説明

樹脂カプセルアンカーの製造方法

【課題】 樹脂カプセルアンカーを効率的に製造する製造方法の提供。
【解決手段】 容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を巻きつけて乾燥させる樹脂カプセルアンカーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はあと施工アンカーに用いる樹脂カプセルアンカーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の構造物にあと施行でボルトや鉄筋を取り付けるための2成分系からなる樹脂カプセルアンカーの製造方法は、容器内に硬化剤と樹脂とを分離層を形成して充填したり、あるいは容器内に硬化剤と樹脂とを分離層を2層以上交互に積層して充填したり、あるいはまた容器内に樹脂や骨材を充填し容器外に硬化剤を被覆することが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
容器内に硬化剤と樹脂とを分離層を形成して充填したり、あるいは容器内に硬化剤と樹脂とを分離層を2層以上交互に積層して充填する方法は、容器内に2成分以上を充填する必要があるため、製造工程が複雑になる問題があった。また、容器外に硬化剤を被覆する場合、従来の方法では硬化剤の量が不均一である、硬化剤の歩留まりが悪い、生産性が低い等の問題があり、安定した品質の製品を効率的に連続製造することは困難であった。
【特許文献1】特開昭61−225499号公報
【特許文献2】特開2000−27599号公報
【特許文献3】実案昭48−32944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、樹脂と硬化剤の十分な混合性を得られる構造の樹脂カプセルアンカーを効率的に製造でき連続生産に適したプロセスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂の入った容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を塗布して巻きつけて乾燥させることで連続生産に適した樹脂カプセルアンカー製造プロセスが得られることを発明するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を巻きつけて乾燥させることを特徴とする樹脂カプセルアンカーの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、樹脂カプセルアンカーの連続生産に適した製造プロセスの提供が可能になった
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について、好ましい態様を中心に、具体的に説明する。
本発明の製造方法は、樹脂あるいは樹脂及び骨材の入った容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を塗布して巻きつけて乾燥させることを特徴とする。
従来、反応性樹脂と硬化剤を分離して容器に収納し、コンクリートあと施工時にアンカーボルト等の回転や打撃で容器を破壊させ樹脂と硬化剤とが混合・反応してコンクリートとボルト等を固着させるため容器内部に樹脂をまた場合によっては骨材をも入れてその容器外側に硬化剤を配置する方法がとられているが樹脂と硬化剤は化学量論的な適量を収納しておく必要がある。
【0007】
特に硬化剤は過酸化ベンゾイル等の粉体のものが主に用いられているために定量的な充填と且つ効率的生産を行う必要があり、発明者らは樹脂の充填された円筒容器の軸を中心に回転させてその外側に一定濃度の硬化剤スラリーを、好ましくは定量ポンプで供給付着させることにより容器外周の周方向に均一の厚さに塗布される、さらにこの回転を維持しながら乾燥させることにより一定量の硬化剤が周方向均一な厚さで付着し連続的に作られることを発明するに至った。
容器はガラスやプラスティック等硬いものがよく、円筒状であれば直管でも絞り部を有した管でも良い。
【0008】
硬化剤を容器に巻きつけるときの回転数は容器の直径と硬化剤スラリー濃度により容器周方向全周に硬化剤が均一に広がり塗布されるように調整するのが良く、好ましくは容器外径10〜18mmのとき80〜180rpm、より好ましくは100〜160rpm、さらに好ましくは120〜140rpmである。
硬化剤スラリー粘度が高いときは回転数を下げて、逆に硬化剤スラリー粘度が低いときは回転数を上げることが好ましい、また極端に回転数を上げすぎると硬化剤の片付きを起こし、逆に極端に低すぎると硬化剤が容器から垂れてしまう現象が見られる。
硬化剤スラリー粘度は、0.5〜3Pa・sが好ましく0.5Pa・s以上にすると回転中のガラス管凹部よりのスラリーの垂れを防止することができる。
【0009】
一方、3Pa・s以下にすると硬化剤の偏りが防止でき周方向に硬化剤を均一に配置することができる。
しかし、この最適回転数は硬化剤に用いるスラリー濃度とスラリー中の固体成分の粒径、温度等により左右されるため実質的に容器に硬化剤が片付きをせず垂れない回転数を選択することが良い。
硬化剤スラリーを供給する定量ポンプ吐出口は回転する容器の外周近辺の上部にノズルで近接している構造を有するのが良く、定量ポンプの供給速度は容器が一回転する間に一回の供給が終了する程度が良いが必ずしも正確に合致しなくても塗布後容器が回転する間に周方向に広がり均一な厚みが形成される。
【0010】
また、定量ポンプの塗布位置である上記ノズルは容器の軸方向に間歇的に横移動し移動中は硬化剤スラリーを供給せず横移動停止中に硬化剤スラリーを供給する方法と連続して横移動し移動中連続して硬化剤スラリーを供給する方法とがあり製造する樹脂カプセルの形態により選定することが出来る。
さらに、この方法はガラス容器を用いる場合ガラス容器に樹脂をあるいは樹脂と骨材を充填したあと火炎で溶封、その後硬化剤をガラス容器外側に巻きつけ付着させるため製造過程で硬化剤の主成分である熱分解性の過酸化ベンゾイルが火炎に近づくことがないので安全である。
【0011】
硬化剤は、スラリー状で乾燥すると容器外周に適度な硬さで付着する成分を含んでいると良い、具体的には過酸化ベンゾイルに感度低下のための硫酸カルシウム等の無機物質を加えた混合物に合成樹脂ラテックス、水溶性バインダー等を加えた水スラリーを作りそれを定量ポンプで回転する容器外側に供給・塗布して引き続き乾燥すると輸送等の取り扱いでは破壊せず施行時には容易に破壊し樹脂と混合されるような適度な硬さを持った硬化剤が得られる。
硬化剤スラリーの組成は、過酸化ベンゾイル30〜50部、硫酸カルシウム50〜70部、合成樹脂ラテックス固形分1〜3部、水20〜40部に少量のシリカ系体積増量剤、水溶性バインダーを混合するのが好ましい。
【0012】
容器は、円筒状であれば直管でも絞り部を有した管でも良く、絞り部を有しているものは間歇的に横移動したノズルから供給される硬化剤スラリーは絞り部に塗布される様にメカニカル的にコントロールされていることが好ましく、直管の場合はノズルから供給される硬化剤スラリーは連続した横移動中に連続して硬化剤スラリーを供給する様にメカニカル的にコントロールされている構造を有していることが好ましい。
乾燥は、回転する容器の外側に硬化剤スラリーを定量ポンプで供給・塗布させた後さらにこの回転を維持しながらスラリー中の水分を蒸発させるために温度をかけた熱風乾燥機へ送りこみ連続的に乾燥することが好ましい。
【0013】
ガラス管内に充填する樹脂は硬化性の不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂などである。
次に、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
[実施例1]
図1は、本発明に係る樹脂の入った容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を塗布して巻きつけて乾燥させる装置の図である。
図2は、装置のうち容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を塗布する部分の方向を90度変えて拡大した図である。
エポキシアクリレート樹脂14.5gが溶封された絞り部を有するガラス管(1)(ガラス管の外径16.5mm肉厚0.55mm全長120mm、絞り部外径は9mm、絞り幅9mm、絞り溝数5、間隔は20mm)を5秒間隔で間欠的に回転するベルトコンベア-(2)上に80個設置されたシリンダーで作動する回転把持具(3)へ供給装置(4)により供給した。
【0015】
回転把治具(3)でガラス管の両端がシリンダーの作動で保持されガラス管が120rpmで回転し始め次に定量ポンプで硬化剤スラリー(過酸化ベンゾイル40部、硫酸カルシウム60部、SBラテックス固形分2部、シリカ系体積増量剤5部、水22部を混合したもの)をガラス管絞り部に上部設置した内径4mmのノズル(5)から間歇的に供給した。
ノズルはガラス管軸方向に絞り部間隔の20mmピッチ移動し隣の絞り部へノズルから間歇的に供給した、同様に絞り部5個分終了してベルトコンベア-は回転把持具1ピッチ分移動して次のガラス管へ移りそれを繰り返した。
【0016】
回転把治具(3)で保持され絞り部に硬化剤スラリーの付いたガラス管は回転とともに絞り部で均一な厚みが形成されて80℃の乾燥室(6)へと運ばれた。
乾燥室を通り抜けた回転把治具(3)で保持されたガラス管の絞り部の硬化剤は水分が蒸発して適度な硬さが形成されて乾燥機より排出され、乾燥後の硬化剤量は3.5gであった。
こうして連続的に樹脂カプセルアンカーは1時間に720個排出・製造された。
こうして出来た樹脂カプセルアンカーを図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、樹脂カプセルアンカーを効率的に製造する連続生産プロセスとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例で用いた装置の断面摸式図。
【図2】図1の容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を塗布する部分を、図1と直角の方向から見た側面模式図。
【図3】本発明実施例で得られた樹脂カプセルアンカーの平面模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を回転させながら外周にスラリー状硬化剤を巻きつけて乾燥させることを特徴とする樹脂カプセルアンカーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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