説明

樹木等の凍害等に対する防御塗料及び樹木等の防御方法

【課題】 果樹等の樹木を、日焼け、冷害のほか害虫、害鳥、害獣からの被害を防止する防御塗料とその使用方法を提供する。
【解決手段】 防御塗料は、基本的には40%〜60%重量比のチタン水溶液と30%〜40%重量比のモビニール等のバインダーに対して、20%〜30%重量比のハーブの植物精油のエキスを単独又は複数種ブレンドしたものを含浸させて形成し、さらに、capsicum(激辛トウガラシ)のエキス、さらに、ガーリック(ニンニク)のエキスを混合するのが望ましい。
上記塗料を、樹木1の主幹2、側枝3、4に塗布又は散布して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種場所に生育する樹木等の凍害等に対する防御塗料及びこの防御塗料を用いた防御方法の改良に関するものである。
に関する。
【背景技術】
【0002】
春先又は冬期では、昼と夜の温度較差が大きく、これにより樹木は損傷を受ける。即ち、樹木は低温に遭遇すると、樹体温度が低下する。0℃以下の過冷却と呼ばれる状態が続くと、外部から霜が付いて凍結状態となるため、樹木に凍害が発生する。このような樹木の凍害は、寒冷地は勿論であるが、暖地でも、栗、桃、梨等の若木の幹や茎の部分には、冬期間に生じる温度差のために、凍害が発生することが知られている。
また、果樹では、冬期間、土壌の凍結などにより樹木の根からの水分補給が絶たれた条件で、強い風や日射で樹木の地上部が強制的に脱水されて起こる被害で、比較的長い期間、寒風にさらされ、徐々に乾燥することにより被害が発生する凍乾害という弊害も生じることが知られている。
さらに、例えば、林檎等の果樹の成木においては、樹体の日焼けによる損傷という問題もある。
この場合、6月から7月頃には、葉によって枝は陰となり日差しから守られているが、春先の場合は、葉がないので、樹木の主幹や側枝がまともに紫外線を受け、紫外線による影響が脅威となるものである。特に、桃の斜め立て仕立て、ブドウや梨の棚仕立て、林檎のわい化の側枝など、紫外線に対して直角に近い角度になるような枝では、日焼けによる損傷が問題となる。
また、果樹等の樹木の場合には、凍害や凍乾害のほかに、果実に対する種々の害虫、カラス等の害鳥のほか、山林地域では植林した幼木が鹿の食害に合っている等、近年では猪、猿等の害獣に対する防御も要求されている。
特に、猪は林檎の木の根元で生育する蝉の幼虫を食べる習性があるので、これにより林檎の樹木を損傷し、倒木させる恐れがある。
さらに、海岸地域に植林されている樹木の塩害も問題となっている。
【0003】
従来の、樹木の凍害や凍乾害の対策としては、カルシウムを主成分とする白塗料を樹木の根元に塗布することが行われており、可成りの成果を挙げている。
また、凍害防止用の杭を用いることも知られている。
さらに、果実の害虫に対しては、袋がけなどの別の手段が併せ行われていた。
【0004】
【特許文献1】特開平07−189281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のものでは、例えば、前者の白塗料の場合には、凍害、凍乾害に対しては有効といえるが、果樹等の樹木の場合には、害虫予防のため果実に対して袋がけ等の別の手段を併用する必要があり、簡略化が要望されていた。
また、特許文献1に記載の「凍害防止用杭」の場合には、構成するのに高度の技術を必要とすると共に、果樹等の樹木の場合には、矢張り、果実の対して袋がけ等の別の手段を併用する必要があった。
このように、袋がけによる害虫対策の場合も、害虫に対する防御機能は発揮できるが、害鳥、害獣に対しては防御機能を発揮できないという問題点があった。
【0006】
本発明は従来のものの上記課題を解決し、凍害、凍乾害のほか、果実に対する防虫、防鳥、防獸効果もある樹木等の防御塗料及びこの防御塗料を用いた防御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の防御塗料は、40%〜60%重量比のチタン水溶液と30%〜40%重量比のモビニール等のバインダーに対して、20%〜30%重量比のハーブの植物精油のエキスを単独又は複数種ブレンドしたものを含浸させて形成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の防御塗料では、請求項1に記載の防御塗料におけるハーブの植物精油として、シトロネラとニームオイル又はシトロネラとブラックペッパー或いはシトロネラとブラックペッパーとニームオイルを所定の割合でブレンドしたものを用いることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の防御塗料では、さらに、構成要素として、次の構成要素A又はBのいずれかを付加するようにしたことを特徴とする。
A:capsicum(激辛トウガラシ)のエキス
B:capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキス。
【0010】
また、請求項4に記載の樹木の防御方法では、請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木の主幹、側枝に塗布又は散布するようにしたことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に記載の樹木の防御方法では、請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木等の棚資材又は防寒用具に対してに塗布又は散布するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1に記載の防御塗料では、この塗料が樹木の主幹や側枝に塗布されることにより、日中の温度上昇と温度低下を防止できるため、樹木の急激な温度変化による凍害や樹木の日焼けを回避できる。
また、春期には樹体温の上昇による耐凍性を遅らせると共に、凍結後の急激な温度上昇による凍害の被害の拡大を回避できる。
また、防御塗料中に含まれるチタン水溶液が空気中の酸素と結合して酸化チタンとなり、この酸化チタンが太陽光線を受けて光触媒作用をして、抗菌、防泥、防汚作用があるので、樹木の汚染による劣化も防御される。
さらに、この塗料を樹木の主幹の地際から所要範囲に亙って塗布、散布するか、側枝にも塗布、散布することでハーブ成分による害虫防止機能が発揮されるので、樹木が、害虫の被害から防御される。
【0013】
また、請求項2に記載の防御塗料では、ハーブの植物精油の内、最も、防虫効果の点で優れた組み合わせが選択されるので、これを樹木の主幹や側枝に塗布、散布することで、前記した樹木の凍害や日焼けに対する防御は勿論のこと、樹木が、害虫の被害に対して効果的な防御を行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載のように、capsicum(激辛トウガラシ)のエキス又は、capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキスを加えて生成した防御塗料では、これを樹木の主幹に塗布、散布することで樹木が凍害や日焼けに対する防御は勿論のこと、害虫のほか、害鳥や害獣に対する被害に対しても効果的な防御を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載のように、請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木の主幹、側枝に塗布又は散布するようにすれば、請求項1の効果に記載の理由により、樹木が凍害や日焼けに対する防御は勿論のこと、害虫、害鳥や害獣に対する被害に対しても効果的な防御を行うことができる。
【0016】
さらに、請求項5に記載のように、請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木等の棚資材又は樹木の防寒用具に塗布又は散布するようにしても、請求項4に準じた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本願発明の実施の形態に基づき本願防御塗料を具体的に説明する。
第1の実施の形態:
第1の実施の形態の防御塗料は、本願発明の基本構成を示す防御塗料で、40%〜60%重量比のチタン水溶液と30%〜40%重量比のモビニール等のバインダーに対して、20%〜30%重量比のハーブの植物精油のエキスを単独又は複数種ブレンドしたものを含浸させて形成する。
この場合、チタン水溶液としては、EP677WHITEの製品番号のものを、また、バインダーとしては、モビニール507の製品番号のものを用いると好適である。
【0018】
この場合、防御塗料におけるハーブの植物精油としては、種々のハーブの植物精油を単独に用いても良いが、複数種のハーブの植物精油をブレンドして用いるのが望ましい。
この場合、各種のブレンドの選択例が考えられるが、特に、次のものが適当である。まず、2種のものを例示すると、シトロネラ等のカンキツ系の植物精油(ここでは、シトロネラと記載する)とニームオイル等のセンダン科の植物精油(ここでは、ニームオイルと記載する)を、例えば、80〜97:20〜3%の割合でブレンドしたものを使用すればよい。
また、ニームオイルに代え、ブラックペッパーを用い、シトロネラとブラックペッパーを80〜97:20〜3%の割合でブレンドするようにしてもよい。
さらに、3種のブレンド例としては、シトロネラとブラックペッパーとニームオイルを30〜34:30〜34:30〜34%の割合でブレンドしたものを用いのが適当である。
【0019】
ここで、ハーブの植物精油の内、害虫に対する忌避効果の点で、特に有効なシトロネラ、ニームオイル及びブラックペッパーについて説明すると、次の通りである。
1.シトロネラ
説明:シンボパゴン ナルダス(Cymbopagon nardus)の乾燥した草を蒸留して得られるもの。
工業的データ:
(1)特徴:柑橘類の臭い、特別な刺激臭を有する黄色〜青黄色の液体
(2)20℃の比重:0.880〜0.922
(3)20℃の屈折率:1.466〜1.1475
(4)合計のゼラニオール(Geraniol)(%W/W):最低値85
(5)シトロネリアル(Citronelial)(%W/W):最低値35
(6)80%エタノールにおける溶解度(V/V) :1.2クリア
【0020】
2.ニームオイル:
このサンプルは、ニーム ケルネル オイル(Neem Kernel Oil)と称されるもので、次の組成のものである。
(1)質量中の水分及び不純物の割合:0.176
(2)40℃における屈折率:1.456
(3)鹸化値:1.87
(4)ヨウ化物値(Iodine value):73
(5)酸化値:8.62
(6)質量中の反鹸化値の割合:0.53
【0021】
3.ブラックペッパー
ブラックペッパーは、別名クロコショウとも呼ばれ、学術名はPiper nigrumである。
ブラックペッパーは、コショウ科のハーブで、化学的な組成としては、オイゲノール、ミリスチシン、サフロール(フェノール類)、ピサポレン、カンフェン、ファルネセン、リモネン、ミルセン、フェランドレン、ピネン、サビネン、セリネン、ツジェン(テルペン類)、カリオフィレン(セスキテルペン)等から成る。
非常に鋭い、スパイシーな香りがあり、種々の機能を有するが、本願発明では、その内の殺線虫活性、虫体破裂活性等の殺虫機能を有する点に着目して使用するものである。
【0022】
このように生成した第1の実施の形態の防御塗料を果樹等の樹木の主幹や側枝に塗布、散布することで、この塗料が樹木の主幹や側枝に塗布されることにより、日中の温度上昇と温度低下を防止できるため、樹木の急激な温度変化による凍害や樹木の日焼けを回避できる。
また、春期には樹体温の上昇による耐凍性を遅らせると共に、凍結後の急激な温度上昇による凍害の被害の拡大を回避できる。
また、防御塗料中に含まれるチタン水溶液が空気中の酸素と結合して酸化チタンとなり、この酸化チタンが太陽光線を受けて光触媒作用をして、抗菌、防泥、防汚作用があるので、樹木の汚染による劣化も防御される。
また、防御塗料に含まれるハーブが防虫作用があるので、害虫から果実を防御する作用も生じる。
【0023】
第2の実施の形態:
第2の実施の形態として、第1の実施の形態の防御塗料の組成に、さらに、capsi−cum(激辛トウガラシ)のエキス又は、capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキスを加えて生成した防御塗料である。
このような防御塗料では、これを果樹等の樹木の主幹や側枝に塗布、散布することで、第1の実施の形態と同様な理由で、樹木が凍害や日焼けに対する防御は勿論のこと、前記capsicum(激辛トウガラシ)のエキス又は、capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキスから発生される異臭により、害虫のほか、カラスのような害鳥や猿、猪、鹿など害獣に対して忌避作用を与えて寄せ付けないので、これら害虫、害鳥、害獣に対する被害に対しても効果的な防御を行うことができる。
【0024】
第3の実施の形態:
次に、本発明の第3の実施の形態として、本発明の防御塗料を、果樹に対して適用した場合を、図1を用いて説明する。
図1において、1は、林檎等の果実Aを生育する果樹で、その主幹部分2や側枝部分3、4に、第1又は第2の実施の形態で説明した本発明の防御塗料を、2a、3a、4aで示すように、特に、日焼けがおこる南側の主幹には地際から所要範囲に亙り、また側枝に対しても、その所要範囲に亙り塗布又は散布するものである。
なお、本発明の防御塗料を適用対象に塗布、散布する場合には、本発明の防御塗料をそのまま使用してもよいが、対象によっては、例えば、適量の水を加えて0.5〜0.75倍になるように撹拌して薄めて使用するのが適当である。
このように本防御塗料を果樹の主幹や側枝に塗布又は散布することで、第1の実施の形態で述べた理由で、樹木の日焼け、凍害防止ができると共に、防御塗料に含まれるハーブの作用で防虫効果があるので、害虫から果実を防御する作用も生じる。
さらに、防御塗料が第2の実施の形態のものの場合には、capsicum(激辛トウガラシ)のエキス又は、capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキスから発生される異臭により、害虫のほか、カラスのような害鳥や猿、猪、鹿など害獣に対して忌避作用を与えて寄せ付けないので、これら害虫、害鳥、害獣に対する樹木、果実の被害に対しても効果的な防御を行うことができる。
【0025】
第4の実施の形態:
第4の実施の形態は、ブドウ園における適用例を示すもので、この場合は、ブドウの樹木のほか棚資材に対しても、本発明の防御塗料を適用するものである。
ブドウ園の場合は、ブドウの樹木のほか棚資材にも上記した果樹の場合と同様、日焼けや汚染による劣化の被害があるので、図2に示すように、ブドウBの樹木5の主幹部分6や側枝のほか棚資材7の全体に対しても、第1又は第2の実施の形態で説明した本発明の防御塗料を塗布又は散布するものである。
このようにすることで、前記のように、防御塗料の塗布により樹木の日焼けや凍害が防止できると共に、ブドウの実に対する害虫、害鳥、害獣に対しても適正な防御がなされる。本実施の形態では、特に、棚資材7に本塗料を塗布するので、棚資材の劣化が防止される共に、ハーブとcapsicumやガーリック等の付加機能の効果がより強化されるので、害虫、害鳥、害獣に対する防御が強化される。
【0026】
上記の実施の形態は、本願発明の一実施の形態を示すもので、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、果樹として、林檎とブドウを示したが、林檎、ブドウのほか、梨、桃、栗、ヤシ等の各種の果実の果樹も適用対象とできる。
また、山林地域に植林された幼木に対しても、本防御塗料を塗布又は散布することで、鳥獣の被害を回避できる。
さらに、海岸地域に植えられた樹木に対しては、海水による塩害の恐れもあるが、本発明の防御塗料を、根元から塗布、散布しておくことで、塩害に対しての汚染防止がなされるので、その生育が損傷されることがない。
また、図示しないが、適用対象とする樹木に冬季に布等の防寒用具を装着する場合には、このような防寒用具に対して本発明の防御塗料を塗布するような態様も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は、各種の果実をつける果樹等の日焼けや凍害防止のほか、ブドウ園の棚資材などの日焼け、汚染による劣化の防止、海岸地域の樹木も塩害防止、さらには、果実や樹木に対しての害虫、害鳥、害獣の防御に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の防御塗料を果樹である林檎に適用した場合を示す側面図である。
【図2】本発明の防御塗料を果樹であるブドウとその棚資材に適用した場合を示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1、5:果樹
2、6:主幹
3、4:側枝
2a、3a、4a、6a:塗布範囲
7:棚資材
A:林檎等の果実
B:ブドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40%〜60%重量比のチタン水溶液と30%〜40%重量比のモビニール等のバインダーに対して、20%〜30%重量比のハーブの植物精油のエキスを単独又は複数種ブレンドしたものを含浸させて形成したことを特徴とする防御塗料。
【請求項2】
上記のハーブの植物精油として、シトロネラとニームオイル又はシトロネラとブラックペッパー或いはシトロネラとブラックペッパーとニームオイルを所定の割合でブレンドしたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の防御塗料。
【請求項3】
さらに、構成要素として、次の構成要素A又はBのいずれかを付加するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防御塗料。
A:capsicum(激辛トウガラシ)のエキス
B:capsicum(激辛トウガラシ)のエキスとガーリック(ニンニク)のエキス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木の主幹、側枝に塗布又は散布するようにしたことを特徴とする樹木の防御方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の防御塗料を、樹木等の棚資材又は樹木の防寒用具に対してに塗布又は散布するようにしたことを特徴とする樹木の防御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−75068(P2006−75068A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262071(P2004−262071)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(591080483)
【出願人】(504343708)
【Fターム(参考)】