説明

樹脂ペレットの製造方法

【課題】簡便かつ大量生産に適用可能なブロッキングが防止された樹脂ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の被覆室内に供給された樹脂製の原料ペレットを撹拌しながら被覆室の長手方向に搬送するとともに、液状の結着剤を噴霧して、原料ペレットの表面を結着剤で被覆して第一の処理済ペレットを得る工程と、円筒状の付着室内に第一の処理済ペレットを供給し、供給された第一の処理済ペレットを、撹拌しながら付着室の長手方向に搬送するとともに、粉体状のブロッキング防止剤と接触させて、第一の処理済ペレットの表面にブロッキング防止剤を付着させて第二の処理済ペレットを得る工程と、を有する樹脂ペレットの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロッキングが防止された樹脂ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の樹脂はペレットの形態で市場に供給されることが多くなっている。ペレット状の樹脂は、保管場所からの取り出し易さ、成形装置等への供給のし易さ、輸送の簡便さ、計量のし易さ等の観点から有用である。
【0003】
但し、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系共重合体ゴム;酢酸ビニル濃度が20質量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体及びそのアイオノマー;更には非晶性ポリエステル等は粘着性を有するため、ペレット状に成形した場合であっても保管中にブロッキングが生じてしまい、ブロック状に凝結してしまうという問題があった。また、常温で比較的粘着性の低いエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーであっても、積み上げられる等して荷重がかかった状態で保管されたような場合、或いは高温環境下で保管されたような場合には、ブロッキングを生じ易いという問題があった。
【0004】
これらの問題を解消すべく、ステアリン酸カルシウム、タルク等の粉体、及びシリコーンオイル等の液体を、粘着性を有する樹脂のペレットに付着させ、ブロッキングを抑制してペレットの取り扱い性等を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/085979号
【特許文献2】国際公開第2008/018404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2等で提案された方法では、ヘンシェルミキサー等のバッチ処理用の混合機を用いて樹脂ペレットに粉体や液体を付着させている。このため、このような方法は、実際の工場内等で実施される大量生産には不向きであった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、簡便かつ大量生産に適用可能なブロッキングが防止された樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す樹脂ペレットの製造方法が提供される。
【0009】
[1]円筒状の被覆室内に供給された樹脂製の原料ペレットを撹拌しながら前記被覆室の長手方向に搬送するとともに、液状の結着剤を噴霧して、前記原料ペレットの表面を前記結着剤で被覆して第一の処理済ペレットを得る工程と、円筒状の付着室内に前記第一の処理済ペレットを供給し、供給された前記第一の処理済ペレットを、撹拌しながら前記付着室の長手方向に搬送するとともに、粉体状のブロッキング防止剤と接触させて、前記第一の処理済ペレットの表面に前記ブロッキング防止剤を付着させて第二の処理済ペレットを得る工程と、を有する、樹脂ペレットの製造方法。
【0010】
[2]通気性を有する円筒型のスクリーンによって構成された乾燥室内に前記第二の処理済ペレットを供給し、前記第二の処理済ペレットを撹拌しながら前記乾燥室の長手方向に搬送するとともに、送気される熱風と前記第二の処理済ペレットとを接触させて、前記第二の処理済ペレットを乾燥する工程を更に有する、前記[1]に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【0011】
[3]前記乾燥工程で乾燥された前記第二の処理済ペレットを冷却する工程を更に有する、前記[2]に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【0012】
[4]JIS K−2283に準拠して測定される、25℃における前記結着剤の動粘度が0.5〜10000cStである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【0013】
[5]前記結着剤が、ポリエーテルポリオール、脂肪族炭化水素油、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルカン、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルケン、天然油、ナフテン油、パラフィン油、芳香族油、及びシリコーン油からなる群より選択される少なくとも一種である、前記[4]に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【0014】
[6]レーザー回折法により測定した前記ブロッキング防止剤の平均粒子径が0.1〜50μmである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【0015】
[7]前記ブロッキング防止剤が、無機粉末、有機粉末、脂肪酸の粉末、及び脂肪酸誘導体の粉末からなる群より選択される少なくとも一種である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、ブロッキングが防止された樹脂ペレットを簡便かつ大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の樹脂ペレットの製造方法を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の樹脂ペレットの製造方法に用いる装置の一例を簡略化して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の樹脂ペレットの製造方法を説明するフローチャートである。図1に示すように、本発明の樹脂ペレットの製造方法は、連続的に実施される被覆工程と付着工程を有する。なお、付着工程に次いで、乾燥工程と冷却工程を更に有してもよい。
【0019】
1.製造装置について
図2は、本発明の樹脂ペレットの製造方法に用いる装置の一例を簡略化して示す模式図である。図2に示すように、製造装置100は、円筒状の被覆室10、付着室20、及び乾燥室30を有する。被覆室10の上部にはホッパ4が配設されている。樹脂製の原料ペレットは、このホッパ4から被覆室10内へと投入される。
【0020】
被覆室10の端部にはモータ5が配設されている。このモータ5は、被覆室10内に配置された撹拌搬送手段(図示せず)と連動している。なお、撹拌搬送手段は、被覆室10内に供給された原料ペレットを被覆室10の長手方向に搬送するとともに撹拌することが可能な部材である。撹拌搬送手段の具体例としては、モータ5に連結した、一条ねじロール及び撹拌羽を有する回転軸(シャフト)等を挙げることができる。
【0021】
更に、被覆室10には、原料ペレットに液状の結着剤を噴霧可能なノズル2が配設されている。このノズル2の具体例としては、圧縮空気を噴出する空気噴出口と、結着剤を噴出する液噴出口とを有し、それぞれから噴出された圧縮空気と結着剤を混合させて結着剤を霧状化させることが可能なもの等を挙げることができる。
【0022】
被覆室10と付着室20は、搬送路14を介して接続されている。表面が結着剤で被覆された原料ペレット(第一の処理済ペレット)は、この搬送路14を通じて被覆室10から付着室20内へと搬送される。なお、熱風を搬送路14に通風させ、被覆室10から排出された第一の処理済ペレットの表面を適度に乾燥させるとともに、第一の処理済ペレットが搬送路14内を適度に拡散した状態で搬送されるようにすることが好ましい。これにより、第一の処理済ペレット同士の結着が防止される。
【0023】
付着室20には計量フィーダ12が配設されている。被覆室10から搬送路14を通じて搬送されてきた第一の処理済ペレットに、計量フィーダ12から供給される粉体状のブロッキング防止剤が添加される。また、付着室20の端部にはモータ15が配設されている。このモータ15は、付着室20内に配置された撹拌搬送手段(図示せず)と連動している。なお、撹拌搬送手段は、付着室20内に供給された第一の処理済ペレットを付着室20の長手方向に搬送するとともに撹拌することが可能な部材である。撹拌搬送手段の具体例としては、前述の被覆室に配設されるものと同様のものを挙げることができる。
【0024】
なお、付着室20には、付着室20の全体に振動を加えることが可能な振動モータ等の振動発生手段が配設されることが好ましい。これにより、第一の処理済ペレット表面へのブロッキング防止剤の付着が促進される。
【0025】
付着室20と乾燥室30は、搬送路24を介して接続されている。表面にブロッキング防止剤が付着した第一の処理済ペレット(第二の処理済ペレット)は、この搬送路24を通じて付着室20から乾燥室30内へと搬送される。なお、熱風を搬送路24に通風させ、付着室20から排出された第二の処理済ペレットの表面を適度に乾燥させるとともに、第二の処理済ペレットが搬送路24内を適度に拡散した状態で搬送されるようにすることが好ましい。これにより、第二の処理済ペレット同士の結着が防止される。
【0026】
乾燥室30の端部にはモータ25が配設されている。このモータ25は、乾燥室30内に配置された撹拌搬送手段(図示せず)と連動している。なお、撹拌搬送手段は、乾燥室30内に供給された第二の処理済ペレットを乾燥室30の長手方向に搬送するとともに撹拌することが可能な部材である。撹拌搬送手段の具体例としては、モータ25に連結した、三条ねじロール及び撹拌プレートを有する回転軸(シャフト)等を挙げることができる。
【0027】
乾燥室30は、その全面に多数の孔が形成された通気性を有するスクリーンによって円筒状に構成されている。なお、スクリーンに形成されている孔の径は、原料ペレットの粒径よりも小さくする必要がある。乾燥室30には、送風路22と排風路26とが配設されている。乾燥室30の内部には、送風路22を通じて熱風を導入することができる。これにより、乾燥室30内で撹拌されながら搬送されている第二の処理済ペレットに熱風が供給される。供給された熱風は、第二の処理済ペレットを乾燥させるととともに、スクリーンに形成された多数の孔と排風路26から外部へと排出される。なお、乾燥室30の端部には排出口32が配設されている。この排出口32から、乾燥室30の内容物を取り出すことができる。
【0028】
2.製造方法の各工程について
次に、本発明の樹脂ペレットの製造方法の各工程について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(被覆工程)
被覆工程では、ホッパ4を通じて被覆室10内に樹脂製の原料ペレットを供給する。供給された原料ペレットは撹拌搬送手段によって撹拌されながら、被覆室10の長手方向に搬送される。また、撹拌及び搬送中の原料ペレットには、ノズル2を通じて霧状の結着剤が噴霧される。
【0030】
結着剤は、粉体状のブロッキング防止剤を原料ペレットの表面上に付着させるために用いられる。25℃における結着剤の動粘度は、通常0.5〜10000cSt、好ましくは100〜5000cSt、更に好ましくは200〜1000cStである。なお、結着剤の動粘度は、「キャノン・フェンスケ型粘度管No.400」を使用し、JIS K−2283に準拠して測定される。
【0031】
結着剤の具体例としては、ポリエーテルポリオール、脂肪族炭化水素油、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルカン、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルケン、天然油、ナフテン油、パラフィン油、芳香族油、シリコーン油等を挙げることができる。なかでも、シリコーン油、炭素数2〜20のポリエーテルポリオール(エチレングリコール等)、鉱油、炭素数7〜18のアルコールが好ましく、シリコーン油が更に好ましい。これらの結着剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
炭素数7〜18のアルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等を挙げることができる。また、シリコーン油の具体例としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン類を挙げることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はこれらの基の水素原子がハロゲン原子等により置換された基を示す。なお、R及びRは、いずれも一部が水酸基やアルコキシ基で置換されていてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基等を挙げることができる。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等を挙げることができる。一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン類のなかでも、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0035】
噴霧する結着剤の量は、原料ペレット100質量部に対して0.001〜0.5質量部とすることが好ましく、0.005〜0.03質量部とすることが更に好ましい。結着剤の量を上記の範囲内とすることで、原料ペレットの表面を十分に被覆しつつ、適量のブロッキング防止剤を付着させることができる。
【0036】
結着剤が噴霧された原料ペレットは、撹拌搬送手段により撹拌される。これにより、原料ペレットの表面が均一にムラなく結着剤で被覆された第一の処理済ペレットが得られる。得られた第一の処理済ペレットは、搬送路14を通じて付着室20へと搬送される。
【0037】
(付着工程)
付着工程では、先ず、搬送路14を通じて付着室20内に第一の処理済ペレットを供給する。また、供給される第一の処理済ペレットには、計量フィーダ12を用いてブロッキング防止剤が添加される。
【0038】
ブロッキング防止剤の平均粒子径は0.1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることが更に好ましく、1〜25μmであることが特に好ましい。なお、ブロッキング防止剤の平均粒子径は、例えば「島津粒度分布測定器SALS−2000A型」を使用したレーザー回折法により測定される。
【0039】
ブロッキング防止剤としては、無機粉末、有機粉末、脂肪酸の粉末、脂肪酸誘導体の粉末等を挙げることができる。無機粉末の具体例としては、シリカ、シリカアルミナ、ケイ藻土、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ホウ素、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン等を挙げることができる。これらの無機粉末は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
有機粉末の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィンの粉末を挙げることができる。これらの有機粉末は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。通常用いられる脂肪酸は、炭素数12〜30の飽和又は不飽和の高級脂肪酸である。このような高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノレン酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、α−リノレン酸等を挙げることができる。なかでもステアリン酸が好ましい。これらの脂肪酸は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
通常用いられる脂肪酸誘導体は、上記高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、リチウム塩等の金属塩である。なかでもステアリン酸塩が好ましい。なお、高級脂肪酸塩誘導体の具体例としては、高級脂肪酸アマイド、エステル等を挙げることができる。なかでも、ステアリン酸、エルカ酸、オレイン酸、イタコン酸、又はモンタン酸のアマイド若しくはエステルが好ましい。これらの脂肪酸の粉末や脂肪酸誘導体の粉末は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記のブロッキング防止剤のなかでも、無機粉末、脂肪酸の粉末、脂肪酸誘導体の粉末が好ましく、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、雲母、脂肪酸の粉末、脂肪酸誘導体の粉末が更に好ましく、タルク、脂肪酸金属塩の粉末が特に好ましい。
【0043】
添加されるブロッキング防止剤の量は、原料ペレット100質量部に対して0.001〜0,03質量部とすることが好ましく、0.005〜0.03質量部とすることが更に好ましい。ブロッキング防止剤の量を上記の範囲内とすることで、耐ブロッキング性に優れているとともに、成形体等の物性に対する影響の小さい樹脂ペレットを得ることができる。
【0044】
ブロッキング防止剤が添加された第一の処理済ペレットは、撹拌搬送手段により撹拌される。これにより、第一の処理済ペレットの表面が均一にムラなくブロッキング防止剤で被覆された第二の処理済ペレットが得られる。得られた第二の処理済ペレットは、搬送路24を通じて乾燥室30へと搬送される。なお、乾燥を実施することなく、得られた第二の処理済ペレットをそのまま目的物である「樹脂ペレット」としてもよい。
【0045】
(乾燥工程)
乾燥工程では、搬送路24を通じて乾燥室30内に第二の処理済ペレットを供給する。供給された第二の処理済ペレットを撹拌しながら乾燥室30の長手方向に搬送するとともに、乾燥室30内に送風路22を通じて熱風を導入する。これにより、熱風と第二の処理済ペレットとを接触させて、第二の処理済ペレットを乾燥させることができる。なお、乾燥室30内に導入された熱風は、スクリーンに形成された多数の孔と排風路26を通じて外部に排気される。
【0046】
第二の処理済ペレットを撹拌しながら熱風を導入することにより、結着している第二の処理済ペレット同士を分離させながら乾燥させることができる。なお、乾燥温度(熱風の温度)は、原料ペレットの表面が軟化する温度以上にすることが好ましい。原料ペレットの表面が軟化する温度以上の温度で乾燥することにより、粉体状のブロッキング防止剤が原料ペレットの表面にはまり込み、脱落し難くなる。このため、よりブロッキング防止効果の高い樹脂ペレットを得ることができる。
【0047】
第二の処理済ペレットを乾燥させることにより、目的物である樹脂ペレットを得ることができる。なお、得られた樹脂ペレットは、排出口32から取り出すことができる。
【0048】
(冷却工程)
冷却工程は、乾燥工程で得られた乾燥済の第二の処理済ペレットを冷却させる工程である。乾燥直後の第二の処理済ペレットの表面は十分に冷えていない場合が多いので、原料ペレットの表面に付着した粉体状のブロッキング防止剤が余熱によって脱落することがある。このため、乾燥工程で得られた乾燥済の第二の処理済ペレットを冷却することで、粉体状のブロッキング防止剤が原料ペレットの表面にはまり込んで脱落し難い樹脂ペレットを得ることができる。
【0049】
冷却工程は、乾燥工程が実施される乾燥室30に連続する冷却室等で実施されることが好ましい。これにより、同一の製造装置を用いて被覆から冷却まで行うことができるので、大量生産が可能となる。冷却温度は、原料ペレットの融点又は軟化点よりも低い温度にすることが、ブロッキング防止剤の脱落を効果的に防止できるために好ましい。
【0050】
冷却方法については特に限定されないが、例えば、乾燥済の第二の処理済ペレットを撹拌及び搬送しながら送風する方法等を挙げることができる。
【0051】
3.樹脂製の原料ペレットについて
樹脂製の原料ペレットは、例えば粘着性を有するものである。原料ペレットの大きさ(重さ)については特に限定されないが、例えば、平均30粒重量が0.8〜2gであることが好ましく、0.9〜1.8gであることが更に好ましく、0.95〜1.8gであることが特に好ましく、1〜1.8gであることが最も好ましい。なお、この「平均30粒重量」とは、無作為に取り出した30粒の原料ペレットの合計重量の平均値を意味する。
【0052】
原料ペレットの構成材料である樹脂(重合体)の種類は特に限定されない。但し、重合体の引張弾性率(YM;ASTM D−638−03の方法により測定される初期弾性率)は100MPa以下であることが好ましく、0.1〜100MPaであることが更に好ましく、0.1〜40MPaであることが特に好ましい。引張弾性率が上記の数値範囲内にある重合体からなる原料ペレットを用いることで、ブロッキング防止がより効果的になされた樹脂ペレットを得ることができる。
【0053】
重合体を得るために用いられる単量体としては、例えば、炭素数2〜20のα−オレフィン、エチレン、その他の任意のα−オレフィン等を挙げることができる。より具体的な単量体としては、エチレン、炭素数3以上(好ましくは3〜20、更に好ましくは3〜12、特に好ましくは3〜8)のα−オレフィンを挙げることができる。なかでも、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1が好ましい。また、一種以上のα−オレフィンとともに、共役ポリエン、非共役ポリエン、環状オレフィン、極性基含有ビニル単量体を用いてもよい。α−オレフィン由来の一種以上の構成単位を含み、更に、共役ポリエン、非共役ポリエン、環状オレフィン、及び極性基含有ビニル単量体のいずれかに由来する構成単位を含む重合体のことを「α−オレフィン由来の構成単位を有する重合体」ともいう。また、例えば芳香族ビニル化合物と、共役ポリエン及び極性基含有ビニル化合物のいずれかとの組み合わせであってもよい。
【0054】
重合体の具体例としては、エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを有する共重合体(A);プロピレン由来の構成単位と、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを有する共重合体(B);エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のαオレフィン由来の構成単位と、共役ポリエン及び/又は非共役ポリエン由来の構成単位とを有する共重合体(C);エチレン由来の構成単位と、酢酸ビニル由来の構成単位とを有する共重合体(D);芳香族ビニル化合物由来の構成単位と、共役ジエン由来の構成単位とを有する共重合ゴム及びその水素化物(E);等を挙げることができる。なお、これらの重合体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
(共重合体(A))
共重合体(A)の例には、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させて得られるエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1);エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフトした変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)が含まれる。
【0056】
炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)に含まれる、エチレン由来の構成単位の割合は50〜96モル%であることが好ましい。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)に含まれる、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位の割合は4〜50モル%であることが好ましい(但し、エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)。
【0058】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の密度(ASTM D 1505)は、0.850〜0.915g/cmであることが好ましく、0.850〜0.885g/cmであることが更に好ましく、0.850〜0.868g/cmであることが特に好ましい。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)は、0.01〜200g/10分であることが好ましく、0.1〜40g/10分であることが更に好ましい。
【0059】
DSC(示差熱重量分析)で測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の融点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることが更に好ましく、融点(Tm)が観測されないものが特に好ましい。融点(Tm)は、DSCにより測定される吸熱曲線における最大ピーク位置の温度である。なお、「融点が観測されない」とは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。
【0060】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の具体例としては、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1−ブテン・1−ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1−オクテンランダム共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)における不飽和カルボン酸等のグラフト量は、グラフト変性前のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)100質量%に対して、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(登録商標)(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)等を挙げることができる。
【0062】
不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、不飽和カルボン酸の酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物、エステル化合物等を挙げることができる。より具体的には、塩化マレイル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等を挙げることができる。なかでも、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)、これらの酸無水物が好ましい。
【0063】
(共重合体(B))
共重合体(B)の例には、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンとを共重合させて得られるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1);プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフトした変性プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−2)が含まれる。
【0064】
プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)に含まれる、プロピレン由来の構成単位の割合は50〜95モル%であることが好ましい。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)に含まれる、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位の割合は5〜50モル%であることが好ましい(但し、プロピレン由来の構成単位と、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする)。
【0066】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の密度(ASTM D 1505)は、0.850〜0.905g/cmであることが好ましく、0.850〜0.885g/cmであることが更に好ましい。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、230℃、荷重2.16kg)は、0.01〜400g/10分であることが好ましく、0.01〜200g/10分であることが更に好ましく、0.1〜70g/10分であることが特に好ましい。
【0067】
DSC(示差熱重量分析)で測定されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の融点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることが更に好ましく、融点(Tm)が観測されないものが特に好ましい。なお、「融点が観測されない」の定義、及び融点(Tm)の測定方法は、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の場合と同様である。
【0068】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)の具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテン共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
変性プロピレン・α−オレフィン共重合体(B−2)における不飽和カルボン酸等のグラフト量は、グラフト変性前のプロピレン・α−オレフィン共重合体(B−1)100質量%に対して、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、前述の変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)の場合と同様のものを挙げることができる。
【0070】
(共重合体(C))
共重合体(C)の例には、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、共役ジエン単量体及び/又は非共役ポリエン単量体とをランダム共重合させて得られる共重合体(C−1);共重合体(C−1)に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフトした変性共重合体(C−2)が含まれる。
【0071】
炭素数3〜20のα−オレフィンは、直鎖状であっても分岐を有するものであってもよい。炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等を挙げることができる。なかでも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが好ましい。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
共役ジエン単量体としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0073】
【化2】

【0074】
一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアリール基を示し、RとRの少なくとも一方は水素原子である。
【0075】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−2,4−ペンタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−ペンチル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。なかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンが共重合性に優れる点で好ましい。これらの共役ジエン単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
非共役ポリエン単量体の具体例としては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,9−デカトリエン、4,9−ジメチル−1,4,9−デカトリエン、5,8−ジメチル−1,4,9−デカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,9−デカトリエン、5−ビニル−1,6−オクタジエン等を挙げることができる。なかでも、脂肪族ポリエン化合物が好ましい。
【0077】
共重合体(C−1)に含まれる、エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)は、99/1〜40/60であることが好ましく、95/5〜50/50であることが更に好ましく、90/10〜55/45であることが特に好ましい。また、エチレン由来の構成単位と、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位と、共役ジエン単量体及び/又は非共役ポリエン単量体由来の構成単位との合計を100モル%とした場合に、共役ジエン単量体由来の構成単位と、非共役ポリエン単量体由来の構成単位との合計の含有割合は、0.1〜30モル%であることが好ましく、0.2〜20モル%であることが更に好ましい。
【0078】
共重合体(C−1)の密度(ASTM D 1505)は、0.855〜0.880g/cmであることが好ましく、0.855〜0.875g/cmであることが更に好ましい。また、共重合体(C−1)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は1〜150であることが好ましく、5〜130であることが更に好ましい。
【0079】
135℃デカリン中で測定される共重合体(C−1)の極限粘度[η]は、通常0.1〜10dl/g、好ましくは1.0〜7.0dl/gである。なお、この極限粘度[η]は、不飽和性オレフィン系共重合体の分子量の尺度となる物性値である。
【0080】
DSC(示差熱重量分析)で測定される共重合体(C−1)の融点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることが更に好ましく、融点(Tm)が観測されないものが特に好ましい。なお、「融点が観測されない」の定義、及び融点(Tm)の測定方法は、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の場合と同様である。
【0081】
共重合体(C−1)のヨウ素価は、通常1〜50、好ましくは3〜50、更に好ましくは5〜40である。なお、共重合体(C−1)は、各構成単位のモル比、極限粘度[η]、及びヨウ素価のうちの少なくとも一つが上記数値範囲内にあることが好ましく、二以上が上記数値範囲内にあることが更に好ましく、すべてが上記数値範囲内にあることが特に好ましい。
【0082】
オルトジクロロベンゼン溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により140℃で測定される共重合体(C−1)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましい。なお、共重合体(C−1)は、従来公知の鉱物油系軟化剤等の軟化剤で油展された、いわゆる油展ゴムであってもよい。
【0083】
共重合体(C−1)の具体例としては、エチレン・プロピレン・1,3−ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム等のEPDM;油展エチレン・プロピレン・1,3−ブタジエン共重合体、油展エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体、油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム等の油展EPDM等を挙げることができる。
【0084】
変性共重合体(C−2)における不飽和カルボン酸等のグラフト量は、グラフト変性前の共重合体(C−1)100質量%に対して、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、前述の変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)の場合と同様のものを挙げることができる。
【0085】
(共重合体(D))
共重合体(D)の例には、エチレンと、酢酸ビニルとを共重合させて得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1);エチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1)に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフトした変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(D−2)が含まれる。
【0086】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1)に含まれる、酢酸ビニル由来の構成単位の割合は5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることが更に好ましい。
【0087】
DSC(示差熱重量分析)で測定されるエチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1)の融点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、63℃以下であることが更に好ましく、融点(Tm)が観測されないものが特に好ましい。なお、「融点が観測されない」の定義、及び融点(Tm)の測定方法は、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の場合と同様である。
【0088】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.3〜30g/10分であることが更に好ましい。
【0089】
変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(D−2)における不飽和カルボン酸等のグラフト量は、グラフト変性前のエチレン・酢酸ビニル共重合体(D−1)100質量%に対して、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、前述の変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)の場合と同様のものを挙げることができる。
【0090】
(共重合ゴム(E))
共重合ゴム(E)の例には、芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合ゴム及びその水素添加物(E−1);共重合ゴム(E−1)に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフトした変性芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合ゴム及びその水素化物(E−2)が含まれる。なお、共重合ゴム(E−1)の例には、芳香族ビニル化合物・ブタジエン共重合体ブロックセグメントからなる水添ジエン系重合体;ポリイソプレンブロックセグメントと、芳香族ビニル化合物・イソプレン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体;芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物;芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物;が含まれる。
【0091】
共重合ゴム(E)のビカット軟化点(ASTM D1525)は、110℃以下であることが好ましく、63℃以下であることが更に好ましい。なお、共重合ゴム(E)のビカット軟化点は観測されないことが特に好ましい。
【0092】
共重合ゴム(E−1)に含まれる、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン)由来の構成単位の割合は5〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。また、この共重合ゴム(E−1)のメルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜200g/10分であることが好ましく、0.5〜70g/10分であることが更に好ましい。
【0093】
変性共重合ゴム(E−2)を製造するために用いられる不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、前述の変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)の場合と同様のものを挙げることができる。
【0094】
(その他の成分)
原料ペレットには、必要に応じて、上記の樹脂(重合体)以外の「その他の成分」が含有されていてもよい。「その他の成分」としては、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂、結晶核剤、透明化剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、耐候性安定剤、発泡剤、防曇剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、有機顔料、無機顔料等を挙げることができる。
【実施例】
【0095】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
単軸押出機を使用し、酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合が19質量%、MFR(ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が150g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)を200℃で混練して原料ペレットを調製した。調製した原料ペレット100質量部と、シリコーンオイル(商品名「SH200」、東レ・ダウコーニング社製、動粘度(25℃)=500cSt)0.01質量部と、ステアリン酸カルシウム(平均粒子径=20μm)0.01質量部とを使用し、図2に示す構成の製造装置を用いて樹脂ペレットを製造した。得られた樹脂ペレットの表面を目視観察したところ、粉体状のステアリン酸カルシウムが原料ペレットの表面に満遍なく付着していることが確認された。
【0097】
(実施例2)
EVA−1に代えて酢酸ビニル由来の構成単位の含有割合が46質量%、MFR(ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が100g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−2)を使用したこと、シリコーンオイルの量を0.03質量部としたこと、及びステアリン酸カルシウムに代えてステアリン酸リチウムを0.03質量部使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして樹脂ペレットを製造した。得られた樹脂ペレットの表面を目視観察したところ、粉体状のステアリン酸リチウムが原料ペレットの表面に満遍なく付着していることが確認された。
【0098】
(実施例3)
単軸押出機を使用し、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)(密度(ASTM D 1505)=0.865g/cm、MFR(ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)=4g/10分、エチレン由来の構成単位の含有割合=82モル%、引張弾性率(YM;ASTM D−638−03)=9.5MPa)を200℃で混練して原料ペレットを調製した。調製した原料ペレット100質量部と、シリコーンオイル(商品名「SH200」、東レ・ダウコーニング社製、動粘度(25℃)=500cSt)0.05質量部と、ステアリン酸カルシウム(平均粒子径=20μm)0.35質量部とを使用し、図2に示す構成の製造装置を用いて樹脂ペレットを製造した。得られた樹脂ペレットの表面を目視観察したところ、粉体状のステアリン酸カルシウムが原料ペレットの表面に満遍なく付着していることが確認された。
【0099】
(実施例4)
単軸押出機を使用し、油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(EPDM)(密度(ASTM D 1505)=0.87g/cm、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]=74、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度=3dl/g、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン(モル比)=78/15.8/6.2、ヨウ素価=13、油展量=40phr、軟化剤:出光石油化学社製W−380)を200℃で混練して原料ペレットを調製した。調製した原料ペレット100質量部と、ポリエチレングリコール(PEG)0.1質量部と、炭酸カルシウム(平均粒子径=20μm)0.35質量部とを使用し、図2に示す構成の製造装置を用いて樹脂ペレットを製造した。得られた樹脂ペレットの表面を目視観察したところ、粉体状の炭酸カルシウムが原料ペレットの表面に満遍なく付着していることが確認された。
【0100】
<ブロッキングの評価>
直径40mm、高さ70mmの内面がテフロン(登録商標)でコーティングされた円筒形の金属容器を27℃に設定されたオーブン中に30分放置後、実施例1〜4で得た樹脂ペレットを容器の下から55mmの高さ迄入れて30分間放置した。30分後に金属容器をオーブンから取り出し、樹脂ペレットの上に金属容器の内径よりやや小さい金属錘を載置して40.2Nの荷重負荷を1時間かけた。その後荷重負荷を取り除き、金属容器を逆さにしてペレットの落下状況を目視で観察するとともに、1分経過後、容器を元に戻して容器内部を目視で観察した。樹脂ペレットの落下状態において、樹脂ペレットが綺麗に分離して落下したものを「○」、樹脂ペレット同士の固まりとなったものが混じっていた場合は「×」として評価した。また、容器内部に樹脂ペレットが残っていないものは「○」、複数の樹脂ペレット同士の固まりが残っている場合は「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の樹脂ペレットの製造方法によれば、ブロッキングが防止された樹脂ペレットを簡便かつ大量に製造することができる。
【符号の説明】
【0103】
2 ノズル
4 ホッパ
5,15,25 モータ
10 被覆室
12 計量フィーダ
14,24 搬送路
20 付着室
22 送風路
26 排風路
30 乾燥室
32 排出口
100 製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被覆室内に供給された樹脂製の原料ペレットを撹拌しながら前記被覆室の長手方向に搬送するとともに、液状の結着剤を噴霧して、前記原料ペレットの表面を前記結着剤で被覆して第一の処理済ペレットを得る工程と、
円筒状の付着室内に前記第一の処理済ペレットを供給し、供給された前記第一の処理済ペレットを、撹拌しながら前記付着室の長手方向に搬送するとともに、粉体状のブロッキング防止剤と接触させて、前記第一の処理済ペレットの表面に前記ブロッキング防止剤を付着させて第二の処理済ペレットを得る工程と、
を有する、樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
通気性を有する円筒型のスクリーンによって構成された乾燥室内に前記第二の処理済ペレットを供給し、
前記第二の処理済ペレットを撹拌しながら前記乾燥室の長手方向に搬送するとともに、送気される熱風と前記第二の処理済ペレットとを接触させて、前記第二の処理済ペレットを乾燥する工程を更に有する、請求項1に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程で乾燥された前記第二の処理済ペレットを冷却する工程を更に有する、請求項2に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
JIS K−2283に準拠して測定される、25℃における前記結着剤の動粘度が0.5〜10000cStである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記結着剤が、ポリエーテルポリオール、脂肪族炭化水素油、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルカン、水酸基、カルボキシル基又はエステル基を有していてもよい総炭素数7〜18のアルケン、天然油、ナフテン油、パラフィン油、芳香族油、及びシリコーン油からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
レーザー回折法により測定した前記ブロッキング防止剤の平均粒子径が0.1〜50μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項7】
前記ブロッキング防止剤が、無機粉末、有機粉末、脂肪酸の粉末、及び脂肪酸誘導体の粉末からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂ペレットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−40719(P2012−40719A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182353(P2010−182353)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】