説明

樹木用獣害防止具

【課題】 人為的な造作物には近寄らないという獣類の習性による忌避効果を十分に確保することに加え、樹木用獣害防止具が樹木から外れる不具合を回避する。
【解決手段】 一端側に設けた被係止バンド部2と、他端側に設けることにより、被係止バンド部2を挿入し、かつ挿入した当該被係止バンド部2を係止する短辺方向Dsに形成した一又は二以上の縦長孔部4a…を有する係止バンド部3とを備え、全体を樹木Tに巻付け可能に一体形成した樹木用獣害防止具1を構成するに際して、被係止バンド部2及び係止バンド部3を、柔軟性素材を用いたシート材Sにより形成するとともに、被係止バンド部2における長辺2u,2dの一方又は双方に、縦長孔部4a…に対する被係止バンド部2の係止時に所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2が縦長孔部4a…を通過可能な複数の凹凸部6m…,6v…を長辺方向Dmに順次形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木に巻付けることにより樹木を獣類から保護するための樹木用獣害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、獣類による森林の被害は、主に、熊,鹿等によってもたらされる場合が顕著であり、従来より、防護柵,忌避剤,爆音等による各種対策が講じられているが、その効果は限定的であったり、或いは実施に伴って相当のコストと労力(作業)が強いられるとともに、ゴミ等の発生による自然環境への悪影響が指摘されている。
【0003】
このため、従来より、樹木に巻付けることにより樹木を獣類から保護する樹木用獣害防止具も提案されており、特許文献1には、柔軟性を有するシート状のツリープロテクター本体と、このツリープロテクター本体に一体に設けられ、ツリープロテクター本体を巻回した状態で保持する保持機構とを有するとともに、ツリープロテクター本体が矩形状に形成され、保持機構が、ツリープロテクター本体の1つの辺に設けられた係止片と、当該1つの辺と対向する辺側の表面に係止片を係止させるために設けられたスリットとからなるツリープロテクターが開示され、また、特許文献2には、成長物に巻付ける第一バンド部を備え、この第一バンド部の長手方向一端側に挿通孔を設け、かつ第一バンド部の長手方向他端側に挿通孔に挿通する所定長さの第二バンド部を設けるとともに、この第二バンド部の幅方向両側の辺部にそれぞれ複数の弾性突出部を長手方向に沿って所定間隔おきに設け、かつ第二バンド部の幅方向における一方側の弾性突出部の先端から他方側の弾性突出部の先端までの長さを、挿通孔の幅方向長さよりも長くなるように選定し、弾性素材を用いた網部材により一体形成した成長物用カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3067313号公報
【特許文献2】特開2004−298004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の樹木用獣害防止具(ツリープロテクター,成長物用カバー)は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
まず、特許文献1のツリープロテクターは、シート材により形成したツリープロテクター本体を樹木に巻き付け、保持機構により固定して使用するものであるため、使用期間の経過により樹木が成長し、太くなった場合には、保持機構が外れてツリープロテクターが地面に落下する懸念がある。このため、定期的に見回り、保持機構の保持位置を変更して装着し直す必要があるなど、装着後のメンテナンスなどが大変となる。しかも、樹木を遮蔽して保護するため、保護する樹木の面積に対応したサイズを確保する必要があり、材料コスト及び資源節約の観点からも不利になるとともに、樹木に対する通気性の悪化も無視できない。
【0007】
一方、特許文献2の成長物用カバーは、上述した特許文献1の様々な問題点は全て解消できる特長を備えているが、主に人為的に付加された造作物には近寄らないという獣類の習性による忌避効果を利用するため、目立ちにくい網部材ゆえに獣類に対しては忌避効果が小さくなることが否めないとともに、形成素材として生分解性プラスチック等を用いた場合、強度が確保できなかったり不安定になることも無視できない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した樹木用獣害防止具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一端側に設けた被係止バンド部2と、他端側に設けることにより、被係止バンド部2を挿入し、かつ挿入した当該被係止バンド部2を係止する短辺方向Dsに形成した一又は二以上の縦長孔部4a,4bを有する係止バンド部3とを備え、全体を樹木Tに巻付け可能に一体形成した樹木用獣害防止具1を構成するに際して、被係止バンド部2及び係止バンド部3を、柔軟性素材を用いたシート材Sにより形成するとともに、被係止バンド部2における長辺2u,2dの一方又は双方に、縦長孔部4a…に対する被係止バンド部2の係止時に所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2が縦長孔部4a…を通過可能な複数の凹凸部6m…,6v…を長辺方向Dmに順次形成してなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な実施の態様により、係止バンド部3には、当該係止バンド部3を略45〔゜〕の折線部位Ka,Kbにより略直角に折曲した際に縦長孔部4a,4bに重なる一又は二以上の横長孔部5a,5bを長辺方向Dmに形成することができ、この際、折線部位Ka,Kbは、切込みによるミシン目k(又は凹溝)により設けることができる。また、横長孔部5a,5bと縦長孔部4a,4bの形状は同一又は非同一に形成することができる。一方、柔軟性素材には、生分解性プラスチック素材Rを用いることができる。なお、被係止バンド部2及び/又は係止バンド部3の長さは、係止時に係止部分Cから所定長さの余剰分が生じるように選定することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る樹木用獣害防止具1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 被係止バンド部2及び係止バンド部3を、柔軟性素材を用いたシート材Sにより形成するとともに、被係止バンド部2における長辺2u,2dの一方又は双方に、縦長孔部4a…に対する被係止バンド部2の係止時に所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2が縦長孔部4a…を通過可能な複数の凹凸部6m…,6v…を長辺方向Dmに順次形成してなるため、シート材Sによる十分な忌避効果、即ち、人為的に付加された造作物には近寄らないという獣類の習性による忌避効果を十分に確保できることに加えて、樹木Tが使用期間の経過により太く成長した場合であっても、樹木用獣害防止具1はいわば自動で広がるため、樹木用獣害防止具1が樹木Tから外れてしまう不具合を回避できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、係止バンド部3に、当該係止バンド部3を略45〔゜〕の折線部位Ka,Kbにより略直角に折曲した際に縦長孔部4a,4bに重なる一又は二以上の横長孔部5a,5bを長辺方向に形成すれば、縦長孔部4a…のみを使用する通常の使用態様に加えて、係止バンド部3の厚さを実質的に二倍にし、縦長孔部4a…と横長孔部5a…の双方を使用することにより係止時の強度を概ね二倍にできる使用態様を選択できる。特に、シート材Sに引張強さの大きさに方向性がある場合、略直角となる方向に形成した縦長孔部4a…と横長孔部5a…を組合わせることにより、強度の向上及び安定化に寄与できる。また、係止バンド部3の先端側は、下方に垂らすことができるため、獣類に対する忌避効果をより高めることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、折線部位Ka,Kbに、切込みによるミシン目k(又は凹溝)により設ければ、柔軟性素材を用いたシート材Sであっても、正確な位置を容易かつ確実に折曲することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、横長孔部5a…と縦長孔部4a…の形状を同一又は非同一に形成すれば、例えば、被係止バンド部2の挿入容易性及び係止強度のバランスを考慮して一方の縦長孔部4a…の幅を広くし、かつ他方の横長孔部5a…の幅を狭くしたり、或いは、縦長孔部4a…及び横長孔部5a…の双方の幅を狭くして係止強度を高めたり、或いは、縦長孔部4a…及び横長孔部5a…の双方の幅を広くして挿入容易性を高めるなど、横長孔部5a…と縦長孔部4a…の組合わせにより機能性及び多様性をより高めることができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、柔軟性素材として生分解性プラスチック素材Rを用いれば、樹木Tに装着した後、そのまま放置した場合であっても、最終的には分解して自然界に戻るため、回収を不要にすることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、被係止バンド部2及び/又は係止バンド部3の長さを、係止時における係止部分Cから所定長さの余剰分が生じるように選定すれば、被係止バンド部2及び/又は係止バンド部3のそれぞれの先端側は、被係止バンド部2と係止バンド部3の係止部分Cから所定の長さ分だけ垂れ下がるため、獣類に対する忌避効果をより高めることができる。この結果、樹木用獣害防止具1の幅寸法をより小さくすることも可能となり、材料コスト及び資源節約の観点からも有利に製作できるとともに、樹木Tに対する通気性の悪化も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施形態に係る樹木用獣害防止具の全体外観図、
【図2】同樹木用獣害防止具の使用状態を示す斜視図、
【図3】同樹木用獣害防止具の被係止バンド部と係止バンド部の係止部分を抽出して示す部分抽出拡大斜視図、
【図4】同樹木用獣害防止具の機能説明図、
【図5】本発明の変更実施形態に係る樹木用獣害防止具の全体外観図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る樹木用獣害防止具1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0021】
図1に、樹木用獣害防止具1の全体構成(全体形状)を示す。この樹木用獣害防止具1は、柔軟性素材を用いたシート材Sにより一体形成する。柔軟性素材には、生分解性プラスチック素材Rが望ましい。生分解性プラスチック素材Rとしては、一例として、高分子量の結晶性を有する融点60〜115〔℃〕の熱可塑性ポリカプロラクトン等を用いることができる。この生分解性プラスチック素材Rは、使用中は、他の一般的な合成樹脂素材と同等の物性を備えているが、土壌等の自然環境下では、微生物により水と二酸化炭素に分解される特性を有している。なお、生分解性プラスチック素材Rには、耐候性を高めるため、適量の紫外線吸収剤を配合してもよい。このように、柔軟性素材として生分解性プラスチック素材Rを用いれば、樹木Tに装着した後、そのまま放置した場合であっても、最終的には分解して自然界に戻るため、回収を不要にできる利点がある。
【0022】
樹木用獣害防止具1は、基本的な構成として、一端側に設けた被係止バンド部2と、他端側に設けることにより、被係止バンド部2を挿入し、かつ挿入した当該被係止バンド部2を係止する短辺方向Dsに形成した二つの縦長孔部4a,4bを有する係止バンド部3とを備える。したがって、樹木用獣害防止具1は、全体を生分解性プラスチック素材Rにより、樹木Tに巻付け可能となるようにバンド状に一体形成し、一端側に位置するほぼ半分を被係止バンド部2とし、他端側に位置するほぼ半分を係止バンド部3とする。
【0023】
被係止バンド部2における上下に位置する長辺2u,2dの双方には、それぞれ複数の凹凸部6m…,6v…(凹部6v…,凸部6m…)を長辺方向Dmに順次形成する。この凹凸部6m…,6v…は、縦長孔部4a…に対して被係止バンド部2を係止させた際に、所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2が縦長孔部4a…を通過可能な形状及び大きさを選定する。実施形態の凹凸部6m…,6v…は、半円形の山部を順次連続形成したものであり、これにより、半円形の山部が凸部6m…となり、半円形の山部と山部間の谷部が凹部6v…となる。例示の場合、被係止バンド部2は、幅が10〔cm〕前後、長さが80〔cm〕前後である。
【0024】
係止バンド部3は、幅が15〔cm〕前後、長さが70〔cm〕前後の矩形状に形成し、長手方向Dmの離間した位置には二つの縦長孔部4a,4bを形成する。この場合、縦長孔部4a,4bは、細長い小判形に形成し、この縦長孔部4a,4bの長さ(又は被係止バンド部2の幅)は、前述したように、被係止バンド部2を当該縦長孔部4a,4bに挿入した際に、図4(b)に示すように、被係止バンド部2の凹部6v…が縦長孔部4a,4bに係止して保持され、かつ係止時に所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2(凸部6m…)が縦長孔部4a,4bを通過可能に選定する。
【0025】
さらに、係止バンド部3における各縦長孔部4a,4bの近傍には、図1に示すように、それぞれ略45〔゜〕のミシン目kを形成して折線部位Ka,Kbを設けるとともに、図1に仮想線で示すように、この折線部位Ka,Kbにより係止バンド部3を略直角に折曲した際に、縦長孔部4a,4bに重なり合う二つの横長孔部5a,5bを当該係止バンド部3における長辺方向Dmに形成する。例示の横長孔部5b(5aも同じ)は、加工性及び挿入性を考慮し、図4(a)に示すように、両端位置に円形の小孔5s,5sを形成し、この小孔5sと5s間に切溝5cを形成した。
【0026】
このように、係止バンド部3に、当該係止バンド部3を折線部位Ka,Kbにより略直角に折曲した際に縦長孔部4a,4bに重なり合う横長孔部5a,5bを設ければ、縦長孔部4a…のみを使用する通常の使用態様に加えて、係止バンド部3の厚さを実質的に二倍にし、縦長孔部4a…と横長孔部5a…の双方を使用することにより係止時の強度を概ね二倍にできる使用態様を選択可能となる。特に、例示のように、生分解性プラスチック素材Rを用いたシート材Sにより形成し、引張強さの大きさに方向性がある場合、即ち、幅方向(短辺方向Ds)に裂け易いような場合、略直角となる方向に形成した縦長孔部4a…と横長孔部5a…を組合わせることにより、強度の向上及び安定化に寄与できる。しかも、係止バンド部3の先端側は、下方に垂らすことができるため、獣類Aに対する忌避効果をより高めることができる。この場合、折線部位Ka,Kbに、切込みによるミシン目kにより設ければ、柔軟性素材を用いたシート材Sであっても、正確な位置を容易かつ確実に折曲できる利点がある。
【0027】
また、各横長孔部5a,5bは、各縦長孔部4a,4bに対して形状的に非同一に形成したが同一に形成してもよい。例示のように、一方の縦長孔部4a…の幅を広くし、かつ他方の横長孔部5a…の幅を狭くすれば、被係止バンド部2の挿入容易性と係止強度のバランスを考慮することができる。その他、縦長孔部4a…及び横長孔部5a…の双方の幅を狭くして係止強度を高めたり、或いは、縦長孔部4a…及び横長孔部5a…の双方の幅を広くして挿入容易性を高めてもよい。このように、横長孔部5a…と縦長孔部4a…の形状は同一に形成してもよいし、非同一に形成してもよいなど、横長孔部5a…と縦長孔部4a…の組合わせにより機能性及び多様性をより高めることができる利点がある。
【0028】
次に、本実施形態に係る樹木用獣害防止具1の使用方法及び作用について、図1〜図4を参照して説明する。
【0029】
まず、樹木用獣害防止具1を、装着しようとする樹木Tへ持って行く。なお、例示の樹木Tは、直径25〔cm〕以下である。そして、樹木用獣害防止具1における折線部位Kaを境目にして係止バンド部3の先端側を係止バンド部3の被係止バンド部2側に対して略直角に折畳む。これにより、縦長孔部4aと横長孔部5aは図3に示すように重なり合う。
【0030】
次いで、この状態の樹木用獣害防止具1を、図2に示すように、樹木Tにおける獣類Aから見える所定位置、望ましくは、熊や鹿等の比較的大きい獣類Aにとって目の高さに相当する地面から50〔cm〕程度の高さに巻き付けるとともに、被係止バンド部2の先端側を、縦長孔部4aに挿入し、更に横長孔部5aに挿入する。また、挿入したなら被係止バンド部2を、縦長孔部4a及び横長孔部5aに対して強く引張り、被係止バンド部2の凸部6m…を変形させることにより縦長孔部4a及び横長孔部5aに挿通させ、樹木用獣害防止具1を樹木Tの表面に密着(圧接)させる。そして、図3に示すように、被係止バンド部2の各長辺2u,2dにおける各凹部6v…に、縦長孔部4a及び横長孔部5aを位置させる。
【0031】
これにより、各凸部6m…が縦長孔部4a及び横長孔部5aの縁部に係止し、容易な抜けが阻止される。この結果、樹木用獣害防止具1は、図2に示すように、樹木Tに巻付いた状態で保持される。図中、Cは被係止バンド部2と係止バンド部3の係止部分を示す。このように、本実施形態に係る樹木用獣害防止具1は、別途の固定手段を用いることなく、必要な樹木Tに対して極めて容易に装着することができる。
【0032】
また、この際、図2に示すように、樹木Tに装着した樹木用獣害防止具1における被係止バンド部2の先端側及び係止バンド部3の先端側は係止部分Cから垂れ下がるように考慮する。即ち、被係止バンド部2及び係止バンド部3の長さを、係止部分Cから所定長さの余剰分が生じるように予め選定する。これにより、被係止バンド部2及び係止バンド部3のそれぞれの先端側は、係止部分Cから所定の長さ分だけ垂れ下がる自由端となる。この結果、獣類Aにとっては、全体として、より複雑な形状の人為的な造作物として認識されるとともに、風が吹いた際にはランダムに揺れるため、獣類Aに対する忌避効果をより高めることができる。加えて、樹木用獣害防止具1の幅寸法をより小さくすることも可能となり、材料コスト及び資源節約の観点からも有利に製作できるとともに、樹木Tに対する通気性の悪化も回避できる。なお、例示の場合、被係止バンド部2と係止バンド部3の双方に、係止部分Cからの余剰分が生じるようにしたが、いずれか一方にのみ当該余剰分が生じるようにしても勿論よい。
【0033】
他方、樹木Tが成長し、径が太くなった場合、樹木Tに巻付けた樹木用獣害防止具1も追従して広がる。即ち、この場合、縦長孔部4a及び横長孔部5aに対して、被係止バンド部2から所定の引張荷重が付加されるため、所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加された際には、上下における各凸部6m…がそれぞれ変形し、縦長孔部4a及び横長孔部5aの縁部を乗り越え、樹木用獣害防止具1の径が大きくなる。これにより、樹木用獣害防止具1が樹木Tから外れてしまう不具合は回避される。
【0034】
なお、以上は、樹木Tの直径が25〔cm〕以下の場合について説明したが、樹木Tの直径が25〔cm〕を越える場合には、図4(a)に示すように、他方の折線部位Kbを折畳み、縦長孔部4b及び横長孔部5bに被係止バンド部2を挿入して使用すればよい。さらに、使用環境(気候)や獣類Aの種類によっては、折線部位Ka,Kbで折畳むことなく、被係止バンド部2を縦長孔部4a又は4bのみに挿入して使用してもよい。図5には、折線部位Ka,Kb及び横長孔部5a,5bを設けない、より簡易化した樹木用獣害防止具1を変更実施形態として示す。この変更実施形態に係る樹木用獣害防止具1は、幅方向(短辺方向Ds)の長さを、図1に示した樹木用獣害防止具1に対して、概ね1/2とした。したがって、使用する際には、被係止バンド部2を、縦長孔部4a又は4bを選択して挿通させることにより使用可能となる。
【0035】
このように、本実施形態に係る樹木用獣害防止具1によれば、被係止バンド部2及び係止バンド部3を、柔軟性素材を用いたシート材Sにより形成するとともに、被係止バンド部2における長辺2u,2dに、縦長孔部4a…及び横長孔部5a…に対する被係止バンド部2の係止時に所定の大きさ以上の引張荷重Fが付加されることにより被係止バンド部2が縦長孔部4a…及び横長孔部5a…を通過可能な複数の凹凸部6m…,6v…を長辺方向Dmに順次形成してなるため、シート材Sによる十分な忌避効果、即ち、人為的に付加された造作物には近寄らないという獣類Aの習性による忌避効果を十分に確保できることに加えて、樹木Tが使用期間の経過により太く成長した場合であっても、樹木用獣害防止具1はいわば自動で広がるため、樹木用獣害防止具1が樹木Tから外れてしまう不具合を回避できる。
【0036】
以上、好適実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0037】
例えば、一端側に設けた被係止バンド部2と他端側に設けた係止バンド部3により構成した形態を示したが、被係止バンド部2と係止バンド部3間には必要により中間部等が介在する形態であってもよい。また、シート材Sに用いる柔軟性素材として生分解性プラスチック素材Rが望ましいが、地形等により回収を前提とする場合には、一般的な各種合成樹脂を用いる場合を排除するものではない。さらに、被係止バンド部2における長辺2u,2dの双方に凹凸部6m…,6v…を設けた場合を示したが、長辺2u,2dのいずれか一方にのみ設ける場合であっても実施可能である。なお、凹凸部6m…,6v…の形状として半円形を例示したが、半楕円形,台形,三角形等の、同様の機能を発揮する各種形状により実施可能である。一方、折線部位Ka,Kbの角度を略45〔゜〕としたが、一定の幅を有する、例えば、45±20〔゜〕程度と同義である。また、縦長孔部4a,4bと横長孔部5a,5bはそれぞれ二つ形成した場合を示したが、一般的には一又は二以上の数量により実施可能である。さらに、折線部位Ka,Kbとして、切込みによるミシン目kを設ける場合を示したが、凹溝(薄肉形成ライン)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る樹木用獣害防止具は、獣類(鳥類を含む)から保護する必要がある森林や果樹園等における各種樹木及びその類似物に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:樹木用獣害防止具,2:被係止バンド部,2u:被係止バンド部の長辺,2d:被係止バンド部の長辺,3:係止バンド部,4a:縦長孔部,4b:縦長孔部,5a:横長孔部,5b:横長孔部,6m…:凸部,6v…:凹部,C:係止部分,Ds:短辺方向,Dm:長辺方向,F:引張荷重,Ka:折線部位,Kb:折線部位,k:ミシン目,R:生分解性プラスチック素材,S:シート材,T:樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に設けた被係止バンド部と、他端側に設けることにより、前記被係止バンド部を挿入し、かつ挿入した当該被係止バンド部を係止可能な短辺方向に形成した一又は二以上の縦長孔部を有する係止バンド部とを備え、全体を樹木に巻付け可能に一体形成した樹木用獣害防止具において、前記被係止バンド部及び前記係止バンド部を、柔軟性素材を用いたシート材により形成するとともに、前記被係止バンド部における長辺の一方又は双方に、前記縦長孔部に対する前記被係止バンド部の係止時に所定の大きさ以上の引張荷重が付加されることにより前記被係止バンド部が前記縦長孔部を通過可能な複数の凹凸部を長辺方向に順次形成してなることを特徴とする樹木用獣害防止具。
【請求項2】
前記係止バンド部は、当該係止バンド部を略45〔゜〕の折線部位により折曲した際に前記縦長孔部に重なる一又は二以上の横長孔部を長辺方向に形成してなることを特徴とする請求項1記載の樹木用獣害防止具。
【請求項3】
前記折線部位は、切込みによるミシン目又は凹溝により設けることを特徴とする請求項2記載の樹木用獣害防止具。
【請求項4】
前記横長孔部と前記縦長孔部の形状は同一又は非同一に形成することを特徴とする請求項2又は3記載の樹木用獣害防止具。
【請求項5】
前記柔軟性素材は、生分解性プラスチック素材を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹木用獣害防止具。
【請求項6】
前記被係止バンド部及び/又は前記係止バンド部の長さは、係止時に係止部分から所定長さの余剰分が生じるように選定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹木用獣害防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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