説明

樹脂発泡体

【課題】建材用・家電用・自動車用の断熱材として好適に活用できる断熱性能と環境性能に優れ、かつ、加水分解を抑制した樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】孔径分布において2つのピークが存在し、その内の1つのピークが10μm以上500μm以下に存在し、もう1つのピークが0.01μm以上1μm未満に存在する、空隙率(X)が80%以上の樹脂発泡体であり、反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂(以下、反応性末端封鎖剤が添加されたポリエステル系樹脂を、末端封鎖ポリエステル系樹脂という)を含み、樹脂発泡体100質量%中に、末端封鎖ポリエステル系樹脂を70質量%以上99.9質量%以下含むことを特徴とする、樹脂発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性能と環境性能に優れ、かつ、加水分解を抑制した樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ウレタンフォームや軟質ウレタンフォーム、発泡スチロールに代表される樹脂発泡体は、住宅などの断熱材として用いられており、近年高まる省エネルギー意識の中で、冷暖房エネルギーを削減するという非常に重要な役割を担うものである。
【0003】
このような断熱材は一般に、樹脂発泡体内部のごく小容積に低熱伝導率の気体を内包することで優れた断熱性能を発現する。
【0004】
かつて断熱材中の低熱伝導率気体には、フロンガス(CFC)が広く用いられていたが、CFCがオゾン層破壊物質であるため、その代替としてハイドロフルオロカーボン(HFC)やブタン、プロパンなどの低分子炭化水素が使用されていた。さらに近年、HFCは地球温暖化係数が極めて大きいこと、低分子炭化水素は引火性であることから、より環境低負荷型でより安全な二酸化炭素を使用する動きが高まっている。
【0005】
しかしながら、二酸化炭素はHFCや低分子炭化水素に比べ熱伝導率が高く、断熱性能に劣るため、優れた断熱性能を有した断熱材を得るためには、樹脂発泡体自体の断熱性能を向上させる必要がある。
【0006】
樹脂発泡体における断熱性能は、内包されている低熱伝導気体を除けば、空隙率(X)と気泡径によって左右される。空隙率(X)が大きく気泡径が小さいほど高い断熱性能を発現するが、一般的な技術では、空隙率(X)を大きくするためには気泡径を大きくするしかなかったため、ある空隙率(X)において熱伝導率が極小値をもち、それ以上の空隙率(X)になると断熱性能が悪化する傾向にあった。
【0007】
そこで近年、樹脂発泡体の気泡構造を制御し、樹脂発泡体自体の断熱性能を向上する技術がなされている。
【0008】
特に特許文献1では、ポリエステル樹脂などをベースに、二酸化炭素溶解度の異なる成分を微分散させて発泡させることで、気泡の微細化と気泡隔壁への微細孔の形成に成功し、低熱伝導率を達成している。該技術は、ウレタンやフェノールなどの熱硬化性樹脂がマテリアルリサイクルに不向きであるのに対し、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることでリサイクル性が向上し、かつ、高い断熱性能を有する素材を提供することができる技術である。
【0009】
しかしながら、ポリエステル樹脂は加水分解を起こすため、高温多湿の環境下では経年劣化が懸念される。
【0010】
一般に、ポリエステル樹脂の加水分解を抑制するには、特許文献2のように、末端封鎖剤や架橋剤により樹脂末端を封鎖または架橋することが有効であることは広く知られている。ところが、近年の高度な気泡構造制御技術において、使用する末端封鎖剤や架橋剤によっては、その高度な技術の成否に大きな影響を与えることが多い。
そこで、気泡構造制御技術による高い断熱性能と環境性能を保ちつつ、ポリエステル樹脂の加水分解を抑制する末端封鎖剤や架橋剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2009/110587号公報
【特許文献2】JP2008−214422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記課題に鑑み、断熱性能と環境性能に優れ、かつ、加水分解を抑制した樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のいずれかの構成によって前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)孔径分布において2つのピークが存在し、その内の1つのピークが10μm以上500μm以下に存在し、もう1つのピークが0.01μm以上1μm未満に存在する、空隙率(X)が80%以上の樹脂発泡体であり、
反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂(以下、反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂を、末端封鎖ポリエステル系樹脂という)を含み、
樹脂発泡体100質量%中に、末端封鎖ポリエステル系樹脂を70質量%以上99.9質量%以下含むことを特徴とする、樹脂発泡体。
(2)前記反応性末端封鎖剤が、重量平均分子量100以上10,000以下の化合物であり、かつ、1分子中に以下の群より選ばれる官能基を1つ以上2つ以下有している化合物であることを特徴とする、前記(1)に記載の樹脂発泡体。
群:エポキシ基、イソシアネート基、及びカルボジイミド基
(3)前記末端封鎖ポリエステル系樹脂が、末端封鎖脂肪族ポリエステル系樹脂であることを特徴とする、前記(1)または(2)のいずれかに記載の樹脂発泡体。
(4)以下の群より選ばれる少なくとも1つの樹脂をさらに含むことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂発泡体。
群:ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体、メタクリル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂発泡体を含む断熱材。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断熱性能と環境性能に優れ、かつ、樹脂の加水分解を抑制した樹脂発泡体を提供することができる。この樹脂発泡体は、特に、建材用・家電用・自動車用の断熱材として好適に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す樹脂発泡体の断面の模式図である。
【符号の説明】
【0016】
10 空孔(S)
20 空孔(L)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(樹脂発泡体の構造)
本発明における樹脂発泡体は、空隙率(X)が80%以上であることが重要である。空隙率(X)が80%未満であると、樹脂発泡体中の樹脂による伝熱が大きくなるため、樹脂発泡体を断熱材に用いた際に断熱性の点などに問題が生じやすくなるため好ましくない。樹脂発泡体中の樹脂の伝熱を効果的に抑制する点から、樹脂発泡体の空隙率(X)は90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、空隙率(X)が99%を超えると、樹脂発泡体の強度が低下し、取扱が困難となるため、空隙率(X)は99%以下であることが好ましい。
【0018】
なお、空隙率(X)の算出方法としては、例えば樹脂発泡体断面を顕微鏡などで観察し、気泡部分と樹脂部分を画像処理装置などで解析して算出する方法や、発泡前の樹脂の比重と発泡後の樹脂発泡体比重から算出する方法が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂発泡体は、断面を顕微鏡などで観察した際、例えば図1に示すように、孔径が大きな空孔(L)と、孔径が小さな空孔(S)を有している。空孔(L)と空孔(S)とが共存するため、本発明の樹脂発泡体は、上記のような空隙率を達成しかつ断熱性能を高めることができる。
【0020】
本発明は、孔径が大きな空孔(L)によって高い空隙率(X)を達成し、その空孔(L)の壁面にサブミクロンまたはナノオーダーの微小な空孔(S)が存在することによって、壁面樹脂の伝熱を大幅に低減することも可能となる。空孔(S)が小さければ小さいほど、薄い壁面に空孔が存在できるため、空孔(S)は小さいほど好ましい。
【0021】
また、本発明の発泡体は、孔径分布において2つのピークが存在し、その内の1つのピークが10μm以上500μm以下に存在し、もう1つのピークが0.01μm以上1μm未満に存在することが重要であり、この点について説明する。
【0022】
本発明におけるポリエステル樹脂発泡体は、実施例の欄で説明するように測定される孔径分布において、バイモーダル(Bimodal)分布であることが重要である。通常、樹脂発泡体における孔径はすべて均一の孔径ではなく、ある範囲で分布をもって存在している。バイモーダル分布とは、その分布が2つの独立した分布として存在する「離れ小島分布」、あるいは2つの分布が重なりピークが2つあるような「2山分布」であることを表すものである。本発明における空孔(L)と空孔(S)の分布は所謂「離れ小島分布」であり、その2つのピーク(空孔(L)と空孔(S)に相当するピーク)が、空孔(L)としては10μm以上500μm以下の範囲内、空孔(S)としては0.01μm以上1μ未満の範囲内である。
【0023】
なお本発明において、孔径とは円換算直径をいい、円換算直径とは空孔の面積と同面積を有する円の直径をいう。
【0024】
また、樹脂発泡体の気泡構造としては、気泡同士が連なってなる連通気泡構造と、気泡が独立してなる独立気泡構造があるが、より高い断熱性能を求める場合、独立気泡を有した樹脂発泡体であることが好ましい。
【0025】
上記、孔径分布において2つのピークが存在する樹脂発泡体の製造方法は、次項(樹脂発泡体の製造方法)にて記載する。
【0026】
本発明の樹脂発泡体は、反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂(以下、反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂を、末端封鎖ポリエステル系樹脂という)を含むことが重要である。反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂とは、反応性末端封鎖剤が添加されて、反応性末端封鎖剤とポリエステル系樹脂の末端基とが反応して得られたポリエステル系樹脂のことである。
【0027】
ポリエステル系樹脂には、カルボキシル基末端とヒドロキシル基末端が存在するが、本発明における末端封鎖ポリエステル系樹脂は、少なくとも片方の末端が反応性末端封鎖剤に由来する成分によって封鎖されていることが重要である。一般に、加水分解がカルボキシル基末端から多く発生する点を勘案すると、少なくともカルボキシル基末端が封鎖された末端封鎖ポリエステルが好ましく、より好ましくは、カルボキシル基末端とヒドロキシル基末端の両方が封鎖された末端封鎖ポリエステルである。
【0028】
ここで、カルボキシル基末端が封鎖された状態とは、ポリエステル系樹脂のカルボキシル基末端(−COOH)中のヒドロキシル基(OH)の部分が、別の置換基に変換された状態である。さらにカルボキシル基末端とヒドロキシル基末端の両方が封鎖された状態とは、ポリエステル系樹脂のカルボキシル基末端(−COOH)中のヒドロキシル基(OH)の部分が、別の置換基に変換され、かつ、ポリエステル系樹脂のヒドロキシル基(−OH)の水素(H)の部分も、別の置換基に変換された状態を言う。
【0029】
また、末端封鎖ポリエステル系樹脂は、樹脂発泡体100質量%中に70質量%以上99.9質量%以下含まれていることが重要である。樹脂発泡体100質量%中に末端封鎖ポリエステル系樹脂が70質量%未満であると、廃棄時におけるリサイクル性が低下したり、十分な空隙率(X)の樹脂発泡体が得られなくなる場合がある。また、樹脂発泡体100質量%中に末端封鎖ポリエステル系樹脂が99.9質量%より多いと、孔径分布において2つのピークをもった構造体にすることが困難になり、十分な断熱性能を得られない場合がある。末端封鎖ポリエステル系樹脂のより好ましい範囲は、70質量%以上85質量%以下である。
【0030】
末端封鎖ポリエステル系樹脂を得るために用いられる反応性末端封鎖剤は、それ自身がベース樹脂であるポリエステル系樹脂の発泡性を阻害しないように低分子量体であることが好ましい。具体的には反応性末端封鎖剤の重量平均分子量が10,000以下であることが好ましく、より好ましくは、1,000以下である。重量平均分子量が100未満であると、分散性が著しく低下することから、重量平均分子量の下限としては100以上であることが好ましい。
【0031】
また、反応性末端封鎖剤は、ポリエステル系樹脂全体の粘度特性を大きく変化させないようにするために、反応性末端封鎖剤が有する官能基は、反応性末端封鎖剤1分子中に1つ以上2つ以下である化合物であることが好ましい。反応性末端封鎖剤の有する官能基が3つ以上の場合、反応性末端封鎖剤を中心とした分子鎖の分岐が多く発生し、絡み合い部分が増加するため、粘度が急激に上昇し、装置に大きな負荷をかける場合がある。
【0032】
反応性末端封鎖剤が有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基、及びカルボジイミド基からなる群より選ばれることが好ましい。
【0033】
一般に、エポキシ基、イソシアネート基は、ポリエステル系樹脂中のヒドロキシル基と反応しやすく、カルボジイミド基はポリエステル系樹脂中のカルボキシル基と反応しやすいとされているため、加水分解を効果的に抑制しようとする場合、加水分解の発端とされるポリエステル系樹脂中のカルボキシル基と反応しやすい、カルボジイミド基を持った化合物を反応性末端封鎖剤に用いることが好ましい。より好ましくは、カルボジイミド基を有する化合物とエポキシ基またはイソシアネート基を有する化合物を併用して用いることが好ましい。
【0034】
反応性末端封鎖剤の具体的な例としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアナート、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどが挙げられる。
【0035】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステル系樹脂よりも発泡に適した伸長粘度を有する脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。つまり末端封鎖ポリエステル系樹脂としては、末端封鎖脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート/サクシネート共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられる。中でも、環境に優しいバイオマス原料である、ポリ乳酸が好適に用いられる。
【0036】
本発明でいうポリ乳酸樹脂とは、ラクチドの開環重合あるいは乳酸の直接重合により得られるポリ乳酸樹脂、およびラクチドの開環重合で得られるポリ乳酸系共重合体を指す。
【0037】
本発明における樹脂発泡体は、前述した末端封鎖ポリエステル系樹脂の他に、ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体、メタクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。その理由としては、ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が含まれると、微分散化されたポリエーテルを基点とした発泡が起こるため、空孔(S)の孔径が小さくなり、断熱性能が向上しやすくなり、また、メタクリル樹脂やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が含まれると、末端封鎖ポリエステル系樹脂の伸長粘度が補われるため、空隙率(X)が高く、独立気泡を形成しやすくなるためである。
(樹脂発泡体の製造方法)
上述した樹脂発泡体の製造方法は特に限定されないが、末端封鎖ポリエステル系樹脂の発泡剤溶解度との差が0%超5%未満の範囲である樹脂aとコンパウンドした混合物に、発泡剤を含浸して発泡させる方法(以下、「方法1」という)、あるいは、末端封鎖ポリエステル系樹脂の発泡剤溶解度との差が5%以上異なる樹脂bをコンパウンドした混合物に、発泡剤を含浸して発泡させたのち、樹脂bを分解除去する方法(以下、「方法2」という)、を挙げることができる。
【0038】
初めに前者の「方法1」について説明する。この方法は、均一に微分散化した島成分と海成分の間の溶解度差(同一の発泡剤に対する末端封鎖ポリエステル系樹脂の溶解度と樹脂aの溶解度との差)(具体的には0%を超えて5%未満)により、空孔(L)と空孔(S)を生成する方法である。
【0039】
この樹脂発泡体の製造方法に用いられる樹脂aは特に限定しないが、ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエーテル−ポリエチレンテレフタレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などが挙げられる。特に環境性能を重視する場合、末端封鎖ポリエステル系樹脂として末端封鎖ポリ乳酸樹脂、樹脂aとして上記ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体が好ましく用いられる。特に、ポリエーテルの分散ドメインが1μm未満の微分散化樹脂混合物であれば、末端封鎖ポリエステル系樹脂と樹脂aの組合せとしてより好ましい。
【0040】
なお本発明における微分散化とは、分散した樹脂からなる島成分が1μm未満の径であることを指す。末端封鎖ポリエステル系樹脂と樹脂aを微分散化する手段としては、末端封鎖ポリエステル系樹脂のモノマー成分と樹脂aのモノマー成分を有したブロック共重合体を作成して、そのブロック共重合体を樹脂aとして用いる方法が挙げられる。上記手法で用いられるブロック共重合体の分子量や、共重合比を変更すれば、より効率的に効果を発現することができる。特にブロック共重合体において、海成分の共重合の比率を高めることにより、海成分が位置固定されやすくなるため、島成分の局在化を抑制でき、より微小で均一な微分散化状態を作りやすい。
【0041】
このような点から、「方法1」に特に好ましく用いられる樹脂としては、末端封鎖ポリエステル系樹脂として末端封鎖ポリ乳酸樹脂、樹脂aとしてポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体の組合せ、または、末端封鎖ポリエステル系樹脂として末端封鎖ポリエチレンテレフタレート樹脂、樹脂aとしてポリエーテル−ポリエチレンテレフタレート樹脂の組合せが好ましい。
【0042】
上記ポリエーテル−ポリ乳酸共重合体のポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコールなどのアルキレンエーテルが好適に用いられるが、特に限定されるものではない。ポリエーテル−ポリ乳酸共重合体の具体例として、ポリエチレングリコールにラクチドを開環重合して得られるABA型のブロック共重合体が挙げられる。ポリエチレングリコールの分子量は2000〜10000、共重合化したポリ乳酸セグメントの分子量は2000〜3500などであることが好ましい。
【0043】
続いて、「方法2」について説明する。この方法では、末端封鎖ポリエステル系樹脂と樹脂bの混合物を発泡させて空孔(L)を生成したのち、樹脂bを分解、除去させることにより空孔(S)を生成するものである。
【0044】
樹脂bとしては、加水分解の速度が速く、迅速に除去できる点から、ポリグリコール酸が好適に用いられる。
【0045】
上記「方法1」および「方法2」における発泡方法は、特に限定しないが、例えば次の発泡方法により行われる。すなわち、発泡剤の注入装置を備えた押出機などに、樹脂を供給し、加熱溶融させ、必要に応じて発泡剤を注入もしくは添加したのち、スリットダイなどから大気中あるいは金型内に押出吐出し、その際の急激な圧力開放で樹脂中から発泡剤を気化させることにより樹脂発泡体を作成する押出発泡法、樹脂を一旦ビーズやシート状に加工したのち、該樹脂をオートクレーブなどの耐圧容器に発泡剤とともに投入し、所定の温度・圧力・時間で樹脂に発泡剤を含浸させ、急激な圧力開放もしくは、含浸樹脂冷却後に再加熱することで樹脂発泡体を作成するバッチ式発泡法などである。このような方法により「方法1」では空孔(L)と空孔(S)が生成され、また「方法2」では空孔(L)が生成される。
【0046】
そして、「方法2」の場合は、引き続き樹脂bの分解が行われる。樹脂bの分解は、光分解、加水分解、熱分解、酸またはアルカリによる分解、紫外線照射による分解、微生物などによる生分解が挙げられ、分解対象樹脂によって、種々の方法を用いることができる。例えば、分解対象樹脂がポリメチルメタクリレートであれば、樹脂発泡体に紫外線を照射することで分解することができ、ポリグリコール酸であれば、加水分解や微生物による生分解などで分解することができる。
【0047】
「方法2」による樹脂発泡体の具体的な製造例としては、末端封鎖ポリ乳酸樹脂とポリメタクリルメチルを混合して発泡させ空孔(L)を生成したのち、ポリメタクリル酸メチルのみを溶解する溶媒(トルエン−ヘキサン溶液など)で該ポリメタクリル酸メチルを分解し、空孔(L)の周囲に空孔(S)を生成する方法や、ポリスチレンと末端封鎖ポリ乳酸樹脂を混合して発泡させ空孔(L)を生成したのち、末端封鎖ポリ乳酸樹脂のみを加水分解させて空孔(L)の周囲に空孔(S)を生成する方法が挙げられる。
【0048】
ここで、「方法1」および「方法2」において用いられる発泡剤としては、熱分解により各種のガスを発生する化学発泡剤、または、各種ガスそのものを使用する物理発泡剤が挙げられる。押出発泡においては、化学発泡剤、物理発泡剤いずれも好適に用いることができ、バッチ発泡法においては、物理発泡剤を用いることが好ましい。
【0049】
化学発泡剤としては、主として、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、これらのうちのいずれか1種類または2種類以上を混合して用いることができる。特に、炭酸水素ナトリウムが好適に用いられる。また、炭酸ガスの発生を早める目的で、酒石酸水素カリウム、第一リン酸カルシウム、フマル酸、リン酸ナトリウムなどの酸性剤を、炭酸ガス発生物質と併用させることもできる。
【0050】
物理発泡剤としては、ブタンやプロパン、窒素、炭酸ガスなどが好適に用いられる。しかしながら、ブタンやプロパンは引火性であるため、安全性や環境性能を重視する場合、窒素、炭酸ガスが好ましく、より好適には、炭酸ガスが用いられる。また物理発泡剤としては、二酸化炭素を超臨界状態、もしくは気体状態で用いることもできる。樹脂発泡体の製造が押出発泡法の場合は、押出機内が高温高圧状態となることから、拡散が早く、密度が大きい超臨界状態で用いることが好ましく、バッチ発泡の場合は、超臨界状態、気体状態のいずれも好適に用いることができる。
【0051】
本発明において、樹脂発泡体には、本発明の効果を損なわない範囲で、押出安定性を付与する滑剤、発泡核剤などの粒子を添加することができる。具体的には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムモンモリロナイト、ゼオライト、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、エルカ酸アミドなどが挙げられる。
【0052】
本発明における樹脂発泡体を断熱材として用いる場合、その断熱性能としては、樹脂発泡体作成直後の熱伝導率が30(mW/mK)以下であることが好ましく、さらに好ましくは25(mW/mK)以下である。なお、熱伝導率は低いほど好ましいが現実的に達成可能な下限は10(mW/mK)程度と思われる。
【実施例】
【0053】
(1)空孔(L)(10μm以上500μm以下の径の空孔)と空孔(S)(0.01μm以上1μm未満の径の空孔)の有無の確認法
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、樹脂発泡体の厚さ方向断面を100倍に拡大した画像を取り込んだ。そして該画像から、空孔(L)の有無を確認した。次に空孔(L)の周辺を20000倍に拡大した画像を取り込んだ。そして該画像から、空孔(S)の有無を確認した。
樹脂発泡体の断面出しには、アルゴンイオンビームを用いたクロスセクションポリッシャ(CP)法を用いた。
【0054】
なお、空孔(L)の有無は、円換算直径が1μm以上500μm以下の空孔の有無で判断し、空孔(S)の有無は、円換算直径が0.01μm以上1μm未満の空孔の有無で判断した。ここで言う円換算直径とは空孔の面積と同面積を有する円の直径である。また、円換算直径は、上記倍率で取り込んだSEM画像を、前項(1)と同様に画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)で処理し、空孔断面積から求めた。つまり、画像処理装置によって黒く塗られた空孔部分の断面積を計算することができ、この断面積と同面積を有する円の直径を円換算直径とした。
【0055】
(2)空孔(L)と空孔(S)の平均孔径
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、樹脂発泡体の厚さ方向断面を100倍に拡大した画像を取り込んだ。取り込んだ画像から、円換算直径が1μm以上500μm以下の空孔を選択し、総数の平均を空孔(L)の平均孔径とした。
【0056】
次に気泡壁面を中心に10000倍に拡大した画像を取り込んだ。取り込んだ画像を上下左右4ブロックに分割し、1ブロック当たり円換算直径が0.01μm以上1μm未満の空孔を選択し、総数の平均を空孔(S)の平均孔径とした。
【0057】
樹脂発泡体1サンプルにつき5箇所のSEM画像を用いて(n=5)、5回の平均を空孔(L)と空孔(S)の平均孔径とした。
【0058】
(3)樹脂発泡体の孔径分布
樹脂発泡体の厚さ方向断面を、日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、表1の倍率で観察した。
【0059】
表1に示した顕微鏡の各倍率において、無作為に空孔100個ずつを選択し、1つの空孔につき短径部分(Ls)と長径部分(Ll)を「2点間距離」にて測定した。(Ls)と(Ll)の平均を1つの空孔の平均空孔径(La)n(但しn=1〜100)とし、各倍率において平均空孔径(La)nのヒストグラムを作成した。因みに、SEM画像の端にあるような孔径の全容が観察できない空孔は測定しなかった。
【0060】
ヒストグラムの作成は、級(柱)数が10本、級(柱)の境界値に(La)nの値が無い幅を計算し、作成した。
【0061】
各倍率における空孔のサンプリングには下限(あるいは上限)を設けることで、同一空孔の2重計測が無いようにした。
【0062】
上述によって得られた各倍率におけるヒストグラムを繋げることによって、樹脂発泡体の孔径分布とした。孔径分布における各度数の中央値を繋げた曲線において、傾きが極限値となる度数の中央値、即ち、曲線の傾きが正から負に転換する度数の中央値をピークとした。
【0063】
【表1】

【0064】
(4)空隙率(X)
発泡前の樹脂の比重(Gp)と樹脂発泡体の比重(Gf)から下記式を用いて算出した。比重測定は、ミラージュ貿易社製電子比重計「SD−120L」により測定した。試料数5つの平均を樹脂発泡体の比重(Gf)とした。
<測定条件>
試料サイズ:3cm角×1cm厚
測定水温 :23℃(純水使用)
測定試料数:5(=n数)
<計算式>
空隙率(X)=(1−Gf/Gp)×100[%]。
【0065】
(5)熱伝導率測定
Hot Disk社製熱伝導率測定装置「TPS−2500」を用いて測定した。測定箇所は、樹脂発泡体の中心部と四隅の5箇所を測定し、それぞれの平均を熱伝導率とした。樹脂発泡体を断熱材として用いる場合、30mW/mK以下であることが好ましい。
<熱伝導率測定条件>
温度:23℃
湿度:65%RH
センサー:7mmφ(ポリイミド被覆)
(6)加水分解抑制効果
樹脂発泡体を以下の条件下にて加速試験したのち、加速試験前後の樹脂発泡体の重量平均分子量減少率によって表2のように評価した。
【0066】
<加速試験条件>
温度80℃、湿度60%RH、250時間
分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)を用いてポリスチレン換算で重量平均分子量を測定した。機器は島津製作所製LC−10Aシリーズで、溶媒はTHF(高速液体クロマトグラフィ用)またはHFIPを用い、検出器はRI検出器(RID−10A)、カラムは昭和電工社製 Shodex(商標)のKF−806LとKF−804L(各300mm×8mmφ)を直列に並べて使用した。カラム温度は30℃、流速は1.0ml/min(Heによるオンライン脱気方式)。標準に用いたポリスチレンはShodex(商標)製ポリスチレンスタンダードで、Std.No.がS−3850、S−1190、S−205、S−52.4、S−13.9、S−1.31の6種類を用いた。これらを3次式近似にて検量線を引き、測定を行った。
また、重量平均分子量減少率は、以下の算式で計算した。
<計算式>
重量平均分子量減少率(%)=(加速試験前の樹脂発泡体重量平均分子量−加速試験後の樹脂発泡体重量平均分子量)/加速試験前の樹脂発泡体重量平均分子量×100
【0067】
【表2】

【0068】
(7)マテリアルリサイクル性
樹脂発泡体に用いられたポリエステル系樹脂の新品原料に、樹脂発泡体そのものを所定量配合した原料を射出成形機に投入し、得られた成形品が十分な強度と外観を維持できる配合量を指標に用いた。配合した樹脂発泡体の質量に応じて以下のように評価した。
【0069】
十分な強度とは、新品原料による成形品に対して、曲げ強度が80%以上の場合である。
【0070】
十分な外観とは、目視により成形品に気泡・欠け・ヒビが認識できない場合である。
【0071】
評価に用いた射出成型品は、JIS−K7171(1994)に準拠した標準試験片であり、曲げ強度も、JIS−K7171(1994)に準拠した測定で行った。
【0072】
【表3】

【0073】
(8)表中の略号について
PET:ポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)製『三井PET J120』)
PET−PEG:ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体
PLA:ポリ乳酸(NatureWorks製『4042D』)
PLA−PEG:ポリ乳酸−ポリエチレングリコール共重合体(次のように調製したもの。即ち、減圧ラインと加熱装置を備えた密閉容器に、数平均分子量8,500のポリエチレングリコール0.85kgを投入し、140℃、30分間減圧脱水したのち、L−ラクチド0.5kgを投入する。次に、容器内を不活性ガスに置換し、ポリエチレングリコールとL−ラクチドを溶融攪拌しながら2−エチルヘキサン酸スズ(II)を10g加え、160℃、3時間不活性ガス雰囲気下で攪拌を行ったのち、触媒失活剤としてリン酸ジメチルを7.5g加え、30分間攪拌する。次に140℃、2時間減圧攪拌し揮発物を除去したのち、不活性ガスで大気圧まで戻すことで、分子量13,500のポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得た。)
PGA:ポリグリコール酸(次のように調製したもの。すなわち、70%グリコール酸水溶液を窒素気流下、180℃に加熱し、その後1.0×10−2MPaまで徐々に減圧しグリコール酸を濃縮した。グリコール酸水溶液量に対し約30重量%の水が留出した時点で亜リン酸トリフェニルをグリコール酸水溶液量に対し約0.14%添加した。5分後三酸化アンチモンとエチレングリコールをグリコール酸水溶液量に対しそれぞれ約0.13%、約0.57%添加し、攪拌しながら温度、減圧度をさらに上昇させ200℃、5.0×10−4MPaで反応物が固化し始めたら攪拌棒を反応液面より上に揚げ、さらに反応物が完全に固化するまで反応を行った。反応終了後、反応物を窒素雰囲気下で室温まで冷却し、粉末状態まで粉砕した。この微粉化した低重合体を200℃、5.0×10−4MPaで40時間重縮合反応を行い、ほとんど着色していない淡黄色のポリグリコール酸を得た。なお、得られたポリグリコール酸を濃度0.5g/dlのフェノール/2,4,5−テトラクロロフェノール混合溶媒(10/7(重量比))溶液とし、30.0±0.1℃でウベローデ型粘度計を用いて、ηsp/Cを求めたところ、0.63であった。また、この重合体のH−NMR分析より重合体の分子鎖中にエチレングリコール単位がグリコール酸単位1モルに対し、0.004モル含有されていることが確認できた。)
Phenol:フェノール樹脂
S−PET:スピログリコール共重合PET(三菱ガス化学(株)製『ALTESTER−20』
PET−G:1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合PET(イーストマンケミカル(株)製『GN001』
(い):Rhein Chemie社製『Stabaxol I』
(ろ):日本ポリウレタン工業株式会社製『ミリオネートMR−400』
(は):日産化学工業株式会社製『TEPIC−S』
(に):日清紡ケミカル株式会社製『カルボジライト LA−1』
[実施例1]
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、PETとPET−PEGと(い)を表の割合で混合し、第1押出機に供給し、280℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、180℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで、幅80mm・厚さ3mmの樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表4に示す。
次に、該樹脂発泡体を厚み方向に4枚重ね、断熱材とした。
[実施例2]
PLA、PLA−PEGと(ろ)を用いて、第1押出機に供給し、220℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、120〜160℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで、幅100mm・厚さ10mmの樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表4に示す。
[実施例3]
PET、PGAと(は)を用いて、実施例1と同様に、押出発泡により厚さ4mmの樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表4に示す。
[実施例4]
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、S−PETとPET−Gと(い)を表4の割合で混合し、第1押出機に供給し、260℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、140℃〜150℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表4に示す。
[実施例5]
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、S−PETとPET−Gと(い)を表4の割合で混合し、第1押出機に供給し、260℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、140℃〜150℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表4に示す。
[比較例1]
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、PLAと(に)を表の割合で混合し、第1押出機に供給し、200℃〜220℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で120〜170℃に降温させ、長さ10cmのスリットダイから大気中に吐出することで、厚さ10mmの樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表5に示す。
[比較例2]
PETとPGAを表の割合で混合し、第1押出機に供給し、280℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、180℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで、幅80mm・厚さ3mmの樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表5に示す。
[比較例3]
レゾール樹脂84質量%と、発泡剤としてイソペンタン(和光純薬社製、純度99%以上)5質量%,硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物60重量%(和光純薬社製、純度95%以上)とジエチレングリコール40重量%(和光純薬社製、純度98%以上)の混合物11質量%をそれぞれ温調ジャケット付きピンミキサーに供給した。ミキサーから出てきた混合物を、予熱しておいた厚み10mm×巾300mm×長さ300mmの箱状型枠内に流し込み、熱風オーブンに入れ、発泡硬化させて樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表5に示す。
[比較例4]
超臨界二酸化炭素供給ラインを備えたタンデム式押出機を用いて、S−PETとPET−Gと(い)を表5の割合で混合し、第1押出機に供給し、260℃で溶融させたのち、押出機先端で超臨界二酸化炭素を供給した。次に、第2押出機で、140℃〜150℃に降温させ、幅100mm、厚さ1mmのスリットダイから大気中に吐出することで樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表5に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔径分布において2つのピークが存在し、その内の1つのピークが10μm以上500μm以下に存在し、もう1つのピークが0.01μm以上1μm未満に存在する、空隙率(X)が80%以上の樹脂発泡体であり、
反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂(以下、反応性末端封鎖剤に由来する成分を有するポリエステル系樹脂を、末端封鎖ポリエステル系樹脂という)を含み、
樹脂発泡体100質量%中に、末端封鎖ポリエステル系樹脂を70質量%以上99.9質量%以下含むことを特徴とする、樹脂発泡体。
【請求項2】
前記反応性末端封鎖剤が、重量平均分子量100以上10,000以下の化合物であり、かつ、1分子中に以下の群より選ばれる官能基を1つ以上2つ以下有している化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂発泡体。
群:エポキシ基、イソシアネート基、及びカルボジイミド基
【請求項3】
前記末端封鎖ポリエステル系樹脂が、末端封鎖脂肪族ポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
以下の群より選ばれる少なくとも1つの樹脂をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂発泡体。
群:ポリエーテル−ポリ乳酸ブロック共重合体、メタクリル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂発泡体を含む断熱材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72358(P2012−72358A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169864(P2011−169864)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19〜23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】