説明

樹脂管引込方法およびガイド管

【課題】簡単かつ安全に樹脂管を既設管内に挿入することができる、樹脂管引込方法およびガイド管を提供する。
【解決手段】障害物11より低くなるように所定の曲率で予め曲げられたガイド管10を既設管32の前方に配置し、ガイド管10の出口16を既設管32の導入口36側に向ける。そして、樹脂管14を既設管32に対して平行にして、既設管32の上方に配置する。既設管32の導入口36側を向いた樹脂管14の端部に、既設管32およびガイド管10を挿通させた牽引用ワイヤ44の一方端を繋ぎ、牽引用ワイヤ44の他方端を牽引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂管引込方法およびガイド管に関し、特にたとえば、埋設された既設管に更生用の樹脂管を引き込むために使用する、樹脂管引込方法およびガイド管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂管引込方法の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の可撓性管の地中埋設誘導方法および装置では、管は第1案内ローラおよび補助ローラで挟持された後、湾曲しながら、第2案内ローラおよび第3案内ローラへ誘導されて、先進導孔の上流側開口端付近まで牽引される。ここで、管の一端から誘導用牽条が取り外されて、取り外した部分に、先進導孔内に予め挿通される引き込み用牽条が連結される。そして、引き込み用牽条を牽引して、管は先進導孔内に挿入される。
【特許文献1】特開2001−32682号公報[E21D 9/06、E21D 9/08、F16L 1/00、F16L 1/024]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の従来技術では、先進導孔の上流側開口端付近で管に取り付けた誘導用牽条を引き込み用牽条へ引き継がなければならず、手間が掛かってしまう。
【0004】
また、湾曲した管の後端が第1案内ローラを通過した後、管の外側を支えるものがないため、管の後端は装置の前方へ跳ね返ってしまう。このため、装置の前に人がいると、重大な事故に繋がる恐れがあり、この装置を用いるに当たって厳しい安全対策が必要になる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、簡単かつ安全に樹脂管を既設管内に挿入することができる、樹脂管引込方法およびガイド管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、樹脂管を既設管に引き込むためのガイド管であって、樹脂管がガイド管内を通過するときの摩擦を軽減する摩擦軽減手段を備え、予め所定の曲率で曲げた、ガイド管である。
【0007】
請求項1の発明では、予め所定の曲率で曲げた弧状のガイド管を既設管の導入口の前に据え、ガイド管の出口を既設管の導入口に向ける。樹脂管を既設管に平行にして既設管の上方に配置し、樹脂管の端部の内で既設管の導入口側を向いた方の端部を先端として、ここにたとえば、既設管およびガイド管を挿通した牽引用ワイヤを取り付ける。そして、牽引用ワイヤを既設管の出口側から牽引して、樹脂管をガイド管の入口から導入し、ガイド管に沿って所定の曲率で曲げて、ガイド管の出口から既設管の導入口へそのままの状態で挿入する。
【0008】
このように、ガイド管の出口を既設管の導入口に向けて、ガイド管と既設管とを連結させることにより、1本の牽引用ワイヤを既設管およびガイド管の両方に通して、このワイヤで樹脂管を両方の管内へ牽引することができる。よって、樹脂管を牽引するためにガイド管と既設管とで別の牽引用ワイヤを用いる必要がない。
【0009】
また、樹脂管はガイド管により湾曲されるため、樹脂管がガイド管内へ引き込まれて樹脂管の長さが短くなっても、樹脂管はガイド管の管壁により支持され、樹脂管の後端がガイド管の前方へ跳ね返ることはない。
【0010】
さらに、ガイド管の曲率が大きくなるほど、ガイド管内を通過する樹脂管とガイド管との間の摩擦は大きくなるが、樹脂管に設けた摩擦軽減手段により樹脂管は滑らかに進むため、ガイド管の曲率を大きくして、ガイド管の高さを低く抑えることができる。このため、ガイド管は電線などの障害物の高さより低くすることができ、電線などが多い市街地でも施工できる。
【0011】
請求項2の発明は、樹脂管を既設管内に引き込む樹脂管引込方法であって、(a)請求項1のガイド管をその第1端が既設管の導入口側になるように配置するステップ、(b)ガイド管の第2端から樹脂管をガイド管内に挿入するステップ、および(c)ガイド管の第1端から出た樹脂管を導入口から既設管内に引き込むステップを含む、樹脂管引込方法である。
【0012】
請求項2の発明では、ガイド管の第1端を既設管の導入口側になるように配置することにより、ガイド管は既設管と連結するため、樹脂管はガイド管の第2端からガイド管内に挿入され、ガイド管の第1端から出て、そのまま導入口から既設管内に引き込まれる。よって、樹脂管の先端に牽引ワイヤなどを接続して牽引すれば、樹脂管をガイド管に通して、そのまま既設管に挿入することができる。
【0013】
また、樹脂管は所定の曲率で曲がったガイド管に通り、既設管に引き込まれることにより、既設管内に引き込まれて樹脂管の長さが短くなっても、樹脂管の後端はガイド管に挿入されて、ガイド管の管壁に支持されるため、樹脂管の後端は前方に跳ね返ったりしない。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ガイド管を既設管の前に配置することにより、樹脂管をガイド管から簡単に既設管内へ挿入することができる
また、予め所定の曲率で曲げたガイド管内に樹脂管を通して、樹脂管を湾曲させるため、樹脂管の後端が跳ね返ることなく、安全に樹脂管を既設管内へ挿入することができる。
【0015】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すこの発明の一実施例であるガイド管10は、たとえば外径が300Aで長さが9mの鋼管を、電線などの障害物11の高さより低い、たとえば半径2mに予め曲げた弧状の曲管である。ガイド管10の上側の第1端12は樹脂管14を導入するための入口として、下側の第2端16はガイド管10内を通過した樹脂管14を引き出す出口として利用される。
【0017】
このガイド管10の管壁に樹脂管14の摩擦軽減手段としてガイドローラ18が装着する。ガイドローラ18は、図2に示すように回転軸20により支持される円筒形の回転物であり、ガイド管10の管壁に沿う形状の鋼板22上の、たとえば2箇所に2つずつ設けられる。このガイドローラ18a、18bを、図3に示すガイド管10の内側および外側の管壁の一部を切り取った切欠き24内に入れ、鋼板22を管壁の外側から当てて、鋼板22を溶接などして管壁に固定する。そして、図1に示すガイド管10の全体として、管壁の内側の複数(この実施例では5箇所)にガイドローラ18aを取り付け、外側の複数(この実施例では9箇所)にガイドローラ18bを取り付ける。
【0018】
ガイド管10の管壁にはガイドローラ18以外に、複数(この実施例では4箇所)に間隔を隔てて検査窓26が形成される。検査窓26はガイド管10内を通る樹脂管14の通過状況などを確認するためのものである。
【0019】
また、樹脂管14の先端に図4に示す牽引治具28を装着する。牽引治具28は円錐形状で、鉄や真鋳などの金属で形成される。牽引治具28の先には牽引用ワイヤを繋ぐためのリング30が設けられる。
【0020】
このガイド管10を用いてφ150の樹脂管14を既設管32に引き込む場合、図1に示すように、まず既設管32の更生部分の両端に作業用の溝34を掘削し、溝34内の既設管32を切断する。その切断して残った既設管32の一方開口36を導入口とし、他方開口38を出口とする。そして、ガイド管10の出口16を既設管32の導入口36に向けて、溝34内にガイド管10を置き、ガイド管10を車載クレーン40などで吊り上げながら、倒れないように支持する。それから、樹脂管14を既設管32と平行にして既設管32の上方に配置して、樹脂管14の側壁を案内部材37に当接する。この案内部材37は樹脂管14を既設管32と平行に配置するものである。そして、既設管32の導入口36にある樹脂管14の端部を樹脂管14の先端として、ここに牽引治具28を嵌める。
【0021】
既設管32の出口38の外側に配置したウィンチ42などから牽引用ワイヤ44を引き出し、牽引用ワイヤ44を既設管32の出口38から既設管32内へ挿入する。そして、既設管32内を通して、既設管32の導入口36から引き出す。この既設管32の導入口36から引き出した牽引用ワイヤ44をさらにガイド管10の出口16へ挿入し、ガイド管10内を通して、ガイド管10の入口12から引き出してから、牽引治具28のリング30に繋ぐ。
【0022】
この牽引用ワイヤ44をウィンチ42などにより牽引すると、樹脂管14はガイド管10の入口12から引き込まれ、ガイド管10に沿って所定の曲率で折り返す。樹脂管14がガイド管10内を通過する際、円錐形状の牽引治具28はガイド管10の管壁に対し傾斜するため、牽引治具28はガイドローラ18に衝突せず、牽引治具28の傾斜に沿ってガイドローラ18上に載る。それに伴い樹脂管14もガイドローラ18上に載り、ガイドローラ18が回転して引き込まれる樹脂管14とガイド管10との摩擦が低減されて、樹脂管14はガイド管10内を滑らかに進む。
【0023】
ガイド管10の出口16から出た樹脂管14は続いて既設管32の導入口36へ導入され、既設管32内へ引き込まれる。そして、図5に示すように、樹脂管14の後端がガイド管10に入ると、樹脂管14の進行状況を検査窓26から確認して、樹脂管14の後端が既設管32内に導入されるときに、樹脂管14の引き込みを停止して、牽引治具28を樹脂管14の先端から取り外す。
【0024】
このように、ガイド管10の出口16を既設管32の導入口36に向ければ、ガイド管10は既設管32と連結するため、既設管32およびガイド管10の両方に通した牽引用ワイヤ44を樹脂管14に付けて、この1本のワイヤ44により樹脂管14を両方の管10、27内へ牽引することができる。
【0025】
また、図5に示すように、既設管32内に引き込まれて樹脂管14の長さが短くなっても、樹脂管14は所定の曲率で曲がったガイド管10に通り、既設管32に引き込まれることにより、樹脂管14の後端はガイド管10の管壁に支持されるため、樹脂管14は前方に跳ね返ったりせず、安全に作業することができる。
【0026】
さらに、弧状のガイド管10内を樹脂管14が通過する際、ガイド管10の曲率が大きいほど樹脂管14はガイド管10の内面と擦れて進みにくいが、ガイド管10に設けたガイドローラ18が回転することにより、樹脂管14とガイド管10との間の摩擦が軽減されるため、樹脂管14は滑らかにガイド管10を通過して折り返すことができ、ガイド管10の曲率を大きくその高さを低くすることができる。
【0027】
さらに、作業用の溝34の大きさはガイド管10を設置できるだけの大きさであればよく、従来の樹脂管14を引き込むための作業用溝より小さくすることができる。
【0028】
したがって、ガイド管10の高さを低く、たとえば電線などの障害物11の高さより低く設定し、作業用の溝34の大きさを小さくすることができるため、工事区間を短縮化し、しかも電線などの障害物11が多い市街地のような場所でも施工可能である。
【0029】
さらに、牽引治具28がガイド管10を通過する際、円錐形状の牽引治具28の勾配により、牽引治具28はガイドローラ18に衝突せず、牽引治具28の斜面に沿って牽引治具28はガイドローラ18の上を進むことができる。
【0030】
なお、ガイドローラ18をガイド管10の上側および下側に設けたが、樹脂管14の通過状況に応じて樹脂管14の摩擦が低減できるガイド管10の適当な位置にガイドローラ18を設ければよい。したがって、ガイド管10の位置により、ガイドローラ18を上側および下側のぺアで設けてもよいし、ガイド管10の上側だけまたは下側だけに設けてもよい。
【0031】
また、摩擦軽減手段としてガイドローラ18を用いたが、潤滑材など他の摩擦軽減手段も用いることもできる。
【0032】
図6に示すこの発明の他の実施例であるガイド管10は図1に示すガイド管10とほぼ同様であるが、その形状が異なる。図2に示すガイド管10は弧状であるのに対して図6に示すガイド管10はS字状である。S字状のガイド管10は、その一方端から所定の曲率で円弧を形成し、中央部で曲げ方向を変えて、先の曲率と同じ曲率で円弧を形成する。このため、ガイド管10の入口46は既設管32の前方を向き、樹脂管14は既設管32の前方に配置して、ガイド管10内に挿入する。これ以外の部分に関しては図1実施例の示すガイド管10と同様であるため、説明は省略する。
【0033】
このようなガイド管10に樹脂管14を挿入すると、樹脂管14はガイド管10に沿って曲げられ、ガイドローラ18により摩擦が軽減されながら滑らかにガイド管10内を通過するため、ガイド管10を配置するための作業用溝34を小さくすることができる。また、ガイド管10の向きを変えることにより、樹脂管14の挿入方向の自由度が上がる。
【0034】
さらに、上で挙げた角度や寸法の具体的数値はいずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施例のガイド管を用いて、樹脂管を既設管内へ引き込む状態を示す断面図である。
【図2】ガイドローラを示す平面図である。
【図3】図2のガイドローラをガイド管に装着した状態を示す断面図である。
【図4】樹脂管に牽引治具を取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】図1のガイド管内に樹脂管の後端が通過している状態を示す断面図である。
【図6】この発明の他の実施例のガイド管を用いて、樹脂管を既設管内へ引き込む状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10…ガイド管
12…ガイド管の入口
14…樹脂管
16…ガイド管の出口
18…ガイドローラ
32…既設管
36…既設管の導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂管を既設管に引き込むための、ガイド管であって、
前記樹脂管が前記ガイド管内を通過するときの摩擦を軽減する摩擦軽減手段を備え、
予め所定の曲率で曲げた、ガイド管。
【請求項2】
樹脂管を既設管内に引き込む樹脂管引込方法であって、
(a)請求項1のガイド管をその第1端が前記既設管の導入口側になるように配置するステップ、
(b)前記ガイド管の第2端から前記樹脂管を前記ガイド管内に挿入するステップ、および
(c)前記ガイド管の前記第1端から出た前記樹脂管を前記導入口へ前記既設管内に引き込むステップを含む、樹脂管引込方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37380(P2006−37380A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215385(P2004−215385)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(391042003)岩下産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】