説明

樹枝状高分子およびこれを用いた磁気共鳴イメージング造影剤

【課題】樹枝状高分子およびこれを用いた磁気共鳴イメージング造影剤を提供すること。
【解決手段】磁気共鳴イメージング造影剤は、下記で示される構造を有する。


Pは下記でありlは1以上の数、jは2以上の数、Dはn個の酸素残基を有する炭素数3〜30の樹枝状部分であり、nは3以上の数、iは1より大きい整数。Xは二官能性を有する炭素数3〜30の部分、Zは複数の官能基を有する炭素数3〜20の部分である


であり、Zは下記の基:


または


によりXにそれぞれ結合する。Lは金属カチオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹枝状高分子およびこれを用いた磁気共鳴イメージング造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用画像撮影は、様々な撮像装置から発せられる磁気、光(例えば、蛍光、近赤外光、X線)および放射線の物理的な信号により、機能的および解剖的な画像を作成することができる。撮像装置としては、例えば、平面X線撮像システム、X線コンピュータ断層撮像(CT)システムおよび磁気共鳴イメージング(MRI)システムなどが挙げられる。これらの撮像装置は、中枢神経系、骨格神経系、腹腔および胸腔の診断、血液造影診断、胆道撮影診断、ならびに、腫瘍組織の転移の診断に利用されている。解剖組織の外観に変化がなくても、診断部位の血流、細胞活性および代謝に変化が生じていることは、臨床上多くの症状において見られる。それゆえ、高感度の核画像システムを用いれば、早期に病巣を検出することができる。
【0003】
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)リガンドは、磁気共鳴イメージングにおける有用なキレート剤として、基礎研究に広く用いられている。その錯体は、水分子のプロトンの縦および横緩和時間(それぞれTおよびT)を減少させるので、磁気共鳴画像のコントラストを大幅に増強することができる。
【0004】
しかし、臨床上使用される造影剤、例えば、マグネビスト(Magnevist(登録商標);DTPAのガドリニウム塩)には、欠点がある。マグネビストは、低分子量の化合物であるので、静脈内に投与した直後に、腎臓糸球体を経由して体外に急速に排泄され、また、血管から漏出してしまう。さらに、排泄速度が速いことから、時間依存的な画像解析を行ったり、患者の高解像度の画像を得たりするには、医師の時間および能力が制限されてしまう。一方、低濃度の小分子造影剤は、磁気共鳴イメージング(MRI)を使用する場合に数センチ未満の異常を検出することができない。このため、造影剤の濃度を高めることが求められる。
【0005】
ところが、濃度を高くして使用すると、高濃度の重金属による毒性の危険が生じるのみならず、多量の分子造影剤が同じ部位に蓄積してしまう。かくして、臨床上の応用は制約を受けている。
【0006】
したがって、磁気共鳴イメージング技術において、より低い投与量で疾患部位に効率よく到達できる所望の磁気共鳴イメージング造影剤を開発することが重要な研究テーマとなっている。
【0007】
かくして、造影剤の体外への排泄速度が速いなどといった欠点を克服し、小分子造影剤の局所的な濃度を高めるという要求を達成するために、多くのキレートを有する高分子量の磁気共鳴イメージング造影剤が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、樹枝状高分子およびこの樹枝状高分子を用いた、人体の疾患部位を高感度に認識することができる磁気共鳴イメージング造影剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの実施態様として、下記の一般式(I)で示される構造を有する樹枝状高分子を提供する。
【0010】
【化1】


一般式(I)
【0011】
上記式中、Pは
【0012】
【化2】


であり、lは1以上の整数である。jは2以上の整数である。
【0013】
Dは、それぞれ独立して、n個の酸素残基を有する炭素数3〜30の樹枝状部分を含み、nは3以上の整数である。Dは酸素残基によりそれぞれPおよびXと結合する。
【0014】
Xは二官能性を有する炭素数3〜30の部分であり、例えば、
【0015】
【化3】

である。
【0016】
Zは、それぞれ独立して、複数の官能基、および、下記の末端基
【0017】
【化4】


または
【0018】
【化5】

【0019】
を有する炭素数3〜20の部分を含むものである。該官能基は、カルボニル基、カルボキシ基、アミン基、エステル基、アミド基またはキレート基よりなる群から選択される基である。さらに、Zは下記の基:
【0020】
【化6】


または
【0021】
【化7】


によりXとそれぞれ結合する。例えば、Zは、
【0022】
【化8】


であり、上記式中、Rは、
【0023】
【化9】


または
【0024】
【化10】


であり、Rは水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である。
【0025】
また、Zは、例えば、下記の末端基:
【0026】
【化11】


または
【0027】
【化12】

【0028】
を有するエチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)の残基またはエチレンジイミノジブタン酸(EDBA)の残基を含む。
【0029】
Lは金属カチオンまたは被分析物に特異な部分である。iは1より大きい整数であり、n−1に等しいか、あるいは、n−1よりも小さい。
【0030】
上記実施態様の磁気共鳴イメージング造影剤に含まれる高分子において、Pはエチレングリコールおよびその誘導体の従来公知の結合セグメントとすることができ、好ましくはポリエチレングリコールの高分子セグメントである。ある実施態様では、DはPおよび複数のZと結合可能なn個の酸素残基を有する炭素数3〜30の樹枝状部分である。好ましくは、Dは2,2−ジヒドロキシメチルプロパン酸またはその誘導体の残基、例えば、
【0031】
【化13】

【0032】
である。さらに、Dは層を有するデンドリマー部分とすることができ、その層数は特に限定されるものではないが、好ましくは2〜3層である。Dは、例えば、
【0033】
【化14】


または
【0034】
【化15】


である。
【0035】
ある実施態様では、金属カチオンは、高感度および高精度な磁気共鳴イメージング造影剤として、生理的な代謝に参加することができ、例えば、Gd3+などである。ある実施態様によれば、被分析物に特異な部分は、特定の標的と特異的に反応する分子部分、例えば、葉酸基、グルコース基またはアミノ酸基である。ある実施態様では、Zは、例えば、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)の残基またはエチレンジイミノジブタン酸(EDBA)の残基などのキレート剤とすることができる。さらに、Zは、
【0036】
【化16】

【0037】
とすることができる。ここで、Zは1つの酸素原子によりDと結合すると共に、残りの酸素原子によりLと結合する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の樹枝状高分子によれば、従来の造影剤の欠点を回避でき、優れた磁気共鳴イメージング造影剤を提供できる。さらに、本発明の樹枝状高分子は、剛性の構造を有しており、Gd3+イオンのドーピングサイトがより多いこと、および、Bz−DTPAデンドリマーがより剛性な性質であることから、剛性の構造を有しない樹枝状高分子(ZがDTPA残基)に比べて、その緩和能がはるかに高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下の記載は、本発明を実施するための最良の形態である。この記載は本発明の主要な原理を説明することを目的としたものであり、限定の意味で解釈されるべきではない。
【0040】
本発明は、樹枝状高分子およびこれを用いた磁気共鳴イメージング造影剤を提供する。本発明の磁気共鳴イメージング造影剤を用いれば、人体の疾患部位を高感度に認識することができる。以下では、本発明を特定の実施例により説明するが、本明細書に添付された特許請求の範囲により定義される本発明の原理は、当然のことながら、本明細書で説明される本発明の特定の実施例以外にも適用することができる。さらに、本発明を説明するにあたって、本発明の発明的要素が不明瞭なものとならないように、ある種の詳細は省略している。省略した詳細は、当業者の知識の範囲内である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
≪実施例1≫
剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有樹枝状高分子(A)の製造
高分子(A)の製造法は、以下に示すとおりである。
【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
PEG−bis−[G]−(OH)(2.00g、0.43mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.020g、0.16mmol)を75mLのジクロロメタンに溶解してから、無水コハク酸(0.37g、3.7mmol)を加えた。その反応混合物を一晩攪拌し、ジエチルエーテル(2L)中に沈殿させた。分離した白色の沈殿を濾過し、真空下で乾燥させて、化合物(1)(PEG−bis−[G]−(OSA))を収率91%で得た。化合物(1)の測定した物性値を以下に示す。
【0048】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.20(s,6),2.61(s,16),3.68(bs),4.28(t,4)。
【0049】
DMSO(10mL)中における化合物(1)(0.9g、0.19mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(0.12g、0.77mmmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(0.089g、0.77mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.095g、0.77mmol)の混合物を、室温で1〜2時間攪拌した。次いで、10mLのDMSOに溶解した2−(4−アミノベンジル)ジエチレントリアミン五酢酸(0.387g、0.77mmol)の溶液を、激しく攪拌しながら滴下して加えた。そして、48時間攪拌を続けた後、その反応混合物を脱イオン水に対して約3日間透析した。次いで、透析した試料を凍結乾燥させて、化合物(2)(PEG−bis−[G]−(SA−NH−Bz−DTPA))を収率61%で得た。化合物(2)の測定した物性値を以下に示す。
【0050】
IR(cm−1):3395,2811,1732,1643,1108。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.15,1.19(2s,6),2.44(s,16),3.68(bs),4.13(t,4),6.47(d,8),6.84(d,8)。
【0051】
水中における化合物(2)に化学量論量のGdCl・6HOを加えることにより、剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有高分子(A)を製造した。その溶液を室温で4時間激しく攪拌した。pHは、1N NaOH溶液で6.0〜6.5に維持した。そして、反応の進行をFTIRで追跡した。pH5.8(酢酸緩衝液)でキシレノールオレンジ指示薬を用いて、遊離ガドリニウムイオンの消失を確かめてから、その錯体を0.45μmのフィルターで濾過し、凍結乾燥させた。
【0052】
≪実施例2≫
剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有樹枝状高分子(B)の製造
高分子(B)の製造法は、以下に示すとおりである。
【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
【化24】

【0057】
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
【化27】

【0060】
PEG−bis−[G]−(OH)(2.00g、0.43mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.020g、0.16mmol)を75mLのジクロロメタンに溶解してから、無水コハク酸(0.37g、3.7mmol)を加えた。その反応混合物を一晩攪拌し、ジエチルエーテル(2L)中に沈殿させた。分離した白色の沈殿を濾過し、真空下で乾燥させた、化合物(3)(PEG−bis−[G]−(OSA))を得た。化合物(3)の測定した物性値を以下に示す。
【0061】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.15(s,12),1.20(s,6),2.58(2s,32),3.44(m,8),3.61(bs),3.80(t),4.20(m)。
【0062】
一般的な手法により、DMSO(10mL)中における化合物(3)(0.2g、0.036mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(0.054g、0.35mmmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(0.0366g、0.32mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.039g、0.32mmol)の混合物と、10mLのDMSOに溶解した2−(4−アミノベンジル)ジエチレントリアミン五酢酸(0.173g、0.35mmol)の溶液とから、化合物(4)(PEG−bis−[G]−(SA−NH−Bz−DTPA))を収率55%で合成した。化合物(4)の測定した物性値を以下に示す。
【0063】
IR(cm−1):3416,2874,1738,1644,1110。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ0.95(s,12),1.13(s,6),2.44(2s,32),3.05(m,8),3.49(bs),4.16(m),6.99(d),7.56(d)。
【0064】
水中における化合物(4)に化学量論量のGdCl・6HOを加えることにより、剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有高分子(B)を製造した。その溶液を室温で4時間激しく攪拌した。pHは、1N NaOH溶液で6.0〜6.5に維持した。そして、反応の進行をFTIRで追跡した。pH5.8(酢酸緩衝液)でキシレノールオレンジ指示薬を用いて、遊離ガドリニウムイオンの消失を確かめてから、その錯体を0.45μmのフィルターで濾過し、凍結乾燥させた。
【0065】
≪実施例3≫
剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有樹枝状高分子(C)の製造
高分子(C)の製造法は、以下に示すとおりである。
【0066】
【化28】

【0067】
【化29】

【0068】
【化30】

【0069】
【化31】

【0070】
【化32】

【0071】
【化33】

【0072】
PEG−bis−[G]−(OH)16(2.00g、0.35mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.17g、1.4mmol)を75mLのジクロロメタンに溶解してから、無水コハク酸(0.63g、6.3mmol)を加えた。その反応混合物を一晩攪拌し、ジエチルエーテル(2L)中に沈殿させた。分離した白色の沈殿を濾過し、真空下で乾燥させて、化合物(5)(PEG−bis−[G]−(OSA)16)を得た。化合物(5)の測定した物性値を以下に示す。
【0073】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.19(m,42),2.57(s,64),3.47(t),3.63(bs),3.80(m),4.21(m)。
【0074】
一般的な手法により、DMSO(10mL)中における化合物(5)(0.2g、0.028mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(0.077g、0.49mmmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(0.056g、0.49mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.059g、0.49mmol)の混合物と、10mLのDMSOに溶解した2−(4−アミノベンジル)ジエチレントリアミン五酢酸(0.242g、0.49mmol)とから、化合物(6)(PEG−bis−[G]−(SA−NH−Bz−DTPA)16)を収率51%で合成した。化合物(6)の測定した物性値を以下に示す。
【0075】
IR(cm−1):3448,2916,1736,1648,1114。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ0.94,1.12(2s,42),2.38(s,64),3.05(t),3.49(bs),4.13(m),7.10(d),7.57(d)。
【0076】
水中における化合物(6)に化学量論量のGdCl・6HOを加えることにより、剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有高分子(C)を製造した。その溶液を室温で4時間激しく攪拌した。pHは、1N NaOH溶液で6.0〜6.5に維持した。そして、反応の進行をFTIRで追跡した。pH5.8(酢酸緩衝液)でキシレノールオレンジ指示薬を用いて、遊離ガドリニウムイオンの消失を確かめてから、その錯体を0.45μmのフィルターで濾過し、凍結乾燥させた。
【0077】
≪T緩和の測定≫
NMR分光計(20MHz)を用いて、反転回復(IR)の標準パルスプログラムにより、水の緩和速度を変動させる能力について、剛性リンカーを有する金属カチオンGd3+含有のガドリニウム担体樹枝状高分子(A)〜(C)を評価した。剛性の構造を有する樹枝状高分子(A)〜(C)(PEG−コアデンドリマー)(Zが下記の基:
【0078】
【化34】

【0079】
を有するDTPA残基である)全てを、水中の初期濃度1mmolで分析し、米国特許出願公開第2007/0154390号明細書に開示の剛性の構造を有しないPEG−コアデンドリマー(Zが下記の基:
【0080】
【化35】


または
【0081】
【化36】


を有しないDTPA残基である)と比較した。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

Gd−PEG−G−(ODTPA)
【0083】
【化37】


Gd−PEG−G−(ODTPA)
【0084】
【化38】


Gd−PEG−G−(ODTPA)16
【0085】
【化39】

【0086】
注目すべきは、本発明の提供する樹枝状高分子が期待数の金属カチオンを有するという点である(例えば、実施例2の期待数は8、実施例3の期待数は16である)。しかし、立体効果と化学合成に起因する不確定要素とにより、実際の金属カチオン平均数は、期待数よりも小さいのが通常である(例えば、実施例2の実際の平均数は6.0であり、実施例3の実際の平均数は11.7である)。実際の金属カチオン数が異なる樹枝状高分子は、様々な実際の化学構造を有するので、一般に、期待数の金属カチオンを有する化学構造は、(同じ合成法により製造された)実際の数の金属カチオンを有する考え得る全ての樹枝状高分子を表すものとして用いられる。
【0087】
したがって、水プロトンの緩和の結果は、実施例1〜3に示した高分子(A)〜(C)が造影剤として機能する性質を本来的に備えることを示した。第2および第3世代の樹枝状高分子(B)および(C)は、第1世代の樹枝状高分子(A)よりも高い緩和能の値を示した。さらに、剛性の構造(下記の基:
【0088】
【化40】

【0089】
を有するDTPA残基)を有する本発明の樹枝状高分子は、Gd3+イオンのドーピング部位がより多いこと、および、Bz−DTPAデンドリマーがより剛性な性質であることから、剛性の構造を有しない樹枝状高分子(ZがDTPA残基)に比べて、その緩和能がはるかに高いことがわかった。
【0090】
本発明のある技術的特徴は、複数の常磁性ガドリニウムイオンまたは被分析物に特異な部分を担持する多重樹枝状高分子担体を提供することにある。本発明の樹枝状高分子は、等比級数的に拡大するユニークな能力を有するので、1単位あたりの分子造影剤の信号強度が大幅に高くなる。また、本発明の別の技術的特徴は、剛性リンカー(例えば、下記の基:
【0091】
【化41】

【0092】
を有するDTPA残基)を化学分子設計により樹枝状高分子に導入することにある。表1に示すように、磁気共鳴イメージング造影剤の緩和能は、その剛性に比例している。剛性構造を有する磁気共鳴イメージング造影剤は、優れた緩和能を示すので、血管内皮細胞を容易に透過することや人体に代謝されやすいという欠点を回避することができる。
【0093】
以上、実施例を挙げて、本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないと解されるべきである。むしろ、本発明は、当業者に明らかであるように、様々な変更や類似したアレンジを包含することを意図している。それゆえ、添付された特許請求の範囲は、かかる変更および類似したアレンジが全て包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で示される構造を有する樹枝状高分子。
【化1】


一般式(I)
[式中、Pは
【化2】


であり、lは1以上の整数である;jは2以上の整数である;
Dは、それぞれ独立して、n個の酸素残基を有する炭素数3〜30の樹枝状部分を含み、nは3以上の整数である;Dは前記酸素残基によりPおよびXとそれぞれ結合する;
Xは二官能性を有する炭素数3〜30の部分である;
Zは、それぞれ独立して、複数の官能基を有する炭素数3〜20の部分を含み、該官能基は、カルボニル基、カルボキシ基、アミン基、エステル基、アミド基またはキレート基よりなる群から選択される基である;Zは下記の基:
【化3】


または
【化4】


によりXとそれぞれ結合する;
Lは金属カチオンである;
iは1より大きい整数である]
【請求項2】
Dが2,2−ジヒドロキシメチルプロパン酸またはその誘導体の残基である請求項1記載の樹枝状高分子。
【請求項3】
Dが
【化5】


であり、iが2である請求項2記載の樹枝状高分子。
【請求項4】
Dが
【化6】


であり、iが4である請求項2記載の樹枝状高分子。
【請求項5】
Dが
【化7】


であり、iが8である請求項2記載の樹枝状高分子。
【請求項6】
LがGd3+である請求項1〜5のいずれか1項記載の樹枝状高分子。
【請求項7】
Zが金属キレート基である請求項1〜6のいずれか1項記載の樹枝状高分子。
【請求項8】
Zが下記の末端基
【化8】


または
【化9】


を有するエチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)の残基またはエチレンジイミノジブタン酸(EDBA)の残基である請求項7記載の樹枝状高分子。
【請求項9】
Zが
【化10】


であり、R
【化11】


または
【化12】


であり、Rが水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である請求項1〜8のいずれか1項記載の樹枝状高分子。
【請求項10】
Xが
【化13】


である請求項1〜9のいずれか1項記載の樹枝状高分子。
【請求項11】
磁気共鳴イメージング造影剤となる請求項1〜10のいずれか1項記載の樹枝状高分子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の樹枝状高分子を含む磁気共鳴イメージング造影剤。

【公開番号】特開2009−161754(P2009−161754A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322312(P2008−322312)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】