプルーフ4の端部と基礎7とを引張部材8で連結する。パイプルーフ4をその軸方向の両外方に引張部材8を介して引っ張って支持しながら、このパイプルーフ4下の地盤Gを掘削した後、地下構造物を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築するための横断地下構造物の構築方法および横断地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の交差点や踏み切りにおける交通渋滞の緩和対策として、交差点部や踏み切り部の立体交差化が要求されている。そして、これらの施工には、混雑した道路などを供用させながら行う必要があり、安全確実に、かつ二次交通渋滞を発生させない新たな施工法が求められている。
【0003】
このような背景から、アンダーパスやオーバーパスなど新工法の提案が行なわれている(例えば、非特許文献1参照。)。これらの施工法のうち、オーバーパスは施工法が比較的簡易なため多く施工されてきた。しかし、大きな構造体(ビル3〜4階に匹敵する連続した構造)を地上部に構築するため、騒音、景観など周辺環境に与える影響が大きく、近年では地下を通過するアンダーパスを望む声が大きくなっている。ところが、アンダーパスとして提案されているものは、どれもシールド工法などを応用し大型の函体を構築するもので、費用面、施工の確実性など実現性にかなりの問題を含んでいる。
【0004】
ところで、現在施工されているアンダーパスは、その施工規模が小さければ(一車線道路や、複線の線路横断程度)、図4に示すように、進入部スロープ20を開削により施工し、道路や線路の横断部トンネル30(地下構造物)をパイプルーフ工法により施工している。パイプルーフ工法は、鋼管を地中に連続して押し込みパイプルーフ40を形成し、掘削と並行して支保工を建て込んで地盤を支持して、地下構造物を構築するものであり(例えば、特許文献1参照。)。近年、その技術が進み、50m程度までの延長であれば施工可能になってきている。
【特許文献1】特開平8−270375号公報
【非特許文献1】「わが社が誇る都市再生技術」、建設産業新聞、2004年11月29日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、それ以上施工規模が大きくなると、例えば二車線以上の道路や、輻輳する線路横断などで100m以上の施工となると、パイプの部材断面を大きくしても、交差部の上載荷重に対しパイプルーフ全体のたわみが大きく自立できなくなるため、パイプルーフ工法を適応できなかった。
【0006】
本発明の課題は、パイプルーフを用いて道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する場合において、その施工延長を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1から3に示すように、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、前記道路、線路などの下を横断するように地盤G内にパイプ5を並列に埋設してパイプルーフ4を形成するとともに、このパイプルーフ4を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Gに支持される基礎7を設け、パイプルーフ4の端部と基礎7とを引張部材8で連結して、前記パイプルーフ4をその軸方向の両外方に引張部材8を介して引っ張って支持しながら、前記パイプルーフ4下の地盤Gを掘削した後、このパイプルーフ4下に地下構造物(横断部トンネル3)を構築することを特徴とする。
【0008】
このように、パイプルーフ4を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Gに支持された基礎7を設け、パイプルーフ4の端部と基礎7とを引張部材8で連結し、この引張部材8を介してパイプルーフ4をその軸方向の両外方に引っ張って支持する。そのため、上載荷重によりパイプルーフ4のたわみが大きくなっても、引張部材8で張力を持ったパイプルーフ4にて上載荷重を受けることにより、パイプルーフ4上の地盤G1を保持して自立させることが可能となる。したがって、軸方向に長いパイプルーフ4を形成することが可能となり、施工延長の長い地下構造物(横断部トンネル3)を構築することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1から3に示すように、請求項1に記載の横断地下構造物の構築方法において、前記パイプルーフ4と前記引張部材8とが連続して下方に反った放物線状となるように、前記パイプルーフ4の両端部を引っ張ることを特徴とする。
【0010】
このように、パイプルーフ4と引張部材8とを連続して下方に反った放物線状とすることにより、上載荷重によりパイプルーフ4に生じる曲げモーメントが低減される。これにより、部材断面を大きくすることなく、軸方向に長いパイプルーフ4を形成することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明の横断地下構造物は、例えば図1から3に示すように、道路、線路などの下を横断するように地盤G内にパイプ5を並列に埋設して形成されるパイプルーフ4と、このパイプルーフ4を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Gに支持されて設けられる基礎7と、前記パイプルーフ4の端部と前記基礎7とを連結し、前記パイプルーフ4をその軸方向の外方に引っ張って支持する引張部材8と、前記パイプルーフ4下に構築される地下構造物(横断部トンネル3)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する際に、これらの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、このパイプルーフを挟んでその軸方向に対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、パイプルーフの端部と基礎とを引張部材で連結する。そして、パイプルーフをその軸方向の両外方に引張部材を介して引っ張って支持しながら、このパイプルーフ下の地盤を掘削した後、地下構造物を構築する。これにより、上載荷重によりパイプルーフのたわみが大きくなっても、引張部材で張力を持ったパイプルーフにて上載荷重を受けることにより、パイプルーフ上の地盤を保持して自立させることができる。したがって、パイプルーフをその軸方向に長く形成することができ、地下構造物の施工延長を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態は、都市部の道路の交差点における交通渋滞の緩和対策として、交差点部の立体交差化を図るために、道路下を横断するアンダーパスを施工する場合に本発明を適用したものである。
【0014】
このアンダーパスは、これと交差する交差道路1の下を、横断方向の一方の地上(道路面上)から横断方向の他方の地上まで、湾曲した地下道路を構築して施工される。その施工は、交差道路1の下を横断する横断部トンネル3(地下構造物)と、この横断部の各端部に向かって下り勾配の進入部スロープ2とを構築することにより行われる。
【0015】
横断部トンネル3は、交差道路1の両側から所定の間隔を開けた長さで、断面ボックス形に構築されるものである。この横断部トンネル3の横断長さは、上載荷重に対したわみ量が大きくなり自立できないため、従来のパイプルーフ工法が適応できないものである。また、進入部スロープ2は、所定の勾配を形成するのに必要な長さで、上方が開放した断面U字形に構築されるものである。
【0016】
以下、アンダーパスの施工手順とともに、本発明に係る横断部トンネル3(地下構造物)の構築方法を説明する。
【0017】
まず、横断部トンネル3の両側における各進入部スロープ2の構築予定箇所の地盤Gを掘削する。この掘削は、横断部トンネル3端部の構築予定位置に向かって下り傾斜させて所定の深さまで溝状に行われる。
【0018】
各進入部の構築予定箇所の地盤Gを掘削した後、図2に示すように、交差道路1の下を横断するようにパイプルーフ4を形成する。このパイプルーフ4の形成は、横断部トンネル3の構築予定位置の上方に、横断部トンネル3の幅に対応する所定幅を有して、横断面形状が直線形となるように行われる。パイプルーフ4の施工は、例えば、継手を有するパイプ5を水平に地盤G内に圧入して埋設した後、このパイプ5の継手をガイドとして次のパイプ5を並列に圧入して、この作業を繰り返して行うことができる。
【0019】
また、パイプルーフ4の両端部には、各パイプ5の端部を横方向に連結する連結部材6を取り付けておく。連結部材6は、例えばH形鋼、矩形鋼管などである。
【0020】
次に、パイプルーフ4を挟んでその軸方向に対向する位置に地盤Gに支持される基礎7を設ける。この基礎7は、地盤Gに打ち込まれたアンカー7aによって支持され、パイプルーフ4の端部からその軸方向の外側に所定の間隔を開けて、パイプルーフ4の幅方向に3箇所(両側で計6箇所)設けられる。なお、基礎7を支持させる地盤Gには、パイプルーフ4上の地盤G1は含まれない。
【0021】
これらの基礎7を設けた後、それぞれの基礎7とパイプルーフ4の端部に取り付けられた連結部材6とを複数の引張部材8で張力を持たせて連結する。引張部材8は、例えばケーブル、ワイヤー、ロッドなどである。このとき、後述する横断部トンネル3の掘削過程において、基礎7および引張部材8のパイプルーフ4に対する配置が、パイプルーフ4と引張部材8が連続して下方に反った放物線状となるように設定する。なお、前述したパイプルーフ4を曲線パイプルーフ工法を用いて下方に反った放物線状となるようにしてもよい。
【0022】
このように、パイプルーフ4と引張部材8とを連続して下方に反った放物線状とすることにより、上載荷重によりパイプルーフ4に生じる曲げモーメントが低減される。これにより、部材断面を大きくすることなく、軸方向に長いパイプルーフ4を形成することができる。
【0023】
次に、パイプルーフ4の下方の地盤G、すなわち横断部トンネル3の構築予定箇所の地盤Gを掘削する。この掘削は、両坑口から内側に向かって、内部に支保工を建て込みながら行われる。
【0024】
そして、掘削が完了した後、図3に示すように、進入部スロープ2を溝状に形成された空間内に断面U字形のコンクリート構造物として構築し、横断部トンネル3をパイプルーフ4下に形成された空間内に断面ボックス形のコンクリート構造物として構築する。その後、これらコンクリート構造物に内面仕上げを施すとともに、その構造物の底版上面に舗装を施すことにより、アンダーパスの施工が完了する。
【0025】
本実施の形態によれば、パイプルーフ4の端部と基礎7とを引張部材8で連結し、この引張部材8を介してパイプルーフ4をその軸方向の両外方に引っ張って支持するため、上載荷重によりパイプルーフ4のたわみが大きくなっても、引張部材8で張力を持ったパイプルーフ4にて上載荷重を受けることができ、パイプルーフ4上の地盤G1を保持して自立させることができる。よって、軸方向に長いパイプルーフ4を形成することが可能となり、施工延長の長い横断地下構造物を構築することが可能となる。また、地上部に大きな構造物が一切なく、景観を損ねることがない。そして、ほとんどの施工を進入部スロープ2の開削箇所の範囲内で行うことができ、工事中の周辺環境にもやさしい。
【0026】
なお、以上の実施の形態においては、道路の交差点におけるアンダーパスに本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、線路の踏み切りなどにおいて適用しても良い。また、道路や線路が盛土上に設置されている際に、その盛土地盤G内にパイプルーフ4を形成し、盛土地盤Gを掘削して横断構造物を構築する場合に適用することもできる。
【0027】
また、パイプルーフ4の横断面配置を直線形としたが、扇形、門形等の配置としてもよく、パイプルーフ4を構成するパイプ5の断面形状も円形に限らず、矩形、台形などであってもよい。
【0028】
そして、基礎7、引張部材8を本設として用いてもよく、仮設として用いてもよい。これらを本設として用いる場合には、横断構築物に発生する応力を低減でき、その部材断面を小さくすることができる。基礎7等は、仮設としても本設としても用いることができる。本設として用いた場合には、これらにより上載荷重の一部を負担するため、横断部トンネル3の部材断面を小さくすることができる。その場合には、アンダーパスを通過する車両などの交通の支障にならない場所に基礎7等を配置する。
【0029】
また、基礎7、連結部材6、引張部材8などの形状、数、配置なども任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の交差点におけるアンダーパスの構成を示す斜視図である。
【図2】図1において地盤部分を透視した透視斜視図である。
【図3】図1におけるアンダーパス方向の縦断面図である。
【図4】従来のアンダーパスを説明するための(a)縦断面図、(b)横断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 交差道路
2 進入部スロープ
3 横断部トンネル(地下構造物)
4 パイプルーフ
5 パイプ
6 連結部材
7 基礎
7a アンカー
8 引張部材
G 地盤
G1 パイプルーフ上の地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路、線路などの下を横断して地下構造物を構築する横断地下構造物の構築方法であって、
前記道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設してパイプルーフを形成するとともに、
このパイプルーフを挟んでその軸方向に対向する位置に地盤に支持される基礎を設け、パイプルーフの端部と基礎とを引張部材で連結して、
前記パイプルーフをその軸方向の両外方に引張部材を介して引っ張って支持しながら、前記パイプルーフ下の地盤を掘削した後、
このパイプルーフ下に地下構造物を構築することを特徴とする横断地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記パイプルーフと前記引張部材とが連続して下方に反った放物線状となるように、前記パイプルーフの両端部を引っ張ることを特徴とする請求項1に記載の横断地下構造物の構築方法。
【請求項3】
道路、線路などの下を横断するように地盤内にパイプを並列に埋設して形成されるパイプルーフと、
このパイプルーフを挟んでその軸方向に対向する位置に地盤に支持されて設けられる基礎と、
前記パイプルーフの端部と前記基礎とを連結し、前記パイプルーフをその軸方向の外方に引っ張って支持する引張部材と、
前記パイプルーフ下に構築される地下構造物と、を備えることを特徴とする横断地下構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−249735(P2006−249735A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65838(P2005−65838)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】