説明

樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品の製造装置

【課題】第1の領域及び第2の領域に区画された樹脂成形品において、中子部材を用いて各領域の容積や断面積の減少を抑制しつつ、効率よく成形することができる樹脂成形方法及び樹脂成形品を提供すること。
【解決手段】一対の板状部材48a、48bからなる中子部材46を金型40に設けて、当該金型40を加熱しつつ回転させることで空調ダクト12を成形し、この成形された空調ダクト12を中子部材46とともに金型40から取り外した後、一対の板状部材48a、48bを離間させて当該中子部材46を空調ダクト12から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空調用ダクト等の樹脂成形品の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の空調装置に用いられている空調ダクト等のように中空の樹脂成形品は、ブロー成形や回転成形により成形されている。
このようなブロー成形や回転成形により成形される樹脂成形品において、流路断面を区画して複数の空間を形成する場合、予め金型に中子となる部材(強化心材)を設けたり、中子部材の代わりにこれと同形状のコア型を設けた金型を用いて成形する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、成形後のダクト部材を加工して仕切部材(補強部材)を設ける構成も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341516号公報
【特許文献2】特開2002−36865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術では、金型に中子を設けて成形し、そのまま成形品に中子を残し、この中子を強化芯材として利用しているが、強化心材を設ける分、当該仕切り部分の厚みが厚くなり、流路断面積が減少する。また、金型に設けられたコア型により仕切りを形成したりしているが、この場合には仕切り部分にコア型を抜き出すための抜き勾配を形成する必要があり、その分流路面積が減少するという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2に開示された技術では、成形品に孔(スリット)を穿設して仕切部材を挿入することで、流路を区画しているが、孔の穿設や仕切部材の挿入、仕切部材の位置決め部の形成、内部を流通する流体が漏れでないようシール材の塗布等、部品点数や作業工数が増加するという問題がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、第1の領域及び第2の領域に区画された樹脂成形品において、中子部材を用いて各領域の容積や断面積の減少を抑制しつつ、効率よく成形することができる樹脂成形方法及び樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の樹脂成形品の製造方法では、中空な第1の領域及び第2の領域が区画された樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、互いに平面部を重ね合わせた少なくとも一対の板状部材からなる中子部材を金型内部に設け、前記金型内部に樹脂材料を導入し、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形し、当該成形された樹脂成形品を前記中子部材とともに金型から取り出し、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
【0007】
請求項2の樹脂成形品の製造方法では、請求項1において、前記中子部材の一側先端部は曲面をなしており、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動させることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
請求項3の樹脂成形品の製造方法では、請求項2において、前記中子部材は前記一側先端部において、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動可能に前記一対の板状部材が蝶番を介して連結されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4の樹脂成形品の製造方法では、請求項1において、前記中子部材は、前記一対の板状部材の間に中心板状部材が挟まれており、前記中心板状部材を抜き取ることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
請求項5の樹脂成形品の製造方法では、請求項4において、前記中心板状部材を抜き取った後、前記一対の板状部材の間に圧縮空気を供給することで当該一対の板状部材を前記樹脂成形品から剥がし、当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
【0009】
請求項6の樹脂成形品の製造方法では、請求項1から5のいずれかにおいて、前記樹脂材料の導入された金型を加熱し且つ回転させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴としている。
【0010】
請求項7の樹脂成形品の製造方法では、請求項1から5のいずれかにおいて、前記樹脂材料は、前記中子部材に対応する位置が凹んでいる筒状のパリソンとして前記金型内部に導入され、当該パリソン内に空気を吹き込み膨張させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴としている。
【0011】
請求項8の樹脂成形品の製造方法では、請求項1から7のいずれかにおいて、前記樹脂成形品は、車両に搭載された空調装置に用いられ、当該空調装置により生成された空調空気が前記第1の領域及び前記第2の領域を流通する空調用ダクトであることを特徴としている。
請求項9の樹脂成形品の製造装置では、中空な第1の領域と第2の領域が区画された樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造装置であって、互いに平面部が重ね合わされた少なくとも一対の板状部材からなる中子部材と、前記中子部材が設けられた金型と、前記金型内部に導入される樹脂材料と、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形する成形手段とを備え、前記成形手段により成形された前記樹脂成形品を前記中子部材とともに金型から取り出した後に、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記成形樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
【0012】
請求項10の樹脂成形品の製造装置では、請求項9において、前記中子部材の一側先端は曲面をなしており、当該先端を支点にして前記板状部材を回動させることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記成形樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
請求項11の樹脂成形品の製造装置では、請求項10において、前記中子部材は前記一側先端部において、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動可能に前記2つの板状部材が蝶番を介して連結されていることを特徴としている。
【0013】
請求項12の樹脂成形品の製造装置では、請求項9において、前記中子部材は、前記一対の板状部材の間に中心板状部材が挟まれており、前記中心板状部材を抜き取ることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
請求項13の樹脂成形品の製造装置では、請求項12において、前記中心板状部材を抜き取った後、前記一対の板状部材の間に圧縮空気を供給することで当該一対の板状部材を前記樹脂成形品から剥がし、当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴としている。
【0014】
請求項14の樹脂成形品の製造装置では、請求項9から13のいずれかにおいて、前記成形手段は、樹脂材料の導入された金型を加熱し且つ回転させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴としている。
【0015】
請求項15の樹脂成形品の製造装置では、請求項9から13のいずれかにおいて、前記樹脂材料は、前記中子部材に対応する位置が凹んでいる筒状のパリソンとして前記金型内部に導入されるものであり、前記成形手段は、前記パリソン内に空気を吹き込み膨張させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴としている。
【0016】
請求項16の樹脂成形品の製造装置では、請求項9から15のいずれかにおいて、前記樹脂成形品は、車両に搭載された空調装置に用いられ、当該空調装置により生成された空調空気が前記第1の領域及び前記第2の領域を流通する空調用ダクトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記手段を用いる本発明の請求項1の樹脂成形品の製造方法及び請求項9の樹脂成形品の製造装置によれば、少なくとも一対の板状部材からなる中子部材を金型に設けて、当該金型を用いて樹脂成形品を成形した後、一対の板状部材を離間させて当該中子部材を樹脂成形品から取り外す。
このように一対の板状部材を離間させて中子部材を樹脂成形品から取り外せることで、予め樹脂成形品に中子部材の抜き勾配を設ける必要がなくなり、設計の自由度を高めることができる。これにより、第1の領域及び第2の領域の容積や断面積を最大限確保することができる。
【0018】
また、本発明によれば、成形の段階で第1の領域及び第2の領域を区画することができるため、成形後に別部品として仕切部材を設ける必要等はなく、同一材質の単一部品として、2つの領域を有する樹脂成形品を成形することができる。つまり、仕切部材を設けるための加工や仕切部材を設けるための接着剤、リベットやボルト等の締結部材が不要な上、金型成形により全て成形できることで区画部分の精度を高くすることができる。さらに中子部材は樹脂成形品から取り外した後には、再利用することもできる。
【0019】
請求項2の樹脂成形品の製造方法及び請求項10の樹脂成形品の製造装置によれば、中子部材の一側先端部を曲面として、当該先端部を支点に板状部材を回動させることで中子部材を樹脂成形品から取り外す。したがって、一対の板状部材を開くだけの容易な作業で中子部材を取り外すことができ、支点となる先端部が曲面をなしていることで樹脂成形品を傷つけることなく一対の板状部材を離間させることができる。
【0020】
請求項3の樹脂成形品の製造方法及び請求項11の樹脂成形品の製造装置によれば、中子部材の一側先端部において、一対の板状部材が蝶番により連結されていることで、当該先端部を支点に円滑に板状部材を回動させることができ、より容易に中子部材を樹脂成形品から取り外すことができる。
請求項4の樹脂成形品の製造方法及び請求項12の樹脂成形品の製造装置によれば、一対の板状部材の間に中心板状部材を介在させ、当該中心板状部材を抜き出すだけで、一対の板状部材を離間させることができ、容易に中子部材を樹脂成形品から取り外すことができる。また、樹脂成形品を変形させることなく中子部材を取り外すことができることから、複雑な仕切形状の樹脂成形品を製造することもできる。
【0021】
請求項5の樹脂成形品の製造方法及び請求項13の樹脂成形品の製造装置によれば、中心板状部材を抜き取ることで生じた隙間に圧縮空気を供給することで、一対の板状部材に付着している樹脂成形品を剥がして中子部材を取り外す。これにより樹脂成形品を傷つけることなく、且つより容易に中子部材を取り外すことができる。
【0022】
請求項6の樹脂成形品の製造方法及び請求項14の樹脂成形品の製造装置によれば、金型を加熱し且つ回転させることで樹脂成形品を成形するいわゆる回転成形に適用することができる。
請求項7の樹脂成形品の製造方法及び請求項15の樹脂成形品の製造装置によれば、樹脂材料を筒状のパリソンとして前記金型内部に導入し、パリソン内に空気を吹き込み膨張させることで、金型内壁及び中子部材表面に付着させ、樹脂成形品を成形するいわゆるブロー成形に適用することができる。
【0023】
請求項8の樹脂成形品の製造方法及び請求項16の樹脂成形品の製造装置によれば、樹脂成形品を車両の空調用ダクトに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る製造方法及び製造装置により製造した樹脂成形品である空調ダクトを用いたバス車両を示す斜視図である。
【図2】空調ダクトの平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】回転成形による空調ダクトの製造手順を示す説明図(a)〜(d)である。
【図5】空調ダクトの製造で用いられる中子部材の拡大斜視図である。
【図6】中子の第1変形例を示した拡大斜視図である。
【図7】中子の第2変形例を示した拡大斜視図である。
【図8】ブロー成形により製造方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1を参照すると、本発明に係る製造方法及び製造装置により製造した樹脂成形品である空調ダクトを用いたバス車両を示す斜視図が示されている。
図1に示すバス車両1は、箱形の車体2が車両前後方向に延びており、車体2の内部には客室4が形成されている。客室4の天井の車幅方向両側には、一対の冷房用ダクト6、6が設けられ、客室4の床板の車幅方向両側には、一対の暖房用ダクト8、8が設けられている。なお、両ダクト6、8は、いずれも客室4の前後方向に沿って配置してある。
【0026】
また、客室4の前部床下には、空調ユニット10(空調装置)が搭載されている。当該空調ユニット10は、床下の左右両側に図示しない2基のブロアファンを有しており、当該ブロアファンからX形の空調ダクト12、冷・暖房切換ダンパー内蔵の中継ダクト14、14を介して、客室4内の両側の冷房用ダクト6、暖房用ダクト8にそれぞれ接続されている。このような構成により、空調ユニット10内で生成された空調空気(冷風、温風など)を冷房用ダクト6、暖房用ダクト8から客室4内へ吹き出せるようにしている。
【0027】
X形の空調ダクト12は、本発明に係る樹脂成形方法により成形された樹脂成形品であり、図2には当該空調ダクトの平面図、図3には図2のA−A線に沿う断面図が示されており、以下これらの図に基づき空調ダクト12の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、空調ダクト12は、車両右側に位置する第1ダクト20aと車両左側に位置する第2ダクト20bとが車両前後方向中央部分で隣接していることで上面視X形をなしている。
【0028】
第1ダクト20a及び第2ダクト20bの後端部22a、22bはそれぞれ対応するブロアファンに接続されており、前端部24a、24bはそれぞれ対応する中継ダクト14、14に接続されている。なお、当該空調ダクト12は、前後2部品で構成されており、車両前後方向中央部分において板金バンド26を介して前後一体に接続されている。
【0029】
図3に示すように、空調ダクト12は断面略矩形の流路(第1の領域、第2の領域)を形成する第1ダクト20a及び第2ダクト20bが車両前後方向中央部分において平行に並んで隣接している。当該各ダクト20a、20bはそれぞれの下面30a、30bが、下面中央部30cを介して連続した一平面としてつながっている。一方、各ダクトの上面32a、32bの間には隙間が空いている。各ダクト20a、20bの車両幅方向内側の側面34a、34b(以下、内側面という)は、互いに下面30a、30b及び上面32a、32bに対し垂直をなしており、隙間を有しつつ対向している。つまり、当該各ダクト20a、20bの間には、内側面34a、34bと下面中央部30cとによって、上方が開口し車両前後方向に延びた区画溝36が形成されている。
【0030】
当該空調ダクト12は弾性を有する熱可塑性の樹脂素材で成形された成形品であり、以下、特に当該第1ダクト20a及び第2ダクト20bが隣接している車両前後方向中央部分における、空調ダクト12の製造方法について説明する。
図4では、回転成形による空調ダクトの製造手順を示す説明図(a)〜(d)が示されており、図5では、当該空調ダクトの製造で用いられる中子部材の拡大斜視図が示されており、以下これらの図に基づき説明する。
【0031】
まず図4(a)に示すように、空調ダクト12を成形するための金型40は上下二分割されており、下方が開口した断面凹状のアッパーダイ42と、当該アッパーダイ42の開口部を塞ぐように形成されたアンダーダイ44とからなる。なお、図4(a)〜(d)では、空調ダクト12の車両前後方向中央部分の断面のみが示されているが、当該金型40は、空調ダクト12の前部及び後部それぞれにおいて、当該空調ダクト12の形に沿った形状に形成されている。
【0032】
そして、アッパーダイ42の天井部には、幅方向中央部分にて車両前後方向に延びている中子取付溝42aが形成されており、当該中子取付溝42aに中子部材46が取り付けられている。
中子部材46は、詳しくは図5に示すように、一対の板状部材48a、48bが左右重ね合わされて形成されている。当該各板状部材48a、48bはそれぞれ、平板状の平板部50a、50bと当該平板部50a、50bの上端から外側に突出した頭部52a、52bとからなる断面L字状をなしている。また中子部材46の先端部46aは各板状部材48a、48bを重ね合わせた状態で断面半円形状をなしており、当該先端部46aを支点に板状部材48a、48bを回動させることで、互いに離間可能に形成されている。なお、当該中子46は、例えば金型40と同様な熱伝導性を有した素材、例えばアルミニウムや銅合金等で構成されている。
【0033】
このような構成の中子部材46の頭部52a、52bが、図4(a)に示すように、アッパーダイ42の中子取付溝部42aに嵌合されることで、中子部材46が取り付けられている。
この中子部材46の取り付けられたアッパーダイ42とアンダーダイ44とを型締めする前に、金型40内部には例えば粉末状の熱可塑性樹脂材料Mが必要量導入される。
【0034】
そして、アッパーダイ42とアンダーダイ44を型締めした後に、図4(b)に示すように、金型40及び中子部材46を加熱して回転させることで粉末状の熱可塑性樹脂材料を溶融させて、金型40の内壁及び中子部材46表面に付着させる。中子部材46の先端部46aとアンダーダイ44とは非接触であり、両者の間の隙間にも熱可塑性樹脂材料Mが溶融し、下面中央部30cを形成することとなる。
【0035】
所定時間が経過し、投入した熱可塑性樹脂材料Mの全てが溶融し、金型40内部表面及び中子部材46表面に付着した後には、回転を停止し金型40を冷却する。そして、金型40冷却後には、図4(c)に示すようにアッパーダイ42及びアンダーダイ44を分離し、成形された成形品たる空調ダクト12を取り外す。このとき、当該空調ダクト12とともに中子部材46も一体にアッパーダイ42の中子取付溝42aから取り外される。
【0036】
続いて、図4(d)に示すように、例えば空調ダクト12の下面中央部30c下に支持部材54を当接させて、この当接部分を支点として空調ダクト12の左右両側を下方に押圧することで、空調ダクト12の区画溝36の開口部分を拡げる。このとき第1ダクト20a及び第2ダクト20bのそれぞれの内側面34a、34bには板状部材48a、48bの平板部50a、50bが密着していることから、区画溝36の拡がりに応じて、中子部材先端部46aを支点に各板状部材48a、48bが回動して離間する。なお、ここでは空調ダクト12の左右両側を下方に押圧する代わりに、中子部材46の各板状部材48a、48bの頭部48a、48bを左右に拡げることで、区画溝36を拡げても構わない。
【0037】
そして、当該各板状部材48a、48bを各ダクト20a、20bの内側面34a、34bから剥がした上で、中子部材46を空調ダクト12から取り外す。これにより、空調ダクト12の製造を完了する。なお、この後に、空調ダクト12の外周に断熱材を設けたりしても構わない。
以上のように、一対の板状部材48a、48bからなる中子部材46を金型40に設け、この金型40を用いて回転成形することで中子部材46により第1ダクト20aと第2のダクト20bとが区画された空調ダクト12を成形することができる。
【0038】
中子部材46は一対の板状部材48a、48bから構成されており、当該一対の板状部材48a、48bを中子部材46の先端部46aを支点に回動させて離間させることで、特に抜き勾配等を設ける必要なく、当該中子部材46を容易に取り外すことができる。これにより設計の自由度を高めることができ、第1ダクト20a及び第2ダクト20bそれぞれの流路面積を最大限確保することができる。また、一対の板状部材48a、48bを開くだけの容易な作業で中子部材46を取り外すことができ、支点となる先端部46aが曲面をなしていることで成形された空調ダクト12を傷つけることなく一対の板状部材48a、48bを離間させることができる。
【0039】
また、成形の段階で第1ダクト20a及び第2ダクト20bを区画することができるため、成形後に別部品として仕切部材を設ける必要等はなく、同一材質の単一部品として、2つの流路を有する空調ダクト12を成形することができる。つまり、仕切部材を設けるための加工や仕切部材を設けるための接着剤、リベットやボルト等の締結部材が不要な上、金型成形により全て成形できることで区画部分の精度を高くすることができる。さらに中子部材46は再利用することもできる。
【0040】
以上で本発明に係る樹脂成形品の製造方法及び製造装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、中子部材46の構成は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、以下中子部材の変形例を説明する。
中子部材の第1変形例として、図6に示すように、中子部材60の先端部60aを蝶番構造とする。詳しくは、中子部材60を構成する一対の板状部材62a、62bの先端部に、両板状部材62a、62bを回動自在に貫通する軸材64が設けられている。このような構成により、当該軸材64を中心に両板状部材62a、62bを回動させることができ、両板状部材62a、62bを円滑に離間させることができる。このような中子部材60を用いて上記空調ダクト12のような樹脂成形品を成形した場合、より容易に中子部材60を樹脂成形品から取り外すことができる。
【0041】
中子部材の第2変形例としては、図7(a)に示すように、中子部材70において、一対の板状部材72a、72bの間に中心板状部材72cを介在させた構成とする。詳しくは、平板部74a、74b及び頭部76a、76bからなる断面L字状の一対の板状部材72a、72bの間に、平板部74c及び頭部76cからなる略T字状の中心板状部材72cが挿入されている状態にある。中子部材70の先端部70aは、これら一対の板状部材72a、72b及び中心板状部材72cが断面幅方向に重なり合って断面半円形状をなしている。
【0042】
このような構成の中子部材70を用いた場合、空調ダクト12のような樹脂成形品を成形し、中子部材70を取り外す際には、中心板状部材72cを一対の板状部材72a、72bの間から抜き出すことで、両板状部材72a、72bを離間させることができる。さらには、図7(b)に示すように、中心板状部材72cを抜き出したことで一対の板状部材72a、72bの間に生じた隙間に圧縮空気を供給することで、当該圧縮空気が先端部70aから両板状部材72a、72bと各ダクトの内側面78a、78bとの間に入り込み、両板状部材72a、72bを内側面78a、78bから剥がすことができる。
【0043】
当該変形例では、樹脂成形品を変形させることなく中子部材70を取り外すことができることから、複雑な仕切形状の樹脂成形品を製造することもできる。特に、圧縮空気を供給して一対の板状部材72a、72bを内側面78a、78bから剥がすことで、樹脂成形品を傷つけることなく、且つより容易に中子部材70を取り外すことができる。
【0044】
また、上記実施形態では回転成形により空調ダクト12を成形しているが、本発明の成形方法はブロー成形にも適用可能である。詳しくは、図8に示すように、予め樹脂材料によりブロー成型用パリソン80を作成する。当該パリソン80は、金型82に設けられた中子部材84に対応する位置が凹んでいる筒状をなしている。そして、当該パリソン80を中子部材84の設けられた金型82に導入し、その後当該パリソン80内に空気を吹き込み膨張させることで金型82内壁及び中子部材84表面に付着させて成形を行う。これにより、回転成形と同様の効果を奏することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、樹脂成形品として空調ダクト12を製造しているが、本発明の製造方法及び製造装置により製造させる樹脂成形品はこれに限られるものではなく、例えばタンク部材等を製造することも可能である。つまり、第1の領域と第2の領域とに区画されたタンクを製造することで、異なる液体または気体を同一タンク内に入れることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
12 空調ダクト
20a 第1ダクト
20b 第2ダクト
30a、30b 下面
30c 下面中央部
34a、34b、78a、78b 内側面
36 区画溝
40、82 金型
42a 中子取付溝
46、60、70、84 中子部材
46a、60a、70a 先端部
48a、48b、62a、62b、72a、72b 板状部材
50a、50b、74a、74b、74c 平板部
52a、52b、76a、76b、76c 頭部
54 支持部材
72c 中心板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空な第1の領域及び第2の領域が区画された樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
互いに平面部を重ね合わせた少なくとも一対の板状部材からなる中子部材を金型内部に設け、
前記金型内部に樹脂材料を導入し、
前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形し、
当該成形された樹脂成形品を前記中子部材とともに金型から取り出し、
前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外す
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記中子部材の一側先端部は曲面をなしており、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動させることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記中子部材は前記一側先端部において、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動可能に前記一対の板状部材が蝶番を介して連結されていることを特徴とする請求項2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記中子部材は、前記一対の板状部材の間に中心板状部材が挟まれており、
前記中心板状部材を抜き取ることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記中心板状部材を抜き取った後、前記一対の板状部材の間に圧縮空気を供給することで当該一対の板状部材を前記樹脂成形品から剥がし、当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項4記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料の導入された金型を加熱し且つ回転させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料は、前記中子部材に対応する位置が凹んでいる筒状のパリソンとして前記金型内部に導入され、
前記パリソン内に空気を吹き込み膨張させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形品は、車両に搭載された空調装置に用いられ、当該空調装置により生成された空調空気が前記第1の領域及び前記第2の領域を流通する空調用ダクトであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
中空な第1の領域と第2の領域が区画された樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造装置であって、
互いに平面部が重ね合わされた少なくとも一対の板状部材からなる中子部材と、
前記中子部材が設けられた金型と、
前記金型内部に導入される樹脂材料と、
前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形する成形手段とを備え、
前記成形手段により成形された前記樹脂成形品を前記中子部材とともに金型から取り出した後に、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記成形樹脂成形品から取り外す
ことを特徴とする樹脂成形品の製造装置。
【請求項10】
前記中子部材の一側先端は曲面をなしており、当該先端を支点にして前記板状部材を回動させることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記成形樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項9記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項11】
前記中子部材は前記一側先端部において、当該先端部を支点にして前記板状部材を回動可能に前記2つの板状部材が蝶番を介して連結されていることを特徴とする請求項10記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項12】
前記中子部材は、前記一対の板状部材の間に中心板状部材が挟まれており、
前記中心板状部材を抜き取ることで、前記中子部材の前記一対の板状部材を離間させて当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項9記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項13】
前記中心板状部材を抜き取った後、前記一対の板状部材の間に圧縮空気を供給することで当該一対の板状部材を前記樹脂成形品から剥がし、当該中子部材を前記樹脂成形品から取り外すことを特徴とする請求項12記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項14】
前記成形手段は、樹脂材料の導入された金型を加熱し且つ回転させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項15】
前記樹脂材料は、前記中子部材に対応する位置が凹んでいる筒状のパリソンとして前記金型内部に導入されるものであり、
前記成形手段は、前記パリソン内に空気を吹き込み膨張させることで、前記金型内部に導入された樹脂材料を前記金型内壁及び前記中子部材表面に付着させて、前記中子部材により前記第1の領域及び第2の領域が区画された前記樹脂成形品を成形することを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項16】
前記樹脂成形品は、車両に搭載された空調装置に用いられ、当該空調装置により生成された空調空気が前記第1の領域及び前記第2の領域を流通する空調用ダクトであることを特徴とする請求項9から15のいずれかに記載の樹脂成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224178(P2012−224178A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92880(P2011−92880)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】