説明

樹脂成形品バリ取り装置

【課題】装置自体を小型化し、樹脂成形品の外形縁に沿って互いに密接した状態で配置して樹脂成形品のバリ取り作業を高い精度で効率的に行い、製品の仕上げを良好に行うバリ取り装置を提供する。
【解決手段】樹脂成形品13の内面形状に一致し、樹脂成形品13が載置される突所を有した成形品支持部材11と、成形品支持部材に載置された樹脂成形品13の外形縁に沿って相互が密接するように多数配置されたバリ取り部材21とを備える。各バリ取り部材21は、互いの軸線が平行し、回り止め状態で摺動するように支持された複数本のピストンロッド23bを有したシリンダ部材23と、上記ピストンロッド23bの軸端部に固定され、複数個の放熱部を有した放熱部材25と、該放熱部材25に設けられる加熱部材27と、該加熱部材27に設けられ、相対する樹脂成形品の外形縁に一致する突状からなる加熱刃29からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品を成形した際に金型のパーティングラインやゲート等により生じるバリを加熱切断して除去する樹脂成形品バリ取り装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、射出成形等の成形法で製造されたプラスチック成形品の表面には、金型の合わせ目に相当する部分のパーティングラインやゲートにバリが生じやすく、外観上あるいは機能上問題があった。そのため従来から、このようなパーティングラインやゲートに生じたバリをナイフややすり等の切削具で切断除去して樹脂成形品の仕上げを行っていた。
【0003】
手作業でこのような作業を行うと、仕上り精度にばらつきが生じるばかりでなく、作業効率が悪く、製品の歩留りが大幅に低下するという問題があった。このために、例えば特許文献1に示す樹脂成形品のバリ取り装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に示す樹脂成形品のバリ取り装置は、固定台に支持された 樹脂成形品に対し、該樹脂の溶融温度に達しない温度に加熱された高温コテ及び該高温コテの温度よりも低い温度であって、バリにコテを押圧してもバリがコテに付着しない温度に加熱された中温コテを、固定同機構により位置決めして移動し、先ず高温コテを樹脂成形品のバリに接触しないように近づけてバリを軟化させ、次いで、中温コテにより軟化したバリにバリを押し潰して除去する構成からなる。
【0005】
そして上記バリ取り装置により樹脂成形品の外形縁に生じたバリを除去するには、樹脂成形品のバリ個所に対してコテを外形縁に沿うように高い位置精度で移動する必要があり、その移動機構として、例えばエアーシリンダ等の移動部材と共にコテの移動を支持案内するガイドロッドやリニアガイド等のガイド部材を設ける必要がある。このため、バリ取り装置は、移動機構と共に設けられるガイド機構により大型化して幅が大きくなり、広い取り付けスペースを必要する問題を有している。
【0006】
上記の問題点は、例えば車両用パネル等のように大型で曲線外形を有した大型樹脂成形品のバリ取り装置として構成する場合に顕著に現れる。上記した大型の樹脂成形品のバリを除去するには、該樹脂成形品の外形に相対して多数個のバリ取り装置を外形縁に沿うように配列し、同時にそれぞれのバリ取り装置を駆動して該樹脂成形品の外形縁に生じているバリを同時に除去する必要がある。
【0007】
しかし、上記したように従来のバリ取り装置にあっては、移動機構自体がガイド機構により大型化し、1台当たりの横幅(樹脂成形品の外形に沿う方向)が大きくなるため、移動機構が邪魔して複数台のバリ取り装置を樹脂成形品の外形縁に沿って互いに密接するように配置することが困難になっている。このため、樹脂成形品のバリ全体を一回のバリ取り作業で除去できず、バリ全体を除去するには、複数回のバリ取り作業を行う必要があり、バリ取り作業効率が悪くなっていた。
【0008】
特に、樹脂成形品の曲線外形部にあっては、複数台のバリ取り装置を互いに密接した状態で配列して仕上げ精度を高める必要があるが、従来のバリ取り装置にあっては、複数台のバリ取り装置を互いに密接した状態で配置することが困難なため、曲線外形部のバリを効率的に除去できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−340838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、移動機構自体がガイド機構により大型化し、1台当たりの横幅(樹脂成形品の外形に沿う方向)が大きくなることにより複数台のバリ取り装置を樹脂成形品の外形に沿うように互いに密接した状態で配置することが困難になる点にある。一回のバリ取り作業で樹脂成形品のバリ全体を同時に除去できず、バリ取りの作業効率が悪くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、樹脂成形品の内面形状に一致し、樹脂成形品が載置される突所を有した成形品支持部材と、成形品支持部材に載置された樹脂成形品の外形縁に沿って相互が密接するように多数配置されたバリ取り部材とを備え、各バリ取り部材は、互いの軸線が平行し、回り止め状態で摺動するように支持された複数本のピストンロッドを有したシリンダ部材と、上記ピストンロッドの軸端部に固定され、複数個の放熱部を有した放熱部材と、該放熱部材に設けられる加熱部材と、該加熱部材に設けられ、相対する樹脂成形品の外形縁に一致する突状からなる加熱刃からなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、装置自体を小型化し、樹脂成形品の外形縁に沿って互いに密接した状態で配置して樹脂成形品のバリ取り作業を高い精度で効率的に行い、製品の仕上げを良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】樹脂成形品バリ取り装置の概略を示す略体斜視図である。
【図2】樹脂成形品バリ取り装置の略体正面図である。
【図3】バリ取り部材の斜視図である。
【図4】樹脂成形品のセット状態を示す説明図である。
【図5】樹脂成形品の位置決め状態を示す説明図である。
【図6】樹脂成形品のバリ取り状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、各バリ取り部材を、互いの軸線が平行し、回り止め状態で摺動するように支持された複数本のピストンロッドを有したシリンダ部材と、上記ピストンロッドの軸端部に固定され、複数個の放熱部を有した放熱部材と、該放熱部材に設けられる加熱部材と、該加熱部材に設けられ、相対する樹脂成形品の外形縁に一致する突状からなる加熱刃とから構成することを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0015】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1乃至図3に示すように、樹脂成形品バリ取り装置1の本体フレーム(図示せず)には、昇降台5が上下ガイド軸7に昇降可能に支持され、該昇降台5は、上下シリンダ、上下方向へ架け渡され、電動モータに連結された駆動チェーン等の上下移動部材9(図は、上下駆動部材9としてシリンダ部材を使用した例を示す。)の駆動に伴って所定のストロークで昇降される。
【0016】
上記昇降台5には、成形品支持部材としての支持板11が搖動するように支持され、該支持板11の上面には、バリ取りされる樹脂成形品13の内面に一致する形状の突所としての疑似コア15が設けられている。上記支持板11は、上記昇降台5に取り付けられたシリンダ等の搖動部材17により昇降台5に対して所定の角度に傾く傾動位置と水平状態になる水平位置の間で搖動される。
【0017】
昇降台5の上方に位置する本体フレームには、樹脂成形品13の一部外形状に一致する凹所を有した位置決め部材19が、水平状態の支持疑似コア15に相対して取り付けられている。該位置決め部材19は、昇降台5が上方へ移動された際に、疑似コア15にセットされた樹脂成形品13の外形上部を凹所内に嵌め込んで位置決めさせる。
【0018】
本体フレームの上部には、多数のバリ取り部材21が樹脂成形品13の外形縁に沿って互いに密接するように配置されている。各バリ取り部材21は、シリンダ部材23と、該シリンダ部材23のロッド23a軸端に固着される放熱部材25と、該放熱部材25に固着され、内部にシーズヒータ、電熱ヒータ等のヒータが内蔵された加熱部材27と、該加熱部材27の前面に取付けられ、樹脂成形品13における外形縁に一致する突状に形成された加熱刃29とから構成される。
【0019】
なお、図示する樹脂成形品13のように製品13aとバリ13bの境界個所が疑似コア15の上面に対して高さをおいた個所に位置する場合がある。この場合にあっては、該個所に対応するバリ取り部材21の取付け位置を他のバリ取り部材21の取付け位置に対し、高さに応じた間隔を設けて取付ければよい。
【0020】
上記シリンダ部材23は、シリンダチューブ23a内にて軸線方向へ摺動するように支持されるピストン(図示せず)に対し、軸線方向が一致する軸線を有した2本のピストンロッド23bの軸端が固着され、これらピストンロッド23bは、シリンダチューブ23aの端部を閉鎖する閉鎖ブロック23cに形成された軸支部23dを介して気密状態で軸線方向へ摺動可能で、回り止めされた状態で支持されて外部へ突出している。
【0021】
放熱部材25は、熱伝導率が高い、例えばアルミニウム等の金属材で、2本のピストンロッド23bの軸端が固着される取付け板25aから前方へ突出する複数本の放熱スタッド25bが一体に設けられている。
【0022】
上記加熱部材27は、上記した放熱スタッド25bの前端に対して断熱材28を介して固定されると共にその前面には、加熱刃29が設けられ、該加熱刃29は、樹脂成形品13が溶融可能な温度に加熱させる。上記加熱刃29は、対応する樹脂成形品13の外形縁個所に一致する直線状または曲線状で、適宜高さの突状に形成される。そして互いに隣接し合う多数の加熱刃29は、樹脂成形品13の外形縁に一致し、樹脂成形品13の製品13aとバリ13bの境界を溶融して切断する。
【0023】
次に上記のように構成された樹脂成形品バリ取り装置1によるバリ取り作用を説明する。
上下移動部材9を作動して昇降台5を下方位置へ移動した状態で搖動部材17を作動して支持板11を所定の角度で傾動して疑似コア15を作業者に向かい合わせる。該状態にて作業者は、疑似コア15に対してバリ取りする樹脂成形品13を嵌合して支持板11にセットする。(図4参照)
【0024】
次に、搖動部材17を復動して支持板11を水平状態に戻した後に上下移動部材9を復動して昇降台5を上方位置へ移動し、支持板11にセットされた樹脂成形品13の一部外面を位置決め部材19の凹所に係合して固定させる。これにより支持板11にセットされた樹脂成形品13は、各バリ取り部材21に対して位置決めされ、それぞれの加熱刃29が樹脂成形品13の外形縁としての製品13aとバリ13bの境界に位置される。(図5参照)
【0025】
次に、上記状態にてシリンダ部材23を作動して2本のピストンロッド23cを同時に伸長する方向へ作動して加熱部材27により合成樹脂が溶融可能な温度に加熱された加熱刃29を樹脂成形品13の外形縁としての製品13aとバリ13bの境界に当接して溶融切断させる。
【0026】
このとき、シリンダ部材23にあっては、1個のピストンに固定された2本のピストンロッド23bが閉鎖ブロック23cの軸支部23dに支持されて回り止めされると共に軸線方向に対して摺動案内されるため、樹脂成形品13の外形縁としての製品13aとバリ13bの境界に対して加熱刃29が高い位置精度で当接するように移動させる。
【0027】
また、2本のピストンロッド23bには、放熱部材25を介して加熱部材27及び加熱刃29が取り付けられているため、加熱部材27が伝導される熱量を低減し、シリンダ部材23が過度に加熱されて動作不良が発生するのを防止する。(図6参照)
【0028】
なお、上記作用により加熱刃29により溶融切断されたバリ13bは、作業者の手作業で、または吸引装置(図示せず)により吸引除去される。また、上記バリ13bの溶融切断後においては、各シリンダ部材21を復動して2本のピストンロッド23bを原位置に戻した後、上下移動部材9を作動して昇降台5を下方へ移動してバリ取りされた樹脂成形品13(製品13a)を取出し可能にさせる。
【0029】
本実施例は、シリンダ部材23にガイド機能を有した2本のピストンロッド23bを設けることにより従来のようにシリンダ部材とは別にガイド軸やリニアガイドを設ける必要がなく、製品13aとバリ13bの境界に対して加熱刃29を高い位置精度で当接して溶融切断することができる。
【0030】
これによりバリ取り部材21を小型化して取り付けスペースを狭小化することができ、樹脂成形品13の外形縁に沿って多数のバリ取り部材21を互いに密接するように配置してバリ13bが除去された製品13aの仕上げ精度を良好にすることができる。
【0031】
上記説明は、シリンダ部材23のピストンに2本のピストンロッド23bを固着し、これらピストンロッド23bを摺動案内可能に支持する構成としたが、ピストンに対して3本以上のピストンロッドを固着した構造であってもよい。
【0032】
また、上記説明は、昇降台5を上方へ移動して支持板11にセットされた樹脂成形品13の外形の全体または一部を位置決め部材19に凹所に係合させて位置決め可能に構成したが、疑似コア15に負圧発生手段(図示せず)に接続された多数の吸引孔を形成し、疑似コア15にセットされた樹脂成形品13を負圧吸引して位置決め可能にする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 樹脂成形品バリ取り装置
5 昇降台
7 上下ガイド軸
9 上下移動部材
11 成形品支持部材としての支持板
13 樹脂成形品
13a 製品
13b バリ
15 疑似コア
17 搖動部材
19 位置決め部材
21 バリ取り部材
23 シリンダ部材
23a シリンダチューブ
23b ピストンロッド
23c 閉鎖ブロック
23d 軸支部
25 放熱部材
25a 取付け板
25b 放熱スタッド
27 加熱部材
28 断熱材
29 加熱刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の内面形状に一致し、樹脂成形品が載置される突所を有した成形品支持部材と、
成形品支持部材に載置された樹脂成形品の外形縁に沿って相互が密接するように多数配置されたバリ取り部材と、
を備え、
各バリ取り部材は、互いの軸線が平行し、回り止め状態で摺動するように支持された複数本のピストンロッドを有したシリンダ部材と、上記ピストンロッドの軸端部に固定され、複数個の放熱部を有した放熱部材と、該放熱部材に設けられる加熱部材と、該加熱部材に設けられ、相対する樹脂成形品の外形縁に一致する突状からなる加熱刃と、
からなる樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項2】
請求項1において、成形品支持部材は、負圧発生手段に接続された多数の吸引孔が形成され、突所にセットされた樹脂成形品を負圧吸引して位置決め可能にした樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項3】
請求項1において、成形品支持部材に所定の間隔をおいて相対する個所には、樹脂成形品が係合する凹所を有し、成形品支持部材との協働により樹脂成形品を位置決めして固定する位置決め部材を設けた樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項4】
請求項3において、成形品支持部材及び位置決め部材のいずれか一方は、相対する他方の部材へ近づく方向及び離間する方向へ移動可能に設けられた樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項5】
請求項1において、成形品支持部材は、支持台に対して所定の角度の傾動位置及び水平位置の間で搖動可能に支持された樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項6】
請求項1において、突所は、樹脂成形品の内面形状に一致すると共に凹所は、樹脂成形品の外面形状に一致する樹脂成形品バリ取り装置。
【請求項7】
請求項1において、シリンダ部材は、シリンダチューブ内にて軸線方向へ摺動可能に支持されるピストンと、シリンダチューブの軸線と一致する方向に軸線を有し、軸端部がピストンに固着される少なくとも2本のピストンロッドと、上記シリンダチューブの開口部に固着され、各ピストンロッドを挿通して回り止め及び摺動案内する閉鎖ブロックとからなる樹脂成形品バリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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