説明

樹脂構造体

【課題】特別な接着剤を用いなくても、封止板部をハニカム部に対し、高い強度で接着させることのできる樹脂構造体を提供する。
【解決手段】樹脂構造体としての自動車用フロントドアは、少なくとも一部が合成樹脂製のハニカム構造体13により構成される。ハニカム構造体13は、隔壁15により互いに区画され、かつ両端に開口17,18を有する六角筒状に形成された複数のセル16からなるハニカム部14と、ハニカム部14を両側から挟み込んでセル16毎の両方の開口17,18を封止する一対の封止板部25,26とを備える。一方の封止板部25は、開口17を構成する隔壁15の端面15Aに対し接着により接合される。このようなフロントドアにおいて、ハニカム部14には、全てのセル16について封止板部25との接着に関わる側の開口17の一部を塞ぐ第1閉塞板部21を、同封止板部25との接着部として設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が合成樹脂製のハニカム構造体によって構成された樹脂構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用部品を始めとする各種部品では、強度を確保しつつ軽量化を図るために、少なくとも一部が合成樹脂製のハニカム構造体により構成された樹脂構造体を採用することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂構造体では、ハニカム構造体が、複数のセルからなるハニカム部と、一対の封止板部とからなる。ハニカム部の各セルは、隔壁により互いに区画され、かつ両端に開口を有する筒状に形成されている。両封止板部は、ハニカム部を両側から挟み込んでセル毎の両方の開口を封止している。そして、両封止板部の少なくとも一方が、前記開口を構成する隔壁の端面に対し接着により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ハニカム部における隔壁の端面に封止板部を接着する上記従来の樹脂構造体では、ハニカム部の封止板部との接着面積が少ない。
また、ハニカム部と一方の封止板部とが一体に形成されている場合には、ハニカム部の接着面積がさらに少なくなる問題がある。すなわち、一方の封止板部と一体となった上記ハニカム部は、金型によって形成されるところ、金型の離型に際し、ハニカム部を傷や変形等を伴わないで金型から容易に取り出すために、金型や隔壁に抜き勾配が設定される。そして、この抜き勾配によって隔壁の厚みの最も小さくなった箇所で、ハニカム部が封止板部に接着される。そのため、ハニカム部の接着面積は一層少なくなる。
【0005】
これに対しては、隔壁を厚く形成して、接着面積を拡大することが考えられるが、反面、抜き勾配により厚みの最も大きな箇所の厚みがさらに大きくなり、樹脂成形後の収縮に起因して封止板部に「ひけ」を生ずるおそれがある。そのため、隔壁を厚くするにも限度がある。
【0006】
そこで、接着面積の少ないハニカム部に封止板部を強固に接着するために、例えば、接着剤として、接着強度の高いものを用いたり、厚く塗布することのできるものを用いたりする等の工夫が必要となる。結果として、特別な接着剤を選定するのに労力を要し、また、接着のためのコストアップを伴うことにもなる。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特別な接着剤を用いなくても、封止板部をハニカム部に対し、高い強度で接着させることのできる樹脂構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも一部が合成樹脂製のハニカム構造体により構成され、前記ハニカム構造体が、隔壁により互いに区画され、かつ両端に開口を有する筒状に形成された複数のセルからなるハニカム部と、前記ハニカム部を両側から挟み込んで前記セル毎の両方の前記開口を封止する一対の封止板部とを備え、前記両封止板部の少なくとも一方が、前記開口を構成する前記隔壁の端面に対し接着により接合された樹脂構造体であって、前記ハニカム部には、少なくとも一部の前記セルについて前記封止板部との接着に関わる側の開口の少なくとも一部を塞ぐ閉塞板部が、前記封止板部との接着部として設けられていることを要旨とする。
【0009】
上記の構成によれば、封止板部は、ハニカム部における隔壁の端面に対し、接着により接合される。これに加え、封止板部は、ハニカム部における閉塞板部に対しても、接着により接合される。この閉塞板部の分、隔壁の端面のみで封止板部との接着が行なわれる場合に比べ、ハニカム部の封止板部との接着面積が拡大する。その結果、封止板部がハニカム部に対し高い強度で接着させられる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記閉塞板部は前記セルに一体に形成されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、閉塞板部は、セルの成形時に、同セルに繋がった状態で一緒に形成される。そのため、閉塞板部がセルとは別部材からなる場合とは異なり、閉塞板部を成形した後にセルに固定しなくてもすむ。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、全ての前記セルが対象とされ、同セルについて前記封止板部との接着に関わる側の前記開口の一部が前記閉塞板部により塞がれていることを要旨とする。
【0012】
上記の構成によれば、全てのセルについて、封止板部との接着に関わる側の開口の一部が閉塞板部により塞がれる。そのため、全てのセルについて封止板部との接着面積が拡大し、封止板部が部位によらず略均一な強度でハニカム部に接着される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記セル毎の前記開口の半分が前記閉塞板部で塞がれることにより、前記開口の残りの半分が開放部とされており、隣り合う前記セルでは、前記隔壁を介して前記閉塞板部と前記開放部とが隣り合っていることを要旨とする。
【0014】
上記の構成によれば、ハニカム部では、複数のセルが隔壁を介して隣り合っている。各セルでは、開口の半分が閉塞板部で塞がれ、残りの半分が閉塞板部で塞がれず開放部となる。さらに、請求項4に記載の発明では、隣り合うセルでは、それぞれ開口の半分の大きさを有する閉塞板部と開放部とが隔壁を介して隣り合う。従って、ハニカム部では、隔壁の端面が、隣り合うセルにおけるいずれか一方の閉塞板部と繋がった状態となる。隔壁の端面では、閉塞板部と繋がっていない箇所がなくなる。ハニカム部は、閉塞板部のみにおいて封止板部との接着に関わることとなり、幅が狭く、接着面積の小さな隔壁の端面が一部でも封止板部との接着に関わる場合よりも高い強度で接着が行なわれる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、一部の前記セルが対象とされ、同セルについて前記封止板部との接着に関わる側の前記開口の全てが前記閉塞板部により塞がれていることを要旨とする。
【0016】
上記の構成によれば、一部のセルについて、封止板部との接着に関わる側の開口の全てが閉塞板部により塞がれる。そのため、閉塞板部により開口を塞がれたセルについては、封止板部との接着面積が拡大する。従って、複数のセルについて閉塞板部により接着面積が拡大することで、封止板部は全体として高い強度でハニカム部に接着される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂構造体によれば、少なくとも一部のセルを対象とし、そのセルの開口の少なくとも一部を閉塞板部によって塞ぎ、この閉塞板部を封止板部との接着部としたため、ハニカム部の封止板部との接着面積を拡大でき、特別な接着剤を用いなくても、封止板部をハニカム部に対し高い強度で接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の樹脂構造体を自動車のフロントドアに具体化した一実施形態において、フロントドアを車内側から見た状態を示す正面図。
【図2】一実施形態を示す図であり、(A)はフロントドアにおけるハニカム構造体を車内側から見た状態を、車内側の封止板部の一部を破断して示す部分正面図、(B)は図2(A)のX−X線断面図。
【図3】一実施形態において、ハニカム部を一対の封止板部で挟み込む前の状態を示す部分断面図。
【図4】一実施形態におけるハニカム部を成形する際に用いられる金型を示す部分断面図。
【図5】ハニカム構造体の変更例を示す図であり、(A)はハニカム構造体を車内側から見た状態を、車内側の封止板部の一部を破断して示す部分正面図、(B)は図5(A)のY−Y線断面図。
【図6】ハニカム部の変更例を示す部分正面図。
【図7】(A),(B)は、それぞれハニカム部の変更例を示す部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の樹脂構造体を自動車のフロントドアに具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
自動車のボディにおいて、前席(運転席、助手席)の側方近傍には、乗員の昇降口を開閉する、図1に示すフロントドア10が取付けられている。
【0020】
フロントドア10は、その主要部をなすドア本体部11と、同ドア本体部11に取付けられたウインドウガラス30とを備えている。ウインドウガラス30は、ポリカーボネート樹脂等の透明な合成樹脂によって形成されており、無機材料によって形成されたものよりも軽量である。このフロントドア10は、一般的なものとは異なり、ウインドウガラス30がドア本体部11に固定されていて昇降しないタイプとなっている。
【0021】
ドア本体部11は、その上部に窓枠部12を備えている。窓枠部12は、ウインドウガラス30の下縁を除く周縁を取り囲んでいる。窓枠部12の略全体はハニカム構造体13によって構成されている。
【0022】
なお、図1では、ドア本体部11については、外形形状のみ図示されていて、細部の図示が割愛されている。また、図1中の六角形の集合体は、窓枠部12中、ハニカム構造体13の設けられている領域を示している。この六角形の集合体は、後述するハニカム部14を直接示すものではなく、同ハニカム部14の詳細については図2(A),(B)及び図3に図示されている。
【0023】
ハニカム構造体13は、図2(A),(B)及び図3に示すように、ハニカム部14と一対の封止板部25,26とからなる。ハニカム部14の一部は、それぞれ6片の隔壁15により六角筒状に形成された複数のセル16によって構成されている。各セル16は、自動車の内外方向(車幅方向;図2(B)及び図3の各左右方向)に延びていて、両端に開口17,18を有している。各セル16では、開口17は、6片の隔壁15における車内側の端面15Aによって囲まれており、開口18は同隔壁15における車外側の端面15Bによって囲まれている。隣り合うセル16は隔壁15を共有しており、その隔壁15を介して互いに区画されている。そのため、セル16の集合体であるハニカム部14は全体として蜂巣状をなしている(図2(A)参照)。
【0024】
封止板部25,26は、金型を用いた樹脂成形によって形成されており、各隔壁15の延出方向、すなわち、自動車の内外方向(車幅方向)についてハニカム部14の両側に配置されている。車内側の封止板部25は、セル16毎の開口17を封止し、車外側の封止板部26は、セル16毎の開口18を封止している。車外側の封止板部26は、ウインドウガラス30の一部によって構成されている。ここでの一部とは、ウインドウガラス30の周辺部のうち、下端部31を除く箇所32である(図1参照)。
【0025】
車内側の封止板部25は、ハニカム部14におけるセル16毎の隔壁15の上記端面15Aに対し、車内側から接着によって接合されている。ハニカム部14の封止板部25との接着面積確保(拡大)のために、同ハニカム部14の複数箇所には、第1閉塞板部21が封止板部25との接着部として、ハニカム部14(セル16)に一体に形成されている。第1閉塞板部21は特許請求の範囲における「閉塞板部」に該当する。これらの第1閉塞板部21は、全てのセル16を対象とし、同セル16について封止板部25との接着に関わる側(この場合、車内側)の開口17に設けられている。各第1閉塞板部21は、セル16毎の開口17において隔壁15に直交する方向(本実施形態では上下方向)に延びていて、上記開口17の一部(本実施形態では上部)を塞いでいる(図2(A))。各第1閉塞板部21の車内側の面21Aは、封止板部25に対し平行で、かつセル16毎の開口17を構成する上記隔壁15の端面15Aと面一となっている。セル16毎の開口17のうち第1閉塞板部21によって塞がれていない箇所では、隔壁15の上記端面15Aが露出している。そして、各第1閉塞板部21の車内側の面21Aは、この露出している端面15Aとともに、封止板部25との接着に関わる面(接着面)を構成している。
【0026】
さらに、車外側の封止板部26は、ハニカム部14におけるセル16毎の隔壁15の上記端面15Bに対し、車外側から当接されている。ハニカム部14の封止板部26との当接面積確保(拡大)のために、本実施形態では、ハニカム部14の複数箇所には、第2閉塞板部22が封止板部26との当接部として、ハニカム部14(セル16)に一体に形成されている。これらの第2閉塞板部22は、全てのセル16を対象とし、同セル16の車外側の開口18に設けられている。各第2閉塞板部22は、セル16毎の開口18において、セル16毎の中心軸線を挟んで上記第1閉塞板部21と対向する箇所に設けられている。また、各第1閉塞板部21と各第2閉塞板部22とは、セル16毎の中心軸線に対し直交する垂直断面において重なり合っていない。各第2閉塞板部22は、第1閉塞板部21と同様にして、隔壁15に直交する方向(本実施形態では上下方向)に延びていて、上記開口18の一部(本実施形態では下部)を塞いでいる(図2(A)参照)。各第2閉塞板部22の車外側の面22Aは、封止板部26に対し平行で、かつセル16毎の開口18を構成する上記隔壁15の端面15Bと面一となっている。セル16毎の開口18のうち第2閉塞板部22によって塞がれていない箇所では、隔壁15の上記端面15Bが露出している。そして、各第2閉塞板部22の車外側の面22Aは、この露出している端面15Bとともに、封止板部26との当接に関わる面(当接面)を構成している。
【0027】
ウインドウガラス30(封止板部26)について、窓枠部12でのハニカム部14の車外側となる箇所には、すなわち、ウインドウガラス30の周辺部のうち下端部31を除く箇所32には、同箇所32よりも車内側を隠す遮蔽部33(図2(B)及び図3では太線で図示)が設けられている。この遮蔽部33は、ウインドウガラス30の内表面30Aに黒色等の塗装を施す、いわゆるブラックアウト処理を施すことによって形成されている。なお、遮蔽部33としては、ウインドウガラス30の内表面30Aに黒色等の不透明なテープ、フィルム等を貼着することによって形成されたものが採用されてもよい。
【0028】
上記ウインドウガラス30(封止板部26)は、上記ハニカム部14を間に挟んで上記車内側の封止板部25に連結されている。この連結のために、ウインドウガラス30(封止板部26)はハニカム部14に対し車外側から接着によって接合されてもよい。この場合、各第2閉塞板部22の車外側の面22Aが接着面として利用されてもよい。また、上記連結のために、ウインドウガラス30(封止板部26)及び車内側の封止板部25の一方に係止部が設けられ、他方に被係止部が設けられてもよい。この場合、被係止部に係止部が係止されることで、ハニカム部14に接合された車内側の封止板部25に対しウインドウガラス30(封止板部26)が連結される。
【0029】
なお、図1に示すように、ドア本体部11において窓枠部12を除く部分(窓枠部12よりも下側の部分、図1では二点鎖線で図示)についても、同窓枠部12と同様の構成が採られている。すなわち、ドア本体部11の上記部分の少なくとも一部が、ハニカム部及び一対の封止板部からなるハニカム構造体によって形成されている。ハニカム部は、隔壁により互いに区画された六角筒状の複数のセルからなる。
【0030】
上記のようにして本実施形態のフロントドア10が構成されている。次に、このフロントドア10の作用について説明する。
まず、窓枠部12におけるハニカム構造体13のハニカム部14は、次のようにして形成される。
【0031】
この形成に際しては、図4に示すように、一対の金型を用いた射出成形が行なわれる。金型の一方は、成形突部36を有する固定型35であり、他方は、成形突部38を有し、かつ前記固定型35に対し接近及び離間する方向(図4の左右方向)に移動可能に設けられた可動型37である。両成形突部36,38は、セル16と同数ずつ設けられている。可動型37が固定型35に接近する方向を可動型37の移動方向前側とすると、両成形突部36,38は、ともに可動型37の移動方向前側ほど低くなる傾斜面36A,38Aを有している。両傾斜面36A,38Aは、可動型37の移動方向に対し、同一の角度で傾斜している。そして、固定型35及び可動型37が型締めされた状態では、両成形突部36,38が傾斜面36A,38Aにおいて互いに接触する。この状態では、固定型35及び可動型37内において、両成形突部36,38の周りに、セル16(第1閉塞板部21及び第2閉塞板部22を含む)を成形するための空間(キャビティ39)が形成される。そして、各キャビティ39に溶融樹脂が供給され、同溶融樹脂が同キャビティ39に対応した形状に賦形される。
【0032】
上記溶融樹脂が硬化することで、複数のセル16と、セル16毎の第1閉塞板部21と、セル16毎の第2閉塞板部22とを有するハニカム部14が成形される。この際、各第1閉塞板部21及び各第2閉塞板部22は、対応するセル16に繋がった状態で一緒に形成される。そのため、各閉塞板部21,22が各セル16とは別部材からなる場合とは異なり、同閉塞板部21,22を成形した後にセル16に固定する必要がない。
【0033】
ハニカム部14の成形後、可動型37が固定型35から離間する側(図4では右側)へ移動させられて型開きが行なわれ、それらの固定型35及び可動型37からハニカム部14が取り出される。
【0034】
次に、車内側の封止板部25のハニカム部14に対する接合は、次のように行なわれる。
この接合に際しては、図3に示すように、各第1閉塞板部21の車内側の面21A(接着面)に接着剤40が塗布されるとともに、セル16毎の開口17のうち第1閉塞板部21によって塞がれておらず、同開口17を構成するものの露出している隔壁15の端面15Aに接着剤40が塗布される。なお、図2(A)では、接着剤40は網点(細かな点の集まり)で図示されている。後述する図5(A)、図6及び図7(A),(B)についても同様である。これらの塗布作業は例えばロボットを用いて行なわれる。そして、封止板部25がその車外側の面25Aにおいて、ハニカム部14の上記接着剤40の塗布された箇所に押圧される。この状態が、接着剤40が硬化するまで行なわれることで、封止板部25がハニカム部14に接合される。
【0035】
このように本実施形態では、封止板部25は、ハニカム部14における隔壁15の端面15Aに対し、接着剤40によって接合される。これに加え、封止板部25は、ハニカム部14におけるセル16毎の第1閉塞板部21に対し、接着剤40によって接合される。これらの第1閉塞板部21の分、隔壁15の端面15Aのみで封止板部25との接着が行なわれる場合(特許文献1がこれに該当する)に比べ、ハニカム部14の封止板部25との接着面積が拡大する。その結果、ハニカム部14に対し封止板部25が高い強度で接着させられる。
【0036】
特に、本実施形態では、全てのセル16について、封止板部25との接着に関わる側の開口17の一部が第1閉塞板部21によって塞がれている。そのため、全てのセル16について封止板部25との接着面積が拡大し、封止板部25が部位によらず略均一な強度でハニカム部14に接着される。
【0037】
一方、遮蔽部33の設けられた車外側の封止板部26(本実施形態では、ウインドウガラス30の一部)は、上記ハニカム部14を間に挟んで上記車内側の封止板部25に連結される。連結の手段としては、上述したような、接着や、被係止部への係止部の係止等が用いられる。
【0038】
また、ドア本体部11において窓枠部12を除く部分についても、同窓枠部12と同様にして製造される。
上記のように製造されたフロントドア10は、以下の理由により軽量なものとなる。
【0039】
(i)ドア本体部11の一部(上部)を構成する窓枠部12については、その略全体が合成樹脂によって形成されていること。
(ii)ドア本体部11において窓枠部12を除く部分についても、少なくとも一部が合成樹脂によって形成されていること。
【0040】
(iii )ドア本体部11の窓枠部12についても、同窓枠部12を除く部分についても、それらの少なくとも一部がそれぞれハニカム構造体13によって形成されていること。ハニカム構造体13が、六角筒状をなす多数のセル16からなるハニカム部14と、同ハニカム部14をその車内側及び車外側から挟み込んで各セル16を封止する一対の封止板部25,26とにより構成されていること。
【0041】
各セル16を六角筒状とすることで、それらの内部空間の容積が採り得る最大となり、隔壁15の材料が少なくてすむ。このことは、ハニカム構造体13がより軽くなることに繋がる。
【0042】
また、フロントドア10のドア本体部11(窓枠部12を含む)は以下の理由により高い強度を発揮する。
・ドア本体部11の窓枠部12についても、同窓枠部12を除く部分についても、それらの少なくとも一部がそれぞれハニカム構造体によって形成されていること。
【0043】
フロントドア10に車外側から衝撃等による荷重が加わってハニカム構造体13に伝わった場合、封止板部25,26自体は曲げ応力に対しさほど強くないが、ハニカム部14の各セル16は伸縮しにくい。すなわち、ハニカム構造体13は、封止板部25,26に加わってそれらを曲げようとする力を、ハニカム部14を伸縮させる力に変えることによって高い強度を発揮する。結果として、ハニカム構造体13は剛性が高く変形しにくい。
【0044】
上記のように強度が高められているため、車外側からフロントドア10のドア本体部11に対し衝撃等による荷重が加わった場合、その荷重はハニカム構造体13によって受け止められる。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ハニカム構造体13では、セル16について封止板部25との接着に関わる側の開口17を塞ぐ第1閉塞板部21を、その封止板部25との接着部としてハニカム部14に設けている(図2(A),(B))。
【0046】
そのため、第1閉塞板部21の分、ハニカム部14の封止板部25との接着面積を拡大することができ、封止板部25をハニカム部14に対し、高い強度で接着させることができる。接着剤として、接着強度の高いものや、厚く塗布することのできるものを選定する必要がなくなる。その結果、接着剤の選定に要する労力を軽減することができる。また、特別な(高価な)接着剤を用いなくてもよいことから、接着剤に起因するコストの上昇を抑制することができる。
【0047】
(2)第1閉塞板部21をセル16に一体に形成している(図3)。
そのため、第1閉塞板部21をハニカム部14の成形時にセル16と一緒に成形することができ、第1閉塞板部21を成形した後にセル16に固定する作業が不要となる。
【0048】
(3)全てのセル16を対象とし、同セル16について封止板部25との接着に関わる側の開口17の一部を第1閉塞板部21によって塞いでいる(図2(A))。
そのため、全てのセル16について封止板部25との接着面積を拡大し、封止板部25を部位によらず略均一な強度でハニカム部14に接着させることができる。
【0049】
(4)第1閉塞板部21及び第2閉塞板部22を、セル16毎の中心軸線に対し直交する垂直断面において重なり合わない箇所(セル16毎の車内側の開口17及び車外側の開口18)に設けている(図2(B))。
【0050】
第1閉塞板部21を成形するためのキャビティ39は、固定型35の成形突部36と、可動型37において成形突部38の設けられていない箇所との間に形成される。また、第2閉塞板部22を成形するためのキャビティ39は、固定型35において成形突部36の設けられていない箇所と、可動型37の成形突部38との間で形成される(図4)。
【0051】
そのため、成形突部36を有する固定型35に対し、成形突部38を有する可動型37を接近させることで、第1閉塞板部21及び第2閉塞板部22をそれぞれ成形するためのキャビティ39を形成することができる。このような簡単な構造の金型でありながら、第1閉塞板部21及び第2閉塞板部22を形成することができる。その結果、複雑な構造の金型を用いなくてもすむ。
【0052】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<セル16について>
・セル16は、六角形以外の多角形の筒状をなすものでもよいし、多角形とは異なる形の筒状、例えば、円筒状をなすものであってもよい。
【0053】
<第1閉塞板部21について>
・上記実施形態における第1閉塞板部21は、複数のセル16のうちの一部に対してのみ設けられてもよい。
【0054】
・図5(A),(B)に示すように、一部(ただし、複数)のセル16が対象とされ、同セル16について封止板部25との接着に関わる側の開口17の全てが第1閉塞板部21によって塞がれてもよい。
【0055】
このようにすれば、第1閉塞板部21により開口17を塞がれたセル16については、封止板部25との接着面積が拡大する。従って、複数のセル16について第1閉塞板部21により接着面積が拡大することで、ハニカム部14は、全体として高い強度で封止板部25に接着される。
【0056】
この場合、封止板部25を、ハニカム部14に対し、部位によらず略均一な強度で接着するために、第1閉塞板部21によって開口17の塞がれるセル16を、一定の規則性をもって設定することが望ましい。
【0057】
また、この場合、第1閉塞板部21によって開口17を塞がれていないセル16については、図5(A),(B)に示すように、開口18の全てが第2閉塞板部22によって塞がれてもよい。
【0058】
・上記図5(A),(B)における第1閉塞板部21は、全てのセル16を対象として設けられてもよい。
・図6に示すように、セル16毎の開口17の半分(図6では上半分)を第1閉塞板部21で塞ぐ。第1閉塞板部21によって塞がれない開口17の残りの半分(図6では下半分)を開放部41とする。そして、隣り合うセル16では、隔壁15を介して第1閉塞板部21と開放部41とを隣り合せるようにしてもよい。
【0059】
このようにすると、隣り合うセル16では、それぞれ開口17の半分の大きさを有する第1閉塞板部21と開放部41とが隔壁15を介して隣り合う。従って、ハニカム部14では、隔壁15の端面15Aが、隣り合うセル16におけるいずれか一方の第1閉塞板部21と繋がった状態となる。隔壁15の端面15Aでは、第1閉塞板部21と繋がっていない箇所がなくなる。ハニカム部14の第1閉塞板部21のみが封止板部25との接着に関わることとなり、幅が狭く、接触面積の小さな隔壁15の端面15Aが一部でも封止板部25との接着に関わる場合に比べ、高い強度で封止板部25との接着が行なわれる。
【0060】
・第1閉塞板部21は各セル16において、上記実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。図7(A)は、第1閉塞板部21がセル16の右側部分に設けられた例を示している。
【0061】
・図7(B)に示すように、第1閉塞板部21は1つのセル16について複数箇所に設けられてもよい。
・第1閉塞板部21は、セル16とは別部材によって構成され、同セル16に固定されたものであってもよい。
【0062】
・セル16毎に第1閉塞板部21の設けられる箇所が揃えられてもよい(上記実施形態がこれに該当する)し、異ならせられてもよい。
・セル16毎に第1閉塞板部21の大きさが揃えられてもよい(上記実施形態がこれに該当する)し、異ならせられてもよい。
【0063】
<第2閉塞板部22について>
・上記実施形態及び上記図5(A),(B)における第2閉塞板部22は、必須の部位ではなく適宜割愛が可能である。
【0064】
・第2閉塞板部22は、セル16とは別部材によって構成され、同セル16に固定されたものであってもよい。
<封止板部25,26について>
・車内側の封止板部25に加え、車外側の封止板部26もハニカム部14に対し、接着によって接合されてもよい。
【0065】
この場合、前述したように、各第1閉塞板部21と各第2閉塞板部22とが、セル16毎の中心軸線に対し直交する垂直断面において重なり合っていない。そのため、封止板部25,26をセル16毎の第1閉塞板部21及び第2閉塞板部22に接着することで、同封止板部25,26をハニカム部14に対し、中心軸線に沿う方向に均一に接着することができる。
【0066】
また、車内側の封止板部25に代え、車外側の封止板部26のみがハニカム部14に対し接着によって接合されてもよい。
・車外側の封止板部26の一部を構成するウインドウガラス30として、合成樹脂に代えて無機材料によって形成されたもの(無機ガラス)が用いられてもよい。
【0067】
<遮蔽部33について>
・遮蔽部33は、ウインドウガラス30において、少なくともハニカム部14の車外側となる箇所に設けられればよい。従って、遮蔽部33が上記実施形態よりも広い領域にわたって設けられてもよい。
【0068】
・遮蔽部33は、ウインドウガラス30の内表面30Aに代えて外表面(車外側の面)に形成されてもよい。
<その他>
・ハニカム部14は、繊維強化樹脂によって形成されてもよい。繊維強化樹脂は、PP、PA、PET等の合成樹脂を母材とし、これに繊維長の比較的短い炭素繊維、ガラス繊維等の繊維を強化材として含有した複合材料である。
【0069】
ただし、この場合には、繊維長が、射出成形によるハニカム部14の成形に支障を及ぼさない値に設定される必要がある。
・本発明は、上記フロントドアとは異なる自動車用ドア、例えば、リヤドア、バックドア等にも適用可能である。また、本発明は、自動車においてドア以外のボディ構造体、例えば自動車用フード(ボンネット)にも適用可能である。さらに、本発明は、自動車とは異なる分野における樹脂構造体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…フロントドア(樹脂構造体)、13…ハニカム構造体、14…ハニカム部、15…隔壁、15A,15B…端面、16…セル、17,18…開口、21…第1閉塞板部(閉塞板部)、25,26…封止板部、41…開放部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が合成樹脂製のハニカム構造体により構成され、
前記ハニカム構造体が、
隔壁により互いに区画され、かつ両端に開口を有する筒状に形成された複数のセルからなるハニカム部と、
前記ハニカム部を両側から挟み込んで前記セル毎の両方の前記開口を封止する一対の封止板部と
を備え、前記両封止板部の少なくとも一方が、前記開口を構成する前記隔壁の端面に対し接着により接合された樹脂構造体であって、
前記ハニカム部には、少なくとも一部の前記セルについて前記封止板部との接着に関わる側の開口の少なくとも一部を塞ぐ閉塞板部が、前記封止板部との接着部として設けられていることを特徴とする樹脂構造体。
【請求項2】
前記閉塞板部は前記セルに一体に形成されている請求項1に記載の樹脂構造体。
【請求項3】
全ての前記セルが対象とされ、同セルについて前記封止板部との接着に関わる側の前記開口の一部が前記閉塞板部により塞がれている請求項1又は2に記載の樹脂構造体。
【請求項4】
前記セル毎の前記開口の半分が前記閉塞板部で塞がれることにより、前記開口の残りの半分が開放部とされており、
隣り合う前記セルでは、前記隔壁を介して前記閉塞板部と前記開放部とが隣り合っている請求項3に記載の樹脂構造体。
【請求項5】
一部の前記セルが対象とされ、同セルについて前記封止板部との接着に関わる側の前記開口の全てが前記閉塞板部により塞がれている請求項1又は2に記載の樹脂構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71625(P2013−71625A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212710(P2011−212710)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】