説明

樹皮マット

【課題】 生分解性を有することにより環境負荷の小さな樹皮マットを得る。
【解決手段】 生分解性を有するネットまたは布帛にて袋体1を形成し、この袋体の中に樹皮3を充填して樹皮マットを構成する。樹皮3は好適には杉の樹皮である。樹皮マットを地面に敷設して防草を行い、これを法面に敷設して法面を防護する。好適には、法面に法枠を形成し、この法枠の内部に樹皮マットを敷設する。木材により組み立てられたケーシングの内面に樹皮マットが設置し、この樹皮マットが設置されたケーシングの内部に中詰材を充填して、ふとんかごを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹皮マットに関し、特に防草や法面の保護などに用いることができる樹皮マットに関する。
【背景技術】
【0002】
堤防や道路の法面には、雑草の繁殖を防止するための防草マットが敷設されることが多い。このような防草マットとして、たとえば特許文献1には、ポリエステル短繊維による不織マットの上面に塩化ビニルによる合成樹脂軟質遮水シートを設け、さらにその上面にポリエステル長繊維による不織布シートまたはマットを設けたものが記載されている。
【特許文献1】特開2004−321094号公報([0010][0013])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような合成樹脂製の防草マットでは、いつまでも半永久的に形が残るものであるため、環境負荷が大きい。
そこで本発明は、このような課題を解決して、生分解性を有することにより環境負荷の小さな樹皮マットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するため本発明の樹皮マットは、生分解性を有するネットまたは布帛にて袋体を形成し、この袋体の中に樹皮を充填したものである。
このような樹皮マットであると、袋体およびその内部に充填される樹皮は生分解性を有するため、全体として生分解性を有するマットを構成することができる。このようなマットは、環境負荷の小さな防草マットや法面保護用マットとして効果的に使用することができる。
【0005】
本発明によれば、上記において、樹皮が杉の樹皮であることが好適である。
また本発明の防草方法は、上記の樹皮マットを地面に敷設するものである。
杉や桧などの針葉樹の樹皮は、腐朽菌の影響を受けにくく、また5年程度の防草機能を有するため、これを袋体に充填して形成した樹皮マットは、防草マットとして効果的に使用することができる。経年により防草効果が無くなったあとは、生分解するため、環境に大きな負荷がかかることはない。また杉や桧などの針葉樹の樹皮は抗菌性、殺虫性も有するため、この点を生かしたマットとして使用することができる。
【0006】
一般に樹皮は木質部と異なった特徴を有しており、特に杉の樹皮は腐朽しづらいため、製材時に発生した残材としての樹皮は、従来はその大部分が山地に放置されるか、あるいは産業廃棄物として費用をかけて処分されている。これに対し本発明によれば、このような樹皮を有効に活用することができる。
【0007】
本発明の法面の構築方法は、上記の樹皮マットを法面に敷設するものである。
このようにすれば、法面の防草効果に加えて、法面のエロージョン防止などの法面の保護効果を発揮させることができる。
【0008】
本発明によれば、上記の法面の構築方法において、法面に法枠を形成し、この法枠の内部に樹皮マットを敷設することが好適である。
このようにすれば、法枠と樹皮マットとの相乗効果によって、法面を確実に保護することができる。
【0009】
本発明のふとんかごは、木材により組み立てられたケーシングの内面に請求項1または2に記載の樹皮マットが設置され、この樹皮マットが設置されたケーシングの内部に中詰材が充填されているものである。
【0010】
このようなものであると、木材により組み立てられたケーシングの内面に樹皮マットが設置されているため、ケーシングを構成する木材どうしの隙間から中詰材としての土砂などが漏れ出して流失してしまうことを効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によると、袋体およびその内部に充填される樹皮は生分解性を有するため、全体として生分解性を有するマットを構成することができ、このマットを、環境負荷の小さな防草マットや法面保護用マットとして効果的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態の樹皮マットを示す。ここで、1は袋体であり、ネットを材料として矩形状に縫製されたものである。2はその縫製部である。袋体1の内部には、製材工程などにおいて生じた杉樹皮などの樹皮2が充填されている。この樹皮2としては、製材工程などにおいて生じたものをそのまま用いればよいが、必要に応じて小さく裁断したものを用いてもよい。
【0013】
詳細には、袋体1を構成するネットは、ポリ乳酸系樹脂などの生分解性を有する樹脂にて形成された繊維によって網状に形成されたものである。その目合は樹皮2がこぼれ出ない程度であることが必要で、具体的には0.5〜6.0mm程度が適当である。また、このネットは、袋体1としての所要強力を発揮できるように引張強力が1kN/m以上であり、かつ透水係数が1×10−2cm/sec以上であることが好適である。なお、一般に、防草マットや法面保護用マットの透水係数は、植物の育成のために好適な土壌の透水係数である1×10−3cm/sec以上であれば好ましい。
【0014】
図示の袋体1は、たとえば縦100cm×横100cm程度に形成され、図2に示すようにその一辺に開口4が形成されている。また袋体1には、開口4を覆うことができるカバー5が、同様のネットによって一体に形成されている。図1に示す樹皮マットを形成する際には、図2に示す袋体1の開口4開いてその内部に樹皮3を充填する。この充填作業が終わったなら、開口をカバー5で覆い、カバー5の縁を袋体1における開口4の縁に連結する。この連結のためには、図1に示す連結具6、たとえばバノックピンなどを用いることができる。ネット製のカバー5の縁とネット製の袋体1における開口4の縁とをバノックピンを用いて連結することで、効率よく連結作業を行うことができる。
【0015】
図3は、このようにして出来あがった樹皮マット7を側方から見た状態を示す。図示のように、袋体1の内部に樹皮3を充填することで、それに基づく厚みが形成されている。この厚みは、たとえば10cm程度であることが好適である。図4は、同様の樹皮マットであって、たとえば縦100cm×横200cm程度の大きさの長方形状のものを示す。この図4のマットの場合は、袋体1における横方向の辺すなわち長いほうの辺に沿って開口を形成することで、樹皮3の充填作業を効率よく行うことができる。
【0016】
なお、袋体1は、上述したネットに代えて、布帛を材料として縫製することもできる。この布帛による袋体の場合は、目合いはネットの場合よりも小さくなり、またその透水係数は4×10−3cm/sec程度となる。
【0017】
図5および図6は、上記のようにして作成された樹皮マット7を法面に複数敷設した例を示す。すなわち、8は法面、9は水平面であって、樹皮マット7は法面8に被せられるようにして敷設され、生分解性を有する樹脂にて形成されたアンカー10によって地面に固定されている。
【0018】
図示のように矩形状の複数の樹皮マット7の敷設パターンを工夫することで、地面すなわち法面8に、マット7が敷かれていない露出部11を部分的に形成することができる。この露出部11は、植生スポットとして利用することができ、適当な植栽12を施すことができる。
【0019】
このように法面8に樹皮マット7を敷設することで、法面8のエロージョンを防止することができるとともに、防草効果などのマルチング効果を期待することができる。また、マット7は、生分解性を有する袋体1に樹皮3を充填したものであるため、全体として生分解性を有し、このため環境負荷を小さくした状態で法面8の保護やその防草を図ることができる。
【0020】
樹皮3が杉や桧などの針葉樹の樹皮である場合は、腐朽菌の影響を受けにくく、また5年程度の防草機能を有するため、防草マットとして効果的に使用することができる。また杉や桧などの針葉樹の樹皮は抗菌性、殺虫性も有するため、この点を生かしたマットとして使用することができる。経年により防草効果が無くなったあとは、上述のように生分解するため、環境に大きな負荷がかかることはない。
【0021】
図7〜図9は、本発明の実施の形態のさらに他の樹皮マットを示す。ここでは、図7に示すように、袋体1は三角形状に形成されている。
図8は、このような三角形状の樹皮マット7を法面8に敷設する手法の一例を示す。ここでは、丸形の木材によって法面8に三角形状の複数の法枠13を形成し、この法枠13の中に樹皮マット7を詰めてアンカーで地面に固定している。図8は工事中の状態を示すが、複数の三角形状の法枠13のうち、内部に樹皮マット7を敷設しないものを設定すれば、その部分は上述の場合と同様に植栽に利用することができる。なお、丸形に代えて角形などの他の断面形状の材料により法枠13を形成することもできる。また法枠13や樹皮マット7の形状についても、同様に四角形や他の形状を採用することもできる。
【0022】
図8は一つの法枠13の内部に一つの樹皮マット7を敷設するものを例示したが、図9には、大きな法枠13の内部に複数の樹皮マット7を敷設する例を示す。ここでは、大きな三角形状の法枠13を複数形成するとともに、各法枠13の内部にそれぞれ4枚の三角形状の樹皮マット7を敷設できるようにしたものを示す。ここでも、地面に、樹皮マット7を敷設しない露出部11を形成することで、この露出部11を植栽スポットなどとして利用することができる。
【0023】
図10は、本発明の他の実施の形態を示す。ここでは、法面8の下端部に、この法面8を防護するためのふとんかご15が設けられている。このふとんかご15は、複数の材木16によって上端が開口したケーシング17を組み立て、その内部に土砂18を中詰材として充填したものである。その際に、ケーシング17の内面すなわち土砂18とケーシング17との間に、樹皮マット7が設けられている。またケーシング17の上端の開口では、土砂18が樹皮マット7によって覆われている。
【0024】
このような構成によれば、ふとんかご15のケーシング17の内面が樹皮マット7にて覆われることになるため、ケーシング17を構成する材木16どうしの隙間から土砂18が外部へ流出することを防止できる。またケーシング17の上端の開口において土砂18が樹皮マット7によって覆われているため、この開口からの土砂18の溢出を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の樹皮マットの斜視図である。
【図2】図1の樹皮マットを形成するための袋体の斜視図である。
【図3】図1の樹皮マットを側方から見た状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の樹皮マットの斜視図である。
【図5】樹皮マットを法面に敷設した状態を示す側面図である。
【図6】樹皮マットを法面に敷設した状態を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態のさらに他の樹皮マットの斜視図である。
【図8】図7の樹皮マットの法面への敷設例を示す斜視図である。
【図9】図7の樹皮マットの法面への他の敷設例を示す平面図である。
【図10】本発明の実施の形態のふとんかごの断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 袋体
3 樹皮
8 法面
13 法枠
15 ふとんかご

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有するネットまたは布帛にて袋体を形成し、この袋体の中に樹皮を充填したことを特徴とする樹皮マット。
【請求項2】
樹皮が杉の樹皮であることを特徴とする請求項1記載の樹皮マット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹皮マットを地面に敷設することを特徴とする防草方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹皮マットを法面に敷設することを特徴とする法面の構築方法。
【請求項5】
法面に法枠を形成し、この法枠の内部に樹皮マットを敷設することを特徴とする請求項4記載の法面の構築方法。
【請求項6】
木材により組み立てられたケーシングの内面に請求項1または2に記載の樹皮マットが設置され、この樹皮マットが設置されたケーシングの内部に中詰材が充填されていることを特徴とするふとんかご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−320244(P2006−320244A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146105(P2005−146105)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(301054748)株式会社南国土木工事 (4)
【出願人】(503384926)有限会社テキスタイルやぶした (1)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】